(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
A61C 7/20 20060101AFI20230427BHJP
B21F 1/00 20060101ALI20230427BHJP
B21F 45/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A61C7/20
B21F1/00 A
B21F45/00 A
(21)【出願番号】P 2019004911
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505356446
【氏名又は名称】有限会社興国産業
(73)【特許権者】
【識別番号】502262654
【氏名又は名称】株式会社丸ヱム製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】391016185
【氏名又は名称】株式会社JM Ortho
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】玉井 修
(72)【発明者】
【氏名】玉井 哲快
(72)【発明者】
【氏名】田島 直訓
(72)【発明者】
【氏名】山中 茂
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕
(72)【発明者】
【氏名】大川本 広介
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-030135(JP,A)
【文献】特開2016-174849(JP,A)
【文献】米国特許第04818226(US,A)
【文献】特開2002-301533(JP,A)
【文献】特開平05-198717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0314891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/20
B21F 1/00
B21F 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形又は正多角形の断面形状を有する歯科用の線材を加工する加工装置であって、
前記線材を円弧状又は楕円状に湾曲させながら送り出す回転送り部と、
前記回転送り部によって送られてきた前記線材を、円弧状又は楕円状に湾曲させた状態で前記線材の送り出し方向と異なる方向に曲げ加工する曲げ加工部と、
を備え
、
前記曲げ加工部は、
前記線材の送り出し方向と異なる第1の向きに前記線材を曲げ加工する第1加工部と、
前記第1の向きと異なる第2の向きに前記線材を曲げ加工する第2加工部と、
を有し、
前記回転送り部は、
前記第1加工部による第1曲げ加工において、前記第1加工部の幅の0.1倍以上1.5倍以下のピッチで前記線材を送り出し、
前記第2加工部による第2曲げ加工において、前記第2加工部の幅の0.1倍以上1.5倍以下のピッチで前記線材を送り出す、加工装置。
【請求項2】
矩形又は正多角形の断面形状を有する歯科用の線材を加工する加工装置であって、
前記線材を円弧状又は楕円状に湾曲させながら送り出す回転送り部と、
前記回転送り部によって送られてきた前記線材を、円弧状又は楕円状に湾曲させた状態で前記線材の送り出し方向と異なる方向に曲げ加工する曲げ加工部と、
を備え、
前記曲げ加工部は、
前記線材の送り出し方向と異なる第1の向きに前記線材を曲げ加工する第1加工部と、
前記第1の向きと異なる第2の向きに前記線材を曲げ加工する第2加工部と、
を有し、
前記曲げ加工部において、前記第1加工部による第1曲げ加工と前記第2加工部による第2曲げ加工とを切り替えるとき、
前記回転送り部は、前記線材を前進又は後退させることによって、前記線材の曲げ加工の向きが切り替わる部分で、前記第1曲げ加工と前記第2曲げ加工とを重複させる、加工装置。
【請求項3】
前記第1加工部は、
前記第1の向きに突出する第1凸部を有する第1ベースと、
前記第1ベースの前記第1凸部に係合する第1凹部を有する第1ヘッドと、
を有し、
前記第1ベースの前記第1凸部と前記第1ヘッドの前記第1凹部との間に前記線材を挟むことによって、前記線材を前記第1の向きに曲げ加工し、
前記第2加工部は、
前記第2の向きに窪んだ第2凹部を有する第2ベースと、
前記第2ベースの前記第2凹部に係合する第2凸部を有する第2ヘッドと、
を有し、
前記第2ベースの前記第2凹部と前記第2ヘッドの前記第2凸部との間に前記線材を挟むことによって、前記線材を前記第2の向きに曲げ加工する、
請求項
1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記第1凸部及び前記第2凸部は、円弧状に突出した形状を有し、
前記第1凹部及び前記第2凹部は、円弧状に窪んだ形状を有する、
請求項3に記載の加工装置。
【請求項5】
前記線材は、円弧状に湾曲して成形されている、請求項1~
4のいずれか一項に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の矯正治療に用いられる歯科用の矯正器具として、歯科矯正用ワイヤーが用いられている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
歯科医師らは、非特許文献1のような歯科用の線材を手作業で加工することによって、歯列矯正のための歯科用矯正器具を作製している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】長谷川信 著「GUMMETALワイヤーによる歯の一括移動-その概念と臨床-」 東京臨床出版、2012年11月20日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、歯科用の線材を容易に加工することができる加工装置が求められている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、歯科用の線材を容易に加工することができる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一態様に係る加工装置は、
歯科用の線材を加工する加工装置であって、
前記線材を湾曲させながら送り出す回転送り部と、
前記回転送り部によって送られてきた前記線材を、前記線材の送り出し方向と異なる方向に曲げ加工する曲げ加工部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る加工装置によれば、歯科用の線材を容易に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る加工装置の一例の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1に係る加工装置の一例の一部を拡大した概略部分斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1に係る加工装置の一例の一部を拡大した概略部分斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態1に係る加工装置の一例の一部を拡大した概略部分斜視図である。
