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特許7269732光学ガラス、プリフォーム材及び光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】光学ガラス、プリフォーム材及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/062 20060101AFI20230427BHJP
   C03C 3/068 20060101ALI20230427BHJP
   C03C 3/095 20060101ALI20230427BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20230427BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C03C3/062
C03C3/068
C03C3/095
C03C3/097
G02B1/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018510286
(86)(22)【出願日】2017-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2017010321
(87)【国際公開番号】W WO2017175552
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2019-12-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2016075377
(32)【優先日】2016-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016075378
(32)【優先日】2016-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128784
【氏名又は名称】株式会社オハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 浩人
(72)【発明者】
【氏名】永岡 敦
(72)【発明者】
【氏名】小栗 史裕
【合議体】
【審判長】日比野 隆治
【審判官】宮澤 尚之
【審判官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-542909(JP,A)
【文献】特開平06-503501(JP,A)
【文献】特開昭62-138342(JP,A)
【文献】特開2005-350325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
SiO2成分を20.0%~43.0%未満、
La23成分を20.0%超~55.0%未満、
TiO2成分 0~6.04%、
Al23成分 5.0%超~20.0%、
2 3 成分 0%超~20.0%、
2 3 成分 6.28%~25.0%、含有し、
質量比B23/SiO2が1.00以下であり、
1.68~1.85の屈折率(nd)、35~55のアッベ数(νd)を有し、
粉末法による化学的耐久性(耐酸性)が1級~3級であり、
摩耗度が200以下である光学ガラス。
【請求項2】
質量和B23+Nb25が20.0%未満である請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光学ガラスからなるプリフォーム材。
【請求項4】
請求項1又は2記載の光学ガラスからなる光学素子。
【請求項5】
請求項4に記載の光学素子を備える光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、プリフォーム材及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮影機器、監視カメラや車載カメラ等の光学系を使用する機器が、屋外で恒常的に使用される機会が増加している。これらの用途に使用される光学系で用いられるレンズ等には風雨や薬品等に耐え得る耐久性を有することが要求されている。
【0003】
光学素子を作製する光学ガラスの中でも特に、光学系全体の軽量化及び小型化を図ることが可能である1.60以上1.95以下の屈折率(n)を有し、25以上62以下のアッベ数(ν)を有する高屈折率低分散ガラスの需要が非常に高まっている。このような高屈折率低分散ガラスとして、特許文献1及び2に代表されるようなガラス組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-173334号公報
【文献】特開2009-269771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明における光学ガラスの化学的耐久性は、JOGIS06-1999に準じたガラスの粉末法による化学的耐久性(耐酸性)が1~3級であり、JOGIS10-1994光学ガラスの磨耗度の測定方法による磨耗度が200以下であることが望まれる。これにより、一般的に“白ヤケ”“青ヤケ”と呼ばれる大気中の水蒸気、炭酸ガス、雨等によりレンズ表面に生ずるクモリや干渉膜が発生せず、レンズ表面に砂や石、ホコリ等が擦りつけられたり、衝突したりしても傷つかないガラスを得ることができる。
【0006】
また、光学素子に用いられる光学ガラスは、ガラスとして形成される際に安定して得られることが求められる。ガラスの失透に対する安定性(耐失透性)が低下してガラスの内部に結晶が発生した場合、もはや光学素子として好適なガラスを得ることができない。
【0007】
La成分を主成分とする光学ガラスにおいては、B成分を多く含有する、いわゆるB-La系の組成系の光学ガラスが多く存在している。La成分と同時に、B成分を10.0%以上含有することにより、希土類の成分の含有を多く導入することができ、ガラス形成時の安定性及び高屈折率化に寄与するためである。
しかしながら、B成分を多量に含有すると、化学的耐久性(耐酸性)や摩耗度のような耐久性が低下するという不利益が生じる。
【0008】
特許文献1及び2に記載されたガラス組成物は、いわゆるB-La系の組成系の光学ガラスであり、化学的耐久性(耐酸性)が悪く、磨耗度が高いため、外部の環境に曝されるような使用を前提とする場合には好適とはいえない。
【0009】
また、特許文献1及び2に記載されたガラス組成物は耐久性を向上させるSiO成分を十分に含有していないため、化学的耐久性(耐酸性)が低く、磨耗度が大きいといった点が挙げられる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、屈折率(n)1.60以上1.95以下の屈折率(n)を有し、25以上62以下のアッベ数(ν)が所望の範囲内にありながら、化学的耐久性(耐酸性)が高く磨耗度の小さいガラスを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、SiO成分及びLa成分を含有するガラスにおいて、屈折率(n)及びアッベ数(ν)が所望の範囲内にあり、特に、屈折率(n)1.78以上1.95以下の屈折率(n)を有し、25以上45以下のアッベ数(ν)を有するガラス(第一の態様の光学ガラス)、特に、屈折率(n)1.60以上1.85以下の屈折率(n)を有し、33以上62以下のアッベ数(ν)を有するガラス(第二の態様の光学ガラス)において、化学的耐久性(耐酸性)を低下させる成分、特にB成分の含有量を低減させながらも、失透性が低くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0012】
(1)質量%で、
SiO成分を10.0%~40.0%、
La成分を15.0 %~50.0%、
TiO成分 5.0~25.0%未満、
含有し、
質量比B/SiOが1.00以下であり、
1.78~1.95の屈折率(nd)、25~45のアッベ数(νd)を有し、
粉末法による化学的耐久性(耐酸性)が1級~3級を有する光学ガラス。
【0013】
(2) 質量%で、
ZnO成分を0~30.0%、
ZrO成分 0~20.0%
Al成分 0~20.0%
成分 0~25.0%
成分 0~20.0%
である(1)記載の光学ガラス。
【0014】
(3) 質量和B+Nbが20.0%未満であり、質量和ZrO+Nb+WO+ZnOが25.0%未満である(1)から(2)のいずれか記載の光学ガラス。
【0015】
(4) 質量和TiO+ZrOが35.0%未満である(1)から(3)のいずれか記載の光学ガラス。
【0016】
(5)質量%で、
SiO成分を10.0%~50.0%、
La成分を15.0 %~60.0%、
TiO成分 0 ~15.0%未満、
含有し、
質量比B/SiOが1.00以下であり、
1.60~1.85の屈折率(nd)、33~62のアッベ数(νd)を有し、
粉末法による化学的耐久性(耐酸性)が1級~3級を有する光学ガラス。
【0017】
(6) 質量%で、
ZnO成分を0~35.0%、
ZrO成分 0~20.0%、
Al成分 0~20.0%、
成分 0~20.0%、
である(5)記載の光学ガラス。
【0018】
(7) 質量和B+Nbが20.0%未満である(5)から(6)のいずれか記載の光学ガラス。
【0019】
(8) Ln成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Yb、Luからなる群より選択される1種以上)の質量和が15.0%以上65.0%以下であり、RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の質量和が25.0%以下であり、RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の質量和が10.0%以下である(1)から(7)のいずれか記載の光学ガラス。
(9) 摩耗度が200以下である(1)から(8)のいずれか記載の光学ガラス。
【0020】
(10) (1)から(9)のいずれか記載の光学ガラスからなるプリフォーム材。
【0021】
(11) (1)から(10)のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
【0022】
(12) (11)に記載の光学素子を備える光学機器。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、屈折率(n)及びアッベ数(ν)が所望の範囲内にありながら、粉末法による化学的耐久性(耐酸性)が高く、磨耗度の値が小さいガラスを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一の態様の光学ガラス)
