(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】ヘッドレストスティ
(51)【国際特許分類】
B60N 2/806 20180101AFI20230427BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B60N2/806
A47C7/38
(21)【出願番号】P 2019117298
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】396008934
【氏名又は名称】松本工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸介
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0239377(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0031795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/806
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物の座席のシートバックのヘッドレストに使用されるヘッドレストスティにおいて、
金属製の直管で作製され、前記シートバックのサポートに上下動自在に挿入される左右一対の脚部と、
金属製の直管を屈曲させることにより略逆U字形状に形成され、これら左右一対の脚部の上端部のそれぞれに連結される
ブリッジ部とを備え、
上記一対の脚部にあって上記サポートに挿入されてその開口端に摺接する部分は、その内部に金属製の内管が挿入されて二重管構造に形成されるとともに、
上記一対の脚部と上記ブリッジ部とは突き合わせ状態で連結されており、この連結部には上記内管が挿入されているヘッドレストスティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はヘッドレストスティ、詳しくは乗り物の座席のシートバックに取り付けられるヘッドレストのヘッドレストスティの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車(乗り物)の座席のシートバックの上部には、着座乗員の頭部を保護するため、ヘッドレスト(頭部後傾抑止装置)が設けられている。このヘッドレストは、着座乗員の頭部が当たる枕部の外装材である袋状の表皮と、表皮の内部空間にブリッジ部が配される略逆U字形のヘッドレストスティと、このブリッジ部を収納した状態で表皮の内部空間に充填された発泡ウレタン(クッション体)とから形成されている。枕部の下面からは、ヘッドレストスティのブリッジ部の両端から下方へ延びた左右一対の脚部が突出する。これらの脚部は、それぞれ、シートバックに垂直に内装された管状の一対のサポートに内嵌され、一方の脚部外面に形成されたノッチ(切り欠き溝)の掛止位置を調節することで、ヘッドレストが上下動自在に設けられている。
【0003】
従来のヘッドレストスティは、例えば、特許文献1のように、1本の金属製のパイプを略逆U字形状に屈曲してその脚部(直線状部分)をシートバック上端に開口する樹脂製のサポートに挿入するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のヘッドレストスティは、断面が真円の1本の金属製のパイプを略逆U字形状に屈曲したものであった。すなわち、ヘッドレストスティに対しては、運転時、特に急ブレーキ作動時、サポートの開口から突出した部分に最大の外力が作用する。よって、パイプの材質、サイズなどはこの部分の曲げ強度に対応して設計されていた。その結果、金属パイプにおいて全体としては過剰な強度、過剰な材質などを有するものが使用されていた。つまり、ヘッドレストスティ全体としては重量が大となり、コストも高くなっていた。
【0006】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、枕部の発泡ウレタン(発泡体)に埋設されたヘッドレストスティのブリッジ部と、脚部のサポート開口当接部とでは運転時に作用する曲げ強度が異なることから、大きな外力が作用する部分についてのみ、補強を施すことで、全体としての重量軽減、コストダウンを実現できることを、知見した。そこで、ヘッドレストスティについては、作用する外力が大の部分、サポート開口端の摺接部、屈曲部をパイプ二重管、三重管構造とすることで、当該部分の補強を行うこととした。その結果、脚部とブリッジ部とに対して、それぞれ要求される機能や強度に適合した部材を任意に選択することが可能となり、ヘッドレストスティの品質やコストに優位性を与えることができることを知見し、この発明を完成させた。
