(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】紡糸巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 65/00 20060101AFI20230427BHJP
B65H 54/26 20060101ALI20230427BHJP
B65H 57/28 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B65H65/00 D
B65H54/26
B65H57/28
(21)【出願番号】P 2019078591
(22)【出願日】2019-04-17
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2018110983
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】澤田 淳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 欣三
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102007062322(DE,A1)
【文献】特開平11-100167(JP,A)
【文献】特開平08-319061(JP,A)
【文献】特開2018-083681(JP,A)
【文献】特開平11-217160(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102004026305(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/28
B65H 57/00-57/28
B65H 65/00
B65H 67/00-67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸装置から紡出された複数の糸を複数のボビンに巻き取る紡糸巻取装置であって、
前記複数のボビンを軸方向に並べて保持する複数のボビンホルダと、
前記糸を綾振りするトラバース装置と、
前記複数の糸を巻き取る前記複数のボビンを、一の前記ボビンホルダに保持された前記複数のボビンから、他の前記ボビンホルダに保持された新しい前記複数のボビンに切り換える際に、前記複数の糸を前記新しい複数のボビンの外周面に形成されているスリットに掛けるための糸掛け機構と、
制御装置と、
を備え、
前記糸掛け機構は、
前記新しい複数のボビンに対応して設けられた前記軸方向に移動可能な複数のガイドであって、前記トラバース装置によって綾振りされている前記糸を捕捉した後、対応する前記スリットに向かって移動し、前記スリットに前記糸を掛ける複数のガイドと、
前記ガイドを前記軸方向に移動させる駆動装置と、
前記新しい複数のボビンの所定箇所の前記軸方向の位置を検出するボビン位置センサと、
を有し、
前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果に基づいて、前記駆動装置を制御することで、前記ガイドの前記軸方向の位置を調整
し、
前記軸方向において前記ボビンホルダの一方側から前記ボビンが着脱される紡糸巻取装置であって、
前記ボビン位置センサは、前記新しい複数のボビンのうち最も前記一方側に保持されたボビンの前記一方側の端面の位置を検出し、
前記ボビン位置センサは、前記新しいボビンが回転しているときに、前記端面の位置を検出し、
前記ボビンホルダは、少なくとも、前記糸を前記新しいボビンに巻き取り開始する巻取開始位置と、前記ボビンを交換するための交換位置との間で移動可能であり、
前記ボビン位置センサは、前記ボビンホルダが前記巻取開始位置に位置しているときに、前記端面の位置を検出することを特徴とする紡糸巻取装置。
【請求項2】
紡糸装置から紡出された複数の糸を複数のボビンに巻き取る紡糸巻取装置であって、
前記複数のボビンを軸方向に並べて保持する複数のボビンホルダと、
前記糸を綾振りするトラバース装置と、
前記複数の糸を巻き取る前記複数のボビンを、一の前記ボビンホルダに保持された前記複数のボビンから、他の前記ボビンホルダに保持された新しい前記複数のボビンに切り換える際に、前記複数の糸を前記新しい複数のボビンの外周面に形成されているスリットに掛けるための糸掛け機構と、
制御装置と、
を備え、
前記糸掛け機構は、
前記新しい複数のボビンに対応して設けられた前記軸方向に移動可能な複数のガイドであって、前記トラバース装置によって綾振りされている前記糸を捕捉した後、対応する前記スリットに向かって移動し、前記スリットに前記糸を掛ける複数のガイドと、
前記ガイドを前記軸方向に移動させる駆動装置と、
前記新しい複数のボビンの所定箇所の前記軸方向の位置を検出するボビン位置センサと、
を有し、
前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果に基づいて、前記駆動装置を制御することで、前記ガイドの前記軸方向の位置を調整し、
前記軸方向において前記ボビンホルダの一方側から前記ボビンが着脱される紡糸巻取装置であって、
前記ボビン位置センサは、前記新しい複数のボビンのうち最も前記一方側に保持されたボビンの前記一方側の端面の位置を検出し、
前記ボビン位置センサは、前記新しいボビンが回転を停止しているときに、前記端面の位置を検出し、
前記ボビンホルダは、少なくとも、前記糸を前記新しいボビンに巻き取り開始する巻取開始位置と、前記ボビンを交換するための交換位置との間で移動可能であり、
前記ボビン位置センサは、前記ボビンホルダが前記巻取開始位置に位置しているときに、前記端面の位置を検出することを特徴とする紡糸巻取装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記糸を捕捉した前記ガイドを対応する前記スリットに向かって移動させる際に、前記ガイドを前記軸方向において前記スリットと同じ位置、又は、前記スリットを越えた所定位置で停止させるように調整を行うことを特徴とする
請求項1又は2に記載の紡糸巻取装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記複数のガイドのそれぞれに対して個別に設けられていることを特徴とする
請求項1~3の何れか1項に記載の紡糸巻取装置。
【請求項5】
前記駆動装置は、
前記複数のガイドを支持する支持部材と、
前記支持部材を前記軸方向に移動させることで、前記複数のガイドを一斉に前記軸方向に移動させる移動装置と、
を有することを特徴とする
請求項1~3の何れか1項に記載の紡糸巻取装置。
【請求項6】
紡糸装置から紡出された複数の糸を複数のボビンに巻き取る紡糸巻取装置であって、
前記複数のボビンを軸方向に並べて保持する複数のボビンホルダと、
前記糸を綾振りするトラバース装置と、
前記複数の糸を巻き取る前記複数のボビンを、一の前記ボビンホルダに保持された前記複数のボビンから、他の前記ボビンホルダに保持された新しい前記複数のボビンに切り換える際に、前記複数の糸を前記新しい複数のボビンの外周面に形成されているスリットに掛けるための糸掛け機構と、
制御装置と、
を備え、
前記糸掛け機構は、
前記新しい複数のボビンに対応して設けられた前記軸方向に移動可能な複数のガイドであって、前記トラバース装置によって綾振りされている前記糸を捕捉した後、対応する前記スリットに向かって移動し、前記スリットに前記糸を掛ける複数のガイドと、
前記ガイドを前記軸方向に移動させる駆動装置と、
前記新しい複数のボビンの所定箇所の前記軸方向の位置を検出するボビン位置センサと、
を有し、
前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果に基づいて、前記駆動装置を制御することで、前記ガイドの前記軸方向の位置を調整し、
前記駆動装置は、
前記複数のガイドを支持する支持部材と、
前記支持部材を前記軸方向に移動させることで、前記複数のガイドを一斉に前記軸方向に移動させる移動装置と、
を有することを特徴とする紡糸巻取装置。
【請求項7】
前記軸方向において前記ボビンホルダの一方側から前記ボビンが着脱される紡糸巻取装置であって、
前記ボビン位置センサは、前記新しい複数のボビンのうち最も前記一方側に保持されたボビンの前記一方側の端面の位置を検出し、
前記ボビン位置センサは、前記新しいボビンが回転を停止しているときに、前記端面の位置を検出することを特徴とする請求項6に記載の紡糸巻取装置。
【請求項8】
前記駆動装置は、前記複数のガイドの前記軸方向のピッチを変更するためのピッチ変更機構を有することを特徴とする
請求項5~7の何れか1項に記載の紡糸巻取装置。
【請求項9】
前記ピッチ変更機構は、
