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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】触媒反応器の着脱式バスケット
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/00 20060101AFI20230427BHJP
   C10G 45/00 20060101ALI20230427BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20230427BHJP
   B01J 8/02 20060101ALI20230427BHJP
   B01D 24/00 20060101ALN20230427BHJP
【FI】
B01J8/00 A
C10G45/00
C10G47/00
B01J8/02 Z
B01D29/08 540A
B01D29/08 530Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019006168
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020114573
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】ウィルフリード ヴェイス
(72)【発明者】
【氏名】セシル プレ
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0275870(US,A1)
【文献】特表2013-508137(JP,A)
【文献】特開2014-087789(JP,A)
【文献】特表2009-505819(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107866191(CN,A)
【文献】特表2003-526494(JP,A)
【文献】特表2018-507099(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1765480(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0313077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00-12/03、14/00-19/32
C10G 45/00
C10G 47/00
B01D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相および液相の濾過および分配のための少なくとも1つの濾過媒体(M)を収容し保持するのに適し、かつ、並流気液下降流で動作する反応器(17)の固定触媒床(19)の上流側に配置するのに適切であることができ、かつ、前記反応器(17)内で気体および液体を濾過し分配するための着脱式バスケットであって、
前記着脱式バスケットは、実質的に水平なベース(1)と、複数の実質的に垂直な側壁(2)および/または、バスケットの高さに対して垂直な断面から見て楕円状の少なくとも1つの側壁(2)を備え、前記ベース(1)および/または前記少なくとも1つの側壁(2)は気体および液体に対して透過性であ
前記着脱式バスケットは、 実質的に垂直であって下端部(5)および上端部(6)で開いており、前記ベース(1)に締結された前記下端部(5)を備えるとともに前記側壁(2)の間に延在する下側部分(7)をそれぞれ備える、複数のチムニー(3、4)備え、
前記着脱式バスケットの第1のチムニー(3)が、前記側壁(2)の上方に延在する上側部分(8)を備え、
前記第1のチムニー(3)の前記上側部分(8)が、同じタイプの別の着脱式バスケットのチムニーの下側部分(7)に挿入するのに適している、着脱式バスケット。
【請求項2】
前記第1のチムニー(3)の前記上側部分(8)の高さ(h1)が、前記着脱式バスケットの第2のチムニー(4)の前記下側部分(7)の高さ(H2)以下である、請求項1に記載の着脱式バスケット。
【請求項3】
前記チムニー(3、4)が円形断面を有するチューブを形成し、前記着脱式バスケットの第2のチムニー(4)の前記下側部分(7)の直径(D2)が、前記第1のチムニー(3)の前記上側部分(8)の直径(d1)よりも大きい、請求項1または2に記載の着脱式バスケット。
【請求項4】
前記側壁(2)の上方に延在する上側部分(8)を備える第2のチムニー(4)を更に備え、前記第2のチムニー(4)の前記上側部分(8)が同じタイプの別の着脱式バスケットのチムニーの下側部分(7)に挿入するのに適している、請求項1から3のいずれか一項に記載の着脱式バスケット。
【請求項5】
前記第2のチムニー(4)の前記上側部分(8)の高さ(h2)が、前記第1のチムニー(3)の前記下側部分(7)の高さ(H1)以下である、請求項4に記載の着脱式バスケット。
【請求項6】
前記チムニー(3、4)が円形断面を有するチューブを形成し、前記第1のチムニー(3)の前記下側部分(7)の直径(D1)が、前記第2のチムニー(4)の前記上側部分(8)の直径(d2)よりも大きい、請求項4に記載の着脱式バスケット。
【請求項7】
4つの実質的に垂直な側壁(2)を備えたバスケットであって、2つの隣接した正方形ベースの直方体からなるキャビティを備える直方体を形成するために、2つの第1の対向する側壁(2)が他の2つの側壁(2)の幅(I)の二倍に実質的に等しい幅(L)を有し、前記第1および第2のチムニー(3、4)がそれぞれ前記正方形ベースの直方体のうち1つの中心に配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の着脱式バスケット。
【請求項8】
前記着脱式バスケットの前記複数のチムニー(3、4)の前記上端部(6)のうち少なくとも1つがスクリーン(10)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の着脱式バスケット。
【請求項9】
前記ベース(1)および/または前記側壁(2)が周縁補強材(11)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の着脱式バスケット。
【請求項10】
前記着脱式バスケットを強化するのに適した少なくとも1つの補強材(13)を更に備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の着脱式バスケット。
【請求項11】
濾過媒体(M)の上層の上方に配置するのに適した有孔保護スクリーン(9)を更に備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の着脱式バスケット。
【請求項12】
前記着脱式バスケットの側壁(2)を隣接の着脱式バスケットの側壁(2)に連結する連結要素(14)を更に備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の着脱式バスケット。
【請求項13】
並流気液下降流で動作する反応器(17)の固定触媒床(19)の上流側に配置するのに適した、気相および液相の濾過および分配のためのデバイスであって、
水平面で延在する有孔トレイ(16)であって、実質的に垂直であるとともに上端部(21)および下端部(22)で開いている分配手段(15)が有孔トレイ(16)に締結され、前記分配手段(15)が高さの少なくとも一部分にわたって開口部(23)を備える、有孔トレイと、
前記分配手段(15)に配置された、請求項1から12のいずれか一項に記載の複数の着脱式バスケットとを備える、デバイス。
【請求項14】
並流気液下降流で動作するのに適した反応器(17)であって、流体のフローの方向で、
固定触媒床(19)と、
前記触媒床(19)の上流側に配置される、請求項13に記載の気相および液相の濾過および分配のためのデバイスとを備える、反応器(17)。
【請求項15】
炭化水素含有供給原料の総重量に対して少なくとも0.5重量%の硫黄含量、および/または少なくとも300℃の初期沸点、および/または少なくとも500℃の最終沸点を有する少なくとも1つの炭化水素画分を含有する炭化水素含有供給原料の水素化処理および/または水素化分解を行う方法であって、前記供給原料が、請求項14に記載の反応器に導入される、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、並流気液下降流で動作する化学反応器内で気体および液体を濾過し分配するための着脱式バスケットに関する。
【0002】
