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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】インストルメントパネル
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018203422
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020069839
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 俊輝
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095001(JP,A)
【文献】特開2016-022875(JP,A)
【文献】特開2005-297657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部(3)に投射開口(13)が設けられ、該投射開口(13)を通してフロントウインドウパネル(101)に向けて表示光を投射するヘッドアップディスプレイ装置(103)が裏側に組み込まれるインストルメントパネルであって、
基材(23)上にパッド部(29)を有し、前記投射開口(13)をなす本体開口(19)が設けられ、該本体開口(19)の内周面が前記パッド部(29)によって構成されたパネル本体(15)と、
前記パネル本体(15)に対して前記本体開口(19)内に位置するように表側から組み付けられ、前記本体開口(19)との組合せにより前記投射開口(13)をなすベゼル(17)と、を備え、
前記投射開口(13)は、前記パッド部(29)の表面から前記ヘッドアップディスプレイ装置(103)に向けて下方に延びるガイド壁(21)によって筒状に設けられ、
前記ガイド壁(21)は、下側筒状部(67)と、該下側筒状部(67)の上端部から前記パネル本体(15)の表側に向かって外側に広がる上側筒状部(69)とによって構成され、
前記上側筒状部(69)の下側部分と前記下側筒状部(67)とは前記ベゼル(17)によって形成され、前記上側筒状部(69)の上側部分は前記本体開口(19)の内周面をなす前記パッド部(29)によって形成されており、
前記ベゼル(17)のうち前記上側筒状部(69)を形成する部分の裏側において、当該ベゼル(17)と、前記本体開口(19)の内周面をなす前記パッド部(29)との間には、空間(79)が設けられている
ことを特徴とするインストルメントパネル。
【請求項2】
請求項1に記載されたインストルメントパネルにおいて、
前記ベゼル(17)のうち前記上側筒状部(69)を形成する部分の裏側には、当該ベゼル(17)を前記パネル本体(15)に取り付けるための取付部(47)が設けられている
ことを特徴とするインストルメントパネル。
【請求項3】
請求項2に記載されたインストルメントパネルにおいて、
前記パネル本体(15)の前記本体開口(19)の周縁部分のうち、当該本体開口(19)の周方向における少なくとも一部には、前記本体開口(19)の内方に開口する凹状の取付座(33)が設けられ、該取付座(33)と前記本体開口(19)を介して対向する側の部分には被嵌合片(36)が設けられ、
前記取付部(47)は、前記取付座(33)に嵌合する可動嵌合部(49)と、前記被嵌合片(36)と嵌合して前記パネル本体(15)に固定される固定嵌合部(51)とを備え、
前記ベゼル(17)は、前記取付座(33)に前記可動嵌合部(49)を挿入しながら、前記可動嵌合部(49)を中心として前記本体開口(19)に嵌め込む方向に向けて回転させることにより、前記可動嵌合部(49)を前記取付座(33)に嵌合させ、且つ前記固定嵌合部(51)を前記被係合片(36)に嵌合させることが可能である
ことを特徴とするインストルメントパネル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載されたインストルメントパネルにおいて、
前記パッド部(29)のうち前記上側筒状部(69)を形成する部分は、前記ベゼル(17)によって形成された前記上側筒状部(69)が延びる方向に臨む下端面(71)を有し、
前記ベゼル(17)の上端部は、前記パッド部(29)のうち前記上側筒状部(69)を形成する部分の下端面(71)と当接し、前記ベゼル(17)と前記パッド部(29)とで前記上側筒状部(69)の内周面(77)を連続した傾斜面に形成している