前記複数のガイドに対応して前記軸方向に複数の雄ねじ部が形成された、前記支持部材としてのねじ部材と、
前記複数の雄ねじ部にそれぞれ螺合されており、前記複数のガイドがそれぞれ取り付けられている複数のナットと、
前記ねじ部材を軸周りに回転させることで、前記複数のナットを前記ねじ部材に対して前記軸方向に移動させる回転装置と、
を有し、
前記複数の雄ねじ部のリードは、前記軸方向の一方側の前記雄ねじ部ほど大きく又は小さくされていることを特徴とする
請求項8に記載の紡糸巻取装置。
【請求項10】
前記ピッチ変更機構は、
前記軸方向に伸縮可能なパンタグラフ機構と、
前記パンタグラフ機構を伸縮させるための伸縮装置と、
前記パンタグラフ機構及び前記伸縮装置が搭載される、前記支持部材としてのベース部材と、
を有し、
前記複数のガイドが、前記軸方向に並んだ状態で前記パンタグラフ機構に取り付けられていることを特徴とする
請求項8に記載の紡糸巻取装置。
【請求項11】
前記駆動装置は、前記複数のガイドのうち少なくとも一部のガイドが、前記支持部材に対して前記軸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする
請求項5~7の何れか1項に記載に記載の紡糸巻取装置。
【請求項12】
前記駆動装置は、
前記軸方向の一部に雄ねじ部が形成された、前記支持部材としてのねじ部材と、
前記雄ねじ部に螺合されており、前記ガイドが取り付けられているナットと、
前記ねじ部材を軸周りに回転させることで、前記ナットを前記ねじ部材に対して前記軸方向に移動させる回転装置と、
を有し、
前記複数のガイドは、
前記ナットに取り付けられた前記ガイドを含み、前記ねじ部材に対して前記軸方向に一体移動できるように連結された第1のグループと、
前記ナットに取り付けられた前記ガイドを含まず、前記ねじ部材に対して前記軸方向に移動できないように規制された第2のグループと、
に少なくとも分けられていることを特徴とする
請求項11に記載の紡糸巻取装置。
【請求項13】
オペレータに所定状態を知らせるアラームが設けられており、
前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果から、前記新しいボビンの長さが所定の寸法公差範囲から外れていると判断すると、前記アラームを作動させることを特徴とする
請求項1~12の何れか1項に記載の紡糸巻取装置。
【請求項14】
前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果から、前記糸を前記新しいボビンの所定の巻取許容範囲内で巻くことができないと判断すると、前記糸の巻き取りを中止することを特徴とする
請求項1~13の何れか1項に記載の紡糸巻取装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果を蓄積し、蓄積したデータに基づいて前記ボビンの品質管理を行うことを特徴とする
請求項1~14の何れか1項に記載の紡糸巻取装置。
【請求項16】
前記複数のガイドの所定箇所の前記軸方向の位置を検出するガイド位置センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果及び前記ガイド位置センサの検出結果から得られる前記軸方向における前記ガイドと前記新しいボビンとの相対位置に基づいて、前記ガイドの前記軸方向の位置を調整することを特徴とする
請求項1~15の何れか1項に記載の紡糸巻取装置。
【請求項17】
前記ボビン位置センサは、前記新しい複数のボビンの前記所定箇所の位置を検出するボビン検出位置と、前記複数のガイドの前記所定箇所の位置を検出するガイド検出位置との間で移動可能であり、前記ガイド位置センサとして兼用されることを特徴とする
請求項16に記載の紡糸巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のボビンホルダを有する紡糸巻取装置であって、複数の糸を巻き取る複数のボビンを、一のボビンホルダに保持された複数のボビンから、他のボビンホルダに保持された新しい複数のボビンに切り換える際に、複数の糸を新しい複数のボビンの外周面に形成されているスリットに掛けるための糸掛け機構を備える紡糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、糸を巻き取るボビンを異なるボビンホルダに保持されたボビン(以下、新しいボビンと言う)に切り換える際に、トラバース装置によって綾振りされている糸を糸捕捉ガイド(以下、ガイドと言う)で捕捉し、新しいボビンに糸を掛ける構成が開示されている。通常、ボビンの外周面には糸を掛けるためのスリットが形成されており、ガイドで捕捉した糸を新しいボビンのスリットに案内することによって、糸掛けが行われる。ガイドはシリンダによってボビンの軸方向に移動可能に構成されている。糸の巻き取り中には、ガイドは綾振り範囲の外側の糸寄せ位置で待機しており、新しいボビンへの切り換え時に糸を捕捉可能な捕捉位置まで移動する。そして、糸を捕捉したガイドが再び糸寄せ位置に戻ることによって、新しいボビンのスリットに糸を掛けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のガイドの動作は、ボビンの長さが所定の規定寸法であることを前提として制御されている。このため、ボビンの長さに所定の規定寸法に対する寸法誤差があると、軸方向においてガイドとボビンとの相対位置にずれが生じ、スリットに糸を掛けられないという問題が生じ得る。このような問題は、1本のボビンホルダに多数のボビンが装着されている場合に顕著である。というのも、ボビンは生産ロット順に使用されるのが通常であり、1本のボビンホルダに装着される各ボビンの寸法誤差は略同じであることが多い。そうすると、複数のボビンを軸方向に並べることで寸法誤差が累積され、糸掛けの失敗が生じやすくなっていた。
【0005】
以上の課題に鑑みて、本発明に係る紡糸巻取装置は、ボビンの長さに所定の規定寸法に対する寸法誤差があっても、糸を巻き取るボビンを新しいボビンに切り換える際に、スリットに糸を掛けることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、紡糸装置から紡出された複数の糸を複数のボビンに巻き取る紡糸巻取装置であって、前記複数のボビンを軸方向に並べて保持する複数のボビンホルダと、前記糸を綾振りするトラバース装置と、前記複数の糸を巻き取る前記複数のボビンを、一の前記ボビンホルダに保持された前記複数のボビンから、他の前記ボビンホルダに保持された新しい前記複数のボビンに切り換える際に、前記複数の糸を前記新しい複数のボビンの外周面に形成されているスリットに掛けるための糸掛け機構と、制御装置と、を備え、前記糸掛け機構は、前記新しい複数のボビンに対応して設けられた前記軸方向に移動可能な複数のガイドであって、前記トラバース装置によって綾振りされている前記糸を捕捉した後、対応する前記スリットに向かって移動し、前記スリットに前記糸を掛ける複数のガイドと、前記ガイドを前記軸方向に移動させる駆動装置と、前記新しい複数のボビンの所定箇所の前記軸方向の位置を検出するボビン位置センサと、を有し、前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果に基づいて、前記駆動装置を制御することで、前記ガイドの前記軸方向の位置を調整することを特徴とする。
【0007】
本発明では、ボビン位置センサによって検出された新しいボビンの位置に基づいて、ガイドの軸方向位置を調整するように構成されている。このため、新しいボビンの長さに所定の規定寸法に対する寸法誤差があり、ガイドが新しいボビンに形成されたスリットに対して相対的に軸方向位置がずれている場合でも、ガイドの位置調整を行うことで位置ずれを抑えることができる。したがって、本発明によれば、ボビンの長さに寸法誤差があっても、新しいボビンへの切り換え時にスリットに糸を掛けることができる。
【0008】
本発明において、前記制御装置は、前記糸を捕捉した前記ガイドを対応する前記スリットに向かって移動させる際に、前記ガイドを前記軸方向において前記スリットと同じ位置、又は、前記スリットを越えた所定位置で停止させるように調整を行うとよい。
【0009】
このように、糸を捕捉したガイドがスリットと同じ位置、又は、スリットを越えた所定位置まで移動することによって、確実にスリットに糸を掛けることができる。
【0010】
本発明において、前記軸方向において前記ボビンホルダの一方側から前記ボビンが着脱される紡糸巻取装置であって、前記ボビン位置センサは、前記新しい複数のボビンのうち最も前記一方側に保持されたボビンの前記一方側の端面の位置を検出するとよい。
【0011】
