IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カワサキモータース株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-乗物 図1
  • 特許-乗物 図2
  • 特許-乗物 図3
  • 特許-乗物 図4
  • 特許-乗物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】乗物
(51)【国際特許分類】
   B62K 11/14 20060101AFI20230427BHJP
   B62K 23/04 20060101ALI20230427BHJP
   B62M 23/02 20100101ALI20230427BHJP
【FI】
B62K11/14
B62K23/04
B62M23/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019062486
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020158061
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】上野 州成
(72)【発明者】
【氏名】河内 薫
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038512(JP,A)
【文献】実開昭53-045645(JP,U)
【文献】特開2000-175305(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01216911(EP,A2)
【文献】特開平11-291964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 11/14
B62K 23/04
B62M 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進動力源と、
ステアリングのために操作されるバーハンドルと、
前記バーハンドルの左右何れか一方に配置され、前記バーハンドルに対して回転させることで前記推進動力源の出力を調整する出力調整グリップと、
前記推進動力源のトルク出力特性の変化を指示するために操作されるトルク操作部材と、
を備え、
前記トルク操作部材は、左右のうち前記出力調整グリップと同じ側に配置され、前記出力調整グリップと一体的に回転することを特徴とする乗物。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物であって、
前記トルク操作部材は、前記出力調整グリップを手で握った状態において、親指で押すことができる位置に配置されていることを特徴とする乗物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗物であって、
前記トルク操作部材は、前記出力調整グリップよりも後方であって、前記出力調整グリップのうち前記バーハンドルの中央に近い側の端部に、又は、前記出力調整グリップよりも前記バーハンドルの中央に近い側に配置されていることを特徴とする乗物。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の乗物であって、
前記バーハンドルに配置され、前記トルク出力特性の変化以外の動作を指示するために操作される第2操作部材を備え、
前記第2操作部材は、左右のうち前記出力調整グリップと同じ側に配置され、
前記第2操作部材は、前記出力調整グリップを回転させても回転しないことを特徴とする乗物。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の乗物であって、
前記推進動力源は、エンジン及び駆動モータを含み、
前記エンジン及び前記駆動モータの駆動を制御する制御ユニットを備え、
前記推進動力源のトルク出力特性の変化は、前記制御ユニットが、前記エンジンの駆動に対する前記駆動モータの駆動の付加の有無を切り換えること、又は、付加の割合を切り換えることであることを特徴とする乗物。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の乗物であって、
前記推進動力源のトルク出力特性の変化は、走行モードを切り換えることであることを特徴とする乗物。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の乗物であって、
前記トルク操作部材とは異なる操作具を備え、
前記トルク操作部材及び前記操作具が、前記出力調整グリップとともに回転することを特徴とする乗物。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の乗物であって、
