(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】抗菌塗料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230427BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230427BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20230427BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230427BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20230427BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20230427BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20230427BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230427BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D5/14
C09D7/61
A01N25/10
A01N59/16 A
A01N59/16 Z
A01P1/00
A01P3/00
B32B27/18 F
(21)【出願番号】P 2021079679
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2021-05-11
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520115369
【氏名又は名称】新福光塗裝工程股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】林建成
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/185960(WO,A1)
【文献】特開2008-081595(JP,A)
【文献】特開2009-255044(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104804558(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109486267(CN,A)
【文献】特開平10-204334(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104817918(CN,A)
【文献】特開2018-119066(JP,A)
【文献】特開2004-346201(JP,A)
【文献】特開2004-346202(JP,A)
【文献】特開2017-109983(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098817(WO,A1)
【文献】特開2016-192546(JP,A)
【文献】特開2009-155461(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104877551(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0089839(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109181479(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
A01N 25/10
A01N 59/16
A01P 1/00
A01P 3/00
B32B 27/18
C09D 5/02
C09D 5/14
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水性樹脂と、複数の塗料助剤と、残量の水とを含む塗料本体を提供する工程と、複数の二酸化ケイ素粒子を含む二酸化ケイ素(SiO
2)粉末を、当該塗料本体内に混合する工程と、複数のナノ抗菌粒子を含むナノ抗菌溶液を当該塗料本体内に混合して抗菌塗料を完成する工程とを含む抗菌塗料の製造方法であって、
当該抗菌塗料が9wt%以下の前記二酸化ケイ素粉末を含み、
当該二酸化ケイ素粉末を、当該塗料本体内に混合する工程では、回転数2000rpmで20分間持続して撹拌する、
抗菌塗料の製造方法。
【請求項2】
少なくとも水性樹脂と、複数の塗料助剤と、残量の水とを含む塗料本体を提供する工程と、複数の二酸化ケイ素粒子を含む二酸化ケイ素(SiO
2)粉末を、当該塗料本体内に混合する工程と、複数のナノ抗菌粒子を含むナノ抗菌溶液を当該塗料本体内に混合して抗菌塗料を完成する工程とを含む抗菌塗料の製造方法であって、