ボビンホルダの一方側からボビンが着脱される場合、ボビンは他方側から順番に詰められることになるので、一方側のボビンほど寸法誤差が累積されて位置ずれが大きくなる。したがって、最も一方側のボビンの一方側の端面の位置を検出することによって、ガイドとボビンとの相対位置のずれを精度よく求めることができる。
【0012】
本発明において、前記ボビン位置センサは、前記新しいボビンが回転を停止しているときに、前記端面の位置を検出するとよい。
【0013】
ボビンの端面はボビンの厚み分しかないので、ボビンが回転しており振動が発生していると、端面の位置の検出に失敗するおそれがある。この点、ボビンの回転を停止しているときに端面の位置を検出すれば、確実に端面の位置を検出することができる。
【0014】
本発明において、前記ボビン位置センサは、前記新しいボビンが回転しているときに、前記端面の位置を検出するとよい。
【0015】
例えば、ボビンの端面に凹凸がある場合、特異な凹凸の箇所で位置を検出してしまうと、ボビンの位置の検出誤差が大きくなってしまう。この点、ボビンが回転しているときに端面の位置を検出すれば、特異な凹凸の影響を抑えることができる。
【0016】
本発明において、前記ボビンホルダは、少なくとも、前記糸を前記新しいボビンに巻き取り開始する巻取開始位置と、前記ボビンを交換するための交換位置との間で移動可能であり、前記ボビン位置センサは、前記ボビンホルダが前記巻取開始位置に位置しているときに、前記端面の位置を検出するとよい。
【0017】
この場合、ボビン位置センサを巻取開始位置の近傍に配置すればよく、交換位置から遠ざけることができる。したがって、ボビン位置センサをボビンの交換作業の邪魔にならないように容易に配置することができる。
【0018】
本発明において、オペレータに所定状態を知らせるアラームが設けられており、前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果から、前記新しいボビンの長さが所定の寸法公差範囲から外れていると判断すると、前記アラームを作動させるとよい。
【0019】
このように構成すれば、ボビンの長さが寸法公差範囲から外れていることをオペレータがすぐに把握することができ、適切に対処することができる。
【0020】
本発明において、前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果から、前記糸を前記新しいボビンの所定の巻取許容範囲内で巻くことができないと判断すると、前記糸の巻き取りを中止するとよい。
【0021】
このように構成すれば、糸が巻取許容範囲内で巻かれていない不良パッケージが形成されることを防止することができる。
【0022】
本発明において、前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果を蓄積し、蓄積したデータに基づいて前記ボビンの品質管理を行うとよい。
【0023】
こうすれば、例えばボビンの長さの傾向等を把握することができ、ボビンの品質管理をより適切に行うことができる。
【0024】
本発明において、前記駆動装置は、前記複数のガイドを支持する支持部材と、前記支持部材を前記軸方向に移動させることで、前記複数のガイドを一斉に前記軸方向に移動させる移動装置と、を有するとよい。
【0025】
このような構成によれば、各ガイドを個別に移動させる場合と比べて、装置構成を簡易にすることができる。
【0026】
本発明において、前記駆動装置は、前記複数のガイドの前記軸方向のピッチを変更するためのピッチ変更機構を有するとよい。
【0027】
このようなピッチ変更機構を設けることで、各ガイドの位置を対応するスリットに合わせることができ、糸掛けの成功率を向上させることができる。
【0028】
本発明において、前記ピッチ変更機構は、前記複数のガイドに対応して前記軸方向に複数の雄ねじ部が形成された、前記支持部材としてのねじ部材と、前記複数の雄ねじ部にそれぞれ螺合されており、前記複数のガイドがそれぞれ取り付けられている複数のナットと、前記ねじ部材を軸周りに回転させることで、前記複数のナットを前記ねじ部材に対して前記軸方向に移動させる回転装置と、を有し、前記複数の雄ねじ部のリードは、前記軸方向の一方側の前記雄ねじ部ほど大きく又は小さくされているとよい。
【0029】
このような構成によれば、ねじ部材を回転させることによって、各ガイドの位置を対応するスリットに合わせることができる。
【0030】
本発明において、前記ピッチ変更機構は、前記軸方向に伸縮可能なパンタグラフ機構と、前記パンタグラフ機構を伸縮させるための伸縮装置と、前記パンタグラフ機構及び前記伸縮装置が搭載される、前記支持部材としてのベース部材と、を有し、前記複数のガイドが、前記軸方向に並んだ状態で前記パンタグラフ機構に取り付けられているとよい。
【0031】
このような構成によれば、パンタグラフ機構の伸縮量を調整することで、各ガイドの位置を対応するスリットに合わせることができる。
【0032】
本発明において、前記駆動装置は、前記複数のガイドのうち少なくとも一部のガイドが、前記支持部材に対して前記軸方向に移動可能に構成されているとよい。
【0033】
少なくとも一部のガイドが支持部材に対して軸方向に移動できれば、支持部材を移動させることで全てのガイドの位置を一律にしか調整できない場合と比べて、各ガイドの位置調整の自由度が向上する。
【0034】
本発明において、前記駆動装置は、前記軸方向の一部に雄ねじ部が形成された、前記支持部材としてのねじ部材と、前記雄ねじ部に螺合されており、前記ガイドが取り付けられているナットと、前記ねじ部材を軸周りに回転させることで、前記ナットを前記ねじ部材に対して前記軸方向に移動させる回転装置と、を有し、前記複数のガイドは、前記ナットに取り付けられた前記ガイドを含み、前記ねじ部材に対して前記軸方向に一体移動できるように連結された第1のグループと、前記ナットに取り付けられた前記ガイドを含まず、前記ねじ部材に対して前記軸方向に移動できないように規制された第2のグループと、に少なくとも分けられているとよい。
【0035】
こうすれば、第1のグループに含まれるガイドと、第2のグループに含まれるガイドとで、軸方向の移動量を変えることができるので、各ガイドの位置調整の自由度が向上する。
【0036】
本発明において、前記駆動装置は、前記複数のガイドのそれぞれに対して個別に設けられているとよい。
【0037】
このような構成によれば、各ガイドを対応するスリットに合わせて最適な位置に調整できるので、糸掛けを確実に成功させることができる。
【0038】
本発明において、前記複数のガイドの所定箇所の前記軸方向の位置を検出するガイド位置センサをさらに備え、前記制御装置は、前記ボビン位置センサの検出結果及び前記ガイド位置センサの検出結果から得られる前記軸方向における前記ガイドと前記新しいボビンとの相対位置に基づいて、前記ガイドの前記軸方向の位置を調整するとよい。
【0039】
ガイドの組み付け精度等によっては、ガイドの軸方向位置が本来の位置からずれている場合がある。このような場合でも、ガイド位置センサを設けておけば、その都度、ガイドと新しいボビンとの相対位置を把握することができるので、ガイドの位置調整を適切に行うことができる。
【0040】
本発明において、前記ボビン位置センサは、前記新しい複数のボビンの前記所定箇所の位置を検出するボビン検出位置と、前記複数のガイドの前記所定箇所の位置を検出するガイド検出位置との間で移動可能であり、前記ガイド位置センサとして兼用されるとよい。
【0041】
このように、ボビン位置センサをガイド位置センサとして兼用することで、部品点数を削減し、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本実施形態に係る紡糸引取装置の正面図である。
【
図2】本実施形態に係る紡糸引取装置の側面図である。
【
図3】紡糸巻取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】トラバース装置及び糸掛け機構を模式的に示す図である。
【
図7】ボビンの長さが規定寸法よりも長い場合のガイドの位置調整を示す模式図である。
【
図8】ボビンの長さが規定寸法よりも短い場合のガイドの位置調整を示す模式図である。
【
図9】糸を巻き取るボビンを新しいボビンに切り換える際の一連の流れを示すフローチャートである。
【
図10】糸掛け機構の第1変形例を示す模式図である。
【
図11】第1変形例の移動装置を示す斜視図である。
【
図12】糸掛け機構の第2変形例を示す模式図である。
【
図13】糸掛け機構の第3変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明に係る紡糸巻取装置を紡糸引取装置に適用したものである。
【0044】
(紡糸引取装置)