ブレーキ操作が検出された場合に、前記推進動力源のトルク出力特性の変化の指示が無効化されることを特徴とする乗物。
【請求項9】
推進動力源と、
ステアリングのために操作されるバーハンドルと、
前記バーハンドルの左右何れか一方に配置され、前記バーハンドルに対して回転させることで前記推進動力源の出力を調整する出力調整グリップと、
を備え、
前記出力調整グリップを出力増加側に所定の角度回転させた状態から、当該出力調整グリップを出力増加側に更に回転させることで、前記推進動力源のトルク出力特性の変化を指示可能に構成されており、
前記出力調整グリップは、出力増加側に所定の角度回転させた時点で節度感が生じるように構成され、
前記節度感が生じる回転角度を上回って前記出力調整グリップを出力増加側に回転させることで、前記トルク出力特性の変化を指示可能であることを特徴とする乗物。
【請求項10】
請求項9に記載の乗物であって、
前記バーハンドルに配置され、前記トルク出力特性の変化以外の動作を指示するために操作される第2操作部材を備え、
前記第2操作部材は、左右のうち前記出力調整グリップと同じ側に配置され、
前記第2操作部材は、前記出力調整グリップを回転させても回転しないことを特徴とする乗物。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の乗物であって、
前記推進動力源のトルク出力特性の変化は、当該トルク出力特性を増加側に変化させるブーストであることを特徴とする乗物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーハンドル及び出力調整グリップを備える乗物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステアリングのために操作されるバーハンドルと、バーハンドルに対して回転させることで推進動力源の出力を調整する出力調整グリップと、を備える乗物が知られている。出力調整グリップは、通常、バーハンドルの左右何れか一方に配置される。
【0003】
また、駆動源に内燃機関と電動モータを備えるハイブリッド車が従来から知られている。このようなハイブリッド車において、内燃機関と電動モータの両方を駆動する、いわゆるブーストモードに移行させることで、推進動力源のトルク出力特性を変化させて加速させることができる構成が提案されている。特許文献1は、この種のハイブリッド車を開示する。
【0004】
特許文献1のハイブリッド車では、ブーストモードが実行される所定距離を、電気エネルギー蓄電装置内のエネルギー供給量及びタンク内の燃焼燃料の供給量によって決定する構成となっている。
【0005】
また、特許文献2の電動二輪車の駆動装置や、特許文献3の電動車両の加速制御置や、特許文献4の電動車両の出力制御装置に開示されるような、駆動装置が電動モータである電動車両においても、電流値を上げるブーストモードやパワーモードが実行されるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5824498号公報
【文献】特許第4205972号公報
【文献】特開2002-369316号公報
【文献】特開平11-205914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動二輪車のような乗物においては、運転者は運転中、常にグリップを握って操作し、駆動源の出力を状況に応じて調整している。運転者は、ブーストモードへの切換等を希望する場合、その旨を、ボタンを押す等の何らかの操作により指示する必要がある。しかし、グリップを出力調整のために回転させると、手の位置と所定の位置にあるボタンとの位置関係が変わり、その状態でのボタン操作が難しくなることがあった。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、出力調整グリップを出力増加側に大きく回転させた状態でも、ブーストモードへの移行を容易に実現することができる乗物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明観点によれば、以下の構成の乗物が提供される。即ち、乗物は、推進動力源と、バーハンドルと、出力調整グリップと、トルク操作部材と、を備える。前記バーハンドルは、ステアリングのために操作される。前記出力調整グリップは、前記バーハンドルの左右何れか一方に配置され、前記バーハンドルに対して回転させることで前記推進動力源の出力を調整する。前記トルク操作部材は、前記推進動力源のトルク出力特性の変化を指示するために操作される。前記トルク操作部材は、左右のうち前記出力調整グリップと同じ側に配置され、前記出力調整グリップと一体的に回転する。