【0007】
すなわち、この発明は、ヘッドレストスティにあって、各部における要求される機能や強度に適合した部材を任意に選択可能で、これにより、ヘッドレストスティの品質やコストに優位性を付与できるヘッドレストスティを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、乗り物の座席のシートバックのヘッドレストに使用されるヘッドレストスティにおいて、金属製の直管で作製され、前記シートバックのサポートに上下動自在に挿入される左右一対の脚部と、金属製の直管を屈曲させることにより略逆U字形状に形成され、これら左右一対の脚部の上端部のそれぞれに連結されるブリッジ部とを備え、上記一対の脚部にあって上記サポートに挿入されてその開口端に摺接する部分は、その内部に金属製の内管が挿入されて二重管構造に形成されるとともに、上記一対の脚部と上記ブリッジ部とは突き合わせ状態で連結されており、この連結部には上記内管が挿入されているヘッドレストスティである。
サポートの開口端に摺接する部分とは、脚部において直線状に形成された部分であって、少なくとも最上段のノッチよりも8~10cmだけ上側部分(この8~10cmとしたのは最上段ノッチから最下段ノッチの形成部の長さ範囲を意味する)である。一対の脚部のうちノッチが形成されていない脚部では、このノッチ形成脚部における最上段ノッチより8~10cmの長さに相当する範囲である。摺接する部分の範囲は、複数のノッチの最上段と最下段との間に相当する長さ範囲とする。これは、ノッチによりヘッドレストの高さ調整がなされるからである。
また、二重管とする部分については、サポート(グロメット)への摺接部分以外にも、脚部およびブリッジ部の屈曲部に対して、さらには、ヘッドレストスティを2本の直管(脚部)と逆U字形状の屈曲したブリッジ部とを接合して1本のパイプとして場合では、その突き合わせ接合部についても二重管構造とすることにより、補強することができる。なお、上記突き合わせ接合部については三重管構造とすることもできる。これは最も外力に対して弱い部分とされるからである。
なお、内管は外管(ヘッドレストスティ全体)と同一材質の金属パイプ、異なる材質のそれでも良い。カシメ加工する場合は前者が好ましい。
【0009】
乗り物とは、例えば、自動車、電車、汽車、飛行機、船舶などである。
座席の種類、形状およびサイズも、シートバックにヘッドレストを有するものであれば任意である。
ヘッドレストスティの構造は、枕部に埋設されるブリッジ部と、ブリッジ部の両端にそれぞれ連結された左右一対の脚部とを有していれば、任意である。
ヘッドレストスティの形状は、例えば、正面視して(シートバックにヘッドレストを装着した時の)略逆U字形状であるが、略コの字形状を含む。側面視形状については任意である。
【0010】
ブリッジ部および脚部を構成するヘッドレストスティの素材は、金属製パイプである。その断面形状、口径、材質、肉厚は任意とする。このうち、パイプ材からなるブリッジ部の形状としては、例えば、略コの字形状を含む略逆U字形状とする。そして、脚部にあっては、サポートの開口端に摺接する部分(所定長さに亘る部分)、ブリッジ部との連結部分(連続部分)、ブリッジ部の各屈曲部(湾曲部)には、金属製パイプの内管が挿入されて、この挿入部分の外管を補強している。二重管で構成し、その断面係数が、非挿入部分に比較して大きく高剛性となるため、例えば急停車時、着座乗員の頭部が枕部にぶつかって、ブリッジ部の上述した部分に大きな曲げモーメントが作用しても、ブリッジ部は変形しにくい。
【0011】
ブリッジ部および脚部を含むヘッドレストスティを構成する直管(金属製パイプ)の素材は、補強なしの部分がヘッドレストスティとしての強度を有する金属であれば任意である。例えば、各種の鋼管である。
【0012】
この金属製パイプの太さ(外径)は任意である。例えば、10mm~20mmでもよい。
2本の脚部のうちの少なくとも1本には、複数のノッチを長さ方向に所定ピッチで形成してある。これらのノッチには、シートバックからのヘッドレストの高さを調節する調節機構の掛止爪が掛止される。