図1は、本実施形態に係る紡糸引取装置の正面図であり、
図2は、本実施形態に係る紡糸引取装置の側面図であり、
図3は、紡糸巻取装置の電気的構成を示すブロック図である。なお、以下では、
図1及び
図2に示す前後左右上下の各方向を、紡糸引取装置の前後左右上下と定義する。
【0045】
紡糸引取装置1は、紡糸装置2から紡出される複数の糸Yを引き取る装置であり、ゴデットローラ3、4及び巻取部5を備えている。紡糸装置2は、紡糸引取装置1の上方に配置されており、複数の合成繊維である糸Yを紡出する。ゴデットローラ3、4は、紡糸装置2の下方に配置されており、不図示のモータによって回転駆動される。紡糸装置2から紡出された複数の糸Yは、ゴデットローラ3、4の順に巻き掛けられており、ゴデットローラ3、4によって巻取部5へ送られる。
【0046】
巻取部5は、ゴデットローラ3、4の下方に配置された2つの紡糸巻取装置10を有する。2つの紡糸巻取装置10は、ゴデットローラ3、4から送られる複数の糸Yの糸道を挟んで略左右対称に配置されている。紡糸装置2から紡出された複数の糸Yは、2つの紡糸巻取装置10に分けて送られる。例えば、紡糸装置2から32本の糸Yが送られてくる場合に、その半分の16本が左側の紡糸巻取装置10で巻き取られ、残りの16本が右側の紡糸巻取装置10で巻き取られる。なお、紡糸巻取装置10で巻き取られる糸Yの本数はこれに限定されるものではない。
【0047】
紡糸巻取装置10は、ボビンホルダ11に保持されている複数のボビンBに複数の糸Yを巻き取って、複数のパッケージPを形成する。各紡糸巻取装置10には、2本のボビンホルダ11が設けられている。ボビンホルダ11は、前後方向に延びる軸部材であり、その後端部が機台12に設けられたターレット13によって片持ち支持されている。ボビンホルダ11は、軸方向に複数(本実施形態では16個)のボビンBを並べて保持することができる。ボビンホルダ11は、ボビンホルダモータ14(
図3参照)によって軸周りに回転駆動される。
【0048】
ターレット13は、機台12に回転可能に取り付けられた円板状の部材であり、ターレットモータ15(
図3参照)によって軸周りに回転駆動される。ターレット13が回転すると、ターレット13に支持された2本のボビンホルダ11の位置が、上側の巻取開始位置A1と下側の交換位置A2との間で切り換えられる。巻取開始位置A1に位置するボビンホルダ11では、新しいボビンBへの複数の糸Yの巻き取りを開始することができる。一方、交換位置A2に位置するボビンホルダ11では、オペレータが複数のボビンBを交換すること、すなわち、完成した複数のパッケージPを取り外し、新しい複数のボビンBを装着することができる。複数のボビンBは、ボビンホルダ11の前側から着脱可能であり、後側から詰めた状態で装着される。
【0049】
紡糸巻取装置10は、ボビンホルダ11と略平行に前後方向に延びる支持フレーム16を有する。支持フレーム16は、その後端部が機台12によって片持ち支持されている。支持フレーム16の上部には、前後方向に延びるガイド支持体17が設けられている。ガイド支持体17には、ボビンホルダ11に保持される複数のボビンBに対応して、複数の支点ガイド18が前後方向に並んで設けられている。また、支持フレーム16には、ボビンホルダ11に保持される複数のボビンBに対応して、複数のトラバース装置19が前後方向に並んで設けられている。各トラバース装置19は、対応する支点ガイド18を中心に糸Yを前後方向に綾振りする。
【0050】
紡糸巻取装置10は、支持フレーム16によって回転可能に支持されたコンタクトローラ20を有する。コンタクトローラ20は、支持フレーム16の下方に設けられている。コンタクトローラ20は、コンタクトローラモータ27(
図3参照)によって軸周りに回転駆動され、巻取開始位置A1に位置するボビンホルダ11に保持されている複数のパッケージPの外周面に接触する。糸Yの巻取り時に、コンタクトローラ20がパッケージPに所定の接圧を付与しながら回転することで、パッケージPの形状を整えることができる。
【0051】
紡糸巻取装置10の各部の動作は、制御装置21(
図3参照)によって制御される。紡糸巻取装置10は、複数のトラバース装置19によって綾振りされている複数の糸Yの巻き取りを、巻取開始位置A1に位置するボビンホルダ11に装着されている複数の新しいボビンBに対して開始する。糸Yの巻き取り中には、適宜、コンタクトローラ20を昇降駆動及び/又はターレット13を回転駆動させることで、パッケージPの径の増加に対応しながら、複数のパッケージPを形成する。
【0052】
複数のパッケージPが完成すると、制御装置21は、ターレット13を回転駆動し、2本のボビンホルダ11の位置を切り換える。つまり、交換位置A2にあったボビンホルダ11が巻取開始位置A1に移動し、このボビンホルダ11に装着されている複数の新しいボビンBへの糸Yの巻き取りが開始される。また、巻取開始位置A1にあったボビンホルダ11が交換位置A2に移動し、パッケージPの取り外し及び新しいボビンBの装着が行われる。なお、本明細書では、糸Yを巻き取るボビンBを、新たに交換位置A2に移動した一方のボビンホルダ11に保持されているボビンB(パッケージP)から、新たに巻取開始位置A1に移動した他方のボビンホルダ11に保持されている新しいボビンBに切り換えることを、「糸Yを巻き取るボビンBを新しいボビンBに切り換える」と表現している。
【0053】
(トラバース装置)
図4は、トラバース装置19及び後述の糸掛け機構を模式的に示す図である。
図4は、糸Yを巻き取るボビンBを、糸Yを巻き取るボビンBを新しいボビンBに切り換えるために、ターレット13を回転させた直後の状態、すなわち、新しいボビンBにまだ糸掛けが行われておらず、パッケージPに糸Yがつながったままの状態を示している。以下の説明では、適宜、前後方向を軸方向、前側を先端側、後側を基端側と言う。また、
図4以降の各図では、機台12、支持フレーム16、コンタクトローラ20等の図示を適宜省略している。
【0054】
トラバース装置19は、トラバースガイド25と、2枚の羽根ガイド26とを備えている。トラバースガイド25は、軸方向に延びるガイド縁25aを有する板状の部材である。綾振りされる糸Yは、ガイド縁25aに接触しており、ガイド縁25aに沿って軸方向に案内される。2枚の羽根ガイド26は、トラバースガイド25の厚さ方向(
図4の紙面垂直方向)に重なるように配置されている。2枚の羽根ガイド26は、トラバースガイド25の厚さ方向と平行な軸を中心に互いに反対方向に回転する。
【0055】
このように構成されたトラバース装置19によれば、トラバースガイド25のガイド縁25aに接触している糸Yは、一方の羽根ガイド26によって先端側に移動させられる。そして、綾振り範囲Tの先端側の端部に到達したときに、他方の羽根ガイド26に受け渡される。他方の羽根ガイド26に受け渡された糸Yは、他方の羽根ガイド26によって基端側に移動させられる。そして、綾振り範囲Tの基端側の端部に到達したときに、一方の羽根ガイド26に受け渡される。以下、同様の動作が繰り返されることにより、糸Yは、支点ガイド18を中心に綾振り範囲Tで軸方向に綾振りされる。
【0056】
(糸掛け機構)
ターレット13を回転させ、糸Yを巻き取るボビンBを新しいボビンBに切り換える際には、新しいボビンBに糸掛けを行う必要がある。ボビンBの外周面のうち軸方向の一方側寄りにはスリットSが形成されており、本実施形態ではスリットSが先端側寄りとなるように、複数のボビンBがボビンホルダ11に装着されている。このスリットSに糸Yを引っ掛けることによって新しいボビンBへの糸掛けが行われる。紡糸巻取装置10は、糸Yを巻き取るボビンBを新しいボビンBに切り換える際にスリットSに糸掛けを行うための糸掛け機構30を有する。
【0057】
図4に示すように、糸掛け機構30は、複数のガイド31と、駆動装置32と、ボビン位置センサ22と、ガイド位置センサ23と、を有する。糸掛け機構30は、支持フレーム16内に配置されている。ガイド31は、糸Yを捕捉することのできるフック形状を有する。ガイド31は1つのボビンBに対して1つ設けられており、複数のガイド31が複数のボビンBに対応して等ピッチで軸方向に並んでいる。
【0058】
駆動装置32は、複数のガイド31を軸方向に移動させるための装置である。駆動装置32は、軸方向に延びる支持部材33と、支持部材33を軸方向に移動させる移動装置34と、を有する。複数のガイド31は、ボビンBの長さ(規定寸法)と同じ間隔で軸方向に並んだ状態で支持部材33に固定されている。移動装置34によって支持部材33を軸方向に移動させることで、複数のガイド31を一斉に軸方向に移動させることができる。移動装置34は、支持部材33の軸方向の移動距離を制御できればどのようなものでもよい。例えば、移動装置34は、サーボモータとボールねじの組み合わせや、リニアモータ等からなる。駆動装置32(移動装置34)の動作は、制御装置21(