かかる反応器は水素化処理などの精製の分野で使用される。水素化処理は、高圧水素流を要し、固体粒子の目詰まりによってなる不純物を含むことがある重液供給原料を用いて動作する。
【0003】
実際、特定の事例では、液体供給原料、または液体供給原料と、水素化処理に必要な温度および圧力条件下で水素豊富な気体との混合物は、触媒床自体に堆積することがある不純物を含有し、時間に伴ってこの触媒床の間隙容量を低減し、結果として圧力降下を漸進的に増大させる。極端な事例では、特にサイクルの終了時、触媒床の閉塞が認められ、圧力降下の非常に急速な増大によって明らかになり、結果として反応器を通るフローが中断される。
【0004】
圧力降下は、操作者が反応器を停止させ、触媒の一部または全体を交換しなければならない程度になることがあり、当然ながら、方法のサイクルの継続時間が大幅に低減される。
【0005】
目詰まりする供給原料の中でも、無視できない割合の不飽和もしくは多価不飽和アセチレンまたはジエン化合物を含有することがある炭化水素の混合物、またはこれらの異なる化合物の組み合わせを挙げることができ、供給原料中の不飽和化合物全体の比率は90重量%に達する可能性がある。本明細書が関連する供給原料の代表例として、パイロリシス・ガソリンを挙げることができる。パイロリシスとは、当業者には良く知られている熱分解方法を指す。重炭化水素留分、特にガス油、減圧ガス油、常圧残油または減圧残油、および脱アスファルト油も挙げることができる。これらの重質留分は、原油の直接蒸留から生じるか、またはビスブレーキング、コーキング、脱アスファルト、接触分解、または水素化分解などの変換方法から生じる可能性がある。
【0006】
上述の重炭化水素留分はまた、様々な不純物、特に堆積物(例えば、IP375および390によって測定される)、金属(例えば、Ni、V、Fe、Caなど)、ならびに触媒床を詰まらせる一因となり得る金属またはカルシウム誘導体など、それらの誘導体を含有する場合がある。供給原料を水素と接触させると、更なる不純物が供給原料中に形成されることがある。例えば、硫化鉄が、供給原料が含有するFe(例えば、ナフテン酸タイプの鉱物または有機物)からインシチューで形成される場合がある。残渣タイプの留分はまた、コークスの前駆物質と説明される場合が多い化学物質である、アスファルテンを含有する。
【0007】
触媒床の一部の閉塞はいくつかのメカニズムによるものである場合がある。直接的には、供給原料流の中に粒子が存在することで、触媒床内に前記粒子が堆積することによる閉塞がもたらされる場合があり、この堆積には空隙率を低減させる作用がある。間接的には、一般的にはコークスであるが、供給原料中に存在する不純物由来の他の固体生成物の可能性もある、触媒粒の表面上に堆積される、化学反応から生じる生成物の層が形成されることも、触媒床の空隙率を低減させる一因となり得る。
【0008】
それに加えて、目詰まりする粒子の堆積は、触媒床内において多少無作為的な形で起こり得るので、この触媒床における空隙率の不均一な分布がもたらされることがあり、優先的経路が作られることによってそのことが明らかになる。これらの優先的経路は、触媒床内の位相の均等なフローを多少深刻に中断するので、流体力学的観点から見て非常に有害なものであり、また化学反応の進行において、ならびに温度(例えば、径方向温度差、ホットスポット)に関して、不均衡をもたらすことがある。
【背景技術】
【0009】
触媒床の早期の目詰まりを防ぐために、様々な技術的解決策が開発されてきた。これらの解決策は、(流体のフロー方向で)触媒床の上流側に配置される濾過システムの使用に基づくものである。例えば、以下の文献が言及されることがある。
【0010】
特許文献1は、濾過媒体を直接支持し、またそれによって、下流側に位置する触媒床に対する濾過と、気体および液体の分配の両方の機能を提供する、分配器トレイについて記載している。特許文献1による濾過分配器トレイは、濾過床の中央に穿孔(またはスロット)を有するチムニーを備えるが、濾過床の穴に近い所が閉塞された場合に問題が起こることがある。この濾過床の閉塞はチムニーの閉塞をもたらし、分配器トレイの下方を流れる液体の分布が不均衡になることと、チムニーが濾過床に固着し凝集した状態で分配器トレイを取り外す間にチムニーが損傷するリスクがあることの、2つの結果を伴う。
【0011】
特許文献2は、分配器トレイが関与することなく濾過デバイスの取付けおよび取外しが容易になるように分配器トレイ上に位置する、濾過粒子を収容した一連の着脱式バスケットについて記載している。バスケットのシステムの機械的完全性を担保するために、前記着脱式バスケットは、ボルト締めによって、または締結システムによってしっかり保持されるので、取付けおよび取外しの操作が複雑になる。
【0012】
特許文献3は、分配用チムニーと上部の有孔濾過支持体とを備える分配器トレイを備え、支持体の上に濾過床が配置され、そこを分配器トレイのチムニーが貫通する、気体および液体の濾過および分配のためのアセンブリについて記載している。濾過支持体は、前記支持体と分配器トレイとの間に配置されるエルボー部品を用いて、またはねじ締めシステムによって、分配器トレイに対して機械的に保持される。このシステムを実現する際の主な問題はフィルタ媒体の充填にあり、これは、支持体が反応器に設置されると、特にシステムを分解する間に行わなければならず、反応器の内部から支持体を前もって空にする必要があるので、フィルタ媒体の凝集(またはケーキング)が起こった場合は更に困難になる。
【0013】
特許文献4は、分配器トレイを備え、その上にチムニーが締結され、濾過バスケットが配置され、各バスケットが濾過バスケットを支持するために分配器トレイのチムニーと協働する支持手段を備える、濾過および分配アセンブリについて記載している。しかしながら、このシステムが備える濾過媒体は限定された厚さでしかないので、濾過機能の寿命が限定される。
【0014】
本明細書の目的は上述の欠陥を克服することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】仏国特許発明第2889973号明細書
【文献】仏国特許発明第2959677号明細書
【文献】仏国特許発明第2996465号明細書
【文献】仏国特許発明第3043339号明細書
【発明の概要】
【0016】
本明細書の第1の目的は、特にいくつかの濾過床の積載を可能にする、積み重ね可能な着脱式バスケットを提供し、反応器の上側ベースの下方に位置する空間をより有効に利用することである。本明細書の第2の目的は、分配器トレイの下流側に位置する触媒床の寿命を延長することである。
【0017】
第1の態様によれば、上述の目的、ならびに他の利点は、気相および液相の濾過および分配のための少なくとも1つの濾過媒体を収容し保持するのに適し、かつ、並流気液下降流で動作する反応器の固定触媒床の上流側に配置するのに適した、着脱式バスケットによって得られ、前記着脱式バスケットは、
実質的に水平なベースと、複数の実質的に垂直な側壁および/または少なくとも1つの(実質的に垂直な)楕円状の側壁であって、ベースおよび/または少なくとも1つの側壁が気体および液体に対して透過性である、ベースおよび側壁と、
下端部および上端部が開いている複数の実質的に垂直なチムニーであって、ベースに締結された下端部を備えるとともに側壁の間に延在する下側部分をそれぞれ備え、着脱式バスケットの第1のチムニーが側壁の上方に延在する上側部分を備える、チムニーとを備え、
第1のチムニーの上側部分は、同じタイプの別の着脱式バスケットのチムニーの下側部分に(例えば、第1の態様による着脱式バスケットの第2のチムニーに)挿入するのに適している。
【0018】
着脱式バスケットの第1のチムニーを別の着脱式バスケットのチムニーに挿入することができるので、この第1のチムニーは、着脱式バスケットが積み重ねられるときのガイド機能をもたらすことができる。したがって、反応器の上側ベースの下方にある空間など、反応器の触媒床の上流側で、着脱式バスケットのいくつかの段を積載することが可能である。それに加えて、濾過床の閉塞のリスクが主に、上段のレベルに配置された着脱式バスケットに関連するものであることを考慮して、目詰まりした着脱式バスケットは、追加のバスケットを止むを得ず取り外す必要なしにバスケットを交換するためにアクセス可能なままである。更に、バスケットの閉塞によって、濾過機能全体を危険に晒すことなく、下流側のバスケット内で流体が再分配される。第1のチムニーはまた、着脱式バスケットを積み重ねて段を形成する間に構造補強機能を提供することができる。
【0019】