【
図5】
図5は、曲げ加工部の一例の概略構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態1に係る加工装置の一例の主要な構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態1に係る加工方法の一例のフローチャートである。
【
図8A】
図8Aは、歯科矯正用ワイヤーの一例の概略斜視図である。
【
図8B】
図8Bは、歯科矯正用ワイヤーの一例の概略正面図である。
【
図8C】
図8Cは、歯科矯正用ワイヤーの一例の概略側面図である。
【
図8D】
図8Dは、歯科矯正用ワイヤーの一例の概略上面図である。
【
図9】
図9は、
図8Aに示す歯科矯正用ワイヤーの複数の部分におけるそれぞれの断面形状の一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、歯科用の線材において曲げ加工部の動作を切り替える位置の一例を示す図である。
【
図11A】
図11Aは、歯科用の線材の第1線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、歯科用の線材の第1線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図11C】
図11Cは、歯科用の線材の第1線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図11D】
図11Dは、歯科用の線材の第1線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図11E】
図11Eは、歯科用の線材の第1線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、歯科用の線材の第2線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図12B】
図12Bは、歯科用の線材の第2線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図12C】
図12Cは、歯科用の線材の第2線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図12D】
図12Dは、歯科用の線材の第2線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図12E】
図12Eは、歯科用の線材の第2線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図12F】
図12Fは、歯科用の線材の第2線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図12G】
図12Gは、歯科用の線材の第2線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、歯科用の線材の第3線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図13B】
図13Bは、歯科用の線材の第3線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図13C】
図13Cは、歯科用の線材の第3線材部分における曲げ加工の工程の一例示す図である。
【
図13D】
図13Dは、歯科用の線材の第3線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図13E】
図13Eは、歯科用の線材の第3線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図13F】
図13Fは、歯科用の線材の第3線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図13G】
図13Gは、歯科用の線材の第3線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【
図13H】
図13Hは、歯科用の線材の第3線材部分における曲げ加工の工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
歯列矯正を行うための方法として、歯科用の線材を用いた方法が知られている。歯科用の線材を用いた歯列矯正においては、歯科医師が歯科用の線材を手作業で3次元的に加工することによって、患者に応じた歯科用矯正ワイヤーを作製している。
【0011】
歯科用矯正ワイヤーを用いた歯列矯正においては、ワイヤーの復元力を利用して歯列を矯正している。このため、歯科用矯正ワイヤーに加工される歯科用の線材の素材としては、例えば、β型Ti合金などの高い降伏応力と低い弾性係数をもつ復元力の大きい素材が挙げられる。
【0012】
しかしながら、高い降伏応力と低い弾性係数をもつ復元力の大きい高硬度の素材から成る歯科用の線材を手作業で3次元的に加工することは難しく、歯科医師にとって、多大な時間および労力を費やして歯科用の線材を加工することを余儀なくされている。
【0013】
また、手作業による加工では、加工にムラができてしまう場合があり、線材を滑らかな曲線に加工することが難しい。
【0014】
本発明者らは、鋭意研究したところ、歯科用の線材を湾曲させながら送り出し、湾曲させた線材を送り出し方向と異なる方向に曲げ加工することによって、歯科用の線材の3次元的な加工を容易に行うことができることを見出し、以下の発明に至った。
【0015】
本発明の第1態様の加工装置は、
歯科用の線材を加工する加工装置であって、
前記線材を湾曲させながら送り出す回転送り部と、
前記回転送り部によって送られてきた前記線材を、前記線材の送り出し方向と異なる方向に曲げ加工する曲げ加工部と、
を備える。
【0016】
本発明の第2態様の加工装置においては、
前記曲げ加工部は、
前記線材の送り出し方向と異なる第1の向きに前記線材を曲げ加工する第1加工部と、
前記第1の向きと異なる第2の向きに前記線材を曲げ加工する第2加工部と、
を有していてもよい。
【0017】
本発明の第3態様の加工装置においては、前記第1加工部は、
前記第1の向きに突出する第1凸部を有する第1ベースと、
前記第1ベースの前記第1凸部に係合する第1凹部を有する第1ヘッドと、
を有し、
前記第1ベースの前記第1凸部と前記第1ヘッドの前記第1凹部との間に前記線材を挟むことによって、前記線材を前記第1の向きに曲げ加工し、
