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特許7269592新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法
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  • 特許-新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230427BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 130
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022506944
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 CN2021109973
(87)【国際公開番号】W WO2022134596
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】202011541075.2
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522036543
【氏名又は名称】南京郵電大学
(73)【特許権者】
【識別番号】521530532
【氏名又は名称】国网電力科学研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】STATE GRID ELECTRIC POWER RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.19,Chengxin Avenue,Jiangning District,Nanjing,Jiangsu 211106,China
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】竇 春霞
(72)【発明者】
【氏名】胡 亮
(72)【発明者】
【氏名】岳 東
(72)【発明者】
【氏名】張 智俊
(72)【発明者】
【氏名】丁 孝華
(72)【発明者】
【氏名】李 延満
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211512(JP,A)
【文献】特開2004-242452(JP,A)
【文献】特開平09-327128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め構築されたDGランダム出力モデル及び負荷ランダムモデルをサンプリングして、新エネルギー及び負荷のランダム出力データを取得し、ランダム出力データに基づいてランダム出力行列を決定し、ランダム出力行列を配列して、各ランダム変数サンプリング値の相関性が最小になる傾向の配列行列を得て、
前記配列行列内のデータを、予め構築されたノードの脆弱性指標評価システムモデルに入力して、ノードの総合脆弱性指標を得、ここで、前記予め構築されたノードの脆弱性指標評価システムモデルは、アクティブ配電網に固有のトポロジー構造とDGの不確定性を総合的に考慮し、且つノードの故障する確率及びノードの運転が停止した後、ネットワークトポロジー構造と電力潮流の変化によりシステムが受ける影響も配慮した計算モデルであり、そして
ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法を用いて、ノードの総合脆弱性指標に基づいて脆弱なノードを同定する、
ことを特徴とする、新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【請求項2】
前記予め構築されたノードの脆弱性指標評価システムモデルは、構造脆弱性指標計算モデル、状態脆弱性指標計算モデル及び指標重み計算モデルを含み、
前記構造脆弱性指標計算モデルは、ネットワーク凝集度、ネットワークパフォーマンスの変化率及びノードの電気的中間数を計算するように構成され、
前記状態脆弱性指標計算モデルは、改良された潮流衝撃エントロピー及び改良された最小特異値変化率を計算するように構成され、
前記指標重み計算モデルは、ネットワーク凝集度、ネットワークパフォーマンスの変化率、ノードの電気的中間数、改良された潮流衝撃エントロピー及び改良された最小特異値変化率の重みを計算するように構成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【請求項3】
前記ネットワーク凝集度は次式により求められ、
【数1】

式中、a(k)はノード縮約法によりノードkを縮約した後のネットワークにおける平均最短電気距離であり、n′は縮約した後のネットワークにおけるノードの数であり、a(k)は、
【数2】

と定義され、式中、dijは縮約した後のネットワークにおける任意の2つのノードiとノードjの間の最短電気距離であり、Vはネットワークにおける全てのノードの集合を表し、
前記ネットワークパフォーマンスの変化率は次式により求められ、
c(k)=(C-c(k))/C
式中、c(k)はノードkが故障する前後のネットワークパフォーマンスの変化率であり、C(k)はノードkが故障した後のネットワークパフォーマンスであり、Cはネットワークのエネルギー効率であり、
【数3】

と定義され、式中、GとDはそれぞれ、発電機と負荷ノードの集合であり、NとNはそれぞれ、発電機と負荷ノードの数であり、
【数4】

は発電機負荷ノード対(i′,j′)のうち有効電力の小さい値であり、PGi′は発電機ノードi′の有効電力であり、PDi′は負荷ノードj′の有効電力であり、
前記ノードの電気的中間数は次式により求められ、
【数5】

式中、e(k)はノードkの電気的中間数であり、
【数6】

は発電機負荷ノード対(i′,j′)に単位電力を注入した場合の、分岐路l上の潮流積載量であり、E(k)は発電機負荷ノード対(i′,j′)に単位電力を注入した時のノードkの潮流変化量であり、Ωはノードkに直結する線路の集合である、
ことを特徴とする、請求項2に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【請求項4】
前記改良された潮流衝撃エントロピーは次式により求められ、
l(k)=f(k)g(k)
式中、l(k)は改良された潮流衝撃エントロピーであり、f(k)はノードの故障リスク因子であり、g(k)はノードkの潮流衝撃エントロピーであり、
f(k)=eαF(k)と定義され、
式中、αはリスク重み付け係数であり、F(k)はノードkの電圧が限界を越える確率であり、
【数7】

と定義され、式中、
【数8】

はノードkの電圧が上限を上回る回数であり、
【数9】

はノードkの電圧が下限を下回る回数であり、Nはサンプリングの総回数であり、g(k)は、
【数10】

と定義され、式中、G(k)はノードkの運転が停止した後に線路jに与えられる潮流衝撃の比率であり、Mはシステム中の分岐路の総数であり、G(k)は、
【数11】

と定義され、式中、△P(k)はノードkが故障により運転停止した後に線路jに与えられる潮流衝撃量であり、
【数12】

と定義され、式中、
【数13】

はノードkが故障した後の線路jの現在の潮流であり、
【数14】

は線路jの初期潮流であり、
前記改良された最小特異値変化率は次式により求められ、
o(k)=f(k)h(k)
式中、o(k)は改良された最小特異値変化率であり、h(k)は最小特異値変化率であり、
【数15】