着脱式バスケットがチムニーを備えることを考慮して、濾過床の閉塞が起こった場合の流体のフローも改善される。したがって、反応器の中央部における気体の分配が向上して、触媒床内における位相のフローの均一性が改善される。それに加えて、濾過床が閉塞した場合、液体は着脱式バスケットの壁に沿って流れて戻り、2つの着脱式バスケット間の空間へと着脱式バスケットの外側に溢れ、ならびに/または隣接の着脱式バスケットに流れ込み、ならびに/または気体とともに着脱式バスケットのチムニーに流れ込み、それによって分配器トレイの下方における流体の平衡分布が保たれる。1つまたは複数の実施形態によれば、液体の一部はまた、外側に溢れて、着脱式バスケットと反応器の壁との間の環状空間に入る場合がある。
【0020】
1つまたは複数の実施形態によれば、第1のチムニーの上側部分の高さは、着脱式バスケットの第2のチムニーの下側部分の高さ以下である。したがって、第1の着脱式バスケットのベースが第2の着脱式バスケットの側壁に乗るようにして、第1の着脱式バスケットを第2の着脱式バスケット上に配置することができる。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によれば、チムニー(例えば、チムニーの下側および上側部分)は、円形断面を有するチューブを形成し、着脱式バスケットの第2のチムニーの下側部分の直径は、第1のチムニーの上側部分の直径よりも大きい。したがって、チムニーの製造ステップが低減され、気体のフローが最適化される。第1の態様にしたがって、着脱式バスケットのチムニーの上側部分が別の着脱式バスケットのチムニーの下側部分に挿入するのに適しているという条件で、着脱式バスケットのチムニーは任意の形状であることができることが理解される。
【0022】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットはまた、側壁の上方に延在する上側部分を備える第2のチムニーを備え、第2のチムニーの上側部分は、別の着脱式バスケットのチムニーの下側部分に(例えば、第1の態様による着脱式バスケットの第1のチムニーに)挿入するのに適している。着脱式バスケットの第2のチムニーも壁の上方に延在するので、バスケットの積載のガイド、ならびに着脱式バスケットの段によって形成されるアセンブリの構造的完全性が改善される。
【0023】
1つまたは複数の実施形態によれば、第2のチムニーの上側部分の高さは第1のチムニーの下側部分の高さ以下である。
【0024】
1つまたは複数の実施形態によれば、第1のチムニーの下側部分の直径は第2のチムニーの上側部分の直径よりも大きい。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは少なくとも3つの実質的に垂直な側壁を備える。したがって、バスケットは、三角柱、直方体(例えば、立方体)、六角柱などの形状であることができる。1つまたは複数の実施形態によれば、3つの側壁は三角柱を形成する。1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは4つの実質的に垂直な側壁を備える。1つまたは複数の実施形態によれば、4つの側壁は直方体(例えば、立方体)を形成する。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは6つの実質的に垂直な側壁を備える。1つまたは複数の実施形態によれば、6つの側壁は六角柱を形成する。1つまたは複数の実施形態によれば、楕円状の(実質的に垂直な)側壁はシリンダを形成する。
【0027】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは、2つの隣接した正方形ベースの直方体からなるキャビティを備え、第1および第2のチムニーが正方形ベースの直方体のうち1つの中心に配置された、直方体を形成する4つの実質的に垂直な側壁を備える。したがって、1つの段の着脱式バスケットを隣接の段の着脱式バスケットに垂直な構成で配置するとともに、着脱式バスケットの間に残される自由空間を大幅に低減することができる。1つまたは複数の実施形態によれば、2つの隣接した正方形ベースの直方体からなる前記キャビティを結果的に形成するために、2つの対向する第1の側壁は、他の2つの側壁の幅の二倍に実質的に等しい幅を有する。
【0028】
1つまたは複数の実施形態によれば、第1および第2のチムニーの上側部分の高さは実質的に等しい。したがって、着脱式バスケットのより多数の可能な方向付け(orientations)が得られるので、着脱式バスケットの段を積み重ねることが容易になる。
【0029】
1つまたは複数の実施形態によれば、第1および第2のチムニーの上側部分の高さは異なる。したがって、規定の方向付けにしたがって積み重ねを制限するために、バスケットを事前に構成することができる。
【0030】
1つまたは複数の実施形態によれば、複数のチムニーのうち少なくとも1つは、側壁の高さの二倍以下の高さを有する(例えば、前記チムニーの上側部分の高さは実質的に側壁の高さ以下である)。
【0031】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットの複数のチムニーのうち少なくとも1つは気体に対して透過性である。
【0032】
1つまたは複数の実施形態によれば、複数のチムニーの上端部は、濾過媒体の層の情報に載置するのに適している。このように、濾過床を優先的に通過させるために液体がガイドされる。
【0033】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットの複数のチムニーにおける上端部のうち少なくとも1つは、スクリーンを備えて、特に、バスケットの気体を通過させるのに未濾過の液体の跳ねがチムニーに入るのを限定することができる。
【0034】
1つまたは複数の実施形態によれば、ベースおよび/または側壁は周縁補強材を備える。このように、着脱式バスケットの構造的完全性が補強される。1つまたは複数の実施形態によれば、ベースおよび/または側壁は、例えば、当業者には知られているジョンソンタイプの、金属スクリーンなどのオープンワークの分離要素、またはアパーチャが穴あけされた金属プレートを備え、スクリーンのメッシュまたはアパーチャのサイズは、後者が、着脱式バスケットが保持している濾過媒体の構成要素の平均寸法よりも厳密に小さいようなサイズである。
【0035】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットはまた、着脱式バスケットを強化するのに適した少なくとも1つの補強材を備える。1つまたは複数の実施形態によれば、少なくとも1つの補強材は、着脱式バスケットを扱うための着脱式バスケットの取付け点を構成する。1つまたは複数の実施形態によれば、少なくとも1つの補強材は、着脱式バスケットのベース、壁、およびチムニーから選択された少なくとも1つの要素を、着脱式バスケットのベース、壁、およびチムニーから選択された少なくとも1つの他の要素に連結する。このように、着脱式バスケットの構造的完全性が補強され、着脱式バスケットの扱いが容易になる。
【0036】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは濾過媒体の少なくとも1つの層を備える。
【0037】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは、濾過媒体の上層の上方に配置されるように構成された、任意に着脱可能な、有孔保護スクリーンを備える。したがって、濾過媒体は、着脱式バスケットの内部に配置されたままであり、取扱いのステップの間、および反応器の動作のステップの間、放出されない。特に、保護スクリーンによって、バスケットを水平に対してある角度で方向付けして(orienting)、反応器に形成された出口アパーチャ(例えば、検査用ハッチ)を通りやすくすることで、濾過媒体を損失することなく、濾過媒体が充填された着脱式バスケットを引き出すことが可能になる。
【0038】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットはまた、着脱式バスケットの側壁を隣接の着脱式バスケットの側壁に連結する連結要素を備える。このように、着脱式バスケットの段の構造的完全性が補強される。1つまたは複数の実施形態によれば、連結要素は、着脱式バスケットと隣接の着脱式バスケットとの間の空間を少なくとも部分的に被覆するタブ(例えば、プレート)を備える。1つまたは複数の実施形態によれば、連結要素は着脱式バスケットにしっかりと固定される。したがって、液体は、濾過床を優先的に通過し、2つの着脱式バスケットの間は通らないようにガイドされる。
