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特許7269678水蒸気蒸発抑制ユニット、水蒸気蒸発抑制装置および人工浮島
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】水蒸気蒸発抑制ユニット、水蒸気蒸発抑制装置および人工浮島
(51)【国際特許分類】
   E02B 1/00 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
E02B1/00 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021554484
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043555
(87)【国際公開番号】W WO2021090418
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391060524
【氏名又は名称】有限会社手島通商
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】手島 浩光
(72)【発明者】
【氏名】手島 万里
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-009233(JP,A)
【文献】実公昭47-021947(JP,Y1)
【文献】実開昭51-064027(JP,U)
【文献】特開2014-095372(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026883(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00
E03B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上に設置されて海面からの水蒸気蒸発を抑制する水蒸気蒸発抑制ユニットであって、
四方または三方の側面及び頂面を有し底面が開口した函体と、前記函体に取り付けられた複数の浮きとからなり、
前記函体の内部は前記側面のうち一方に向けて低くなるように傾斜させたガイド面によって上層と下層の二層に区分された構造であり、
前記函体下方の海面から蒸発した水蒸気を前記函体内部に導入し、前記上層における前記ガイド面の低所に位置する箇所に前記水蒸気が凝縮した水を貯留可能な貯水部を有することを特徴とする水蒸気蒸発抑制ユニット。
【請求項2】
前記函体が、前記浮きに立設させた複数の柱と、前記各柱の上部および下部同士を連結する紐状部材と、太陽光を透過する採光シートとからなり、
前記各側面および前記頂面は前記紐状部材に取り付けた前記採光シートにより形成され、前記ガイド面は前記函体の所定の側面および対向する側面間に掛け渡した紐状部材に前記採光シートの一辺を取り付け、他辺を前記貯水部へ向けて傾斜させることにより形成されたことを特徴とする請求項1記載の水蒸気蒸発抑制ユニット。
【請求項3】
前記貯水部の上方に遮光部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の水蒸気蒸発抑制ユニット。
【請求項4】
前記函体の頂面が前記貯水部の上方に向けて高くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1,2または3記載の水蒸気蒸発抑制ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の水蒸気蒸発抑制ユニットを複数連結してなる水蒸気蒸発抑制装置。
【請求項6】
前記水蒸気蒸発抑制ユニットが所定の中心角を有する二等辺三角形状または扇形状を呈し、前記浮きの端部同士を連結することにより前記水蒸気蒸発抑制ユニットが全体として円盤形状を呈することを特徴とする請求項5記載の水蒸気蒸発抑制装置。
【請求項7】
前記浮きは、いずれも棒状を呈する外周浮き、中周浮き、内周浮きの3種からなり、隣接する前記水蒸気蒸発抑制ユニットが有する前記各浮きの端部同士を連結することにより多重同心環状の浮き列を形成することを特徴とする請求項6記載の水蒸気蒸発抑制装置。
【請求項8】
前記函体の頂面が、前記外周浮き側を低く、前記内周浮き側を高く形成されているか、或いは、前記函体の頂面が前記外周浮き側を高く、前記内周浮き側を低く形成されていることを特徴とする請求項7記載の水蒸気蒸発抑制装置。
【請求項9】