と定義され、式中、
【数16】

はノードkが除去される前のシステム潮流ヤコビ行列の最小特異値であり、
【数17】

はノードkが除去された後のシステム潮流ヤコビ行列の最小特異値である、
ことを特徴とする、請求項2に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【請求項5】
前記指標重み計算モデルは、
各ノードのネットワーク凝集度、ネットワークパフォーマンスの変化率、ノードの電気的中間数、改良された潮流衝撃エントロピーをスタックオートエンコーダニューラルネットワークに入力して各指標の重みを決定する計算プロセスである、
ことを特徴とする、請求項2に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【請求項6】
ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法を用いて前記各ノードの総合脆弱性指標に基づいて脆弱なノードを同定するプロセスは、
各ノードの総合脆弱性指標の値に基づいて各ノードの総合脆弱性指標の具体的な分布を取得し、等確率の原理に基づいて各ノードの総合脆弱性指標の上限値、期待値及び下限値を計算し、上限値、下限値及び期待値共同で各ノードの総合脆弱性指標の値の区間を構成し、区間の形式で示された総合脆弱性指標を得るステップと、
ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法によって、区間の形式で示された総合脆弱性指標を順序付けして、脆弱なノードを同定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【請求項7】
ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法によって、区間の形式で示された総合脆弱性指標を順序付けし、脆弱なノードを同定するプロセスは、
ノードiの総合脆弱性指標の区間数を
【数18】

とし、ノードjの総合脆弱性指標の区間数を
【数19】

とするステップであって、
【数20】

はノードiの総合脆弱性指標の下限値であり、
【数21】

はノードiの期待値であり、
【数22】

はノードiの上限値であり、
【数23】

はノードjの総合脆弱性指標の下限値であり、
【数24】

はノードjの期待値であり、
【数25】

はノードjの上限値であるステップと、
【数26】

と、L(a),L(a),T(a),T(a)を定義し、これによりaがaより大きい確率は、
【数27】

と表され、さらにcij=P(a>a)と定義するステップと、
【数28】

となるようにブール行列を構築するステップであって、Eは区間数a,a,...,aの順序付け行列であり、eijは、
【数29】

と定義されるステップと、
【数30】

とし、順序付けベクトルλ=(λ,λ,...λ)を得るステップであって、λはノードiの脆弱性レベルの順序付け量の値であるステップと、
λの大きさに応じて区間数を順序付けし、各ノードの脆弱性レベルを決定して、脆弱なノードを同定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法に関し、アクティブ配電網における脆弱なノードの同定の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、国内外の電力システムにおいて大規模停電事故が多発し、多大な経済的損失を招いている。2003年、アメリカとカナダで起こった大停電や2008年、中国南方地域の着氷災害は、いずれも広範囲、長時間の停電をもたらし、2018年3月21日、ブラジルの配電網においてブレーカーの過負荷保護による連鎖的なトラブルが発生して、配電網の北部と北東部の14州で大規模な停電を引き起こした。これらの停電事故の発生は電力従業者からの高度な重視を引き起こしており、電力システムにおける重要設備のリスクをどのように同定するかは、大停電の発生を減少させる重要な研究内容となっている。ノードは配電網におけるエネルギー伝送の出発点と重要な集合点であり、一部の脆弱なノードの故障による運転停止が配電網事故の広がりを助長する事例は多く見られた。配電網中の脆弱なノードの同定は、システムの現在の安全レベルの評価に役立つほか、安全レベルの変化傾向の把握にもつながり、連鎖故障の予防に重要な意義を持つ。
【0003】
一方、風力発電や太陽エネルギー等の新エネルギーは、配電網エネルギーに占める割合が日増しに高まっている。しかし、新エネルギー電源に特有のランダム性と変動性のため、新エネルギー発電の出力が変動すると、配電網の潮流もそれに伴って変化するが、配電網の脆弱なノードの同定には、潮流の結果を基にする必要がある場合が多いので、新エネルギーが接続された配電網において、いかにして配電網中の脆弱なノードを正確で迅速に同定するかは特に切実且つ重要な課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術の欠点を克服し、新エネルギーが接続された配電網において、配電網における脆弱なノードを正確で迅速に同定し、アクティブ配電網の安全安定運転を確保することができるように、新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法を提供し、前記方法は、
予め構築されたDGランダム出力モデル及び負荷ランダムモデルをサンプリングして、新エネルギー及び負荷のランダム出力データを取得し、ランダム出力データに基づいてランダム出力行列を決定し、ランダム出力行列を配列して、各ランダム変数サンプリング値の相関性が最小になる傾向の配列行列を得て、
前記配列行列内のデータを、予め構築されたノードの脆弱性指標評価システムモデルに入力して、ノードの総合脆弱性指標を得、ここで、前記予め構築されたノードの脆弱性指標評価システムモデルは、アクティブ配電網に固有のトポロジー構造とDGの不確定性を総合的に考慮し、且つノードの故障する確率及びノードの運転が停止した後、ネットワークトポロジー構造と電力潮流の変化によりシステムが受ける影響も配慮した計算モデルであり、そして
ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法を用いて、ノードの総合脆弱性指標に基づいて脆弱なノードを同定する。
【0006】
さらに、前記予め構築されたノードの脆弱性指標評価システムモデルは、構造脆弱性指標計算モデル、状態脆弱性指標計算モデル及び指標重み計算モデルを含み、
前記構造脆弱性指標計算モデルは、ネットワーク凝集度、ネットワークパフォーマンスの変化率及びノードの電気的中間数を計算するように構成され、
前記状態脆弱性指標計算モデルは、改良された潮流衝撃エントロピー及び改良された最小特異値変化率を計算するように構成され、
前記指標重み計算モデルは、ネットワーク凝集度、ネットワークパフォーマンスの変化率、ノードの電気的中間数、改良された潮流衝撃エントロピー及び改良された最小特異値変化率の重みを計算するように構成される。
【0007】
さらに、前記ネットワーク凝集度は次式により求められ、
【数1】

