(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】基板保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230427BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
H01L21/68 P
B65G49/07 E
(21)【出願番号】P 2019027627
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 教夫
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-304071(JP,A)
【文献】特開2005-116842(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0020580(KR,A)
【文献】特開2014-011378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される載置面をそれぞれ有し、隣り合う複数の載置部材と、
前記複数の載置部材のうち少なくとも2つの載置部材を昇降させる昇降部と、
前記複数の載置部材のそれぞれに形成され、前記載置面側にて一端が開口する排気経路と、
前記排気経路の他端に接続され、前記排気経路内を排気する排気部と、
前記昇降部及び前記排気部を制御する制御部とを備え
、
前記少なくとも2つの載置部材は第1の載置部材と、前記第1の載置部材の載置面と隣り合う載置面を有する第2の載置部材とを含み、
前記制御部は、少なくとも前記第1の載置部材に形成された前記排気経路内を排気して前記第1の載置部材の載置面に前記基板が接触する状態が維持されるように前記排気部を制御しながら、前記第2の載置部材の載置面に前記基板を接触するように前記第1の載置部材又は前記第2の載置部材の何れか少なくとも一方を昇降させるように前記昇降部を制御した後、少なくとも前記第1及び第2の載置部材に形成された前記排気経路内を排気して前記第1及び第2の載置部材の載置面に前記基板が接触する状態が維持されるように前記排気部を制御しながら、前記第2の載置部材の載置面が前記第1の載置部材の載置面と高さが揃うように前記第2の載置部材又は前記第1の載置部材の何れか少なくとも一方を昇降させるように前記昇降部を制御し、
前記少なくとも2つの載置部材はさらに前記第2の載置部材の載置面と隣り合う載置面を有する第3の載置部材を含み、
前記制御部は、少なくとも前記第1及び第2の載置部材に形成された前記排気経路内を排気して、前記第1及び第2の載置部材の載置面に前記基板が接触する状態が維持されるように前記排気部を制御しながら、前記第1及び第2の載置部材又は前記第3の載置部材の何れか少なくとも一方を昇降させて前記第3の載置部材の載置面に前記基板を接触させた後、少なくとも前記第1、第2及び第3の載置部材に形成された前記排気経路内を排気して前記第1、第2及び第3の載置部材の載置面に前記基板が接触する状態が維持されるように前記排気部を制御しながら、前記第3の載置部材の載置面が前記第1及び第2の載置部材の載置面と高さが揃うように前記第3の載置部材又は前記第1及び第2の載置部材の何れか少なくとも一方を昇降させるように前記昇降部を制御することを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記第3の載置部材の載置面が前記第1及び第2の載置部材の載置面と高さが揃ったときに、前記第3の載置部材の載置面は、その一部の外周側において前記第1及び第2の載置部材の載置面のどちらとも隣り合っていないことを特徴とする請求項
1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
隣り合う2つの前記載置部材の載置面の高さが揃ったときに、当該隣り合う2つの前記載置部材の載置面の間には隙間が存在することを特徴とする請求項
1又は2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記排気部は、前記複数の載置部材のそれぞれに形成された前記排気経路の全てに接続されていることを特徴とする請求項
1から3の何れか1項に記載の基板保持装置。
【請求項5】
基板が載置される載置面をそれぞれ有し、隣り合う複数の載置部材と、
前記複数の載置部材のうち少なくとも2つの載置部材を昇降させる昇降部と、
前記複数の載置部材のそれぞれに形成され、前記載置面側にて一端が開口する排気経路とを備え、
