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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】ふく進測定用水糸張設治具
(51)【国際特許分類】
   E01B 35/12 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
E01B35/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019127471
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021011781
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 麻貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】池田 聡司
(72)【発明者】
【氏名】星川 淳
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 勝則
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-003428(JP,A)
【文献】特開2001-349730(JP,A)
【文献】実開昭59-034310(JP,U)
【文献】実開昭60-011957(JP,U)
【文献】特開2016-125334(JP,A)
【文献】実開昭57-002401(JP,U)
【文献】実開昭57-112206(JP,U)
【文献】実開昭54-176359(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0059856(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道レールのふく進測定の際、基準杭に基づいて水糸を張設するためのふく進測定用水糸張設治具であって、
前記基準杭に固定される固定部が設けられていると共に、前記固定部よりも上方であって前記基準杭の上面よりも高い位置に水糸をかさ上げする水糸かさ上げ溝部が設けられており、
前記水糸かさ上げ溝部は、当該ふく進測定用水糸張設治具の上端部よりも下方に設けられており、
当該ふく進測定用水糸張設治具には、さらに、
当該ふく進測定用水糸張設治具の上端部から鉛直方向で下方に向かって延びる第1水糸案内部と、
前記第1水糸案内部から水平方向に延びる第2水糸案内部と、
前記第2水糸案内部の終端部から鉛直方向で下方に向かって前記水糸かさ上げ溝部まで延びる第3水糸案内部とが設けられていることを特徴とするふく進測定用水糸張設治具。
【請求項2】
請求項に記載のふく進測定用水糸張設治具において、
前記水糸かさ上げ溝部は、当該ふく進測定用水糸張設治具の上端部よりも下方であって上下方向に所定間隔を空けて複数設けられており、
前記第1水糸案内部の中間部と下端部とから複数の前記水糸かさ上げ溝部それぞれへ前記水糸を案内する複数の第2水糸案内部が上下方向に間隔を空けて設けられていることを特徴とするふく進測定用水糸張設治具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のふく進測定用水糸張設治具において、
前記基準杭の上面には、レールの長手方向と直交するレールの短手方向に延びる基準杭線が設けられており、
当該ふく進測定用水糸張設治具における前記水糸かさ上げ溝部の下方には、前記基準杭の基準杭線にピン先端を合わせるための位置決めパイロットピンが、前記基準杭線が延びる方向に所定間隔を空けて複数設けられていることを特徴とするふく進測定用水糸張設治具。
【請求項4】
鉄道レールのふく進測定の際、基準杭に基づいて水糸を張設するためのふく進測定用水糸張設治具であって、
前記基準杭に固定される固定部が設けられていると共に、前記固定部よりも上方であって前記基準杭の上面よりも高い位置に水糸をかさ上げする水糸かさ上げ溝部が設けられており、
前記基準杭の上面には、レールの長手方向と直交するレールの短手方向に延びる基準杭線が設けられており、
当該ふく進測定用水糸張設治具における前記水糸かさ上げ溝部の下方には、前記基準杭の基準杭線にピン先端を合わせるための位置決めパイロットピンが、前記基準杭線が延びる方向に所定間隔を空けて複数設けられていることを特徴とするふく進測定用水糸張設治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレールのふく進測定の際の基準となる基準杭(ふく進杭ともいう。)をかさ上げするふく進測定用水糸張設治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道のレールとマクラギとの間は締結部材により強固に結合されているが、走行する列車の制動や始動荷重およびレールの温度変化に起因する伸縮その他に起因してレールが長手方向に移動する。このレールの長手方向の移動を、一般に、ふく進と呼ぶ。ふく進量が大きい場合、レールを適正位置に引き戻す作業を実施する必要があり、鉄道各社は、年に数回ふく進量の測定を実施している。
