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特許7269662衝撃波発生装置および衝撃波アブレーションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】衝撃波発生装置および衝撃波アブレーションシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/26 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
A61B18/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020511041
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013827
(87)【国際公開番号】W WO2019189672
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2018066022
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520275467
【氏名又は名称】サウンドウェーブイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕朗
(72)【発明者】
【氏名】高山 和善
(72)【発明者】
【氏名】下川 宏明
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-61083(JP,A)
【文献】特開昭61-193653(JP,A)
【文献】特開2012-85812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーと反射部とを備え、前記反射部内で発生させた衝撃波を反射部外に反射収束させる衝撃波発生装置であって、
前記反射部は、
焦点を有する凹面と、前記光ファイバーを挿通する貫通孔とを備えた反射体と、
前記凹面の開口部を封止する封止体と、
前記凹面と前記封止体の間に充填される液体とを有し、
前記光ファイバーの先端部に備えた円錐台形状のレーザー収束部の先端から前記凹面の焦点までの距離Lxが[数1]及び[数2]を満たす、衝撃波発生装置。
【数1】
【数2】
(ただし、[数2]中、「α」はレーザー収束部の軸方向断面で表される等脚台形の成す角度、「nqtz」は光ファイバーのコアの屈折率、「nliq」は液体の屈折率、「NA」は光ファイバーの開口数、「M」はレーザー収束部の基端部におけるコア径、「h」はレーザー収束部の円錐台の高さを表す。)
【請求項2】
光ファイバーと反射部とを備え、前記反射部内で発生させた衝撃波を反射部外に反射収束させる衝撃波発生装置であって、
前記反射部は、
焦点を有する凹面と、前記光ファイバーを挿通する貫通孔とを備えた反射体と、
前記凹面の開口部を封止する封止体と、
前記凹面と前記封止体の間に充填される液体とを有し、
前記光ファイバーの先端部に備えた円錐台形状のレーザー収束部の先端から前記凹面の焦点までの距離Lxが[数3]及び[数4]を満たす、
衝撃波発生装置。
【数3】
【数4】
(ただし、[数4]中、「α」はレーザー収束部の軸方向断面で表される等脚台形の成す角度、「nqtz」は光ファイバーのコアの屈折率、「nliq」は液体の屈折率、「NA」は光ファイバーの開口数、「M」はレーザー収束部の基端部におけるコア径、「h」はレーザー収束部の円錐台の高さを表す。)
【請求項3】
光ファイバーと反射部とを備え、前記反射部内で発生させた衝撃波を反射部外に反射収束させる衝撃波発生装置であって、
前記反射部は、
焦点を有する凹面と、前記光ファイバーを挿通する貫通孔とを備えた反射体と、
前記凹面の開口部を封止する封止体と、
前記凹面と前記封止体の間に充填される液体とを有し、
前記凹面が、[数5]及び[数6]によって特定される形状(x,y)を、[数5]で表される楕円の長軸を回転軸として回転させることにより得られる曲面を切断した切断回転面である、
衝撃波発生装置。
【数5】
【数6】
(ただし、[数6]中、「θ」は、任意の時間における衝撃波の波面をS、衝撃波が完全な球状であると仮定した理想衝撃波の波面をI、理想衝撃波の中心点をC、波面S及び波面I上の点であって光ファイバーの中心軸の延長上に位置する点をSfとした場合に、中心点CとSfとを結ぶ線を基準とする中心点C周りの角度を表し、「ΔD」は、中心点Cを通り中心角がθである前記理想衝撃波の半径方向の直線と波面S及び波面Iとの交点をそれぞれSθ及びIθとした場合に、交点Sθと交点Iθとの距離を表す。)
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の衝撃波発生装置と、前記衝撃波発生装置が先端に固定されたカテーテルとを備える、衝撃波アブレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃波発生装置および衝撃波アブレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水中にパルスレーザー光を照射し、水中に発生させた衝撃波を反射収束させて、尿路結石や腎臓結石を破砕除去する衝撃波発生装置が知られている。
本発明者は、特許文献1に示すように、光ファイバーと円柱状の反射体とを備え、カテーテルに組み入れ可能な大きさまでに小型化した衝撃波発生装置の開発に成功している。そして、カテーテルを通じて心内膜側から不整脈の原因となる心筋組織、特に、深部の心筋組織を壊死させる不整脈の治療方法を提案している。また、本発明者は、特許文献2に示すように、このような衝撃波発生装置に好ましい光ファイバーを提案している。
さらに、本発明者は、非特許文献1に示すように、光ファイバーの先端形状を円錐台とした場合、テーパ角αによって波面の形状が異なること、及びテーパ角αが大きいほど衝撃波の波面は球形に近くなることを発表している。また、テーパ角αが20°~50°の場合、テーパ角αが小さいほど衝撃波の波面はレーザー出射方向から背後にかけて膨らむこと、及びテーパ角αが30°~50°のときに衝撃波の強度(過剰圧)が最大となったことを発表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4635233号
【文献】特許第5435739号
【非特許文献】
【0004】
【文献】QスイッチHo:YAGレーザ光を用いたファイバ先端形状による水中衝撃波の挙動変化、山本裕朗、高山和喜、下川宏明、平成25年度衝撃波シンポジウム講演論文集 1B2-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、従来の衝撃波発生装置では、光ファイバーの先端を反射体の凹面の焦点と一致させるように配置することが一般的であり、かつ、上記衝撃波の波面の歪みについては全く考慮されていなかった。本発明者は、これらの点について詳細な実験を重ねた結果、光ファイバーの先端を凹面の焦点よりも後方の適切な位置に配置することにより、衝撃波を反射部外の一点(収束点)に効率よく反射収束させることができ、衝撃波の過剰圧を飛躍的に向上可能であることを見出した。