式中、a(k)はノード縮約法によりノードkを縮約した後のネットワークにおける平均最短電気距離であり、n′は縮約した後のネットワークにおけるノードの数であり、a(k)は、
【数2】

と定義され、 式中、dijは縮約した後のネットワークにおける任意の2つのノードiとノードjの間の最短電気距離であり、Vはネットワークにおける全てのノードの集合を表し、
前記ネットワークパフォーマンスの変化率は次式により求められ、
c(k)=(C-c(k))/C
式中、c(k)はノードkが故障する前後のネットワークパフォーマンスの変化率であり、C(k)はノードkが故障した後のネットワークパフォーマンスであり、Cはネットワークのエネルギー効率であり、
【数3】

と定義され、式中、GとDはそれぞれ、発電機と負荷ノードの集合であり、NとNはそれぞれ、発電機と負荷ノードの数であり、
【数4】

は発電機負荷ノード対(i′,j′)のうち有効電力の小さい値であり、PGi′は発電機ノードi′の有効電力であり、PDi′は負荷ノードj′の有効電力であり、
前記ノードの電気的中間数は次式により求められ、
【数5】

式中、e(k)はノードkの電気的中間数であり、
【数6】

は発電機負荷ノード対(i′,j′)に単位電力を注入した場合の、分岐路l上の潮流積載量であり、E(k)は発電機負荷ノード対(i′,j′)に単位電力を注入した時のノードkの潮流変化量であり、Ωはノードkに直結する線路の集合である。
【0008】
さらに、前記改良された潮流衝撃エントロピーは次式により求められ、
l(k)=f(k)g(k)
式中、l(k)は改良された潮流衝撃エントロピーであり、f(k)はノードの故障リスク因子であり、g(k)はノードkの潮流衝撃エントロピーであり、f(k)は、
f(k)=eαF(k)と定義され、
式中、αはリスク重み付け係数であり、F(k)はノードkの電圧が限界を越える確率であり、
【数7】

と定義され、式中、
【数8】

はノードkの電圧が上限を上回る回数であり、
【数9】

はノードkの電圧が下限を下回る回数であり、Nはサンプリングの総回数であり、g(k)は、
【数10】

と定義され、式中、G(k)はノードkの運転が停止した後に線路jに与えられる潮流衝撃の比率であり、Mはシステム中の分岐路の総数であり、G(k)は、
【数11】

と定義され、式中、△P(k)は、ノードkが故障により運転停止した後に線路jに与えられる潮流衝撃量であり、
【数12】

と定義され、式中、
【数13】

はノードkが故障した後の線路jの現在の潮流であり、
【数14】

は線路jの初期潮流であり、
前記改良された最小特異値変化率は次式により求められ、
o(k)=f(k)h(k)
式中、o(k)は改良された最小特異値変化率であり、h(k)は最小特異値変化率であり、
【数15】

と定義され、式中、
【数16】

はノードkが除去される前のシステム潮流ヤコビ行列の最小特異値であり、
【数17】

はノードkが除去された後のシステム潮流ヤコビ行列の最小特異値である。
【0009】
さらに、前記指標重み計算モデルは、
各ノードのネットワーク凝集度、ネットワークパフォーマンスの変化率、ノードの電気的中間数、改良された潮流衝撃エントロピーをスタックオートエンコーダニューラルネットワークに入力して各指標の重みを決定する計算プロセスである。
【0010】
さらに、ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法を用いて前記各ノードの総合脆弱性指標に基づいて脆弱なノードを同定するプロセスは、
各ノードの総合脆弱性指標の値に基づいて各ノードの総合脆弱性指標の具体的な分布を取得し、等確率の原理に基づいて各ノードの総合脆弱性指標の上限値、期待値及び下限値を計算し、上限値、下限値及び期待値共同で各ノードの総合脆弱性指標の値の範囲を構成し、区間の形式で示された総合脆弱性指標を得るステップと、
ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法によって、区間の形式で示された総合脆弱性指標を順序付けして、脆弱なノードを同定するステップと、
を含む。
【0011】
さらに、ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法によって、区間の形式で示された総合脆弱性指標を順序付けして、脆弱なノードを同定するプロセスは、
ノードiの総合脆弱性指標の区間数を
【数18】