図3参照)によって制御される。
【0059】
糸YをボビンBに巻き取っている間、ガイド31は、綾振りされる糸Yが引っ掛からないように、綾振り範囲Tよりも先端側の糸掛け位置(
図4の実線で示す位置)で停止している。一方、糸Yを巻き取るボビンBを新しいボビンBに切り換える際には、パッケージPにつながった状態で綾振りされている糸Yを捕捉するため、ガイド31は、糸掛け位置から綾振り範囲T内の捕捉位置(
図4の点線で示す位置)まで移動する。本実施形態では、ガイド31の糸掛け位置は、対応するボビンBのスリットSと同じ位置とされている。このため、捕捉位置で糸Yを捕捉したガイド31が糸掛け位置に戻ると、ガイド31に捕捉されている糸YがスリットSに掛けられる。なお、ガイド31の糸掛け位置をスリットSと同じ位置にすることは必須ではなく、スリットSよりも先端側の所定位置(例えばスリットSから先端側に0~5mmの範囲内の所定位置)でもよい。
【0060】
ボビン位置センサ22及びガイド位置センサ23は、支持フレーム16(
図2参照)の前端部に取り付けられている。ボビン位置センサ22は、巻取開始位置A1に位置するボビンホルダ11に保持されている最も先端側のボビンBの先端面までの距離aを測定可能な光学センサである。ボビン位置センサ22によって距離aを測定することで、ボビンBの長さやスリットSの軸方向位置を把握することができる。ガイド位置センサ23は、最も先端側のガイド31までの距離bを測定可能な光学センサである。ガイド位置センサ23によって距離bを測定することで、ガイド31の軸方向位置を把握することができる。ただし、ボビン位置センサ22及びガイド位置センサ23は、ボビンBやガイド31の位置を検出できればどのようなものでも構わない。
【0061】
(糸掛け機構の基本動作)
糸Yを巻き取るボビンBを新しいボビンBに切り換える際の糸掛け機構30の基本動作について説明する。
図5及び
図6は、糸掛け機構30の基本動作を示す模式図である。なお、
図5及び
図6では、1つのボビンBに対応する1つのガイド31の動作のみを図示しているが、他のガイド31も同様に動作する。
【0062】
パッケージPが完成すると、制御装置21は、糸Yを巻き取るボビンBを新しいボビンBに切り換えるためにターレット13を回転させる。
図5のa図は、ターレット13を回転させた直後の状態を示したものである。このとき、ガイド31は糸掛け位置で停止しており、糸YはパッケージPにつながったままトラバース装置19によって綾振りされている。また、巻取開始位置A1に位置するボビンホルダ11は回転駆動されている。
【0063】
次に、制御装置21は、
図5のb図に示すように、移動装置34を駆動して支持部材33を基端側に移動させることにより、ガイド31を捕捉位置まで移動させる。そうすると、綾振りされている糸Yがガイド31に引っ掛かり、捕捉される。続けて、制御装置21は、
図6のa図に示すように、移動装置34を駆動して支持部材33を先端側に移動させることにより、糸Yを捕捉したガイド31を糸掛け位置に戻す。これによって、糸YがスリットSに引っ掛かり、糸Yの張力が大きくなると糸Yが切れ、新しいボビンBへの糸Yの巻き取りが開始される。
【0064】
その後、ガイド31を所定時間だけ糸掛け位置に維持しておくことで、
図6のb図に示すように、スリットSの位置にバンチ巻きW1が形成される。バンチ巻きW1の形成後、制御装置21は、
図6のb図に示すように、ガイド31を再び捕捉位置に向かって移動させる。この過程で、スリットSと綾振り範囲Tとの間にテール巻きW2が形成される。テール巻きW2の部分の糸Yは、後工程で複数のパッケージPの糸Yをつなぐ際に使用される。ガイド31がさらに捕捉位置まで移動する過程で、糸Yはガイド31から外れ、トラバース装置19の羽根ガイド26によって拾われる。その結果、糸Yが綾振りされながら新しいボビンBに巻き取られるようになる。最後に、制御装置21は、ガイド31を捕捉位置から糸掛け位置に戻す。なお、ガイド31が捕捉位置まで移動する過程で糸Yをガイド31から外すための構成については、例えば特許文献1に記載の構成等を採用することができる。
【0065】
(ガイドの位置調整)
上述のガイド31の糸掛け位置は、ボビンBの長さが所定の規定寸法であることを前提として決められている。つまり、ボビンBの長さが規定寸法の場合に、
図4に示すように、各ガイド31の糸掛け位置が対応するボビンBのスリットSと同じ位置になるように設定されている。しかし、ボビンBの長さに所定の規定寸法に対する寸法誤差がある場合は、軸方向においてガイド31の糸掛け位置とスリットSの位置とがずれてしまい、ガイド31を糸掛け位置に移動させてもスリットSに糸Yを掛けられないという問題が生じていた。
【0066】
このような問題は、本実施形態のように、1本のボビンホルダ11に多数のボビンBが装着されている場合に顕著である。というのも、ボビンBは生産ロット順に使用されるのが通常であり、1本のボビンホルダ11に装着される各ボビンBの寸法誤差は略同じであることが多い。そうすると、複数のボビンBを軸方向に並べることで寸法誤差が累積され、特に先端側のガイド31ほどスリットSに対する相対位置のずれが大きくなり、糸掛けの失敗が生じやすくなっていた。なお、この問題は、ボビンBに寸法誤差がある場合だけでなく、ガイド31の組み付け精度が低く、ガイド31の軸方向位置が本来の位置からずれている場合にも生じ得る。そこで、本実施形態では、ボビン位置センサ22及びガイド位置センサ23によって検出される距離a、bに基づいて、ガイド31の糸掛け位置を調整することで、糸掛けの失敗を抑えるように構成されている。
【0067】
図7は、ボビンBの長さが規定寸法よりも長い場合のガイド31の位置調整を示す模式図であり、
図8は、ボビンの長さが規定寸法よりも短い場合のガイド31の位置調整を示す模式図であり、何れもガイド31が糸掛け位置に位置している状態を示す。ここでは、説明を簡略にするため、ガイド31には位置ずれが生じていないものとする。つまり、ガイド位置センサ23によって検出される距離bは、ガイド31が本来の糸掛け位置に位置している場合のb0で一定とする。
図7のa図及び
図8のa図は、何れもボビンBの長さが規定寸法の場合を図示しており、このときボビン位置センサ22によって検出される距離aをa0とする。
【0068】
まず、ボビンBの長さが規定寸法よりも長い場合のガイド31の位置調整について説明する。
図7のa図に示すように、ボビンBが規定寸法の場合は、軸方向において各ガイド31の糸掛け位置が対応するボビンBのスリットSの位置と一致している。しかし、
図7のb図に示すように、ボビンBが規定寸法よりも長い場合には、各ガイド31の糸掛け位置が対応するスリットSよりも相対的に基端側にずれる。このとき、ボビン位置センサ22によって検出される距離a1はa0よりも短い。ガイド31の糸掛け位置がスリットSよりも基端側なので、各ガイド31が糸Yを捕捉後に捕捉位置から糸掛け位置に戻っても、スリットSに到達せず、ボビンBに糸掛けを行うことができない。
【0069】
そこで、制御装置21は、a1<a0の場合、
図7のc図に示すように、支持部材33を先端側に(a0-a1)だけ移動させる。こうすることで、最も先端側のガイド31の糸掛け位置がスリットSの位置に一致する。このとき、他のガイド31の糸掛け位置は、対応するスリットSよりも先端側にずれるが、これはそれほど大きな問題とはならない。というのも、ガイド31が捕捉位置から糸掛け位置に戻ると、糸YがスリットSを跨ぐことになるため、スリットSに糸Yを掛けられる可能性が高いからである。なお、支持部材33を先端側に移動させる距離は(a0-a1)より大きくても構わない。
【0070】
次に、ボビンBの長さが規定寸法よりも短い場合のガイド31の位置調整について説明する。
図8のa図に示すように、ボビンBが規定寸法の場合は、軸方向において各ガイド31の糸掛け位置が対応するボビンBのスリットSの位置と一致している。しかし、
図8のb図に示すように、ボビンBが規定寸法よりも短い場合には、各ガイド31の糸掛け位置が対応するスリットSよりも相対的に先端側にずれる。このとき、ボビン位置センサ22によって検出される距離a2はa0よりも長い。
【0071】
上述のように、ガイド31の糸掛け位置がスリットSよりも多少先端側でも糸掛けは可能なので、ボビンBが規定寸法より短い場合(a2>a0の場合)には、ガイド31の位置調整を行わないことも可能である。しかしながら、ガイド31の糸掛け位置があまりにも先端側に寄っていると、スリットSに対する糸Yの角度が大きくなり、糸掛けに失敗する可能性が高くなる。したがって、a2>a0の場合は、(a2-a0)が所定の閾値よりも大きい場合にのみ、ガイド31の位置調整を行うのが好ましい。ただし、a2>a0の場合に、常にガイド31の位置調整を行うようにしてもよい。
