(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】ポインティングデバイス
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0338 20130101AFI20230427BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20230427BHJP
H01H 25/04 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
G06F3/0338 411
G06F3/02 410
H01H25/04 C
(21)【出願番号】P 2018246891
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】有田 隆
(72)【発明者】
【氏名】小池 保
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098123(JP,A)
【文献】特開2003-015814(JP,A)
【文献】特開2008-210311(JP,A)
【文献】特開2011-154596(JP,A)
【文献】特開平11-353109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/02 - 3/027
G06F 3/033 - 3/039
H01H 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に対し傾斜可能に設けられ、内
壁から突出した突起を備えた操作部材と、
前記基板の板面に沿った方向に回転可能に設けられ、前記操作部材に重なったときに前記突起が入る穴部を備える回転部材とを有し、
前記回転部材は、前記操作部材の回転に従って前記突起が前記穴部の縁に接触することにより前記操作部材に連動して回転し、
前記穴部は、前記操作部材の傾斜により前記突起が移動することができる範囲にわたって
前記回転部材の外周面に形成されていることを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項2】
前記操作部材は、前記回転部材を外側から覆うように前記回転部材に重なることを特徴とする請求項1に記載のポインティングデバイス。
【請求項3】
前記操作部材は、頂点部分に摘みが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のポインティングデバイス。
【請求項4】
前記回転部材は、回転方向に沿って設けられた凹凸または穴を有し、
前記基板には、前記回転部材の回転を前記凹凸または前記穴により検出する第1検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のポインティングデバイス。
【請求項5】
前記基板には、先端部分が前記凹凸または前記穴に係合するように付勢された弾性の棒状部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のポインティングデバイス。
【請求項6】
前記操作部材が押圧されたことを検出する第2検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のポインティングデバイス。
【請求項7】
基板と、
突起を備えた基部を含み、前記基板に対して傾斜可能に設けられた操作部材と、
前記突起を前記基板に向かって付勢して前記基部を収容する収容部材とを有し、
前記収容部材の内周面には、前記操作部材の傾斜により前記突起が移動することができる範囲を避けるように凸部が設けられ、
前記収容部材は、前記操作部材の回転に従って前記突起が前記凸部に接触することにより前記操作部材に連動して回転することを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項8】
前記基板の板面に沿った方向に回転可能に設けられ、内周面が前記収容部材の外周面と対向するように前記収容部材を収容する回転部材を有し、
前記収容部材の外周面と前記回転部材の内周面には、互いに係合する凹凸がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項7に記載のポインティングデバイス。
【請求項9】
前記収容部材の外周面には凹凸が設けられ、