すなわち、本発明は、液体中に発生させた衝撃波を効率よく反射収束させることができる衝撃波発生装置および衝撃波アブレーションシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光ファイバーと反射部とを備え、前記反射部内で発生させた衝撃波を反射部外に反射収束させる衝撃波発生装置であって、前記反射部は、一端側に設けられ、長軸を回転軸とする回転楕円面又はこれを修正した曲面を切断した切断回転面形状からなる凹面と、前記回転軸と同軸に設けられ、他端側から前記光ファイバーを挿通する貫通孔とを備える反射体と、前記凹面の開口部を封止する封止体と、前記凹面と前記封止体の間に充填される液体とを有し、前記光ファイバーは、先端が前記凹面の焦点よりも前記反射部の他端側であって、前記凹面で反射した前記衝撃波が前記反射部外で収束可能な位置に配置されていることを特徴としている。
本発明において、「長軸を回転軸とする回転楕円面又はこれを修正した曲面を切断した凹面」とは、回転楕円面又はこれを修正した曲面を回転軸と平行な平面以外で切断することにより得られる凹面をいう。
【0007】
本発明の衝撃波発生装置では、光ファイバーの先端が、凹面の焦点よりも反射部の他端側であって、凹面で反射した衝撃波が反射部外で収束可能な位置に配置されている。このため、光ファイバーの先端からパルスレーザー光を照射して、液体中に衝撃波を発生させる際に、この衝撃波の発生中心と凹面の焦点とを実質的に一致させることができ、この結果、凹面で反射した衝撃波を反射部外の一点に効率よく収束させることができる。
【0008】
本発明の衝撃波発生装置において、光ファイバーが、先端部に円錐台形状のレーザー収束部を備えていることが好ましい。この場合、レーザー収束部の前方にてパルスレーザー光を集光させることができ、液体中により大きな衝撃波を発生させることができる。
【0009】
本発明の衝撃波発生装置において、レーザー収束部の先端から前記焦点までの距離Lxが[数1]及び[数2]を満たすことが好ましい。
【数1】
【数2】
ただし、[数2]中、「α」はレーザー収束部の軸方向断面で表される等脚台形の成す角度、「nqtz」は光ファイバーのコアの屈折率、「nliq」は液体の屈折率、「NA」は光ファイバーの開口数、「M」はレーザー収束部の基端部におけるコア径、「h」はレーザー収束部の円錐台の高さを表す。
なお、「数2」の条件(I)は、実質的にパルスレーザー光の全てが全反射する条件であり、条件(II)は、パルスレーザー光の一部が全反射し、一部が透過する条件である。
そして、「数2」の条件(I)、(II)における「d」は、それぞれレーザー収束部内を全反射したパルスレーザー光がレーザー収束部の先端から照射されてレーザー収束部の前方で集光したとき、その集光点とレーザー収束部の先端との距離の理論値である。
【0010】
本発明の衝撃波発生装置において、レーザー収束部の先端から前記焦点までの距離Lxが[数3]及び[数4]を満たすことが好ましい。
【数3】
【数4】
ただし、[数4]中、「α」はレーザー収束部の軸方向断面で表される等脚台形の成す角度、「nqtz」は光ファイバーのコアの屈折率、「nliq」は液体の屈折率、「NA」は光ファイバーの開口数、「M」はレーザー収束部の基端部におけるコア径、「h」はレーザー収束部の円錐台の高さを表す。
なお、「数4」の条件(III)は、ある特定のパルスレーザー光以外のパルスレーザー光がレーザー収束部を透過する条件である。
そして、「数4」において、「d」は、レーザー収束部を透過したパルスレーザー光がレーザー収束部の前方で集光したとき、その集光点とレーザー収束部の先端との距離の理論値である。
【0011】
本発明の衝撃波発生装置において、凹面が、[数5]及び[数6]によって特定される形状(x1,y1)を、[数5]で表される楕円の長軸を回転軸として回転させることにより得られる曲面を切断した切断回転面であるものが好ましい。
【数5】
【数6】
ただし、[数6]中、「θ」は、任意の時間における衝撃波の波面をS、衝撃波が完全な球状であると仮定した理想衝撃波の波面をI、理想衝撃波の中心点をC、波面S及び波面I上の点であって光ファイバーの中心軸の延長上に位置する点をSfとした場合に、中心点CとSfとを結ぶ線を基準とする中心点C周りの角度を表し、「ΔD」は、中心点Cを通り中心角が「θ」である前記理想衝撃波の半径方向の直線と波面S及び波面Iとの交点をそれぞれSθ及びIθとした場合に、交点Sθと交点Iθとの距離を表す。
このように凹面を修正することにより、修正前の回転楕円面の焦点で発生した衝撃波が凹面の各部で反射し、反射部外の一点に収束するまでの伝播距離を等しくすることができるため、衝撃波が非球状であっても効率よく反射収束させることができる。
【0012】
本発明の衝撃波アブレーションシステムは、本発明の衝撃波発生装置と、前記衝撃波発生装置が先端に固定されたカテーテルとを備えることを特徴としている。そのため、衝撃波の過剰圧が高く、不整脈等に対するアブレーション治療に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】衝撃波発生装置の実施形態の一例を示す軸方向の断面図である。
図2図2(a)は光ファイバーを示す軸方向の断面図であり、図2(b)はその一部拡大図である。
図3図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)は、それぞれ光ファイバー内を進む所定の入射角のパルスレーザー光を示す概略図である。
図4図4(a)は凹面と封止体との間に形成される空間に充填される液体を灌流するための給排水構造を備えた実施形態を示す正面図であり、図4(b)はそのX-X線断面図であり、図4(c)は給排水構造を備えた他の実施形態を示す正面図であり、図4(d)、図4(e)はそれぞれY1-Y1線断面図、Y2-Y2線断面図であり、図4(f)は給排水構造を備えたさらに他の実施形態を示す正面図であり、図4(g)はそのZ-Z線断面図である。
図5】衝撃波の波面Sと理想衝撃波の波面Iとを示す概略図である。
図6】凹面が、回転楕円面を修正した曲面を切断した切断回転面形状である場合の衝撃波の伝播距離を示す、軸方向の概略断面図である。
図7】理想衝撃波の中心点を求めるために使用した衝撃波の高速度画像である。
図8】光ファイバーの先端位置と衝撃波の最大過剰圧の関係を示すグラフである。
図9図9(a)は光ファイバー(レーザー収束部)の先端の角度αが0°~60°の場合における、Lx/dと衝撃波の最大過剰圧Pmaxとの関係を示すグラフであり、図9(b)はLx/dと過剰圧の増加率との関係を示すグラフである。
図10】角度αが30°である場合の衝撃波の中心点Cの位置(レーザー収束部の先端からの距離dの位置)と光ファイバーのコア径Mとの関係を示すグラフである。
図11図11(a)は光ファイバーのコア径が600μmの場合、図11(b)は光ファイバーのコア径が400μmの場合、図11(c)は光ファイバーのコア径が300μmの場合における、凹面の開口部から光ファイバーの先端までの距離Wと衝撃波の最大過剰圧Pmaxとの関係を示すグラフである。
図12】レーザー収束部の先端の角度αが30°の場合における、角度θと交点Sθから交点Iθまでの距離ΔDとの関係を示すグラフである。
