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特許7269609フィルタ、フィルタの製造方法、及びガス発生器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】フィルタ、フィルタの製造方法、及びガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/10 20060101AFI20230427BHJP
   B01D 39/14 20060101ALI20230427BHJP
   B60R 21/264 20060101ALI20230427BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B01D39/10
B01D39/14 D
B60R21/264
B01J7/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021207069
(22)【出願日】2021-12-21
【審査請求日】2023-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237167
【氏名又は名称】富士フィルター工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】大東 勉
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴志
(72)【発明者】
【氏名】鹿浦 健司
(72)【発明者】
【氏名】荒木 保博
(72)【発明者】
【氏名】岩井 義孝
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-324220(JP,A)
【文献】国際公開第2016/068250(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/075050(WO,A1)
【文献】特開2019-182175(JP,A)
【文献】特開2020-142222(JP,A)
【文献】特表2009-533221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B01D 39/00-41/04
B01J 4/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本又は複数本の金属線材が、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付けられた中空筒状のフィルタであって、
押圧変形された第一金属線材部分と、該第一金属線材部分を介して押圧変形されると共に該第一金属線材部分と抵抗スポット溶接により接合された第二金属線材部分と、を含む変形接合部を備え、該変形接合部はその内側に位置する連通空間内に侵入していることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
1本又は複数本の金属線材が、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付けられた中空筒状のフィルタであって、
押圧変形された第一金属線材部分と、該第一金属線材部分と抵抗スポット溶接により接合された第二金属線材部分と、を含む変形接合部を備え、
前記第一金属線材部分は、該第一金属線材部分が属する線材層とは異なる他の線材層に入り込んで前記第二金属線材に接合しており、該第二金属線材部分は自身が属する線材層から逸脱していないことを特徴とするフィルタ。
【請求項3】
前記変形接合部は、前記金属線材の巻き終わり側の端部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ。
【請求項4】
最外層に位置する第三金属線材部分と該第三金属線材部分の内径側に位置する第四金属線材部分とが抵抗スポット溶接により接合された第二接合部を備え、
前記変形接合部と前記第二接合部は、中空部内から前記フィルタを外径方向に拡径させる外力が加えられた場合に、前記第一金属線材部分と前記第三金属線材部分を外径方向に剥離させる応力を発生させない位置関係で形成されることを特徴とする請求項3に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記変形接合部を構成する前記第一金属線材部分は、少なくとも該第一金属線材部分の厚さt1以上に押圧変形されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項にフィルタ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のフィルタが組み込まれたことを特徴とするガス発生器。
【請求項7】
1本又は複数本の金属線材を、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付ける線材巻き付け工程と、
前記金属線材の第一部分を押圧変形させると共に、該第一部分を前記金属線材の第二部分に抵抗スポット溶接により接合する接合工程と、を含み、
前記接合工程では、前記第一部分を介して前記第二部分を押圧変形させると共に、前記第一及び前記第二部分を、その内側に位置する連通空間内に侵入させることを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項8】
1本又は複数本の金属線材を、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付ける線材巻き付け工程と、