前記基板には、前記外周面と対向するように設けられ、前記収容部材の回転を前記凹凸により検出する第3検出手段が設けられていることを特徴とする請求項8に記載のポインティングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、ポインティングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンピュータ、医療機器、及び工作機械などの各種の装置に座標を入力する操作を行うためのポインティングデバイスがある(例えば特許文献1及び2)。一例として、コンピュータを用いて作図を行う場合、単にポインタを移動させるだけでなく、ポインタを用いて多くの操作メニューから1つを選択するような複雑な操作が求められる。
【0003】
また、従来の内視鏡では2軸方向に小型カメラを移動させる操作が可能であれば十分であったが、近年の内視鏡にはカテーテルが組み込まれているため、指先だけでより複雑な操作を可能とすることが求められている。また、工作機械としてはロボットが挙げられ、やはり複雑な操作が必要なものが多い。さらに、上記以外の装置でも、ポインティングデバイスを用いて複雑な操作を可能とすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-152038号公報
【文献】特開2017-151990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポインティングデバイスは、例えば2軸方向の座標を指定するために傾斜可能な摘みに加えて、回転させたときの回転量を検出するためにロータリーエンコーダを設ける必要がある。このため、ポインティングデバイスの構造が複雑化するので、高精度な傾斜及び回転の操作を実現することが難しいという問題がある。
【0006】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、複雑な構成を用いることなく、傾斜及び回転の高精度な操作が可能なポインティングデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポインティングデバイスは、基板と、前記基板に対し傾斜可能に設けられ、内壁から突出した突起を備えた操作部材と、前記基板の板面に沿った方向に回転可能に設けられ、前記操作部材に重なったときに前記突起が入る穴部を備える回転部材とを有し、前記回転部材は、前記操作部材の回転に従って前記突起が前記穴部の縁に接触することにより前記操作部材に連動して回転し、前記穴部は、前記操作部材の傾斜により前記突起が移動することができる範囲にわたって前記回転部材の外周面に形成されている。
【0008】
本発明の他のポインティングデバイスは、基板と、突起を備えた基部を含み、前記基板に対して傾斜可能に設けられた操作部材と、前記突起を前記基板に向かって付勢して前記基部を収容する収容部材とを有し、前記収容部材の内周面には、前記操作部材の傾斜により前記突起が移動することができる範囲を避けるように凸部が設けられ、前記収容部材は、前記操作部材の回転に従って前記突起が前記凸部に接触することにより前記操作部材に連動して回転する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、複雑な構成を用いることなく、傾斜及び回転の高精度な操作ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ポインティングデバイスの一例を示す外観図である。
【
図2】ポインティングデバイスの一例の断面図である。
【
図3】ポインティングデバイスの一例の分解斜視図である。
【
図4】突起と側面開口の位置関係の一例を示す上面図である。
【
図5】操作部材を傾斜させたときの側面開口内での突起の移動の一例を示す図である。
【
図6】操作部材を回転させたときの側面開口内での突起の移動の一例を示す図である。
【
図8】回転部材の変形例の裾部分の周辺を示す図である。
【
図9】回転部材とドーム部が重なった部分の一部を示す断面図である。
【
図10】ポインティングデバイスの他の例の断面図である。
【
図11】突起と側面開口の位置関係の一例を示す上面図である。
【
図12】回転部材とドーム部が重なった部分の一部を示す断面図である。
【
図14】ポインティングデバイスの他の例を示す外観図である。
【
図15】ポインティングデバイスの他の例の断面図である。
【