周方向に連結した前記水蒸気蒸発抑制ユニットの外周を囲むように周方向に複数連結した前記水蒸気蒸発抑制ユニットを配置することで、二重以上の連結した前記水蒸気蒸発抑制ユニットによる環を形成することを特徴とする請求項6,7または8記載の水蒸気蒸発抑制装置。
【請求項10】
中心に碇を備えた中心浮きが配置されており、前記中心浮きと前記内周浮きが連結されていることを特徴とする請求項6,7,8または9記載の水蒸気蒸発抑制装置。
【請求項11】
前記中心浮きにヘリポート、救難救助備品設備、太陽光発電機、風力発電機、水力発電機、灯火設備、送受信設備、推進手段のうち少なくとも1つを備えたことを特徴とする請求項10記載の水蒸気蒸発抑制装置。
【請求項12】
円形の孔を複数形成した大型板状部材の前記孔に請求項5~11のいずれか一項に記載の前記水蒸気蒸発抑制装置を収容してなる人工浮島。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常気象の多発強大化の根源の一つである海面等からの過剰な水蒸気蒸発を抑制することにより気象災害を減殺し、大気の循環を正常化するとともに、水蒸気の有効利用を図る水蒸気蒸発抑制ユニット、水蒸気蒸発抑制ユニットを用いた水蒸気蒸発抑制装置、および水蒸気蒸発抑制装置を備えた人工浮島に関する。
【背景技術】
【0002】
南北極点の解氷、海底火山の活発化、地球温暖化など極点での海水の冷却効率低下もあり赤道付近周辺の海水温上昇で、一段と水蒸気過剰蒸発が進み大気循環が乱れ、至る所で飽和状態が発生し、竜巻・台風・集中豪雨豪雪などの多発強大化による気象災害が広範囲に及び、人間社会に大きな影響を及ぼしている。
【0003】
護岸防波堤、排水設備、天気予報などあらゆる分野で技術が進んでいるにも拘わらず、赤道付近周辺の海面からの水蒸気過剰蒸発が低気圧を多発させ、またそのエネルギーを強大化させ大気循環が乱れ水蒸気が広く拡散する前に、多くの地域で局地的な壊滅的気象災害を生じさせている現実があり、この膨大なエネルギーに対応出来ず逃避難に精一杯であるのが現状である。
【0004】
そこで、海面からの水蒸気過剰蒸発を防止するためになされた発明として例えば特開昭50-9233号公報(特許文献1)および特許第2727128号公報(特許文献2)に開示された装置が知られている。
【0005】
これらの装置は、海上に浮かべた複数の浮体間にシートを張設して、前記シート下方の海面からの水蒸気蒸発を防止するものであり、前記シートは柔軟性のある塩化ビニール等のプラスチックからなるため、前記浮体と前記シートを組み合わせて折り畳んだ状態で海上を輸送し、設置場所において伸展させること、あるいは海上で所定の間隔に並べた前記浮体に前記シートを組み合わせることで設置が可能であり、組立性および可搬性に富む海面からの水蒸気の蒸発を防止する装置を提供するものである。
【0006】
しかし、前記各装置は、設置場所からの漂流を防ぎつつ、前記シートが張設された状態を保つためにアンカーを多数設置する必要がある。浮体に舵を付けて潮流に応じ装置の向きを変更するようにした場合は上流側のみアンカーを設置すればよいが、そうすると潮流の反転するような場所には設置できない。
【0007】
しかも、前記各装置は単純に海面からの水蒸気の蒸発を防止する目的でのみなされたものであって、海面からの水蒸気を有効に利用することには着目されていない。
【0008】
このように従来の装置はただ水蒸気の蒸発を防止することのみに終始しており、そのうえ定点の設置場所から移動させることを考慮しておらず、もし異なる設置場所に装置を移動させるとすると多大な労力が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭50-9233号公報
【文献】特許第2727128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、異常気象の膨大なエネルギーの発生源対策として、赤道付近の海上で過剰に蒸発する水蒸気が空気中に発散することを抑制して異常気象災害を減災し大気循環を正常化するとともに、水蒸気を貯水して利用可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するためになされた本発明は、洋上に設置されて海面からの水蒸気蒸発を抑制する水蒸気蒸発抑制ユニットであって、四方または三方の側面及び頂面を有し底面が開口した函体と、前記函体に取り付けられた複数の浮きとからなり、前記函体の内部は前記側面のうち一方に向けて低くなるように傾斜させたガイド面によって上層と下層の二層に区分された構造であり、前記函体下方の海面から蒸発した水蒸気を前記函体内部に導入し、前記上層における前記ガイド面の低所に位置する箇所に前記水蒸気が凝縮した水を貯留可能な貯水部を有することを特徴とする。