ことを特徴とするインストルメントパネル。
【請求項5】
請求項4に記載されたインストルメントパネルにおいて、
前記パッド部(29)のうち前記上側筒状部(69)を形成する部分の内周面(73)と前記下端面(71)とは、前記本体開口(19)の内方に向けて突出した角部(75)を形成しており、
前記ベゼル(17)は、前記本体開口(19)に対して前記角部(75)の下側位置に嵌め込まれている
ことを特徴とするインストルメントパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、ヘッドアップディスプレイ装置が組み込まれるインストルメントパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display)装置(以下、「HUD装置」と称する)を搭載した自動車などの車両が増加しており、HUD装置がインストルメントパネルの裏側に組み込まれるのが一般化してきている。HUD装置は、運転者の運転時における視線方向に配置されたコンバイナまたはフロントウインドウパネルに有益な情報を含む画像を投影し、投影された画像を車両前方の風景に重ねて運転者に虚像として視認させる情報提示手段である。
【0003】
HUD装置を搭載した車両向けのインストルメントパネルでは、HUD装置から投射された画像表示のための表示光を通す投射開口がメーターフードの前方位置などに設けられている。当該インストルメントパネルとしては、基材上にパッド部を有してなるパネル本体の上面に本体開口が設けられ、その本体開口の上から投射開口を有するベゼルが被せられた構造のものが知られている。ベゼルは、本体開口に嵌め込まれると共に、本体開口の周縁部を覆うようにしてパネル本体に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-95001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したインストルメントパネルでは、ベゼルの外周でベゼルとパネル本体との接合部(継ぎ目)が段差となって見栄えが損なわれるし、フロントウインドウパネルへのベゼルの映り込みが目立ってしまうことがある。そこで、乗員からベゼルを直接見え難くすると共に、ベゼルのフロントウインドウパネルへの映り込みを抑制すべく、パネル本体の本体開口内にベゼルを入れ込んで本体開口とベゼルとで投射開口を形成する構成を採ることが考えられる。
【0006】
しかし、ベゼルを本体開口内に取り付けられるようにするためには、パネル本体のパッド部を本体開口の周縁部分で比較的厚く形成しないといけなくなるため、当該パッド部がダ肉を多く含むことに起因して経時変形したときの収縮度合が大きくなり、ベゼルとパネル本体との接合部に隙間が生じやすく、投射開口の見栄えが経時変形で損なわれてしまう。そうなると、ベゼルが直接見え難くなっているとはいえ、隙間の生じた接合部が乗員の目に入ると印象が悪いし、当該接合部がフロントウインドウパネルに映り込むと結局はベゼルの存在が目立ってしまう。
【0007】
本開示の技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、HUD装置が裏側に組み込まれるインストルメントパネルにおいて、フロントウインドウパネルへのベゼルの映り込みを抑え、当該インストルメントパネルの見栄えを良くして、パネル本体とベゼルとの接合部を含む投射開口の見栄えを維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本開示の技術では、パネル本体に設けられた本体開口内にベゼルを組み付けて、パネル本体における本体開口の周縁部分の構成をパッド部の経時変形が抑えられるように工夫した。
【0009】
具体的には、本開示の技術は、上面に投射開口が設けられ、その投射開口を通してフロントウインドウパネルに向けて表示光を投射するHUD装置が裏側に組み込まれるインストルメントパネルを対象とする。
【0010】
本開示の技術に係るインストルメントパネルは、基材上にパッド部を有し、投射開口をなす本体開口が設けられたパネル本体と、パネル本体に対して本体開口内に位置するように表側から組み付けられ、本体開口との組合せにより投射開口をなすベゼルとを備える。インストルメントパネルに設けられた投射開口は、パネル本体のパッド部の表面からHUD装置に向けて下方に延びるガイド壁によって筒状に設けられている。
【0011】