前記第2加工部は、
前記第2の向きに窪んだ第2凹部を有する第2ベースと、
前記第2ベースの前記第2凹部に係合する第2凸部を有する第2ヘッドと、
を有し、
前記第2ベースの前記第2凹部と前記第2ヘッドの前記第2凸部との間に前記線材を挟むことによって、前記線材を前記第2の向きに曲げ加工してもよい。
【0018】
本発明の第4態様の加工装置においては、前記回転送り部は、
前記第1加工部による第1曲げ加工において、前記第1加工部の幅の0.1倍以上1.5倍以下のピッチで前記線材を送り出し、
前記第2加工部による第2曲げ加工において、前記第2加工部の幅の0.1倍以上1.5倍以下のピッチで前記線材を送り出してもよい。
【0019】
本発明の第5態様の加工装置においては、前記曲げ加工部において、前記第1加工部による第1曲げ加工と前記第2加工部による第2曲げ加工とを切り替えるとき、
前記回転送り部は、前記線材を前進又は後退させることによって、前記線材の曲げ加工の向きが切り替わる部分で、前記第1曲げ加工と前記第2曲げ加工とを重複させてもよい。
【0020】
本発明の第6態様の加工装置においては、前記線材は、長手方向を有する断面形状を有していてもよい。
【0021】
本発明の第7態様の加工装置においては、前記線材は、円弧状に湾曲して成形されていてもよい。
【0022】
以下、本開示の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
【0023】
(実施の形態1)
[全体構成]
本発明の実施の形態1に係る加工装置の一例について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る加工装置1の一例の概略斜視図である。
図2~4は、本発明の実施の形態1に係る加工装置1の一例の一部を拡大した概略部分斜視図である。図中のX,Y,Z方向は、それぞれ、加工装置1の幅方向、奥行き方向、高さ方向を示す。
図1~4に示すように、加工装置1は、線材2を曲げ加工することによって、線材2を3次元的に加工する装置である。
【0024】
線材2を3次元的に加工するとは、線材2をX,Y,Z方向に湾曲させた形状に加工することを意味する。例えば、3次元加工においては、線材2をX―Y平面で湾曲させつつ、Z方向に曲げ加工する。
【0025】
実施の形態1では、加工装置1は、回転送り部10、曲げ加工部20、線材保管部30、検出部40、切断部50、受け部60、駆動部70及び表示部80を備える。なお、これらの要素は、制御部によって制御される。以下、これらの要素について説明する。
【0026】
<回転送り部>
回転送り部10は、線材2を湾曲させながら送り出す。具体的には、回転送り部10は、線材2を円弧状に湾曲させながら送り出す。
図3に示すように、回転送り部10は、回転中心軸部11、フランジ部12、ガイド部13及びクランプヘッド14を有する。回転送り部10は、回転中心軸部11を回転中心として回転しながら、線材2を円弧状に湾曲させて送り出している。このため、線材2の送り出し方向は回転送り部10の回転方向D1となる。
【0027】
回転中心軸部11は、フランジ部12の中心を貫通して配置される。回転中心軸部11は、例えば、円柱状の部材である。回転中心軸部11は、例えば、モータに接続されており、モータによって回転することができる。また、回転中心軸部11は、フランジ部12の内部を上下方向に摺動可能に構成されている。
【0028】
フランジ部12は、回転中心軸部11と接続される。フランジ部12は、例えば、円板状の部材である。フランジ部12は、回転中心軸部11の回転によって、回転方向D1に回転する。
【0029】
ガイド部13は、フランジ部12の外周の一部に設けられている。ガイド部13は、線材2を曲げ加工部20へ案内するための溝が設けられている。ガイド部13の端部には、クランプヘッド14によって押圧されるクランプベース13aが設けられている。ガイド部13は、フランジ部12の回転によって、回転方向D1へ移動する。
【0030】
クランプヘッド14は、回転中心軸部11に接続されており、ガイド部13のクランプベース13aに押圧される部材である。クランプヘッド14は、例えば、逆L字状に形成されている。クランプヘッド14は、回転中心軸部11の上下方向への移動によって、上下方向に移動する。具体的には、回転中心軸部11が下方向に移動すると、クランプヘッド14が下方向へ移動し、ガイド部13のクランプベース13aに押圧される。回転中心軸部11が上方向に移動すると、クランプヘッド14が上方向へ移動し、ガイド部13のクランプベース13aから離れる。なお、本明細書では、クランプヘッド14とクランプベース13aとを、クランプ部15と称する場合がある。
【0031】
回転送り部10の動作について詳述する。回転送り部10においては、線材2がガイド部13に供給されると、回転中心軸部11が下方向に移動し、クランプヘッド14を下方向に移動させる。これにより、クランプヘッド14をガイド部13のクランプベース13aに押圧し、クランプヘッド14及びクランプベース13a(クランプ部15)によって線材2を保持する。具体的には、クランプヘッド14とクランプベース13aとによって、線材2を挟持する。次に、回転中心軸部11が回転することによって、フランジ部12が回転する。これにより、フランジ部12の外周に設けられたガイド部13が回転方向D1に移動する。このとき、クランプ部15で線材2が保持されているため、ガイド部13の移動により、線材2が回転方向D1へ向かって円弧状に湾曲されながら送り出される。これにより、線材2が曲げ加工部20に送られる。
【0032】
このように、回転送り部10は、線材2を直線状に送り出すのではなく、線材2を円弧状に湾曲させながら送り出している。実施の形態1では、回転送り部10は、所定のピッチで線材2を曲げ加工部20に送り出し、線材2が所定のピッチで送られる毎に曲げ加工部20で曲げ加工が行われている。
【0033】
<曲げ加工部>
曲げ加工部20は、回転送り部10によって送られてきた線材2を、線材2の送り出し方向(回転方向D1)とは異なる方向に曲げ加工する。
図4に示すように、曲げ加工部20は、線材2の送り出し方向(回転方向D1)と異なる第1の向きD11に線材2を曲げ加工する第1加工部21と、第1の向きD11と異なる第2の向きD12に線材2を曲げ加工する第2加工部22と、を有する。実施の形態1では、第1の向きD11及び第2の向き12は、線材2の送り出し方向(回転方向D1)に対して交差する方向である。例えば、第1の向きD11は上方向であり、第2の向きは下方向である。また、第2加工部22は、第1加工部21の後段に配置されている。
【0034】
図5は、曲げ加工部20の一例の概略構成を示す模式図である。