図16】ハウジング内に収容される操作部材、スプリング、スライダ、及び回転部材の斜視図である。
【
図17】操作部材を傾斜させたときの突起の移動の一例を示す図である。
【
図18】操作部材を回転させたときの突起の移動の一例を示す図である。
【
図19】光センサがスライダの凹凸を検出する場合の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施例)
図1は、ポインティングデバイスの一例を示す外観図である。符号G1はポインティングデバイスの側面を示し、符号G2はポインティングデバイスの上面を示す。
【0012】
図2は、ポインティングデバイスの一例の断面図である。断面図は、
図1のA-A線に沿ったものである。また、
図3は、ポインティングデバイスの一例の分解斜視図である。なお、分解斜視図において、ハウジング2の図示は省略する。ポインティングデバイスは、例えばコンピュータの座標入力、内視鏡及びカテーテルなどの複雑な操作が必要な医療機器やロボットなど工作機械、及びテレビゲームのコントローラなどに用いられる。
【0013】
ポインティングデバイスは、操作者が操作を行う操作部1、ハウジング2、回転部3、収容カバー4、スプリング5、支持部6、スライダ7、受け部8、及び基板9を有する。回転部3、収容カバー4、スプリング5、支持部6、スライダ7、及び受け部8は、嵌合手段などにより基板9上に固定されたハウジング2の内部に収容される。なお、ポインティングデバイスの素材としては、プラスチックなどの樹脂系材料が挙げられるが、これに限定されず、金属であってもよい。
【0014】
操作部1は、操作部材の一例であり、半球のドーム状のドーム部10、ドーム部10の頂上から上方へ延びる軸部11、及び軸部11の端に設けられた摘み12を有する。操作部1及びハウジング2は基板9上に設けられている。基板9には、操作部1に対する操作入力を検出するための電気回路などが設けられている。
【0015】
操作者は、例えば手指の先を摘み12に触れたまま、矢印Daで示されるように、操作部1全体を任意の外周方向に任意の角度で傾斜させることができる。これにより、操作者は、例えばコンピュータの画面に表示されるポインタを移動させて特定の座標を指定することができる。
【0016】
また、操作者は、指先で摘み12をつまんだまま、摘み12を矢印Dbで示されるように、軸部11の中心軸Xを中心として回転させることで操作部1を回転させることができる。これにより、操作者は、例えばコンピュータの画面に表示されている操作メニューを選択することができる。なお、軸部11及び摘み12は、一例として円柱形状を有するが、これに限定されず、例えば多角柱形状を有してもよい。
【0017】
回転部3は、例えばスカート形状を有する筒状の回転部材の一例である。回転部3は、ハウジング2に対して固定されず、操作部1の回転操作に応じて、基板9の板面に沿った回転方向Rに回転可能に設けられている。回転部3の上部には支持部6を挿通させる円形の上部開口30を有し、外周面には等間隔に例えば4つの側面開口31を有する。
【0018】
また、回転部3の裾部分には、回転方向Rに沿って凹凸32が設けられている。凹凸32は、基板9に実装された光センサ91によって回転部3の回転量、つまり回転角度の検出に用いられる。
【0019】
回転部3の上部側の外周面はドーム部10に重ねられる。ドーム部10は、回転部3を外側から覆うように回転部3に重なる。ドーム部10の内壁の下端には、回転部3と重なったときに側面開口31に入る4つの突起13が設けられている。なお、突起13の位置は、側面開口31に入るのであれば限定されない。
【0020】
図4は、突起13と側面開口31の位置関係の一例を示す上面図である。符号G3はドーム部10の上面を示し、符号G4は回転部3の上面を示す。なお、
図4は、操作部1が基板9に対して傾斜していない状態を示す。
【0021】
各突起13は、ドーム部10の内壁101からドーム部10の中心に向かって突出しており、内周に等間隔に設けられている。突起13は、一例としてドーム部10の中心からの角度が90度おきとなるように設けられている。ドーム部10が回転部3に重ねられたとき、各突起13は側面開口31に入る。後述するように、操作部1の回転時、各突起13は、側面開口31の縁に接触するため、回転部3は操作部1に連動して回転する。なお、本例の突起13の形状は略直方体であるが、限定はない。
【0022】
図2及び