前記複数の載置部材は、前記載置面と前記載置面の反対側の裏面と前記載置面及び前記裏面を接続する側面を有する板状であり、
少なくとも1つの前記載置部材の側面は、隣り合う他の前記載置部材と前記載置面側の端部において近接する近接部と、当該隣り合う他の載置部材との間に前記近接部における隙間よりも広い隙間を形成して離間する離間部とを有することを特徴とす
る基板保持装置。
【請求項6】
前記排気経路の他端に接続され、前記排気経路内を排気する排気部を備え、
前記排気部は、前記複数の載置部材のそれぞれに形成された前記排気経路の全てに接続されていることを特徴とする請求項5に記載の基板保持装置。
【請求項7】
隣り合う2つの前記載置部材の載置面は、同心円状に分割された2つの円環状又は同心円状に分割された円状と円環状であることを特徴とする請求項1から
6の何れか1項に記載の基板保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置において半導体ウエハなどの基板を吸着して保持する基板保持装置が知られている。このような基板保持装置においては、皺や反りなどがないように基板を面一に保持する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、ステージ(基材)に複数の貫通孔(排気経路)を設け、ウエハ(基板)の反りの態様に応じて、貫通孔を介したウエハの吸着順序を制御する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、多数のリフトピン(凸部)を保持面に対して昇降可能とすると共にリフトピンに吸引孔を設けた技術が開示されている。この技術においては、基板の反りを検出し、この検出結果に基いて昇降可能なリフトピンの昇降と吸引動作を制御している。
【0005】
また、特許文献3には、多数の突起(凸部)の先端面である保持面に基板を保持する基材において、中央部に昇降可能なパッドを、周縁部に複数の伸縮可能な矯正用パッドをそれぞれ設けた技術が開示されている。この技術においては、吸着させた基板が保持面で保持されるよう中央部のパッドを昇降させ、矯正用パッドの保持面に基板が密着するように、矯正用パッドにおいて排気による吸着を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-58191号公報
【文献】特開2013-191601号公報
【文献】国際公開第03/071599号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術においては、基板の反りが大きい場合、基板と基材との間隔が広い部分が生じるため、この部分において基板を吸着することが困難であるという課題があった。
【0008】
また、上記特許文献2に開示された技術においては、リフトピンの先端面に基板を吸着させた状態でのリフトピンを降下させることによって、基板の反りの解消を図っている。そのため、リフトピンの先端の狭い面でしか吸着されていないため、基板の吸着面以外の部分において自重変形が起こりやすく、基板を降下させる際に、この保持した吸着面の周囲部分において基板に皺が発生するおそれがあるという課題があった。
【0009】
また、上記特許文献3に開示された技術においては、矯正用パッドに基板を密着させることによって、基板の反りの解消を図っている。そのため、矯正用パッドの狭い保持面でしか吸着されないので、基板の吸着面以外の部分において自重変形が起こりやすく、この保持面の周囲部分において基板に皺が発生するおそれがあるという課題があった。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、基板の皺のない面一な保持が図られ得る基板保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1及び第2の発明に係る基板保持装置は、基板が載置される載置面をそれぞれ有し、隣り合う複数の載置部材と、前記複数の載置部材のうち少なくとも2つの載置部材を昇降させる昇降部と、前記複数の載置部材のそれぞれに形成され、前記載置面側にて一端が開口する排気経路とを備える。
【0012】
本発明の第1及び第2の発明に係る基板保持装置によれば、載置部材の昇降及び排気経路内の排気により基板を吸着する載置面の順序を適宜なものとすることにより、様々な態様の反りや撓みを有した基板の皺のない面一な保持を図ることが可能となる。さらに、基板を保持する載置面は隣り合っているので、載置面間の距離の短縮化が図られ、載置面間の撓みなどによって基板に発生する皺の抑制を図ることが可能となる。