【0012】
このように洋上における海面から蒸発した水蒸気を函体内部に導入して捕集することによって海面からの過剰水蒸気蒸発を抑制するとともに、主に気温が低下する夜間に函体内の水蒸気が凝縮して水滴となって函体の側面またはガイド面を伝って貯水部に貯留されるため、この真水を有効利用するものである。
【0013】
また、前記函体が、前記浮きに立設させた複数の柱と、前記各柱の上部および下部同士を連結する紐状部材と、太陽光を透過する採光シートとからなり、前記各側面および前記頂面は前記紐状部材に取り付けた前記採光シートにより形成され、前記ガイド面は前記函体の所定の側面および対向する側面間に掛け渡した紐状部材に前記採光シートの一辺を取り付け、他辺を前記貯水部へ向けて傾斜させることにより形成されたことを特徴とする場合、例えば柔軟性を有する樹脂製の採光シートを用いる事で嵩張らず容易に陸地から海上まで輸送することが可能であり、更に樹脂製の採光シートに紐状部材取り付け部を形成して予め立体形状に組み立ててある場合、嵩張らず容易に陸地から海上まで輸送した上で柱間に張設した紐状部材に採光シートを取り付けるだけの簡易な施工により本ユニットを完成させることができる。
【0014】
更に、前記貯水部の上方に遮光部が設けられていることを特徴とする場合、例えば日中においても遮光部付近で水蒸気を凝結させて貯水部へと貯留することができるため、効率的に真水の生成をすることができる。
【0015】
更にまた、前記函体の頂面が前記貯水部の上方に向けて高くなるように傾斜していることを特徴とする場合、この傾斜によって水蒸気が上方、すなわち貯水部方向へと案内されるため、効率的に真水の生成をすることができる。
【0016】
水蒸気蒸発抑制ユニットを用いた水蒸気蒸発抑制装置は、前記水蒸気蒸発抑制ユニットを複数連結してなり、特に、前記水蒸気蒸発抑制ユニットが所定の中心角を有する二等辺三角形状または扇形状を呈し、前記浮きの端部同士を連結することにより前記水蒸気蒸発抑制ユニットが全体として円盤形状を呈することを特徴とする。
【0017】
また、前記浮きは、いずれも棒状を呈する外周浮き、中周浮き、内周浮きの3種からなり、隣接する前記水蒸気蒸発抑制ユニットが有する前記各浮きの端部同士を連結することにより多重同心環状の浮き列を形成することを特徴とする場合、比較的簡易な構成で外周浮き列と内周浮き列とが等間隔に維持することができるとともに、中周浮きの両端に立設した柱間を紐状部材で連結することで容易にガイド面を形成するための紐状部材を設けることができる。
【0018】
更に、周方向に連結した前記水蒸気蒸発抑制ユニットの外周を囲むように周方向に複数連結した前記水蒸気蒸発抑制ユニットを配置することで、二重以上の連結した前記水蒸気蒸発抑制ユニットによる環を形成することを特徴とする場合、大型の水蒸気蒸発抑制装置を構成してより広範囲の海面から過剰水蒸気蒸発を抑制することができる。
【0019】
また、前記函体の頂面が、前記外周浮き側を低く、前記内周浮き側を高く形成されているか、或いは、前記函体の頂面が前記外周浮き側を高く、前記内周浮き側を低く形成されていることを特徴とする場合、外周側を高く、内周側を低くしたときは陸地、島の近海洋上に適した構造になり、反対に外周側を低く、内周側を高くしたときは陸地、島から遠く離れた洋上に適したものとなる。
【0020】
更に、中心に碇を備えた中心浮きが配置されており、前記中心浮きと前記内周浮きが連結されていることを特徴とする場合、中心浮きの位置を碇により固定するだけで装置全体の位置を固定することができるため簡便に設置することができる。
【0021】
また、前記中心浮きにヘリポート、救難救助備品設備、太陽光発電機、風力発電機、水力発電機、灯火設備、送受信設備、推進手段のうち少なくとも1つを備えたことを特徴とする場合、海上保安活用や任意の地点への移動などを可能とすることができる。
【0022】
水蒸気蒸発抑制装置を用いた人工浮島は、円形の孔を複数形成した大型板状部材の前記孔に前記水蒸気蒸発抑制装置を収容してなる。この人工浮島によれば、貯水部に貯留した水を人工浮島で生活水などとして使用することができ、多数の人が長期間生活可能な人工浮島とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により海上等からの水蒸気の過剰な蒸発を抑制することが可能となり、国際的協力の基に数量、規模、気象衛星との連携を考慮し季節折々適宜適切に移動配備することで喫緊の課題である異常気象による大災害を緩和解決する可能性を有する。