図13】凹面の開口部からパルスレーザー光の出射方向に距離Zだけ離れた位置における衝撃波の最大過剰圧Pmaxを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.第1の実施形態
初めに、衝撃波発生装置10の第1の実施形態について説明する。
図1の衝撃波発生装置10は、光ファイバー11と、反射部12とを備えている。図1の衝撃波発生装置10におけるパルスレーザー光の出射方向(図1の左側)を前方、その反対方向(図1の右側)を後方とする。
反射部12は、一端側(前側)に設けられ、長軸を回転軸とする回転楕円面又はこれを修正した曲面を切断した凹面21と、凹面21の回転軸と同軸に設けられ、他端側(後側)から光ファイバー11を挿通する貫通孔22とを備えた反射体20と、凹面21の開口部を封止する封止体23と、凹面21と封止体23との間に充填される液体24とを有する。
光ファイバー11は、貫通孔22に挿通されるため、その中心軸は凹面21の回転軸と一致することとなる。また、光ファイバー11の先端(前側の端部)は、反射部12内、詳しくは凹面21と封止体23とに形成される空間内であって、凹面21の焦点Fよりも後側(図1の右側)に配置される。
この衝撃波発生装置10は、光ファイバー11を通して凹面21と封止体23の間に充填された液体24にパルスレーザー光を照射することにより、液体中に衝撃波を発生させ、その衝撃波を凹面21で反射させて反射部12外の一点に収束させる。これにより、例えば、患部が心筋組織の深層に存在していても、患部組織を壊死させることができる。
この衝撃波発生装置は、比較的構造がシンプルであるため、小型化可能で、容易にカテーテル14の先端に取り付けることができる。この場合、不整脈等に対するアブレーション治療に適用可能な衝撃波アブレーションシステムとして利用することができる。
【0015】
光ファイバー11は、図2(a)に示すように、線状の本体部16と、その先端部(パルスレーザー光出射側の端部)に設けられたレーザー収束部17とから構成されることが好ましい。本体部16は、コア16aと、その外周に設けられたクラッド16bとを備えている。また、本体部16は、可撓性を有している。なお、クラッド16bの外周に被覆を設けてもよい。
光ファイバー11のコア16aは、特に制限されることなく、樹脂製やガラス製のものを用いることができるが、石英製のもの、特に脱水酸基処理を施した石英製のものが好ましい。なお、コア16aの屈折率nqtzは、好ましくは1.3~1.8であり、より好ましくは1.4~1.6である。また、コア16aの径(以下、「コア径」という。)Mは、好ましくは10μm~2000μmであり、より好ましくは50μm~1000μmであり、特に好ましくは100μm~600μmである。
一方、クラッド16bは、コア16aの屈折率nqtzよりも低いものであれば特に制限されることはなく、樹脂製やガラス製のものを用いることができるが、石英製のものが好ましい。なお、クラッド16bの屈折率は、好ましくは1.0~1.5であり、より好ましくは、1.3~1.4である。なお、光ファイバー11の本体の開口数NAは、0~0.9となるようにするのが好ましく、0~0.3となるようにするのがより好ましい。
【0016】
レーザー収束部17は、先端に向かって直径が小さくなるように構成することが好ましい。例えば、特許文献2に記載される光ファイバーのように、先端が軸方向に対して垂直な平面となっており、かつ、軸方向に沿った断面(以下、「軸方向断面」という。)において、側辺の変形方向に対する内角が先端に向かって徐々に小さくなるように構成してもよい。しかしながら、図2(b)に示すように、先端に向かって径が小さくなる円錐台形状に構成することがより好ましい。この場合、レーザー収束部17と、本体部16とは同軸である。このようにレーザー収束部17の軸方向断面で表される形状を略等脚台形とすることにより、つまり、台形の両側辺17bを実質的に同一角度で傾斜させ、かつ、先端面17a(短底)を平坦にすることにより、レーザー収束部17の前方において、効率的にパルスレーザー光を集光させることができる。詳しくは、レーザー収束部17の側辺17bの内面で全反射するパルスレーザー光が、レーザー収束部17内で集光され、レーザー収束部の先端面17aから照射される。そして、レーザー収束部の先端面17aから照射されたパルスレーザー光が、レーザー収束部17の前方に集光する(図3(a)、(b)参照)。一方、レーザー収束部17を透過するパルスレーザー光は、レーザー収束部17の側辺17bを透過して、レーザー収束部17の前方に集光する(図3(c)参照)。このようにレーザー収束部17は、パルスレーザー光がレーザー収束部17を全反射する、または、透過するに関わらず、レーザー収束部17の前方において、パルスレーザー光を収束させることができる。
なお、レーザー収束部17のコアの表面は鏡面で、微細な亀裂や凹凸が無いことが好ましい。このようにレーザー収束部17のコアの表面を鏡面とすることにより、界面でのパルスレーザー光の吸収を防ぐことができる。また、レーザー収束部17のコアの表面に微細な亀裂や凹凸に水が入り込み、その亀裂を起点としたレーザー収束部17の破壊を防止することができる。ここで、鏡面とは、算術平均粗さRaが0.05μm以下、好ましくは0.01μm以下である状態をいう。このような鏡面は、機械研磨、レーザーポリッシュ、割断法、アニーリング処理などの公知の方法により形成することができる。例えば、機械研磨で鏡面を形成する場合、平均粒径の異なる複数の研磨剤を用いて研磨することにより形成することができる。より具体的には、平均粒径の大きい研磨剤から順番に使用して、最終的に、平均粒径が10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下の研磨剤で研磨することにより形成することができる。さらに、アニーリング処理をすることで、研磨時に生じた微細な亀裂や凹凸を無くすことができる。
【0017】
レーザー収束部17の軸方向断面における等脚台形の両側辺17bの成す角度(テーパ角)αは、5°~80°、好ましくは10°~70°、特に好ましくは15°~65°である。
このように角度αを5°~80°とすることで、パルスレーザー光が効率的に収束し、より大きな衝撃波を生じさせることができる。角度αが5°より小さいと、パルスレーザー光を十分に収束させることができず、大きな衝撃波を得られない。一方、角度αが80°より大きいと、レーザー収束部17の内部においてパルスレーザー光が収束してしまい、同様に、大きな衝撃波を得られない。さらに、衝撃波の発生中心が光ファイバーのレーザー収束部17の先端に近くなり、光ファイバーが損傷しやすくなる。
【0018】
一方、レーザー収束部17の軸方向断面における等脚台形の高さhは、[数7]を満たすことが好ましい。
【数7】
ただし、[数7]中、「M」はレーザー収束部の基端部(光ファイバーの本体)のコア径、「NA」は光ファイバーの本体の開口数、「nqtz」は光ファイバーのコアの屈折率を表す。
高さhが[数7]を満たさないと、光ファイバー11の内部でパルスレーザー光が収束し、光ファイバー11が破壊されるおそれがある。例えば、使用する光ファイバーのコア径Mが400μm、αが30°、開口数NAが0.22、コアの屈折率nqtzが1.437の場合、高さhの上限は、0.3mm以下、好ましくは0.28mm以下、特に好ましくは0.25mm以下である。