【0013】
本発明の第1の発明に係る基板保持装置において、前記排気経路の他端に接続され、前記排気経路内を排気する排気部と、前記昇降部及び前記排気部を制御する制御部とを備え、前記少なくとも2つの載置部材は第1の載置部材と、前記第1の載置部材の載置面と隣り合う載置面を有する第2の載置部材とを含み、前記制御部は、少なくとも前記第1の載置部材に形成された前記排気経路内を排気して前記第1の載置部材の載置面に前記基板が接触する状態が維持されるように前記排気部を制御しながら、前記第2の載置部材の載置面に前記基板を接触するように前記第1の載置部材又は前記第2の載置部材の何れか少なくとも一方を昇降させるように前記昇降部を制御した後、少なくとも前記第1及び第2の載置部材に形成された前記排気経路内を排気して前記第1及び第2の載置部材の載置面に前記基板が接触する状態が維持されるように前記排気部を制御しながら、前記第2の載置部材の載置面が前記第1の載置部材の載置面と高さが揃うように前記第2の載置部材又は前記第1の載置部材の何れか少なくとも一方を昇降させるように前記昇降部を制御する。
【0014】
これにより、第1の載置部材の載置面に基板が吸着された状態において、第1及び第2の載置部材の少なくとも一方を昇降させて、第2の載置部材の載置面に基板を接触させた状態で排気経路内を排気して当該載置面に基板を吸着した状態で第1及び第2の載置部材の載置面の高さが揃うまで第1及び第2の載置部材の少なくとも一方を昇降させるように制御される。これにより、第1及び第2の載置部材の載置面に基板を面一に保持することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明の第1の発明に係る基板保持装置において、前記少なくとも2つの載置部材はさらに前記第2の載置部材の載置面と隣り合う載置面を有する第3の載置部材を含み、前記制御部は、少なくとも前記第1及び第2の載置部材に形成された前記排気経路内を排気して、前記第1及び第2の載置部材の載置面に前記基板が接触する状態が維持されるように前記排気部を制御しながら、前記第1及び第2の載置部材又は前記第3の載置部材の何れか少なくとも一方を昇降させて前記第3の載置部材の載置面に前記基板を接触させた後、少なくとも前記第1、第2及び第3の載置部材に形成された前記排気経路内を排気して前記第1、第2及び第3の載置部材の載置面に前記基板が接触する状態が維持されるように前記排気部を制御しながら、前記第3の載置部材の載置面が前記第1及び第2の載置部材の載置面と高さが揃うように前記第3の載置部材又は前記第1及び第2の載置部材の何れか少なくとも一方を昇降させるように前記昇降部を制御する。
【0016】
これにより、第1及び第2の載置部材の載置面に加えて第3の載置部材の載置面にも基板を面一に保持することが可能となる
【0017】
また、本発明の第1の発明に係る基板保持装置において、前記第3の載置部材の載置面が前記第1及び第2の載置部材の載置面と高さが揃ったときに、前記第3の載置部材の載置面は、その一部の外周側において前記第1及び第2の載置部材の載置面のどちらとも隣り合っていないことが好ましい。
【0018】
この場合、第3の載置部材の載置面がその一部の外周側において第1及び第2の載置部材載置面と隣り合っておらず、開放されているので、この一部の外周側に基板の撓みが逃げることが可能になり、基板に皺が発生することの抑制を図ることが可能となる。
【0019】
また、本発明の第1及び第2の発明に係る基板保持装置において、隣り合う2つの前記載置部材の載置面の高さが揃ったときに、当該隣り合う2つの前記載置部材の載置面の間には隙間が存在することが好ましい。
【0020】
この場合、載置面の間には隙間が存在しているので、隣り合う載置面が接触してパーティクルなどが発生して基板を汚染することの防止を図ることが可能となる。ただし、載置面の間には隙間が存在していなくともよい。
【0021】
また、本発明の第2の発明に係る基板保持装置において、前記複数の載置部材は、前記載置面と前記載置面の反対側の裏面と前記載置面及び前記裏面を接続する側面を有する板状であり、少なくとも1つの前記載置部材の側面は、隣り合う他の前記載置部材と前記載置面側の端部において近接する近接部と、当該隣り合う他の載置部材との間に前記近接部における隙間よりも広い隙間を形成して離間する離間部とを有している。
【0022】
これにより、隣り合う載置部材が接触してパーティクルなどが発生して基板を汚染するおそれがあるが、隙間が小さな近接部によって載置面の面積の確保を図りながら、隙間が大きな離間部によって載置部材の接触の防止を図ることが可能となる。