前記金属線材の第一部分を押圧変形させると共に、該第一部分を前記金属線材の第二部分に抵抗スポット溶接により接合する接合工程と、を含み、
前記接合工程では、前記第二部分を、該第二部分が属する線材層から逸脱させないようにしつつ、前記第一部分を、該第一部分が属する線材層とは異なる他の線材層に入り込ませた状態で前記第二部分に接合することを特徴とするフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ、フィルタの製造方法、及びガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両等には、車両等の衝突時に生じる衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置が装備されている。車両等の衝突時にエアバッグを瞬時に膨張および展開させるガス発生器は、車両等の衝突時にガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、これによりエアバッグを膨張および展開させる。ガス発生器には、ガス発生剤の燃焼によって生成される高温ガスの噴出を制御し、及び冷却するために金属製のフィルタが内蔵される。
【0003】
特許文献1には、金属線材を所定の螺旋角αで巻き付けることにより形成される巻線型のガス発生器用フィルタが記載されている。特許文献1には、金属線材が巻線体に溶接されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2009-533221公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、巻線型フィルタの外側面に形成される溶接部は、フィルタの運搬や組立作業等のハンドリング時に他の部品等に引っ掛かることで、フィルタ自身又は他の部分等を損傷させる可能性がある。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、接合された金属線材の部分が他の部品等に引っ掛かりにくくなるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、1本又は複数本の金属線材が、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付けられた中空筒状のフィルタであって、押圧変形された第一金属線材部分と、該第一金属線材部分を介して押圧変形されると共に該第一金属線材部分と抵抗スポット溶接により接合された第二金属線材部分と、を含む変形接合部を備え、該変形接合部はその内側に位置する連通空間内に侵入していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接合された金属線材の部分が他の部品等に引っ掛かりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るフィルタの模式的斜視図である。
図2】フィルタの製造方法について説明する模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係るフィルタが組み込まれたディスク型ガス発生器の概略図である。
図4】(a)~(c)は、変形接合部の部分拡大斜視図である。
図5】本発明の第一の実施形態に対応するフィルタの一部を実物写真で示す図である。
図6】(a)、(b)は、本発明の作用を説明する模式図である。
図7】本発明の第二の実施形態に係るフィルタに使用される金属線材を示す一部断面斜視図である。
図8】本発明の第二の実施形態に対応するフィルタの一部を実物写真で示す図である。
図9】(a)、(b)は、本発明の第二接合部の形成位置の決定方法について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0011】
〔フィルタの概略形状〕
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルタの模式的斜視図である。
本発明の実施形態に係る中空筒状のフィルタ(以下、フィルタ、という)200は、少なくとも一本の連続する金属線材220を、軸方向(図中上下方向)に対して一定の傾斜角度を有して、一定のピッチで螺旋状に、且つ多層状に巻き付けることにより形成される。ここで金属線材220が同じ方向に巻き付けられている個々の層を線材層L1、L2、L3・・・と称する。各線材層L1、L2、L3・・・を構成する金属線材は、正面視で中空筒状フィルタの軸方向(中心軸Ax1)に対して傾斜した同一方向へ延びており、また内外径方向に隣接する各線材層を構成する金属線材は互いに交差する方向に延びている(平行していない)。
【0012】
図1中における最外層の線材層Lnを構成する金属線材部分220(n)(厚みを図示省略)の延びる方向(金属線材部分220(n)の長手方向)は実線矢印で示した方向であり、その直ぐ内側の線材層Ln-1を構成する金属線材部分220(n-1)の延びる方向(金属線材部分220(n-1)の長手方向)は破線矢印で示した方向である。
即ちフィルタ200は、金属線材220を軸方向に対して一定の傾斜角度にて螺旋状に巻付けることにより形成した一つの線材層(例えば、線材層L1)と、一つの線材層L1の外周側に重ねて、且つ該一つの線材層L1を構成する金属線材とは異なる傾斜角度にて螺旋状に金属線材を巻付けることにより形成される他の線材層(例えば、線材層L2)と、を有する。一つの線材層L1とこれと隣接する他の線材層L2を夫々構成する金属線材同士は軸方向とは非平行であり、且つ互いに交差するように構成されている。