【0003】
ふく進量をスケールで測定する場合、まず、左右のレールそれぞれの外側に設置されている基準杭間に水糸を張ってこれを基準線とすると共に、左右のレールそれぞれの基準線に対応する箇所を基準点としてマークする。そして所定期間経過後に、レールにマークした基準点と、新たに張った水糸による基準線との間の誤差を作業員が現場でスケールにより測定する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-3428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基準杭上面がレール上面(踏面)よりも高い場合には水糸Lがレール上面に接触することなく左右のレールを横切るように張ることが可能であるが、基準杭上面がレール上面よりも低い場合には、水糸がレールに接触して斜めになる場合があり、正確な基準線を得ることができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、基準杭よりもレールが高い場合でも、水糸がレールに接触することなく、正確な基準線を得ることができるふく進測定用水糸張設治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るふく進測定用水糸張設治具は、鉄道レールのふく進測定の際、基準杭に基づいて水糸を張設するためのふく進測定用水糸張設治具であって、前記基準杭に固定される固定部が設けられていると共に、前記固定部よりも上方であって前記基準杭の上面よりも高い位置に水糸をかさ上げする水糸かさ上げ溝部が設けられており、前記水糸かさ上げ溝部は、当該ふく進測定用水糸張設治具の上端部よりも下方に設けられており、当該ふく進測定用水糸張設治具には、さらに、当該ふく進測定用水糸張設治具の上端部から鉛直方向で下方に向かって延びる第1水糸案内部と、前記第1水糸案内部から水平方向に延びる第2水糸案内部と、前記第2水糸案内部の終端部から鉛直方向で下方に向かって前記水糸かさ上げ溝部まで延びる第3水糸案内部とが設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係るふく進測定用水糸張設治具では、前記水糸かさ上げ溝部は、当該ふく進測定用水糸張設治具の上端部よりも下方であって上下方向に所定間隔を空けて複数設けられており、前記第1水糸案内部の中間部と下端部とから複数の前記水糸かさ上げ溝部それぞれへ前記水糸を案内する複数の第2水糸案内部が上下方向に間隔を空けて設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るふく進測定用水糸張設治具では、前記基準杭の上面には、レールの長手方向と直交するレールの短手方向に延びる基準杭線が設けられており、当該ふく進測定用水糸張設治具における前記水糸かさ上げ溝部の下方には、前記基準杭の基準杭線にピン先端を合わせるための位置決めパイロットピンが、前記基準杭線が延びる方向に所定間隔を空けて複数設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るふく進測定用水糸張設治具では、鉄道レールのふく進測定の際、基準杭に基づいて水糸を張設するためのふく進測定用水糸張設治具であって、前記基準杭に固定される固定部が設けられていると共に、前記固定部よりも上方であって前記基準杭の上面よりも高い位置に水糸をかさ上げする水糸かさ上げ溝部が設けられており、前記基準杭の上面には、レールの長手方向と直交するレールの短手方向に延びる基準杭線が設けられており、当該ふく進測定用水糸張設治具における前記水糸かさ上げ溝部の下方には、前記基準杭の基準杭線にピン先端を合わせるための位置決めパイロットピンが、前記基準杭線が延びる方向に所定間隔を空けて複数設けられていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るふく進測定用水糸張設治具では、基準杭に固定される固定部が設けられていると共に、固定部よりも上方であって基準杭よりも高い位置に水糸をかさ上げする水糸かさ上げ溝部が設けられているため、本治具を基準杭に設置することにより水糸をかさ上げすることができる。
そのため、基準杭よりもレールが高い場合でも、水糸をレールに接触しないようかさ上げして張ることが可能となり、正確な基準線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施形態のふく進測定用水糸張設治具の正面図である。
図2図1におけるA部分の拡大正面図である。
図3】本発明に係る実施形態のふく進測定用水糸張設治具の右側面図である。
図4】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態のふく進測定用水糸張設治具の平面図、底面図である。