【0011】
これにより、出力調整グリップを回転させた状態でも、出力調整グリップとトルク操作部材の位置関係が変化しない。従って、出力調整グリップを手で握って回転させた状態で、トルク操作部材を指で操作することが容易である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、出力調整グリップを出力増加側に大きく回転させた状態でも、ブーストモードへの移行を容易に実現することができる乗物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の全体的な構成を示す後方斜視図。
図2】第1実施形態の出力調整グリップ及びケースを示す斜視図。
図3】ハイブリッド駆動源を制御するための電気的な構成を示すブロック図。
図4】出力調整グリップを出力増加側に回転した状態を示す斜視図。
図5】第2実施形態の出力調整グリップ及びケースを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車1の全体的な構成を示す後方斜視図である。図2は、出力調整グリップ32及びケース31を示す斜視図である。図3は、ハイブリッド駆動源50を制御するための電気的な構成を示すブロック図である。図4は、図2の状態から出力調整グリップ32を出力増加側に回転した状態を示す斜視図である。
【0017】
初めに、自動二輪車(乗物)1について、図1を参照して説明する。以下の説明で、前、後、左、右というときは、特別な記載がない限り、自動二輪車1に乗車した運転者から見た向きを意味する。前後方向は車長方向に一致し、左右方向は車幅方向に一致する。また、鉛直方向(上下方向)は高さ方向に一致する。
【0018】
図1に示すように、自動二輪車1は、車体10と、前輪11と、後輪(車輪)12と、を備える。
【0019】
自動二輪車1は、後輪12を駆動するエンジン21と駆動モータ30とを備える。エンジン21と駆動モータ30とにより、ハイブリッド駆動源(推進駆動源)50が構成されている。従って、自動二輪車1は、ハイブリッド車両である。本実施形態においては、エンジン21を停止させた状態でも駆動モータ30の駆動力のみで走行可能なハイブリッド方式が採用されている。後輪12には、状況に応じて、エンジン21及び駆動モータ30のうち何れか一方からの駆動力が単独で伝達されたり、両方の駆動力が合成されて伝達されたりする。
【0020】
エンジン21は、車体10の前後方向の中央近傍に設けられている。本実施形態において、エンジン21はガソリンエンジンであり、燃料タンク28に貯留された燃料を用いて駆動力を発生させる。
【0021】
駆動モータ30は、エンジン21の近傍に配置されている。駆動モータ30は、自動二輪車1の適宜の位置に配置された図略の充電池により駆動される。充電池の構成は任意であるが、例えば、リチウムイオンを用いた電池とすることが考えられる。
【0022】
車体10の後部には、スイングアーム22が配置されている。スイングアーム22の後部には、後輪12が回転可能に取り付けられている。ハイブリッド駆動源50で発生した動力は、ドライブチェーン23を介して後輪12に伝達される。これにより、自動二輪車1を走行させることができる。
【0023】
車体10の前部には、図略のアッパーブラケット及びロアブラケット等を介して、フロントフォーク24が取り付けられている。フロントフォーク24は、正面視で前輪11を挟むように左右1対で配置されている。フロントフォーク24の上端の近傍には、ステアリングのために操作されるバーハンドル25が配置されている。運転者がバーハンドル25を回転させると、フロントフォーク24を介して前輪11が旋回する。これにより、自動二輪車1の進行方向を変更することができる。
【0024】
バーハンドル25には、サイドミラー26が左右1対で配置されている。バーハンドル25の前方であって、車幅方向の中央近傍には、メータ装置27が配置されている。メータ装置27は、エンジン回転速度、車速、及びその他の情報を表示することができる。
【0025】
バーハンドル25の後方であって、エンジン21の上方には、エンジン21に供給するための燃料が貯留される燃料タンク28が配置されている。燃料タンク28の後方には、運転者が着座するためのシート29が配置されている。運転者は、シート29に着座した状態で、燃料タンク28及びその下方を、脚の膝部分で挟む。これにより、運転者は車上で身体を安定させることができる。また、運転者はこの状態で重心を左右に移動させることで、操舵を円滑にすること等を目的として車体をリーンさせることができる。
【0026】
図1及び図2に示すように、バーハンドル25の左右方向外側(具体的には、右側)よりの部分には、ケース31が固定されている。バーハンドル25の左右中央から見て、ケース31よりも遠い側には、出力調整グリップ32が設けられている。