図3を参照すると、収容カバー4は、回転部3の内側において、嵌合手段などにより受け部8の上に固定されている。収容カバー4は、円筒形状を有し、内部にはスプリング5、支持部6、及びスライダ7が収容されている。
【0023】
支持部6は、球体状の基部60と、基部60から突出する棒状の連結部61とを有する。基部60には、外部に向かって張り出した鍔部60aが設けられている。連結部61の一端は、ドーム部10頂点に設けられた固定穴100に挿入されて固定されている。このため、支持部6は、操作部1の傾斜に従って傾斜し、操作部1の回転に従って回転する。なお、固定穴100及び連結部61の固定手段としては嵌合や接着などが挙げられるが、これに限定されない。また、基部60は、支持部6の傾斜及び回転の容易性を担保するため、球体状であることが好ましいが、傾斜及び回転に支障が無ければ他の形状であってもよい。
【0024】
また、基部60は、受け部8に形成された凹部80に載せられている。凹部80の表面形状は、基部60の曲面に合わせて形成されている。基部60と凹部80は表面形状が合うように形成されているため、支持部6の回転や傾斜の状態によらずに基部60は凹部80により安定的に支えられる。これにより、支持部6は、操作部1の傾斜または回転に従って傾斜または回転しても操作部1を支持することができる。
【0025】
スライダ7は、一端側で結合された二重の円筒状部材であり、操作部1の傾斜に応じて基板9に対し傾くことができる。スライダ7の外周に沿って溝70が設けられている。溝70にはスプリング5が収容されている。スプリング5のドーム部10側の端部は収容カバー4の、図示された下面に接触しているため、スライダ7はスプリング5の付勢力により基板9に向けて付勢されている。
【0026】
また、スライダ7のドーム部10側には、基部60を部分的に露出させる開口71が設けられている。連結部61は、基部60から、収容カバー4の上部に設けられた開口40を抜けてドーム部10側に延びる。
【0027】
収容カバー4は、略円筒形状を有し、上面に開口40が設けられ、下端に外側に張り出した鍔部41が設けられている。収容カバー4は受け部8に重ねられ、受け部8は基板9に重ねられている。収容カバー4は、受け部8とともに基板9に固定されている。収容カバー4の固定手段としては、例えば嵌合や接着が挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
基部60は凹部80の上に保持されているため、支持部6は、操作部1の傾斜に応じて傾斜させることができる。このとき、基部60の鍔部60aは、開口71の縁に接触して、支持部6の傾斜に応じてスライダ7を傾斜させる。
【0029】
スライダ7は、スプリング5の付勢力により基板9に向かって付勢されているため、操作者が操作部1から手を離すと、スライダ7は元の姿勢に戻る。これに伴い、鍔部60aも傾斜前の位置に戻るため、操作部1も傾斜前の位置に戻る。このように、支持部6は、スプリング5の付勢力により操作部1を所定の姿勢に保持する。
【0030】
また、基部60の内部には永久磁石62が埋設されている。一方、受け部8の凹部80の下方の基板9には複数の磁電変換素子81が設けられている。基部60の傾斜による永久磁石62と磁電変換素子81の位置関係の変化に応じて磁電変換素子81の位置における磁界は変化するため、永久磁石62の磁界の変化を磁電変換素子81で検出することにより基部60の傾斜角度が得られる。
【0031】
また、操作部1を基板9に向けて押し込む操作を検出するため、凹部80の底に感圧センサ82を設けてもよい。感圧センサ82は、基部60から受ける圧力を検出する。感圧センサ82を用いることにより、操作部1が基板9に向けて押圧されたことを検出することができ、例えば入力確定の操作に適用することが可能とばる。なお、感圧センサ82は第2検出手段の一例である。
【0032】
操作部1が基板9に向けて押圧されたことを検出する手段は感圧センサ82に限定されない。感圧センサ82に代えて、例えば基板9の下部に設けられた下部ハウジング99内に電気スイッチ90が設けられてもよい。なお、電気スイッチ90は第2検出手段の他の例である。
【0033】
基板9には、回転部3の凹凸32の下部に位置するように光センサ91が設けられている。光センサ91は、回転部3の回転による凹凸32の移動を光学的に検出し、凹凸32の検出結果に応じてパルスを生成する。光センサ91が生成するパルスは、回転部3の回転量の算出に用いられる。
【0034】