とし、ノードjの総合脆弱性指標の区間数を
【数19】

とするステップであって、
【数20】

はノードiの総合脆弱性指標の下限値であり、
【数21】

はノードiの期待値であり、
【数22】

はノードiの上限値であり、
【数23】

はノードjの総合脆弱性指標の下限値であり、
【数24】

はノードjの期待値であり、
【数25】

はノードjの上限値であるステップと、
【数26】

と、L(a),L(a),T(a),T(a)を定義し、これによりaがaより大きい確率は
【数27】

と表され、さらにcij=P(a>a)と定義するステップと、
【数28】

となるようにブール行列を構築するステップであって、Eは区間数a,a,...,aの順序付け行列であり、eijは、
【数29】

と定義されるステップと、
【数30】

とし、順序付けベクトルλ=(λ,λ,...λ)を得るステップであって、λはノードiの脆弱性レベルの順序付け量の値であるステップと、
λの大きさに応じて区間数を順序付けし、各ノードの脆弱性レベルを決定して、脆弱なノードを同定するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以下の有益な効果を達成する。
本発明は、配電網に接続された新エネルギーを考慮に入れながら、配電網における脆弱なノードを正確で迅速に同定し、配電網の脆弱性を効果的に評価することができ、配電網オペレーターが配電網の安全状況を包括的且つ深く把握し、脆弱性に起因するリスクを除去又は緩和することに役に立つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例の全体フローチャートである。
図2】実施例により提供される新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法の概略フローチャートである。
図3】実施例により提供されるアクティブ配電網におけるノードの総合脆弱性評価指標システムである。
図4】実施例により提供される太陽光発電が接続されたIEEE39ノードシステムの配線図である。
図5】実施例で計算される配電網の総合脆弱性指標の値の上限値、期待値及び下限値である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、図面を参照しながら本発明をさらに説明する。以下の実施例は、本発明の技術的解決手段をより明確に説明するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0015】
図1-3に示すように、新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法は、以下のステップを含む。
ステップ1で、DG(分散型電源)ランダム出力モデル及び負荷ランダムモデルを構築する。
ステップ2で、アクティブ配電網に固有のトポロジー構造とDGの不確定性を総合的に考慮するだけでなく、ノードの故障する確率及びノードの運転が停止した後、ネットワークトポロジー構造と電力潮流の変化によりシステムが受ける影響にも配慮して、ノード脆弱性指標評価システムを構築する。
ステップ3で、スタックオートエンコーダニューラルネットワークを用いて指標の重みを求め、ノードの総合脆弱性指標を確立する。
ステップ4で、ラテン超立方体サンプリングに基づく方法を用いてノードの総合脆弱性指標を計算し、ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法を用いて脆弱なノードを同定する。
【0016】
前記ステップ1は以下の方法で達成される。
【0017】
1.1 光起電力ランダム出力モデル
一般に、照度はBeta分布するものと考えられ、その確率密度関数は以下のとおりである。
【数31】

式中、Eは照度を表し、Emaxは一定時間内の最大照度であり、k′、c′はBeta分布の形状パラメータである。
【0018】
太陽光発電出力PVと照度Eの関係は以下のとおりである。
【数32】

式中、Aは太陽光発電正方アレイの面積であり、ηは光電変換効率である。
【0019】
1.2 負荷ランダムモデル
負荷ランダムモデルについては、大量の過去の実データに対する分析から、正規分布モデルはそのランダムな変動性を近似的にシミュレーションできることがわかった。
【0020】
負荷の有効電力と無効電力の確率密度関数はそれぞれ以下のとおりである。
【数33】

式中、μ、μはそれぞれ、負荷の有効電力、無効電力の平均値であり、σ、σはそれぞれ、対応するバリアンスである。
【0021】
前記ステップ2は以下の方法で達成される。
【0022】
2.1 ノードの構造脆弱性指標の構築
システム構造の脆弱性とは、新エネルギーのランダム性と変動性による影響を考慮に入れた上での、システム自身の構成構造が変化した後にシステムの完全性を維持する能力を指す。従って、構造の脆弱性指標は主に電力ネットワークのトポロジー構造及び電気的特性を考慮し、複雑ネットワーク分析法に基づいて配電網内で肝心な位置にある重要なノードを選別するものであり、ノードは配電網の構造にとって重要であるほど、そして影響が大きいほど、脆弱性が高い。
【0023】
2.1.1 ネットワーク凝集度
ノードのネットワーク凝集度指標は、ノードを除去した後にネットワーク全体の接続性がどれだけ破壊されるかを測定した上に、ノードが切断された後の、システムのトポロジー構造への破壊性の強さを判断することによって、ノードの重要性を判断するものである。
【数34】

式中、a(k)はノード縮約法によりノードkを縮約した後のネットワークにおける平均最短電気距離であり、dijは縮約した後のネットワークにおける任意の2つのノードiとノードjの間の最短電気距離であり、即ち、ノードiとノードjとの間の電力伝送路径上で送電線路のインピーダンス値の和は最小であり、n′は縮約した後のネットワークにおけるノードの数である。
【0024】
ネットワーク凝集度は次式で求められる。
【数35】

式中、b(k)はノードkのネットワーク凝集度である。
【0025】
ネットワーク凝集度は該ノードがネットワークの中心に位置する度合い及びネットワークの接続を維持する能力を表す。配電網におけるノードのネットワーク凝集度が大きいほど、該ノードが重要であることを示している。
【0026】
2.1.2 ネットワークパフォーマンスの変化率
配電網のネットワークパフォーマンスは、ネットワークのトポロジー構造を反映できるとともに、配電網の電気的特性も配慮できることが求められるため、以下のように定義される。
【数36】