【0027】
出力調整グリップ32は、円筒状に形成された図略のスロットルチューブの外側に固定されている。スロットルチューブの内部には、断面円形状のバーハンドル25の端部が差し込まれている。従って、運転者は、出力調整グリップ32を、バーハンドル25の長手方向に平行な軸32cを中心にして回転操作することができる。
【0028】
ケース31の内部には、スロットルチューブの操作位置を検出可能なスロットルセンサ41が配置されている。スロットルセンサ41の構成は任意であるが、例えばポテンショメータを用いることができる。
【0029】
図3に示すように、スロットルセンサ41は、制御ユニット46に電気的に接続される。制御ユニット46は、公知のコンピュータとして構成されている。制御ユニット46は、ハイブリッド駆動源50のエンジン21及び駆動モータ30の駆動をそれぞれ制御することができる。
【0030】
制御ユニット46には、スロットルモータ42と駆動モータ30が電気的に接続されている。スロットルモータ42は、エンジン21のスロットルバルブ45の弁体44を駆動するアクチュエータとして機能する。制御ユニット46は、スロットルセンサ41によって検出されたスロットルチューブ(言い換えれば、出力調整グリップ32)の操作角度に基づいて、運転者が要求するトルク(以下、要求トルクと呼ぶことがある。)を取得する。そして、制御ユニット46は、エンジン21と駆動モータ30の出力トルクの合計が要求トルクに等しくなるように、スロットルモータ42及び駆動モータ30を制御する。エンジン21においては、スロットルモータ42が、スロットルバルブ45の弁体44の開度を変更する。これにより、エンジン21に吸入される空気量を調整して、エンジン21が発生するトルクを変更することができる。駆動モータ30においては、公知のトルク制御が行われることで、発生するトルクを変更することができる。
【0031】
図1に示すように、バーハンドル25には、出力調整グリップ32を掴んだ右手で握って操作することが可能なブレーキレバー33が設けられている。
【0032】
出力調整グリップ32において、バーハンドル25の中央に近い側の端部には、図2に示すように、ブーストボタン36と、走行モード切換スイッチ37と、が設けられる。
【0033】
ブーストボタン36について説明する。ハイブリッド駆動源50は、所定の操作を行うことで、出力調整グリップ32の操作位置と出力トルクの関係(以下、トルク出力特性という。)を変化させることができる。このトルク出力特性の変化は、制御ユニット46が、エンジン21の駆動に対する駆動モータ30の駆動の付加の有無を切り換えることで、又は、付加の割合を切り換えることで、実現することができる。
【0034】
ブーストボタン36は、トルク特性の増加側への変更を指示するために運転者によって操作される。図3に示すように、ブーストボタン36は、制御ユニット46に電気的に接続されている。
【0035】
トルク特性の増加側への変更は、様々な方法で行うことができる。例えば、ハイブリッド駆動源50のうちエンジン21だけが駆動されている場合には、エンジン21の駆動を継続しつつ、駆動モータ30を駆動することにより、トルク特性の増加側への変更を実現することができる。エンジン21と駆動モータ30の両方が駆動されている場合には、エンジン21の出力を維持しつつ、駆動モータ30への供給電流の大きさを増加させることにより、トルク特性の増加側への変更を実現することができる。ハイブリッド駆動源50のトルク出力特性が増加側に切り換えられることにより、例えば、登り坂、向かい風、追越し等の場合に、力強い加速を得ることができる。ブーストモードによる出力トルクの増加分は、出力調整グリップ32の回転角度が大きくなる程、大きくなるように制御される。
【0036】
ブーストボタン36が押されると、制御ユニット46は、通常モードからブーストモードに切り換えられる。ブーストモードを駆動モータ30の出力増加によって実現する場合、制御ユニット46は、所定の時間(例えば、数秒程度)が経過すると、ブーストモードから自動的に通常モードに戻り、駆動モータ30の出力増加を元に戻すことが好ましい。これにより、駆動モータ30に大電流が長時間流れることを防止して、駆動モータ30を保護することができる。
【0037】
走行モード切換スイッチ37は、前後左右の4方向に倒して操作できるスイッチであり、走行モードを切り替えるものである。走行モードとしては、燃費を重視したモード、スポーティな走行フィーリングを重視したモード等が考えられるが、これに限定されない。
【0038】
