(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 5/04 20060101AFI20230427BHJP
F16K 11/076 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
F16K5/04 Z
F16K11/076 Z
(21)【出願番号】P 2021209758
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇太
(72)【発明者】
【氏名】黒川 昌久
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-090851(JP,A)
【文献】特開2011-208659(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101668981(CN,A)
【文献】特開平05-116756(JP,A)
【文献】特開2018-009682(JP,A)
【文献】特開平09-264440(JP,A)
【文献】特開平07-117133(JP,A)
【文献】米国特許第09410701(US,B1)
【文献】国際公開第2010/028482(WO,A1)
【文献】特開2021-032275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00 - 11/24
F16K 5/00 - 5/22
F16L 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を有し、かつ流体の流入口及び流出口が前記収容部に面して開口されたハウジングと、前記収容部に作動可能に収容された弁本体部を有する弁体とを備え、
前記弁本体部には、前記流入口と前記流出口との連通状態を変更する可動流路が形成され、
さらに、前記ハウジングには、前記流出口を介して前記収容部に連通する流出路が形成され、
前記流出路は、前記流出口から延びる上流流路部と、前記上流流路部に対し交差する方向へ延び、かつ前記上流流路部に対し、連通口を介して連通状態で接続された下流流路部とを備えるバルブ装置であって、
前記上流流路部での前記流体の流れ方向を上流流れ方向とし、前記下流流路部での前記流体の流れ方向を下流流れ方向とした場合、前記流れ方向を前記下流流れ方向に変えた直後に前記流体が流れる空間を、前記上流流れ方向における下流側へ拡張する拡張空間が、前記流出路に設けられ
、
前記下流流路部は、前記上流流れ方向における前記上流流路部の中間部に接続され、
前記拡張空間により拡張された前記空間は、前記上流流路部において、前記上流流れ方向における前記連通口の上流端よりも下流部が、上流部よりも、前記下流流れ方向における下流側へ拡張されることにより形成され、
前記上流流れ方向における前記上流流路部の下流端には、同下流端を塞いだ状態でプラグが配置されているバルブ装置。
【請求項2】
前記
上流流れ方向における前記プラグの上流端面は、前記下流流路部に近づくに従い、同上流流れ方向における前記連通口の下流端に近づくように、前記上流流れ方向に対し傾斜している請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記
プラグの前記上流端面は、前記下流流れ方向における下流側の端部において前記連通口の前記下流端に隣接している請求項2に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内で弁体を作動させることにより、同ハウジングにおける流体の流入口及び流出口の連通状態を変更するようにしたバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブ装置の一形態として、
図5に示すものが知られている。このバルブ装置60は、収容部62を有するハウジング61と、弁本体部71を有する弁体70とを備えている。弁本体部71は、収容部62に回転可能に収容されている。ハウジング61には、流体FLの流入口63及び流出口64が、収容部62に面して開口されている。流出口64は、ハウジング61の複数箇所に形成されている。弁本体部71は、流入口63と流出口64との連通状態を変更する可動流路72を有している。流体FLの流れ方向における可動流路72の上流端72u及び下流端72dは、弁本体部71の外面において開口している。なお、上記のように、ハウジング及び弁体を備え、弁体を回転させることにより、流入口及び流出口の連通状態を変更するようにしたバルブ装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