次に操作部1を傾斜させる操作について述べる。
【0035】
図5は、操作部1を傾斜させたときの側面開口31内での突起13の移動の一例を示す図である。操作者は、例えば実線の矢印で示されるように、摘み12を任意の方向に傾斜させることができる。摘み12が傾斜すると、ドーム部10も基板9に対して傾斜するため、各突起13は、点線の矢印で示されるよう側面開口31の中で移動する。
【0036】
しかし、摘み12を可動限界まで傾斜させても、突起13は側面開口31の縁に接触して側面開口31を押圧することはない。これは、各側面開口31が、操作部1の傾斜により突起13が移動することができる範囲にわたって形成されているためである。このため、操作部1の傾斜により突起13が側面開口31の縁を押して回転部3を回転させることが抑制される。
【0037】
上述したように、回転部3の回転の検出には凹凸32が用いられるため、仮に操作部1の傾斜により回転部3が回転してしまうと凹凸32が回ってしまい回転が誤検出されてしまう。しかし、突起13が側面開口31の縁に接触しないようにすることで、操作部1の傾斜による回転部3の回転が抑制されるため、操作者が操作部1を傾斜させた際の回転が誤検出されることが抑制される。
【0038】
次に操作部1を回転させる操作について述べる。
【0039】
図6は、操作部1を回転させたときの側面開口31内での突起13の移動の一例を示す図である。操作者は、操作部1の傾斜状態によらず、矢印で示されるように、中心軸Xを中心に摘み12を回転させることができる。摘み12が回転すると、ドーム部10も回転するため、各突起13は、点線の矢印で示されるように側面開口31の中で移動する。
【0040】
このとき、各突起13は、符号Cで示されるように側面開口31の縁に接触する。このため、回転部3は、操作部1の回転に応じて各突起13に押されることにより回転方向Rに回転する。したがって、ポインティングデバイスは、操作部1の回転に連動して回転部3を回転させることが可能である。
【0041】
回転部3の回転は光センサ91を用いて検出される。
【0042】
図7は、基板9上の回転部3の一例を示す斜視図である。光センサ91は、回転部3の凹凸32の下方に位置するように基板9の板面に実装される。
【0043】
光センサ91は、受光素子が受光する光に応じて信号の出力をオンオフする。符号Dcで示されるように回転部3の回転に伴い凹凸32が回ると、光センサ91の上に凹部と凸部が交互に位置するため、受光素子による受光状態が交互に変化する。光センサ91は、受光素子により光のオンオフを検出する。光センサ91は、凹凸32の回転に応じたオンオフを示すパルス信号を生成して外部の回路(不図示)に出力する。外部の回路は、パルス信号に基づき回転部3の回転量、つまり回転角を算出する。
【0044】
また、基板9にはラッチ92が設けられている。ラッチ92は、基板9に固定された根元920から先端921にかけて湾曲した弾性の棒状部材である。先端921は基板9の板面に沿って自在に動く。先端921は、略円形状をなすように膨出しており、凹凸32に係合するように付勢されている。
【0045】
このため、回転部3の回転に従って凹凸32が回ると、ラッチ92が凹凸32の窪みに当たる音を発するため、操作者は、操作部1を回転させるとき、音による操作の感触が得られる。このとき、操作者は、先端921が窪みに出入りするときに生ずる応力の変化による操作の感触も得られる。
【0046】
回転部3の裾部分には、凹凸32に代えて穴が設けられてもよい。
【0047】
図8は、回転部3の変形例の裾部分の周辺を示す図である。
図8の回転部3の裾部分には、回転部3の回転方向に沿って穴33が設けられている。回転部3の回転に伴い穴33が回ると、光センサ91に対して光の入力及び遮断が交互に行われる。このため、光センサ91は、上記と同様に回転部3の回転に応じたパルス信号を出力し、このパルス信号に基づいて回転部3の回転量を検出することができる。
【0048】
また、基板9にはラッチ92aが設けられている。ラッチ92aは、根元920aから先端921aにかけて湾曲した弾性の棒状部材である。根元920aは基板9に固定され、先端921aは基板9に対し上下方向に自在に動く。先端921aは、略円形状をなすように膨出しており、穴33に係合するように付勢されている。
【0049】
回転部3の回転に従って穴33が回ると、ラッチ92aが穴33の縁に当たる音を発する。したがって、操作者は、操作部1を回転させるとき、音及び応力の変化による操作の感触が得られる。なお、ラッチ92,92aはポインティングデバイスに必ずしも必要な構成ではない。