本発明の第一の態様に係る光学ガラスは、質量%で、SiO成分を10.0%以上40.0%以下、La成分を15.0%以上50.0%以下含有し、TiO成分を5.0%以上25%未満含有し、質量比(B/SiO)が1.0以下であり、1.78以上1.95以下の屈折率(n)を有し、25以上45以下のアッベ数(ν)を有する。SiO成分及びLa成分が主成分の光学ガラスにおいて、1.78以上の屈折率(n)及び25以上45以下のアッベ数(ν)を有しながらも、耐酸性が高いガラスが得られ易くなる。
【0025】
加えて、本発明の第一の態様に係る光学ガラスは、可視光についての透過率が高いことで可視光を透過させる用途に好適に使用できる。
【0026】
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所について、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0027】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有量は、特に断りがない場合、全て酸化物換算組成の全質量数に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」は、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量数を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0028】
<必須成分、任意成分について>
SiO成分は、高い耐久性を有する本発明の光学ガラスでは、ガラス形成酸化物として必須の成分である。特に、SiO成分の含有量を10.0%以上にすることで、ガラスの耐酸性を高め、磨耗度を低下させ、且つガラスの粘性を高められる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは20.0%、さらに好ましくは25.0%を下限とする。
一方、SiO成分の含有量を40.0%以下にすることで、より大きな屈折率を得易くでき、且つ失透性の悪化を抑えられる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは37.0%未満、さらに好ましくは35.0%未満、さらに好ましくは33.0%未満とする。
SiO成分は、原料としてSiO、KSiF、NaSiF、ZrSiO等を用いることができる。
【0029】
La成分は、ガラスの屈折率及びアッベ数を高める必須成分である。従って、La成分の含有量は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは16.0%超、より好ましくは18.0%超、さらに好ましくは20.0%超とする。
一方、La成分の含有量を50.0%以下にすることで、ガラスの安定性を高めることで失透を低減でき、アッベ数の必要以上の上昇を抑えられる。また、ガラス原料の熔解性を高められる。従って、La成分の含有量は、好ましくは50.0%以下、より好ましくは45.0%未満、さらに好ましくは40.0%未満とする。
La成分は、原料としてLa、La(NO・XHO(Xは任意の整数)等を用いることができる。
【0030】
TiO成分は、5.0%以上含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つガラスの液相温度を低くすることで安定性を高められる任意成分である。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは5.0%以上、より好ましくは6.0%超、より好ましくは7.0%超、より好ましくは8.0%超、さらに好ましくは9.0%超としてもよい。
他方で、TiO成分の含有量を25.0%未満にすることで、TiO成分の過剰な含有による失透を低減でき、ガラスの可視光(特に波長500nm以下)に対する透過率の低下を抑えられる。また、これによりアッベ数の低下を抑えられる。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは25.0%未満、より好ましくは24.0%未満、さらに好ましくは21.0%未満、さらに好ましくは19.0%未満、最も好ましくは15.0%以下とする。
TiO成分は、原料としてTiO等を用いることができる。
【0031】
SiO成分の含有量に対するB成分の含有量の比率(質量比)は、1.0以下が好ましい。
特に、この質量比を1.0以下にすることで、耐酸性が向上し、長期間の使用に耐えうるガラスを得易くできる。従って、質量比B/SiOは、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.98以下、さらに好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.70以下とする。
【0032】
ZnO成分は、0%超含有する場合に、原料の熔解性を高め、溶解したガラスからの脱泡を促進し、また、ガラスの安定性を高められる任意成分である。また、熔解時間を短くできること等により、ガラスの着色を低減できる成分でもある。また、ガラス転移点を低くでき、且つ化学的耐久性(耐酸性)を改善できる成分でもある。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは2.5%超、さらに好ましくは4.5%超、さらに好ましくは6.5%超、さらに好ましくは8.5%超としてもよい。
他方で、ZnO成分の含有量30.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つ、過剰な粘性の低下による失透を低減できる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは30.0%以下、より好ましくは28.0%未満、さらに好ましくは25.0%未満とする。
ZnO成分は、原料としてZnO、ZnF等を用いることができる。
【0033】
ZrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率及びアッベ数を高められ、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。従って、ZrO成分の含有量を、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、より好ましくは3.0%超、より好ましくは5.0%超、さらに好ましくは7.0%超としてもよい。
他方で、ZrO成分の含有量を20.0%以下にすることで、ZrO成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは18.0%未満、さらに好ましくは16.0%未満、さらに好ましくは14.0%未満とする。
ZrO成分は、原料としてZrO、ZrF等を用いることができる。
【0034】
Al成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性(耐酸性)を向上でき、且つ熔融ガラスの耐失透性を向上できる任意成分である。従って、Al成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは2.5%超、さらに好ましくは5.0%超、さらに好ましくは7.5%超としてもよい。
他方で、Al成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの液相温度を下げて耐失透性を高められる。従って、Al成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは18.0%未満、さらに好ましくは16.5%未満、さらに好ましくは15.0%未満とする。
Al成分は、原料としてAl、Al(OH)、AlF等を用いることができる。
【0035】
成分は、0%超含有する場合に、高屈折率及び高アッベ数を維持しながらも、ガラスの材料コストを抑えられ、且つ、他の希土類成分よりもガラスの比重を低減できる任意成分である。
他方で、Y成分の含有量を25.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つガラスの安定性を高められる。また、ガラス原料の熔解性の悪化を抑えられる。従って、Y成分の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは23.0%未満、より好ましくは20.0%未満、最も好ましくは18.0%以下とする。
成分は、原料としてY、YF等を用いることができる。
【0036】
成分は、0%超含有する場合に、耐失透性を高めつつ液相温度を低下させるガラス形成酸化物として任意の成分である。
他方で、B成分の含有量を20.0%以下にすることで、より大きな屈折率を得易くでき、且つ化学的耐久性(耐酸性)の悪化と磨耗度の上昇を抑えられる。従って、B成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは16.0%未満、さらに好ましくは14.0%未満、さらに好ましくは13.0%未満、さらに好ましくは12.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満とする。
成分は、原料としてHBO、Na、Na・10HO、BPO等を用いることができる。
【0037】
Nb成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つガラスの液相温度を低くすることで耐失透性を高められる任意成分である。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは3.0%超、さらに好ましくは4.5%超、さらに好ましくは6.5%超としてもよい。
他方で、Nb成分の含有量を15.0%未満にすることで、Nb成分の過剰な含有による失透を低減でき、且つ、ガラスの可視光(特に波長500nm以下)に対する透過率の低下を抑えられる。また、これによりアッベ数の低下を抑えられる。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは15.0%未満、より好ましくは13.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは7.0%未満とする。
Nb成分は、原料としてNb等を用いることができる。
【0038】
WO成分は、0%超含有する場合に、他の高屈折率成分によるガラスの着色を低減しながら、屈折率を高め、ガラス転移点を低くでき、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
他方で、WO成分の含有量を10.0%未満にすることで、ガラスの材料コストを抑えられる。また、WO成分によるガラスの着色を低減して可視光透過率を高められる。従って、WO成分の含有量は、好ましくは10.0%未満、より好ましくは6.0%未満、より好ましくは4.5%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