さらに、上記
図5に示すバルブ装置60におけるハウジング61には、流出口64を介して収容部62に連通する流出路65が流出口64と同数形成されている。各流出路65は、流出口64から延びる上流流路部66と、上流流路部66に対し直交する方向へ延びる下流流路部67とを備えている。流出路65毎の下流流路部67は、上流流路部66に対し、連通口68を介して連通状態で接続されている。
【0004】
上記バルブ装置60によれば、同バルブ装置60の外部から供給された流体FLは、流入口63を通って可動流路72に流入する。そして、弁体70の回転により、可動流路72の下流端72dが、いずれかの流出口64に対向すると、流入口63と流出口64とが可動流路72を介して連通した状態となる。流体FLは、可動流路72を流れた後、流出口64を通って流出路65に導かれる。流体FLは上流流路部66を流れ、下流流路部67との接続部分で流れ方向を変える。流体FLは、連通口68を通って下流流路部67に移り、同下流流路部67を流れた後に、バルブ装置60の外部へ流出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記
図5に示す従来のバルブ装置60では、上流流路部66での流体FLの流れ方向と、下流流路部67での流体FLの流れ方向とが大きく異なる。流体FLは、上流流路部66から下流流路部67に移る際に流れ方向を大きく変える。そのため、流れ方向を変えた直後に流体FLが流れる空間Sでは、流体FLの剥離が起こり、渦Vが発生する。空間Sのうち、流体FLが流れることのできる領域が、渦Vの分だけ小さくなって、圧力損失が増大する。この場合には、ポンプで流体を再加圧する等の対策が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するバルブ装置は、収容部を有し、かつ流体の流入口及び流出口が前記収容部に面して開口されたハウジングと、前記収容部に作動可能に収容された弁本体部を有する弁体とを備え、前記弁本体部には、前記流入口と前記流出口との連通状態を変更する可動流路が形成され、さらに、前記ハウジングには、前記流出口を介して前記収容部に連通する流出路が形成され、前記流出路は、前記流出口から延びる上流流路部と、前記上流流路部に対し交差する方向へ延び、かつ前記上流流路部に対し、連通口を介して連通状態で接続された下流流路部とを備えるバルブ装置であって、前記上流流路部での前記流体の流れ方向を上流流れ方向とし、前記下流流路部での前記流体の流れ方向を下流流れ方向とした場合、前記流れ方向を前記下流流れ方向に変えた直後に前記流体が流れる空間を、前記上流流れ方向における下流側へ拡張する拡張空間が、前記流出路に設けられている。
【0008】
上記の構成によれば、流出口から流出路へ出た流体は、上流流路部を流れ、下流流路部との接続部分で流れ方向を変える。流体は、連通口を通って下流流路部に移り、同下流流路部を流れた後に、バルブ装置の外部へ流出される。流れ方向を下流流れ方向に変えた直後に流体が流れる空間では、流体の剥離が起こり、渦が発生するおそれがある。
【0009】
しかし、上記の構成によれば、上記空間を、上流流れ方向における下流側へ拡張する拡張空間が設けられている。
従って、上記空間のうち、流体が流れる領域が渦により減少しても、その減少分が上記拡張空間によって補填される。流体が流れる領域が確保され、渦による圧力損失の増加が抑制される。
【0010】
上記バルブ装置において、前記拡張空間は、前記上流流路部において、前記上流流れ方向における前記連通口の上流端よりも下流部が、上流部よりも、前記下流流れ方向における下流側へ拡張されることにより形成されていることが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、上流流路部では、上流流れ方向における連通口よりも下流部が、上流部よりも、下流流れ方向における下流側へ拡張されている。この拡張により連通口が、上記上流部から下流流れ方向における下流側へ離れる。上記上流部と連通口との間には、空間が生ずる。この空間は、流れ方向を下流流れ方向に変えた直後に流体が流れる空間として機能する。
【0012】
また、下流部の上記拡張により、上流流れ方向における上記空間の下流側に、上記拡張空間を形成することが可能となる。
上記バルブ装置において、前記下流流路部は、前記上流流れ方向における前記上流流路部の中間部に接続されており、前記上流流れ方向における前記上流流路部の下流端には、同下流端を塞いだ状態でプラグが配置され、前記上流流れ方向における前記プラグの上流端面は、前記下流流路部に近づくに従い、同上流流れ方向における前記連通口の下流端に近づくように、前記上流流れ方向に対し傾斜していることが好ましい。