【0024】
水蒸気過剰蒸発を緩和調整することは単に竜巻・台風・集中豪雨豪雪などの多発強大化を制御するのみならず、適度の水蒸気が高気圧によって上空に拡散され満遍なく降雨降雪をもたらし大気循環を正常化できる。極点での海水の冷却効率復旧、大気の汚染防止、緑地保護と併せ赤道付近周辺の水蒸気過剰蒸発防止による地球規模の減災方法となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の好ましい実施の形態の全体の上面図。
図2図1の側面図。
図3図1の側面断面図。
図4図3の中央部左側半分側面図の拡大部分図。
図5図1に示した実施の形態の一部上下二層の採光シートで横四方天井面の五面で海面を覆って水蒸気を囲い込むブロック体の長手方向断面図、一部採光遮断シート部分図。
図6】ブロック体の外周浮き、中周浮き、内周浮き、浮き連結部材、支柱、中間支柱、補強梁、ワイヤーロープが組み込まれた状態の平面図。
図7】外周浮き連結、連結部材、支柱、中間支柱、遮光シートを組み込んだ状態の海面近くの外面図。
図8】外周浮き支柱上端部周辺、ワイヤーロープ、採光シート、遮光シートを取付けた状態の側面。
図9】中心浮きとブロック体の各浮きを連結した状態の上面図。
図10】中心浮きと内周浮き列と連結した部分の上面図。
図11】中心浮きと全ブロック内周浮き列を連結した部分の側面断面図。
図12】内周浮き列支柱と中心部中心浮きを連結した部分の側面断面図。
図13】ブロック体の外周浮き、支柱、間柱、梁、三角補強梁、ワイヤーロープを組み込んだ外周浮きから内周浮き方向をみた立面図。
図14】ブロック体の外周浮き、中周浮き、内周浮き、支柱、梁、補強梁、ワイヤーロープ、採光シートをそれぞれ配備した側面断面図。
図15】ブロック体が採光シートで底辺の海面を覆って水蒸気を囲い込む形状姿図。
図16】外周浮き周辺、連結部材、支柱、採光シート、遮断シート配備の側面図。
図17】外周浮き、連結部材、支柱、梁、外側錘配備の側面断面図。
図18】外周浮き連結周辺、連結部材、支柱、梁、配備の平面図。
図19】外周浮き連結周辺、連結部材、支柱、配備の外側側面図。
図20】外周浮きの間柱付け根付近の正面図。
図21】外周浮きの間柱付け根付近の側面図。
図22】外周浮き、中周浮き、内周浮き各々連結部分の側面図。
図23】外周浮き、中周浮き間柱付近の平面図。
図24】中周浮き、内周浮き各々連結した部分の側面図。
図25】中周浮き、内周浮き各々連結した部分の平面図。
図26】中周浮きの間柱付け根付近の正面図。
図27】中周浮きの間柱付け根付近の側面図。
図28】内周浮き連結付近の正面図。
図29】内周浮き連結付近の平面図。
図30】内周浮き連結付近の側面図。
図31】陸地、島より遠く離れた洋上に好ましい外周天井低く、内周天井高く、貯水部を中心部中心浮きに近い内周浮きにも配備した全体側面図。
図32】外周天井低く、内周天井高く配備した場合の全体側面図。
図33】外周天井低く、内周天井高く配備した場合のブロック体で横四方と天井の五面海面を覆って水蒸気を囲い込む状態の側面断面図。
図34】外周天井高く、内周天井低く配備した場合のブロック体の長手方向断面図。
図35】外周天井低く、内周天井高く配備した場合のブロック体の長手方向断面図。
図36】貯水部および遮光部を示す側面図。
図37】貯水部の構造を示す正面図。
図38】貯水部の構造を示す斜視図。
図39】採光シートの展開図。
図40】補強シートと下部梁の連結部分を示す図。
図41】補強シートと上部梁の連結部分を示す図。
図42】取付金具を用いて補強シートとワイヤーロープを連結した状態を示す図。
図43】補強シートにワイヤーロープを挿通して連結した状態を示す図。
図44】取付金具を用いて補強シートと下部梁を連結した状態を示す図。
図45】補強シートに下部梁を挿通して連結した状態を示す図。
図46】函体の頂面における4つ角部分の補強シートを示す図。
図47】周方向に3重に分割された形状のブロック体の分割状態を示す図。
図48】周方向に3重に分割された形状のブロック体の結合状態を示す図。
図49】洋上に浮かべる人工浮島を示す図。
図50】洋上ゴミ回収装置と水蒸気蒸発抑制装置を収容した人工浮島を示す図。
図51】異なる実施例を示す図。
図52】地球上の海流を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図1から図46に基づいて説明する。
【0027】