ブーストボタン36及び走行モード切換スイッチ37は、出力調整グリップ32を右手で握った状態において、親指で押すことができる位置に配置されている。ブーストボタン36を押すとき、親指は、概ね、出力調整グリップ32の接線方向に動くことになる。ブーストボタン36の操作子は、この接線方向に沿って動くように配置される。
【0039】
ブーストボタン36及び走行モード切換スイッチ37は、出力調整グリップ32と一体的に設けられている。従って、図4に示すように、バーハンドル25に対して出力調整グリップ32を回転させると、ブーストボタン36及び走行モード切換スイッチ37も回転する。
【0040】
ブーストの指示、及び、走行モードの切換の指示は、出力調整グリップ32をある程度回転させた状態を保ちつつ行われることが多い。この点、出力調整グリップ32を回転させる過程で、当該出力調整グリップ32を握る右手の親指と、ブーストボタン36及び走行モード切換スイッチ37と、がなす角度が一定に保持される。この結果、出力調整グリップ32をどの角度に操作していても、親指を同じように動かすだけで、ブーストボタン36等を確実に操作することができる。
【0041】
図2に示すように、ケース31には、トルク出力特性の変化以外の動作を指示するために、キルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35が設けられている。キルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35は、第2操作部材に相当する。
【0042】
ブーストボタン36、走行モード切換スイッチ37、キルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35は、車体10の左右のうち、出力調整グリップ32と同じ側に配置されている。ブーストボタン36、走行モード切換スイッチ37、キルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35は、自動二輪車1に対して指示するために運転者によって操作される操作具に相当する。
【0043】
キルスイッチ34は、エンジン21の強制停止を指示するために操作される。メータモード切換スイッチ35は、メータ装置27の表示切換を指示するために操作される。キルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35が配置されるケース31は、バーハンドル25に固定されており、図4に示すように、出力調整グリップ32を回転させても回転しない。
【0044】
キルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35は、出力調整グリップ32を回転させた状態で同時に操作することは考えにくい。このような操作部材は固定側のケース31に配置することで、合理的な操作レイアウトとすることができる。また、出力調整グリップ32と一体的に回転する操作部材をブーストボタン36及び走行モード切換スイッチ37に限ることで、回転部分の重量が大きくなり過ぎることを防止できる。この結果、出力調整グリップ32の軽快な操作を実現できる。
【0045】
次に、制御ユニット46の制御について説明する。
【0046】
上述のブーストボタン36の操作は、追越し、旋回等のために自動二輪車を左右一側に倒した状態においても有効である。ただし、ブレーキ操作中には、ブーストモードに移行することはできない。制御ユニット46には、ブレーキレバー33の操作を検出する図略のセンサが電気的に接続されている。制御ユニット46は、ブレーキ操作が検出されているときは、ブーストボタン36の操作を無効化する。これにより、ブレーキ中にブーストモードに移行することを防止することができる。
【0047】
メータ装置27は、制御ユニット46に電気的に接続されている。ブーストモードに移行した場合には、制御ユニット46は、メータ装置27にブーストモードであることを表示することで、運転者にブーストモードに移行したことを知らせる。ただし、メータ装置27に表示する代わりに、例えばブーストボタン36をランプ内蔵型に構成し、ブーストモード時にはランプを点灯させるように構成することもできる。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1は、ハイブリッド駆動源50と、バーハンドル25と、出力調整グリップ32と、ブーストボタン36と、を備える。バーハンドル25は、ステアリングのために操作される。出力調整グリップ32は、バーハンドル25の左右何れか一方に配置され、バーハンドル25に対して回転させることでハイブリッド駆動源50の出力を調整する。ブーストボタン36は、ハイブリッド駆動源50のトルク出力特性の変化を指示するために操作される。ブーストボタン36は、左右のうち出力調整グリップ32と同じ側に配置され、出力調整グリップ32と一体的に回転する。
【0049】