【0013】
上流流路部を流れる流体の一部は、プラグの上流端面に当たって流れ方向を変える。この際、上流端面が上記の構成によるように傾斜していると、流体は上流端面に沿って流れることで、連通口に向かうように整流される。上記流体は、連通口から下流流路部にスムーズに流入することが可能となる。
【0014】
上記バルブ装置において、前記プラグの前記上流端面は、前記下流流れ方向における下流側の端部において前記連通口の前記下流端に隣接していることが好ましい。
上流流路部を流れる流体のうち、プラグの上流端面に当たって流れ方向を変えたものは、同上流端面に沿って流れることで、下流流れ方向における下流側の端部から連通口の下流端に移る。ここで、上記の構成によるように、下流流れ方向における上流端面の下流側の端部が、連通口の下流端に隣接していることから、流体は、上流端面から連通口を通って下流流路部へ、よりスムーズに流入する。
【発明の効果】
【0015】
上記バルブ装置によれば、渦の発生による圧力損失の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】バルブ装置をロータリバルブに具体化した一実施形態を示す図であり、同ロータリバルブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、バルブ装置をロータリバルブに具体化した一実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1~
図3に示すように、ロータリバルブ10は、ハウジング11、弁体51、一対のパッキン55及びシールリング56を備えている。次に、各部材について説明する。
【0018】
<ハウジング11>
図1及び
図3に示すように、ハウジング11は、カバー12及びボディ15を備えている。
【0019】
カバー12は略四角板状をなしており、弁体51における軸部52の軸線ALに沿う方向へ延びる軸受孔13を中心部分に有している。カバー12は、軸受孔13の周縁部から軸線ALに沿ってボディ15側(
図3の下側)へ突出する突部14を有している。
【0020】
図2~
図4に示すように、ボディ15は、上記軸線ALに沿う方向へ延びる筒状部16を備えている。筒状部16は、4つの側壁部17,18によって四角筒状に形成されている。2つの側壁部17は、軸線ALを挟んで相対向している。残りの2つの側壁部18は、軸線ALを挟んで、両側壁部17の対向方向に対し直交する方向に相対向している。
【0021】
軸線ALに沿う方向における筒状部16のカバー12とは反対側(
図3の下側)の端部には、同端部を塞いだ状態で閉塞部21が形成されている。軸線ALに沿う方向における筒状部16のカバー12側の端部は、開放された開放端22となっている。開放端22は、ボディ15に取り付けられた上記カバー12によって塞がれている。ボディ15における筒状部16及び閉塞部21と、上記カバー12とによって囲まれた箇所は、収容部23を構成している。
【0022】
閉塞部21の中心部分には、流体FLの流入口24が収容部23に面して開口されている。閉塞部21における流入口24の周縁部には、軸線ALに沿ってカバー12側(
図3の上側)へ突出する円環状の環状突部25が形成されている。
【0023】
ボディ15には、流入口24を介して収容部23に連通する流入路26が形成されている。閉塞部21における流入口24の周縁部からは、円管状の接続管部27が、軸線ALに沿ってカバー12から遠ざかる側(
図3の下側)へ突出しており、流入路26の大部分が接続管部27の内部空間によって構成されている。接続管部27には、
図3において二点鎖線で示す配管28が接続され、流体供給源(図示略)から流体FLが、配管28及び接続管部27を介して流入口24に供給される。
【0024】
相対向する2つの側壁部17には、流体FLの流出口31,32が収容部23に面して開口されている。
ボディ15には、流出口31を介して収容部23に連通する流出路33が形成されている。流出路33は、上流流路部34及び下流流路部35を備えている。
【0025】
上流流路部34は、流出口31から弁本体部53の径方向外方へ延びている。側壁部17における流出口31の周縁部からは、円管状の管部36が上記径方向外方へ突出している。上流流路部34の大部分は、管部36の内部空間によって構成されている。
【0026】
下流流路部35は、上流流路部34に対し交差する方向へ延びている。本実施形態では、下流流路部35は、上記軸線ALに沿う方向へ延びており、上流流路部34に対し直交している。下流流路部35は、上流流路部34に対し、連通口37を介して連通状態で接続されている。管部36における連通口37の周縁部からは、円管状の接続管部38が上記軸線ALに沿って、接続管部27と同一方向へ突出している。下流流路部35は、接続管部38の内部空間によって構成されている。接続管部38は、