WO成分は、原料としてWO等を用いることができる。
【0039】
Gd成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められる任意成分である。
しかしながら、Gd成分は原料価格が高く、その含有量が多いと生産コストが高くなる。また、Gd成分の含有を25.0%以下とすることにより、ガラスのアッベ数の上昇を抑えられる。従って、Gd成分の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは23.0%未満、さらに好ましくは20.0%未満とする。
Gd成分は、原料としてGd、GdF等を用いることができる。
【0040】
Yb成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められる任意成分である。
しかしながら、Yb成分は原料価格が高く、その含有量が多いと生産コストが高くなる。また、Yb成分の含有を5.0%未満とすることにより、ガラスのアッベ数の上昇を抑えられる。従って、Yb成分の含有量は、好ましくは5.0%未満、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
Yb成分は、原料としてYb等を用いることができる。
【0041】
Ta成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
しかしながら、Ta成分は原料価格が高く、その含有量が多いと生産コストが高くなる。また、Ta成分の含有量を5.0%未満にすることで、原料の熔解温度が低くなり、原料の熔解に要するエネルギーが低減されるため、光学ガラスの製造コストも低減できる。従って、Ta成分の含有量は、好ましくは5.0%未満、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。また、材料コストを低減させる観点では、Ta成分を含有しないことが最も好ましい。
Ta成分は、原料としてTa等を用いることができる。
【0042】
MgO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や熔融性、耐失透性を調整できる任意成分である。
MgO成分の含有量をそれぞれ10.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えることができ、且つこれらの成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、MgO成分の含有量は、それぞれ好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
MgO成分は、原料としてMgCO、MgF等を用いることができる。
【0043】
CaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や熔融性、耐失透性を調整できる任意成分である。
CaO成分の含有量を35.0%以下にすることでも、所望の屈折率を得易くでき、且つこれらの成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、CaO成分の含有量は、好ましくは35.0%以下、より好ましくは30.0%未満、さらに好ましくは25.0%未満、さらに好ましくは22.0%未満、さらに好ましくは20.0%未満とする。
CaO成分は、原料としてCaCO、CaF等を用いることができる。
【0044】
SrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や熔融性、耐失透性を調整できる任意成分である。
SrO成分の含有量を35.0%以下にすることでも、所望の屈折率を得易くでき、且つこれらの成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、SrO成分の含有量は、好ましくは35.0%以下、より好ましくは30.0%未満、さらに好ましくは25.0%未満、さらに好ましくは22.0%未満、さらに好ましくは20.0%未満とする。
SrO成分は、原料としてSr(NO、SrF等を用いることができる。
【0045】
BaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や熔融性、耐失透性を調整できる任意成分である。
BaO成分の含有量を35.0%以下にすることでも、所望の屈折率を得易くでき、且つこれらの成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは35.0%以下、より好ましくは30.0%未満、さらに好ましくは29.0%未満、さらに好ましくは25.0%未満、さらに好ましくは22.0%未満、さらに好ましくは20.0%未満とする。
BaO成分は、原料としてBaCO、Ba(NO、BaF等を用いることができる。
【0046】
LiO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善でき、ガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、LiO成分の含有量を10.0%以下にすることで、化学的耐久性(耐酸性)の悪化を抑制し、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減できる。また、LiO成分の含有量を低減させることで、ガラスの粘性が高められるため、ガラスの脈理を低減できる。従って、LiO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
LiO成分は、原料としてLiCO、LiNO、LiCO等を用いることができる。
【0047】
NaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善でき、ガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、NaO成分の含有量は10.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減できる。従って、NaO成分の含有量は、それぞれ好ましくは10.0%以下、より好ましくは6.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
NaO成分は、原料としてNaCO、NaNO、NaF、NaSiF等を用いることができる。
【0048】
O成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善でき、ガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、KO成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、磨耗度の上昇を抑制し、且つガラスの失透を低減できる。従って、KO成分の含有量は、それぞれ好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
O成分は、原料としてKCO、KNO、KF、KHF、KSiF等を用いることができる。
【0049】
成分は、0%超含有する場合に、ガラスの液相温度を下げて耐失透性を高められる任意成分である。
他方で、P成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの化学的耐久性(耐酸性)の低下、磨耗度の上昇を抑制できる。従って、P成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
成分は、原料としてAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、BPO、HPO等を用いることができる。
【0050】
GeO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。
しかしながら、GeOは原料価格が高く、その含有量が多いと生産コストが高くなる。従って、GeO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。材料コストを低減させる観点で、GeO成分を含有しなくてもよい。
GeO成分は、原料としてGeO等を用いることができる。
【0051】
Ga成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性(耐酸性)を向上でき、且つ熔融ガラスの耐失透性を向上できる任意成分である。
他方で、Ga成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの液相温度を下げて耐失透性を高められる。従って、Ga成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
Ga成分は、原料としてGa、Ga(OH)等を用いることができる。
【0052】
Bi成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高められ、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
他方で、Bi成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの液相温度を下げて耐失透性を高められる。従って、Bi成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、最も好ましくは含有しないこととする。
Bi成分は、原料としてBi等を用いることができる。
【0053】
TeO成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高められ、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
他方で、TeOは白金製の坩堝や、熔融ガラスと接する部分が白金で形成されている熔融槽でガラス原料を熔融する際、白金と合金化しうる問題がある。従って、TeO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
TeO成分は、原料としてTeO等を用いることができる。
【0054】
CsO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善でき、ガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減できる。従って、CsO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.1%未満、最も好ましくは含有しないことする。