図5】(a)~(c)それぞれ本発明に係る実施形態のふく進測定用水糸張設治具を構成する治具本体の正面図、右側面図、底面図である。
図6】(a)~(c)それぞれ本発明に係る実施形態のふく進測定用水糸張設治具を構成するクランプ用ブロックの正面図、右側面図、底面図である。
図7】本発明に係る実施形態のふく進測定用水糸張設治具を使用して水糸を張って行っているふく進測定の際の状態を示す図である。
図8】(a),(b)は、それぞれ、基準杭の平面図、基準杭にふく進測定用水糸張設治具を固定した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態のふく進測定用水糸張設治具1について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態はあくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0011】
実施形態のふく進測定用水糸張設治具1は、後述する図7図8に示すように鉄道レールであるロングレールRのふく進測定の際、基準杭SPに設けられた基準杭線SPに基づいて水糸Lの高さをかさ上げして張設するもので、図1図4に示すように3つの水糸かさ上げ溝部である第1水糸かさ上げ溝部11a1、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3を形成した治具本体11に、治具本体固定用ブロック12や固定部であるクランプ用ブロック13および固定用ノブボルト14、2本の位置決めパイロットピン15,15、水準器16等を設けて構成されている。
【0012】
(治具本体11)
治具本体11は、図5(a),(b)に示すように背板11aと一対の側板11b,11bとを有する平面視、コ字形状で約200mmの長さh0(図1参照。)を有するアルミ製等の金属部材から構成されている。
【0013】
背板11aの上端部には、図1図2図5(a)等に示すように背板11aの短手方向の中央に水糸Lの高さをかさ上げするV字形状の第1水糸かさ上げ溝部11a1を設けると共に、その第1水糸かさ上げ溝部11a1の下方であって第1水糸かさ上げ溝部11a1の中心を通る背板中心線CLの延長線上の背板11a上端部から25mmと、50mmの高さに基準杭SPよりも高い位置に水糸Lの高さをかさ上げするV字形状の第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3を設けている。
【0014】
つまり、本実施形態では、第1水糸かさ上げ溝部11a1、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3によって3段階で水糸Lの高さをかさ上げすることができる。
【0015】
第1水糸かさ上げ溝部11a1、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3は、上述したように同様のV字形状溝であり、それらの幅wは、かさ上げする水糸Lの直径より大きい約3mm程度としている。
【0016】
また、背板11aの上端部から2つの第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3まで水糸を案内するため、背板11aの上端部から鉛直方向で下方に向かって延びる第1水糸案内部11a4と、第1水糸案内部11a4の中間部と下端部とからそれぞれ水平方向へ背板中心線CLまで延びる第2水糸案内部11a5,11a6と、第2水糸案内部11a5,11a6の終端部から鉛直方向で下方に向かってそれぞれ2つの第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3まで延び背板中心線CL上を通る第3水糸案内部11a7,11a8とを設けている。
【0017】
また、背板11aの下方には、ふく進測定用水糸張設治具1を基準杭SPに固定した際に、2本の位置決めパイロットピン15,15のピン先端が正しく基準杭SP上面に基準杭線SP上に位置しているか否かを確認するための確認窓11a9が設けられていると共に、その確認窓11a9の下方であって背板中心線CL上に固定用ノブボルト14のネジ部14bが螺合する通し孔11a10を設けている。
【0018】
一対の側板11b,11bは、それぞれ、上側の幅広部11b1,11b1と、下側の幅狭部11b2,11b2とを有しており、幅広部11b1,11b1の下方には、治具本体固定用ブロック12を側方からネジで固定するため2つのネジ孔11b11,11b11を設けている。
【0019】
(治具本体固定用ブロック12)
治具本体固定用ブロック12は、図1図3図4(a)等に示すように、上面側に2本の固定ネジ17b,17bで水準器16を固定する一方、下面側に2本の位置決めパイロットピン15,15およびクランプ用ブロック13を固定するブロックで、治具本体11の一対の側板11b,11bそれぞれの2つのネジ孔11b11,11b11に固定ネジ17a,17aを通して治具本体11に固定される。