当該抗菌塗料が9wt%以下の前記二酸化ケイ素粉末を含み、
総重量100wt%で、当該抗菌塗料は、1~2wt%の当該二酸化ケイ素粉末と、4~6wt%の当該ナノ抗菌溶液と、残量の当該塗料本体とを含み、当該ナノ抗菌溶液における前記複数のナノ抗菌粒子の濃度が、10000~12000ppmである、
抗菌塗料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌塗料、抗菌塗料の製造方法、及び抗菌コーティングに関し、特に、複数の二酸化ケイ素粒子により、複数のナノ抗菌粒子を抗菌コーティングの表面に近い位置に集中させる抗菌コーティングとして使用可能な抗菌塗料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の発展に伴い、人々の健康と環境保護意識は、ますます高くなっている。例えば、表面塗装分野において、美観と製品保護という機能を有するコーティングだけでは、要求を満たすことができなくなり、同時に健康効果を有することがさらに期待されている。
【0003】
抗菌塗料は、その一例である。ナノ抗菌粒子は、小寸法効果及び表面効果により、独特な物理化学的性質を有し、例えば、ナノ抗菌粒子を塗料中に添加すると、得られた塗料が抗菌効果を有する。周知の抗菌塗料は、ナノ二酸化チタン又はナノ酸化亜鉛をナノ抗菌粒子とし、紫外線、酸素、水などの条件で良好な抗菌性能を有する光触媒抗菌塗料と、ナノ金属銀をナノ抗菌粒子とし、ナノ金属銀の抗菌作用が外界からの影響が小さいので、適用範囲が広い抗菌塗料の二種類に分けられる。
【0004】
図1を参照する。塗布工程後の抗菌塗料20中のナノ抗菌粒子21の殺菌原理は、主に、当該ナノ抗菌粒子21が空気中の細菌3と接触して当該細菌3の細胞膜31を破壊し、当該細菌3の組織液が外に流れ、タンパク質の凝固現象が生じ、細菌3が活性を失い、最終的に当該細菌3のDNA合成が阻害され、分裂繁殖能力が失われることで死亡するため、確実に抗菌効果を達成することができる。
【0005】
しかしながら、ナノ抗菌粒子21として、ナノ二酸化チタン又はナノ酸化亜鉛を採用しても、ナノ金属銀を採用しても、塗布工程前に、これらのナノ抗菌粒子21は、ドープ撹拌方式で当該抗菌塗料20に加えられるので、多数のナノ抗菌粒子21は、当該抗菌塗料20の中心内部に分散し、少数のナノ抗菌粒子21は、当該塗料20の表面に近くなる。このため、当該抗菌塗料20の中心内部に位置する多数のナノ抗菌粒子21は、殺菌しにくくなり、無駄になる。また、当該塗料20の表面に近いナノ抗菌粒子21は、少数だけなので、周知の抗菌塗料20の抗菌効果には限界がある。
【0006】
したがって、前記課題を克服できる抗菌塗料、抗菌塗料の製造方法、及び抗菌コーティングが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複数の二酸化ケイ素粒子により、複数のナノ抗菌粒子を抗菌コーティングの表面に近い位置に集中させる抗菌コーティングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に対し、本発明は、少なくとも水性樹脂と、複数の塗料助剤と、残量の水とを含む塗料本体と、当該塗料本体内に混合され、複数の二酸化ケイ素粒子を含む二酸化ケイ素(SiO2)粉末と、前記塗料本体内にも混合され、複数のナノ抗菌粒子を含むナノ抗菌溶液とを含み、前記抗菌塗料が抗菌コーティングとして硬化した場合に、これらの二酸化ケイ素粒子により、これらのナノ抗菌粒子を前記抗菌コーティングの表面に近い位置に集中させ、前記抗菌コーティングが表面層及び中間層を含み、当該表面層におけるこれらのナノ抗菌粒子の数量割合が当該中間層におけるこれらのナノ抗菌粒子の数量割合より大きい、抗菌塗料を提供する。
【0009】
本発明は、少なくとも水性樹脂と、複数の塗料助剤と、残量の水とを含む塗料本体を提供する工程と、複数の二酸化ケイ素粒子を含む二酸化ケイ素(SiO2)粉末を当該塗料本体内に混合する工程と、複数のナノ抗菌粒子を含むナノ抗菌溶液を前記塗料本体内にも混合して抗菌塗料を完成する工程とを含み、前記の水が揮発し、当該抗菌塗料が抗菌コーティングとして硬化した場合に、これらの二酸化ケイ素粒子により、これらのナノ抗菌粒子を前記抗菌コーティングの表面に近い位置に集中させ、前記抗菌コーティングが表面層及び中間層を含み、当該表面層におけるこれらのナノ抗菌粒子の数量割合が当該中間層におけるこれらのナノ抗菌粒子の数量割合より大きい、抗菌塗料の製造方法をさらに提供する。
【0010】
本発明は、少なくとも水性樹脂及び複数の塗料助剤を含む塗料本体と、当該塗料本体内に混合された複数の二酸化ケイ素粒子と、当該塗料本体内に位置し、抗菌コーティングの表面に近い位置に集中する複数のナノ抗菌粒子とを含み、表面層及び中間層をさらに含み、当該表面層におけるこれらのナノ抗菌粒子の数量割合が当該中間層におけるこれらのナノ抗菌粒子の数量割合より大きい、抗菌コーティングをさらに提供する。