一方、高さhが小さすぎると、パルスレーザー光を十分に集光させることができず、大きな衝撃波が得られない。高さhの下限としては、光ファイバーの条件によっても異なるが、一般的に、0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、特に好ましくは0.15mm以上である。
【0019】
図1に戻って、本発明の衝撃波発生装置10において、光ファイバー11は、その先端(パルスレーザー光出射側の端部)が反射部12内であって、凹面21の焦点Fよりも後側(図1の右側)に配置される。特に、レーザー収束部17の先端と焦点Fとの距離Lxが次の[数1]及び[数2]を満たすように配置するのが好ましい。
【数1】
【数2】
ただし、[数2]中、「α」はレーザー収束部の軸方向断面で表される等脚台形の成す角度、「nqtz」は光ファイバーのコアの屈折率、「nliq」は液体の屈折率、「NA」は光ファイバーの開口数、「M」はレーザー収束部の基端部におけるコア径、「h」はレーザー収束部の円錐台の高さを表す。
【0020】
ここで「数2」の条件(I)は、レーザー収束部17の側辺(傾斜面)17bでパルスレーザー光の全てが全反射する条件である。
詳しくは、図3(a)に示すように、開口数NAの光ファイバー11内を臨界角度θで進むパルスレーザー光であって、レーザー収束部17の側辺17bに対して入射角θmin(0.5π-(0.5α+θ))で入射するパルスレーザー光L1が全反射する。その条件は、
【数8】
となり、これらから
【数9】
となる。
そして、次の[数10]は、この条件において、全反射したパルスレーザー光L1’がレーザー収束部17の先端から放射され、その放射されたパルスレーザーL1’’がレーザー収束部17の前方で集光したときの集光点とレーザー収束部17の先端との距離d(図3(a)におけるd1)の理論値を表す。
【数10】
条件(I)は、全てのパルスレーザー光がレーザー収束部17内で全反射しているため、条件(II)、(III)に比べてエネルギーの損失が一番小さい。
【0021】
「数2」の条件(II)は、レーザー収束部17の側辺(傾斜面)17bでパルスレーザー光の一部が全反射し、一部が透過する条件である。
詳しくは、図3(a)に示すように、開口数NAの光ファイバー11内を臨界角度θで進むパルスレーザー光であって、レーザー収束部17の側辺17bに対して入射角θmin(0.5π-(0.5α+θ))で入射するパルスレーザー光L1が透過する。その条件は、
【数11】
となる。これから
【数12】
となる。
そして、図3(b)に示すように、光ファイバー11内を軸と平行に進むパルスレーザー光L2(入射角θpar)が全反射する。その条件は、
【数13】
となる。
つまり、レーザー収束部17の側辺17bに対して入射角度が、角度θmin(0.5π-(0.5α+θ1))より大きく、角度θpar(0.5π-0.5α)より小さく入射するパルスレーザー光がレーザー収束部17の側辺17bを透過し、角度θpar(0.5π-0.5α)以上で入射するパルスレーザー光がレーザー収束部17の側辺17bで全反射する。
そして、次の[数14]は、この条件において、全反射した一部のパルスレーザー光L2’がレーザー収束部17の先端から放射され、その放射されたパルスレーザー光L2’’がレーザー収束部17の前方で集光したときの集光点とレーザー収束部17の先端との距離d(図3(b)におけるd2)の理論値を表す。
【数14】
なお、条件(II)では、レーザー収束部17のテーパ角αが増加するにつれてレーザー収束部17の側辺17bでのパルスレーザー光の全反射が急激に低下し、レーザー収束部17を透過したパルスレーザー光の影響が大きくなることが実験的に確認されている。そのため、条件(II)では、レーザー収束部17のテーパ角αは50°以下、好ましくは45°以下、特に好ましくは40°以下とするのが良い。
【0022】
以上の関係より、「数2」の条件(I)、(II)においてレーザー収束部17と焦点Fとの距離Lxが、この理論値dと一致した場合、すなわち、Lx=dの関係が成り立つ場合、凹面21で反射した衝撃波を反射部12外の一点に収束させることができ、衝撃波の最大過剰圧Pmaxを最大化できると考えられる。ただし、実際の衝撃波発生装置10においては、使用するパルスレーザー光の種類や封止体23の特性、液体24の吸収率などの影響により、必ずしもLx=dの関係が成立する場合に、最大過剰圧Pmaxが最大化するとは限らない。さらに、「数2」の条件(II)では、レーザー収束部17を透過した一部のパルスレーザー光の影響もある。このため、レーザー収束部17の先端の位置は、Lx=dとなる位置を中心に適宜調整することが好ましい。なお、本発明者は、条件(I)において、距離Lxが理論値dの0倍より大きい、好ましくは0.4倍以上、より好ましくは0.5倍以上で、かつ、1.5倍以下、好ましくは1.4倍以下、より好ましくは1.2倍以下となる範囲内で、最大過剰圧Pmaxの最大値が得られることを実験的に確認している。また条件(II)においては、距離Lxが理論値dの0倍より大きい、好ましくは0.4倍以上、より好ましくは0.5倍以上で、かつ、1.5倍以下、好ましくは1.3倍以下、より好ましくは1.2倍以下となる範囲内で、最大過剰圧Pmaxの最大値が得られることを実験的に確認している。
【0023】
「数2」の条件(I)、(II)は、レーザー収束部17内を全反射したパルスレーザー光が集光する条件である。一方、本発明者は、レーザー収束部17を透過したパルスレーザー光も、レーザー収束部17の前方で集光することを実験的に確認した。そのため、レーザー収束部17の先端と焦点Fとの距離Lxが次の[数3]及び[数4]を満たすように配置させてもよい。
【数3】
【数4】
ただし、[数4]中、「α」はレーザー収束部の軸方向断面で表される等脚台形の成す角度、「nqtz」は光ファイバーのコアの屈折率、「nliq」は液体の屈折率、「NA」は光ファイバーの開口数、「M」はレーザー収束部の基端部におけるコア径、「h」はレーザー収束部の円錐台の高さを表す。
【0024】
「数4」の条件(III)は、レーザー収束部17の側辺17bをパルスレーザー光のほぼ全部が透過する条件である。
詳しくは、図3(c)に示すように、光ファイバー11内を軸と平行に進むパルスレーザー光L2(入射角θpar)が透過する。その条件は、
【数15】
となる。
さらに、図3(d)に示すように、開口数NAの光ファイバー11内を臨界角度θで進むパルスレーザー光であって、レーザー収束部17の側辺17bに対して入射角θmax(0.5π-(0.5α-θ))で入射するパルスレーザー光L3が全反射する。その条件は、
【数16】
つまり、レーザー収束部17の側辺17bに対して入射角度が、角度θmax(0.5π-(0.5α-θ1))で入射するパルスレーザー光のみがレーザー収束部17の側辺17bで全反射し、それ以外は透過する。
そして、次の[数15]は、この条件において、レーザー収束部17の側辺17bを透過したパルスレーザー光L2’’’が集光したとき、その集光点とレーザー収束部17の先端との距離d(図3(c)におけるd3)の理論値を表す。
【数17】
【0025】