ガイド壁は、パネル本体の裏側に設けられた下側筒状部と、下側筒状部の上端部からパネル本体の表側に向かって外側に広がる上側筒状部とによって構成されている。上側筒状部の下側部分と下側筒状部とはベゼルによって形成され、上側筒状部の上側部分はパネル本体のパッド部によって形成されている。そして、ベゼルのうち上側筒状部を形成する部分の裏側と、パネル本体のパッド部のうち上側筒状部を形成する部分との間には、空間が設けられている。
【0012】
この構成によると、パネル本体に対して本体開口内に位置するようにベゼルを組み付けるようにしたので、フロントウインドウパネルへのベゼルの映り込みを抑えることができる。さらに、乗員からベゼルが直接見え難くなり、インストルメントパネルの見栄えを良くすることができる。また、ベゼルのうち上側筒状部を形成する部分の裏側とパネル本体のパッド部との間に空間を設けるようにしたので、当該空間を設ける分だけパッド部のダ肉が少なくなり、パッド部の経時変形を抑えることができる。その結果、ベゼルとパネル本体との接合部に隙間が生じ難くなり、当該接合部を含む投射開口の見栄えを維持することができる。
【0013】
上記インストルメントパネルにおいて、ベゼルのうち上側筒状部を形成する部分の裏側には、当該ベゼルをパネル本体に取り付けるための取付部が設けられていることが好ましい。
【0014】
この構成によると、ベゼルのうち上側筒状部を形成する部分の裏側にパネル本体への取付部を設け、ベゼルのうち上側筒状部を形成する部分の裏側とパネル本体のパッド部のうち上側筒状部を形成する部分との間の間に形成された空間をベゼルの取付け箇所としたので、パッド部の経時変形を抑えるための当該空間を有効利用して、パネル本体に対し本体開口内にベゼルを簡単に組み付けることができる。
【0015】
ベゼルに設けられる取付部は、パネル本体における本体開口の周縁部分と嵌合する嵌合構造を採り得る。例えば、パネル本体における本体開口の周縁部分のうち、一側には本体開口の内方に開口する凹部が設けられ、その凹部と対向する他側には被嵌合片が設けられる。そして、取付部は、凹部に対して回転可能に嵌合する可動嵌合部と、被嵌合片と爪嵌合する固定嵌合部とを備えていることが好ましい。
【0016】
この構成によると、パネル本体における本体開口の周縁部分の一側に設けられた凹部に対しベゼルに設けられた可動嵌合部をパネル本体の表側から嵌合させ、凹部に嵌合させた状態の可動嵌合部を中心としてベゼルを本体開口に嵌め込む方向に向けて回転させ、パネル本体における本体開口の周縁部分の他側に設けられた被嵌合片に固定嵌合部を爪嵌合させることにより、パネル本体に対し本体開口内にベゼルを簡単に組み付けることができる。
【0017】
また、パッド部のうち上側筒状部を形成する部分は、ベゼルによって形成された上側筒状部が延びる方向に臨む下端面を有していてもよい。この場合、ベゼルの上端部は、パッド部のうち上側筒状部を形成する部分の下端面と当接し、パネル本体のパッド部とベゼルとで上側筒状部の内周面を連続した傾斜面に形成していることが好ましい。
【0018】
この構成によると、パネル本体のパッド部とベゼルとで上側筒状部の内周面を連続した傾斜面に形成するようにしたので、パネル本体のパッド部とベゼルとの接合部における段差を少なくして、当該接合部を含む投射開口の見栄えを良くすることができる。
【0019】
さらに、上側筒状部をなすパッド部の内周面と当該部分の前記下端面とは、本体開口の内方に向けて突出した角部を形成していてもよい。この場合、ベゼルは、本体開口に対して角部の下側位置に嵌め込まれていることが好ましい。
【0020】
この構成によると、本体開口に対してパッド部とベゼルとの境界にあるパッド部の角部の下側位置にベゼルを嵌め込むようにしたので、パッド部とベゼルとの接合部に段差があってもその段差が乗員からよりいっそう見え難くなり、当該接合部を含む投射開口の見栄えを良くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の技術に係るインストルメントパネルによれば、フロントウインドウパネルへのベゼルの映り込みを抑え、当該インストルメントパネルの見栄えを良くして、パネル本体とベゼルとの接合部を含む投射開口の見栄えを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態に係るインストルメントパネルが適用された車両前部の内装構造を示す斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線におけるインストルメントパネルの断面図である。