なお、線材層を構成する金属線材の軸方向に対する傾斜角度が一つの線材層中で変化するように構成してもよい。
【0013】
このフィルタ200は、液体や気体等の各種流体中から不要な物質等を除去し、また用途によっては同時にフィルタを通過する流体を冷却するために用いられる。また、このフィルタは、第一に、線材層が重なり合う方向、即ち、フィルタの径方向に流体が通過する流路を形成するように構成される。流体は、フィルタの内径側から外径側に通過させても、外径側から内径側に通過させてもよい。ここで径方向とは厳密な意味の直径方向(半径方向)ではなく、軸方向、周方向に対して、概ね径方向という意味である。
フィルタの大きさ(内径、外径、軸方向の各寸法等)は、フィルタが組み込まれる装置の構造や大きさに応じて適宜決定される。
このフィルタの材料となる金属の種類としては、鉄、軟鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅合金などを挙げることができ、中でもオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)が好適である。
【0014】
また、フィルタに使用される金属線材の太さ及び横断面形状(金属線材の長手方向に直交する方向における断面形状)は、フィルタの大きさ、フィルタが除去する物質、圧力損失等に応じて適宜決定される。例えば、ガス発生器用フィルタに使用される金属線材の断面積は0.03~0.8mm^2程度(横断面形状が真円形状の丸線を基準とすれば線径が0.2~1mm程度)とされる。
フィルタには、横断面形状が真円形状の金属素線を所定形状に圧延した金属線材が使用される。金属線材としては、横断面形状が偏平な矩形状となるように圧延された平角線や、横断面形状が概略V字状となるように圧延された異形線が使用される。フィルタ200において、金属線材220は捩れないように巻き付けられている。
【0015】
〔フィルタの製造方法〕
図2は、フィルタの製造方法について説明する模式図である。
フィルタ200を作製するには、まず巻付装置130を構成する心棒131の適所に金属線材220の一端(始端、巻き始め)を係止する。金属線材220に対して所定の張力を与えた状態にて、心棒131を、中心軸Ax2を中心として一定方向に所定速度で回転させると共に、金属線材220を供給するガイド部材132を心棒131の中心軸Ax2に沿って所定の速度で往復移動させる。この動作により、金属線材220は心棒131の外周に螺旋状、且つ多層状に巻付けられる。また、隣接する線材層を構成する金属線材同士が互いに交差して網目を形成する。
【0016】
例えば、心棒131の外周に直接巻き付けられる第1の金属線材層では、各金属線材220が心棒131の軸方向に対して所定角度θだけ時計回り方向へ傾斜しているとすると、第1の金属線材層の外周に巻き付けられる第2の金属線材層を構成する金属線材220は、心棒131の軸方向に対して所定角度θだけ反時計回り方向に傾斜する。
心棒131の軸方向の一端側(図中右側)に保持された金属線材220の始端部は、金属線材220が心棒131に2層以上巻き付けられたタイミングで、心棒131の軸方向の他端方向(図中左方向)に折り返される。折り返された始端部に重ねて更に金属線材220を巻き付けることにより、始端部を隣接する線材層間に挟み込んで固定する。その後、金属線材220を所定回数(所定階層数)巻付けた後、金属線材220の他端部(終端部、巻き終わり側)を、巻き付け済みの金属線材220の適所に対して抵抗スポット溶接により接合し、固定する。金属線材220を抵抗スポット溶接する溶接機150は、接合に必要な電流を流す電極151を備える。電極151は心棒131に対して進退可能に構成されており、金属線材220を所定の圧力で押圧でき、また押圧した状態で接合用の電流を流すことができる。
金属線材220の端部を接合した後、適宜の方法により金属線材220を切断して心棒131から取り外すことにより、中空筒状体を得る。
【0017】
心棒131の軸方向に対する金属線材220の角度(巻付け角度)、及び軸方向に隣接する金属線材220同士の間隔(ピッチ)は、心棒131の回転速度とガイド部材132の移動速度との比率を適宜調節することにより変更することができる。金属線材の太さ、巻付け角度、ピッチ、巻付け回数を適宜変更することにより、フィルタを通過する流体の圧力損失を適切な値に制御することができる。
なお、心棒131は概略円柱状又は円筒状であり、一般的にステンレス鋼、銅合金、アルミニウム合金などの金属から形成される。フィルタ200の内径は心棒131の外径に相当する大きさとなり、フィルタ200の外径は金属線材220の太さ(厚さ)と巻き付け回数に応じて適宜に調整される。
【0018】
以上の方法により製造された中空筒状体は、その全体への焼結処理が実施されることなく、そのままの状態でフィルタとして使用される。
【0019】
〔フィルタが組み込まれるガス発生器〕
図3は、本発明の一実施形態に係るフィルタが組み込まれたディスク型ガス発生器の概略図である。
ディスク型ガス発生器1は、軸方向の両端面(図中上下端)が閉塞された略円筒状のハウジングを備える。ハウジングの内部に形成された収容空間内には、内部構成部品としての保持部30、点火器40、カップ状部材50、伝火薬59、ガス発生剤61、下側支持部材70、上側支持部材80、クッション材85およびフィルタ200等が収容される。また、ハウジングの内部に設けられた収容空間には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤61が主として収容された燃焼室60が位置している。
【0020】