【0072】
制御装置21は、(a2-a0)が所定の閾値よりも大きい場合、
図8のc図に示すように、支持部材33を基端側に移動させる。このとき、最も基端側のガイド31の糸掛け位置がスリットSよりも基端側にならないように、支持部材33を基端側に移動させることのできる調整代は、(a2-a0)をボビンBの数で除した値であり、本実施形態では(a2-a0)/16である。ここでは、支持部材33を基端側に(a2-a0)/16だけ移動させているが、移動量を(a2-a0)/16よりも小さくしてもよい。
【0073】
以上のように、ボビン位置センサ22によって測定される距離aに応じて、ガイド31の糸掛け位置を適切に調整することで、糸掛けの成功率を向上させることができる。なお、
図7及び
図8に示した例では、ガイド位置センサ23によって測定される距離bは変わらないものとした。しかし、組み付け精度等によってガイド31自身の位置がずれる場合には、ガイド位置センサ23によって測定される距離bも考慮して、ガイド31(支持部材33)の移動量を調整すればよい。
【0074】
(ボビン切り換え時の一連の流れ)
図9は、糸Yを巻き取るボビンBを新しいボビンBに切り換える際の一連の流れを示すフローチャートである。糸Yを巻き取るボビンBを新しいボビンBに切り換える際には、まず、制御装置21は、ターレット13を回転させて2本のボビンホルダ11の位置を切り換える(ステップS10)。続けて、ボビン位置センサ22及びガイド位置センサ23によって距離a、bを測定し、制御装置21は測定値を記憶する(ステップS11)。
【0075】
次に、制御装置21は、ボビン位置センサ22による距離aの測定結果に基づいて、糸YをボビンBの所定の巻取許容範囲内で巻くことができるか否かを判断する(ステップS12)。ボビンBの長さが規定寸法から大きく外れている場合、ガイド31の位置調整によって仮に糸掛けができたとしても、糸YがボビンBに巻き取られる範囲(糸Yが綾振りされる範囲)がボビンBの片側に寄りすぎて、商品としては使い物にならない不良パッケージが形成されてしまう。これを避けるために、制御装置21はステップS12の判断を行う。具体的には、例えば距離aが(a0±5mm)以内であるか否かを判断すればよい。±5mmという数値は適宜変更が可能であるが、後述する16個分のボビンBの寸法公差(±3.2mm)よりは絶対値が大きいものとする。糸YをボビンBの巻取許容範囲内で巻くことができない、すなわち、aが(a0±5mm)の範囲外と判断すると(ステップS12でNO)、制御装置21は、ボビンホルダ11やトラバース装置19等を停止させ、糸Yの巻き取りを中止する(ステップS13)。
【0076】
ステップS12でYESだった場合、続けて、制御装置21は、ボビン位置センサ22による距離aの測定結果に基づいて、ボビンBの長さが所定の寸法公差範囲内か否かを判断する(ステップS14)。例えば、1つのボビンBの寸法公差を±0.2mmに設定している場合、16個のボビンBを装着している本実施形態では、距離aが(a0±3.2)mm以内であれば、ボビンBの長さが寸法公差範囲に収まっているということになる。ボビンBの長さが寸法公差範囲から外れていても、糸Yの巻き取りを行うことはできるが、この状態を放置しておくのは好ましくない。そこで、ボビンBの長さが寸法公差範囲から外れていた場合は(ステップS14でNO)、制御装置21は、紡糸巻取装置10に設けられているアラーム90(
図3参照)を作動する(ステップS15)。これによって、オペレータはボビンBの長さが寸法公差範囲から外れていることを認識することができ、ボビンBの品質管理を適切に行うことができる。
【0077】
次に、制御装置21は、記憶している距離a、bの測定結果に基づいて、ガイド31の位置調整が必要か否かを判断する(ステップS16)。既に説明したように、ガイド31の糸掛け位置が対応するスリットSよりも相対的に基端側となっている場合(
図7のb図参照)、及び、ガイド31の糸掛け位置が対応するスリットSよりも所定の閾値を超えて相対的に先端側となっている場合(
図8のb図参照)には、ガイド31の位置調整が必要と判断する。制御装置21は、ガイド31の位置調整が必要と判断すると(ステップS16でYES)、ガイド31の位置調整を行い(ステップS17)、それから糸掛け機構30を適切に動作させて、新しいボビンBへの糸掛けを行う(ステップS18)。一方、ガイド31の位置調整が不要と判断すると(ステップS16でNO)、ガイド31の位置調整を行わずに、新しいボビンBへの糸掛けを行う(ステップS18)。
【0078】
本実施形態では、制御装置21が、これまでボビン位置センサ22によって測定された距離a及びガイド位置センサ23によって測定された距離bに関するデータを蓄積している。そして、蓄積したデータに基づいて、ボビンBの品質管理を行っている。例えば、ボビンBの長さの寸法誤差が徐々に大きくなっており、次回新たに装着されるボビンBの長さが寸法公差範囲を外れそうだと予測すると、アラーム90でその旨をオペレータに知らせるよう構成されている。
【0079】
(効果)
本実施形態では、複数のボビンBに形成されたスリットSに複数の糸Yを掛けるための複数のガイド31と、ガイド31を軸方向に移動させる駆動装置32と、ボビンホルダ11に保持された複数のボビンBの所定箇所の軸方向位置を検出するボビン位置センサ22と、を有する糸掛け機構30が設けられている。そして、ボビン位置センサ22によって検出された新しいボビンBの位置に基づいて、ガイド31の軸方向位置を調整するように構成されている。このため、新しいボビンBの長さに所定の規定寸法に対する寸法誤差があり、ガイド31が新しいボビンBに形成されたスリットSに対して相対的に軸方向位置がずれている場合でも、ガイド31の位置調整を行うことで位置ずれを抑えることができる。したがって、ボビンBの長さに寸法誤差があっても、新しいボビンBへの切り換え時にスリットSに糸を掛けることができる。
【0080】
本実施形態では、制御装置21は、糸Yを捕捉したガイド31を対応するスリットSに向かって移動させる際に、ガイド31を軸方向においてスリットSと同じ位置、又は、スリットSを越えた所定位置で停止させるように調整を行う。このように、糸Yを捕捉したガイド31がスリットSと同じ位置、又は、スリットSを越えた所定位置まで移動することによって、確実にスリットSに糸Yを掛けることができる。
【0081】
本実施形態では、軸方向においてボビンホルダ11の先端側(一方側)からボビンBが着脱され、ボビン位置センサ22は、新しい複数のボビンBのうち最も先端側に保持されたボビンBの先端面の位置を検出する。ボビンホルダ11の先端側からボビンBが着脱される場合、ボビンBは基端側(他方側)から順番に詰められることになるので、先端側のボビンBほど寸法誤差が累積されて位置ずれが大きくなる。したがって、最も先端側のボビンBの先端面の位置を検出することによって、ガイド31とボビンBとの相対位置のずれを精度よく求めることができる。
【0082】
本実施形態では、ボビン位置センサ22は、新しいボビンBが回転しているときに、ボビンBの先端面の位置を検出する。例えば、ボビンBの先端面に凹凸がある場合、特異な凹凸の箇所で位置を検出してしまうと、ボビンBの位置の検出誤差が大きくなってしまう。この点、ボビンBが回転しているときに先端面の位置を検出すれば、特異な凹凸の影響を抑えることができる。
【0083】
本実施形態では、ボビンホルダ11は、少なくとも、糸Yを新しいボビンBに巻き取り開始する巻取開始位置A1と、ボビンBを交換するための交換位置A2との間で移動可能であり、ボビン位置センサ22は、ボビンホルダ11が巻取開始位置A1に位置しているときに、ボビンBの先端面の位置を検出する。この場合、ボビン位置センサ22を巻取開始位置A1の近傍に配置すればよく、交換位置A2から遠ざけることができる。したがって、ボビン位置センサ22をボビンBの交換作業の邪魔にならないように容易に配置することができる。
【0084】
本実施形態では、オペレータに所定状態を知らせるアラーム90が設けられており、制御装置21は、ボビン位置センサ22の検出結果から、新しいボビンBの長さが所定の寸法公差範囲から外れていると判断すると、アラーム90を作動させる。このように構成すれば、ボビンBの長さが寸法公差範囲から外れていることをオペレータがすぐに把握することができ、適切に対処することができる。
【0085】
本実施形態では、制御装置21は、ボビン位置センサ22の検出結果から、糸Yを新しいボビンBの所定の巻取許容範囲内で巻くことができないと判断すると、糸Yの巻き取りを中止する。このように構成すれば、糸Yが巻取許容範囲内で巻かれていない不良パッケージが形成されることを防止することができる。