「数4」の条件(III)においても、レーザー収束部17と焦点Fとの距離Lxが、この理論値dと一致した場合、すなわち、Lx=dの関係が成り立つ場合、凹面21で反射した衝撃波を反射部12外の一点に収束させることができ、衝撃波の最大過剰圧Pmaxを最大化できると考えられる。ただし、この場合も、実際の衝撃波発生装置10においては、使用するパルスレーザー光の種類や封止体23の特性、液体24の吸収率などの影響により、必ずしもLx=dの関係が成立する場合に、最大過剰圧Pmaxが最大化するとは限らない。さらに、「数4」の条件(III)では、レーザー収束部17を全反射した特定のパルスレーザー光の影響もある。このため、レーザー収束部17の先端の位置は、Lx=dとなる位置を中心に適宜調整することが好ましい。なお、本発明者は、(III)の条件の場合、距離Lxが理論値dの0より大きい、好ましくは0.5倍以上、より好ましくは0.7倍以上で、かつ、2.4倍以下、好ましくは1.75倍以下、より好ましくは1.6倍以下となる範囲内で、最大過剰圧Pmaxの最大値が得られることを実験的に確認している。
【0026】
以上より、本発明の衝撃波発生装置10においては、液体中に光ファイバーを通してパルスレーザー光を照射し、液体中に発生させた衝撃波の中心点Cが、凹面21の焦点Fと一致する、ないしは凹面21の焦点Fのきわめて近傍に位置することとなるため、凹面21で反射した衝撃波を反射部12外の一点に効率よく収束させることができ、衝撃波の最大過剰圧Pmaxを飛躍的に向上させることが可能となる。
【0027】
次に、反射部12について説明する。反射部12は、外観が円柱状であり、反射体20、封止体23及び液体24を備える。反射体20は、前側に凹面21が形成されている。この凹面21の開口部は、液体24が充填された状態で封止体23により封止される。また、反射体20は、後側から凹面21に向かって反射体20の中心軸と同軸に貫通孔22が形成されている。このように反射部12は、構造がシンプルで小型化可能であるため、容易にカテーテル14の先端に取り付けることができる。
凹面21は、回転湾曲面を、衝撃波の伝播方向側(前側)が開口するように、回転軸に垂直な平面又は傾斜角を持った平面等で切断した切断回転曲面形状である。好ましくは、回転軸に垂直な平面で切断した切断回転曲面である。凹面21の回転軸は、貫通孔22と同軸である。
回転湾曲面としては、[数5]を満たす楕円形の長軸を回転軸とした形状が挙げられる。
【数5】
凹面21が、切断回転楕円面形状である場合、光ファイバー11のレーザー収束部17の先端は、[数5]の座標において、
の位置に配置される。
【0028】
[数5]で表される楕円形状は、短径bの上限が、50mm以下、10mm以下、好ましくは5mm以下、3mm以下、特に好ましくは2.8mm以下である。なお、衝撃波発生装置を小型化できることから短径は小さい方が良いが、反射部12外の収束点が反射部12に近すぎると治療効果が小さくなるため、短径bの下限は、1.0mm以上、好ましくは1.5mm以上、特に好ましくは2.0mm以上である。
[数5]で表される楕円形状の長短径比(a/b)は、1.2を超えて2.0未満、好ましくは1.3を超えて1.6未満、特に好ましくは1.4を超えて1.6未満である。a/bが2.0以上では、衝撃波の収束角度が浅くなり、高圧発生領域が軸方向に細長く伸びた形状となる。一方、a/bが1.2以下では、衝撃波は鋭い収束を示すが、焦点距離が短くなってしまう。
【0029】
反射体20の外径の上限は、75mm以下、好ましくは10mm以下、5mm以下、特に好ましくは3.5mm以下、3mm以下である。一方、反射体20の外径の下限は、1.5mm以上、好ましくは2.5mm以上、特に好ましくは2.5mm以上である。反射体20の外径が75mmを超えると、カテーテル内を通すことが困難になる。一方、反射体20の外径が1.5mm未満だと、衝撃波を反射収束する十分な凹面を作成することが困難になる。
【0030】
反射体20の材質としては、特に限定されないが、アクリル等の合成樹脂、真鍮やステンレス等の金属が挙げられる。金属を用いる場合、反射体20の凹面21を鏡面化させることで、衝撃波の反射率を向上させることができる。また、金属と液体との音響インピーダンスの差が大きいので、同様に衝撃波の反射率を向上させることができる。一方、合成樹脂を用いる場合、加工性に優れる等の利点がある。なお、反射体20の凹面21にメッキ処理等で金属膜を形成することで、衝撃波の反射率を向上させることができる。
なお、貫通孔22は、使用する光ファイバー11の外径に応じて、適宜大きさ(内径)を調整することが必要となる。
【0031】
封止体23は、従来公知のものであり、弾性を有する合成樹脂製薄膜等を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂や、ビニルメチルシリコーン、メチルシリコーン、フェニル・メチルシリコーン等のシリコーンゴムの薄膜等を用いることができる。なお、薄膜の厚さは、その材質に応じて適宜選択されるものであるが、概ね0.05mm~0.20mmとするのが好ましく、0.10mm~0.17mmとするのがより好ましい。
また、液体24は、従来公知のものであり、水、生理食塩水等が挙げられ、純水が好ましく、特に真空脱気処理をした超純水が好ましく挙げられる。なお、液体24の屈折率は、光ファイバーのコアより低く、具体的には、1.0~1.5であり、好ましくは、1.3~1.4である。
【0032】
なお、凹面21及び封止体23との間に形成される空間内に、液体24を灌流するため、給水管及び排水管(図示せず)と前記空間とを連通する給排水構造を設けてもよい。この給排水構造としては、特に制限されることはないが、図4(a)~(g)に示すように、給水管と連結する給水管連結部31と、排水管と連結する排水管連結部32とを備えているものを用いることができる。図4(a)及び(b)では、凹面21側で貫通孔22の前部22aの直径を光ファイバー11の直径よりも大きくし(光ファイバー11の直径の2~3倍程度とし)、この貫通孔22から分岐する形で給水管連結部31及び排水管連結部32を形成している。また、図4(c)~(e)では、同様に、凹面21側で貫通孔22の直径を光ファイバー11の直径よりも大きくし、この貫通孔22から分岐する形で給水管連結部31及び排水管連結部32を形成しており、かつ、光ファイバー11を固定する固定部材33が設けられている。そして、固定部材33により、貫通孔22と給水管連結部31及び排水管連結部32とを仕切っている。さらに、図4(f)及び(g)では、貫通孔22とは別に給水管連結部31及び排水管連結部32を形成している。
【0033】
以上より、衝撃波発生装置10は、光ファイバー11のレーザー収束部17の先端が凹面21内の焦点Fから後側に距離Lxの位置に固定されているため、レーザー収束部17の先端からパルスレーザー光を照射して、凹面21内の液体24中に衝撃波を発生させたとき、衝撃波の中心点Cと焦点Fとを実質的に一致させることができ、効率よく凹面21で反射した衝撃波を反射部12外の一点に収束させることができる。
【0034】
2.第2の実施形態
次に、衝撃波発生装置10の第2の実施形態を説明する。この実施形態では、凹面21が上述した回転楕円面を修正した曲面を切断した切断回転曲面形状となっている。他の構成は第1の実施形態と同じである。