ハウジングは、上端面が開口した(上面開口を有する)概略有底円筒状の下部側シェル10と、下端面が開口した(下面開口を有する)概略有底円筒状の上部側シェル20とを備える。下部側シェル10と上部側シェル20とは、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板をプレス加工することにより成形される。
上面開口と下面開口とを対向させた状態にて、上部側シェル20の下端部に下部側シェル10の上端部を圧入すると共に、両者の当接部又はその近傍を電子ビーム溶接、レーザ溶接、又は摩擦圧接等により接合することによって、両者が一体化される。
上部側シェル20には、その下端縁から外径方向に突出したフランジ部25を備える。フランジ部25は、ディスク型ガス発生器1を外部の部材(たとえば、エアバッグ装置に設けられたリテーナ等)に固定するための部位である。
【0021】
下部側シェル10の底板部11の中央部からは、上部側シェル20の天板部21側に向かって突状筒部13が突出している。これによりハウジングの外部側、即ち突状筒部13の反対側には窪み部14が形成される。突状筒部13の天板部21側の端面には、ハウジングの内外を連通させる開口部15が形成されている。
開口部15を介して突状筒部13側と窪み部14側には点火器40を固定する保持部30が設けられる。保持部30は絶縁性樹脂からなり、インサート成形により形成される。
【0022】
点火器40は火炎を発生させる手段であり、点火薬とこの点火薬を着火させる抵抗体とを含む点火部41と、抵抗体に電力を供給する一対の端子ピン42とを備える。抵抗体はジュール熱を発生させて点火薬を発火させる。窪み部14には、端子ピン42と導通する雌型コネクタ部34が配置される。雌型コネクタ部34は、保持部30によって、収容空間内の気密性が担保された状態で固定される。
【0023】
底板部11には、突状筒部13、保持部30および点火器40を覆うようにカップ状部材50が組付けられている。カップ状部材50の中空部内には伝火薬59が収容される。
カップ状部材50は、点火器40が作動することによって伝火薬59が着火された場合に、その内部の空間の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂、変形または溶融する。 ハウジングの内部の空間のうち、上述したカップ状部材50が配置された部分を取り巻く空間は、ガス発生剤61が収容された燃焼室60である。カップ状部材50の外側表面には、これに隣接してガス発生剤61が配置される。
ガス発生剤61が収容された燃焼室60をハウジングの径方向に取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿って、本発明の実施形態に係るフィルタ200が配置されている。フィルタ200は、円筒状の形状を有しており、その中心軸Ax1がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されている。
【0024】
フィルタ200は、燃焼室60にて発生したガスがこのフィルタ200中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。なお、フィルタ200は、ハウジングの周壁部を構成する下部側シェル10の周壁部12および上部側シェル20の周壁部22との間で所定の大きさの間隙部28が形成されるように、当該周壁部12,22から離間して配置されている。
フィルタ200に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、複数個のガス噴出口23が設けられている。この複数個のガス噴出口23は、フィルタ200を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。なお、ガス噴出口23には、シールテープ24が貼り付けられている。シールテープ24は、燃焼室60の気密性を確保する。
【0025】
燃焼室60内の底板部11側には、フィルタ200をハウジングに固定すると共に、発生したガスがフィルタ200の軸方向端部下端と底板部11との間の隙間から流出することを防止する円環状の下側支持部材70が配置されている。また、燃焼室60内の天板部21側には、フィルタ200をハウジングに固定すると共に、発生したガスがフィルタ200の軸方向端部上端と天板部21との間の隙間から流出することを防止する円盤状の上側支持部材80が配置されている。下側支持部材70と上側支持部材80は、普通鋼や特殊鋼等の鋼板をプレス加工等することによって形成される。
上側支持部材80とガス発生剤61との間には、ガス発生剤61を底板部11側に向けて押圧する円盤状のクッション材85が配置されている。クッション材85はロックウールや発泡樹脂等から構成され、振動等によるガス発生剤61の粉砕を防止する。
【0026】
ガス発生器1は以下のように動作する。まず、車両が衝突すると、コントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。点火器40の作動により伝火薬59が燃焼を開始する。カップ状部材50が破裂してガス発生剤61が燃焼し、多量のガスが発生する。ガスはフィルタ200の内部を通過し、間隙部28に流入する。ハウジング内の内圧上昇に伴ってガス噴出口23を閉鎖していたシールテープ24が開裂し、ガス噴出口23を介してガスがハウジングの外部に噴出する。噴出したガスはエアバッグを膨張させ、展開させる。
【0027】
〔第一の実施形態〕