【0039】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは、反応器の有孔トレイの分配手段上に配置されるのに適しており、着脱式バスケットは、有孔トレイの分配手段の少なくとも1つと協働する支持手段を備える。したがって、着脱式バスケットが有孔トレイによって直接指示されていることを考慮して、取付けおよび分解操作も容易になる。
【0040】
第2の態様によれば、上述の目的、ならびに他の利点は、気相および液相の濾過および分配のための少なくとも1つの濾過媒体を収容し保持するのに適し、かつ、並流気液下降流で動作する反応器の固定触媒床の上流側に配置するのに適した、着脱式バスケットによって得られ、前記着脱式バスケットは、
実質的に水平なベースと、複数の実質的に垂直な側壁および/または少なくとも1つの楕円状の(実質的に垂直な)側壁であって、ベースおよび/または少なくとも1つの側壁が気体および液体に対して透過性である、ベースおよび側壁と、
下端部および上端部が開いている複数の実質的に垂直なチムニーであって、ベースに締結された下端部を備えるとともに側壁の間に延在する下側部分をそれぞれ備え、着脱式バスケットの第1のチムニーが側壁の上方に延在する上側部分を備える、チムニーとを備え、
チムニーの下側および上側部分は実質的にチューブ形状を有するので、第1のチムニーの上側部分の断面によって規定される形状を、着脱式バスケットの第2のチムニーの下側部分の断面によって規定される形状によって取り囲むことができる(第1の態様による全ての実施形態が、第2の態様による実施形態に適用可能である)。
【0041】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットの第2のチムニーは、側壁の上方に延在する上側部分を備え、第1のチムニーの下側部分の断面によって規定される形状は、第2のチムニーの上側部分の断面によって規定される形状を取り囲むことができる。
【0042】
第3の態様によれば、上述の目的、ならびに他の利点は、並流気液下降流で動作する反応器の固定触媒床の上流側に配置するのに適した、気相および液相の濾過および分配のためのデバイスによって得られ、前記着脱式バスケットは、
水平面で延在する有孔トレイであって、円形断面を任意に有し、実質的に垂直であるとともに上端部および下端部で開いている、垂直なチムニーなどの分配手段が上に締結され、前記分配手段が高さの少なくとも一部分にわたって開口部を備える、有孔トレイと、
分配手段上に配置された、第1の態様および/または第2の態様による複数の着脱式バスケットとを備える。
【0043】
着脱式バスケットに対する支持機能とは別に、有孔トレイの分配手段は、前記着脱式バスケットの取付け中のガイド機能を提供することができる。
【0044】
濾過および分配デバイスの別の利点は、着脱式バスケットへの濾過媒体の装填を反応器の外で行うことができ、それによって操作が容易になるとともに大幅に加速され、それによって後者が、装填済みの着脱式バスケットを有孔トレイの上方に取付けることに限定されることによる。更に、各着脱式バスケット内の濾過粒子の高さは、バスケットごとに非常に精密に調節することができる。
【0045】
1つまたは複数の実施形態によれば、分配手段はデフレクタ要素を備え、それによって特に、着脱式バスケットを支持し、分配手段の上端部を閉じ、液相が分配手段の上端部の開口部を介して導入されるのを防ぐとともに、気相が部パイ手段の上側部分の測部に入り込めるようにすることが可能になっている。
【0046】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは、反応器の有孔トレイの分配手段上に配置されるのに適しており、着脱式バスケットは、有孔トレイの分配手段と協働する支持手段を備える。1つまたは複数の実施形態によれば、支持手段は着脱式バスケットのベースを備える。
【0047】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは、分配手段上に着脱式バスケットの第1の段を形成するように配置される。1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは、着脱式バスケットの第1の段上に着脱式バスケットの少なくとも1つの追加の段を形成するように配置される。
【0048】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは、着脱式バスケットのチムニーが有孔トレイの分配手段のうち1つに対して位置合わせされるように配置され、前記分配手段のデフレクタ要素は、気体が着脱式バスケットの前記チムニーと前記分配手段との間を通過することを可能にする開口部を備える。このように、濾過および分配デバイスを通る気体のアクセスが容易になる。
【0049】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは、着脱式バスケットのチムニーが分配手段に対してオフセットされるように配置される。したがって、着脱式バスケットのベースと有孔トレイとの間の収集空間内における、気体および液体の混合が容易になる。
【0050】
1つまたは複数の実施形態によれば、1つの同じ段の着脱式バスケットは、互いに対して平行に、また隣接した段の着脱式バスケットに対してオフセットされて配置される。1つまたは複数の実施形態によれば、1つの同じ段の着脱式バスケットは、隣接した段の着脱式バスケットに対して垂直に配置される。このように、着脱式バスケットの連続段の構造的完全性が補強される。
【0051】
1つまたは複数の実施形態によれば、複数の着脱式バスケットは、一連のピラミッド状の段を形成するように配置される。したがって、着脱式バスケットを、反応器の上側ベースの下方にある空間内に配置して、反応器内の利用可能な空間を最適化することができる。
【0052】
1つまたは複数の実施形態によれば、支持手段は、分配手段と協働する着脱式バスケットの側壁のうち少なくとも1つを備える。
【0053】
1つまたは複数の実施形態によれば、支持手段は、着脱式バスケットのベースに締結されたチューブを備え、その直径は分配手段の直径よりも実質的に大きく、前記チューブは上端部で閉じており、下端部で開いているので、チューブは分配手段を受け入れ、その上に載せられるのに適している。
【0054】
1つまたは複数の実施形態によれば、チューブは、その上端部に近接する区画に1つまたは複数の開口部を備えて、気相が分配手段内で拡散することを可能にしている。
【0055】
1つまたは複数の実施形態によれば、チューブは、液相に対して透過性であり、任意に、濾過媒体によって構成される固相を保持することができる。
【0056】
1つまたは複数の実施形態によれば、チューブはその高さにわたって多孔質なので、濾過媒体の対麻で蓄積した液相が分配手段内へと通過することも可能にしている。例えば、開口部が、規則的な開口部間のピッチで、チューブの高さにわたって分配される。あるいは、チューブは、例えばジョンソンタイプの、有孔スクリーンから作成される。
【0057】
1つまたは複数の実施形態によれば、支持手段は、着脱式バスケットのベースに締結され、分配手段と協働するように構成された取付け手段を備えた、複数の垂直アームを備える。
【0058】
1つまたは複数の実施形態によれば、前記濾過および分配デバイスの周囲に載置された着脱式バスケットは、曲率を有する少なくとも1つの側壁を有する。この実施形態によって、特に、反応器の断面をコンパクトな形で被覆するように、デバイスが設置される反応器の壁の曲率に合わせることができる、濾過および分配デバイスを作成することが可能になる。
【0059】
1つまたは複数の実施形態によれば、2つの隣接した着脱式バスケットは、それらの取付けおよびそれらの取外しがバスケットごとに可能になるように、自由空間または機能的クリアランスによって分離される。1つまたは複数の実施形態によれば、この自由空間は、1~10mmなど、1~20mmである。
【0060】

第4の態様によれば、上述の目的、ならびに他の利点は、並流気液下降流で動作するのに適した反応器によって得られ、反応器は、流体のフローの方向で、
固定触媒床と、
触媒床の上流側に配置される、第3の態様による気相および液相の濾過および分配デバイスとを備える。
【0061】
1つまたは複数の実施形態によれば、濾過および分配デバイスは、実質的に環状の区域が、反応器の壁と反応器の壁に隣接した周囲の着脱式バスケットの壁との間で空いたままであるようにして、反応器内に配置される。1つまたは複数の実施形態によれば、環状区域は、反応器の断面の5%~20%など、2%~50%である。
【0062】