CsO成分は、原料としてCsCO、CsNO等を用いることができる。
【0055】
SnO成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスの酸化を低減して清澄し、且つガラスの可視光透過率を高められる任意成分である。
他方で、SnO成分の含有量を3.0%以下にすることで、熔融ガラスの還元によるガラスの着色や、ガラスの失透を低減できる。また、SnO成分と熔解設備(特にPt等の貴金属)の合金化が低減されるため、熔解設備の長寿命化を図れる。従って、SnO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
SnO成分は、原料としてSnO、SnO、SnF、SnF等を用いることができる。
【0056】
Sb成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスを脱泡できる任意成分である。
他方で、Sb量が多すぎると、可視光領域の短波長領域における透過率が悪くなる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満とする。
Sb成分は、原料としてSb、Sb、NaSb・5HO等を用いることができる。
【0057】
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0058】
F成分は、0%超含有する場合に、ガラスのアッベ数を高め、ガラス転移点を低くし、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。
しかし、F成分の含有量、すなわち上述した各金属元素の1種又は2種以上の酸化物の一部又は全部と置換した弗化物のFとしての合計量が15.0%を超えると、F成分の揮発量が多くなるため、安定した光学恒数が得られ難くなり、均質なガラスが得られ難くなる。また、アッベ数が必要以上に上昇する。
従って、F成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
F成分は、原料として例えばZrF、AlF、NaF、CaF等を用いることで、ガラス内に含有することができる。
【0059】
成分及びNb成分の合計量(質量和)は20.0%未満が好ましい。これにより、アッベ数(ν)が所望の範囲内にありながら、耐酸性を向上させることが出来る。従って、質量和B+Nbは、好ましくは20.0%未満、より好ましくは18.0%未満、さらに好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは13.0%未満、さらに好ましくは12.0%未満、さらに好ましくは11.0%未満とする。
他方でB成分及びNb成分の合計量(質量和)を0%超とすることで耐失透性を向上できる。従って質量和B+Nbは、好ましくは0%超、より好ましくは3.0%超、より好ましくは5.0%超、より好ましくは6.0%超としても良い。
【0060】
TiO成分及びZrO成分の合計量(質量和)は35.0%未満が好ましい。
これにより、アッベ数(ν)が低くなることを低減できる。従って、質量和TiO+ZrOは、好ましくは35.0%未満、より好ましくは33.0%以下、さらに好ましくは30.0%未満、さらに好ましくは28.0%未満、さらに好ましくは25.0%以下を上限とする。
他方でTiO成分及びZrO成分の合計量(質量和)は0%超とする事でガラスの屈折率を高めることが出来る。従って質量和TiO+ZrOは、好ましくは0%超、より好ましくは5.0%以上、より好ましくは8.0%超、より好ましくは10.0%超、さらに好ましくは13.0%超、さらに好ましくは15.0%超としてもよい。
【0061】
ZrO成分及びNb成分及びWO成分及びZnO成分の合計量(質量和)は5.0%以上が好ましい。
これにより、アッベ数(ν)が所望の範囲内に調整できる。従って、質量和ZrO+Nb+WO+ZnOは、好ましくは5.0%以上、より好ましくは7.0%超、より好ましくは9.0%超、さらに好ましくは11.0%超、さらに好ましくは13.0%超としてもよい。
他方でZrO成分及びNb成分及びWO成分及びZnO成分の合計量(質量和)を60.0%以下とする事で、ガラスの耐失透性を高められる。従って質量和ZrO+Nb+WO+ZnOは、好ましくは60.0%以下、より好ましくは55.0%未満、より好ましくは50.0%未満、より好ましくは48.0%未満としても良い。
【0062】
Ln成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Yb、Luからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、15.0%以上65.0%以下が好ましい。
特に、この和を15.0%以上にすることで、ガラスの屈折率及びアッベ数が高められるため、所望の屈折率及びアッベ数を有するガラスを得易くすることができる。従って、Ln成分の質量和は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは16.0%超、さらに好ましくは18.0%超、さらに好ましくは20.0%超とする。
他方で、この和を65.0%以下にすることで、ガラスの液相温度が低くなるため、ガラスの失透を低減できる。また、アッベ数の必要以上の上昇を抑えられる。従って、Ln成分の質量和は、好ましくは65.0%以下、より好ましくは60.0%未満、さらに好ましくは55.0%未満、さらに好ましくは50.0%未満とする。
【0063】
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、35.0%以下が好ましい。これにより、屈折率の低下を抑えられ、また、ガラスの安定性を高められる。従って、RO成分の質量和は、好ましくは35.0%以下、より好ましくは33.0%未満、より好ましくは30.0%未満、より好ましくは29.0%未満とする。
【0064】
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、10.0%以下が好ましい。これにより、溶融ガラスの粘性の低下を抑えられ、ガラスの屈折率を低下し難くでき、且つガラスの失透を低減できる。従って、RnO成分の質量和は、好ましくは10.0%以下、よりに好ましくは8.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
【0065】
(第二の態様の光学ガラス)
本発明の第二の態様の光学ガラスは、質量%で、SiO成分を10.0%以上50.0%以下、La成分を15.0%以上60.0%以下含有し、TiO成分を0.0%以上15%未満含有し、質量比(B/SiO)が1.0以下であり、1.60以上1.85以下の屈折率(n)を有し、33以上62以下のアッベ数(ν)を有する。SiO成分及びLa成分が主成分の光学ガラスにおいて、1.60以上の屈折率(n)及び33以上62以下のアッベ数(ν)を有しながらも、耐酸性が高いガラスが得られ易くなる。
【0066】
加えて、本発明の第二の態様に係る光学ガラスは、可視光についての透過率が高いことで可視光を透過させる用途に好適に使用できる。
【0067】
<必須成分、任意成分について>
SiO成分は、高い耐久性を有する本発明の光学ガラスでは、ガラス形成酸化物として必須の成分である。特に、SiO成分の含有量を10.0%以上にすることで、ガラスの耐酸性を高め、磨耗度を低下させ、且つガラスの粘性を高められる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは20.0%、さらに好ましくは25.0%を下限とする。
一方、SiO成分の含有量を50.0%以下にすることで、より大きな屈折率を得易くでき、且つ失透性の悪化を抑えられる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは50.0%以下、より好ましくは47.0%未満、さらに好ましくは45.0%未満、さらに好ましくは43.0%未満とする。
SiO成分は、原料としてSiO、KSiF、NaSiF、ZrSiO等を用いることができる。
【0068】
La成分は、ガラスの屈折率及びアッベ数を高める必須成分である。従って、La成分の含有量は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは16.0%超、より好ましくは18.0%超、さらに好ましくは20.0%超とする。
一方、La成分の含有量を60.0%以下にすることで、ガラスの安定性を高めることで失透を低減でき、アッベ数の必要以上の上昇を抑えられる。また、ガラス原料の熔解性を高められる。従って、La成分の含有量は、好ましくは60.0%以下、より好ましくは58.0%未満、さらに好ましくは55.0%未満とする。
La成分は、原料としてLa、La(NO・XHO(Xは任意の整数)等を用いることができる。
【0069】
TiO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つガラスの液相温度を低くすることで安定性を高められる任意成分である。
他方で、TiO成分の含有量を15.0%未満にすることで、TiO成分の過剰な含有による失透を低減でき、ガラスの可視光(特に波長500nm以下)に対する透過率の低下を抑えられる。また、これによりアッベ数の低下を抑えられる。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは15.0%未満、より好ましくは13.0%未満、さらに好ましくは11.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは9.0%未満とする。
TiO成分は、原料としてTiO等を用いることができる。
【0070】
SiO成分の含有量に対するB成分の含有量の比率(質量比)は、1.0以下が好ましい。
特に、この質量比を1.0以下にすることで、耐酸性が向上し、長期間の使用に耐えうるガラスを得易くできる。従って、質量比B/SiOは、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.98以下、さらに好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.70以下とする。
【0071】
ZnO成分は、0%超含有する場合に、原料の熔解性を高め、溶解したガラスからの脱泡を促進し、また、ガラスの安定性を高められる任意成分である。また、熔解時間を短くできること等により、ガラスの着色を低減できる成分でもある。また、ガラス転移点を低くでき、且つ化学的耐久性を改善できる成分でもある。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは2.5%超、さらに好ましくは4.5%超、さらに好ましくは6.5%超、さらに好ましくは8.5%超としてもよい。