本発明は、プラスチックフィルムと、上述した抗菌コーティングであって、当該プラスチックフィルムに設けられた抗菌コーティングとを含む、抗ウイルステープをさらに提供する。
【0011】
本発明の抗菌コーティングによれば、これらの二酸化ケイ素粒子により、これらのナノ抗菌粒子の多数を当該抗菌コーティングの表面に近い位置に集中させることにより、ナノ抗菌粒子が無駄になることがなく、当該ナノ抗菌溶液のコストを低減できる。これらのナノ抗菌粒子の多数は、当該抗菌コーティングの表面層付近に集中することで、当該抗菌コーティングの抗菌効果が制限されず、最適な抗菌効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の実施例の抗菌塗料の製造方法のフローチャートである。
【
図3a】本発明の実施例の抗菌コーティングの断面模式図である。
【
図3b】本発明の実施例の抗ウイルステープの断面模式図である。
【
図4】本発明の実施例の抗菌コーティングの断面模式図であり、多数のナノ抗菌粒子が空気中の細菌と接触することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的、特徴及び特点をより明らかに理解しやすくするために、以下に図面により本発明に係る実施例を詳細に説明する。
【0014】
図2は、本発明の実施例の抗菌塗料の製造方法のフローチャートを示す。当該抗菌塗料の製造方法は、以下の工程を含む。
【0015】
工程S100では、少なくとも水性樹脂(水で希釈できる塗料であれば、いずれも水性塗料として定義する)と、複数の塗料助剤と、残量の水とを含む塗料本体を提供する。
例えば、当該塗料本体は、50~80%の水性樹脂と、2~10%の塗料助剤と、残量の水とを含む。好ましくは、当該塗料本体は、60~70%の水性樹脂と、3~9%の塗料助剤と、残量の水とを含む。本実施例では、当該水性樹脂と、これらの塗料助剤と、残量の水とを当該塗料本体として混合する。当該塗料本体の色の需要に応じて、当該水性塗料は、さらにカラーペーストを含んでもよい。当該水性樹脂は、アクリル樹脂、ポリウレタン分散体樹脂、水性ポリウレタン(PUD)樹脂及び水性ポリウレタンアクリレート樹脂から選択される少なくとも1種であってもよい。これらの塗料助剤は、水性消泡剤、水性レベリング剤、水性湿潤分散剤、水性増粘剤、密着剤、ピンホール除去助剤、中和剤、艶消し粉、光開始剤及び沈降防止剤から選択される複数種である。
【0016】
例えば、第1の塗料本体の処方としては、65%のUV硬化型樹脂(例えば、水性ポリウレタンアクリレート樹脂)、0.5%の水性消泡剤(例えば、シリコーンアクリレート樹脂)、0.5%の水性レベリング剤(例えば、ポリエーテル-シロキサン共重合体)、3~5%の光開始剤(例えば、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)及び残量の水である。
【0017】
例えば、第2の塗料本体の処方としては、第1の水性樹脂(例えば、アクリル樹脂)50KG、第2の水性樹脂(例えば、ポリウレタン分散体樹脂)50KG、第1の消泡剤(例えば、ポリエーテル-シロキサン共重合体エマルション)0.4KG、密着剤2KG、第2の消泡剤(例えば、キシレンポリシロキサンエマルション)1.2KG、逆浸透(RO)水4KG、ピンホール除去助剤0.5KG、黒色カラーペースト11KGである。
【0018】
例えば、第3の塗料本体の処方としては、第1の水性樹脂(例えば、アクリル樹脂)41KG、第2の水性樹脂(例えば、ポリウレタン分散体樹脂)41KG、逆浸透(RO)水10KG、消泡剤(例えば、ポリエーテル-シロキサン共重合体エマルション)0.2KG、銀色カラーペースト3.4KG、沈降防止剤2.6KG、密着剤2KGである。
【0019】
工程S200では、複数の二酸化ケイ素粒子13を含む二酸化ケイ素(SiO2)粉末を、当該塗料本体内に混合する。
例えば、回転数2000rpmで20分間持続して撹拌し、当該二酸化ケイ素粉末を当該塗料本体内に撹拌混合する。これらの二酸化ケイ素粒子13の粒子径は、1~10ミクロンであってもよい。抗菌塗料は、9wt%以下の当該二酸化ケイ素粉末を含む(又は、抗菌コーティングは、9wt%以下の前記二酸化ケイ素粒子を含む)ことにより、二酸化ケイ素粉末(すなわち、二酸化ケイ素粒子)を過剰に添加することで塗料の光沢性が設計値より低くなることを回避する。
【0020】
工程S300では、複数のナノ抗菌粒子11を含むナノ抗菌溶液を、当該塗料本体内にも混合して抗菌塗料を完成する。
例えば、総重量100wt%で、当該抗菌塗料は、1~3wt%の当該二酸化ケイ素(SiO2)粉末と、3~15wt%の当該ナノ抗菌溶液と、残量の当該塗料本体とを含む。好ましくは、当該抗菌塗料は、1~2wt%の当該二酸化ケイ素(SiO2)粉末と、4~6wt%の当該ナノ抗菌溶液と、残量の当該塗料本体とを含む。