上述したように、衝撃波発生装置10によって発生する衝撃波の波面は、レーザー出射方向から背後にかけて膨らむ等の歪みが生じ、非球状となる。このため、第1の実施形態のように凹面21が回転楕円面を切断した切断回転面形状である場合には、凹面21の各部で反射した衝撃波が反射部12外の一点に収束するまでの伝播距離に相違が生じ、衝撃波を効率よく反射収束させることが困難となる。このような場合、衝撃波の伝播距離を等しくするため、凹面21として、回転楕円面を修正した曲面を切断した切断回転面形状を用いることが好ましい。
回転楕円面の修正は、発生した衝撃波を反射部12外の一点に、効率よく反射収束させることができる限り特に制限されることはない。例えば、実際に衝撃波発生装置を作製し、これによる実験データに基づいて修正してもよく、コンピュータによるシミュレーションの結果に基づいて修正してもよい。ただし、衝撃波発生装置を工業的に製造することを考慮すると、以下の[数5]及び[数6]に基づいて修正することが望ましい。
つまり、凹面21として、[数5]及び[数6]によって特定される形状(x,y)を、[数5]で表される楕円の長軸を回転軸として回転させることにより得られる曲面を切断した切断回転曲面を用いることが好ましい。
【数5】
【数6】
ただし、[数6]中、「θ」は、任意の時間における衝撃波の波面をS、衝撃波が完全な球状であると仮定した理想衝撃波の波面をI、理想衝撃波の中心点をC、波面S及び波面I上の点であって光ファイバーの中心軸の延長上に位置する点をSfとした場合に、中心点CとSfとを結ぶ線を基準とする中心点C周りの角度を表し、「ΔD」は、中心点Cを通り中心角がθである前記理想衝撃波の半径方向の直線と波面S及び波面Iとの交点をそれぞれSθ及びIθとした場合に、交点Sθと交点Iθとの距離を表す。
【0035】
このように回転楕円面を修正することにより、修正前の回転楕円面の焦点F又はその近傍で発生した衝撃波が凹面21の各部で反射し、反射部12外の一点に収束するまでの伝播距離を等しくすることができる。この結果、光ファイバー11の先端に発生する衝撃波が非球状であっても、衝撃波を効率よく収束させることができる。
【0036】
次に、第2の実施形態の衝撃波発生装置の凹面21の形状の算出方法について、図5図6を参照しながら説明する。この算出方法には、
(1)光ファイバー11を通して液体24にパルスレーザー光を照射することにより発生させた衝撃波の波面Sを求める工程(工程1)と、
(2)凹面21の開口側(前側)において、衝撃波の波面Sと光ファイバー11の中心軸の延長線とが交差する交点Sを求める工程(工程2)と、
(3)理想衝撃波の中心点Cを認定する工程(工程3)と、
(4)中心点Cを中心とし、かつ、交点Sを通る理想衝撃波の波面Iを求める工程(工程4)と、
(5)理想衝撃波の中心点Cと交点Sとを結ぶ線を基準とする中心角θと、衝撃波の波面S上の点Sθと理想衝撃波の波面上の点Iθとの距離ΔDとの関係を求める工程(工程5)と、
(6)[数5]の式で表される楕円形状(x、y)を、楕円形状の焦点Fと中心点Cとを一致させた上で、前記関係に基づいて、[数6]の式を満たす形状(x、y)に修正する工程(工程6)と、
(7)前記修正した形状を、[数5]の式で表される楕円の長軸を回転軸として回転させることによって得られる曲面を切断して、切断回転面を得る工程(工程7)と、
が含まれる。
【数5】
【数6】
【0037】
(1)工程1
工程1は、光ファイバー11を通して液体24にパルスレーザー光を照射して発生させた衝撃波の波面Sを求める工程である。波面Sを求める方法は、特に制限されることはないが、高速度カメラ等を用いて、光ファイバー11からパルスレーザー光を照射して液体中に発生させた衝撃波の高速度画像を取得することにより求めることができる。なお、高速度画像は、立体像であっても、回転軸断面に表される平面像であってもよい。
【0038】
(2)工程2
工程2は、衝撃波の波面Sと光ファイバー11中心軸の延長線とが交差する凹面21の開口側(前側)の交点Sを求める工程である。図5に示すように、この波面Sと光ファイバー(レーザー収束部17)の中心軸とが交差する前側(図5の下側)の点が交点Sとなる。
【0039】
(3)工程3
工程3は、完全な球状であると仮定した場合の衝撃波(以下、「理想衝撃波」という)の中心点Cを認定する工程である。
この工程では、凹面21として切断回転楕円面を用意し、光ファイバー11の中心軸が切断回転楕円面の回転軸と同軸になるように調整した後、光ファイバー11(レーザー収束部17)の先端を凹面21の焦点F(切断回転楕円面の焦点のうち反射部12内に位置する焦点)よりも後側の任意の位置に固定する。この際、レーザー収束部17の形状等によって理論上求めことができる衝撃波の中心点Cが凹面21の焦点Fと一致するように、すなわち、Lx=dの関係を満たすように、レーザー収束部17の先端を配置することが好ましい。この状態で衝撃波を発生させ、反射部12外の一点(切断回転楕円面の焦点のうち反射部12外に位置する焦点)に反射収束させた衝撃波の最大過剰圧Pmaxを、圧力センサー等により測定する。その後、レーザー収束部17を回転軸方向に移動させ、衝撃波の最大過剰圧Pmaxが最大となる位置求める。そして、衝撃波の最大過剰圧Pmaxが最大となった位置を、衝撃波の中心点Cと凹面21の焦点Fとが一致したものとし、この位置を理想衝撃波の中心点Cと認定する。
なお、このようにして理想衝撃波の中心点Cを求める場合、工程3は、工程1および工程2とは独立しているため、工程1および工程2より先に行っても、後に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0040】
なお、理想衝撃波の中心点Cは、工程1で取得した高速度画像から幾何学的に求めることもできる。
具体的には、図7に示すように、衝撃波の波面S上の任意の点の接線を求めた後、その点を通り接線方向に直角な線と光ファイバー11の中心軸の延長線との交点を求め、この交点を理想衝撃波の波面Iの中心点Cと認定する。この方法では、衝撃波の波面S上の複数の任意の点に対して同様の作業を行い、中心点Cを認定するのが好ましい。この場合、交点が一致するのが好ましいが、交点がある範囲を示す場合は、光ファイバーの軸の延長上の点であって、それらの中心に一番近い点を理想衝撃波の中心点Cと認定する。
また、工程1で取得した高速度画像から衝撃波の波面Sによって画定される形状の重心を求め、その重心を中心点Cと認定してもよい。この場合も、重心が光ファイバー11の中心軸の延長線上から外れる場合は、その延長線に一番近い点を理想衝撃波の中心点Cと認定する。
【0041】
(4)工程4
工程4は、図5に戻って、理想衝撃波の中心点Cと交点Sを求めた後、交点Sを通る理想衝撃波の波面Iを求める工程である。具体的には、理想衝撃波の波面Iは、中心点Cを中心とし、中心点Cから交点Sまでの距離を半径とする円を描くことにより求めることができる。
【0042】
(5)工程5
工程5は、理想衝撃波の中心点Cと交点Sfとを結ぶ直線を基準とする中心角θと、衝撃波の波面S上の点Sθと理想衝撃波の波面I上の点Iθ間の距離ΔDとの関係を求める工程である。ここで、交点Sθ及び交点Iθは、それぞれ、中心点Cを通り中心角がθである理想衝撃波の半径方向の直線と波面S及び波面Iとの交点を示す。これらの関係は参照表又は参照グラフを作成することにより求めることが好ましい。なお、角度θは、0°~180°とするのが好ましい。