【0050】
回転部3には、側面開口31に代えて凹みを設けてもよい。
【0051】
図9は、回転部3とドーム部10が重なった部分の一部を示す断面図である。回転部3には、凹み31aが設けられている。側面開口31は底のない穴であるのに対し、凹み31aは底のある穴であるため、回転部3の強度は側面開口31を設けた場合より凹み31aを設けた場合の方が向上する。なお、側面開口31及び凹み31aは穴部の一例である。
【0052】
(第2実施例)
第1実施例のポインティングデバイスは、ドーム部10が回転部3を外側から覆うように回転部3に重なる。このため、回転部3の内側の空間に上方からゴミが入りにくいという利点が得られる。しかし、回転部3はドーム部10を外側から覆うようにドーム部10に重ねてもよい。
【0053】
図10は、ポインティングデバイスの他の例の断面図である。
図10において、
図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。なお、本例のポインティングデバイスの外観図は、
図1とほぼ同様である。
【0054】
操作部1のドーム部10aは、第1実施例とは異なり回転部3の内側に重なる。ドーム部10aの外壁102が回転部3の内周面と対向するので、突起13aは外壁102から外側に向かって突出するように設けられている。突起13aは、一例としてドーム部10aの中心からの角度が90度おきとなるように設けられている。突起13aは、ドーム部10aが回転部3に重なったとき側面開口31に入る。
【0055】
図11は、突起13aと側面開口31の位置関係の一例を示す上面図である。符号G5はドーム部10aの上面を示し、符号G6は回転部3の上面を示す。なお、
図11は操作部1が基板9に対して傾斜していない状態を示す。
【0056】
各突起13aは、外壁102から外側に向かって突出し、等間隔に設けられている。ドーム部10aが回転部3に重ねられたとき、各突起13aは側面開口31に入る。操作部1の回転時、各突起13aは
図6の突起13と同様に側面開口31の縁に接触するため、回転部3は操作部1に連動して回転する。
【0057】
また、操作部1が任意の方向に傾斜したとき、各突起13aは、
図5の突起13と同様に側面開口31の中で移動する。各側面開口31は、上述したように、操作部1の傾斜により突起13aが移動することができる範囲にわたって形成されているため、摘み12を可動限界まで傾斜させても、突起13aは側面開口31の縁に接触して押圧することはない。したがって、操作部1の傾斜による回転部3の回転が抑制されるため、操作者が操作部1を傾斜させても回転が誤検出されることが抑制される。
【0058】
この効果は、側面開口31に代えて凹みが回転部3に設けられた場合も同様に得られる。
【0059】
図12は、回転部3とドーム部10aが重なった部分の一部を示す断面図である。回転部3には凹み31bが設けられている。側面開口31は底のない穴であるのに対し、凹み31bは底のある穴であるため、回転部3の強度は側面開口31を設けた場合より凹み31bを設けた場合の方が向上する。なお、凹み31bは穴部の一例である。
【0060】
これまで述べたように、回転部3は、操作部1の回転に従って突起13,13aが側面開口31または凹み31a,31bの縁に引っ掛かることにより操作部1に連動して回転する。側面開口31または凹み31a,31bは、操作部1の傾斜により突起13,13aが移動することができる範囲にわたって形成されている。
【0061】
上記の構成によると、操作部1及び回転部3の連動により、ポインティングデバイスの回転操作が可能となる。また、操作部1の傾斜による回転部3の回転が抑制されるため、操作者が操作部1を傾斜させても回転が検出されることが抑制される。したがって、本例のポインティングデバイスによると、複雑な構成を用いることなく、傾斜及び回転の高精度な操作ができる。
【0062】
また、本例のポインティングデバイスによると、ドーム部10aが回転部3の内側に重なる。このため、ドーム部10を第1実施例のドーム部10より小型化することができ、ポインティングデバイスを低背化することができる。
【0063】
(摘み12の形状の例)
次に摘み12の形状の例を述べる。
【0064】
図13は、摘み12の形状の例を示す斜視図である。符号G7~G11には、例えば人間工学的に操作性を向上することができる摘み12の形状の例が示されている。