【0021】
これらのナノ抗菌粒子11としては、ナノ金属又はナノ金属酸化物を採用する。当該ナノ金属は、ナノ金属銀であってもよく、当該ナノ金属酸化物は、ナノ二酸化チタン又はナノ酸化亜鉛であってもよい。本実施例では、本発明は、ナノ金属銀及びナノ二酸化チタンをともに使用することで、抗菌効果が良好となる。
ナノ抗菌溶液は、水で希釈されると、水性ナノ抗菌溶液として定義することができる。例えば、複数のナノ抗菌粒子11は、0.05~2%のナノ金属銀に由来し、残量の水が溶剤としてもよく、好ましくは、ナノ金属銀の含有量が0.5~1.5%である。これらのナノ抗菌粒子11の粒子径が10ナノメートルより小さく、好ましくは、約3~5ナノメートルである。ナノ抗菌粒子11の濃度については、抗菌効果を良好にすることから、10000~12000ppmのナノ抗菌粒子11を含むナノ抗菌溶液を使用することができる。
【0022】
図3aを参照する。前記の水が揮発し、当該抗菌塗料1が抗菌コーティング1’として硬化した場合に、これらの二酸化ケイ素粒子13により、これらのナノ抗菌粒子11を当該抗菌コーティング1’の表面101に近い位置に集中させる。当該抗菌コーティング1’は表面層14’及び中間層15’を含み、当該表面層14’におけるこれらのナノ抗菌粒子11の数量割合が当該中間層15’におけるこれらのナノ抗菌粒子11の数量割合より大きい。換言すれば、この時の抗菌コーティング1’は、少なくとも水性樹脂及び複数の塗料助剤を含む塗料本体10と、当該塗料本体10内に混合された複数の二酸化ケイ素粒子13と、当該塗料本体10内に位置し、当該抗菌コーティング1’の表面101に近い位置に集中する複数のナノ抗菌粒子11とを含む。
当該表面層14’におけるこれらのナノ抗菌粒子11の数量割合は、60~90%であり、当該中間層15’におけるこれらのナノ抗菌粒子11の数量割合は、10~40%である。抗菌効果をより良好にすることから、当該表面層14’におけるこれらのナノ抗菌粒子11の数量割合は80~90%であることが好ましい。本実施例では、当該表面層14’及び当該中間層15’の厚みは、それぞれ当該抗菌コーティング1’の総厚み(すなわち、当該表面層14’及び当該中間層15’の重ね合わせた厚み)の10%及び90%である。例えば、当該抗菌コーティング1’の厚みが、5μm以上であり、当該抗菌コーティング1’の厚みが大きいほど、当該表面層14’におけるこれらのナノ抗菌粒子11の数量が多くなる。
【0023】
さらに、
図3aを参照する。当該抗菌塗料1は、基材12に塗布されて当該抗菌コーティング1’として硬化してもよく、中間層15’は、当該表面層14’と当該基材12との間に位置する。当該抗菌コーティング1’のこれらのナノ抗菌粒子11と当該塗料本体10との間の耐摩耗試験では、不織布(水に濡れたもの)で1.8kg/cm
2加圧し、当該抗菌コーティング1’の表面層を摩耗回数3000回(cycle)以上で摩耗させ、当該抗菌コーティング1’のこれらのナノ抗菌粒子11と当該塗料本体10との間の密着性が5bである。密着性5bとは、刻線のエッジが極めて滑らかであり、正方形の碁盤目状のコーティングの剥離が一切ないASTM D3359試験方法B(クロスカット法(Cross-cut))による密着性のレベルを指す。当該塗布方法として、バーコーティング(bar coating)、スライドコーティング(slide coating)、カーテンコーティング(curtain coating)及びスプレーコーティング(spray coating)の少なくとも1種を採用し、当該基材12は、有機基板(例えば、木材又はプラスチックなど)又は無機材料(例えば、金属又はガラスなど)であってもよい。
【0024】
また、さらに
図3bを参照する。当該抗菌塗料1は、プラスチックフィルム12’に塗布されて当該抗菌コーティング1’として硬化してもよい。すなわち、当該抗菌コーティング1’を当該プラスチックフィルム12’上に設け、抗ウイルステープ9を完成する。当該抗ウイルステープ9は、当該プラスチックフィルム12’の貼着性(例えば、粘性貼着又は静電貼着)により、様々な物品8に貼り付けられている。当該物品8は、人の手が接触する様々な物品、例えば、電子製品(携帯電話、タッチパネルなど)のスクリーン、キーボードやマウス、デスクトップ、様々なグリップ、様々なスイッチなどであってもよい。当該プラスチックフィルム12’は、透明のプラスチックフィルム又は有色のプラスチックフィルムであってもよい。
【0025】
図4を参照する。本発明の多数のナノ抗菌粒子11は、空気中の細菌3と接触して当該細菌3の細胞膜31を破壊し、当該細菌3の組織液が外に流れ、タンパク質の凝固現象が生じ、細菌3が活性を失い、最終的に当該細菌3のDNA合成が阻害され、分裂繁殖能力が失われることで死亡し、確実に抗菌効果を達成することができる。なお、本発明のナノ抗菌溶液におけるナノ抗菌粒子11が、抗ウイルス効果を有すると、乾燥後のナノ抗菌粒子も抗ウイルス効果を有する。