式中、Cはネットワークのエネルギー効率を表し、GとDはそれぞれ、発電機と負荷ノードの集合である。NとNはそれぞれ、発電機と負荷ノードの数であり、
【数37】

は、発電機負荷ノード対(i′,j′)のうち有効電力の小さい値であり、ノード対(i′,j′)間で伝送できる最大電力を表す。PGi′は発電機ノードi′の有効電力であり、PDi′は負荷ノードj′の有効電力である。
【0027】
電力ネットワークの接続性は各ノードから影響を受け、重要なノードが失われると、その接続性及びネットワークパフォーマンスが変化する。そのため、ノードkが除去される前後のネットワークパフォーマンスの変化率を定義してノードの重要度を測定することができ、即ち
c(k)=(C-c(k))/C (8)
となり、式中、c(k)はノードkが故障する前後のネットワークパフォーマンスの変化率であり、C(k)はノードkが故障した後のネットワークパフォーマンスである。
【0028】
ノードのネットワークパフォーマンスの変化率が大きいほど、該ノードが故障した後に配電網の電力伝送に与える影響が大きく、該ノードの配電網における重要度も高いことを示している。
【0029】
2.1.3 ノードの電気的中間数
ノードの電気的中間数は、配電網のトポロジー構造と電気的パラメータを有機的に結合し、システムの電気的特性を無視した従来の中間数の欠陥を補い、配電網の運転状況に一層合致しており、以下のように定義される。
【数38】

式中、e(k)はノードkの電気的中間数であり、
【数39】

は電力伝送分布係数であり、即ち、発電機負荷ノード対(i′,j′)に単位電力を注入した場合の、分岐路l上の潮流積載量である。E(k)は発電機負荷ノード対(i′,j′)に単位電力を注入した時のノードkの潮流変化量であり、Ωはノードkに直結する線路の集合である。ノードの電気的中間数が大きいほど、該ノードの重要性が高い。
【0030】
2.2 ノードの状態脆弱性指標の構築
ノードの状態脆弱性指標は、配電網の運転状態から、故障後の電気量オフセット度合いを考察し、配電網が干渉又は故障に耐える能力を特徴付けるものである。
【0031】
2.2.1 ノードの故障リスク因子
各ノードの電圧が限界を越えるリスクの確率は、ラテン超立方体サンプリングに基づく確率潮流計算法によって計算することができ、
【数40】

となり、
式中、F(k)はノードkの電圧が限界を越える確率であり、
【数41】

はノードkの電圧が上限を上回る回数であり、
【数42】

はノードkの電圧が下限を下回る回数であり、Nはサンプリングの総回数である。
【0032】
上式により計算された、ノードが限界を超える確率が大きいほど、該ノードはDG及び負荷が変動する時に故障しやすいことを示しているため、ノードの故障リスク因子を以下のように定義する。
f(k)=eαF(k) (11)
式中、αはリスク重み付け係数であり、α=2.56とする。
【0033】
2.2.2 ノードの潮流衝撃エントロピー
ノードkが故障により運転停止した後に線路jに与えられる潮流衝撃量を
【数43】

とし、式中、
【数44】

はノードkが故障した後の線路jの現在の潮流であり、
【数45】

は線路jの初期潮流である。
【0034】
この時、ノードkの運転が停止した後に線路jに与えられる潮流衝撃の比率は、
【数46】

となり、式中、Mはシステム中の分岐路の総数である。
【0035】
ノードkの潮流衝撃エントロピーは、エントロピー理論により得ることができ、
【数47】

となり、ノードが切断された後、潮流衝撃エントロピーが小さいほど、システムの潮流がいくつかの分岐路に集中的に分布し、過負荷の分岐路が発生しやすくて連鎖故障を引き起こし、システムの安全レベルが深刻に影響されやすいことを示している。
【0036】
2.2.3 ノードの最小特異値変化率
p個の独立ノードとq個のPVノードを持つ電力システムの場合、潮流方程式の極座標の形態は、
【数48】

となり、式中、P及びQはノードiに注入された有効電力及び無効電力であり、U及びUはノードiの電圧振幅であり、Gij及びBijはアドミタンス行列の要素であり、θijはノード間の位相角差であり、i=1,2,...p且つj=1,2,...pである。
【0037】
式(17)をテーラー級数展開して、ヤコビ行列Jを得て、それを特異値分解すると、
【数49】

が得られ、式中、J∈Pc×cであり、V及びUはいずれもc×cの直交行列であり、Λは特異値δ(i=1,2,...c)で構成される非負対角行列であり、vとuはそれぞれ、VとU中のδに対応する列ベクトルである。
【0038】
潮流ヤコビ行列Jの最小特異値δi,minはシステムの電圧安定性の相対的程度を特徴付けることができ、最小特異値が小さいほど、システムの電圧は不安定になり、逆に、システムの電圧は比較的安定している。そのため、ノードkが除去される前後の最小特異値の変化率は、
【数50】

と定義し、式中、
【数51】

はノードkが除去される前のシステム潮流ヤコビ行列の最小特異値であり、
【数52】

はノードkが除去された後のシステム潮流ヤコビ行列の最小特異値である。ノードの運転が停止した後、最小特異値の変化率が小さいほど、該ノードは重要である。
【0039】
2.2.4 ノードが切断される可能性と切断の結果を総合的に考慮して、改良された潮流衝撃エントロピー指標は、
l(k)=f(k)g(k) (18)
と定義し、
改良された最小特異値変化率指標は、
o(k)=f(k)h(k) (19)
と定義する。
【0040】
前記ステップ3は以下の方法で達成される。
【0041】
3.1 指標の重みの決定
各ノードの指標値をスタックオートエンコーダニューラルネットワークに入力して各指標の重みを決定する。
【0042】
3.2 ノードの総合脆弱性指標の確立
ステップ2で配電網のトポロジー構造に基づいて提案されたネットワーク凝集度指標、ネットワークパフォーマンスの変化率指標、ノードの電気的中間数指標、及びノードの運転が停止した後の配電網の状態に対して提案された、改良された潮流衝撃エントロピー指標と改良された最小特異値変化率指標を総合して、ノードkの総合脆弱性指標を
【数53】