1つまたは複数の実施形態によれば、複数の着脱式バスケットは、反応器の上側ベース区域(即ち、上側ドーム)を充填するように、反応器内に配置される。
【0063】
1つまたは複数の実施形態によれば、反応器は、例えば0.1~1cm/秒からなる(水素化処理反応器の場合)、または1.1~5cm/秒からなる(選択的水素添加反応器の場合)、0.1~5cm/秒からなる液体速度を有する、並流気液トリクル(trickle)下降流で動作するのに適した反応器である。
【0064】
1つまたは複数の実施形態によれば、保守点検をしやすくするため、着脱式バスケットは反応器に形成される検査用ハッチよりも小さい寸法を有する。
【0065】
第5の態様によれば、上述の目的、ならびに利点は、少なくとも0.5重量%の硫黄含量、および/または少なくとも300℃の初期沸点、および/または少なくとも500℃の最終沸点を有する少なくとも1つの炭化水素画分を含有する、炭化水素含有供給材料の水素化処理および/または水素化分解方法によって得られ、供給原料は、第4の態様にしたがって反応器に導入される。本明細書による濾過および分配デバイスを、固定された床の目詰まりを引き起こすことがある、目詰まりする粒子またはコークスを形成する前駆物質が組み込まれた石油留分のあらゆる処理(例えば、水素添加)に適用できる場合であっても、主に考慮される適用例は重質石油留分の触媒処理である。
【0066】
上述した態様による実施形態、ならびに上述の態様によるデバイスの他の特性および利点は、単に例証として与えられる以下の非限定的な説明を、以下の図面を参照して読むことによって、明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本明細書の実施形態による着脱式バスケットの概略投影図である。
図2】着脱式バスケットの上に濾過媒体が配置された、図1の着脱式バスケットの概略断面図である。
図3図1および2の着脱式バスケットの概略底面図である。
図4】本明細書の実施形態による着脱式バスケットの概略側面図である。
図5図4の着脱式バスケットの概略底面図である。
図6】本明細書の実施形態による着脱式バスケットの概略側面図である。
図7図6の着脱式バスケットの概略底面図である。
図8】本明細書の実施形態による着脱式バスケットの概略側面図である。
図9】本明細書の実施形態による着脱式バスケットの概略側面図である。
図10】本明細書の実施形態による着脱式バスケットの概略投影図である。
図11】本明細書の実施形態による濾過および分配デバイスを備える反応器の一部の概略断面図である。
図12】濾過媒体が上に配置される本明細書の実施形態による着脱式バスケットの概略側面図である。
図13】本明細書の実施形態による着脱式バスケットの概略上面図である。
【0068】
全体として、図面中で類似の要素は同一の参照符号によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0069】
第1の態様および第2の態様によれば、本明細書は、気相および液相の濾過および予備分配のための少なくとも1つの濾過媒体を収容し保持するのに適し、かつ、並流気液下降流で動作する反応器の固定触媒床の上流側に配置するのに適した、着脱式バスケットに関する。
【0070】
図1図2、および図3を参照すると、着脱式バスケットは、濾過媒体Mを充填するように意図されており、実質的に水平なベース1と、好ましくは同じ高さである複数の実質的に垂直な側壁2とを備え、当該壁は、着脱式バスケットの断面(即ち、水平断面またはバスケットの高さに対して垂直な断面)を定める。この例では、ベース1は気体および液体に対して透過性である。他方で、選ばれた構成によれば、ベースおよび側壁から選ばれた少なくとも1つの要素は、気体および液体に対して透過性である。この例では、直方体を形成するために、着脱式バスケットは4つの側壁2を有する。他方で、選ばれた構成によれば、着脱式バスケットは、例えば、三角形、正方形、多角形などの角柱を形成するために、異なる数の側壁を備えることができる。着脱式バスケットはまた、円筒状のキャビティを形成するために、単一の楕円状の側壁2を備えるか、または少なくとも1つの曲線状の側壁2を備えることができる。例えば、反応器の壁に沿って配置するようにされた着脱式バスケットは、少なくとも1つの側壁2上において曲率を有することができる。
【0071】
着脱式バスケットはまた、実質的に垂直であって下端部5および上端部6で開いている、第1のチムニー3および第2のチムニー4などのチムニーを備える。第1のチムニー3および第2のチムニー4はそれぞれ、ベース1に締結された下端部5を有しかつ側壁2の間に延在する下側部分7を備える。それに加えて、第1のチムニー3はまた、側壁2の上方に延在する上側部分8を備える。
【0072】
図1図2、および図3に示されるように、第1のチムニー3の上側部分8は、別の着脱式バスケットのチムニーの下側部分7に、言い換えれば、第1および第2の態様による着脱式バスケットの第2のチムニー4の下側部分7に、挿入されるのに適するものであってよく、例えば図1図2、および図3に示される着脱式バスケットと実質的に同一のものであってよい。このように、着脱式バスケットは積み重ね可能なので、着脱式バスケットのいくつかの段を反応器の触媒床の上流側に積載することができる。
【0073】
1つまたは複数の実施形態によれば、第1のチムニー3の下側部分7および上側部分8、ならびに第2のチムニー4の下側部分7は実質的にチューブ形状なので、第1のチムニー3の上側部分8の断面の形状を、第2のチムニー4の下側部分7の断面の形状によって取り囲むことができる。例えば、図3に示されるように、チムニー3および4の下側部分7および上側部分8は、第2のチムニー4の下側部分7の直径D2が第1のチムニー3の上側部分8の直径d1よりも大きいような、円形断面を有するチューブを形成することができる。第1および第2の態様にしたがって、着脱式バスケットのチムニーの上側部分8が別の着脱式バスケットのチムニーの下側部分7に挿入するのに適しているという条件で、着脱式バスケットのチムニーは任意の形状であることができることが理解される。
【0074】
図2に示されるように、第1のチムニー3の上側部分8の高さh1は、第2のチムニー4の下側部分7の高さH2以下である。このように、着脱式バスケットのベース1を別の着脱式バスケットの側壁2によって支持することができる。それに加えて、濾過床が閉塞された場合、液体は、好ましくは気体とともに、着脱式バスケットのチムニーに流れ込むことができる。
【0075】
図2に示されるように、第1のチムニー3および第2のチムニー4の上端部6は、液体が優先的に濾過床を通過するようにして、濾過媒体Mの層の上方に位置されるのに適している。
【0076】
図3に示される例では、2つの対向する第1の側壁2は、他の2つの側壁2の幅Iの二倍に実質的に等しい幅Lを有する。したがって、側壁は、2つの隣接した正方形ベースの直方体からなるキャビティを形成する。この例では、第1のチムニー3および第2のチムニー4はそれぞれ、前記正方形ベースの直方体のうち1つの中心に配置される。例えば、チムニー3および4は、側壁2のうち3つからL/4に実質的に等しい距離に、および第4の側壁2から3L/4に実質的に等しい距離に配置される。したがって、着脱式バスケットの1つの同じ段にある着脱式バスケットは、隣接した段の着脱式バスケットに対して垂直な構成で配置することができる。着脱式バスケットが他の着脱式バスケット上に垂直に積み重ね可能であるような、他の構造的構成が可能であることが理解される。
【0077】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットの上面は、濾過媒体Mの装填および取出しを簡単にすることができるように、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に開いており、これらの操作は、反応器が停止されたとき、および一般に反応器の外で、実施することができる。更に、着脱式バスケットは、任意に取外し可能であり、濾過媒体Mを着脱式バスケットの内部に封入するために、濾過媒体Mの上層の上方に配置される、有孔保護スクリーン9(図2)を備えることができる。
【0078】
図4および図5を参照すると、着脱式バスケットの第2のチムニー4は、側壁2の上方に延在する上側部分8を備えることができるので、第2のチムニー4の上側部分8も、別の着脱式バスケットのチムニーの下側部分7に、言い換えれば、第1および第2の態様による着脱式バスケットの第1のチムニー3の下側部分7に、挿入されるのに適するものであってよく、例えば図4および図5に示される着脱式バスケットと実質的に同一のものであってよい。