【0020】
そのため、治具本体固定用ブロック12には、上面側には、水準器16を固定する2本の固定ネジ17b,17bが螺合する雌ネジ孔が設けられている一方、底面側には、2本の位置決めパイロットピン15,15基部のネジ部が螺合する雌ネジ孔が設けられている共に、治具本体固定用ブロック12に固定ネジ17c,17cで固定するための雌ネジ孔も設けられている。
【0021】
(クランプ用ブロック13)
クランプ用ブロック13は、図6(a)~(c)に示すように構成されており、天板部13aと前板部13bと、後板部13cとを有する側面視、コ字形状に形成されており、天板部13aには、2本の位置決めパイロットピン15,15の基部が通る通し孔13a1,13a1を設けると共に、治具本体固定用ブロック12の下面側に固定ネジ17c,17cで固定するための通し孔13a2,13a2も設けている。
【0022】
また、前板部13bには、治具本体11下方に設けた確認窓11a9および通し孔11a10と同様に、位置決めパイロットピン15,15のピン先端が正しく基準杭SP上面に基準杭線SP上に位置しているか否かを確認するための確認窓13b1と、固定用ノブボルト14のネジ部14bが螺合する雌ネジ孔13b2が設けられている。尚、ここでは後板部13cに確認窓を設けていないが、後板部13cにも前板部13bの確認窓13b1と同様の確認窓を設けても勿論良い。
【0023】
(固定用ノブボルト14)
固定用ノブボルト14は、図3等に示すように作業者が握るノブ部14aと、治具本体11下方の通し孔11a10を介してクランプ用ブロック13の前板部13bの雌ネジ孔13b2に螺合するネジ部14bとを有し、ネジ部14b先端とクランプ用ブロック13の後板部13cとの間で基準杭Sを挟持して固定するように構成されている。
【0024】
(位置決めパイロットピン15,15)
位置決めパイロットピン15,15は、下端部先端が先が尖っており、下端部先端が基準杭SP上面の基準杭線SPLに点接触可能となるように、治具本体固定用ブロック12下面側の雌ネジ孔に基部のネジ部が螺合して設けられるもので、それらの下端部先端は、図1等に示すように第1水糸かさ上げ溝部11a1や第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3の中心を通る背板中心線CLの延長線上に位置するように構成されている。
【0025】
位置決めパイロットピン15,15は治具本体固定用ブロック12に固定された際、治具本体11下端部から位置決めパイロットピン15,15下端部先端までの高さh3は、図3に示すように例えば50mmであり、治具本体11の高さh0が200mm(図1参照。)で、また図2に示すように治具本体11上端部から25mmと、50mmの高さに第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3をそれぞれ設けているため、位置決めパイロットピン15,15下端部先端から第1水糸かさ上げ溝部11a1,第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3まで、それぞれ、150mm、125mm、100mmの高さだけかさ上げすることができる。
【0026】
(水準器16)
水準器16は、図4(a)に示すように直交するレールRの長手方向および短手方向の直交する2方向の水平をそれぞれ2つの気泡管16a,16bの気泡の位置によって確認する周知のもので、固定ネジ17b,17bによって治具本体固定用ブロック12に固定される。
【0027】
(基準杭SP)
基準杭SPは、左右のレールR,Rそれぞれの外側に設けられ、ふく進測定の際に使用する杭で、平面視(断面視)正方形状の杭など各種あるが、本実施形態では、例えば、図8(a)に示すように、平面視レール形状の杭である。
【0028】
図8(a)に示すように、基準杭SPには、その中心に水糸Lを張る際に基準となる基準杭線SPLが設けられている。
【0029】
<実施形態のふく進測定用水糸張設治具1の使用方法>
次に以上のように構成された実施形態のふく進測定用水糸張設治具1の使用方法について説明する。
【0030】
図7は、実施形態のふく進測定用水糸張設治具1の使用方法の一例を示す図で、図8(a),(b)は、それぞれ、基準杭SPの平面図、基準杭SPにふく進測定用水糸張設治具1を固定した状態を示す側面図である。
【0031】
図7に示すように、左右のレールR,Rの両側に設置された基準杭SP,SPそれぞれに本実施形態のふく進測定用水糸張設治具1,1を固定する。
【0032】
具体的には、まずは、固定用ノブボルト14を回転させてふく進測定用水糸張設治具1から外すか、あるいは固定用ノブボルト14のネジ部14b先端がふく進測定用水糸張設治具1の背板11aに残る程度まで後退させた状態で、ふく進測定用水糸張設治具1のクランプ用ブロック13の前板部13bと後板部13cとの間に基準杭SPが入るように設置し、その後、固定用ノブボルト14を回転させ、図8(b)に示すように固定用ノブボルト14のネジ部14b先端とクランプ用ブロック13の後板部13cとの間で基準杭SPを挟持する。