図3図3は、図1のIIIで囲んだインストルメントパネルの要部を示す斜視図である。
図4図4は、図3に示すインストルメントパネルの要部の分解斜視図である。
図5図5は、図1のV-V線におけるインストルメントパネルの断面図である。
図6図6は、実施形態に係るインストルメントパネルを構成するベゼルに設けられた可動嵌合部の斜視図である。
図7図7は、実施形態に係るインストルメントパネルの組立て作業においてベゼルをパネル本体に組み付ける様子を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、説明の便宜上、車両前後方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、車両前方を向いて車幅方向における左側を「左」、右側を「右」と称し、車高方向における上側を「上」、下側を「下」と称する。
【0024】
図1は、この実施形態に係るインストルメントパネル1が適用された車両前部の内装構造を示す斜視図である。図2は、図1のII-II線におけるインストルメントパネル1の断面図である。図3は、図1のIIIで囲んだインストルメントパネル1の要部を示す斜視図である。図4は、図3に示すインストルメントパネル1の要部の分解斜視図である。図5は、図1のV-V線におけるインストルメントパネル1の断面図である。図6は、インストルメントパネル1を構成するベゼル17に設けられた可動嵌合部49の斜視図である。
【0025】
図1に示すインストルメントパネル1は、速度計やエンジン回転計などの各種の計器類を搭載する部分を含む樹脂製の計器板であって、車室前部に配置される。このインストルメントパネル1は、車幅方向に延びるインパネレインフォースメント(不図示)に支持されて車体に取り付けられることで、エンジンルームと車室を区画するダッシュパネルの後方側(車室側)に装備される。この実施形態で例示するインストルメントパネル1は、運転席が車体右側に位置する右ハンドル仕様車用のパネルである。
【0026】
インストルメントパネル1の上方には、フロントウインドウパネル101が後方に向かって上側に傾斜した姿勢で設けられている。このフロントウインドウパネル101は、車幅方向において車体前方に向けて凸状をなすように緩やかに湾曲しており、図示しないが、周辺部分を車体のルーフ前縁部やフロントピラーなどのフロントウインドウパネル用開口の周縁部に接着することで、車体に固定されている。
【0027】
インストルメントパネル1は、車体後方に膨出した形状で車幅方向に延びていて、フロントウインドウパネル101の下端部近傍から車室内方(後方)へ延びる上面部3と、上面部3の後端縁から湾曲しつつ下方へ延びる後面部5とを有している。インストルメントパネル1のうち運転席に対応する右側部分には、ステアリングホイールと共に運転者の前方に位置する計器類が装着されるメーターフード7が設けられている。
【0028】
また、インストルメントパネル1の後面部5の左右方向における中央位置と両側位置には、同パネル1内に設置されるエアコンユニット(不図示)からの温風や冷風などの空調風を車室内に向けて吹き出すエア吹出口9がそれぞれ設けられている。インストルメントパネル1の上面部3の前方位置には、フロントウインドウパネル101の結露による曇りを除去するための温風を吹き出すデフロスタ用のエア吹出口11が設けられている。
【0029】
そして、インストルメントパネル1の裏側には、図2に示すように、フロントウインドウパネル101に向けて画像表示のための表示光を後方に傾けた方向(図2に白抜き矢印で示す方向)に投射するHUD装置103が組み込まれる。HUD装置103は、フロントウインドウパネル101に有益な情報を含む画像を投影し、投影された画像を車両前方の風景に重ねて運転者に虚像として視認させる周知の情報提示手段である。インストルメントパネル1の上面部でメーターフード7の前方位置(メーターフード7の上面部とも言える位置)には、HUD装置103から投射された表示光を通す投射開口13が設けられている。
【0030】
インストルメントパネル1は、図2図4に示すように、当該インストルメントパネル1の主体をなすパネル本体15と、パネル本体15に組み付けられて投射開口13をなすベゼル17(図3で斜線を付した部材)とを備えている。パネル本体15には、矩形状の本体開口19が設けられており、ベゼル17は、パネル本体15に対して本体開口19内に位置するように組み付けられる。投射開口13は、これらパネル本体15の本体開口19とベゼル17との組合せによりパネル本体15(パッド部29)の表面からHUD装置103に向けて下方に延びるガイド壁21によって筒状に設けられている。