【0043】
(6)工程6
工程6は、[数5]の式で表される楕円形状(x、y)を、この楕円形状の焦点F(上述した切断回転楕円面の焦点のうち、反射部12内に位置する焦点に対応する焦点)と理想衝撃波の中心点Cとを重ねた上で、工程5で求めた関係に基づいて、[数6]の式を満たす形状(x、y)に修正する工程である。[数5]の式で表される楕円形状(x、y)にこのような修正を加えた上で凹面21を形成することにより、図6に示すように、発生した非球状の衝撃波が凹面21の各部で反射して反射部12外の一点に収束する際の伝播距離を等しくすることができる。
【数5】
【数6】
ここで[数5]の式で表される楕円の中心を原点(0、0)とすると、この楕円の焦点Fは
と表される。これにより、次の[数18]及び[数19]の式を導くことができる。
【数18】
【数19】
これらのsinθ及びcosθを用いて、[数5]の楕円形状を修正することになる。
【0044】
(7)工程7
工程7は、上述のようにして修正した形状を、[数5]の式で表される楕円の長軸を回転軸として回転させることにより得られる曲面を切断して、切断回転面を得る工程である。
【0045】
以上の工程に従って、凹面21を形成することにより、修正前の回転楕円面の焦点F又はその近傍で発生した衝撃波が凹面21の各部で反射し、反射部12外の一点に収束するまでの伝播距離を等しくすることができる。この結果、光ファイバー11の先端に発生する衝撃波が非球状であっても、衝撃波を効率よく収束させることができ、衝撃波の最大過剰圧Pmaxを飛躍的に向上させることが可能となる。
【実施例
【0046】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
[実施例1-1~1-10、比較例1-1~1-4]
はじめに、上述した構成を備える衝撃波発生装置10を用意し、光ファイバー11(レーザー収束部17)の先端の最適な位置を確認した。
この衝撃波発生装置10における反射部12は、一端側に設けられ、長軸を回転軸とする回転楕円面を切断した切断回転面形状からなる凹面21と、この回転軸と同軸に設けられ、他端側から光ファイバー11を挿通する貫通孔22とを備えた反射体20と、凹面21の開口部を封止する封止体23と、凹面21と封止体23との間に充填された液体24とを有するものであった。凹面21のベースとなった楕円の形状及び各部材の寸法、材質等を以下に示す。
(凹面21のベースとなった楕円の形状)
楕円の形状 短径(b):3.50mm
長径(a):5.25mm
楕円率(a/b):1.50
焦点距離 :5.70mm
開口部から第1焦点までの距離:2.12mm
(反射部12各部材の寸法・材質)
反射体20 開口径:6.58mm
材質:真鍮
封止体23 材質:シリコーンゴム
厚さ:0.15mm
液体24 超純水(真空脱気処理)
屈折率(nliq):1.301
【0047】
また、使用した光ファイバー11の構成を以下に示す。これらの構成及び[数2]より、レーザー収束部17の先端と衝撃波の中心点Cとの距離の理論値dは0.38mmと算出される。なお、レーザー収束部17のコア表面は、平均粒径が6μm以下の研磨剤(ULTRA TEC製、Bare Fiber Polishing Film Package 5555.5)を用いて、平均粒径の大きなものから順に研磨することにより形成した。
(光ファイバー)
コア 材質:石英(脱水酸基処理)
コア径(M):0.40mm
屈折率(nqtz):1.437
クラッド 材質:石英
開口数(NA):0.22
(レーザー収束部)
角度(α):18.6°
高さ(h):0.21mm
この衝撃波発生装置10は、次の[数20]に示すように、全てのパルスレーザー光がレーザー収束部17内を全反射すると想定した条件(I)を満たす。
【数20】
【0048】
この衝撃波発生装置10を用いて、光ファイバー11の先端位置(凹面21の開口部からレーザー収束部17の先端までの距離:W)を変化させた時の衝撃波の最大過剰圧Pmaxを圧力センサー(Dr. Muller Instruments製、Muller-Platte Needle Probe) を用いて測定した。また、パルスレーザー光としては、Ho:YAGレーザーを用いた。この結果を表1及び図8に示す。なお、本実施例及び本比較例では、光ファイバー11の先端位置が焦点に一致した状態(W=2.12)での最大過剰圧Pmaxを基準値として各位置の増加量を算出した 。
【表1】
注:光ファイバー11(レーザー収束部17)の先端が、凹面21の焦点Fよりも前方にある場合、距離Lxの符号をマイナスとした。
【0049】
以上の結果より、光ファイバー11(レーザー収束部17)の先端が、凹面21の焦点Fよりも後側にある場合に、凹面21で反射した衝撃波の最大過剰圧Pmaxが増加することが確認された。また、Lx/dが1.71において、増加率が1以下となることが確認された。つまり、0<Lx/d≦1.5において、パルスレーザー光は集光していることが確認された。
【0050】
[実施例2-1~2-6]
次に、光ファイバー11の先端(レーザー収束部17)の形状を変化させた場合における距離Lxと最大過剰圧Pmaxの関係を調べた。
光ファイバー11としては、脱水酸基処理をした石英製で、本体部のコア径が400μm、屈折率nqtzが1.437であり、レーザー収束部17の角度αが0°~60°、円錐台の高さhが0.164mm~0.284mm(角度αが0°のもの以外)であるものを用いた。
一方、反射部12としては、実施例1-1~1-10と同様のものを用いた。本実施例の衝撃波発生装置10では、液体としては、真空脱気処理した超純水(屈折率nliq:1.301)を用いた。
各光ファイバー11を反射体20の貫通孔22に挿通することにより、衝撃波発生装置10を構成した。実施例1-1~1-10と同様にして、この光ファイバー11の先端位置を変化させた時の衝撃波の最大過剰圧Pmaxを、圧力センサーを用いて測定し、衝撃波の最大過剰圧Pmaxが最大となったときの距離Lxを調べた。また各衝撃波発生装置10のレーザー収束部17におけるパルスレーザー光の反射状態を、上述の条件(I)を満たしているものを「I」、上述の条件(II)を満たしているものを「II」、上述の条件(III)を満たしているものを「III」とした。この結果を表2及び図9(a)、図9(b)に示す。
【0051】
【表2】
以上の結果より、条件(I)では、Lx/dが1.00、1.06のとき、最大過剰圧Pmaxを示した。また、0<Lx/d≦1.5において、増加量が1を超えた。特に、0.5≦Lx/d≦1.2において、最大過剰圧が、基準値の過剰圧より10MPa以上大きくなった。
条件(II)では、Lx/dが0.76、1.30のとき、最大過剰圧Pmaxを示した。そして、0<Lx/d≦1.35において、増加量が1を超えた。特に、0.5≦Lx/d≦1.25において、最大過剰圧が、基準値の過剰圧より10MPa以上大きくなった。なお、実施例2-5(α=50.3°)では、Lx/dが2を超えても、増加量が1を超えた。これは、実施例2-4(α=35.5°)に比べて実施例2-5(α=50.3°)では、パルスレーザー光のレーザー収束部17の内面反射(全反射)が急激に低下し、レーザー収束部17を透過したパルスレーザー光の影響が大きくなったためであると考えられる。