図1乃至図46は本発明である海面からの水蒸気蒸発抑制装置200の実施の形態の全体および詳細部分を示すものであり、本実施の形態は、全体が略円盤形状の浮体構造物で、中心に中心浮き6が配置され、その中心から放射状に等分割した形状のブロック体100が、前記中心浮き6および隣接する水蒸気蒸発抑制ユニットであるブロック体100同士で連結されてなっている。
【0028】
各ブロック体100は、函体10と、浮き20とからなり、浮き20は円弧形状の外周浮き21、中周浮き22、内周浮き23の各浮きの両端に支柱31が、また前記外周浮き21、中周浮き22それぞれの長手方向中間に中間支柱32が立設され、前記両側の支柱31間に渡された紐状部材であるワイヤーロープからなる上部梁41、下部梁42および上下の外周梁43を有し、各支柱31,中間支柱32および各梁41,42,43により区画された空間の頂面11および四方の側面12,13,14,15を太陽光が透過する採光シート1で囲うとともに、中周浮き22両端の支柱31の上下方向中間位置間に渡された内部梁44と前記下側の外周梁43との間に外周に向かって低く傾斜して張られた傾斜シート5によりガイド面16が形成され、さらに傾斜シート5の外周側端部には外周浮き21に沿って袋状の貯水部50が形成されている。そして、前記採光シート1の外周近傍を覆う遮光シート2により遮光部60が形成され、貯水部50の上方が日陰となる構造となっている。
【0029】
支柱31を更に詳細に説明すると、各浮きから立設される柱部35と、隣接する浮き同士を連結するための連結部36と、を有する。更に、外周浮き21に備えられる支柱31には外周浮き21の外側に延伸する腕部37と、腕部37から海面Sに向かって垂下される錘38とを有する。
【0030】
貯水部50は、図37及び図38に示すように水を貯留可能な袋状の構造となっている。頂面11および四方の側面12,13,14,15を形成する採光シート1と一体に形成してもよく、別体で構成して固着することにより一体としてもよい。また、素材は採光シート1と同じ素材により構成されることが望ましいが、別の素材により構成してもよい。
【0031】
採光シート1は、透光性および柔軟性と、洋上での長期使用に耐えうる対候性を有する樹脂製シートからなり、図39に示す展開図のようにあらかじめ所定の形状に形成した後に、四方の側面12,13,14,15およびガイド面16にあたる箇所を折り曲げ、端部に補強シート3を取り付けることによって立体的に組み立てる。
【0032】
あるいは、頂面11、四方の側面12,13,14,15、およびガイド面16をそれぞれ別体の採光シート1から構成して、端部を補強シート3により連結して組み立てるものとしてもよい。
【0033】
図40乃至図45は補強シート3の取り付け方法に関する図である。補強シート3は、角にあたる部分は縫い代部分を重ねて補強シート3を取り付け、補強シート3に形成した取り付け穴とワイヤーロープを取り付け金具4により連結することで強度の高い構造とすることができ(図41図42参照)、裾にあたる部分は、図44に示すように取り付け穴とワイヤーロープ(下部梁42)を取り付け金具4により連結する方法、または図45に示すようにワイヤーロープ(下部梁42)を内部に挿通して連結する構造とすることができる。
【0034】
各ブロック体100は、それぞれ分離して移動可能であり、本発明である水蒸気蒸発抑制装置200を構成する際は、隣接するブロック体100の外周浮き21同士、中周浮き22同士、内周浮き23同士のそれぞれを連結して環状の外周浮き列7、中周浮き列8、内周浮き列9を形成するとともに、中心部に配置した中心浮き6に内周浮き列9の各内周浮き23を連結する。
【0035】
隣接するブロック体100同士の連結は各浮き同士を連結するが、図18図19図24図25図28図29に示すように、隣接する浮き同士を連結すると同時に両ブロック体100の支柱31を立設する構造となっている。
【0036】
このとき、各浮きの両端は係止孔26を有する連結用の突起25が形成されており、隣接するブロック体100の浮き同士を連結する際に連結用の突起25が互い違いに重なり、連通した係止孔26に支柱31の連結部36を差し込むことによって一体に連結されるものである。
【0037】
尚、図51に示すように、浮き(外周浮き21)の両端に設けた係止孔26を有する連結用の突起25付近にそれぞれ支柱31を立設させており、隣接するブロック体100の浮き同士を連結部36により連結した際に、2本の支柱31が隣接した状態となるものとしても良い。
【0038】