【0033】
その際、作業者は、ふく進測定用水糸張設治具1上方から水準器16の2つの気泡管16a,16b(図4(a)参照。)の気泡の位置を確認して当該治具1がレールRの長手方向および短手方向の2方向で水平状態となり、かつ、確認窓11a9から図8(b)に示すように2本の位置決めパイロットピン15,15下端部先端が基準杭SPの基準杭線SPL上に位置するように固定用ノブボルト14を回転させて、固定用ノブボルト14のネジ部14b先端とクランプ用ブロック13の後板部13cとの間で基準杭SPを固定する。
【0034】
水準器16の2つの気泡管16a,16bでレールRの長手方向および短手方向の2方向で水平状態となり、かつ、2本の位置決めパイロットピン15,15下端部先端が基準杭SPの基準杭線SPL上に位置した状態で基準杭SPにふく進測定用水糸張設治具1を固定できると、図1からも明らかように治具本体11の背板中心線CLの延長線上に基準杭SPの基準杭線SPLが位置することになるので、基準杭線SPLの鉛直線上に第1水糸かさ上げ溝部11a1や第2水糸かさ上げ溝部11a2、第3水糸かさ上げ溝部11a3が位置することになる。
【0035】
そのため、第1水糸かさ上げ溝部11a1、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3は、それぞれ、位置決めパイロットピン15,15下端部先端から150mm、125mm、約100mmの高さであるため、基準杭線SPL上面よりも150mm、125mm、約100mmの高さだけかさ上げすることができる。
【0036】
そして、作業者は図1図2に示すように、基準杭線SPL上面よりも150mm程度嵩上をする場合には、第1水糸かさ上げ溝部11a1に水糸Lを掛ける。
【0037】
また基準杭線SPL上面よりも125mm程度かさ上げする場合には、図2等に示すように治具本体11の背板11aに形成された第1水糸案内部11a4から水糸Lを入れ、第1水糸案内部11a4から第2水糸案内部11a5へ、第2水糸案内部11a5から第3水糸案内部11a7を通して第2水糸かさ上げ溝部11a2に水糸Lを案内する。
【0038】
さらに、基準杭線SPL上面よりも100mm程度かさ上げする場合には、図2等に示すように第1水糸案内部11a4から第2水糸案内部11a6、第2水糸案内部11a6から第3水糸案内部11a7を通して第3水糸かさ上げ溝部11a3に水糸Lを案内する。
【0039】
そのため、作業者は、現場におけるレールRの上面(踏面)と基準杭SPの上面との差異に応じて、基準杭線SPL上面よりも150mm、125mm、約100mmの高さだけかさ上げすることができる第1水糸かさ上げ溝部11a1、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3を選択してかさ上げすることが可能となり、基準杭SP上面がレール上面(踏面)よりも低い場合でも、水糸LがレールRに接触することを防止して正確な基準線を得て、その基準線に基づいてレールRに正確に基準点をマークすることができる。
【0040】
<実施形態のふく進測定用水糸張設治具11の主な効果>
以上説明したように、本発明に係る実施形態のふく進測定用水糸張設治具1では、基準杭SPに固定するクランプ用ブロック13と固定用ノブボルト14を設けていると共に、クランプ用ブロック13等よりも上方であって基準杭SPよりも高くなる位置に水糸Lをかさ上げするかさ上げ溝部である第1水糸かさ上げ溝部11a1、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3を設けたため、本治具1を基準杭SPに固定することにより水糸Lを3段階の高さにかさ上げすることができる。
【0041】
そのため、基準杭SPよりもレールRが高い場合でも、水糸LをレールRに接触しないようかさ上げして張ることが可能になると共に、かさ上げ溝部である第1水糸かさ上げ溝部11a1、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3の内、一のかさ上げ溝部を選択することにより、よりレールRの上面(踏面)に近接した高さにかさ上げできるので、より正確な基準線を得ることができる。
【0042】
特に、3つの第1水糸かさ上げ溝部11a1、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3の内、最上段の第1水糸かさ上げ溝部11a1は、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3とは異なり、治具本体11の背板11aの上端部に設けているため、容易に水糸Lを掛けてかさ上げすることができるので、ふく進測定の作業効率を向上させることができる。
【0043】
また、実施形態のふく進測定用水糸張設治具1では、2本の位置決めパイロットピン15,15下端部先端が基準杭SP上面の基準杭線SPLに点接触するように設けている。