金属製パイプ素材の厚さは任意である(2mm~1.5mm)。
【0013】
また、屈曲部、サポート開口摺接部に挿入される内管は、金属製パイプであって、上記スティを構成する金属製パイプ(外管)に挿入(圧入を含む)可能な口径である必要がある。その肉厚、管の長さは任意とする。その材質は外管と同じ例えばステンレス材、鋼材等が好ましい。
ここに、サポート(グロメット)は所定長さの円筒部材(樹脂)で構成され、シートバックの上部に内装されて、その上端開口がシートバックの上面に開口する。ヘッドレストスティにあって、左右一対の脚部は、このサポートに挿入されてその開口端に摺接する所定高さ範囲の部分は、開口端の摺接部に最大の外力が作用することから、二重管で補強されている。また、ブリッジ部については屈曲部が内管により補強される。
【0014】
なお、ブリッジ部と各脚部とは1本のパイプを曲げ加工することで製造するが、これらを3分割した3本のパイプ(2本の直管と逆U字形状管)を連結する構成とすることもできる。この場合、連結構造は任意である。例えば、対応する端部を縮径または拡径して行うパイプ同士の嵌合構造(圧入構造)、管径は同じで内管、すなわち各連結部分に連結用のスリーブを内篏して行うスリーブ嵌合構造でもよい。また、螺合構造でもよい。
連結強度をさらに高めるため、各連結部分(スリーブ付きの場合にはスリーブごと)に、カシメまたはスポット溶接を行うこともできる。カシメ加工は、円周方向、軸方向にそれぞれ複数箇所を押圧するスポットカシメとすることができる。
【0015】
上記一対の脚部と上記ブリッジ部とは突き合わせ状態で連結されており、この連結部には上記内管が挿入されている。
すなわち、ヘッドレストスティを1本のパイプで製造するのではなく、直管2本と逆U字管1本との3分割構造とし、これらを連結した。これら3本のパイプは同一材質、同一口径のものを使用する。この場合、好ましくは突き合わせ連結部分に対して外管を嵌合した3重管構造とする。補強のためである。
【0016】
また、各脚部とブリッジ部との連結部分や、ブリッジ部に設けられた屈曲部分は、その断面形状にあって、(乗り物の座席の)左右方向より、(座席の)前後方向を幅広にした方が(断面を長円形とする)、高剛性化が図れて好ましい。このことは、直管の状態のまま、または、左右方向を幅広に加工したときより断面係数が大きくなるように、連結部分の前後方向の長さを、その左右方向の長さより長くすることを意味する。これは、例えば薄肉化したブリッジ部の連結部分の剛性を、スリーブを使用せずに高めるための方法として有効となる。
このような形状に脚部とブリッジ部との連結部分を付形する方法としては、例えば、カシメ加工を採用する。
また、ブリッジ部のうち、脚部との連結側の端部は、例えば、縮径化または拡径化することで、脚部との連結が可能な直径としなければならない。
【0017】
カシメ加工は、カシメ機またはカシメ工具を用いて行うこともできる。アクチュエータにより対象部位にカシメ力を作用させる自動カシメ装置が好適である。
【0018】
上記内管は、その内管が挿入されたヘッドレストスティの一部にカシメ加工により固定されている。
スポットカシメ加工が好ましく、例えば軸方向に複数箇所かつ周方向に複数箇所等間隔に行うことが抜け防止に対しても好適となる。
【0019】
一対の脚部とブリッジ部とからなるヘッドレストスティの製造方法において、1本の直管からなる金属製パイプを準備する工程と、この金属製パイプの複数の位置に、この金属製パイプより長さの短い複数の金属製パイプの内管をそれぞれ挿入する工程と、この金属製パイプで上記内管が挿入された部位をカシメ加工することにより、金属製パイプと内管とを固定する工程と、この後、金属製パイプを略U字形状に屈曲させることにより、その屈曲部およびまたは金属製パイプが直線状に延びてシートバックのサポートに挿入されてそのサポートの開口に位置する部分に、上記カシメ固定した内管を位置させるようにしたヘッドレストスティの製造方法である。
このようにして製造されたヘッドレストスティは、以下の手順によりヘッドレストの製造に使用される。
すなわち、1本の金属製の直管に所定の曲げ加工を施すことにより、所定の逆U字形状のヘッドレストスティを作製する。このヘッドレストスティは、直線状に平行に延びる左右一対の脚部とこれらを連結した逆U字形状のブリッジ部が設けられている。