【0023】
また、本発明の第1の発明に係る基板保持装置において、前記排気部は、前記複数の載置部材のそれぞれに形成された前記排気経路の全てに接続されていることが好ましい。
【0024】
この場合、排気部の構成及び制御の簡易化を図ることが可能となる。
【0025】
また、本発明の第1及び第2の発明に係る基板保持装置において、隣り合う2つの前記載置部材の載置面は、同心円状に分割された2つの円環状又は同心円状に分割された円状と円環状であることが好ましい。
【0026】
この場合、例えば、中央部から外周側に向って、載置面に基板を順次吸着することにより、中央部が上方又は下方に凸状に反った基板の皺のない面一な保持を図ることが可能となる。
【0027】
本発明の参考態様に係る基板保持方法は、基板が載置される載置面をそれぞれ有し、隣り合う複数の載置部材と、前記複数の載置部材にそれぞれ形成され、前記載置面にて一端が開口する排気経路とを備える基板保持装置を用いた基板保持方法であって、前記排気経路内のそれぞれを排気させながら、前記複数の載置部材のうち少なくとも2つの載置部材をそれぞれ独立して昇降させることにより、前記複数の載置部材の載置面に前記基板を保持することを特徴とする。
【0028】
本発明の参考態様に係る基板保持方法によれば、載置部材の昇降及び排気経路内の排気により基板を吸着する載置面の順序を適宜なものとすることにより、様々な態様の反りや撓みを有した基板の皺のない面一な保持を図ることが可能となる。さらに、基板を保持する載置面は隣り合っているので、載置面間の距離の短縮化が図られ、載置面間の撓みなどによって基板に発生する皺の抑制を図ることが可能となる。
【0029】
本発明の参考態様に係る基板保持方法において、前記少なくとも2つの載置部材は第1の載置部材と、前記第1の載置部材の載置面と隣り合う載置面を有する第2の載置部材とを含み、前記第1の載置部材の載置面に前記基板が接触する状態が維持されるよう、前記第1の載置部材に形成された前記排気経路内を排気しながら、前記第1の載置部材又は前記第2の載置部材の何れか少なくとも一方を昇降させて前記第2の載置部材の載置面に前記基板を接触させた後、前記第1及び第2の載置部材の載置面に前記基板が接触する状態が維持されるよう、少なくとも前記第1及び第2の載置部材に形成された前記排気経路内を排気しながら、前記第2の載置部材の載置面が前記第1の載置部材の載置面と高さが揃うように前記第2の載置部材又は前記第1の載置部材の何れか少なくとも一方を昇降させることが好ましい。
【0030】
この場合、第1の載置部材の載置面に基板が吸着された状態において、第1及び第2の載置部材の少なくとも一方を昇降させて、第2の載置部材の載置面に基板を接触させた状態で排気経路内を排気して当該載置面に基板を吸着した状態で第1及び第2の載置部材の載置面の高さが揃うまで第1及び第2の載置部材の少なくとも一方が昇降される。これにより、第1及び第2の載置部材の載置面に基板を面一に保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係る基板保持装置の模式上面図。
【
図3】中央部が下方に凸となるように撓んでいる基板を保持する際の載置面の昇降を説明する図。
【
図4】中央部が上方に凸となるように撓んでいる基板を保持する際の載置面の昇降を説明する模式図。
【
図5】本発明の実施形態の変形に係る基板保持装置を説明する図。
【
図6】本発明の実施形態の他の変形に係る基板保持装置を説明する図。
【
図7】本発明の実施形態の変形に係る基板保持装置の載置部材の拡大模式図。
【
図8】本発明の実施形態の別の変形に係る基板保持装置を説明する図。
【
図9】本発明の実施形態のさらに別の変形に係る基板保持装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態に係る基板保持装置100について図面を参照して、説明する。なお、全ての図面において、基板保持装置100の構成を明確化するため、各構成要素はデフォルメされており、実際の比率を表すものではない。
【0033】
基板保持装置100は、
図1に示すように、基板Wが載置される載置面10a
1~10a
4をそれぞれ有し、隣り合う複数の載置部材10
1~10
4と、複数の載置部材10
1~10
4を昇降させる昇降部20
1~20
4と、複数の載置部材10
1~10
4にそれぞれに形成され、載置面10a
1~10a
4側にて一端が開口する排気経路10b
1~10b
4とを備えている。
【0034】