【0065】
符号G7で示される摘み12の上面には、凹み120が設けられている。凹み120は、操作者の指先にフィットするように形成されているため、操作者は、操作部1を容易に傾斜させることができる。
【0066】
符号G8で示される摘み12の上面には、滑り止めとして機能する複数の突起121が設けられている。突起121により操作者の誤操作が抑制される。
【0067】
符号G9で示される摘み12の上面には、中心から放射状に延びる直線状の凸部122が設けられている。凸部122により操作者の誤操作が抑制される。
【0068】
符号G10で示される摘み12の側面には、らせん状に延びる凸部123が設けられている操作者が摘み12を指でつまんで回転させるときに、凸部123が指に絡むようにフィットするため、高精度な回転の操作が可能となる。なお、本例の摘み12の上面は、符号G7~G9、及び後述する符号G11の形状としてもよい。
【0069】
符号G11で示される摘み12の上面の端部には、上方に突出する突起124が設けられている。操作者は、突起124を指で押さえたまま回転させることで摘み12を容易に回転させることができる。
【0070】
(第3実施例)
図14は、ポインティングデバイスの他の例を示す外観図である。符号G12はポインティングデバイスの側面を示し、符号G13はポインティングデバイスの上面を示す。
【0071】
また、
図15は、ポインティングデバイスの他の例の断面図である。断面図は、
図14のB-B線に沿ったものである。
図15において、
図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0072】
ポインティングデバイスは、操作部1a、ハウジング2a、及び基板9を有する。操作部1aは、軸部16、及び軸部16の端部に設けられた摘み15を有する。ハウジング2aは、嵌合手段などにより基板9に固定されている。なお、摘み15の形状としては、
図13に示された形状が挙げられるが、これに限定されない。
【0073】
ポインティングデバイスは、操作部1a、ハウジング2a、回転部3a、スプリング5、スライダ7a、受け部8、及び基板9を有する。ハウジング2aは、嵌合などの手段により基板9に固定されている。
【0074】
操作部1aは、操作者が操作する操作部材の一例であり、球体状の基部17、基部17から延びる軸部16、及び軸部16の先端の摘み15を有する。なお、操作部1aは、支持部6の連結部61の先端に摘み15を接続した構成である。また、摘み15の形状としては、
図13に示される形状が挙げられるが、これに限定されない。
【0075】
基部17は、基板9に対して傾斜可能となるように、受け部8の凹部80に載せられている。凹部80の表面は基部17の曲面に合わせた形状に形成されている。基部17の内部には永久磁石170が埋設されており、基部17の傾斜は永久磁石170の磁界の変化を磁電変換素子81で検出することにより得られる。
【0076】
基部17は、スライダ7aの内側に収容されている。スライダ7aは、基部17の収容部材の一例であり、スライダ7と同様の二重の筒状部材であり、外周に沿って溝70aを有する。溝70aには、操作部1aの姿勢を保持するための付勢力をスライダ7aに与えるスプリング5が収容されている。
【0077】
スプリング5の上端はハウジング2aの内面に接触しているため、スライダ7aは基板9に向かって付勢されている。基部17には外周に等間隔で突起18が設けられており、基部17が傾斜すると、突起18がスライダ7a上部の開口71aの縁に接触する。このとき、突起18は付勢力により基板9に向かって押される。このように、スライダ7aは、突起18を基板9に向かって付勢することにより操作部1aの姿勢を保持する。
【0078】
また、スライダ7aは、回転部材の一例である筒状の回転部3aの内部に収容されている。回転部3aは、基板9及びハウジング2aに固定されておらず、基板9の板面に沿った方向に回転可能に設けられ、スライダ7aの回転に連動して回転する。
【0079】
図16は、ハウジング2a内に収容される操作部1a、スプリング5、スライダ7a、及び回転部3aの斜視図である。操作部1aの基部17はスライダ7aの開口71a内に保持される。基部17の外周には、一例として90度おきに突起18が設けられている。スプリング5は、スライダ7aの溝70aに収容され、スライダ7aを基板9に向かって付勢する。
【0080】