【0079】
1つまたは複数の実施形態によれば、第1のチムニー3の下側部分7の断面によって規定される形状は、第2のチムニー4の上側部分8の断面によって規定される形状を取り囲むのに適している。着脱式バスケットの2つのチムニー3および4は両方とも側壁2の上方に延在するので、バスケットを積載させるガイドが改善される。例えば、図5に示されるように、チムニー3および4の下側部分7および上側部分8は、第1のチムニー3の下側部分7の直径D1が第2のチムニー4の上側部分8の直径d2よりも大きいような、円形断面を有するチューブを形成することができる。この例では、第2のチムニー4の上側部分8の直径d2および下側部分の直径D2は実質的に等しい。他方で、D2>d1およびD1>d2という条件で、d2およびD2は異なることができる。
【0080】
図4に示されるように、第2のチムニー4の上側部分8の高さh2は、第1のチムニー3の下側部分7の高さH1以下である。
【0081】
図6および図7を参照すると、第1のチムニー3および第2のチムニー4の上側部分8の高さは実質的に同じであってよい。このようにして、積み重ね可能なバスケットの適応(orientation)のより多数の選択肢が得られる。第1のチムニー3および第2のチムニー4の上側部分8の前記高さは異なっていてもよいので、着脱式バスケットの積み重ねが事前に適応される(pre-0rientated)ことが理解される。この例では、第1のチムニー3および第2のチムニー4の上側部分8の直径d1およびd2は実質的に等しく、第1のチムニー3および第2のチムニー4の下側部分7の直径D1およびD2は実質的に等しい。D2>d1およびD1>d2という条件で、他の構成が可能であることが理解される。
【0082】
1つまたは複数の実施形態によれば、図4および図6を参照すると、第1のチムニー3の下側部分7の高さH1および/または第2のチムニー4の下側部分7の高さH2が、側壁2の高さHpよりも低いとき、対応するチムニーはまた、例えば前記チムニーの下側部分7から上側部分8まで延在する、下側部分7の上方に延在する中間部分を備えることができる。
【0083】
図8を参照すると、第1のチムニー3および第2のチムニー4の少なくとも一方は、側壁2の高さHpの二倍に実質的に等しい高さ(H3および/またはH4)を有することができる。図9を参照すると、高さH3およびH4は側壁2の高さHpの二倍に実質的に等しい。換言すれば、図9の例では、高さh1、h2、H1、およびH2は実質的に等しい。
【0084】
図10を参照すると、第1のチムニー3および第2のチムニー4の上端部6の少なくとも一方は、特に、第1のチムニー3および/または第2のチムニー4を直接通過する未濾過の液体が跳ねないようにすることを可能にする、スクリーン10を備えることができる。それに加えて、ベース1および/または側壁2は、 特に着脱式バスケットの完全性を補強することを可能にする周縁補強材11、ならびに/あるいは気体および/または液体に対して透過性であるスクリーンもしくは金属プレートなど、オープンワークの分離要素12を備えることができる。それに加えて、着脱式バスケットの複数のチムニー3および4のうち少なくとも1つも、気体に対して透過性であるようにオープンワークであることができる。
【0085】
図10に示されるように、着脱式バスケットはまた、着脱式バスケットを穂剛するのに適した補強材13を備えることができ、補強材13は、特に、着脱式バスケットを扱う間の取付け点として作用することができる。この例では、補強材13は、チムニー3および4に、および側壁2に連結される。補強材13はまた、側壁2を互いに、ならびに/またはベース1を、側壁2のチムニー3および4から選択された少なくとも1つの要素に連結することができる。
【0086】
更に、着脱式バスケットは、着脱式バスケットの側壁2を隣接の着脱式バスケットの側壁に連結し、任意に着脱式バスケットと隣接の着脱式バスケットとの間の空間を被覆する、タブ(例えば、プレート)などの連結要素14を備えることができる。1つまたは複数の実施形態によれば、連結要素14は着脱式バスケットにしっかりと固定することができる。このように、着脱式バスケットの段の構造的完全性が補強され、液体が優先的に濾過床を通過する。1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットのアセンブリは、反応器内で空いている環状空間、ならびに隣接した着脱式バスケットの側壁間にある自由空間または機能的クリアランスのみを残して、挿入または引出しのためならびに連結要素14を位置決めするため、バスケットを個別に移動させることができるようにして、反応器の断面全体を被覆するように調節される。
【0087】
図11を参照すると、着脱式バスケットは、反応器17の有孔トレイ16の分配手段15上に配置されるのに適したものであることができ、着脱式バスケットは、有孔トレイ16の分配手段15と協働する支持手段18を備える。したがって、着脱式バスケットが分配手段15によって直接指示されていることを考慮して、取付けおよび分解操作も容易になる。
【0088】
第3の態様によれば、本明細書はまた、好ましくはトリクル形式(trickle regime)と呼ばれるフロー形式で、即ち0.1cm/秒~5cm/秒からなる液面速度を有する、気体および液体供給原料に対して動作する触媒反応器を供給するようにされた、気相および液相の濾過および分配デバイスに関する。
【0089】
図11に示されるように、液相および気相の濾過および分配デバイスは、並流気液下降流で動作する反応器17の固定触媒床19の上流側に配置することができる。この例では、反応器17の閉鎖容器(ジャケット)は、一般に円形断面を有する、壁20によって境界区分される。濾過および分配デバイスは、有孔トレイ16(分配器トレイ、固体トレイ、または固体プレートとも呼ばれる)を備え、その機能は、反応器17に入る二相ジェット流を、前記有孔トレイ16の下流側に位置する固定触媒床19の表面の上に均一に分配される気液混合物に変換することであり、任意に、1つまたは複数の濾過層を設けることによって濾過機能を組み込む。
【0090】
図11を参照すると、濾過および分配デバイスは有孔トレイ16を備え、その上に、有孔トレイ16を貫通する垂直なチムニーなどの分配手段15が締結される。例えば、分配手段15は、それらの上端部21では閉じ、それらの下端部22では開いており、および任意に、分配手段15の高さにわたって分配された横方向アパーチャ23で穿孔されていてよい。分配手段15に形成された横方向アパーチャ23は、スロットの形態であり得ることに留意されたい。各分配手段15はまた、気相の導入を可能にするために、閉じた上端部21の下方に載置される横方向開口部24を備える。
【0091】
1つまたは複数の実施形態によれば、有孔トレイ16は、反応器17の閉鎖容器に対応する断面を備える。例えば、反応器17が円形断面を有する場合、有孔トレイ16の断面の寸法は反応器17の内径の寸法に対応する。
【0092】
図11に示されるように、分配手段15の下端部22は、有孔トレイ16と同じ高さまたはその下方で、および固定触媒床19の上方で開いている。1つまたは複数の実施形態によれば、反応器はまた、有孔トレイ16の下方に配置された分散要素25(例えば、金属スクリーン)を備え、その機能は、分配手段15の下端部22から放出される気液混合物のジェット流を壊して分散させることである。分配手段15の上端部21は、上端部21に隣接した横方向開口部24を介して液相が導入されることは防ぐが、気相が上側部分の測部に入り込むことは可能にする、プレートなどのデフレクタ要素26で覆われることが注目される。
【0093】
図11に示されるように、濾過および分配デバイスはまた、有孔トレイ16の上方に配置され、それらによって支持される、第1の態様および/または第2の態様による複数の着脱式バスケットによって提供される濾過機能を組み込む。この例では、着脱式バスケットは、1つの同じ面内でいくつかの段で積み重ねられる(バスケットの最長縁部は互いに平行である)。着脱式バスケットはまた、有孔トレイ16の分配手段15と協働する支持手段18を備える。図11の例では、支持手段18は着脱式バスケットのベース1に対応し、その主な寸法(例えば、長さおよび幅、直径)は分配手段15よりも実質的に大きい。着脱式バスケットに対する支持機能とは別に、有孔トレイ16の分配手段15は、反応器17内に前記着脱式バスケットを取付ける間のガイド機能を提供することができる。