なお、ここでは、載置部材101~104、並びに各載置部材101~104が有する載置面10a1~10a4及び排気経路10b1~10b4、さらに、各載置部材101~104に対応する昇降部201~204は4個ずつである。ただし、これらの個数は4個に限定されず、2個以上の複数であればよい。基板Wは、例えば、Si製ウエハであるが、薄板形状であれば、これに限定されない。
【0035】
基板Wを載置する載置面は、4個の載置面10a1~10a4に分割されており、ここでは、載置面10a1~10a4は同心円状に配置されている。具体的には、円形状の載置面10a1が中央に位置し、この載置面10a1の外側に円環状の載置面10a2が隣接し、この載置面10a2の外側に円環状の載置面10a3が隣接し、さらに、この載置面10a3の外側に円環状の載置面10a4が隣接している。ただし、載置面10a1~10a4の形状は、同心円状に限定されない。
【0036】
隣接する載置面10aiと載置面10ai+1(ただし、i=1~3)は接触していても、非接触であってもよい。すなわち、隣り合う載置面10aiと載置面10ai+1との間に隙間が無くとも、又は全周に亘って又は部分的に隙間があってもよい。ただし、隣り合う、載置面10ai,10ai+1の間に隙間が存在する場合、これらの載置面10ai,10ai+1が接触してパーティクルなどが発生することによる基板Wの汚染防止を図ることが可能であるので好ましい。
【0037】
各載置面10a1~10a4は、広い平面状の面であっても、複数の凸部の面一な先端面の群からなるものであってもよい。複数の凸部の面一な先端面の群は、例えば、多数のピン(凸部)の面一な先端面の群、又は、環状などの複数のリブ(凸部)の先端面であってもよい。
【0038】
各載置部材101~104で基板Wを吸着させるため、各載置面10a1~10a4を多数のピンの面一な先端面の群と当該先端面の群を取り囲む環状のリブの先端面からなるものとすることが好ましい。このとき、リブの先端面はピンの先端面より低くてもよい。
【0039】
各昇降部201~204は、各載置部材101~104を独立して基台40に対して昇降させることが可能に構成されている。ここでは、各昇降部201~204は、空気式、油圧式、電気式シリンダなどのアクチュエータであり、昇降部201~204のロッドのそれぞれの先端に載置部材101~104が固定されている。ただし、昇降部201~204は電動モータなどによって駆動されるリニア駆動機構であってもよい。なお、図示しないが、単一の昇降部が離れている載置部材を同時に昇降させてもよい。ただし、本実施形態においては、離れていても、常に同時に昇降する載置部材は単一の載置部材であると考える。
【0040】
各載置部材101~104及び基台40は、例えば、酸化物、炭化物又は窒化物等からなるセラミックス焼結体からなることが好ましい。具体的には、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素、炭化珪素等からなるセラミックス焼結体からなることが好ましい。ただし、各載置部材101~104及び基台40の材質はセラミックス焼結体に限定されず、また、これらの材質が互いに異なるものであってもよい。
【0041】
各排気経路10b
1~10b
4は、例えば、各載置部材10
1~10
4の載置面10a
1~10a
4側(
図1における上面側)に形成された開口と載置面10a
1~10a
4とは反対側(
図1における下面側)に形成された開口とを連通する通路からなるものである。なお、
図1では、各載置部材10
1~10
4に複数の排気経路10b
1~10b
4を形成しているが、各載置部材10
1~10
4に少なくとも1つ以上の排気経路10b
1~10b
4が形成されていればよい。また、図示しないが、載置部材10
1~10
4が多孔質からなる場合、各排気経路10b
1~10b
4は、孔の連続によって載置面10a
1~10a
4側と載置面10a
1~10a
4と反対側が連通しているものであってもよい。この場合、載置部材10
1~10
4の側面は封孔等のリークが起こらないような措置を行う必要がある。
【0042】
基板保持装置100は、さらに、排気経路10b1~10b4の他端に接続され、排気経路10b1~10b4内を排気する排気部50を備えている。排気部50は、例えば、真空ポンプである。そして、基板保持装置100は、排気経路10b1~10b4にそれぞれ連通され、排気部50に接続された排気路511~514と、排気路511~514にそれぞれ設けられた開閉弁521~524と、排気路511~514にそれぞれ設けられた図示しないセンサとを備えている。