図1に示すように、本発明の実施形態に係るフィルタ200において、金属線材220はその長手方向の適所に抵抗スポット溶接によりフィルタ200の適所に接合された接合部230を備える。接合部230の少なくとも一つは、押圧変形された変形接合部231である。変形接合部231は、金属線材220を接合するために必要十分な加圧力を超える力で押圧されることにより、凹状に湾曲変形している。変形接合部231は、望ましくは金属線材220の巻き終わり側の端部(終端部)に形成される。
【0028】
<接合箇所>
フィルタ200は、金属線材部分が互いに接触している複数の接触部を有する。複数の接触部のうち、接合部230以外の部分は、接合が行われていない非接合部である。フィルタ200に対しては、全ての接触部(又は複数の接触部)を一括して接合するような熱処理(例えば焼結するための熱処理)は行われていない。このため、フィルタ200の製造コストを安価にでき、フィルタ200の製造時間を短縮できる。
【0029】
<変形接合部の変形形状>
図4(a)~(c)は、変形接合部の部分拡大斜視図である。
説明の便宜上、本図には金属線材の終端部と、終端部の内径側に位置する金属線材部分とにより形成される変形接合部の例を示している。しかし、変形接合部を形成する2つの金属線材部分の位置関係はこの限りでない。また、変形接合部は3つ以上の金属線材部分により形成されてもよい。以下に示す各形状例は、互いに矛盾しない限り、相互に組み合わせて実施してもよい。
【0030】
図示する変形接合部231は、金属線材220の終端部221に形成されている。変形接合部231を形成する金属線材部分は、巻き付け時の形状(周方向に沿った螺旋形状)から、局所的に凹陥するように変形されている。
変形接合部231は、図2に示す電極151(押圧手段、又は加圧手段)から直接に押圧力(加圧力)を受けて変形した第一金属線材部分(第一部分)220Aと、第一金属線材部分220Aと接合される第二金属線材部分(第二部分)220Bとを含み構成される。
図4に示された金属線材220は、横断面形状が偏平な矩形状となるように圧延されたいわゆる平角線である。金属線材220は、フィルタ200内において捩れずに巻き付けられている。即ち、金属線材220の厚さt1方向の一方の面は一貫して内径側(又は外径側)を向き、金属線材220の厚さt1方向の反対面は一貫して外径側(又は内径側)を向くように巻き付けられている。
【0031】
<<形状例1>>
図4(a)に示すように、変形接合部231においては、第一金属線材部分220Aと第二金属線材部分220Bの双方が内径方向に押圧変形(湾曲変形)している。第二金属線材部分220Bは、第一金属線材部分220Aを介して押圧変形されている。図示する第一金属線材部分220Aと第二金属線材部分220Bは、異なる線材層に属して交差方向に伸びる金属線材同士である。第一金属線材部分220Aが属する線材層と第二金属線材部分220Bが属する線材層は径方向に隣接していてもよいし、径方向に隣接していなくてもよい。
フィルタ200には、径方向に濾過流体を通過させる網目状の連通空間203が形成されている。変形接合部231はその内部側に位置する連通空間203内に侵入している。第一及び第二金属線材部分220A,220Bを変形させる側(図中内径側)には、変形後の第一及び第二金属線材部分220A,220B(即ち、変形接合部231の全体)を受け容れ可能な連通空間203が存在している。変形接合部231が入り込む連通空間203には、金属線材220の他の部分であって、第一及び第二金属線材部分220A,220Bの変形を妨害するものが存在しない。逆に言えば、金属線材を押圧変形させる側に変形接合部231を受け容れ可能な連通空間203が存在する位置関係にある金属線材部分が、変形接合部231を形成する第一及び第二金属線材部分220A,220Bとして選択されるように制御される。
【0032】
このような位置関係にある第一及び第二金属線材部分220A,220Bを選択することにより、必要最小限の加圧力で変形接合部231を形成できる。また、変形接合部231が、これを構成しない他の金属線材部分の張力による影響を受けにくくなり、変形接合部231の形状保持性が向上する。
第一及び第二金属線材部分220A,220Bは、各金属線材部分が属する線材層とは異なる他の線材層に夫々入り込むように変形されている。即ち、第一及び第二金属線材部分220A,220Bは、巻き付け時点における第一及び第二金属線材部分220A,220Bの径方向位置よりも内径側に位置するように、内部側に押し込まれる。第一金属線材部分220A、又は、第一及び第二金属線材部分220A,220Bの押圧変形量は、変形させなかった場合の形状に対して、少なくとも金属線材220の厚さt1以上に押し込み変形されていることが望ましい。
【0033】
<<形状例2>>
図4(b)に示すように、変形接合部231は、図2に示す電極151から直接に押圧される第一金属線材部分220Aのみが変形した態様であってもよい。この場合、第二金属線材部分220Bは、第二金属線材部分220Bが属する線材層に位置したまま、この線材層から逸脱しない状態で、第一金属線材部分220Aと接合される。このような変形接合部231は、少なくとも互いに隣接しない線材層に属する金属線材部分同士により形成される。図4(b)には、交差する方向に伸びる金属線材部分同士により形成された変形接合部231が示されている。
第一金属線材部分220Aは、該金属線材部分が属する線材層とは異なる他の線材層に入り込むように変形されている。第一金属線材部分220Aの押圧変形量は、変形させなかった場合の形状に対して、少なくとも金属線材220の厚さt1以上に押し込み変形されていることが望ましい。
【0034】
<<形状例3>>