条件(III)では、Lx/dが1.16のとき、最大過剰圧Pmaxを示した。そして、0<Lx/d(最大測定範囲2.41)において、増加量が1を超えた。特に、0.5≦Lx/d≦1.75において、最大過剰圧が、基準値の過剰圧より10MPa以上大きくなった。
なお、実施例2-3(α=28°)および実施例2-4(α=35.5°)では、最大の最大過剰圧がそれぞれ51.8MPa、49.4MPaと、50MPa前後まで大きくすることができた。一方、実施例2-2は、条件(I)であるにも関わらず、条件(II)の実施例2-4より最大の最大過剰圧が小さくなった。これは、実施例2-1は、パルスレーザー光の集光位置までの液中の伝搬距離が長く、パルスレーザー光が集光位置に到着する前に液中に吸収されたためと考えられる。
【0052】
[実施例3-1~3-3]
光ファイバー11として、本体部16のコア径がそれぞれ300μm、400μm、600μm、レーザー収束部17の軸方向断面で表れる等脚台形の両側辺の成す角度αが26.4°~29.0°、レーザー収束部17の円錐台の高さが0.17~0.44mmであるものを用意した。
これらの光ファイバー11を、楕円率1.5、長軸に垂直な平面で切断した凹面を有する反射体に固定し、衝撃波発生装置10を構成した。これらの衝撃波発生装置10も、レーザー収束部17が全てのパルスレーザー光を全反射する条件(I)を満たす。実施例1-1~1-10と同様にして、この光ファイバー11の先端位置を変化させた時の衝撃波の最大過剰圧Pmaxを、圧力センサーを用いて測定し、衝撃波の最大過剰圧Pmaxが最大となったときの距離Lxを調べた。これらの結果を表3、図10及び図11(a)~(c)に示す。
この結果より、角度αが30°近辺のとき、光ファイバーの先端から衝撃波の中心までの距離Xとコア径Mとの間には、[数1]及び[数2]の関係があることが認められた。
【0053】
【表3】
【0054】
[実施例4-1、実施例4-2及び比較例4-1]
最後に、実施例4-1、実施例4-2及び比較例4-1により、凹面21の形状と最大過剰圧Pmaxとの関係を確認した。
1.反射体の設計
光ファイバー11として、脱水酸基処理をした石英製で、本体部のコア径が400μm、屈折率nqtzが1.437であり、レーザー収束部17の角度αが30°、円錐台の高さhが0.23mmであるものを用意した。この光ファイバー11を実施例1-1~1-10と同様の反射体20に挿通し、距離Lxが0.23mmとなるように調整することにより、衝撃波発生装置10を構成した。この衝撃波発生装置10も、レーザー収束部17が全てのパルスレーザー光を全反射する条件(I)を満たす。
(1)工程1
この衝撃波発生装置10を用いて、液体24中にパルスレーザー光(波長:2.1μm、パルス幅:100nsec、43~48mJ/pulse、発信周期:1Hz)を照射して衝撃波を発生させ、その波面Sを高速度カメラ(撮影速度:10Mfps、露光時間:50nsec)を用いて撮影した。
(2)工程2~4
このようにして得られた高速度画像より、衝撃波の波面Sと光ファイバー11の中心軸の延長線の交点Sを特定し、表2の結果からレーザー収束部17の先端から前方に230μmの位置を衝撃波の中心点Cと想定し、その中心点Cを中心とし、かつ、交点Sを通る円(真円)を理想衝撃波の波面Iとした。
(3)工程5
交点Sと中心点Cとを結ぶ直線を基準とする中心点C周りの角度(中心角)θと、衝撃波の波面S上の点Sθと理想衝撃波の波面I上の点Iθとの距離ΔDを求めた。この結果を図12に示す。
【0055】
(4)工程6
[数21]の式([数5]の式において、a/b=1.5、b=1.8の場合)で表される楕円形状(x、y)を、この楕円形状の焦点F(上述した切断回転楕円面の焦点のうち、反射部12内に位置する焦点に対応する焦点)と理想衝撃波の中心点Cとを重ねた上で、工程5で求めた図12の関係に基づいて、[数6]の式を満たす形状(x、y)に修正した。
【数21】
【数6】
(5)工程7
このようにして修正した形状を、[数21]の式で表される楕円の長軸を回転軸として回転させることによって反射体20の凹面21の形状を求めた。この凹面21の形状に基づいて反射体20を設計した。
【0056】
2.衝撃波の最大過剰圧Pmaxの測定
光ファイバー11として、脱水酸基処理をした石英製で、本体部のコア径が400μm、屈折率nqtzが1.437であり、レーザー収束部17の角度αが30°、円錐台の高さhが0.23mmであるものを用意した。この光ファイバー11を実施例4-1及び4-2及び比較例4-1の反射体20に、それぞれ取り付けることにより衝撃波発生装置10を構成した。そして、実際に衝撃波を発生させ、反射部12外の一点で反射収束した衝撃波の最大過剰圧Pmaxを測定することにより、凹面21の形状と衝撃波の最大過剰圧Pmaxとの関係を確認した。
【0057】
(実施例4-1)
上述のようにして設計した反射体20に、距離Lxが0.23mmとなるように調整して、光ファイバー11を取り付け、衝撃波発生装置10を構成した。
この衝撃波発生装置10を用いて衝撃波を発生させ、反射部12外の一点で反射収束させた衝撃波の最大過剰圧Pmaxを圧力センサーで測定した。なお、この際、衝撃波を発生させるために照射したパルスレーザー光は、波長が2.1μm、パルス幅が100nsec、43~48mJ/pulse、発振周期が1Hzであった。
【0058】
(実施例4-2)
反射体20として、楕円率a/bが1.5である回転楕円面を、長軸に垂直な平面で切断した凹面21を有するものを用いたこと以外、実施例4-1と同様にして、衝撃波の最大過剰圧Pmaxを測定した。
【0059】
(比較例4-1)
反射体20として、楕円率a/bが1.5である回転楕円面を長軸に垂直な平面で切断した凹面21を有するものを用いたこと、及び、距離Lxが0mmとなるように調整したこと(光ファイバー11の先端が凹面21の焦点Fと一致するように調整したこと)以外は、実施例4-1と同様にして、衝撃波の最大過剰圧Pmaxを測定した。以上の結果を表4及び図13に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
表4及び図13より、実施例4-1及び実施例4-2の衝撃波発生装置では、比較例4-1の衝撃波発生装置に比べて、反射収束した衝撃波の最大過剰圧Pmaxが大きいことが確認された。また、実施例4-1の衝撃波発生装置は、実施例4-2の衝撃波発生装置に比べて、衝撃波の最大過剰圧Pmaxが1.35倍程度に増加したことが確認された。
【符号の説明】
【0062】
10:衝撃波発生装置、11:光ファイバー、12:反射部、14:カテーテル、16:本体部、16a:コア、16b:クラッド、17:レーザー収束部、17a:先端面、17b:両側辺、20:反射体、21:凹面、22:貫通孔、22a:貫通孔の前部、23:封止体、24:液体、31:給水管連結部、32:排水管連結部、33:固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13