【0043】
制御部30が昇降部201~204及び排気部50の運転及び各開閉弁521~524の開閉を制御する。前記センサは、例えば圧力センサや流量センサであり、排気路511~514内が負圧であるか否かを検出することが可能なセンサである。
【0044】
このように、排気部50は、載置部材101~104にそれぞれ形成された排気経路10b1~10b4に接続されているので、排気部50を共通化することが可能となり、構成の簡素化を図ることが可能となる。ただし、排気部50は、排気路511~514毎に設けてもよい。また、排気路511~514は、載置部材101~104の昇降に伴って独立して伸縮可能なようにテレスコープ式や蛇腹式などの伸縮部を有している。
【0045】
上述のように構成されている場合、載置面10ai(i=1~4)に基板Wを吸着させるとき、排気部50を運転させた状態で、開閉弁52iを開放する。そして、前記センサによって排気路51iが負圧であることを検出した場合、排気経路10biの載置面10ai側の出口が基板Wで覆われており、載置面10aiに基板Wが吸着されていると、制御部30は判定する。
【0046】
このような基板保持装置100において、制御部30が、昇降部201~204による載置部材101~104の載置面10a1~10a4の昇降及び排気経路10b1~10b4内の排気に係る制御を適宜行うことによって、基板Wを適宜な順序で載置面10a1~10a4に吸着させることにより、様々な態様の撓みや反りを有する基板Wの皺のない面一な保持を図ることが可能となる。さらに、基板Wを保持する載置面10aiは隣り合っているので、載置面10ai間の距離の短縮化が図られ、載置面10ai間の撓みなどによって基板に発生する皺の抑制を図ることが可能となる。
【0047】
例えば、制御部30は、隣り合う載置面10ai,10ai+1を有する2つの載置部材10i,10i+1(i=1~4)の関係において、載置部材10iに形成された排気経路10bi内を排気して載置面10aiに基板Wが接触する状態が維持されるように排気部50及び開閉弁52iを制御しながら、載置面10i+1に基板Wを接触するように載置部材10i又は載置部材10i+1の何れか少なくとも一方を昇降させるように昇降部20i又は昇降部20i+1を制御した後、少なくとも排気経路10bi,10bi+1内を排気して載置面10ai,10ai+1に基板Wが接触する状態が維持されるように排気部50を制御しながら、載置面10ai+1が載置面10aiと高さが揃うように載置部材10i又は載置部材10i+1の何れか少なくとも一方を昇降させるように昇降部20i又は昇降部20i+1を制御する。
【0048】
これによれば、載置面10aiに基板Wが保持された状態において、載置面10aiと隣り合う載置面10ai+1が基板Wと接触するように載置部材10iと載置部材10i+1の少なくとも一方を昇降させて、載置面10ai+1にも基板Wを吸着させた状態で載置面10aiと載置面10ai+1の高さが揃うまで載置部材10iと載置部材10i+1の少なくとも一方が昇降される。これにより、面一になった載置面10ai,10ai+1に基板Wが吸着された状態となる。なお、以上の説明において、載置部材10iが本発明の第1の載置部材に相当し、載置部材10i+1が本発明の第2の載置部材10に相当する。
【0049】
さらに、載置面10a1~10ai(ただし、ここでは、iは2以上3以下)において既に基板Wの一部が吸着されている場合、これら載置面10a1~10iと、当該の載置面10a1~10iの少なくとも1つの載置面と隣接する載置面10ai+1との関係において、制御部30は、例えば、以下の制御を行う。
【0050】
制御部30は、排気経路10b1~10bi内を排気して、載置面10a1~10aiに基板Wが接触する状態が維持されるように排気部50及び開閉弁521~52iを制御しながら、載置部材101~10i又は載置部材10i+1の何れか少なくとも一方を昇降させて載置面10ai+1に基板Wを接触させる。その後、少なくとも排気経路10b1~10bi+1内を排気して載置面10a1~10ai+1に基板Wが接触する状態が維持されるように排気部50及び開閉弁521~52i+1を制御しながら、載置面10a1~10ai+1の高さが揃うように載置部材101~10i又は載置部材10i+1の何れか少なくとも一方を昇降させるように昇降部201~20i又は昇降部20i+1を制御する。
【0051】