【0094】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットが、そのチムニーのうち1つが有孔トレイ16の分配手段15と位置合わせされるようにして配置されたとき、前記分配手段15のデフレクタ要素26は、着脱式バスケットのチムニーと分配手段15との間を気相流体が通過できるようにする開口部を備える。
【0095】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットのベース1、および/またはデフレクタ要素26は、互いに係合することによって、着脱式バスケットが有孔トレイ16に対して適所で確実に保持されるようにするのに適した、補完的な(雄/雌タイプの)位置決め要素をそれぞれ備える。
【0096】
1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットは、着脱式バスケットのチムニーが分配手段15に対してオフセットされるように配置される。したがって、着脱式バスケットのベースと有孔トレイ16との間の収集空間E内における、気体および液体の混合が容易になる。
【0097】
有利には、着脱式バスケットは、支持手段18が分配手段15と協働するように、列状に横に並べて位置決めすることができるので、着脱式バスケットを締結するねじなどの締結要素を使用することは必須ではない。支持手段18は着脱式バスケットの他の要素に対応し得ることが注目されるであろう。例えば、1つまたは複数の実施形態によれば、支持手段18は、分配手段15を着脱式バスケットのチムニーの下側部分7に挿入できるように、分配手段15と協働する着脱式バスケットの第1のチムニー3および第2のチムニー4のうち少なくとも1つを備える。1つまたは複数の実施形態によれば、着脱式バスケットのチムニー3および4の下側部分7に、分配手段15を載せるのに適した、内側に延在するオーバーハングを設けることができる。1つまたは複数の実施形態によれば、気体をより良好に通過させるために、分配手段15はデフレクタ要素26を有さないことができる。
【0098】
1つまたは複数の実施形態によれば、支持手段18は、特許文献4に示されるように規定することができる。1つまたは複数の実施形態によれば、支持手段18は、分配手段15と協働する着脱式バスケットの側壁2のうち少なくとも1つを備える。1つまたは複数の実施形態によれば、支持手段18は、着脱式バスケットのベース1に締結されたチューブ(図示なし)の形態で提供することができ、その直径は分配手段15の直径よりも実質的に大きい。チューブは、その上端部ではプレートによって閉じられ、その下端部では開いているので、チューブは有孔トレイ16の分配手段15を受け入れるのに適している。着脱式バスケットが取付けられると、それは着脱式バスケットのベース1に締結されたチューブのプレートを介して分配手段15に載る。更に、前記チューブの上端部に隣接した区画は、分配手段15の横方向開口部24と連通する開口部を備えることができ、分配手段15の上にチューブが設けられており、それによって気相フローがチューブ内を、次に有孔トレイ16の分配手段15を通過することが可能になっている。1つまたは複数の実施形態によれば、分配手段15はその高さにわたって分配されたアパーチャを備え、清浄にされた液相が着脱式バスケットから分配手段15内に入ることを可能にするために、チューブもその高さの少なくとも下半分にわたって、例えばその高さ全体にわたって多孔質である。1つまたは複数の実施形態によれば、支持手段18は、着脱式バスケットのベース1に締結された垂直アーム(図示なし)の形態で提供され、前記アームは、例えば、分配手段15の横方向開口部24の高さで、または分配手段の任意の高さで、分配手段15と協働するように構成された取付け手段を備える。
【0099】
図11に示されるように、着脱式バスケットの支持手段18および有孔トレイ16の分配手段15は、着脱式バスケットのベース1と有孔トレイ16との間に液相の収集空間E(液体混合区域Eとも呼ばれる)を作るように配置することができる。
【0100】
1つまたは複数の実施形態によれば、図11に示されるように、着脱式バスケットは、着脱式バスケットの少なくとも1つの段を分配手段15上に形成するように配置される。
1つまたは複数の実施形態によれば、図11に示されるように、濾過および分配デバイスの着脱式バスケットの全てを示す区画は、反応器17の区画全体を占有しない。実際には、いわゆる「周囲の」着脱式バスケットの濾過区域と反応器の壁20との間に、環状空間27があってもよい。この環状空間27によって、時間に伴って回収された様々な不純物によって濾過媒体Mが目詰まりしている状況であっても、液体が収集区域Eに入ることが可能になる。
【0101】
濾過機能が着脱式バスケットによって提供されなくなっている場合、有孔トレイ16はそれでもなお、液体混合区域E内に載置された分配手段15の横方向アパーチャ23を介して機能し続けることができる。この環状空間の幅は、トレイが完全に目詰まりした場合でも、圧力バランスが維持されるようにして確立される。1つまたは複数の実施形態によれば、環状区域27は、反応器の断面の2%~50%、例えば5%~20%に相当する。
【0102】
濾過および分配デバイスが反応器17内で利用される場合、着脱式バスケットは、不活性または活性であることができる、濾過媒体Mの1つまたは複数の層で充填される。例えば、濾過媒体Mの層は、一般に、100mm~1500mm、好ましくは300mmなどの150mm~500mmからなる高さにわたって、保護濾過要素と呼ばれる濾過要素を備えることができる。
【0103】
前記層を構成する濾過要素は、次のものであることができる。
【0104】
濾過添加物、
例えばAxensから市販されている、一般に保護要素として役立つ、ガード材料の粒子または他の任意の粒子、
触媒支持体または触媒(新しいもの、または使用済みのもの、または再生されたもの)。
【0105】
これらの濾過要素は、好ましくは、0.5~5mm、好ましくは1~3mmからなる粒径を有する、粒状触媒、ビーズまたは押出し物である。これらの触媒は、好ましくは、アルミナを含有する支持体上の遷移金属を含有する活性相で構成される。濾過要素は、例えばUnicatもしくはCrystaphaseによって市販されている、例えば架橋セラミックまたは金属材料など、供給原料に含まれる目詰まりする粒子を保持することができる、任意の材料を含むことができる。
【0106】
これらの架橋材料は、直径3~5cmの円形断面を有し、1~3cmからなる高さを有するケークの形態で提供することができる。濾過要素は、例えば、ビーズ、多葉の円柱、単純な円柱、中空のまたは車輪の形態のチューブなど、異なる形態であることができることに留意されたい。
【0107】
ほとんどの場合、100mm~1500mm、好ましくは300mmなどの150mm~500mmからなる厚さを有する層など、着脱式バスケット1つ当たり単一層の濾過媒体で十分である。しかしながら、所与の層の濾過要素のサイズが直上の層を構成する濾過要素よりも小さい、着脱式バスケット1つ当たり複数層の濾過媒体を使用することができる。
【0108】
1つまたは複数の実施形態によれば、例えば、着脱式バスケットのベース1の閉塞、または着脱式バスケットの有孔ベース1が微細すぎるのを回避するために、非常に微細な触媒を使用する場合、バスケットのベース1と接触している層は、例外的に、バスケットの上方に配置される濾過媒体の層よりも多孔質であることができる。1つまたは複数の実施形態によれば、特に粒子の混合および分離を回避するために、ベースと接触している層の直径は、上層の直径の2~10倍、例えば4倍よりも大きい。
【0109】
気相および液相を有する並流下降流反応器17に設置された濾過および分配デバイスの動作について、図11を参照して以下に述べる。一般に、第3の態様による濾過および分配デバイスは、触媒床19の上流側(流体のフロー方向で)に位置決めされる。気液二相の供給原料が、反応器17に沿って互い違いにされた異なる触媒床に段階的に導入された場合、濾過および分配デバイスを触媒床それぞれの上流側に位置決めすることが可能である。気液混合物は、矢印G/Lによって示されるように、濾過および分配デバイスのヘッドに送られる。混合物の気相画分は、着脱式バスケットのチムニー3および4を(また任意に、支持手段18がチューブの形態で提供される場合、チューブの上側開口部を)通過した後、横方向開口部24を介して分配手段15に入り、次に有孔トレイ16の下方に方向付けられる。
【0110】