【0031】
パネル本体15およびベゼル17はいずれも、樹脂成形品であって、金型を用いた樹脂材料の射出成形により作製される。ベゼル17は、例えば、ポリプロピレン(PP)やABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、ノリル樹脂などからなる。パネル本体15は、当該パネル本体15の裏面を構成する基材23と、当該パネル本体15の表面を構成する表皮層25と、これら基材23と表皮層25との間に設けられた発泡層27とを有している。
【0032】
基材23は、例えば、ポリプロピレン(PP)やABS樹脂、ノリル樹脂などからなる。表皮層25は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)やTPU(Thermoplastic Polyurethane)、TPO(Thermoplastic Polyolefin)などからなる。発泡層27は、発泡ウレタンなどからなる。表皮層25および発泡層27は、クッション性を有するパッド部29を構成している。このように、パネル本体15は、基材23上にパッド部29を一体に有する構造とされている。
【0033】
パネル本体15における本体開口19の周縁部分のうち左右両側の縁部と前側の縁部には、図2および図5に示すように、当該パネル本体15が下方に延びる垂下壁部31が設けられている。この垂下壁部31には、本体開口の内方へ開口する凹状の取付座33が設けられている。取付座33は、パネル本体15における本体開口19の周縁部分のうち左右両側の縁部と前側の縁部とにそれぞれ設けられている。
【0034】
具体的には、パネル本体15における本体開口19の周縁部分のうち、左右両側の縁部には取付座33が1つずつ設けられ、前側の縁部には取付座33が左右方向に間隔をあけて複数(図4に示す例では3つ)設けられている。各取付座33の上側壁面には、突起状の押え部34が設けられている。また、各取付座33の下側部分は、前側壁部35から本体開口19の内方へ突出した被嵌合片36を構成している。
【0035】
また、パネル本体15における本体開口19の周縁部分のうち後側の縁部には、パッド部29が垂下壁部31のパッド部29の上下寸法に相当する厚さで形成された厚肉部37が設けられている。この厚肉部37にも、本体開口19の内方へ開口する凹状の取付座33が左右方向に間隔をあけて複数(例えば、前側縁部の取付座33に対応する数)設けられている。そして、この取付座33の下側部分は、本体開口19の内方へ突出した被嵌合片36を構成している。被嵌合片36は、本体開口19内に環状に設けられている。
【0036】
ベゼル17は、上側に向かって斜め後方に延びる矩形筒状の第1壁部43と、第1壁部43の上端から上方に向かって外側に広がる矩形フランジ状の第2壁部45とを備えている。このベゼル17には、パネル本体15に取り付けるための取付部47が設けられている。取付部47は、パネル本体15における本体開口19の前側の縁部に設けられた取付座33に対して回転可能に嵌合する可動嵌合部49と、パネル本体15における左右両側の縁部と後側の縁部に設けられた被嵌合片36と爪嵌合する固定嵌合部51とを備えている。
【0037】
可動嵌合部49は、ベゼル17の前側に、本体開口19の前側の縁部に設けられた取付座33と対応する数だけ設けられている。固定嵌合部51は、ベゼル17の左側に、パネル本体15における左側の縁部に設けられた被嵌合片36と対応する数だけ設けられ、ベゼル17の右側に、パネル本体15における右側の縁部に設けられた被嵌合片36と対応する数だけ設けられ、ベゼル17の後側に、パネル本体15における後側の縁部に設けられた被嵌合片36と対応する数だけ設けられている。
【0038】
可動嵌合部49は、図2図4および図6に示すように、第1壁部43と第2壁部45とに跨がる部位に設けられた嵌入部53と、嵌入部53の下側に間隔をあけて第1壁部43に設けられた舌片部55とを備えている。嵌入部53は、ベゼル17の第2壁部45から突出した上板部57と、第1壁部43と第2壁部45とに跨がる部分から突出した一対の側板部59とによって構成され、上板部57の左右両端に各側板部59が一体に形成された構造を有している。この嵌入部53は、取付座33における押え部34と被嵌合片36との間に嵌め入れられる。舌片部55は、嵌入部53との間にパネル本体15の垂下壁部31の下端部を挟み込む部位であり、基端部分が薄肉に形成されて可撓性を有している。