図4(c)に示すように、変形接合部231は、同方向に伸びる第一金属線材部分220Aと第二金属線材部分220Bとが接合された態様であってもよい。このような変形接合部231は、少なくとも互いに隣接しない線材層に属する金属線材部分同士により形成される。
図示する変形接合部231は第一金属線材部分220Aのみが変形した態様であるが、第二金属線材部分220Bが変形した態様であってもよい。
【0035】
<変形接合部の形成位置>
変形接合部231は、フィルタ200の外側面の適所に形成される。具体的には変形接合部231は、図1に示すフィルタ200の外周面(径方向の外側の側面、最外周部)、内周面(径方向の内側の側面、最内周部)、及び軸方向の端面の何れかの適所に形成される。
特に変形接合部231は、フィルタ200の最外層Ln(図1)を構成する金属線材部分の適所に形成されることが望ましい。特に、変形接合部231は、図4等に示すように、終端部221に形成されることが望ましい。
【0036】
<変形接合部の形成方法>
変形接合部231は、第一金属線材部分220Aを押圧変形した後に、第一金属線材部分220Aを第二金属線材部分220Bに対して接合することにより形成される。金属線材220の終端部221に変形接合部231が形成される場合、終端部221(第一金属線材部分220A)をその内径側に位置する第二金属線材部分220Bに接合した後、適宜の方法にて金属線材220を切断する。
【0037】
<変形実施形態>
フィルタ200は、フィルタ200中に唯一の接合部230を有し、この接合部230が金属線材220の終端部221に形成された変形接合部231であってもよい。
フィルタ200は複数の接合部230を有してもよい。この場合、接合部230の少なくとも1つが変形接合部231とされる。フィルタ200が複数の接合部230を有する場合、変形接合部231は少なくとも金属線材220の終端部221に形成されることが望ましい。
変形接合部231を構成しない接合部230(非変形接合部)は、金属線材220を接合するために必要十分な加圧力を受けて溶接される。各接合部230は、個別に接合処理される。
【0038】
<第一実施例>
図5は、本発明の第一の実施形態に対応するフィルタの一部を実物写真で示す図である。本図は、金属線材220の終端部221を抵抗スポット溶接による変形接合部231とした例である。
第一金属線材部分220Aである終端部221は、その内径側に位置すると共に第一金属線材部分220Aと交差する第二金属線材部分220Bに抵抗スポット溶接されている。終端部221は電極151(図2)からの押圧力を受けて内径方向に押圧変形されており、第二金属線材部分220Bも終端部221からの押圧力を受けて内径方向に押圧変形されている。終端部221は押圧変形されているため、フィルタ200の運搬や組立作業等のハンドリング時に、金属線材220の切断端221aが他の部品等に引っ掛かったり、他の部分等を損傷する可能性が低くなる。
【0039】
<作用>
図6は、本発明の作用を説明する模式図である。(a)は金属線材220の終端部221を変形接合部231とした例を示し、(b)は金属線材220の終端部221を非変形接合部232とした比較例を示す。なお、図中紙面に垂直な方向はフィルタの軸方向に相当する。
図6(b)に示すように、内径方向に押圧変形されていない非変形接合部232においては、切断端221aが第二金属線材220Bから突出していると、切断端221aが他の部品等に引っ掛かったり、他の部分等を損傷させる可能性がある。
一方、図6(a)に示すように、本発明の実施形態に係る変形接合部231は内径方向に押圧変形されている。このため、切断端221aが第二金属線材220Bから突出していても、切断端221aが他の部品等に引っ掛かったり、他の部分等を損傷させる可能性が低減する。
【0040】
<効果>
本実施形態において、変形接合部は内部方向に押圧変形されているので、フィルタのハンドリング時に変形接合部が他の部品等に引っ掛かりにくくなる。このため、変形接合部は剥離しにくい。特に、金属線材の終端部を変形接合部とした場合は、終端部が他の部品に引っ掛かって剥離することを防止できる。更に、フィルタの取り扱い性が向上する。
【0041】
〔第二の実施形態〕
本発明の第二の実施形態は、フィルタを形成する金属線材が、概略V字状の横断面形状を有した異形線である点に特徴がある。
このような金属線材は、横断面形状が真円形状の金属素線を、異形線に対応した所定の表面形状を有する圧延ローラ対を用いて圧延変形させることにより得られる。
金属線材の外形状に起因する構成以外の部分については、第一の実施形態と同様である。以下、主として第一の実施形態と異なる部分について説明する。
【0042】
<線材形状>
図7は、本発明の第二の実施形態に係るフィルタに使用される金属線材を示す一部断面斜視図である。
金属線材220は、横断面視形状が概略V字形状である。金属線材220は、長手方向の全長に亘って伸びる凸所241を厚さ方向の一方の側に有し、長手方向の全長に亘って伸びる凹所242を厚さ方向の他方の側(反対側、裏側)に有する。一方の側に突出形成された屈曲形状の凸所241の裏側には、凸所241と対称的な形状となるように凹陥された凹所242が形成される。金属線材220は横断面視で、概ね一定の肉厚t2を有するように屈曲されている。
金属線材220は、フィルタ200内において捩れずに巻き付けられる。即ち、金属線材220の厚さ方向の一方の側に形成された凸所241は一貫して内径側(又は外径側)を向き、金属線材220の厚さ方向の反対側に形成された凹所242は一貫して外径側(又は内径側)を向くように巻き付けられている。
【0043】
<接合部の線材形状>
本実施形態においても、図4に基づき第一の実施形態にて説明したように、変形接合部231を形成する金属線材部分は、巻き付け時の形状(外周面に沿った螺旋形状)から、局所的に凹陥するように変形される。