【0044】
これにより、水準器16の2つの気泡管16a,16b(図4(a)参照。)の気泡の位置を確認して気泡管16a,16bの気泡がレールRの長手方向および短手方向の2方向で水平状態となり、かつ、2本の位置決めパイロットピン15,15下端部先端が基準杭SP上面の基準杭線SPLに一直線上に位置するように固定すれば、第1水糸かさ上げ溝部11a1、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3を、基準杭SP上面の基準杭線SPL上に正確に位置させることができる。また、位置決めパイロットピン15,15下端部先端による点接触なので、位置の正確さに影響を与えるレールRの長手方向の傾き調整が容易にでき、且つ、固定位置も柔軟に調整可能である。
【0045】
また、実施形態のふく進測定用水糸張設治具1は、図4に示すように治具本体11の背板11aの上端部から鉛直方向で下方に向かって延びる第1水糸案内部11a4と、第1水糸案内部11a4から水平方向に延びる第2水糸案内部11a5,11a6と、第2水糸案内部11a5,11a6の終端部から鉛直方向で下方に向かって第2水糸かさ上げ溝部11a2と第3水糸かさ上げ溝部11a3まで延びる第3水糸案内部11a7,11a8とを設けている。
【0046】
そのため、治具本体11の背板11aの上端部より下方に第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3の水糸かさ上げ部を設けた場合でも、治具本体11の背板11aの上端部から第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3まで水糸Lを簡単に案内することができるので、使用勝手が向上し、ふく進測定の作業効率を向上させることができる。
【0047】
また、第2水糸かさ上げ溝部11a2または第3水糸かさ上げ溝部11a3を選択する場合にも、第1水糸案内部11a4に水糸Lを通して、そこから第2水糸案内部11a5,11a6、第3水糸案内部11a7,11a8とを選択しながら第2水糸かさ上げ溝部11a2または第3水糸かさ上げ溝部11a3まで案内できるので、この点でも使用勝手が向上し、ふく進測定の作業効率を向上させることができる。
【0048】
また、第1水糸案内部11a4と、第2水糸案内部11a5,11a6と、第3水糸案内部11a7,11a8とにより、治具本体11の背板11aの上端部から第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3までの水糸案内部がクランク形状であるため、水糸Lの張力が変化しても、水糸Lがずれ難くなり、ふく進測定の際の精度を向上させることができる。
【0049】
また、実施形態のふく進測定用水糸張設治具1では、治具本体11とクランプ用ブロック13とを別部材で構成して、クランプ用ブロック13を治具本体11に取付けて使用するため、基準杭SPの大きさや形状が変化した場合には、それに合わせてクランプ用ブロック13を交換することにより、治具本体11は交換せずに使用することができる。
【0050】
尚、上記実施形態の説明では、治具本体11の背板11aに第1水糸かさ上げ溝部11a1、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3の3つの水糸かさ上げ溝部を設けた説明をしたが、本発明ではこれに限らず、第1水糸かさ上げ溝部11a1および第2水糸かさ上げ溝部11a2や、第2水糸かさ上げ溝部11a2および第3水糸かさ上げ溝部11a3の2つの水糸かさ上げ溝部でも良いし、さらには4つ以上の水糸かさ上げ溝部を設けるようにしても勿論良い。
【0051】
また、上記実施形態の説明では、図8(a)に示すようなレールを切断した平面視形状の基準杭SPで説明したが、本発明ではこれに限らず、平面視正方形状や長方形状等、各種の基準杭にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 ふく進測定用水糸張設治具
11 治具本体
11a 背板
11a1 第1水糸かさ上げ溝部
11a2 第2水糸かさ上げ溝部
11a3 第3水糸かさ上げ溝部
11a4 第1水糸案内部
11a5,11a6 第2水糸案内部
11a7,11a8 第3水糸案内部
11a9 確認窓
11a10 通し孔
11b,11b 側板
12 治具本体固定用ブロック
13 クランプ用ブロック
13a 天板部1
13a1,13a1 通し孔
13a2,13a2 通し孔
13b 前板部
13b1 確認窓
13b2 雌ネジ孔
14 固定用ノブボルト
14a ノブ部
14b ネジ部
15,15 位置決めパイロットピン
16 水準器
16a,16b 気泡管
17a,17b,17c 固定ネジ
R レール
SP 基準杭
SPL 基準杭線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8