【0039】
固定嵌合部51は、図2および図4に示すように、各々第1壁部43から下方に延びる取付片61に設けられた、外方に突出した係止爪63と、係止爪63の上側に間隔をあけて設けられた小片板状の挟持片65とを備えている。係止爪63は、取付片61における当該係止爪63の周囲をU字状に切り欠いて形成されており、外方から所定以上の力が加えられると切欠き内に没入させるように撓む。挟持片65は、パネル本体15の被嵌合片36を係止爪63との間に挟み込む部位であり、係止爪63と協働してベゼル17をパネル本体15に固定する。
【0040】
投射開口13を構成するガイド壁21は、図2および図3に示すように、パネル本体15の裏側に設けられた下側筒状部67と、下側筒状部67の上端部からパネル本体15の表側に向かって外側に広がる上側筒状部69とによって構成されている。上側筒状部69の下側部分と下側筒状部67とは、ベゼル17によって形成されている。具体的には、ベゼル17の第1壁部43が下側筒状部67を形成しており、ベゼル17の第2壁部45が上側筒状部69の下側部分を形成している。また、上側筒状部69の上側部分は、パネル本体15における本体開口19の周縁部を構成するパッド部29によって形成されている。
【0041】
パッド部29のうち上側筒状部69を形成する部分は、取付座33が設けられていることで、ベゼル17によって形成された上側筒状部69が延びる方向に臨む下端面71を有している。このパッド部29のうち上側筒状部69を形成する部分の内周面73は、本体開口19の内側に向けて斜め上方に臨んでおり、当該内周面73と下端面71とは、本体開口19の内方に向けて突出した角部75を形成している。この角部75は、パッド部29からなるので、クッション性を有している。
【0042】
ベゼル17は、本体開口19に対して表側から角部75の下側位置に嵌め込まれている。そして、本体開口19内に組み付けられたベゼル17の第2壁部45は、パッド部29のうち上側筒状部69を形成する部分の下端面71と当接し、ベゼル17の第2壁部45とパッド部29とで上側筒状部69の内周面を連続した傾斜面に形成している。ここでいう「連続した傾斜面」とは、パネル本体15のパッド部29とベゼル17との接合部に僅かな段差が生じている場合も含む。
【0043】
ベゼル17の第2壁部45の裏側と、パネル本体15のパッド部29のうち上側筒状部69を形成する部分との間には、ベゼル17周りの全周に亘って空間79が設けられている。上述した取付部47を構成する可動嵌合部49および固定嵌合部51は、ベゼル17の第2壁部45の裏側に設けられている。可動嵌合部49の嵌入部53と固定嵌合部51の挟持片65とは、パネル本体15にベゼル17を取り付けた状態で、それぞれ上記空間79に配置される。このように、ベゼル17は、第2壁部45の裏側に設けられた空間79を有効利用して、パネル本体15に対し本体開口19内に組み付けられている。
【0044】
図7は、インストルメントパネル1の組立て作業においてベゼル17をパネル本体15に組み付ける様子を示す要部の断面図である。
【0045】
ベゼル17をパネル本体15に組み付ける作業では、図7に示すように、まず、ベゼル17の可動嵌合部が設けられた前側部分をパネル本体15の表側から本体開口19に挿入して、パネル本体15における本体開口19の周縁部分のうち前側の縁部に設けられた取付座33に対し、ベゼル17に設けられた可動嵌合部49をその開口位置に当接させて嵌入部53を挿入可能な状態とする。
【0046】
次いで、取付座33に可動嵌合部49の嵌入部53を挿入しながら、可動嵌合部49を中心としてベゼル17を本体開口19に嵌め込む方向(図7に矢印で示す方向)に向けて回転させることにより、嵌入部53を取付座33に嵌め入れて可動嵌合部49を取付座33に嵌合させると共に、パネル本体15における本体開口19の周縁部分のうち左右両側の縁部と後側の縁部に設けられた取付座33の被嵌合片36に固定嵌合部51を爪嵌合させる。
【0047】
このとき、ベゼル17を回転させる過程で、係止爪63は、被嵌合片36に当接した後に押圧されて一旦撓み、被嵌合片36を越えた箇所で弾性復帰して挟持片65との間に被嵌合片36を挟み込む。また、ベゼル17の左右両側および後側の上端部(第2壁部45の上端部)は、上側筒状部69を形成するパッド部29の角部75に当接し、当該角部75を撓ませて、角部75の下側位置に配置される。撓んだ角部75は、ベゼル17が当該角部75の下側位置に嵌め込まれると、そのクッション性を活かして形状を回復する。