図5に示す従来のバルブ装置60における接続管部と同程度の太さ(外径)を有している。この太さは、上記流入用の接続管部27の太さと同程度である。
【0027】
接続管部38には、
図3において二点鎖線で示す配管39が接続される。流出路33を流れた流体FLは、配管39を通って、ロータリバルブ10の外部の流体FLの使用先に送られる。
【0028】
上記と同様に、ボディ15には、流出口32を介して収容部23に連通する流出路41が形成されている。流出路41は、上流流路部42及び下流流路部43を備えている。
上流流路部42は、流出口32から弁本体部53の径方向外方であって、上記上流流路部34とは反対側へ延びている。側壁部17における流出口32の周縁部からは、円管状の管部44が上記径方向外方であって、上記管部36とは反対側へ突出している。上流流路部42の大部分は、管部44の内部空間によって構成されている。
【0029】
下流流路部43は、上流流路部42に対し交差する方向へ延びている。本実施形態では、下流流路部43は、上記軸線ALに沿う方向へ延びており、上流流路部42に対し直交している。下流流路部43は、上流流路部42に対し、連通口45を介して連通状態で接続されている。管部44における連通口45の周縁部からは、円管状の接続管部46が上記軸線ALに沿って、接続管部27,38と同一方向へ突出している。下流流路部43は、接続管部46の内部空間によって構成されている。接続管部46は、
図5に示す従来のバルブ装置60における接続管部と同程度の太さ(外径)を有している。この太さは、上記接続管部27,38の太さと同程度である。
【0030】
接続管部46には、
図3において二点鎖線で示す配管47が接続される。流出路41を流れた流体FLは配管47を通って、ロータリバルブ10の外部の流体FLの使用先に送られる。
【0031】
ここで、上流流路部34では、流体FLが
図3の左から右へ向かって流れる。この流れ方向を、上流流路部34での流体FLの上流流れ方向とする。これに対し、上流流路部42では、上記上流流路部34とは逆に、流体FLが
図3の右から左へ向かって流れる。この流れ方向を、上流流路部42での流体FLの上流流れ方向とする。さらに、下流流路部35,43では、流体FLが
図3の上から下へ向かって流れる。この流れ方向を下流流路部35,43での流体FLの下流流れ方向とする。
【0032】
下流流路部35は、上流流れ方向における上流流路部34の中間部、本実施形態では、下流端(
図3の右端)に近い箇所に接続されている。上流流路部34では、上流流れ方向における連通口37の上流端37uよりも下流部34dが、上流部34uよりも下流流れ方向における下流側へ拡張されている。この拡張により連通口37が、上流部34uから下流流れ方向における下流側へ離れる。上流部34uと連通口37との間には、流れ方向を下流流れ方向に変えた直後に流体FLが流れる空間Sが生ずる。
【0033】
同様に、下流流路部43は、上流流れ方向における上流流路部42の中間部、本実施形態では下流端(
図3の左端)に近い箇所に接続されている。上流流路部42では、上流流れ方向における連通口45の上流端45uよりも下流部42dが、上流部42uよりも下流流れ方向における下流側へ拡張されている。この拡張により連通口45が、上流部42uから下流流れ方向における下流側へ離れる。上流部42uと連通口45との間には、流れ方向を下流流れ方向に変えた直後に流体FLが流れる空間Sが生ずる。
【0034】
上記拡張により、管部36,44は、
図5に示す従来のバルブ装置60における管部よりも太い太さ(外径)を有している。
上流流れ方向における管部36の下流側の端部には、プラグ48が装着されている。表現を変えると、上流流路部34の下流端には、同下流端を塞いだ状態でプラグ48が配置されている。上流流れ方向におけるプラグ48の上流端面48uは、次の条件を満たす凹面によって構成されている。
【0035】
条件:下流流路部35に近づくに従い(
図3の下側ほど)、上流流れ方向における連通口37の下流端37dに近づくように、凹状に湾曲しながら、同上流流れ方向に対し傾斜している。
【0036】
そして、上流端面48uは、下流流れ方向における下流側の端部48ueにおいて、連通口37の下流端37dに隣接している。
同様に、上流流れ方向における管部44の下流側の端部には、プラグ49が装着されている。表現を変えると、上流流路部42の下流端には、同下流端を塞いだ状態でプラグ49が配置されている。上流流れ方向におけるプラグ49の上流端面49uは、次の条件を満たす凹面によって構成されている。
