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特許7269575未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/16 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
B28C7/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021003350
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022039907
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2020143655
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511123429
【氏名又は名称】テクニカ合同株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520328947
【氏名又は名称】株式会社中部シー・アイ・アイ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 好太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 洋克
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秋浩
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124698(JP,A)
【文献】特表2020-528858(JP,A)
【文献】特開2017-124569(JP,A)
【文献】特開平6-343998(JP,A)
【文献】特開平9-66300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C7/16
C04B18/16
C02F11/00-11/20
B09B1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未使用のスラリー状の生コンクリートに、重合比が、アニオン基が30mol%~45mol%、カチオン基が0.1mol%~4.0mol%の範囲にある液体状の両性高分子凝集剤を添加、混合し、高分子凝集剤の凝集作用により、スラリー状の生コンクリートを造粒化することを特徴とする未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法。
【請求項2】
前記液体状の両性高分子凝集剤及び液体状のアニオン性高分子凝集剤を混合して用いることを特徴とする請求項1に記載の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生コンクリート製造工場で製造された生コンクリートは、アジテータ車によって工事現場へ搬送されるが、一般に工事現場では生コンクリートの量に余裕を持たせて多めに発注することから、余剰分として残ってしまい、一部未使用のまま戻されたり(本明細書において、「残コン」という。)、荷下ろし検査に不合格となって使用されないまま戻されたり(本明細書において、「戻りコン」という。)する場合がある。
また、生コンクリート製造工場で製造された生コンクリートについても、出荷されずに未使用となるものがある。
そして、このような未使用の生コンクリート(本明細書において、「未使用生コンクリート」という。)は、通常、硬化する前にアジテータ車のドラムや生コンクリート製造工場のミキサーから排出され、産業廃棄物として廃棄処理されている。
【0003】
このようにして産業廃棄物として廃棄処理される未使用生コンクリートの割合は、建設工事現場等で使用される生コンクリートのうちの1~2%、年間で150~200万mに上るといわれており、資源の無駄使い、処理コスト、産業廃棄物処理場等の点で問題視されていた。
【0004】
また、未使用生コンクリートは、アジテータ車のドラムや生コンクリート製造工場のミキサーから硬化する前に排出する必要があるが、排出場所の制約等によって、未使用生コンクリートがドラムやミキサー内で硬化を開始する問題があり、その対処方法が要請されていた。
【0005】
この問題に対処するために、未使用のスラリー状の生コンクリートに、吸水性高分子重合体を添加、混合し、吸水性高分子重合体の吸水作用により、スラリー状の生コンクリートを造粒化する未使用生コンクリートの処理方法が提案されている(必要があれば、例えば、特許文献1~2参照。)。
【0006】
ところで、未使用生コンクリートの処理に、吸水性高分子重合体を用いた場合、吸水性高分子重合体が未使用生コンクリート中の水を吸収して体積が膨張し、立体網目状構造を有するゲルを形成するとともに、その網目状構造とセメントペーストとが絡み合い、網目構造の中に砂や砂利等の骨材が取り込まれ、さらに、撹拌することによって、網目構造が骨材を核として成長し造粒されて、団子状の造粒体が形成される。
しかしながら、この方法によって得られた造粒体は、立体網目状構造を有するゲルを骨格構造としているため、保水性が高く、乾燥しにくく、安定的な構造体になりにくいという問題があった。
【0007】
この問題に対処するために、未使用のスラリー状の生コンクリートに、高分子凝集剤を添加、混合し、高分子凝集剤の凝集作用により、スラリー状の生コンクリートを造粒化する未使用生コンクリートの処理方法が提案されている(必要があれば、例えば、特許文献3~5参照。)。
【0008】
ところで、未使用生コンクリートの処理に、高分子凝集剤を用いる方法は、吸水性高分子重合体を用いる方法の上記問題点を解決できるものであるが、一般的には顆粒状である高分子凝集剤を用いる場合、未使用生コンクリートに対する分散性が悪く、このため、未
使用生コンクリートの処理に時間を要したり、未使用生コンクリートに対する高分子凝集剤の適切な添加量の設定が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-62943号公報
【文献】実用新案登録第3147832号公報
【文献】特開2017-124569号公報
【文献】特開2005-313581号公報
【文献】特開2014-181147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の未使用生コンクリートの処理に関する問題点に鑑み、未使用生コンクリートを、処理コストをかけることなく、任意の場所で、再資源化でき、かつ、安定的な構造体からなる造粒体を得ることができる未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法は、未使用のスラリー状の生コンクリートに、液体状の両性高分子凝集剤を添加、混合し、高分子凝集剤の凝集作用により、スラリー状の生コンクリートを造粒化することを特徴とする。
【0012】
前記液体状の両性高分子凝集剤が、液体状のアニオン性高分子凝集剤を含有してなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法によれば、未使用生コンクリートに対する高分子凝集剤の分散性が良好で、未使用生コンクリートの処理を短時間で、かつ、未使用生コンクリートに対する高分子凝集剤の適切な添加量の設定を容易に行うことができ、これにより、未使用生コンクリートを、処理コストをかけることなく、任意の場所で、再資源化することでき、かつ、安定的な構造体からなる造粒体を得ることができ、従来の未使用生コンクリートの処理にあった多くの問題点を一挙に解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法は、未使用のスラリー状の生コンクリートに、高分子凝集剤を添加、混合し、高分子凝集剤の凝集作用により、スラリー状の生コンクリートを造粒化するようにしたものである。