【0048】
このようにして、パネル本体15に対し本体開口19内にベゼル17を組み付けることができる。
【0049】
この実施形態に係るインストルメントパネル1によると、パネル本体15に対して本体開口19内に位置するようにベゼル17を組み付けるようにしたので、フロントウインドウパネル101へのベゼル17の映り込みを抑えることができる。それにより、乗員に与える不快感を効果的に抑制することができる。さらに、乗員からベゼル17が直接見え難くなり、インストルメントパネル1の見栄えを良くすることができる。また、ベゼル17のうち上側筒状部69を形成する部分の裏側とパネル本体15のパッド部29との間に空間79を設けるようにしたので、当該空間79を設ける分だけパッド部29のダ肉が少なくなり、パッド部29の経時変形を抑えることができる。その結果、ベゼル17とパネル本体15との接合部に隙間が生じ難くなり、当該接合部を含む投射開口13の見栄えを維持することができる。
【0050】
しかも、パネル本体15のパッド部29とベゼル17とで上側筒状部69の内周面77を連続した傾斜面に形成するようにしたので、パネル本体15のパッド部29とベゼル17との接合部における段差を少なくすることができる。その上、本体開口19に対してパッド部29とベゼル17との境界にあるパッド部29の角部75の下側位置にベゼル17を嵌め込むようにしたので、パッド部29とベゼル17との接合部に段差があってもその段差が乗員からよりいっそう見え難くなる。これらによって、当該接合部を含む投射開口13の見栄えをより良くすることができる。
【0051】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0052】
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0053】
上記実施形態では、ベゼル17の前側部分に可動嵌合部49が設けられ、ベゼル17の左右両側部分と後側部分に固定嵌合部51が設けられているとしたが、本開示の技術はこれに限らない。例えば、可動嵌合部49と固定嵌合部51との位置関係は、左右両側の固定嵌合部51を除いて前後逆であってもよい。
【0054】
すなわち、ベゼル17の後側部分に可動嵌合部49が設けられ、ベゼル17の左右両側部分と前側部分に固定嵌合部51が設けられていても構わない。この場合、パネル本体15へのベゼル17の組み付け作業においては、ベゼル17の後側部分を先立って本体開口19に表側から挿入し、可動嵌合部49の嵌入部53を取付座33に挿入可能な状態に位置付けた後、当該嵌入部53を中心としてベゼル17を本体開口19に嵌め込む方向へ回転させることにより、各固定嵌合部51を取付座33に爪嵌合させるようにすればよい。
【0055】
また、上記実施形態では、取付部47が、嵌入部53および舌片部55からなる可動嵌合部49と、係止爪63および挟持片65からなる固定嵌合部51を備えているとしたが、これに限らない。これら可動嵌合部49および固定嵌合部51は取付部47の構成の一例に過ぎず、ベゼル17をパネル本体15の表側から本体開口19内に組み付けられるようにするものあれば、当該取付部47には任意の構成を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本開示の技術は、ヘッドアップディスプレイ装置が裏側に組み込まれるインストルメントパネルについて有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 インストルメントパネル
3 上面部
5 後面部
7 メーターフード
9 エア吹出口
11 エア吹出口
13 投射開口
15 パネル本体
17 ベゼル
19 本体開口
21 ガイド壁
23 基材
25 表皮層
27 発泡層
29 パッド部
31 垂下壁部
33 取付座
34 押え部
35 前側壁部
36 被嵌合片
37 厚肉部
43 第1壁部
45 第2壁部
47 取付部
49 可動嵌合部
51 固定嵌合部
53 嵌入部
55 舌片部
57 上板部
59 側板部
61 取付片
63 係止爪
65 挟持片
67 下側筒状部
69 上側筒状部
71 下端面
73 内周面
75 角部
79 空間
101 フロントウインドウパネル
103 HUD装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7