【0037】
条件:下流流路部43に近づくに従い(
図3の下側ほど)、上流流れ方向における連通口45の下流端45dに近づくように、凹状に湾曲しながら、上流流れ方向に対し傾斜している。
【0038】
そして、上流端面49uは、下流流れ方向における下流側の端部49ueにおいて、連通口45の下流端45dに隣接している。
さらに、下流部34d,42dが下流流れ方向における下流側へ拡張した領域のうち、プラグ48,49によって塞がれた領域と空間Sとを除く領域によって、拡張空間SEが構成されている。拡張空間SEは、流れ方向を下流流れ方向に変えた直後に流体FLが流れる上記空間Sを、上流流れ方向における下流側へ拡張する。
【0039】
<弁体51>
図2及び
図3に示すように、弁体51は、上記軸線ALを有する軸部52と、軸線ALに沿う方向における軸部52の一方(
図3の下方)の端部に連結された弁本体部53とを備えている。軸部52は、軸受孔13に回転可能に挿通されている。弁本体部53は、軸線ALを自身の中心とする円筒面からなる外周面を、同弁本体部53の外面の一部として有しており、収容部23に回転可能に収容されている。
【0040】
弁本体部53には、流入口24から収容部23に流入した流体FLをいずれかの流出路33,41に導く可動流路54が形成されている。流体FLの流れ方向における可動流路54の上流端54uは、弁本体部53のカバー12とは反対側(
図3の下側)の外面において開口されている。上流端54uは流入口24に対向しており、弁体51の回転位相に拘わらず常に流入口24に連通している。弁本体部53は、上流端54uにおいて環状突部25に対し回転可能に被せられている。
【0041】
このように、弁体51は、軸部52においてカバー12に対し、また、弁本体部53においてボディ15に対し、それぞれ回転可能に支持されている。
可動流路54の下流端54dは、弁本体部53の外周面であって、周方向における略半分の領域にわたって開口されている。下流端54dは、弁体51が回転することにより、2つの流出口31,32のいずれかに対向することが可能である。
【0042】
<パッキン55及びシールリング56>
各パッキン55は、上記筒状部16において、流出口31,32の設けられた側壁部17と弁本体部53の外周面との間に、圧縮された状態で配置されている。シールリング56は、軸部52とカバー12の突部14との間に、圧縮された状態で配置されている。各パッキン55及びシールリング56は、ゴム等の弾性材料によって円環状に形成されている。各パッキン55は、流出口31,32の周りで、側壁部17と弁本体部53の外周面との間をシールする。シールリング56は、収容部23内の流体FLが軸部52と軸受孔13の内壁面との間を通って、ロータリバルブ10の外部へ漏れ出るのを規制する。
【0043】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
図3において矢印で示すように、流体供給源(図示略)から供給される流体FLは、配管28及び接続管部27を通って流入口24に送られる。
【0044】
このような状況のもと、弁体51が、軸部52において図示しないモータ、手動操作等によって回転されると、その回転に伴い、可動流路54の下流端54dが、軸線ALの周りを移動(旋回)する。同
図3に示すように、下流端54dが流出口31に対向すると、流入口24と流出口31とが、可動流路54を介して連通する。このとき、流出口32は、弁本体部53の外周面のうち、下流端54dが開口されていない箇所によって閉塞される。この閉塞により、流入口24と流出口32との連通状態が遮断される。
【0045】
そのため、流体FLは、流入口24から可動流路54を通り、流出口31に導かれる。この流体FLは、流出口31から流出路33の上流流路部34に流出される。
<(1)渦Vの発生による圧力損失の増加抑制について>
流体FLは、上流流路部34を流れる際に、下流流路部35との接続部分で流れ方向を変える。流体FLは、連通口37を通って下流流路部35に移り、同下流流路部35を流れた後に、配管39へ流出される。
【0046】
ここで、上流流路部34での流体FLの流れ方向(上流流れ方向)と、下流流路部35での流体FLの流れ方向(下流流れ方向)とが大きく異なる。流体FLは、上流流路部34から下流流路部35へ移る際に流れ方向を大きく変える。流れ方向を下流流れ方向に変えた直後に流体FLが流れる空間Sでは、流体FLの剥離が起こり、渦Vが発生する。
【0047】