他方で、ZnO成分の含有量35.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つ、過剰な粘性の低下による失透を低減できる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは35.0%以下、より好ましくは33.0%未満、さらに好ましくは31.0%未満、さらに好ましくは29.0%未満とする。
ZnO成分は、原料としてZnO、ZnF等を用いることができる。
【0072】
ZrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率及びアッベ数を高められ、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。従って、ZrO成分の含有量を、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは2.0%超としてもよい。
他方で、ZrO成分の含有量を20.0%以下にすることで、ZrO成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは18.0%未満、さらに好ましくは16.0%未満、さらに好ましくは14.0%未満、最も好ましくは10.0%以下とする。
ZrO成分は、原料としてZrO、ZrF等を用いることができる。
【0073】
Al成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性を向上でき、且つ熔融ガラスの耐失透性を向上できる任意成分である。従って、Al成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは2.5%超、さらに好ましくは5.0%超、さらに好ましくは7.5%超としてもよい。
他方で、Al成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの液相温度を下げて耐失透性を高められる。従って、Al成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは18.0%未満、さらに好ましくは16.5%未満、さらに好ましくは15.0%未満、最も好ましくは13.0%以下とする。
Al成分は、原料としてAl、Al(OH)、AlF等を用いることができる。
【0074】
成分は、0%超含有する場合に、高屈折率及び高アッベ数を維持しながらも、ガラスの材料コストを抑えられ、且つ、他の希土類成分よりもガラスの比重を低減できる任意成分である。従って、Y成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは3.0%超としてもよい。
他方で、Y成分の含有量を25.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つガラスの安定性を高められる。また、ガラス原料の熔解性の悪化を抑えられる。従って、Y成分の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは23.0%未満、より好ましくは20.0%未満とする。
成分は、原料としてY、YF等を用いることができる。
【0075】
成分は、0%超含有する場合に、耐失透性を高めつつ液相温度を低下させるガラス形成酸化物として任意の成分である。
他方で、B成分の含有量を20.0%以下にすることで、より大きな屈折率を得易くでき、且つ化学的耐久性の悪化と磨耗度の上昇を抑えられる。従って、B成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは16.0%未満、さらに好ましくは13.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満とする。
成分は、原料としてHBO、Na、Na・10HO、BPO等を用いることができる。
【0076】
Nb成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つガラスの液相温度を低くすることで耐失透性を高められる任意成分である。
他方で、Nb成分の含有量を15.0%未満にすることで、Nb成分の過剰な含有による失透を低減でき、且つ、ガラスの可視光(特に波長500nm以下)に対する透過率の低下を抑えられる。また、これによりアッベ数の低下を抑えられる。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは15.0%未満、より好ましくは13.0%未満、より好ましくは9.0%未満、さらに好ましくは7.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満とする。
Nb成分は、原料としてNb等を用いることができる。
【0077】
WO成分は、0%超含有する場合に、他の高屈折率成分によるガラスの着色を低減しながら、屈折率を高め、ガラス転移点を低くでき、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
他方で、WO成分の含有量を10.0%未満にすることで、ガラスの材料コストを抑えられる。また、WO成分によるガラスの着色を低減して可視光透過率を高められる。従って、WO成分の含有量は、好ましくは10.0%未満、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
WO成分は、原料としてWO等を用いることができる。
【0078】
Gd成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められる任意成分である。
しかしながら、Gd成分は原料価格が高く、その含有量が多いと生産コストが高くなる。また、Gd成分の含有を25.0%以下とすることにより、ガラスのアッベ数の上昇を抑えられる。従って、Gd成分の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは23.0%未満、さらに好ましくは20.0%未満とする。
Gd成分は、原料としてGd、GdF等を用いることができる。
【0079】
Yb成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められる任意成分である。
しかしながら、Yb成分は原料価格が高く、その含有量が多いと生産コストが高くなる。また、Yb成分の含有を5.0%未満とすることにより、ガラスのアッベ数の上昇を抑えられる。従って、Yb成分の含有量は、好ましくは5.0%未満、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
Yb成分は、原料としてYb等を用いることができる。
【0080】
Ta成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
しかしながら、Ta成分は原料価格が高く、その含有量が多いと生産コストが高くなる。また、Ta成分の含有量を5.0%未満にすることで、原料の熔解温度が低くなり、原料の熔解に要するエネルギーが低減されるため、光学ガラスの製造コストも低減できる。従って、Ta成分の含有量は、好ましくは5.0%未満、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。また、材料コストを低減させる観点では、Ta成分を含有しないことが最も好ましい。
Ta成分は、原料としてTa等を用いることができる。
【0081】
MgO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や熔融性、耐失透性を調整できる任意成分である。
MgO成分の含有量をそれぞれ15.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えることができ、且つこれらの成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、MgO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
MgO成分は、原料としてMgCO、MgF等を用いることができる。
【0082】
CaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や熔融性、耐失透性を調整できる任意成分である。
CaO成分の含有量を15.0%以下にすることでも、所望の屈折率を得易くでき、且つこれらの成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、CaO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
CaO成分は、原料としてCaCO、CaF等を用いることができる。
【0083】
SrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や熔融性、耐失透性を調整できる任意成分である。
SrO成分の含有量を15.0%以下にすることでも、所望の屈折率を得易くでき、且つこれらの成分の過剰な含有による失透を低減できる。従ってSrO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
SrO成分は、原料としてSr(NO、SrF等を用いることができる。
【0084】
BaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や熔融性、耐失透性を調整できる任意成分である。
BaO成分の含有量を15.0%以下にすることでも、所望の屈折率を得易くでき、且つこれらの成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
BaO成分は、原料としてBaCO、Ba(NO、BaF等を用いることができる。
【0085】
LiO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善でき、ガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、LiO成分の含有量を10.0%以下にすることで、化学的耐久性(耐酸性)の悪化を抑制し、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減できる。また、LiO成分の含有量を低減させることで、ガラスの粘性が高められるため、ガラスの脈理を低減できる。従って、LiO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
LiO成分は、原料としてLiCO、LiNO、LiCO等を用いることができる。
【0086】
NaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善でき、ガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、NaO成分の含有量は10.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減できる。従って、NaO成分の含有量は、それぞれ好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
NaO成分は、原料としてNaCO、NaNO、NaF、NaSiF等を用いることができる。
【0087】
O成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善でき、ガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、KO成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、磨耗度の上昇を抑制し、且つガラスの失透を低減できる。従って、KO成分の含有量は、それぞれ好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
O成分は、原料としてKCO、KNO、KF、KHF、KSiF等を用いることができる。
【0088】
成分は、0%超含有する場合に、ガラスの液相温度を下げて耐失透性を高められる任意成分である。
他方で、P成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの化学的耐久性(耐酸性)の低下、磨耗度の上昇を抑えられる。従って、P成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
成分は、原料としてAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、BPO、HPO等を用いることができる。
【0089】
GeO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。
しかしながら、GeOは原料価格が高く、その含有量が多いと生産コストが高くなる。従って、GeO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。材料コストを低減させる観点で、GeO成分を含有しなくてもよい。
GeO成分は、原料としてGeO等を用いることができる。
【0090】
Ga成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性を向上でき、且つ熔融ガラスの耐失透性を向上できる任意成分である。
他方で、Ga成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの液相温度を下げて耐失透性を高められる。従って、Ga成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
Ga成分は、原料としてGa、Ga(OH)等を用いることができる。
【0091】
Bi成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高められ、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
他方で、Bi成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの液相温度を下げて耐失透性を高められる。従って、Bi成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、最も好ましくは含有しないこととする。
Bi成分は、原料としてBi等を用いることができる。
【0092】
TeO成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高められ、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
他方で、TeOは白金製の坩堝や、熔融ガラスと接する部分が白金で形成されている熔融槽でガラス原料を熔融する際、白金と合金化しうる問題がある。従って、TeO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
TeO成分は、原料としてTeO等を用いることができる。
【0093】
CsO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善でき、ガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減できる。従って、CsO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.1%未満、最も好ましくは含有しないことする。
CsO成分は、原料としてCsCO、CsNO等を用いることができる。
【0094】
SnO成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスの酸化を低減して清澄し、且つガラスの可視光透過率を高められる任意成分である。
他方で、SnO成分の含有量を3.0%以下にすることで、熔融ガラスの還元によるガラスの着色や、ガラスの失透を低減できる。また、SnO成分と熔解設備(特にPt等の貴金属)の合金化が低減されるため、熔解設備の長寿命化を図れる。従って、SnO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
SnO成分は、原料としてSnO、SnO、SnF、SnF等を用いることができる。
【0095】
Sb成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスを脱泡できる任意成分である。
他方で、Sb量が多すぎると、可視光領域の短波長領域における透過率が悪くなる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満とする。
Sb成分は、原料としてSb、Sb、NaSb・5HO等を用いることができる。
【0096】
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0097】
F成分は、0%超含有する場合に、ガラスのアッベ数を高め、ガラス転移点を低くし、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。
しかし、F成分の含有量、すなわち上述した各金属元素の1種又は2種以上の酸化物の一部又は全部と置換した弗化物のFとしての合計量が15.0%を超えると、F成分の揮発量が多くなるため、安定した光学恒数が得られ難くなり、均質なガラスが得られ難くなる。また、アッベ数が必要以上に上昇する。
従って、F成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
F成分は、原料として例えばZrF、AlF、NaF、CaF等を用いることで、ガラス内に含有することができる。
【0098】
成分、Nb成分の合計量(質量和)は20.0%未満が好ましい。これにより、アッベ数(ν)が所望の範囲内にありながら、耐酸性を向上させることが出来る。従って、質量和B+Nbは、好ましくは20.0%未満、より好ましくは18.0%未満、さらに好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは13.0%未満、さらに好ましくは12.0%未満、さらに好ましくは11.0%未満とする。
【0099】
Ln成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Yb、Luからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、15.0%以上65.0%以下が好ましい。
特に、この和を15.0%以上にすることで、ガラスの屈折率及びアッベ数が高められるため、所望の屈折率及びアッベ数を有するガラスを得易くすることができる。従って、Ln成分の質量和は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは16.0%超、さらに好ましくは18.0%超、さらに好ましくは20.0%超とする。
他方で、この和を65.0%以下にすることで、ガラスの液相温度が低くなるため、ガラスの失透を低減できる。また、アッベ数の必要以上の上昇を抑えられる。従って、Ln成分の質量和は、好ましくは65.0%以下、より好ましくは60.0%未満、さらに好ましくは55.0%未満、さらに好ましくは50.0%未満とする。
【0100】
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、25.0%以下が好ましい。これにより、屈折率の低下を抑えられ、また、ガラスの安定性を高められる。従って、RO成分の質量和は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは20.0%未満、より好ましくは15.0%未満、より好ましくは10.0%未満とする。
【0101】
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、10.0%以下が好ましい。これにより、溶融ガラスの粘性の低下を抑えられ、ガラスの屈折率を低下し難くでき、且つガラスの失透を低減できる。従って、RnO成分の質量和は、好ましくは10.0%以下、よりに好ましくは8.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
【0102】
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
【0103】
他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0104】
また、PbO等の鉛化合物及びAs等の砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。
【0105】
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be、及びSeの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
【0106】
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝に投入し、ガラス原料の熔解難易度に応じて電気炉で1100~1550℃の温度範囲で2~5時間熔解させて攪拌均質化した後、適当な温度に下げてから金型に鋳込み、徐冷することにより作製される。
【0107】