図5に示すように、第1加工部21は、第1の向きD11に突出する第1凸部23aを有する第1ベース23と、第1ベース23の第1凸部23aに係合する第1凹部24aを有する第1ヘッド24と、を有する。実施の形態1では、第1ベース23の第1凸部23aは、第1の向きD11にラウンド状に突出して形成されている。具体的には、第1凸部23aを正面方向から見たとき、第1凸部23aは円弧状に突出して形成されている。正面方向とは、回転送り部10の回転中心軸部11から曲げ加工部20に向かう方向である。第1ヘッド24の第1凹部24aは、第1凸部23aの形状に対応して形成されている。即ち、第1凹部24aは、第1の向きD11にラウンド状に窪んで形成されている。具体的には、第1凹部24aを正面方向から見たとき、第1凹部24aは円弧状に窪んで形成されている。
【0035】
第1加工部21は、第1ベース23の第1凸部23aと第1ヘッド24の第1凹部24aとの間に線材2を挟むことによって、線材2を第1の向きD11に曲げ加工している。実施の形態1では、第1ベース23を固定し、第1ヘッド24を上下方向D2に移動させることによって、第1ヘッド24を第1ベース23に押圧している。これにより、第1加工部21は、線材2を第1の向きD11に曲げ加工している。
【0036】
第2加工部22は、第2の向きD12に窪んだ第2凹部25aを有する第2ベース25と、第2ベース25の第2凹部25aに係合する第2凸部26aを有する第2ヘッド26と、を有する。実施の形態1では、第2ベース25の第2凹部25aは、第2の向きD12にラウンド状に窪んで形成されている。具体的には、第2凹部25aを正面方向から見たとき、第2凹部25aは円弧状に窪んで形成されている。第2ヘッド26の第2凸部26aは、第2凹部25aの形状に対応して形成されている。即ち、第2凸部26aは、第2の向きD12にラウンド状に突出して形成されている。具体的には、第2凸部26aを正面方向から見たとき、第2凸部26aは円弧状に突出して形成されている。
【0037】
第2加工部22は、第2ベース25の第2凹部25aと第2ヘッド26の第2凸部26aとの間に線材2を挟むことによって、線材2を第2の向きD12に曲げ加工している。実施の形態1では、第2ベース25を固定し、第2ヘッド26を上下方向D2に移動させることによって、第2ヘッド26を第2ベース25に押圧している。これにより、第2加工部22は、線材2を第2の向きD12に曲げ加工している。
【0038】
実施の形態1では、第1加工部21及び第2加工部22は、曲げ加工を行う際に押圧力を調整する機構を有している。例えば、ばねとねじを備える調整機構によって押圧力を調整してもよい。また、第1加工部21及び第2加工部22は、曲げ角度を調整する機構を有していてもよい。
【0039】
<線材保管部>
図1及び
図2に示すように、線材保管部30は、線材2を保管する。線材保管部30は、例えば、円柱状の部材で形成されている。線材保管部30は、線材2をラウンド状にして保管している。具体的には、線材2は、線材保管部30に巻かれて保管されている。線材保管部30に保管された線材2は、検出部40を通過して回転送り部10に供給される。
【0040】
<検出部>
図1~3に示すように、検出部40は、回転送り部10と線材保管部30との間に配置され、線材2の有無を検出する。実施の形態1では、線材2の有無を検出することによって、加工装置1の動作を制御する。このため、検出部40で検出された線材2の有無の情報は、制御部に送信される。
【0041】
<切断部>
図1~4に示すように、切断部50は、曲げ加工部20の後段に配置され、線材2を切断する。切断部50は、例えば、カッターで線材2を切断する。
【0042】
<受け部>
図1及び
図2に示すように、受け部60は、切断部50の後段に配置され、切断部50によって切断された線材2を受ける。受け部60は、例えば、円筒状の部材で構成されている。受け部60は、線材2を受けるときに切断部50の近傍まで移動し、それ以外のときは切断部50から離れて待避することができる。
【0043】
<駆動部>
図1に示すように、駆動部70は、回転送り部10、曲げ加工部20、切断部50及び受け部60を駆動する機構を有する。駆動部70は、例えば、回転送り部10を回転させるモータ、曲げ加工部20の第1加工部21及び第2加工部22を駆動するカム機構などを含む。
【0044】
<表示部>
図1に示すように、表示部80は、加工装置1の情報を出力する。加工装置1の情報とは、例えば、回転送り部10の送り出し速度、送り出しピッチ、及び曲げ加工部20の曲げ角度などの情報である。実施の形態1では、表示部80は、例えば、タッチパネルディスプレイで構成されている。表示部80は、ユーザにより入力された入力情報を受信し、受信した入力情報を制御部に送信する。
【0045】
[動作]
加工装置1の動作の一例、即ち加工方法の一例について説明する。
図6は、本発明の実施の形態1に係る加工装置1の一例の主要な構成を示す模式図である。
図7は、本発明の実施の形態1に係る加工方法の一例のフローチャートである。なお、
図6に示す構成の例では、説明を簡略化するため、駆動部70及び表示部80の図示を省略している。
【0046】
図6に示されるように、加工装置1の動作は、制御部90によって制御される。制御部90は、回転送り部10、曲げ加工部20、切断部50及び受け部60を制御する。
【0047】
図7に示すように、ステップST10において、回転送り部10によって、線材2を湾曲させながら送り出す。具体的には、
図6に示すように、線材保管部30に保管された線材2を回転送り部10に供給する。このとき、検出部40は、線材保管部30と回転送り部10との間で、線材2の有無を検出する。検出部40で取得された情報は、制御部90に送信される。制御部90は、検出部40から送られてきた線材2の有無の情報に基づいて、線材2が線材保管部30から回転送り部10に供給されているか否かを判定する。
【0048】
制御部90は、線材2が有ると判定した場合、回転送り部10を制御し、線材2を曲げ加工部20に送り出す。具体的には、回転送り部10は、クランプ部15によって線材2を保持し、クランプ部15を回転方向D1に移動させる。これにより、線材2が円弧状に湾曲しながら、曲げ加工部20に送り出される。実施の形態1では、回転送り部10は、所定のピッチでクランプ部15を移動させて、線材2を曲げ加工部20に送り出している。
【0049】
制御部90は、線材2が無いと判定した場合、回転送り部10、曲げ加工部20、切断部50及び受け部60の動作を停止したままにする。
【0050】
図7に戻って、ステップST20において、曲げ加工部20は、ステップST10で送られてきた線材2を、送り出し方向と異なる方向に曲げ加工する。実施の形態1では、曲げ加工部20は、線材2をプレス加工することによって線材2の曲げ加工を行っている。具体的には、ステップST20は、線材2を第1の向きD11に曲げ加工するステップST21と、線材2を第2の向きD12に曲げ加工するステップST22と、を有する。
【0051】
ステップST21において、曲げ加工部20の第1加工部21によって、線材2を第1の向きD11に曲げ加工する。ステップST22において、曲げ加工部20の第2加工部22によって、線材2を第2の向きD12に曲げ加工する。