【0086】
本実施形態では、制御装置21は、ボビン位置センサ22の検出結果を蓄積し、蓄積したデータに基づいてボビンBの品質管理を行う。こうすれば、例えばボビンBの長さの傾向等を把握することができ、ボビンBの品質管理をより適切に行うことができる。
【0087】
本実施形態では、駆動装置32は、複数のガイド31を支持する支持部材33と、支持部材33を軸方向に移動させることで、複数のガイド31を一斉に軸方向に移動させる移動装置34と、を有する。このような構成によれば、各ガイド31を個別に移動させる場合と比べて、装置構成を簡易にすることができる。
【0088】
本実施形態では、複数のガイド31の所定箇所の軸方向位置を検出するガイド位置センサ23をさらに備え、制御装置21は、ボビン位置センサ22の検出結果及びガイド位置センサ23の検出結果から得られる軸方向におけるガイド31と新しいボビンBとの相対位置に基づいて、ガイド31の軸方向位置を調整する。ガイド31の組み付け精度等によっては、ガイド31の軸方向位置が本来の位置からずれている場合がある。このような場合でも、ガイド位置センサ23を設けておけば、その都度、ガイド31と新しいボビンBとの相対位置を把握することができるので、ガイド31の位置調整を適切に行うことができる。
【0089】
(他の実施形態)
上記実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0090】
(第1変形例)
図10は、糸掛け機構の第1変形例を示す模式図である。
図10ではボビンBが規定寸法よりも短い場合を図示しており、
図10のa図はガイド41の糸掛け位置を調整する前の状態、
図10のb図はガイド41の糸掛け位置を調整した後の状態をそれぞれ示している。第1変形例に係る糸掛け機構40は、複数のガイド41と、複数のナット42と、ねじ部材43と、移動装置44と、回転装置45と、を有する。複数のナット42、ねじ部材43、移動装置44及び回転装置45によって、本発明の「駆動装置」が構成されている。また、複数のナット42、ねじ部材43及び回転装置45によって、本発明の「ピッチ変更機構」が構成されている。このピッチ変更機構によって、複数のガイド41の軸方向のピッチを変更することができる。
【0091】
ねじ部材43は、軸方向に延びており、複数のナット42に対応して複数の雄ねじ部43aが軸方向に並んで形成されている。各ガイド41は、雄ねじ部43aに螺合されたナット42を介してねじ部材43に取り付けられている。
【0092】
図11は、第1変形例の移動装置44を示す斜視図である。移動装置44は、ねじ部材43を軸方向に移動させるための装置であり、シリンダ46及び係合部材47を有する。シリンダ46のロッド46aは軸方向に伸縮し、ロッド46aの先端部に係合部材47が固定されている。シリンダ46の動作は、制御装置21によって制御される。
【0093】
ねじ部材43の一部には環状溝43bが形成されている。一方、係合部材47には、U字状に切り欠かれたU字部47aが形成されている。
図11では、構造を分かりやすくするため、係合部材47をねじ部材43から離間させた状態を図示しているが、実際には、係合部材47のU字部47aは環状溝43bに係合している。U字部47aの内径は環状溝43bの外径よりもわずかに大きくされており、係合部材47がねじ部材43に係合していても、ねじ部材43は軸周りに回転可能となっている。
【0094】
制御装置21がシリンダ46のロッド46aを伸縮させると、係合部材47が軸方向に移動する。係合部材47が軸方向に移動すると、係合部材47が環状溝43bの側面を押すことによって、ねじ部材43が軸方向に移動する。なお、移動装置44の具体的な構成はこれに限られるものではなく、ねじ部材43の回転を許容し、且つ、ねじ部材43を軸方向に移動させることができれば、どのような構成でも構わない。
【0095】
図10に戻って、回転装置45は、ねじ部材43を軸周りに回転させるための装置であり、モータ48及びロッド49を有する。ロッド49はモータ48の出力軸48aに連結されており、モータ48が回転駆動されると、ロッド49はねじ部材43の軸周りに回転する。モータ48の動作は、制御装置21によって制御される。
【0096】
ねじ部材43の先端部には、軸方向に延びる長孔43cが形成されている。回転装置45のロッド49は、長孔43cを貫通している。ロッド49が回転すると、ロッド49によって長孔43cの側面が押されることで、ねじ部材43に回転トルクが加えられ、ねじ部材43が軸周りに回転する。ロッド49は長孔43c内で軸方向に相対移動可能であり、移動装置44によってねじ部材43を軸方向に移動させる際に、ロッド49が妨げとなることはない。
【0097】
制御装置21がモータ48を回転駆動すると、ロッド49からねじ部材43に回転トルクが伝達されることによって、ねじ部材43が軸周りに回転する。なお、回転装置45の具体的な構成はこれに限られるものではなく、ねじ部材43の軸方向の移動を許容し、且つ、ねじ部材43を軸周りに回転させることができれば、どのような構成でも構わない。
【0098】
ここで、ねじ部材43に形成された複数の雄ねじ部43aのリード(ねじが1回転したときに進む距離)は、基端側からn番目の雄ねじ部43aのリードをRnとすると、
R1:R2:R3・・・R15:R16=1:2:3・・・15:16
と、先端側の雄ねじ部43aほどリードが徐々に大きくなるようにしている。各ナット42にも、これに合わせて雌ねじが切られている。したがって、回転装置45によってねじ部材43を軸周りに回転させると、先端側のナット42(ガイド41)ほど移動距離が比例的に長くなる。その結果、複数のガイド41を等ピッチに維持したままピッチを変更することができる。
【0099】
上記実施形態では、全てのガイド31を一律に移動させることしかできなかったため、全てのガイド31の糸掛け位置を、対応するスリットSに合致させることはできなかった(
図7のc図及び
図8のc図参照)。しかし、ピッチ変更機構を有する糸掛け機構40によれば、ボビンBが規定寸法と異なる場合でも、ガイド41のピッチがボビンBの長さと同じになるようにねじ部材43の回転量を調整すれば、全てのガイド41の糸掛け位置を対応するスリットSと同じ位置に調整することができる。その結果、糸掛けの成功率を向上させることができる。
【0100】
例えば、
図10のa図に示すように、ボビンBが規定寸法よりも短い場合には、各ガイド41の糸掛け位置は対応するスリットSよりも先端側となる。そこで、各ガイド41を基端側に移動させるべくねじ部材43を所定量だけ回転させると、
図10のb図に示すように、各ガイド41の糸掛け位置を対応するスリットSと同じ位置に調整できる。ボビンBが規定寸法よりも長い場合でも、同様に、ガイド41の糸掛け位置を対応するスリットSと同じ位置に調整できる。
【0101】
(第2変形例)
図12は、糸掛け機構の第2変形例を示す模式図である。
図12ではボビンBが規定寸法よりも短い場合を図示しており、
図12のa図はガイド51の糸掛け位置を調整する前の状態、
図12のb図はガイド51の糸掛け位置を調整した後の状態をそれぞれ示している。第2変形例に係る糸掛け機構50は、複数のガイド51と、パンタグラフ機構52と、伸縮装置53と、ベース部材54と、移動装置55と、を有する。パンタグラフ機構52、伸縮装置53、ベース部材54及び移動装置55によって、本発明の「駆動装置」が構成されている。また、パンタグラフ機構52、伸縮装置53及びベース部材54によって、本発明の「ピッチ変更機構」が構成されている。このピッチ変更機構によって、複数のガイド51の軸方向のピッチを変更することができる。
【0102】
パンタグラフ機構52は、複数のリンク52aと、複数のジョイント52bとを有しており、軸方向に伸縮可能に構成されている。パンタグラフ機構52自体は公知のリンク機構であるので、ここでの詳細な説明は省略する。伸縮装置53は、パンタグラフ機構52を伸縮させるための装置であり、例えばシリンダによって構成されている。パンタグラフ機構52及び伸縮装置53はベース部材54に搭載されている。移動装置55は、ベース部材54を軸方向に移動させるための装置であり、例えばシリンダによって構成されている。伸縮装置53及び移動装置55の動作は、制御装置21によって制御される。
【0103】
パンタグラフ機構52の最も基端側のジョイント52bは、ベース部材54に固定されている。一方、最も先端側のジョイント52bは、伸縮装置53に連結されている。複数のガイド51は、軸方向において等ピッチに配置されており、取付部材56を介してジョイント52bに取り付けられている。したがって、伸縮装置53によって最も先端側のジョイント52bを軸方向に移動させると、それに伴ってパンタグラフ機構52が伸縮し、複数のガイド51を等ピッチに維持したままピッチを変更することができる。