と定義し、式中、ωは各指標の重みを表す。
【0043】
前記ステップ4は以下の方法で達成される。
【0044】
前記ステップ3で確立したノードの総合脆弱性指標は、確定的な方法で計算すると、確定的な指標計算値しか得られず、配電網の正常な運転において、新エネルギーの出力及び負荷によるシステムのランダムな変動の不確定性を反映することができない。そのため、新エネルギーの出力及び負荷の不確定性の影響を考慮に入れるためには、確率潮流の方法を用いてノードの総合脆弱性指標を計算する。ラテン超立方体サンプリング法は確率潮流を解くシミュレーション法として、その計算効率はモンテカルロサンプリング法より大幅に向上し、且つ出力ランダム変数の豊富な情報を提供することもでき、それにより、計算された総合脆弱性指標は統計的に、要求をよりよく満たしている。
【0045】
4.1 ラテン超サンプリング法
ラテン超立方体サンプリング法の主な考え方は、逆関数変換法に基づいている。該方法は下記サンプリングと配列の2つのステップに分けられる。(I)サンプリングのステップでは、サンプリングポイントがランダム分布領域を完全にカバーできるように、各入力されたランダム変数をサンプリングする。(II)配列のステップでは、各ランダム変数のサンプリング値の相関性が最小になる傾向にあるように、各ランダム変数のサンプリング値の配列順序を変える。
【0046】
4.1.1 サンプリング
解くべき問題にK個のランダム入力変数があり、X(k=1,2,...,K)がその中の任意のランダム入力変数であると仮定すると、その累積確率分布関数はY=F(X)と表すことができ、Xknが第k個のランダム変数の第n個のサンプリング値であるとすると、
【数54】

と表すことができ、式中、n=1,2,...,Nである。Nはサンプリングの総回数である。
【0047】
全てのランダム入力変数のサンプリングが終了した後、各ランダム変数のサンプリング値を行列の1行としてランダムに配列すると、全てのサンプリング値はK×Nのサンプリング行列を形成し、
【数55】

と表し、上記サンプリング行列内の要素がランダムに配列されているため、その各ランダム変数サンプリング値間の相関性はランダムで制御不能となる。そのため、サンプリング行列内の各ランダム変数間の相関性を配列によって低減することも必要になる。
【0048】
4.1.2 Cholesky分解に基づく順序付け方法
4.1.2.1 配列行列LkNを初期化し、配列行列LkNの各行はいずれも整数1,2,...,Nのランダムな配列で構成される。配列行列LkNは、K×Nの行列であり、その各行の要素値はサンプリング行列XkNの対応する行要素の配列位置を表す。
【0049】
4.1.2.2 配列行列LkNの各行間の相関係数行列ρを計算し、ρはK×Kの行列であり、
【数56】

と表すことができ、式中、ρijは配列行列LkNの第i行と第j行との間の相関係数である。ρijは下式により計算することができる。
【数57】

式中、Likは配列行列LkNの第i行第k列の要素の値であり、
【数58】

は配列行列LkNの第i行の要素の平均値である。
【0050】
4.1.2.3 相関係数行列ρが正定値対称行列であることを証明できるため、Cholesky分解法により分解して実数の非特異下三角行列Dを得ることができ、且つDD=ρを満たす。
【0051】
4.1.2.4 Dは非特異であるため、逆行列が存在し、元の配列行列LkNを結合すると、下式により新たな配列行列GkNを構築することができる。
kN=D-1kN(25)
【0052】
4.1.2.5 配列行列GkNの要素の大きい順でサンプリング行列XkN内の要素の配列位置を指示し、サンプリング行列XkN内の要素を再配列する。
【0053】
4.2 ステップ1で構築されたDGランダム出力モデル及び負荷ランダムモデルを基に、ラテン超立方体サンプリング法でランダムにサンプリングし、サンプリングの結果は、ランダム負荷及び再生可能エネルギーの有効電力であり、サンプリングの結果を式(17)の潮流方程式に持ち込んで潮流計算を行ってノードの電圧と分岐路潮流を求めることができ、最後にサンプリングの結果、ノードの電圧及び分岐路潮流に基づいて各ノードの総合脆弱性指標値を算出することができる。
【0054】
4.3 ステップ4.2のラテン超立方体サンプリング法により、所定のサンプリング規模内のノードの総合脆弱性指標値を得ることができ、さらに各ノードの総合脆弱性指標値の具体的な分布を得ることができ、等確率の原理に基づいて各ノードの総合脆弱性指標値の上限値、期待値及び下限値を算出することができる。上限値、期待値及び下限値は共同で各ノードの総合脆弱性指標値の値の範囲を構成し、それにより確定値の代わりに各ノードの脆弱性レベルを区間で反映する。
【0055】
4.4 不確定な場合の各ノードの脆弱性レベルを特徴付けるためには、求められる区間形式の総合脆弱性指標をブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法によって順序付けする必要がある。
【0056】
4.4.1 任意の2つの区間を設定して
【数59】