【0052】
ステップST30において、切断部50は、曲げ加工部20による曲げ加工が終了した後、線材2を切断する。切断された線材2は、受け部60によって受け取られる。
【0053】
[歯列矯正用ワイヤーの作製の一例]
加工装置1を用いて線材2から歯科矯正用ワイヤーを作製する一例を説明する。なお、歯科矯正用ワイヤーを作製するために用いた線材2としては、断面形状が楕円である線材を用いた。また、線材2の素材としては、β型Ti合金から成る素材を用いた。
【0054】
まず、作製する歯科用矯正ワイヤーの3次元形状について
図8A~8D説明する。
図8A~8Dは、それぞれ、歯科矯正用ワイヤー3(以下、「ワイヤー3」と称する)の一例の概略斜視図、概略正面図、概略側面図及び概略状面図である。
図8A~8Dに示すように、ワイヤー3は、上方向(Z方向)から見たときに、略U字状に形成されていると共に、上下方向に湾曲した形状を有する。具体的には、ワイヤー3の両端A1,A7及び中央部分A4が、他の部分A2,A3,A5,A6と比べて、上方に位置している。言い換えると、ワイヤーを側面方向(Y方向)からみたとき、ワイヤー3の両端A1,A7から中央部分A4の間の部分は、下方向に窪んだ形状になっている。
【0055】
ワイヤー3の一端A1から部分A2において、ワイヤー3は下方向に向かって屈曲している。また、ワイヤー3の部分A2から部分A3を通って中央部分A4に向かって、ワイヤー3は上方向(Z方向)に屈曲している。なお、部分A2はワイヤー3の下端を示し、部分A3は部分A2と中央部分A4との中間位置を示す。ワイヤー3の下端とは、ワイヤー3を側面方向(Y方向)から見て最も下に位置する部分である。
【0056】
ワイヤー3の中央部分A4から部分A5を通って部分A6に向かって、ワイヤー3は下方向に向かって屈曲している。また、ワイヤー3の部分A6から他端A7に向かって、ワイヤー3は上方向(Z方向)に屈曲している。なお、部分A6はワイヤー3の下端を示し、部分A5は中央部分A4と部分A6との中間位置を示す。
【0057】
図9は、
図8Aに示すワイヤー3の複数の部分A1~A7におけるそれぞれの断面形状の一例を示す模式図である。
図9に示すように、ワイヤー3の複数の部分A1~A7においては、断面形状の長手方向が異なっている。即ち、ワイヤー3の3次元形状は、ねじれを伴って実現されている。加工装置1では、線材2を湾曲させながら送り出し、線材2を送り出し方向とは異なる方向から曲げ加工することによって、線材2にねじりを生じさせている。これにより、ワイヤー3のような滑らかな曲線を有する3次元形状を実現している。
【0058】
図10は、歯科用の線材2において曲げ加工部20の動作を切り替える部分の一例を示す図である。
図10は、歯科用の線材2を円弧状に湾曲させたときの状態を上から(Z方向)見たときの図である。
図10は、曲げ加工部20における第1加工部21による第1の向きD11の第1曲げ加工を行う線材部分2a,2cと、第2加工部22による第2の向きD12の第2曲げ加工を行う線材部分2bと、を示している。
【0059】
図10に示すように、加工装置1は、線材2からワイヤー3の3次元形状に加工するために、線材2を3つの線材部分2a,2b,2cに分けて線材2の曲げ加工を行う。具体的には、線材2の一端P1から部分P2の間を第1線材部分2aとし、線材2の部分P2から部分P3の間を第2線材部分2bとし、線材2の部分P3から他端P4の間を第3線材部分2cとしている。なお、部分P2は、第1線材部分2aと第2線材部分2bとの繋ぎ目部分を示し、部分P3は第2線材部分2bと第3線材部分2cとの繋ぎ目部分を示す。繋ぎ目部分とは、線材2の第1の向きD11への第1曲げ加工と、第2の向きD12への第2曲げ加工とが切り替わる位置を含む部分であり、即ち、線材2の曲げ加工の向きが切り替わる部分である。
【0060】
第1線材部分2aにおいては、第1加工部21による第1曲げ加工が行われる。第2線材部分2bにおいては、第2加工部22による第2曲げ加工が行われる。第3線材部分2cにおいては、第1加工部21による第1曲げ加工が行われる。
【0061】
<第1線材部分の曲げ加工>
第1線材部分2aの曲げ加工の一例について、
図11A~11Fを用いて説明する。
図11A~11Eは、歯科用の線材2の第1線材部分2aにおける曲げ加工の工程の一例を示す図である。
図11A~11Eは、
図10に示す線材2の一端P1から繋ぎ目部分P2までの第1線材部分2aに対して行われる曲げ加工の工程の一例を示す。
図11Fは、
図11Bの第1加工部21の部分を拡大した拡大図である。
【0062】
図11Aに示すように、回転送り部10は、線材2を送り出し方向D3に向かって送り出す。送り出し方向D3とは、回転送り部10によって送り出される方向である。実施の形態1では、送り出し方向D3は、回転送り部10の回転方向D1である。
【0063】
回転送り部10は、クランプ部15によって線材2を保持し、クランプ部15を前進方向D21へ所定のピッチL1で移動させる。これにより、線材2が所定のピッチL1の分だけ送り出し方向D3に送り出される。なお、前進方向D21とは、曲げ加工部20に近づく方向である。
【0064】
所定のピッチL1は、第1加工部21の幅B1の0.1倍以上1.5倍以下に設定されることが好ましい。より好ましくは、所定のピッチL1は、第1加工部21の幅B1の0.5倍以上1倍以下に設定される。実施の形態1では、所定のピッチL1は、第1加工部21の幅B1と同じ長さに設定されている。なお、第1加工部21の幅B1とは、第1凸部23aの幅を意味する。
【0065】
図11Bに示すように、曲げ加工部20は、第1加工部21の第1ヘッド24を下方向D31に移動させることによって、第1ヘッド24を第1ベース23に押圧する。これにより、線材2は、第1凸部23aと第1凹部24aとの間に挟まれ、第1の向きD11に曲げ加工される。線材2が第1ヘッド24と第1ベース23との間に挟まれている間、回転送り部10はクランプ部15による線材2の保持を解除する。そして、回転送り部10は、クランプ部15を後退方向D22に向かって移動させる。即ち、回転送り部10は、クランプ部15を線材2から離して、後退させる。なお、後退方向D22とは、前進方向D21と反対方向であり、曲げ加工部20から離れる方向である。
【0066】
ここで、
図11Bに示す第1加工部21の部分を拡大した拡大図を
図11Fに示す。
図11Fに示すように、第1加工部21によって、第1線材部分2aを第1の向きD11に曲げ加工する。これにより、第1線材部分2aは、第1ヘッド24の中央部分を始点にして、第1凹部24aの形状に沿って湾曲される。具体的には、第1線材部分2aは、第1ヘッド24の中央部分を始点にして、円弧方向D13,D14に湾曲される。
【0067】