そこで、このブリッジ部が埋設されるように、このブリッジ部の周囲にクッション体を設ける。すなわち、ブリッジ部を取り囲むように表皮(袋)を被せ、脚部を表皮から突出させておき、この表皮内部空間にてクッション体(発泡ウレタン)を膨張させる。
このとき、1本のパイプの所定位置、例えば屈曲部、サポート開口端摺接部(パイプの両端から所定長さ範囲の位置)には内管(同じ金属管の口径が小さくて挿入できるもの)が挿入されている。そして、挿入された内管はカシメ加工により外管と一体となるよう固定されている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載のヘッドレストスティにあっては、金属製の直管で作製されて逆U字形状を呈している。すなわち、逆U字形状に屈曲乃至湾曲したブリッジ部が、直線状に平行に延びる左右一対の脚部を橋渡し状態に連結している。このとき、一対の脚部で前記シートバックのサポートに挿入されてその開口端に摺接する所定長さ範囲の摺接部分は、内管により二重管構造とされて補強されている。この結果、ヘッドレストスティ全体を構成する金属パイプを例えばその肉厚を薄くする(従来の1本パイプのスティに比較して)などとし、その全体としての軽量化、コストダウンを達成することができる。なお、内管をカシメ加工により補強されたサポート開口端摺接部分は、従来と同様に事故時などに作用する外力に対して充分な強度を保持することができる。
なお、二重管に限られず、特定部位については三重管構造とすることも可能である。同じく補強効果を発揮することができる。
【0021】
また、ヘッドレストスティについては、1本の直管を曲げ加工することの他にも、脚部とブリッジ部とを複数本に分割形成することもできる。その場合には、脚部とブリッジ部との連結部を突き合わせ接合することとなるが、この突き合わせ部において、内管を挿入、カシメ固定することで、その連結に対する強度を高めることができる。これらの結合端の一方を拡管し、他方端を拡管部に挿入するだけよりも高強度を達成することができる。なお、当該部位を三重管構造とすることも補強観点からは有効である。
ヘッドレストスティを3パーツへの分割タイプとすることは、それぞれの部分をメッキ、非メッキとすること、材質を変更することなどヘッドレストスティ設計上の自由度を高めることができる。
【0022】
上記内管は、その内管が挿入されたヘッドレストスティの一部にカシメ加工により固定されたため、その曲げ加工などにより内管の位置が移動することはない。スティの適切な位置(屈曲部など)に内管を保持することができる。カシメ加工は、スポットカシメが好ましいが、断面形状に変化を与えるその他のカシメ加工であってもよい。内管の挿入により当該部位の断面係数が大きくなり曲げなどに対する補強されているからである。
【0023】
このヘッドレストスティの製造方法において、1本のパイプを適切な長さにカットすることから始まり、内管として所定長さの同質の口径が小のパイプを挿入(圧入)し、カシメ加工により外管の所定位置に固定する。そして、この後、曲げ加工を行うため、その曲げ加工の作業中の内管の移動を阻止することができ、設定通りの補強を行うことができる。なお、メッキについては内管の挿入後、曲げ加工前に施工することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の
参考例1に係るヘッドレストスティを示す斜視図である。
【
図2】この発明の
参考例1に係るヘッドレストスティの一部である屈曲部を示す平面図(A)およびそのA-A線による断面図(B)である。
【
図3】この発明の実施例2に係るヘッドレストスティの一部である屈曲部を示す平面図(A)およびそのB-B線による断面図(B)である。
【
図4】この発明の
参考例1に係るヘッドレストスティの一部である屈曲部をサポートとともに示す平面図(A)およびそのA-A線による断面図(B)である。
【
図5】この発明の実施例2に係るヘッドレストスティの一部である屈曲部をサポートとともに示す平面図(A)およびそのA-A線による断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施例を、図面を参照して具体的に説明する。ここでは、説明の都合上、左右方向を乗り物の座席の幅方向、前後方向を座席の前後方向とする。
【実施例】
【0026】
図1において、10はこの発明の