スライダ7aの外周面には凹凸72が設けられている。凹凸72は、例えば基板9に対して略垂直方向に延びる平行な溝により形成される。スライダ7aは回転部3aの内部に収容される。
【0081】
回転部3aの内周面には凹凸33が設けられている。凹凸33は基板9に対して略垂直方向に延びる平行な溝により形成される。回転部3aの内周面は、スライダ7aの収容時にスライダ7aの外周面と対向し、スライダ7a及び回転部3aの各凹凸72,33が互いに係合する。スライダ7aの回転は、互いに係合した凹凸72,33により回転部3aに伝達される。
【0082】
また、回転部3aの外周面には、回転部3aの回転を検出するための凹凸32aが設けられている。光センサ91は、上述したように凹凸32aの位置または回転に応じたパルス信号を出力し、このパルス信号により回転量を検出することができる。なお、第1実施例と同様に、凹凸32aに代えて穴が設けられてもよい。
【0083】
スライダ7aは、操作部1aの回転に連動して回転する。以下に操作部1aの傾斜及び回転の操作について述べる。
【0084】
図17は、操作部1aを傾斜させたときの突起18の移動の一例を示す図である。
図17は、
図15のC-C線に沿った断面を示す。
【0085】
操作者は、例えば径方向の矢印dで示されるように、摘み15を任意の方向に傾斜させることができる。摘み15が傾斜すると、基部17も基板9に対して傾斜するため、各突起18は、周方向の矢印Ra,Rbで示されるようにスライダ7aの内部で移動する可能性がある。
【0086】
しかし、摘み15を可動限界まで傾斜させても、突起18は凸部73に接触して押圧することはない。これは、凸部73が、操作部1の傾斜により突起13が移動することができる範囲を避けて形成されているためである。このため、操作部1aの傾斜により突起18が凸部73を押してスライダ7aを回転させることが抑制される。
【0087】
図18は、操作部1aを回転させたときの突起18の移動の一例を示す図である。
図18は、
図15のC-C線に沿った断面を示す。
【0088】
操作者は、操作部1aの傾斜によらず、摘み15を回転させることができる。矢印Rで示されるように摘み15が反時計方向に回転すると、基部17も回転するため、各突起18は、点線が示す位置から矢印rで示される方向に移動する。
【0089】
このとき、移動後の各突起18は、スライダ7aの内周面から突出した凸部73に接触する。このため、スライダ7aは、回転する各突起18に押されて方向R’に回転する。したがって、ポインティングデバイスは、操作部1aの回転に連動してスライダ7aを回転させることが可能である。このため、本例のポインティングデバイスも第1及び第2実施例と同様の効果を奏する。
【0090】
スライダ7aが回転すると、互いに係合した凹凸72,33により回転部3aも回転する。光センサ91は、回転部3aの回転に応じて凹凸32aを検出し、検出結果に応じたパルス信号を出力し、パルス信号により回転量を検出することができる。
【0091】
また、光センサ91は、回転部3aの凹凸32aに代えて、スライダ7aの凹凸72を検出してもよい。
【0092】
図19は、光センサ91がスライダ7aの凹凸72を検出する場合の構成例を示す。
図19は、
図15のC-C線に沿った断面のうち、凹凸72近傍の部分を示す
図19では回転部3aが省かれている。なお、ハウジング2aの図示は省略する。
【0093】
基板9の板面には、スライダ7aの外周面に対向するようにサブ基板95が立設されている。サブ基板95の板面には光センサ91が実装されている。光センサ91は、スライダ7aの凹凸72と対向しスライダ7aの回転に応じて凹凸72を検出する。凹凸72の検出に応じて光センサ91から出力されるパルス信号によりスライダ7aの回転量を検出することができる。なお、本例の光センサ91は第3検出手段の一例である。
【0094】
本例によると、回転部3aが不要となるため、ポインティングデバイスの実装に必要なスペースが削減される。
【0095】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0096】
1,1a 操作部
3,3a 回転部
7,7a スライダ
9 基板
10,10a ドーム部
12,15 摘み
13,13a,18 突起
17 基部
31,31a 側面開口
32,32a,72 凹凸
33 穴
73 凸部
82 感圧センサ
90 電気スイッチ
91 光センサ
92,92a ラッチ