このとき、ガラス原料として熔解性の高いものを用いることが好ましい。これにより、より低温での熔解や、より短時間での熔解が可能になるため、ガラスの生産性を高め、生産コストを低減できる。また、成分の揮発や坩堝等との反応が低減されるため、着色の少ないガラスを得易くできる。
【0108】
[物性]
本発明の第一の態様に係る光学ガラスは、高屈折率及び高アッベ数(低分散)を有することが好ましい。特に、本発明の光学ガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.78、より好ましくは1.79、さらに好ましくは1.80を下限とする。この屈折率(n)は、好ましくは1.95、より好ましくは1.93、さらに好ましくは1.90を上限としてもよい。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν)は、好ましくは25、より好ましくは27、さらに好ましくは29を下限とする。このアッベ数(ν)は、好ましくは45、より好ましくは43、さらに好ましくは41を上限とする。
本発明の第二の態様に係る光学ガラスは、高屈折率及び高アッベ数(低分散)を有することが好ましい。特に、本発明の光学ガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.60、より好ましくは1.63、さらに好ましくは1.68を下限とする。この屈折率(n)は、好ましくは1.85、より好ましくは1.84を上限としてもよい。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν)は、好ましくは33、より好ましくは35、さらに好ましくは37を下限とする。このアッベ数(ν)は、好ましくは62、より好ましくは57、さらに好ましくは55を上限とする。
このような光学恒数を有することで、光学素子の薄型化を図っても大きな光の屈折量を得ることができる。また、このような低分散を有することで、単レンズとして用いたときに光の波長による焦点のずれ(色収差)を小さくできる。そのため、例えば高分散(低いアッベ数)を有する光学素子と組み合わせて光学系を構成した場合に、その光学系の全体として収差を低減させて高い結像特性等を図ることができる。
このように、本発明の光学ガラスは、光学設計上有用であり、特に光学系を構成したときに、高い結像特性等を図りながらも、光学系の小型化を図ることができ、光学設計の自由度を広げることができる。
【0109】
本発明の光学ガラスは、高い耐酸性を有することが好ましい。特に、JOGIS06-1999に準じたガラスの粉末法による化学的耐久性(耐酸性)は、好ましくは1~3級、より好ましくは1~2級、最も好ましくは1級である。
これにより、光学ガラスを車載用途等で使用する際に、酸性雨等によるガラスの曇りが低減されるため、ガラスからの光学素子の作製をより行い易くできる。
【0110】
ここで「耐酸性」とは、酸によるガラスの侵食に対する耐久性であり、この耐酸性は、日本光学硝子工業会規格「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法」JOGIS06-1999により測定することができる。また、「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)が1~3級である」とは、JOGIS06-1999に準じて行った化学的耐久性(耐酸性)が、測定前後の試料の質量の減量率で、0.65質量%未満であることを意味する。
なお、化学的耐久性(耐酸性)の「1級」は、測定前後の試料の質量の減量率が0.20質量%未満であり、「2級」は、測定前後の試料の質量の減量率が0.20質量%以上0.35質量%未満であり、「3級」は、測定前後の試料の質量の減量率が0.35質量%以上0.65質量%未満であり、「4級」は、測定前後の試料の質量の減量率が0.65質量%以上1.20質量%未満であり、「5級」は、測定前後の試料の質量の減量率が1.20質量%以上2.20質量%未満であり、「6級」は、測定前後の試料の質量の減量率が2.20質量%以上である。
【0111】
また、本発明の光学ガラスは、磨耗度が低いことが好ましい。本発明の光学ガラスの磨耗度の上限は、好ましくは200、より好ましくは150、より好ましくは100、より好ましくは80、さらに好ましくは60である。
なお、摩耗度とは、「JOGIS10-1994光学ガラスの磨耗度の測定方法」に準じて測定して得た値を意味するものとする。
【0112】
本発明の光学ガラスは、可視光透過率、特に可視光のうち短波長側の光の透過率が高く、それにより着色が少ないことが好ましい。
特に、第一の態様に係る本発明の光学ガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長(λ70)は、好ましくは500nm、より好ましくは480nm、より好ましくは450nm、さらに好ましくは420nmを上限とする。
特に、第ニの態様に係る本発明の光学ガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率80%を示す波長(λ80)は、好ましくは500nm、より好ましくは480nm、より好ましくは450nm、さらに好ましくは420nmを上限とする。 また、本発明の光学ガラスにおける、厚み10mmのサンプルで分光透過率5%を示す最も短い波長(λ)は、好ましくは400nm、より好ましくは380nm、さらに好ましくは370nmさらに好ましくは360nmを上限とする。
これらにより、ガラスの吸収端が紫外領域又はその近傍になり、可視光に対するガラスの透明性が高められるため、この光学ガラスを、レンズ等の光を透過させる光学素子に好ましく用いることができる。
【0113】
[プリフォーム材及び光学素子]
作製された光学ガラスから、例えば研磨加工の手段、又は、リヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、光学ガラスに対して研削及び研磨等の機械加工を行ってガラス成形体を作製したり、光学ガラスからモールプレス成形用のプリフォームを作製し、このプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、研磨加工を行って作製したプリフォームや、公知の浮上成形等により成形されたプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりすることができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
【0114】
このように、本発明の光学ガラスは、様々な光学素子及び光学設計に有用である。その中でも特に、本発明の光学ガラスからプリフォームを形成し、このプリフォームを用いてリヒートプレス成形や精密プレス成形等を行い、レンズやプリズム等の光学素子を作製することが好ましい。これにより、径の大きなプリフォームの形成が可能になるため、光学素子の大型化を図りながらも、カメラやプロジェクタ等の光学機器に用いたときに高精細で高精度な結像特性及び投影特性を実現できる。
【実施例
【0115】
本発明の第一の態様に係る光学ガラスの実施例(No.1~No.43)及び比較例(A、B)の組成、並びに、これらのガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)、耐酸性、磨耗度、分光透過率が5%、70%を示す波長(λ、λ70)、の結果を表1~表7に示す。
また、本発明の第二の態様に係る光学ガラスの実施例(No.44~No.168)及び比較例(C、D)の組成、並びに、これらのガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)、耐酸性、磨耗度、分光透過率が5%、80%を示す波長(λ、λ80)、の結果を表8~表25に示す。
なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
【0116】
本発明の実施例及び比較例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、表に示した各実施例の組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス原料の熔解難易度に応じて電気炉で1100~1550℃の温度範囲で2~5時間熔解させた後、攪拌均質化してから金型等に鋳込み、徐冷して作製した。
【0117】
実施例のガラスの屈折率(n)及びアッベ数(ν)は、ヘリウムランプのd線(587.56nm)に対する測定値で示した。また、アッベ数(ν)は、上記d線の屈折率と、水素ランプのF線(486.13nm)に対する屈折率(n)、C線(656.27nm)に対する屈折率(n)の値を用いて、アッベ数(ν)=[(n-1)/(n-n)]の式から算出した。
【0118】
実施例及び比較例のガラスの透過率は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02-2003「光学ガラスの着色度測定方法」に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200~800nmの分光透過率を測定し、λ(透過率5%時の波長)、λ80(透過率80%時の波長)λ70(透過率70%時の波長)を求めた。
【0119】
また、実施例及び比較例のガラスの耐酸性は、日本光学硝子工業会規格JOGIS06-1999「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法」に準じて測定した。すなわち、粒度425~600μmに破砕したガラス試料を比重ビンにとり、白金かごの中に入れた。白金かごを0.01N硝酸水溶液の入った石英ガラス製丸底フラスコに入れて、沸騰水浴中で60分間処理した。処理後のガラス試料の減量率(質量%)を算出して、この減量率(質量%)が0.20未満の場合を1級、減量率が0.20~0.35未満の場合を2級、減量率が0.35~0.65未満の場合を3級、減量率が0.65~1.20未満の場合を4級、減量率が1.20~2.20未満の場合を5級、減量率が2.20以上の場合を6級とした。このとき、級の数が小さいほど、ガラスの耐酸性が優れていることを意味する。
【0120】
また、磨耗度はJOGIS10-1994「光学ガラスの磨耗度の測定方法」に準じて測定した。すなわち、30×30×10mmの大きさのガラス角板の試料を水平に毎分60回転する鋳鉄製平面皿(250mmφ)の中心から80mmの定位置に乗せ、9.8N(1kgf)の荷重を垂直にかけながら、水20mLに#800(平均粒径20μm)のラップ材(アルミナ質A砥粒)を10g添加した研磨液を5分間一様に供給して摩擦させ、ラップ前後の試料質量を測定して、磨耗質量を求めた。同様にして、日本光学硝子工業会で指定された標準試料の磨耗質量を求め、
磨耗度={(試料の磨耗質量/比重)/(標準試料の磨耗質量/比重)}×100により計算した。
【0121】
【表1】