参考例1に係るヘッドレストスティである。このヘッドレストスティ10は、自動車の座席のシートバックのヘッドレストの構成部品として使用される。ヘッドレストスティ10は、正面視して、1本の金属パイプを屈曲して略逆U字形状としてある。この金属製の直管(断面は一定の真円の円筒)は、原材から切断されて所望長さに設けられた後、その端部を面取り加工し、一端部(直線状部分)の所定位置にのみ複数のノッチ加工が施される。この後、どぶ漬けなどによるメッキ処理がなされ、さらにその後、曲げ加工により逆U字形状に屈曲される(加工機使用)。一対の脚部11,12については、直線状に延びることとし、それぞれがシートバックの一対のサポートに挿入される。脚部11,12同士はブリッジ部(逆U字形部)14により連結または連続された状態とされる。
したがって、ヘッドレストスティ10は、左右一対の脚部11,12と、各脚部11,12の上端部同士を連結するステンレス製のパイプからなるブリッジ部14とを有している。また、一方の脚部12には複数のノッチ(切り欠き溝)13,13・・がその長さ方向に等間隔で形成されている。
そして、このヘッドレストスティ10にあっては、金属製パイプを外管とし、その外管の一部には内管15,15・・・が複数個挿入固定されている。内管15は全体として6個であって、直線状部分である脚部11,12の上端部(サポートへの挿入後ではサポート開口から上側部分の意)に2個、脚部11,12とブリッジ部14との境界近傍である屈曲部に2個、ブリッジ部14の90度屈曲した部分に2個、併せて6個、左右対称状態で配置固定されている。全ての内管15はカシメ加工により当該部位に固定されている。
外管であるヘッドレストスティ10が所定口径の金属パイプで、その肉厚が一定とされると、内管15は同質材で形成されその口径が外管10に密着して挿入可能な大きさに設定されている。なお、脚部11,12とブリッジ部14との連続部分(屈曲部を含む)に嵌入された内管15は直線状部分がサポートの開口端に摺接する部分となる。
【0027】
図2(A),(B)および
図4(A),(B)はこの発明の
参考例1に係るヘッドレストスティの一部を示す。後者はサポート21との位置関係を説明するための図である。これらの図では二重管構造とする部分が、サポート21の開口端に摺接する部分であって、最上段ノッチから8~10cmの長さ範囲とすることを示している(ノッチなし脚部ではこれと同じ位置で同じ長さ範囲を二重管とする)。これは、車両などでの衝突時、ブレーキ時などにおいて最も大きな荷重(外力)が作用するヘッドレストスティ10の部分は、このサポート21の開口端21Aに摺接(当接)する部分だからである。
【0028】
図2は、この2重管構造の屈曲部についてより具体的に説明するための図である。
同図(A),(B)においてはヘッドレストスティ10の一部のみを示す。内管15は直線状部分から屈曲部を経てさらに若干上方に延長されている。そして、この内管15は屈曲部をはさむ2カ所においてスポットカシメ加工により外管(スティ)10に対して強固に結合されている。スポットカシメ加工は、小さい加工圧力を穴状に加えて内外管同士を接合する方法で、強度のある接合が可能で、強度の異方性がなく、力の方向に左右されない特徴を有している。特に、屈曲部位の前後2カ所においてスポットカシメを行うことにより、屈曲加工における内管のずれなどを防止することができる。
22、23は、これらのスポットカシメによる複数の穴を示す。これらの穴は一例として周方向にて2カ所、軸方向に2カ所それぞれ等間隔に配置されている。すなわち、全体として4つのカシメ穴が2カ所、合計8個のカシメ穴を有して結合されている。なお、穴数、穴径、深さ、その間隔などは、これに限られない。
図4におけるサポート21は樹脂製円筒体であって、シートバックにその上端が開口するように固定される。ヘッドレストにあって下端から突出したヘッドレストスティの脚部11,12は、このサポート21に挿入されて上下動自在に支持されることとなる。その場合のヘッドレストの高さ調整はシートバックに内装された爪に上記脚部11,12の一方に形成したいずれかのノッチがかみ合うことで行われる。
【0029】
図3(A),(B)および
図5(A),(B)は、1本の金属製パイプを折り曲げることにより形成されたヘッドレストスティではなく、ヘッドレストスティ30が、脚部31とブリッジ部32とで突き合わせ結合されている例である。