【0104】
例えば、
図12のa図に示すように、ボビンBが規定寸法よりも短い場合には、各ガイド41の糸掛け位置は対応するスリットSよりも先端側となる。そこで、各ガイド51を基端側に移動させるべく伸縮装置53によってパンタグラフ機構52を収縮させると、
図12のb図に示すように、各ガイド51の糸掛け位置を対応するスリットSと同じ位置に調整できる。ボビンBが規定寸法よりも長い場合でも、同様に、ガイド51の糸掛け位置を対応するスリットSと同じ位置に調整できる。
【0105】
(第3変形例)
図13は、糸掛け機構の第3変形例を示す模式図である。
図13ではボビンBが規定寸法よりも短い場合を図示しており、
図13のa図はガイド61の糸掛け位置を調整する前の状態、
図13のb図はガイド61の糸掛け位置を調整した後の状態をそれぞれ示している。第3変形例に係る糸掛け機構60は、複数のガイド61と、ナット62と、ねじ部材63と、移動装置64と、回転装置65と、を有する。ナット62、ねじ部材63、移動装置64及び回転装置65によって、本発明の「駆動装置」が構成されている。なお、移動装置64及び回転装置65は、第1変形例の移動装置44及び回転装置45と同様の構成であるので、ここでの説明は省略する。
【0106】
本変形例では、複数(16個)のガイド61が、先端側半分(8個)のガイド61からなる第1のグループと、基端側半分(8個)のガイド61からなる第2のグループとに分けられている。第1のグループに属するガイド61は、ねじ部材63に対して軸方向に一体移動可能に構成されている。一方、第2のグループに属するガイド61は、ねじ部材63に対して軸方向に移動できないように規制されている。以下、詳細に説明する。
【0107】
第1のグループに属するガイド61のうち、少なくとも1つのガイド61(本変形例では最も基端側のガイド61)は、ナット62を介してねじ部材63に取り付けられている。ナット62は、ねじ部材63に形成された雄ねじ部63aに螺合している。一方、第1のグループの残りのガイド61は、リング部材66を介してねじ部材63に取り付けられている。リング部材66は、ねじ部材63に緩く嵌められており、ねじ部材63に対して相対回転も軸方向に相対移動も可能である。ナット62と各リング部材66とは、連結部材67によって軸方向に一体移動可能に連結されている。このような構成により、回転装置65によってねじ部材63を軸周りに回転させると、第1のグループに属するガイド61は軸方向に一体移動する。
【0108】
第2のグループに属するガイド61は、何れもリング部材68を介してねじ部材63に取り付けられている。リング部材68は、例えば、ねじ部材63に形成された不図示の環状溝に多少隙間を空けた状態で係合している。これによって、リング部材68は、ねじ部材63に対して相対回転可能ではあるが、軸方向には相対移動できないように規制されている。このような構成により、回転装置65によってねじ部材63を軸周りに回転させても、第2のグループに属するガイド61は軸方向には移動しない。
【0109】
例えば、
図13のa図に示すように、ボビンBが規定寸法よりも短い場合には、各ガイド41の糸掛け位置は対応するスリットSよりも先端側となる。そこで、全体で最も基端側のガイド61の糸掛け位置が、対応するスリットSと同じ位置になるように、移動装置64によってねじ部材63を基端側に移動させる。これによって、
図8のc図と同じ状態になる。本変形例では、続けて、第1のグループの最も基端側のガイド61の糸掛け位置が、対応するスリットSと同じ位置になるように、回転装置65によってねじ部材63を軸周りに回転させる。その結果、
図13のb図に示すように、第2のグループのガイド61の糸掛け位置は変わらないが、第1のグループのガイド61の糸掛け位置が対応するスリットSにさらに近づくように調整される。
【0110】
このように、第1のグループのガイド61がねじ部材63に対して軸方向に移動できれば、ねじ部材63を移動させることで全てのガイド61の位置を一律にしか調整できない場合と比べて、各ガイド61の位置調整の自由度が向上する。なお、本変形例では複数のガイド61を第1のグループと第2のグループとに分けたが、グループの分け方はこれに限定されず、3つ以上のグループに分けてもよい。
【0111】
(その他)
上記実施形態では、ガイド31の位置を検出するガイド位置センサ23を設けるものとしたが、ガイド位置センサ23を省略することも可能である。ガイド31、支持部材33、及び、移動装置34の組み付けが精度よく行われていれば、ガイド31の位置がずれることは考えにくいので、ガイド位置センサ23を省略しても特に問題ない。
【0112】
上記実施形態では、ボビン位置センサ22は、ボビンBが回転しているときに、ボビンBの先端面の位置を検出するものとした。しかしながら、ボビン位置センサ22が、ボビンB(ボビンホルダ11)が回転を停止しているときに、ボビンBの先端面の位置を検出するようにしてもよい。ボビンBの端面はボビンBの厚み分しかないので、ボビンBが回転しており振動が発生していると、ボビンBの端面の位置の検出に失敗するおそれがある。この点、ボビンBの回転を停止しているときに端面の位置を検出すれば、確実に端面の位置を検出することができる。
【0113】
上記実施形態では、ボビン位置センサ22によって、最も先端側のボビンBの先端面までの距離a、すなわち、当該先端面の位置を測定するものとした。しかしながら、ボビン位置センサ22で位置検出を行う箇所はこれに限定されず、複数のボビンBの他の箇所の位置を検出するようにしてもよい。ガイド位置センサ23も同様である。
【0114】
上記実施形態では、ボビン位置センサ22及びガイド位置センサ23が支持フレーム16に固定されているものとした。しかしながら、ボビン位置センサ22及びガイド位置センサ23を可動式に構成してもよい。この場合、ボビン位置センサ22を、新しいボビンBの位置を検出するボビン検出位置と、ガイド31の位置を検出するガイド検出位置との間で移動可能に構成すれば、ガイド位置センサ23を省略し、ボビン位置センサ22をガイド位置センサ23として兼用することも可能である。こうすれば、部品点数を削減し、コストを抑えることができる。
【0115】
上記実施形態では、移動装置34によって支持部材33を移動させることで、全てのガイド31を軸方向に一律に移動させるものした。しかしながら、複数のガイド31のそれぞれに対して個別に駆動装置を設け、各ガイド31を独立に移動させるようにしてもよい。こうすれば、各ガイド31を対応するスリットSに合わせて最適な位置に調整できるので、糸掛けを確実に成功させることができる。この場合、ボビン位置センサ22を各ボビンBに対して個別に設け、ガイド位置センサ23を各ガイド31に対して個別に設ければ、より細かなガイド31の位置調整が可能となる。
【0116】
上記実施形態では、ボビンBに形成されたスリットSが先端側寄りとなるように、ボビンBをボビンホルダ11に装着するものとした。しかしながら、スリットSが基端側寄りとなるように、ボビンBをボビンホルダ11に装着してもよい。この場合でも、ガイド31の位置調整を実行する際の基本的な考え方は上記実施形態と同じである。
【0117】
上記実施形態では、巻取部5に2つの紡糸巻取装置10が配置されており、各紡糸巻取装置10がゴデットローラ3、4から送られる複数の糸Yの糸道を挟んで略左右対称に配置され、且つ、1つの機台12に構成されるものであったが、これに限定されるものではない。2つの紡糸巻取装置10は略左右対称に配置されていなくてもよいし、1つの紡糸巻取装置10ごとに分割して個別に構成されていてもよいし、紡糸巻取装置10が1つであってもよい。
【0118】
上記実施形態では、各紡糸巻取装置10に2本のボビンホルダ11を設けるものとしたが、3本以上のボビンホルダ11を設けてもよい。
【符号の説明】
【0119】
10:紡糸巻取装置
11:ボビンホルダ
19:トラバース装置
21:制御装置
22:ボビン位置センサ
23:ガイド位置センサ
30:糸掛け機構
31:ガイド
32:駆動装置
33:支持部材
34:移動装置
40:糸掛け機構
41:ガイド
42:ナット
43:ねじ部材(支持部材)
43a:雄ねじ部
44:移動装置
45:回転装置
50:糸掛け機構
51:ガイド
52:パンタグラフ機構
53:伸縮装置
54:ベース部材
55:移動装置
60:糸掛け機構
61:ガイド
62:ナット
63:ねじ部材(支持部材)
63a:雄ねじ部
64:移動装置
65:回転装置
90:アラーム
B:ボビン
S:スリット
P:パッケージ
Y:糸
A1:巻取開始位置
A2:交換位置