【0026】
本発明の抗菌コーティングによれば、二酸化ケイ素粒子により、ナノ抗菌粒子の多数を当該抗菌コーティングの表面に近い位置に集中させることで、ナノ抗菌粒子が無駄になることがなく、当該ナノ抗菌溶液のコストを低減できる。これらのナノ抗菌粒子の多数は、当該抗菌コーティングの表面層付近に集中することで、当該抗菌コーティングの抗菌効果が限定されず、最適な抗菌効果を達成することができる(例えば、15g/m2抗菌効果>99%、抗菌試験は、JIS Z2801に準じ、菌種:大腸菌)。
【0027】
また、出願人は、さらに以下の実験を行った。
【0028】
第1の実験では、本発明の
図3に示す抗菌コーティングの表面層をこすり落としてから、表面層なし抗菌コーティングに対して抗菌試験を行った。しかしながら、このような抗菌コーティングの抗菌効果は好ましくない(例えば、15g/m
2抗菌効果<99%、抗菌試験は、JIS Z2801に準じ、菌種:大腸菌)。
したがって、本発明のこれらのナノ抗菌粒子の多数は、当該抗菌コーティングの表面層付近に集中することが示されており、一旦当該表面層のこれらのナノ抗菌粒子がこすり落とされると、当該抗菌コーティングの抗菌効果は当然好ましくない。
【0029】
第2の実験では、本発明の工程S200において、二酸化ケイ素粉末を当該塗料本体内に混合せずに、ナノ抗菌溶液を当該塗料本体内に混合し、他の抗菌塗料を完成し、当該抗菌塗料を他の基材上に塗布して他の抗菌コーティングとして硬化させた。しかしながら、このような抗菌コーティングの抗菌効果も好ましくない(例えば、15g/m2抗菌効果<99%、抗菌試験は、JIS Z2801に準じ、菌種:大腸菌)。二酸化ケイ素粉末を当該塗料本体内に混合していないので、これらのナノ抗菌粒子の多数を当該抗菌コーティングの表面に近い位置に集中させることのできる二酸化ケイ素粒子はなく、当該抗菌コーティングの抗菌効果は当然好ましくない。
よって、二酸化ケイ素粒子により、これらのナノ抗菌粒子の多数を当該抗菌コーティングの表面層付近に位置させることができることが示されている。
【0030】
出願人は、さらに、日本の一般財団法人ボーケン品質評価機構(BOKEN)に本発明の抗ウイルス試験を委託した。抗ウイルス効果が極めて優れたという結果となった品質検査報告書を以下に示す。
送付日:2020年7月20日
サンプル名称:新規ナノ複合材料PN 5229プラスチックシート(すなわち、本発明の抗菌コーティング)
数量:2
試験項目:抗ウイルス試験
参照仕様:ISO21702、JIS R 1702
試験方法:MEM培地で約108PFU/ml以上のウイルス溶液を作製し、滅菌した蒸留水で10倍希釈して試験用ウイルス溶液を調製しておく。5cmの正方形の試験サンプルに0.4mlの試験用ウイルス溶液を接種した後に、4cmの正方形のカバーガラスで覆った。それを黒色の蛍光灯で4時間照射した。光照射後に、ジッパーバッグに入れ、10mlの溶離液を加えて十分にこすり、ウイルスを溶離させた。溶離液中のウイルスの感染値を計測し、「PN 5229プラスチックシート(ブランクサンプル)」を対照サンプルとし、4時間照射後及び接種直後のデータを計測した。光源の種類:黒光蛍光灯20w 2本(TOSHIBA FL20S BLB)、紫外線積算光量計:Hamamatsu Photonics K.K.,C10427,H10428、光照射条件:0.25mW/cm2、4時間(25±5℃)、カバーガラスの種類:OHPカバーガラス、保湿用ガラスの種類:ボロシリケートガラス、溶離液:SCDLP培地、ウイルス感染値の試験方法:Plaque assay(プラーク法)
試験用ウイルス:インフルエンザウイルス Influenza A virus (H1N1)、ATCC VR-1469
【0031】
【表1】
付注:ISO21702、2019抗ウイルス活性値の計算、計算方法:抗ウイルス活性値=U
t-A
t。本試験は、大阪微生物実験室によって行われた。
【0032】
以上は、本発明が課題を解決するために採用した技術手段の好ましい実施形態又は実施例を記載したに過ぎず、本発明の特許実施の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の特許請求の範囲の内容に適合するもの、又は本発明の特許請求の範囲に基づいて行われる同等の変更及び修飾は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 抗菌塗料
1’ 抗菌コーティング
10 塗料本体
101 表面
11 ナノ抗菌粒子
12 基材
12’ プラスチックフィルム
13 二酸化ケイ素粒子
14’ 表面層
15’ 中間層
20 抗菌塗料
21 ナノ抗菌粒子
3 細菌
31 細胞膜
8 物品
9 抗ウイルステープ
S100~S300 工程