図11Cに示すように、回転送り部10がクランプ部15を後退させた後に、クランプ部15によって線材2を保持する。次に、曲げ加工部20は、第1加工部21の第1ヘッド24を上方向D32に移動させる。その後、回転送り部10は、クランプ部15によって線材2を保持したまま、クランプ部15を前進方向D21へ所定のピッチL1で移動させる。
【0068】
図11Dに示すように、線材2が所定のピッチL1で送り出されると、第1加工部21によって線材2の曲げ加工を開始する部分E1(
図11B~11C参照)は、送り出し方向D3に向かって移動し、曲げ加工の終了位置に配置される。なお、第1加工部21によって線材2の曲げ加工を開始する部分E1とは、第1加工部21によって曲げ加工されるときに線材2の曲がりが開始する部分を意味する。
図11Dでは、部分E1は、線材2の送り出し方向D3と反対側に位置する第1加工部21の端部に配置される線材2の部分である。実施の形態1では、曲げ加工の終了位置は、第1加工部21によって曲げ加工されるときに線材2の曲がりが終了する部分を意味する。
図11Dでは、曲げ加工の終了位置は、線材2の送り出し方向D3側に位置する第1加工部21の端部となる。
【0069】
図11Eに示すように、曲げ加工部20は、第1加工部21の第1ヘッド24を下方向D31に移動させることによって、第1ヘッド24を第1ベース23に押圧する。これにより、線材2を第1の向きD11に曲げ加工する。また、回転送り部10は、クランプ部15を線材2から離し、後退方向D22へ後退させる。
【0070】
このように、線材2の第1線材部分2aの曲げ加工においては、回転送り部10によって所定のピッチL1で線材2を曲げ加工部20に向かって湾曲させながら送り出す。そして、曲げ加工部20において、第1加工部21によって線材2を第1の向きD11に曲げ加工する。これにより、線材2の送り出しと、線材2の第1の向きD11への曲げ加工と、を繰り返し行うことによって、第1線材部分2aの曲げ加工を行う。実施の形態1では、第1線材部分2aの曲げ加工は、
図10に示す繋ぎ目部分P2に到達するまで行われる。
【0071】
<第2線材部分の曲げ加工>
線材2の第2線材部分2bの曲げ加工の一例について、
図12A~12Hを用いて説明する。
図12A~12Gは、歯科用の線材2の第2線材部分2bにおける曲げ加工の工程の一例を示す図である。また、
図12A~12Gは、
図10に示す線材2の繋ぎ目部分P2から繋ぎ目部分P3までの第2線材部分2bに対して行われる曲げ加工の工程の一例を示す。
図12A~12Dは、第1線材部分2aと第2線材部分2bとの繋ぎ目部分P2における曲げ加工の工程の一例を示している。
図12E~12Gは、第2線材部分2bの曲げ加工の工程の一例を示している。
図12Hは、
図12Dの第2加工部22の部分を拡大した拡大図である。
【0072】
実施の形態1では、曲げ加工部20は、第1線材部分2aと第2線材部分2bとの繋ぎ目部分P2において、第1曲げ加工と第2曲げ加工とを重複して行っている。
【0073】
図12Aに示すように、第1加工部21による第1曲げ加工が繋ぎ目部分P2に到達するまで行われると、回転送り部10は、クランプ部15の線材2の保持を解除した状態で、クランプ部15を後退方向D22へ後退させる。このとき、クランプ部15の後退量は、第1曲げ加工の所定のピッチL1より大きい。
【0074】
図12Bに示すように、回転送り部10がクランプ部15を後退させた後に、クランプ部15によって線材2を保持する。次に、曲げ加工部20は、第1加工部21の第1ヘッド24を上方向D32に移動させる。その後、回転送り部10は、クランプ部15によって線材2を保持したまま、クランプ部15を前進方向D21へ所定の距離L2で移動させる。これにより、線材2が送り出し方向D3に所定の距離L2で送り出される。
【0075】
実施の形態1では、所定の距離L2は、第1加工部21と第2加工部22との配置間隔B2と同じ長さに設定されている。第1加工部21と第2加工部22との配置間隔B2とは、送り出し方向D3と反対側に位置する第1加工部21の端部から、送り出し方向D3と反対側に位置する第2加工部22の端部までの距離である。
【0076】
図12Cに示すように、線材2が所定の距離L2で送り出されると、第1線材部分2aの終端部E2(
図12A及び
図12B参照)は、送り出し方向D3に向かって移動し、第2加工部22の曲げ加工の開始位置に配置される。即ち、第1線材部分2aと第2線材部分2bとの繋ぎ目部分P2においては、第1加工部21で曲げ加工が行われた後、第2加工部22で曲げ加工が開始される位置に移動する。実施の形態1では、第2加工部22の曲げ加工の開始位置は、線材2の送り出し方向D3と反対側に位置する第2加工部22の端部である。
【0077】
図12Dに示すように、曲げ加工部20は、第2加工部22の第2ヘッド26を下方向D41に移動させることによって、第2ヘッド26を第2ベース25に押圧する。これにより、線材2は、第2凹部25aと第2凸部26aとの間に挟まれ、第2の向きD12に曲げ加工される。線材2が第2ヘッド26と第2ベース25との間に挟まれている間に、回転送り部10はクランプ部15による線材2の保持を解除する。そして、回転送り部10は、クランプ部15を後退方向D22に向かって移動させる。即ち、回転送り部10は、クランプ部15を線材2から離し、後退させる。
【0078】
このように、繋ぎ目部分P2においては、第1加工部21によって第1の向きD11に曲げ加工された後、更に第2加工部22によって第2の向きD12に曲げ加工される。
【0079】
図12Eに示すように、回転送り部10がクランプ部15を後退させた後に、クランプ部15によって線材2を保持する。次に、曲げ加工部20は、第2加工部22の第2ヘッド26を上方向D42に移動させる。その後、回転送り部10は、クランプ部15によって線材2を保持したまま、クランプ部15を前進方向D21へ所定のピッチL3で移動させる。これにより、線材2が所定のピッチL3の分だけ送り出し方向D3に送り出される。
【0080】
所定のピッチL3は、第2加工部22の幅B31の0.1倍以上1.5倍以下に設定されることが好ましい。より好ましくは、所定のピッチL3は、第2加工部22の幅B3の0.5倍以上1倍以下に設定される。実施の形態1では、所定のピッチL3は、第2加工部22の幅B3と同じ長さに設定されている。なお、第2加工部22の幅B3とは、第2凹部25aの幅を意味する。
【0081】
ここで、
図12Dに示す第2加工部22の部分を拡大した拡大図を
図12Hに示す。
図12Hに示すように、第2加工部22によって、第2線材部分2bを第2の向きD12に曲げ加工する。これにより、第2線材部分2bは、第2ベース25の中央部分を始点にして、第2凹部25aの形状に沿って湾曲される。具体的には、第2線材部分2bは、第2ベース25の中央部分を始点にして、円弧方向D15,D16に湾曲される。
【0082】
図12Fに示すように、線材2が所定のピッチL3で送り出されると、第1線材部分2aの終端部E2(