【0122】
【表2】





【0123】
【表3】





【0124】
【表4】





【0125】
【表5】




【0126】
【表6】





【0127】
【表7】





【0128】
【表8】






【0129】
【表9】






【0130】
【表10】






【0131】
【表11】






【0132】
【表12】






【0133】
【表13】






【0134】
【表14】






【0135】
【表15】






【0136】
【表16】






【0137】
【表17】






【0138】
【表18】






【0139】
【表19】






【0140】
【表20】






【0141】
【表21】






【0142】
【表22】






【0143】
【表23】






【0144】
【表24】






【0145】
【表25】






【0146】
【表26】
【0147】
表に表されるように、本発明の第一の態様の実施例の光学ガラスは、質量比(B/SiO)が1.0以下であるため、耐酸性1~3級を満たしている。他方で、比較例A及びBのガラスは、質量比(B/SiO)が1.0を超えているため、耐酸性が悪い。
【0148】
また、本発明の第一の態様の実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率(n)が1.78以上、より詳細には1.80以上であるとともに、この屈折率(n)は1.95以下、より詳細には1.93以下であり、所望の範囲内であった。
【0149】
また、本発明の第一の態様の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数(ν)は45以下、より詳細には40以下であるとともに、このアッベ数(ν)が25以上、より詳細には28以上であり、所望の範囲内であった。
【0150】
また、本発明の第一の態様の実施例の光学ガラスは、λ70(透過率70%時の波長)がいずれも500nm以下、より詳細には480nm以下であった。また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ(透過率5%時の波長)がいずれも400nm以下、より詳細には380nm以下であり、所望の範囲内であった。
【0151】
表に表されるように、本発明の第二の態様の実施例の光学ガラスは、質量比(B/SiO)が1.0以下であるため、耐酸性1~3級を満たしている。他方で、比較例A及びBのガラスは、質量比(B/SiO)が1.0を超えているため、耐酸性が悪い。
【0152】
また、本発明の第二の態様の実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率(n)が1.60以上、この屈折率(n)は1.85以下、所望の範囲内であった。
【0153】
また、本発明の第二の態様の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数(ν)は62以下、より詳細には57以下であるとともに、このアッベ数(ν)が33以上、より詳細には35以上であり、所望の範囲内であった。
【0154】
また、本発明の第二の態様の実施例の光学ガラスは、摩耗度が200以下であった。
よって、本発明の実施例の光学ガラスは、摩耗度に優れており、光学ガラスをレンズとして使用する場合に、表面上に傷が生じにくいことが明らかになった。
【0155】
また、本発明の第二の態様の実施例の光学ガラスは、λ80(透過率80%時の波長)がいずれも500nm以下、より詳細には490nm以下であった。また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ(透過率5%時の波長)がいずれも400nm以下、より詳細には390nm以下であり、所望の範囲内であった。
【0156】
また、本発明の実施例の光学ガラスは、摩耗度が200以下であった。
よって、本発明の実施例の光学ガラスは、摩耗度に優れており、光学ガラスをレンズとして使用する場合に、表面上に傷が生じにくいことが明らかになった。
【0157】
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、屈折率(n)及びアッベ数(ν)が所望の範囲内にありながらも、いずれも粉末法による化学的耐久性(耐酸性)が1~3級であり、所望の範囲内であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは、化学的耐久性(耐酸性)に優れていることが明らかになった。
【0158】
さらに、本発明の実施例の光学ガラスを用いて、ガラスブロックを形成し、このガラスブロックに対して研削及び研磨を行い、レンズ及びプリズムの形状に加工した。その結果、安定に様々なレンズ及びプリズムの形状に加工することができた。
【0159】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。