デフレクタ要素26(図11を参照)によって分配手段15の上側部分に入り込まないようにされる液体画分の場合、着脱式バスケットに収集され、着脱式バスケットに収容された濾過媒体Mの1つまたは複数の層を通って浸出する。液相を濾過媒体Mと接触させることによって、触媒床の汚損に関与する粒子を保持することができるので、着脱式バスケットのベース1のアパーチャを通って拡散する「清浄な」液体が供給される。このように、清浄な液体は収集空間Eに収集される。収集空間Eに蓄積された清浄な液体は、次に、この空間内に向かって開いた開口部23を介して分配手段15内へと拡散し、分配手段15内で循環する気相と混合される。清浄な気液混合物は、分配手段15から、有孔トレイ16の下方にある下端部22を介して排出される。次に、気液混合物のジェット流が、触媒床19と有孔トレイ16との間に配置された1つまたは複数の分散要素25に達すると分散される。
【0111】
図12に示されるように、着脱式バスケットは、段が互いに平行であるが互いからオフセットされるようにして積み重ねることができる。このように、着脱式バスケットの段の構造的完全性が補強される。それに加えて、着脱式バスケットの各段のチムニーが着脱式バスケットの隣接する段のチムニーと位置合わせされるように、着脱式バスケットを配置することによって、図12では、着脱式バスケットの段を通る優先的な気体経路28の形成を示すことも可能になっている。したがって、反応器17の中央部における気体の分配が促進されて、触媒床内における相のフローの均一性が改善される。それに加えて、濾過床が閉塞された場合、液体は壁およびチムニーに沿って戻り、次に着脱式バスケットのチムニー内へと気体とともに流れ込んで、有孔トレイ16の下方における流体分布のバランスを保存することができる。第1のチムニー3の上側部分8が別の着脱式バスケットのチムニーの下側部分7に挿入するのに適しているという条件で、優先的な気体経路28の形成が得られることが注目されるであろう。
【0112】
図13に示されるように、1つの同じ段の着脱式バスケットを、隣接した段の着脱式バスケットに垂直な構成で配置することもでき、特に、着脱式バスケットの段の構造的完全性を補強することが可能になる。それに加えて、かかる構成によって、図13の例に示されるように、
第1の段29が44個の着脱式バスケットを備え、
第2の段30が、第1の段29の着脱式バスケットに対して垂直に配置された、35個の着脱式バスケットを備え、
第3の段31が、第2の段30の着脱式バスケットに対して垂直に配置された、27個の着脱式バスケットを備え、
第4の段32が、第3の段31の着脱式バスケットに対して垂直に配置された、20個の着脱式バスケットを備える、着脱式バスケットの段のピラミッド状の配置が可能になる。
【0113】
このように、かかるピラミッド状の配置によって、図11に模式的に示されるように、反応器17の上側ベースの下方にある空間に着脱式バスケットを配置することが可能になるので、空間利得が得られる。
【0114】
第4の態様によれば、本明細書はまた、流体のフロー方向で、固定触媒床と、触媒床の上流側に配置された第3の態様による気相および液相の濾過および分配デバイスとを備える、並流気液下降流で動作するのに適した、反応器17に関する。
【0115】
1つまたは複数の実施形態によれば、反応器17は楕円形または半球形のタイプのものであることができる。図11の例では、反応器17の上側ベースは、気体および液体状の流体の取込みを可能にする所定の直径を有する入口管材を備え、一般に、供給原料ディフューザ(図示なし)を備える。入口管材は、任意に、個人が着脱式バスケットにアクセスするのが容易になるように、検査用ハッチ(図示なし)上に設けることができる。反応器17の下側ベース(図示なし)は、流体の流出を可能にする所定の直径を有する出口管材(図示なし)を備え、一般に、流出収集器(図示なし)を備える。反応器17のジャケットは内部部品を、特に濾過および分配デバイスを備える。反応器17の触媒床19は分散要素25の下方に載置される。
【0116】
第5の態様によれば、本明細書による着脱式バスケット、濾過および分配デバイス、ならびに反応器17は、特に、炭化水素含有供給原料の総重量に対して少なくとも0.5重量%の硫黄含量、および/または少なくとも300℃の初期沸点、および/または少なくとも500℃の最終沸点を有する炭化水素の少なくとも1つの画分を含有する、炭化水素含有供給原料の水素化処理および/水素化分解に適用することができる。1つまたは複数の実施形態によれば、炭化水素含有供給原料は、炭化水素含有供給原料の総重量に対して1~2重量%または2~4重量%など、少なくとも1重量%の硫黄、少なくとも350℃の初期沸点、および少なくとも540℃など、少なくとも520℃の最終沸点という特性のうち少なくとも1つを含む。1つまたは複数の実施形態によれば、有孔トレイ16を用いて処理することができる炭化水素含有供給原料は、特に沸点が350℃超であり、特に、減圧留出物タイプのもの、残油もしくは類似のもの、減圧ガス油、常圧残油、減圧残油、脱アスファルト油、あるいは更には、例えばコーキング、固定床、沸騰床、または移動床による水素化処理もしくは水素化分解などの変換方法に由来する、残油もしくは減圧留出物として定義することができる。これら全てのタイプの残油または減圧留出物は、単体または混合物であることができる。これらの重質供給原料は、そのままで、または炭化水素画分もしくは炭化水素画分の混合物で希釈して使用することができる。本明細書が関連する重質供給原料はまた、石炭液化方法由来の留分、芳香族系抽出物由来の留分、または他の任意の炭化水素留分を含むことができる。
【0117】
1つまたは複数の実施形態によれば、水素化処理方法および/または水素化分解方法は、350℃~430℃などの300℃~500℃からなる温度で、および11MPa~26MPaなどの5MPa~35MPaからなる絶対圧力下で実現される。1つまたは複数の実施形態によれば、炭化水素含有供給原料の体積流量を触媒の総量で割ったものとして定義される、炭化水素含有供給原料の単位時間当たりの空間速度は、0.1~2h-1など、0.1h-1~5h-1の範囲内からなる。1つまたは複数の実施形態によれば、炭化水素含有供給原料と混合される水素の量は、200~2000Nm/mなど、炭化水素含有供給原料1立方メートル(m)当たり100~5000ノーマル立方メートル(Nm)からなる。
【実施例
【0118】
本明細書による着脱式バスケットと濾過および分配デバイスの寸法決めに関する実例を以下に記載する。
【0119】
着脱式バスケットの寸法は次の通りである。
【0120】
L:300mm;
I:150mm;
Hp:100mm。
【0121】
各着脱式バスケットの長方形のベース1は、下端部および上端部で開いている円形チューブの形態のチムニーが上に載せられ、2つのアパーチャを備える。着脱式バスケットのチムニーの寸法は次の通りである。
【0122】
H3:180mm;Hp+h1
H4:120mm;Hp+h2
h1:80mm;
H1:100mm;
h2:20mm;
H2:100mm;
d1:50mm;
D1:60mm;
d2:50mm;
D2:60mm。
【0123】
着脱式バスケットは、したがって、例えば2つの異なる層のうち1つからなる濾過媒体Mを収容することができ、その合計厚さは着脱式バスケットのベースから測定して80mmである。
【0124】
680個の垂直なチムニーを支持する有孔トレイ16の特性は、次の通りである。
【0125】
有孔トレイ16の直径:5.5m。
【0126】
有孔トレイ16の垂直なチムニーの寸法は次の通りである。
【0127】
有孔トレイ16のチムニーの高さ:有孔トレイから440mm;
有孔トレイ16のチムニーの外径:50mm;
有孔トレイ16のチムニー間のピッチ:150mm。
【0128】
有孔トレイ16のチムニーは、液体を取り込むための二列のアパーチャを備える。
【0129】
アパーチャ列1:有孔トレイ16に対する高さ40mm、3個の5mmの穴;
アパーチャ列2:有孔トレイ16に対する高さ130mm、3個の5mmの穴;
気体取込みチムニーの頂部にある気体通過用の開口部:50mm。
【0130】
デバイスはまた、有孔トレイ16のチムニー上に配置することができる、長方形断面を有する65個の着脱式バスケットを備える。これらの例では、着脱式バスケットは、有孔トレイ16のチムニー上に置かれたベース1を介して支持される。
【0131】
これらの例では、着脱式バスケットは直方体であり、チムニー3および4は円形断面を有するチューブである。着脱式バスケットならびにチムニー3および4はそれぞれ、三角形、正方形、多角形、または円形の断面を有するバスケット、ならびに/あるいは楕円形または多角形の断面を有する(例えば、三角形、長方形などの断面を有する)チューブなど、他の形状を有し得ることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13