これにより、面一になった載置面10a1~10ai+1に基板Wが吸着された状態となる。なお、以上の説明において、載置部材10i-1が本発明の第1の載置部材に相当し、載置部材10iが本発明の第2の載置部材10に相当し、載置部材10i+1が本発明の第3の載置部材に相当する。
【0052】
本実施形態では、基板Wの反りの態様によって、例えば、以下の2つの場合が想定される。
【0053】
第1の場合として、
図3Aに示すように、基板Wの中央部が下方に凸となるように撓んでいる場合、基板Wは中央部に位置する載置面10a
1に最初から接触している。そして、この状態で、排気通路10b
1内を排気して、載置面10a
1に基板Wを吸着させる。このとき、載置面10a
1の高さを初期高さから変更しなくてもよいが、載置面10a
1の高さを初期高さから上昇させてもよい。
【0054】
そして、次に、
図3Bに示すように、載置面10a
1の外周側にて隣接する載置面10a
2を基板Wに接触させるまで上昇させる。この上昇は、排気通路10b
2内を排気しながら行う。載置面10a
2が基板Wに接触すると、基板Wが載置面10a
2に吸着される。そして、
図3Cに示すように、基板Wが吸着した状態を維持しながら、載置面10a
2の高さが載置高さ(載置面10a
1と同じ高さ)に揃うように載置面10a
2を下降させる。これにより、
図3Dに示すように、面一である載置面10a
1,10a
2に基板Wが吸着された状態となる。
【0055】
そして、上述した載置面10a2に係る排気動作や昇降動作などを載置面10a3、載置面10a4に関して同様に順次行う。これにより、面一となった載置面10a1~10a4に基板Wが面一に吸着された状態となる。
【0056】
第2の場合として、
図4Aに示すように、基板Wの中央部が上方に凸となるように撓んでいる場合、最初、基板Wは載置面10a
1に接触していない。そのため、
図4Bに示すように、載置面10a
1の高さを初期高さから上昇させる。この上昇は、排気通路10b
1内を排気しながら行う。載置面10a
1が基板Wに接触すると、基板Wが載置面10a
1に吸着される。なお、図示しないが、このとき載置面10a
4と基板Wとの接触が解消されてもよい。
【0057】
そして、次に、
図4Cに示すように、載置面10a
1の外周側にて隣接する載置面10a
2を基板Wに接触させように上昇させる。この上昇は、排気通路10b
2内を排気しながら行う。載置面10a
2が基板Wに接触すると、基板Wが載置面10a
2に吸着される。そして、
図4Dに示すように、基板Wが吸着した状態を維持しながら、載置面10a
2の高さが載置高さ(載置面10a
1と同じ高さ)に揃うように載置面10a
2を上昇させる。これにより、
図4Eに示すように、面一となった載置面10a
1,10a
2に基板Wが吸着された状態となる。
【0058】
そして、上述した載置面10a2に係る排気動作や昇降動作などを載置面10a3、載置面10a4に関して同様に順次行う。これにより、面一となって載置面10a1~10a4に基板Wが面一に吸着された状態となる。
【0059】
このように、基板Wの反りの態様に応じて、各載置面10a1~10a4の昇降順、昇降の方向などが定まる。そして、昇降は、載置面10a1~10a4が面一となるようにすればよく、基板Wの一部が吸着されている載置面10a1~10aiを昇降させて、隣接する載置面10ai+1と高さを揃えるようにしても、隣接する載置面10ai+1を昇降させて、基板Wの一部が吸着されている載置面10a1~10aiと高さを揃えるようにしても、あるいは、双方の載置面10a1~10ai+1を共に昇降させてもよい。
【0060】
なお、
図5に示すように、基台40の外周部41が最も外側の載置部材10
4の外側に位置し、基台40の外周部41の上端面41aも載置面の一部となってもよい。この場合、この載置面41aの高さに昇降可能な各載置面10a
1~10a
4の高さが揃った状態で、基板Wは吸着されることになる。さらに、図示しないが、基台40の内部に排気経路を設け、この排気経路内を排気することによって、この載置面41aにおいても基板Wを吸着させてもよい。
【0061】
さらに、
図6に示すように、載置部材10
1~10
4の間に基台40の一部42が位置し、この基台40の一部42の上端面42aも載置面の一部となってもよい。この場合、この載置面42aの高さに昇降可能な各載置面10a
1~10a
4の高さが揃った状態で、基板Wは吸着されることになる。これにより、径の相違する基板Wを良好に吸着することが可能となる。さらに、図示しないが、基台40の内部に排気経路を設け、この排気経路内を排気することによって、この載置面42aにおいても基板Wを吸着させてもよい。