これにより、出力調整グリップ32を回転させた状態でも、出力調整グリップ32とブーストボタン36の位置関係が変化しない。従って、出力調整グリップ32を手で握って回転させた状態で、ブーストボタン36を指で操作することが容易である。
【0050】
また、本実施形態の自動二輪車1において、ブーストボタン36は、出力調整グリップ32に取り付けられている。
【0051】
これにより、ブーストボタン36が出力調整グリップ32と一体的に回転する簡素な構成を実現できる。
【0052】
また、本実施形態の自動二輪車1において、ブーストボタン36は、出力調整グリップ32のうちバーハンドル25の中央に近い側の端部に配置されている。
【0053】
これにより、トルク出力特性を変化させる操作を、出力調整グリップ32を握った手の親指で行うことができる。従って、親指以外の指で出力調整グリップ32を確実に握りながら、トルク出力特性の変化を指示することができる。
【0054】
また、本実施形態の自動二輪車1は、バーハンドル25に配置され、トルク出力特性の変化以外の動作を指示するために操作されるキルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35を備える。キルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35は、左右のうち出力調整グリップ32と同じ側に配置される。キルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35は、出力調整グリップ32を回転させても回転しない。
【0055】
これにより、操作部材が増えることで、多様な指示を自動二輪車1に与えることができる。出力調整グリップ32と同時に操作する可能性が低い操作をキルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35に割り当てることで、操作性の全体的な低下を防止できる。キルスイッチ34及びメータモード切換スイッチ35は出力調整グリップ32を回転させても回転しないので、回転部分を軽量化することができる。従って、小さな操作力で出力調整グリップ32を回転させることができ、操作性が良好である。
【0056】
また、本実施形態の自動二輪車1においては、トルク出力特性を変化させているか否かを表示する表示部として、メータ装置27を備える。
【0057】
これにより、トルク出力特性を変化させているか否かを視覚で確認することができる。
【0058】
また、本実施形態の自動二輪車1において、ハイブリッド駆動源50には駆動モータ30が含まれる。トルク出力特性の変化は、駆動モータ30を回転させ、又は駆動モータ30の回転を増加させることで実現される。
【0059】
これにより、ハイブリッド駆動源50の出力特性の変化を容易に実現できる。
【0060】
また、本実施形態の自動二輪車1は、ハイブリッド駆動源50によって後輪12を駆動して走行する。
【0061】
これにより、車両において、出力調整グリップ32を手で握って回転させた状態で、トルク出力特性の変化を容易に指示することができる。
【0062】
また、本実施形態の自動二輪車1は、ハイブリッド駆動源50のトルク出力特性の変化は、当該トルク出力特性を増加側に変化させるブーストである。
【0063】
これにより、必要に応じて力強い加速を得ることができるので、自動二輪車1の利便性を高めることができる。
【0064】
次に、第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態の出力調整グリップ32及びケース31を示す斜視図である。本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0065】
図5に示す第2実施形態では、出力調整グリップ32において、第1実施形態では設けられていたブーストボタン36が省略されている。
【0066】
本実施形態では、出力調整グリップ32を回転させる操作によって、ブーストモードへの移行を指示することができる。具体的には、通常モードにおいて、出力調整グリップ32を非操作位置から回転させていくと、エンジン21の出力が徐々に増大する。出力調整グリップ32は、エンジン21の最大出力に相当する位置まで回転させた状態から、同じ方向に更に追加的に回転させることができる。制御ユニット46は、この追加的な回転をスロットルセンサ41により検知して、ブーストモードへ移行する。
【0067】
この構成でも、出力調整グリップ32を握った状態でブーストモードへの移行を容易に指示することができる。また、物理的な操作部材であるブーストボタン36を省略できるので、コストを低減することができる。
【0068】