すなわち、ブリッジ部32の屈曲部分(鈍角で曲げられている部分)の手前で、脚部パイプ(同径、同一材質のパイプ同士)31とブリッジ部パイプ32とが突き合わされて、この突き合わせ部分および屈曲部分には、内管33が挿入されており、かつカシメ結合されている。スポット穴34,35は、脚部側に2×2の4カ所、ブリッジ部側に同じく4カ所、形成されている。この結果、突き合わせ部分の結合と、屈曲部の補強とを同時に行う構成である。
さらに、この突き合わせ接合部分にあっては外管40が外嵌めされて全体としては三重管の構造に形成されている。この部分はカシメ加工により内管33,スティ30(31,32)および外管40が一体に固定されるため、さらなる強度向上に資するものである。なお、外管、内管、スティは同一材質とする。
なお、脚部をブリッジ部とは別体としてあるのは、脚部のみをどぶ漬けメッキ処理し、コストダウンなどに適合するものである。
【0030】
なお、スポットカシメを行わない場合は、例えばスポット溶接、焼き嵌め、冷やし嵌めなど各種の固定方法を実施することも可能である。圧入のみによることも選択枝の一つである。
さらに、真円パイプについて二重管部分を周方向から均等にスポットカシメを行うことで真円を維持でき、その断面係数の増加による補強効果を達成することができるが、カシメ加工では真円二重パイプ部分を両側から圧することで断面を長円形とすることも可能である。この場合は、長円形断面の長軸が車両前後方向にセットすることで、さらなる補強効果を発揮する。
【0031】
各脚部は、座席のシートバックに内蔵されたフレームに、2本のスティ保持具(サポート21)を介して、上下方向にスライド自在に支持されるものである。
各脚部は、直径(外径)12.7mm、厚さ2mmのステンレス製の直管である。各脚部の長さは同一である。このうち、一方の脚部の内側面(左側面)には、長さ方向に所定ピッチで複数のノッチが形成されている。これらのノッチには、スティ保持具が有する図示しない掛止爪が掛止される。
また、ブリッジ部を被包するクッション体は、発泡ウレタンフォーム製の枕状をした緩衝ブロックである。
【0032】
次に、この発明の参考例1に係るヘッドレストスティ10の製造方法について説明する。
第1に、1本の金属管(ステンレスパイプ)を所定長さに切断する。ついで、脚部相当部位に複数のノッチ加工を施す。例えば等間隔で3カ所に加工溝をプレスなどで成形する。次いで、所定長さの内管を長管である上記ステンレスパイプの所定位置、例えばノッチ形成部より奥側位置に挿入する。次に、この内管挿入位置においてスポットカシメ加工を施し、内管を外管に固定する。さらに、所定の曲げ加工を施す。これにより略逆U字形状のヘッドレストスティを得る。なお、端部面取り、メッキなども施される。
このようにして製造されたヘッドレストスティ10にあっては、ブリッジ部を表皮(プラスチックバッグ)内に挿入し、ウレタン樹脂を発泡させてクッション体と一体化し、ヘッドレストを完成する。
完成されたヘッドレストは一対の脚部が枕部分から平行に突出しており、これをシートバックのサポートに挿入することとなる。高さ調整はノッチと掛止用爪との係脱による。
なお、突き合わせ部分を二重管としたとき、この部分に外管を外嵌めした三重管構造とすることもできる。3段階の強さを有するスティを作製することも可能となり、特定部位を高強度とし、他の部位を比較的低強度とするなど、必要な強度に対応した構造のヘッドレストスティを得ることができる。
このことは、外管パイプを薄肉パイプとし、補強必要位置では二重管、さらにサポート開口部は三重管構造とすることで、その要求に耐えることができる。
【0033】
すなわち、このヘッドレストスティは、金属製の直管を屈曲するなど賦形することで略逆U字形状に形成される。すなわち、サポートに挿入される一対の脚部とこれらを連続するブリッジ部とを有する。
そして、このヘッドレストスティの一部を二重管の構成とする。屈曲部(湾曲部)、サポート開口端の摺接部(長さ範囲はノッチ設置範囲と対応する)に、二重管構造を採用する。また、脚部をブリッジ部とは別体とした分割スティではその結合部を二重管構成とする。
金属管全体としての曲げ強度大、中、小とに分けて、適切な補強を行うこととする。これは無駄な高強度部位を廃して適切な強度を保持することを目的としたものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、乗り物の座席のシートバックに取り付けられるヘッドレストスティについての技術として有用である。
【符号の説明】
【0035】
10 ヘッドレストスティ、
11,12 脚部、
14 ブリッジ部、
15 内管、
21 サポート。