各ブロック体100は、頂面11および四方側面12,13,14,15が採光シート1で囲まれているため、図5に示すように、海上に浮くことにより日照時ブロック体100内に海面Sから蒸発した水蒸気STが充満し、傾斜シート5で形成された二層構造の二階部分に導入された水蒸気STが外周近傍の遮光部60で次々と水滴となって落下、あるいは傾斜シート5を流れ落ちて貯水部50に貯留し、日没後は、二階部分の水蒸気STは冷えて貯水部50に貯留する一方、他の水蒸気STは海面へ戻り、本来なら空気中に発散する水蒸気STを包み込んで洋上の過剰な水蒸気の蒸発を緩和抑制する。
【0039】
尚、符号17は頂面11を構成する採光シート1に備えられた返し部材である。この返し部材17によって、頂面11の傾斜に沿って滴り落ちる水滴を下方に落下させ、傾斜シート5によって捕集し、貯水部50へと案内する効果がある。
【0040】
前記貯水部50に貯留した水は、海に戻しても良いが、前記貯水部50に形成された取水口51から取り出して有効利用することもでき、海上での遭難者が利用することも可能である。
【0041】
前記ブロック体100は単体ブロックとして採光シート1で囲われており、各々が独立しているので、水蒸気蒸発抑制装置200を構成するブロック体100のうち1ブロックのシート破損があったとしても他に影響すること無く波浪暴風雨にも対応出来る。
【0042】
前記中心浮き6に、太陽光熱発電、風力発電で信号灯火、送受信、各種センサー、気象衛星との連携設備により適材適所、環境、季節に対応して集合・移動・分散をコントロールし赤道付近周辺の水蒸気過剰蒸発を緩和抑制することで、一層その効果を期待出来る。
【0043】
また、前記中心浮き6にヘリポートを設け、常駐管理、自力移動、救命救急海上保安、洋上情報の発信など広範囲の活用利用が可能である。
【0044】
図47及び図48は本発明の他の実施の形態であり、各ブロック体はブロック体が放射状のみならず周方向にも3重に分割された形状のブロック体300であり、それぞれのブロック体ごとに頂面および四方側面を前記採光シート1に囲むとともに内部に前記傾斜シート5および貯水部50を有する函体10を備え、外周浮き21、中周浮き22、内周浮き23を備える。分離運搬可能な多数のブロック体で構成されることから、過剰水蒸気の蒸発を防止する大規模な水蒸気蒸発抑制装置200の実現に適している。
【0045】
上記いずれの実施の態様も、支柱のみならずワイヤーロープを縦横に張り巡らせた構成としたことで強度が増し、洋上の強風波浪に対応する。なお、高さは例えば2m以下とすることが望ましい。尚、本実施の形態では紐状部材としてワイヤーロープを用いたが、その他の紐状部材を用いるものとしてもよい。
【0046】
図49は本発明の他の実施の形態であって、円形の孔81を複数形成した大型板状部材80の孔81に本発明である水蒸気蒸発抑制装置200を収容した、洋上に浮かべる人工浮島400であり、貯水部50に貯留した水を人工浮島400で生活水などとして使用することができ、多数の人が長期間生活可能な人工浮島400とすることが可能となる。
【0047】
さらに図50は、人工浮島600の外周に形成した複数の孔81に出願人が特願2018-240218号で出願した洋上ゴミ回収装置500を収容し、その内周に形成された複数の孔81に本発明である水蒸気蒸発抑制装置200を収容した構成となっており、洋上のゴミを回収しながら貯水部50に貯留した水を利用して多くの人が長期間生活する人工浮島600が実現できている。
【0048】
さらにこの人工浮島600に太陽光を利用した発電設備などを設置することで、より生活に適した人工浮島600を実現することができる。
【0049】
尚、図52は地球上の海流を示す図であり、本発明の水蒸気蒸発抑制装置200はこの海流を利用して移動させることが可能であり、特に赤道上の海流が利用に適する。
【符号の説明】
【0050】
1 採光シート、2 遮光シート、3 補強シート、4 取り付け金具、5 傾斜シート、6 中心浮き、7 外周浮き列、8 中周浮き列、9 内周浮き列、10 函体、11 頂面、12 側面、13 側面、14 側面、15 側面、16 ガイド面、17 返し部材、20 浮き、21 外周浮き、22 中周浮き、23 内周浮き、25 突起、26 係止孔、31 支柱、32 中間支柱、35 柱部、36 連結部、37 腕部、38 錘、41 上部梁、42 下部梁、43 外周梁、44 内部梁、50 貯水部、51 取水口、60 遮光部、100 ブロック体(水蒸気蒸発抑制ユニット)、200 水蒸気蒸発抑制装置、300 ブロック体(水蒸気蒸発抑制ユニット)、400 人工浮島、500 洋上ゴミ回収装置、600 人工浮島、S 海面、ST 水蒸気
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