(1-1)しかし、本実施形態では、上記空間Sを、上流流れ方向における下流側へ拡張する拡張空間SEが流出路33に設けられている。
従って、上記空間Sのうち、流体FLが流れる領域が渦Vにより減少しても、その減少分が拡張空間SEによって補填される。流体FLが流れる領域を確保し、渦Vによる圧力損失の増加を抑制することができる。その結果、圧力損失が増大した場合における対策、例えば、ポンプで流体FLを再加圧する等の対策が不要となる。
【0048】
(1-2)本実施形態の上流流路部34では、下流部34dが上流部34uよりも、下流流れ方向における下流側へ拡張されている。この拡張により連通口37が、上流部34uから下流流れ方向における下流側へ離れる。上流部34uと連通口37との間には、空間が生ずる。この空間は、流れ方向を下流流れ方向に変えた直後に流体FLが流れる空間Sとして機能する。
【0049】
また、下流部34dの上記拡張により、上流流れ方向における上記空間Sの下流側に、上記拡張空間SEを形成することが可能となる。
(1-3)上流流路部34を流れる流体FLの一部は、プラグ48の上流端面48uに当たって流れ方向を変える。この際、上流端面48uが上流流れ方向に対し傾斜している。そのため、流体FLは、同上流端面48uに沿って流れることで、連通口37に向かうように整流される。下流部34dの流体FLを、連通口37から下流流路部35にスムーズに流入させることができる。
【0050】
(1-4)さらに、本実施形態では、プラグ48の上流端面48uが、下流流路部35側の端部48ueにおいて連通口37の下流端37dに隣接している。そのため、上流流路部34を流れる流体FLのうち、上流端面48uに当たって流れ方向を変えたものは、同上流端面48uに沿って流れることで、下流流路部35側の端部48ueから連通口37の下流端37dに移る。従って、流体FLを、上流端面48uから連通口37を通って下流流路部35へよりスムーズに流入させることができる。
【0051】
下流流路部35を流れた流体FLは、配管39に流出される。
なお、図示はしないが、弁体51が回転されて、可動流路54の下流端54dが、流出口32に対向すると、流入口24と流出口32とが、可動流路54を介して連通する。流体FLは、流入口24から可動流路54を通り、流出口32に導かれる。流体FLは、流出口32から流出路41の上流流路部42及び下流流路部43を順に流れ、その後、配管47に流出される。
【0052】
ここで、流体FLは、上流流路部42から下流流路部43へ移る際に流れ方向を大きく変える。流れ方向を下流流れ方向に変えた直後に流体FLが流れる空間Sでは、流体FLの剥離が起こり、渦Vが発生する。
【0053】
しかし、上記空間Sを、上流流れ方向における下流側へ拡張する拡張空間SEが流出路41に設けられている。
そのため、上記(1-1)と同様にして、渦Vによる圧力損失の増加を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上流流路部42において、下流部42dを上流部42uよりも、下流流れ方向における下流側へ拡張させている。そのため、上記(1-2)と同様にして、上記拡張空間SEを形成することが可能となる。
【0055】
さらに、本実施形態では、プラグ49の上流端面49uが上記プラグ48の上流端面48uと同様の形状に形成されている。そのため、上記(1-3),(1-4)と同様にして、流体FLを、連通口45から下流流路部43にスムーズに流入させる効果が得られる。
【0056】
<(2)その他の事項>
(2-1)下流流路部35,43を拡径して、連通口37,45を大きくしても本実施形態と同様の効果を得ることが可能である。しかし、この対策では、接続管部38,46が太くなり、それに伴い、配管39,47も径の大きなものに変更しなければならない。
【0057】
この点、本実施形態では、上流流路部34,42の下流部34d,42dを拡径することで、圧力損失の増大を抑制している。そのため、下流流路部35,43を拡径しなくてすみ、接続管部38,46が太くならない。その結果、配管39,47を径の大きなものに変更しなくてすむ。
【0058】
(2-2)上流流路部34,42では、下流部34d,42dが上流部34u,42uよりも、下流流れ方向における下流側へのみ拡張されている。この拡張する側(方向)は、ボディ15において軸線ALに沿う方向の寸法に影響を及ぼさない側(方向)である。そのため、拡張が原因で、ボディ15が軸線ALに沿う方向に大きくなるのを抑制することができる。
【0059】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
<ハウジング11に関する事項>
・カバー12の形状が略四角板状とは異なる形状に変更されてもよい。