溶接用の電流は、第一金属線材部分220Aが第二金属線材部分220Bに向かって湾曲するように押圧された状態で第一及び第二金属線材部分220A,220Bに供給される。そのため、第一金属線材部分220Aは、第二金属線材部分220Bと共に凸所241の高さが低くなるように(又は凹所242の深さが浅くなるように)変形する。この場合、第一及び第二金属線材部分220A,220Bは偏平状に変形してもよい。或いは、第一金属線材部分220Aは、第二金属線材220Bの外形状に応じて変形する。
【0044】
<第二実施例>
図8は、本発明の第二の実施形態に対応するフィルタの一部を実物写真で示す図である。
第一金属線材部分220Aである終端部221は、その内径側に位置すると共に第一金属線材部分220Aと交差する第二金属線材部分220Bに抵抗スポット溶接されている。終端部221は内径方向に押圧変形されており、第二金属線材部分220Bも終端部221からの押圧力を受けて内径方向に押圧変形されている。
終端部221は内径方向への押圧により、その凸所241と凹所242(図7)の高さが低くなるように変形した状態で第二金属線材部分220Bに対して接合される。或いは、終端部221は内径方向への押圧により、第二金属線材部分220Bの形状に合わせて変形した状態で第二金属線材部分220Bに対して接合される。第一金属線材部分220Aは終端部221において第二金属線材部分220Bとの接合面積が増大するので、変形接合部231における接合強度を高めることができる。
【0045】
<効果>
本実施形態は、第一の実施形態と同様の効果を奏する。また、金属線材を異形線とした場合は、変形接合部における第一金属線材部分と第二金属線材部分の接合面積を大きくできるので、接合強度を高めることができる。
【0046】
〔第三の実施形態〕
図9(a)、(b)は、本発明の第二接合部の形成位置の決定方法について説明する模式図である。図9は、フィルタから2つの接合部230,230間に位置する金属線材220部分を取り出して、軸方向の一方から観察した図に相当する。
本実施形態に係るフィルタは、金属線材220が互いに抵抗スポット溶接により接合された2つの接合部230,230を備える点に特徴がある。接合部230の一方は終端部221に形成された変形接合部231であり、接合部230の他方は最外周に位置する線材層Lnの他部位に形成された第二接合部233である。第二接合部233は、金属線材220のうち、第一金属線材部分220Aと共に最外層Lnに属する第三金属線材部分(第三部分)220Cと、第三金属線材部分220Cの内径側に位置する第四金属線材部分(第四部分)220Dとにより形成される。第二接合部233は、変形接合部としてもよいし、変形接合部としなくてもよい。
【0047】
ガス発生器1(図3)に組み込まれたフィルタには、ガス発生時に、中空部内からフィルタを外径方向に拡径させる外力が加えられる。
図9(a)に示すように、反力P/2を半径方向の分力と円周方向の分力とに分解する。

【0048】
θ≠180degでは、P/2について半径方向の分力が残存する。これは、接合部230,230を径方向に剥離させる力が生じていることを意味する。
図9(b)に示すように、θ=180degでは半径方向の反力はゼロとなり、円周方向の反力が最大(=P/2)となる。即ち、θ=180degとした場合には、接合部230,230を形成する金属線材部分220A,220Cを外径方向に剥離させる応力が発生しなくなり、接合部230,230の位置関係として最適である。
また、θ=180degとした場合には、抵抗スポット溶接時の分流防止という観点からも好都合である。
【0049】
<効果>
薄く圧延された金属線材同士を溶接する場合、金属線材の厚さ方向に溶接の溶け込み幅を確保することが難しい。そのため、フィルタの溶接部は、径方向への剥離力に対する耐性が比較的低くなる傾向にある。
最外層を構成する金属線材中に設けた接合部が終端部のみである場合、少なくとも、最外層の線材が受圧する荷重の全てを終端部が受けることになる。
本実施形態のように、最外層を構成する金属線材中に設けた接合部が終端部とその他の2箇所に設けられている場合、終端部は、接合部間の金属線材が受圧する荷重のみを受けることとなり、終端部が負担する荷重を低減させることができる。これにより、終端部の接合部が剥離して、フィルタがほどけるといったリスクを低減できる。
【0050】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様は、1本又は複数本の金属線材220が、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付けられた中空筒状のフィルタ200である。フィルタは、押圧変形された第一金属線材部分220Aと、第一金属線材部分を介して押圧変形されると共に第一金属線材部分と抵抗スポット溶接により接合された第二金属線材部分220Bと、を含む変形接合部231を備え、該変形接合部はその内側に位置する連通空間内に侵入していることを特徴とする。
本態様によれば、押圧変形部が他の部品等に引っ掛かりにくくなる。
【0051】
<第二の実施態様>
本態様は、1本又は複数本の金属線材220が、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付けられた中空筒状のフィルタ200である。フィルタは、押圧変形された第一金属線材部分220Aと、第一金属線材部分と抵抗スポット溶接により接合された第二金属線材部分220Bと、を含む変形接合部231を備え、第一金属線材部分は、第一金属線材部分が属する線材層とは異なる他の線材層に入り込んで第二金属線材に接合しており、該第二金属線材部分は自身が属する線材層から逸脱していないことを特徴とする。