出力調整グリップ32は、エンジン21の最大出力に相当する位置まで回転させた状態で、それ以上の回転に対して適度な抵抗が付与されるように構成されている。回転に対して抵抗を生じさせる構成は任意であるが、例えばデテント機構とすることが考えられる。運転者は、回転時に生じる節度感を乗り越えて出力調整グリップ32を回転させることで、ブーストモードを指示することができる。
【0069】
運転者は、節度感を手掛かりにして、出力調整グリップ32の回転ストロークのうち、エンジン21の出力調整のための領域と、ブーストモード(駆動モータ30による駆動アシスト)を指示するための領域と、を明確に分けて認識することができる。従って、例えば、ブーストの意思がないのにブーストモードを指示してしまう誤操作を防止することができる。
【0070】
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1は、ハイブリッド駆動源50と、バーハンドル25と、出力調整グリップ32と、を備える。バーハンドル25は、ステアリングのために操作される。出力調整グリップ32は、バーハンドル25の左右何れか一方に配置され、バーハンドル25に対して回転させることでハイブリッド駆動源50の出力を調整する。自動二輪車1は、出力調整グリップ32を出力増加側に所定の角度回転させた状態から、出力調整グリップ32を出力増加側に更に回転させることで、ハイブリッド駆動源50のトルク出力特性の変化を指示可能に構成されている。
【0071】
これにより、出力調整グリップ32を手で握って回転させた状態で、トルク出力特性の変化を容易に指示することができる。トルク出力特性の変化の指示と、出力調整と、を1つの操作部材で共用できるので、製造コストを低減できる。
【0072】
また、本実施形態の自動二輪車1において、出力調整グリップ32は、出力増加側に所定の角度回転させた時点で節度感が生じるように構成されている。節度感が生じる回転角度を上回って出力調整グリップ32を出力増加側に回転させることで、トルク出力特性の変化を指示可能である。
【0073】
これにより、トルク出力特性の変化の指示に相当する出力調整グリップ32の操作位置と、そうでない操作位置と、の間の境界を、握った手に伝わる節度感によって知ることができる。
【0074】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0075】
キルスイッチ34、メータモード切換スイッチ35、及び、走行モード切換スイッチ37のうち少なくとも何れかを、他の目的で操作される操作具に変更しても良い。キルスイッチ34、メータモード切換スイッチ35、及び、走行モード切換スイッチ37のうち少なくとも一部を省略しても良い。
【0076】
ブーストボタン36及び走行モード切換スイッチ37は、出力調整グリップ32に設けることに代えて、出力調整グリップ32と一体的に回転する他の部材に設けても良い。
【0077】
ハイブリッド駆動源としては、上述のハイブリッド方式に代えて、エンジンを主要動力源として、モータでエンジンの駆動をアシストするハイブリッド方式とすることもできる。この方式のハイブリッドを採用する場合、例えば、エンジン21の駆動に対して駆動モータ30の駆動の付加(駆動アシスト)の有無を切り替えることで、トルク出力特性の変更を実現することができる。
【0078】
推進駆動源は、ハイブリッド駆動源に代えて、エンジンのみ、又は電動モータのみで構成されても良い。推進駆動源がエンジンのみで構成される場合、出力調整グリップ32の操作位置に対するスロットルバルブの開度を通常よりも大きくすることで、トルク出力特性の変更を実現できる。推進駆動源が電動モータのみで構成される場合、出力調整グリップ32の操作位置に対する電動モータへの供給電流の大きさを通常よりも大きくすることで、トルク出力特性の変更を実現できる。
【0079】
ブーストボタン36及び走行モード切換スイッチ37の位置は、適宜変更することができる。例えば、ブーストボタン36及び走行モード切換スイッチ37のうち少なくとも何れかを、運転者の人差し指等で操作できる位置に配置することもできる。
【0080】
スロットルチューブに図略のスロットルワイヤを取り付け、スロットルバルブ45の弁体44の角度を機械的に変更しても良い。
【0081】
乗物は、自動二輪車に限らず、例えば、三輪や四輪の乗物であっても良い。また、本発明を水上バイク(パーソナルウォータークラフト)等に適用しても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 自動二輪車(乗物)
25 バーハンドル
32 出力調整グリップ
34 キルスイッチ(第2操作部材)
35 メータモード切換スイッチ(第2操作部材)
36 ブーストボタン(トルク操作部材)
50 ハイブリッド駆動源(推進動力源)
図1
図2
図3
図4
図5