図12C~12E参照)は、送り出し方向D3に向かって移動し、第2加工部22による曲げ加工の終了位置に移動する。実施の形態1では、第2加工部22による曲げ加工の終了位置は、線材2の送り出し方向D3側に位置する第2加工部22の端部である。
【0083】
図12Gに示すように、曲げ加工部20は、第2加工部22の第2ヘッド26を下方向D41に移動させることによって、第2ヘッド26を第2ベース25に押圧する。これにより、線材2を第2の向きD12へ曲げ加工する。また、回転送り部10は、クランプ部15を線材2から離し、後退方向D22に向かって後退させる。
【0084】
このように、線材2の第2線材部分2bの曲げ加工においては、回転送り部10によって所定のピッチL3で線材2を曲げ加工部20に向かって湾曲させながら送り出す。そして、曲げ加工部20において、第2加工部22によって線材2を第2の向きD12に曲げ加工する。これにより、線材2の送り出しと、線材2の第2の向きD12への曲げ加工と、を繰り返し行うことによって、第2線材部分2bの曲げ加工を行う。実施の形態1では、第2線材部分2bの曲げ加工は、
図10に示す繋ぎ目部分P2から繋ぎ目部分P3に到達するまで行われる。
【0085】
<第3線材部分の曲げ加工>
第3線材部分2cの曲げ加工の一例について、
図13A~13Hを用いて説明する。
図13A~13Hは、歯科用の線材2の第3線材部分2cにおける曲げ加工の工程の一例を示す図である。また、
図13A~13Hは、
図10に示す線材2の繋ぎ目部分P2から繋ぎ目部分P3までの第3線材部分2cに対して行われる曲げ加工の工程の一例を示す。
図13A~13Dは、第2線材部分2bと第3線材部分2cとの繋ぎ目部分P3における曲げ加工の工程の一例を示している。
図13E~13Hは、第3線材部分2cの曲げ加工の工程の一例を示している。
【0086】
実施の形態1では、曲げ加工部20は、第2線材部分2bと第3線材部分2cとの繋ぎ目部分P3において、第1曲げ加工と第2曲げ加工とを重複して行っている。
【0087】
図13Aに示すように、第2加工部22による第2曲げ加工が繋ぎ目部分P3に到達するまで行われると、
図13Bに示すように、回転送り部10は、クランプ部15が線材2を保持した状態で、クランプ部15を所定の距離L4で後退方向D22に後退させる。これにより、線材2を送り出し方向D3と反対方向D4に移動させる。即ち、線材2を後退させる。
【0088】
実施の形態1では、所定の距離L4は、第1加工部21と第2加工部22との配置間隔B2と同じ長さに設定されている。
【0089】
図13Cに示すように、線材2が所定の距離L4で後退させられると、第2線材部分2bの終端部E3(
図13A及び
図13B参照)は、送り出し方向D3と反対方向D4に向かって移動し、第1加工部21の曲げ加工の開始位置に配置される。即ち、第2線材部分2bと第3線材部分2cとの繋ぎ目部分P3においては、第2加工部22で曲げ加工が行われた後、第1加工部21で曲げ加工が開始される位置に移動する。
【0090】
図13Dに示すように、曲げ加工部20は、第1加工部21の第1ヘッド24を下方向D31に移動させることによって、第1ヘッド24を第1ベース23に押圧する。これにより、線材2は、第1凸部23aと第1凹部24aとの間に挟まれ、第1の向きD11に曲げ加工される。
【0091】
このように、繋ぎ目部分P3においては、第2加工部22によって第2の向きD12に曲げ加工された後、第1加工部21によって第1の向きD11に曲げ加工される。
【0092】
図13Eに示すように、曲げ加工部20は、第2加工部22の第2ヘッド26を上方向D42に移動させる。その後、回転送り部10は、クランプ部15によって線材2を保持したまま、クランプ部15を前進方向D21へ所定のピッチL1で移動させる。これにより、線材2が所定のピッチL1の分だけ送り出し方向D3に送り出される。
【0093】
図13Fに示すように、線材2が所定のピッチL3で送り出されると、部分E3が第1加工部21による曲げ加工の終了位置に配置される。曲げ加工部20は、第1加工部21の第1ヘッド24を下方向D31に移動させることによって、第1ヘッド24を第1ベース23に押圧する。これにより、線材2は、第1の向きD11に曲げ加工される。線材2が第1ヘッド24と第1ベース23との間に挟まれている間、回転送り部10はクランプ部15による線材2の保持を解除する。そして、回転送り部10は、クランプ部15を後退方向D22へ移動させる。
【0094】
図13Gに示すように、回転送り部10がクランプ部15を後退させた後に、クランプ部15によって線材2を保持する。次に、曲げ加工部20は、第1加工部21の第1ヘッド24を上方向D32に移動させる。その後、回転送り部10は、クランプ部15によって線材2を保持したまま、クランプ部15を前進方向D21へ所定のピッチL1で移動させる。これにより、線材2が所定のピッチL1の分だけ送り出し方向D3に送り出される。
【0095】
図13Hに示すように、曲げ加工部20は、第1加工部21の第1ヘッド24を下方向D31に移動させることによって、第1ヘッド24を第1ベース23に押圧する。これにより、線材2を第1の向きD11へ曲げ加工する。また、回転送り部10は、クランプ部15を線材2から離し、後退方向D22に向かって後退させる。
【0096】
このように、線材2の第3線材部分2cの曲げ加工においては、回転送り部10によって所定のピッチL1で線材2を曲げ加工部20に向かって湾曲させながら送り出す。そして、曲げ加工部20において、第1加工部21によって線材2を第1の向きD11に曲げ加工する。これにより、線材2の送り出しと、線材2の第1の向きD11への曲げ加工と、を繰り返し行うことによって、第3線材部分2cの曲げ加工を行う。実施の形態1では、第3線材部分2cの曲げ加工は、
図10に示す繋ぎ目部分P3から他端P4に到達するまで行われる。
【0097】
以上のように、加工装置1では、線材2を湾曲させながら送り出し、線材2を送り出し方向とは異なる第1の向きD11及び第2の向きD12へ曲げ加工している。これにより、
図8に示すワイヤー3のような3次元形状を容易に実現することができる。
【0098】
[効果]
加工装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0099】
加工装置1は、歯科用の線材2を湾曲させながら送り出す回転送り部10と、回転送り部10によって送られてきた線材2を、線材2の送り出し方向D1と異なる方向に曲げ加工する曲げ加工部20と、を備える。このような構成により、歯科用の線材2を容易に加工することができる。具体的には、加工装置1は、回転送り部10によって、線材2を湾曲させながら送り出し、曲げ加工部20によって送り出し方向D1と異なる方向に線材2を曲げ加工することによって、線材2をねじりながら曲げ加工することができる。このため、歯科矯正用ワイヤー3のような3次元形状に容易に加工することができる。また、手作業で加工する場合に比べて、滑らかな曲線で加工することができる。