【0062】
また、
図7A及び
図7Bに示すように、載置部材10
1~10
4は、載置面10a
1~10a
4と載置面10a
1~10a
4の反対側の裏面とを接続する側面10c
1~10c
4を有する板状である。そして、少なくとも1つの載置部材10
i(iは1~4の範囲の整数)の側面10c
iは、隣り合う載置部材10
i+1(又は載置部材10
i-1)と載置面10a
i側の端部において近接する近接部10d
iと、当該隣り合う他の載置部材10
i+1との間に近接部10d
iにおける隙間td
iよりも広い隙間te
iを形成して離間する離間部10e
iとを有していることが好ましい。
【0063】
これにより、載置面10aiの面積を十分に確保したうえで、隣り合う載置部材10i~,10i+1が昇降する際に接触して生じるパーティクルの発生を抑制することが可能となる。なお、近接部10diにおいては、隣り合う他の載置部材10i+1の側面10ci+1との隙間tdiがない、すなわち接触していてもよい。
【0064】
このような近接部10d
i及び離間部10e
iを有する載置部材10
iの側面10c
iは、例えば、
図7Aに示すように、載置面10a
i側(
図7Aにおける上面側)から載置面10a
iとは反対側(
図7Aにおける下面側)に向けて載置部材10
iの内側に傾斜するテーパー形状である。この場合、載置部材10
iの載置面10a
i側の最端部が近接部10d
iであり、これ以外の部分が離間部10e
iとなっている。
【0065】
ただし、載置部材10
iの側面10c
iは、テーパー形状に限定されず、例えば、
図7Bに示すように、段差形状などの他の形状であってもよい。この場合、載置部材10
iの載置面10a
i側の側面10c
iの垂直部分が近接部10d
iであり、これ以外の部分が離間部10e
iとなっている。なお、近接部10d
i以外においては、載置面10a
i側よりも載置面10a
iとは反対側に位置する部分において、隣り合う載置部材10
i+1との隙間が狭くなっていてもよい。
【0066】
なお、載置部材10
1~10
iの配置、載置面10a
1~10a
iの昇降順は上述したものに限定されない。以下、
図8Aから
図9Dにおいては、載置面10a
1~10a
iのパターンを上面視で模式的に示しており、数字は載置面10a
1~10a
iの添え字であり、昇降順を意味している。なお、iは2以上の整数である。
【0067】
例えば、
図8Aから
図8Cにおいては、載置面10a
i+1は載置面10a
iに隣り合い、載置面10a
i+2は載置面10a
i+1に隣り合っている。このとき、載置面10a
i+2は載置面10a
iに隣り合っていないものが存在してもよい。特に、
図8B及び
図8Cのような形態は、径方向における一方の縁から他方の縁に向って反りあがるような反りを有する基板Wを吸着するときに効果がある。
【0068】
これらのように、載置面10ai+1と載置面10a1~10aiとの高さが揃ったときに、載置面10ai+2は、その一部の外周側において載置面10a1~10aiのどちらとも隣り合っていないことが好ましい。
【0069】
これにより、載置面10ai+2がその一部の外周側において基板Wを吸着している載置面10a1~10ai+1と隣り合っておらず、開放されているので、この一部の外周側に基板Wの撓みが逃げることが可能になり、基板Wに皺が発生することの抑制を図ることが可能となる。
【0070】
例えば、
図9Aから
図9Cのように、載置面10a
i+1が周りを全て載置面10a
1~10a
iで取り囲まれている場合、基板Wを吸着させた載置面10a
i+1を昇降させて載置面10a
1~10a
iと高さを揃えても、基板Wの撓みを逃すことができず、基板Wに皺が発生することを十分に抑制することができないので一般的に好ましくない。
【0071】
また、
図9Dのように、載置面10a
i+1が周りの多くを載置面10a
1~10a
iで取り囲まれている場合も、基板Wの撓みを十分に逃すことができず、基板Wに皺が発生することを十分に抑制することができないので一般的に好ましくない。ただし、基板Wの撓みや反りの態様によっては、基板Wを好適に面一に保持することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
10i…載置部材、 10ai…載置面、 10bi…排気経路、 10ci…側面、 10di…近接部、 10ei…離間部、 20i…昇降部、 30…制御部、 40…基台、 50…排気部、 51i……排気路、 52i…開閉弁、 100…基板保持装置、 W…基板。