を2つの区間数として記し、
【数60】

とする。これにより、
【数61】

となる。
【0057】
4.4.2
【数62】

となるようにブール行列を構築し、Eを区間数a,a,...,aの順序付け行列と称し、ここで、
【数63】

となる。
【0058】
4.4.3
【数64】

とし、順序付けベクルλ=(λ,λ,...λ)を得る。
【0059】
4.4.4 λの大きさに応じて区間数を順序付けし、各ノードの脆弱性レベルを決定して、脆弱なノードを同定する。
【0060】
図4に示すように、本実施例は、標準的なIEEE39ノードシステムを用いてケース検証を行い、番号1-39は第1-39ノードを表し、ノード21に定格容量100MWの太陽光発電を接続する。照度はBeta分布に従い、形状パラメータはk′=0.2274、c′=1.2995となる。負荷は正規分布に従い、平均値はシステム負荷の定格電力とし、バリアンスは平均値の20%とする。
【0061】
ラテン超立方体サンプリングにより太陽光発電の電力と負荷の有効電力及び無効電力とからなる組を2000組サンプリングし、サンプリングの結果をそれぞれ配電網データに持ち込み、潮流計算を行う。ノード次数、ネットワークパフォーマンスの変化率、ネットワーク凝集度、改良された潮流衝撃エントロピー及び改良された最小特異値変化率という5つの指標を算出して、データをオートエンコーダニューラルネットワークに持ち込んで各指標の重み値を算出する。さらに、配電網の総合脆弱性指標値を算出する。
【0062】
ここで、算出された配電網の総合脆弱性指標値の上限値、期待値及び下限値は図5に示す。
【0063】
これに基づき、上限値、下限値及び期待値を共同で各ノードの総合脆弱性指標値の値の範囲を構成し、これを基礎としてブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法を用いて脆弱なノードを同定する。同定結果は下表に示す。
【0064】
ノードの脆弱性評価結果の比較
【表1】
【0065】
上表から分かるように、3つの評価方法の結果は高い一致性を有し、即ち、本実施例が提供する方法で得られた上位10位のノードのうち、上記3つの方法において一致するノードが6つあり、例えばノード4、16及び17である。これらのノードはいずれも配電網の肝心な位置にある重要な送電中枢であり、万一故障が発生して運転が停止すると、システムに大きな潮流の遷移が発生することがあり、線路への衝撃が極めて大きく、線路の過負荷を引き起こしやすく、ひいては配電網が自己組織化の臨界状態になり、大事故を引き起こすことになる。
【0066】
また、本実施例の方法は新エネルギーを接続した後の脆弱性に与えられる影響を考慮しており、新エネルギーを配電網に導入した後の不確定性による影響が近隣であるほど大きいという原則を反映しており、例えば21番ノードに新エネルギーが接続された後、その近隣の16、22番ノード及び後続に影響するノードは非常に脆弱になる。
【0067】
本実施例の方法は配電網の構造及び状態という2つの方面に基づいて科学的で全面的な脆弱性評価指標を確立し、配電網に接続された新エネルギーを考慮に入れながら、配電網における脆弱なノードを正確で迅速に同定し、配電網の脆弱性を効果的に評価することで、事故と安全リスクの発生確率を下げることができる。
【0068】
以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、指摘しておきたいのは、当業者にとって、本発明の技術原理から逸脱することなく、いくつかの改良や変形を行うことができ、これらの改良や変形も本発明の保護範囲とみなすべきである点である。
【0069】
(付記)
(付記1)
予め構築されたDGランダム出力モデル及び負荷ランダムモデルをサンプリングして、新エネルギー及び負荷のランダム出力データを取得し、ランダム出力データに基づいてランダム出力行列を決定し、ランダム出力行列を配列して、各ランダム変数サンプリング値の相関性が最小になる傾向の配列行列を得て、
前記配列行列内のデータを、予め構築されたノードの脆弱性指標評価システムモデルに入力して、ノードの総合脆弱性指標を得、ここで、前記予め構築されたノードの脆弱性指標評価システムモデルは、アクティブ配電網に固有のトポロジー構造とDGの不確定性を総合的に考慮し、且つノードの故障する確率及びノードの運転が停止した後、ネットワークトポロジー構造と電力潮流の変化によりシステムが受ける影響も配慮した計算モデルであり、そして
ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法を用いて、ノードの総合脆弱性指標に基づいて脆弱なノードを同定する、
ことを特徴とする、新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【0070】
(付記2)
前記予め構築されたノードの脆弱性指標評価システムモデルは、構造脆弱性指標計算モデル、状態脆弱性指標計算モデル及び指標重み計算モデルを含み、
前記構造脆弱性指標計算モデルは、ネットワーク凝集度、ネットワークパフォーマンスの変化率及びノードの電気的中間数を計算するように構成され、
前記状態脆弱性指標計算モデルは、改良された潮流衝撃エントロピー及び改良された最小特異値変化率を計算するように構成され、
前記指標重み計算モデルは、ネットワーク凝集度、ネットワークパフォーマンスの変化率、ノードの電気的中間数、改良された潮流衝撃エントロピー及び改良された最小特異値変化率の重みを計算するように構成される、
ことを特徴とする、付記1に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【0071】
(付記3)
前記ネットワーク凝集度は次式により求められ、
【数65】

式中、a(k)はノード縮約法によりノードkを縮約した後のネットワークにおける平均最短電気距離であり、n′は縮約した後のネットワークにおけるノードの数であり、a(k)は、
【数66】