これにより、放置すれば、硬化してコンクリート塊になる未使用生コンクリートを、粒状の再生材として再資源化することができる。
【0016】
ここで、高分子凝集剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性のいずれの高分子凝集剤を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができるが、特に、未使用生コンクリートに対する高分子凝集剤の適切な添加量の設定を容易に行うことができる点で、両性高分子凝集剤を好適に用いることができる。
また、その形態(固体、液体等)には制約はないが、未使用生コンクリートに対する高分子凝集剤の分散性が良好な点で、液体の高分子凝集剤を好適に用いることができる。
【0017】
両性高分子凝集剤は、具体的には、重合比が、アニオン基が30mol%~45mol%の範囲にあり、より望ましくは、35mol%~42mol%であり、カチオン基が0.1mol%~4.0mol%の範囲にあり、より望ましくは、0.1mol%~2.0mol%であり、残りがノニオン基でランダム共重合してなるものである。
また、分子量が、1000万以上、より具体的には、1000万~2200万の範囲にあり、より望ましくは、1800万~2000万の範囲にあるものである。
【0018】
また、アニオン性高分子凝集剤としては、以下の(A)~(B)の物質を、それぞれ単独又は複数を混合したものを用いることができる。
(A)ポリカルボン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体)
(B)ポリスルホン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体)
ここで、アニオン性高分子凝集剤の重量平均分子量は、1000万~2500万、好ましくは、1300万~2200万で、アニオン性単量体は、25~100モル%である。重量平均分子量が1000万より低かったり、2500万より高かったりすると、安定的な構造体からなる造粒体を得ることが困難となる。
【0019】
この場合において、(A)ポリカルボン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)のポリカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、等を挙げることができる。
また、(B)ポリスルホン酸塩系物質(アクリルアミドとの共重合体を含む)のポリスルホン酸としては、アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等を挙げることができる。
【0020】
ところで、未使用生コンクリートの処理に、高分子凝集剤を用いた場合、高分子凝集剤が、サブミクロンレベルのフロックを形成し、これらが吸着することで、フロック同士の隙間の架橋を促進させ、これにより、粒子が互いに近づくと、凝集のエネルギ障壁が減少するためファンデルワールス力の有効範囲が広がり、緩やかな塊としてのフロックが形成され、撹拌することによって、骨材を核として成長し造粒されて、団子状の造粒体が形成される。
このとき、未使用生コンクリート中の水は、高分子凝集剤の分子間に取り込まれるが、この水は強く捕らえられていて、圧力をかけても離脱することはなく、その一方で、保水性が低く、乾燥しやすいため、吸水性高分子重合体を用いた場合と比較して、強度のある安定的な構造体からなる造粒体を得ることができる。
【0021】
ここで、未使用生コンクリートに高分子凝集剤を過剰に添加した場合、完全な造粒体が形成されることなく、再泥化を起こすことから、未使用生コンクリートに対する高分子凝集剤の適切な添加量の設定が必要である。
【0022】
以下、本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法を、実証試験に基づいて説明する。
【0023】
本実証試験では、高分子凝集剤として、液体状の両性高分子凝集剤及び液体状のアニオン性高分子凝集剤を用いて、以下の内容で、未使用生コンクリートの改質を行った。
【0024】
[試験条件]
・使用ミキサー:傾胴ミキサー50L
・練り混ぜ量:20L
・撹拌時間:180秒
・配合:21-21-20N(21-18-20Nの加水後)(配合割合の詳細を表1に示す。)
・液体状の両性高分子凝集剤:重合比がアニオン基30mol%~45mol%の範囲において、カチオン基0.1mol%~4mol%の範囲であって、分子量が1000万以上のアニオンリッチ両性高分子凝集剤(剤形:エマルション)
・液体状のアニオン性高分子凝集剤:重量平均分子量が1600万~2200万の範囲で、アニオン性単量体が25~100モル%のアニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤(剤形:エマルション)
【0025】
【表1】
【0026】
[確認項目]
・撹拌開始から反応完了までの時間
・改質直後の分離性(粗骨材に付着する微粒子、造粒状態を確認)
・固化後の粉砕性、分離性(改質後、厚さ10cmのテストピースを作成し、1日経過後にハンマーを20回落下させ粉砕の容易性、固化後の分離性を確認)
・篩い分け(粗骨材の最大寸法が20mmであるため(再生クラッシャランの粒度範囲の規格が篩通過率20mm以下(RC-20)となるため、本試験判断基準(造粒化基準)として、完全乾燥後(高分子凝集剤及び必要に応じて含有させる分散剤を添加、混合してから48時間後)に解した材料の20mm通過率に基づいて評価した。)、表2に示す、RC-20の基準値に従い行う。〇:一致、△:80%一致、×:80%未満)
【0027】
【表2】
【0028】
実証試験の結果を、表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
表3の試験結果により、液体状の両性高分子凝集剤(単独)や、この液体状の両性高分子凝集剤に液体状のアニオン性高分子凝集剤を添加したしたもの(実施例)は、液体状のアニオン性高分子凝集剤(単独)と比較して、未使用生コンクリートの処理を短時間で、かつ、添加量を増やしても再泥化を起こすことがなく、未使用生コンクリートに対する高
分子凝集剤の適切な添加量の設定を容易に行うことができることを確認した。
【0031】
以上、本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法について、その実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の未使用生コンクリートを用いた再生材の製造方法は、未使用生コンクリートを、処理コストをかけることなく、任意の場所で、再資源化することでき、かつ、安定的な構造体からなる造粒体を得ることができる、従来の未使用生コンクリートの処理にあった多くの問題点を一挙に解消することができることから、未使用生コンクリート、具体的には、残コンや戻りコンのほか、生コンクリート製造工場で製造され、出荷されずに未使用となった生コンクリートの有効利用に好適に供することができる。