【0100】
曲げ加工部20は、線材2の送り出し方向D1と異なる第1の向きD11に線材2を曲げ加工する第1加工部21と、第1の向きD11と異なる第2の向きD12に線材2を曲げ加工する第2加工部22と、有する。このような構成により、線材2の3次元形状の加工をより容易にすることができる。
【0101】
第1加工部21は、第1の向きD11に突出する第1凸部23aを有する第1ベース23と、第1ベース23の第1凸部23aに係合する第1凹部24aを有する第1ヘッド24と、を有する。また、第1加工部21は、第1ベース23の第1凸部23aと第1ヘッド24の第1凹部24aとの間に線材2を挟むことによって、線材2を第1の向きD11に曲げ加工する。更に、第2加工部22は、第2の向きD12に窪んだ第2凹部25aを有する第2ベース25と、第2ベース25の第2凹部25aに係合する第2凸部26aを有する第2ヘッド26と、を有する。また、第2加工部22は、第2ベース25の第2凹部25aと第2ヘッド26の第2凸部26aとの間に線材2を挟むことによって、線材2を第2の向きD12に曲げ加工する。このような構成により、線材2をより容易に加工することができる。
【0102】
回転送り部10は、第1加工部21による第1曲げ加工において、第1加工部21の幅B1の0.1倍以上1.5倍以下のピッチL1で線材2を送り出し、第2加工部22による第2曲げ加工において、第2加工部22の幅B3の0.1倍以上1.5倍以下のピッチL3で線材2を送り出す。より好ましくは、第1加工部21による第1曲げ加工において、第1加工部21の幅B1の0.5倍以上1倍以下のピッチL1で線材2を送り出し、第2加工部22による第2曲げ加工において、第2加工部22の幅B3の0.5倍以上1倍以下のピッチL3で線材2を送り出す。これにより、線材2をより容易に加工することができる。
【0103】
曲げ加工部20において、第1加工部21による第1曲げ加工と第2加工部22による第2曲げ加工とを切り替えるとき、回転送り部10は、線材2を前進又は後退させることによって、線材2の曲げ加工の向きが切り替わる部分P2,P3で、第1曲げ加工と第2曲げ加工とを重複させる。このような構成により、線材2をより容易に加工することができる。また、線材2の形状変化をより滑らかにすることができる。
【0104】
なお、実施の形態1では、加工装置1は、回転送り部10、曲げ加工部20、線材保管部30、検出部40、切断部50、受け部60、駆動部70及び表示部80を備える例について説明したが、これに限定されない。加工装置1は、少なくとも回転送り部10と、曲げ加工部20とを備えていればよい。
【0105】
実施の形態1では、回転送り部10は、線材2を円弧状に湾曲させながら送り出す例について説明したが、これに限定されない。回転送り部10は、連続した曲線になるように線材2を湾曲させて送り出せればよい。例えば、回転送り部10は、ラウンド状又は楕円状に線材2を湾曲させて送り出してもよい。
【0106】
実施の形態1では、回転送り部10の所定ピッチL1,L3,及び所定の距離L2,L4は、一例であって実施の形態1で述べた設定値に限定されない。
【0107】
実施の形態1では、曲げ加工部20は、第1加工部21及び第2加工部22を備える例について説明したが、これに限定されない。曲げ加工部20は、少なくとも1つの加工部を備えていればよい。線材2を加工する形状に合わせて、加工部の数を変更してもよい。
例えば、曲げ加工部20は、第1加工部21のみを有していてもよい。あるいは、曲げ加工部20は、第1加工部21及び第2加工部22に加えて、第3加工部を備えていてもよい。
【0108】
実施の形態1では、第1加工部21が線材2を第1の向きD11に曲げ加工し、第2加工部22が第2の向きD12に曲げ加工する例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1の向きD11及び第2の向きD12は、同じ向きであってもよいし、異なる向きであってもよい。
【0109】
実施の形態1では、曲げ加工の向きが切り替わる線材2の繋ぎ目部分P2,P3において、第1加工部21により第1の向きD11への第1曲げ加工と、第2加工部22による第2の向きD12への第2曲げ加工と、を重複して行う例について説明したが、これに限定されない。例えば、繋ぎ目部分P2,P3において、第1曲げ加工と第2曲げ加工とを重複して行わなくてもよい。
【0110】
実施の形態1では、駆動部70は、回転送り部10を回転させるモータ、曲げ加工部20の第1加工部21及び第2加工部22を駆動するカム機構などを含む例について説明したが、これに限定されない。駆動部70は、回転送り部10及び曲げ加工部20を駆動刺せるための任意の機構を備えていてもよい。
【0111】
実施の形態1では、β型Ti合金から成る線材2を例として説明したが、これに限定されない。線材2は、歯科用の線材として用いられる材料で構成されていればよい。例えば、線材2は、生体適合材料である純チタン、ステンレス又はコバルトクロム合金などで構成されていてもよい。
【0112】
実施の形態1では、線材2が楕円の断面形状を有する例について説明したが、これに限定されない。線材2は、長手方向を有する断面形状であってもよい。例えば、線材2は、楕円の他、矩形の断面形状を有していてもよい。あるいは、線材2は、円形又は正多角形などの断面形状を有していてもよい。
【0113】
歯科用の線材2は、予めコイル状にして円弧状に成形されていてもよい。すなわち、線材2は、円弧状に湾曲して成形されたものを用いてもよい。このように、予め円弧状に成形した線材2を、回転送り部10で送り、曲げ加工部20で曲げ加工することによって、線材2をより容易に3次元加工することができる。例えば、復元力の非常に高い素材であるβ型Ti合金で構成された線材2を3次元加工するなどの場合に、線材2をより簡単に3次元加工することができる。
【0114】
実施の形態1では、歯科矯正用ワイヤー3として、上方向(Z方向)から見たときに、略U字状に形成されていると共に、上下方向に湾曲した形状を有するワイヤーを例として説明したが、これに限定されない。
【0115】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明に係る加工装置及び加工方法は、歯科用の線材を容易に加工することができるため、例えば、歯科矯正用ワイヤーなどの加工に有用である。
【符号の説明】
【0117】
1 加工装置
2 線材
3 歯科矯正用ワイヤー
10 回転送り部
20 曲げ加工部
21 第1加工部
22 第2加工部
23 第1ベース
23a 第1凸部
24 第1ヘッド
24a 第1凹部
25 第2ベース
25a 第2凹部
26 第2ヘッド
26a 第2凸部
30 線材保管部
40 検出部
50 切断部
60 受け部
70 駆動部
80 表示部
90 制御部