本態様によれば、押圧変形部が他の部品等に引っ掛かりにくくなる。
【0052】
<第三の実施態様>
本態様に係るフィルタ200において変形接合部231は、金属線材220の巻き終わり側の端部(終端部221)に形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、終端部が他の部品等に引っ掛かりにくくなり、剥離しにくくなる。
【0053】
<第四の実施態様>
本態様に係るフィルタ200は、最外層Lnに位置する第三金属線材部分220Cと第三金属線材部分の内径側に位置する第四金属線材部分220Dとが抵抗スポット溶接により接合された第二接合部233を備え、変形接合部231と第二接合部は、中空部内からフィルタを外径方向に拡径させる外力が加えられた場合に、第一金属線材部分220Aと第三金属線材部分を外径方向に剥離させる応力を発生させない位置関係で形成されることを特徴とすることを特徴とする。
本態様によれば、終端部221が接合部間の金属線材が受圧する荷重のみを受けることとなり、終端部が負担する荷重を低減させることができる。これにより、終端部の接合部が剥離して、フィルタがほどけるといったリスクを低減できる。
【0054】
<第五の実施態様>
本態様に係るフィルタ200おいて変形接合部231を構成する第一金属線材部分220Aは、少なくとも第一金属線材部分の厚さt1以上に押圧変形されていることを特徴とする。
本態様によれば、変形接合部は金属線材を接合するために必要十分な加圧力を超える力で押圧されることにより、内部側に確実に押し込まれるので、押圧変形部が他の部品等に引っ掛かりにくくなる。
【0055】
<第六の実施態様>
本態様は、各実施態様に記載のフィルタ200が組み込まれたことを特徴とするガス発生器1である。
本態様のガス発生器は、各実施態様に記載の効果を享受する。
【0056】
<第七の実施態様>
本態様に係るフィルタ200の製造方法は、1本又は複数本の金属線材220を、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付ける線材巻き付け工程と、金属線材の第一部分(第一金属線材部分220A)を押圧変形させると共に、第一部分を金属線材の第二部分(第二金属線材部分220B)に抵抗スポット溶接により接合する接合工程と、を含み、接合工程では、第一部分を介して第二部分を押圧変形させると共に、第一及び第二部分を、その内側に位置する連通空間内に侵入させることを特徴とする。
本態様の方法により製造されたフィルタは、第一の実施態様と同様の効果を享受する。
【0057】
<第八の実施態様>
本態様に係るフィルタ200の製造方法は、1本又は複数本の金属線材220を、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付ける線材巻き付け工程と、金属線材の第一部分(第一金属線材部分220A)を押圧変形させると共に、第一部分を金属線材の第二部分(第二金属線材部分220B)に抵抗スポット溶接により接合する接合工程と、を含み、接合工程では、第二部分を、該第二部分が属する線材層から逸脱させないようにしつつ、第一部分を、第一部分が属する線材層とは異なる他の線材層に入り込ませた状態で第二部分に接合することを特徴とする。
本態様の方法により製造されたフィルタは、第二の実施態様と同様の効果を享受する。
【符号の説明】
【0058】
1…(ディスク型)ガス発生器、10…下部側シェル、11…底板部、12…周壁部、13…突状筒部、14…窪み部、15…開口部、20…上部側シェル、21…天板部、22…周壁部、23…ガス噴出口、24…シールテープ、25…フランジ部、28…間隙部、30…保持部、34…雌型コネクタ部、40…点火器、41…点火部、42…端子ピン、50…カップ状部材、59…伝火薬、60…燃焼室、61…ガス発生剤、70…下側支持部材、80…上側支持部材、85…クッション材、130…巻付装置、131…心棒、132…ガイド部材、150…溶接機、151…電極(押圧手段)、200…フィルタ、203…連通空間、220…金属線材、220(n),220(n-1),…金属線材部分、220A…第一金属線材部分(第一部分)、220B…第二金属線材部分(第二部分)、220C…第三金属線材部分(第三部分)、220D…第四金属線材部分(第四部分)、221…終端部、221a…切断端、230…接合部、231…変形接合部、232…非変形接合部、233…第二接合部、241…凸所、242…凹所、L1,L2...Ln…線材層、Ax1…(フィルタの)中心軸、Ax2…(心棒の)中心軸、t1…(金属線材全体の)厚さ、t2…(異形線の)肉厚
【要約】
【課題】接合された金属線材の部分が他の部品等に引っ掛かりにくくなるようにすることを目的とする。
【解決手段】1本又は複数本の金属線材220が、螺旋状、多層状、且つ内外径方向に隣接する金属線材部分同士が互いに交差する方向に伸びるように巻き付けられた中空筒状のフィルタ200である。フィルタは、押圧変形された第一金属線材部分220Aと、第一金属線材部分を介して押圧変形されると共に第一金属線材部分と抵抗スポット溶接により接合された第二金属線材部分220Bと、を含む変形接合部231を備え、該変形接合部はその内側に位置する連通空間内に侵入している。変形接合部において金属線材を押圧変形させたので、フィルタのハンドリング時に変形接合部が他の部品等に引っ掛かりにくくなる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9