・筒状部16は、四角筒状とは異なる筒状に形成されてもよい。
【0061】
・流入口24が、筒状部16に形成されてもよい。この場合、接続管部27は、筒状部16における流入口24から弁本体部53の径方向外方へ突出することになる。
・流出口31,32は、筒状部16において、軸線ALを挟んで対向しない箇所に形成されてもよい。
【0062】
・流出口31,32の数が1又は3以上に変更されてもよい。この場合、流出路33,41の数も流出口31,32と同数に変更される。
<流体FLの流路に関する事項>
・上記実施形態のように、上流流路部34,42において、下流部34d,42dを上流部34u,42uよりも、下流流れ方向における下流側へ拡張させることは、流出路33,41に拡張空間SEを形成する手法の1つに過ぎない。拡張空間SEは、上記手法とは異なる手法によって形成されてもよい。
【0063】
・上記実施形態における下流流路部35,43が、上流流路部34,42に対し直交することを条件に、軸線ALに沿う方向とは異なる方向、例えば、
図3の紙面に直交する方向へ延びてもよい。
【0064】
・下流流路部35,43が、上流流路部34,42に対し、斜めに交差する方向へ延びて、連通状態で接続されてもよい。
・下流流路部35,43は、上記実施形態(下流端に近い箇所)よりも上流流れ方向における上流流路部34,42の上流であることを条件に、同上流流路部34,42の中間部に接続されてもよい。
【0065】
・上流流れ方向における上流部34u,42uの下流部分は、
図3に示すように、下流ほど拡径するテーパ状に形成されてもよいし、上流流れ方向のどの箇所でも同一径となるように形成されてもよい。
【0066】
<プラグ48,49に関する事項>
・下流流れ方向における上流端面48u,49uの下流側の端部48ue,49ueは、連通口37,45の下流端37d,45dから、上流流れ方向における下流側へ離れていてもよい。
【0067】
・上流端面48u,49uは、上記上流流れ方向に対し傾斜していなくてもよい。
・上流端面48u,49uが、凹面とは異なる形状、例えば平面、凸面等によって構成されてもよい。
【0068】
・上記実施形態では、
図3に示すように、下流流れ方向における上流端面48u,49uの上流部が、上記上流流れ方向に対し略直交している。これに代えて、同上流部についても、下流部に対し線対称の関係となるように、上流流れ方向に対し傾斜してもよい。この場合、上流部は、下流部とは反対方向へ傾斜することになる。
【0069】
<弁体51に関する事項>
・弁本体部53の外面における上流端54u及び下流端54dの開口形状が、上記実施形態とは異なる形状に変更されてもよい。
【0070】
・弁本体部53は、円柱状とは異なる形状、例えば球状に形成されてもよい。
<その他>
・流体FLとしては水が代表的であるが、水とは異なる種類の液体が用いられてもよい。また、流体FLとして液体に代えて気体が用いられてもよい。
【0071】
・上記バルブ装置は、収容部を有するハウジングと、収容部に作動可能に収容された弁本体部を有する弁体とを備えることを条件に、ロータリバルブとは異なるタイプのバルブ装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10…ロータリバルブ(バルブ装置)
11…ハウジング
23…収容部
24…流入口
31,32…流出口
33,41…流出路
34,42…上流流路部
34u,42u…上流部
34d,42d…下流部
35,43…下流流路部
37,45…連通口
37d,45d…下流端
37u,45u…上流端
48,49…プラグ
48u,49u…上流端面
48ue,49ue…端部
51…弁体
53…弁本体部
54…可動流路
FL…流体
S…空間
SE…拡張空間
【要約】
【課題】渦の発生による圧力損失の増加を抑制する。
【解決手段】ハウジング11には、流体FLの流入口24及び流出口31,32が収容部23に面して開口される。収容部23に回転可能に収容された弁本体部53は、流入口24と流出口31,32との連通状態を変更する可動流路54を有する。ハウジング11には、流出口31,32を介して収容部23に連通する流出路33,41が形成される。流出路33,41は、流出口31,32から延びる上流流路部34,42と、上流流路部34,42に対し交差する方向へ延び、かつ上流流路部34,42に対し、連通口37,45を介して連通状態で接続された下流流路部35,43とを備える。流れ方向を上流流れ方向から下流流れ方向に変えた直後に流体FLが流れる空間Sを、上流流れ方向における下流側へ拡張する拡張空間SEが、流出路33,41に設けられている。
【選択図】
図3