と定義され、式中、dijは縮約した後のネットワークにおける任意の2つのノードiとノードjの間の最短電気距離であり、Vはネットワークにおける全てのノードの集合を表し、
前記ネットワークパフォーマンスの変化率は次式により求められ、
c(k)=(C-c(k))/C
式中、c(k)はノードkが故障する前後のネットワークパフォーマンスの変化率であり、C(k)はノードkが故障した後のネットワークパフォーマンスであり、Cはネットワークのエネルギー効率であり、
【数67】

と定義され、式中、GとDはそれぞれ、発電機と負荷ノードの集合であり、NとNはそれぞれ、発電機と負荷ノードの数であり、
【数68】

は発電機負荷ノード対(i′,j′)のうち有効電力の小さい値であり、PGi′は発電機ノードi′の有効電力であり、PDi′は負荷ノードj′の有効電力であり、 前記ノードの電気的中間数は次式により求められ、
【数69】

式中、e(k)はノードkの電気的中間数であり、
【数70】

は発電機負荷ノード対(i′,j′)に単位電力を注入した場合の、分岐路l上の潮流積載量であり、E(k)は発電機負荷ノード対(i′,j′)に単位電力を注入した時のノードkの潮流変化量であり、Ωはノードkに直結する線路の集合である、
ことを特徴とする、付記2に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【0072】
(付記4)
前記改良された潮流衝撃エントロピーは次式により求められ、
l(k)=f(k)g(k)
式中、l(k)は改良された潮流衝撃エントロピーであり、f(k)はノードの故障リスク因子であり、g(k)はノードkの潮流衝撃エントロピーであり、
f(k)=eαF(k)と定義され、
式中、αはリスク重み付け係数であり、F(k)はノードkの電圧が限界を越える確率であり、
【数71】

と定義され、式中、
【数72】

はノードkの電圧が上限を上回る回数であり、
【数73】

はノードkの電圧が下限を下回る回数であり、Nはサンプリングの総回数であり、g(k)は、
【数74】

と定義され、式中、G(k)はノードkの運転が停止した後に線路jに与えられる潮流衝撃の比率であり、Mはシステム中の分岐路の総数であり、G(k)は、
【数75】

と定義され、式中、△P(k)は、ノードkが故障により運転停止した後に線路jに与えられる潮流衝撃量であり、
【数76】

と定義され、式中、
【数77】

はノードkが故障した後の線路jの現在の潮流であり、
【数78】

は線路jの初期潮流であり、
前記改良された最小特異値変化率は次式により求められ、
o(k)=f(k)h(k)
式中、o(k)は改良された最小特異値変化率であり、h(k)は最小特異値変化率であり、
【数79】

と定義され、式中、
【数80】

はノードkが除去される前のシステム潮流ヤコビ行列の最小特異値であり、
【数81】

はノードkが除去された後のシステム潮流ヤコビ行列の最小特異値である、
ことを特徴とする、付記2に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【0073】
(付記5)
前記指標重み計算モデルは、
各ノードのネットワーク凝集度、ネットワークパフォーマンスの変化率、ノードの電気的中間数、改良された潮流衝撃エントロピーをスタックオートエンコーダニューラルネットワークに入力して各指標の重みを決定する計算プロセスである、
ことを特徴とする、付記2に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【0074】
(付記6)
ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法を用いて前記各ノードの総合脆弱性指標に基づいて脆弱なノードを同定するプロセスは、
各ノードの総合脆弱性指標の値に基づいて各ノードの総合脆弱性指標の具体的な分布を取得し、等確率の原理に基づいて各ノードの総合脆弱性指標の上限値、期待値及び下限値を計算し、上限値、下限値及び期待値共同で各ノードの総合脆弱性指標の値の区間を構成し、区間の形式で示された総合脆弱性指標を得るステップと、
ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法によって、区間の形式で示された総合脆弱性指標を順序付けして、脆弱なノードを同定するステップと、
を含むことを特徴とする、付記1に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
【0075】
(付記7)
ブール行列に基づく3パラメータ区間数順序付け方法によって、区間の形式で示された総合脆弱性指標を順序付けし、脆弱なノードを同定するプロセスは、
ノードiの総合脆弱性指標の区間数を
【数82】

とし、ノードjの総合脆弱性指標の区間数を
【数83】

とするステップであって、
【数84】

はノードiの総合脆弱性指標の下限値であり、
【数85】

はノードiの期待値であり、
【数86】

はノードiの上限値であり、
【数87】

はノードjの総合脆弱性指標の下限値であり、
【数88】

はノードjの期待値であり、
【数89】

はノードjの上限値であるステップと、
【数90】

と、L(a),L(a),T(a),T(a)を定義し、これによりaがaより大きい確率は、
【数91】

と表され、さらにcij=P(a>a)と定義するステップと、
【数92】

となるようにブール行列を構築するステップであって、Eは区間数a,a,...,aの順序付け行列であり、eijは、
【数93】

と定義されるステップと、
【数94】

とし、順序付けベクトルλ=(λ,λ,...λ)を得るステップであって、λはノードiの脆弱性レベルの順序付け量の値であるステップと、
λの大きさに応じて区間数を順序付けし、各ノードの脆弱性レベルを決定して、脆弱なノードを同定するステップと、
を含むことを特徴とする、付記6に記載の新エネルギーによる影響を考慮に入れるアクティブ配電網における脆弱なノードの同定方法。
図1
図2
図3
図4
図5