IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック・オヴ・アメリカ,インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図1
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図2
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図3
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図4
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図5
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図6-1
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図6-2
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図6-3
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図7
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図8
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図9
  • 特許-ナノファイバーシートディスペンサー 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】ナノファイバーシートディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/16 20170101AFI20230427BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20230427BHJP
   C01B 32/164 20170101ALI20230427BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20230427BHJP
   D02G 3/02 20060101ALI20230427BHJP
   D04H 1/736 20120101ALI20230427BHJP
【FI】
C01B32/16
B82Y30/00
C01B32/164
C01B32/168
D02G3/02
D04H1/736
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019088130
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2019199676
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-06-30
(31)【優先権主張番号】62/672,673
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/397,036
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519164079
【氏名又は名称】リンテック・オヴ・アメリカ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】マルシオ・ディー・リマ
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106044739(CN,A)
【文献】特開2017-007919(JP,A)
【文献】特開平11-076097(JP,A)
【文献】特開2017-122019(JP,A)
【文献】特表2008-523254(JP,A)
【文献】特開2019-127396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
D04H1/00-18/04
C01B32/00-32/991
B65H1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を画定するハウジングであって、前記ハウジングの中に開口部も画定する、ハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されている基材及び前記基材上のナノファイバーフォレストと、
少なくとも2つのブレードであって、前記少なくとも2つのブレードのうちの第1のブレードが第1のエッジ面を有し、前記少なくとも2つのブレードのうちの第2のブレードが第2のエッジ面を有し、前記第1のブレード及び前記第2のブレードが共に前記ハウジングに連結されており、前記第1のエッジ面及び第2のエッジ面が、前記ハウジングの前記開口部に近接して、共に互いに向かい合ってナノファイバーシート出口間隙を画定する、少なくとも2つのブレードと
を備えるナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項2】
前記ナノファイバーフォレストと一体化したナノファイバーシートを更に備え、前記ナノファイバーシートの第1の部分が、前記第1のエッジ面と前記第2のエッジ面との間に配置されており且つ前記第1のエッジ面及び前記第2のエッジ面のうちの少なくとも一方と接触している、請求項1に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項3】
前記ナノファイバーシートの第2の部分が、前記ナノファイバーフォレストと前記ナノファイバーシート出口間隙との間において、前記基材と前記ナノファイバーフォレストとの間の界面に対して3°~15°の角度を成す、請求項2に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項4】
前記少なくとも2つのブレードが、ナノファイバーシート出口間隙の周囲に連続的なエッジ面を有する1つのブレードを構成する、請求項1に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項5】
前記ナノファイバーシート出口間隙の前記ナノファイバーフォレストとは反対側に、前記ナノファイバーシートの第3の部分を更に含み、前記第3の部分が、前記基材と前記ナノファイバーフォレストとの間の界面に対して0°~30°の角度を成す、請求項4に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項6】
前記ハウジングの内部であって前記ハウジングによって画定された前記開口部と前記基材との間に配置された第3のエッジ面を有する第3のブレードを更に含み、前記ナノファイバーシートが前記第3のエッジ面と接触する、請求項1に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項7】
前記ナノファイバーフォレストと前記第3のエッジ面との間において、前記ナノファイバーシートの第4の部分が、前記基材と前記ナノファイバーフォレストとの間の界面に対して2°~15°の角度を成し、
前記第3のエッジ面と前記ナノファイバーシート出口間隙との間において、前記ナノファイバーフォレストの第5の部分が、前記基材と前記ナノファイバーフォレストとの間の界面に対して0°~12°の角度を成す、請求項6に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項8】
前記ハウジングの内部であって前記第3のブレードと前記ナノファイバーシート出口間隙との間に配置された第4のエッジ面を有する第4のブレードを更に含み、前記ナノファイバーシートが前記第4のエッジ面と接触する、請求項6に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項9】
前記第1のブレード、前記第2のブレード、前記第3のブレード、及び前記第4のブレードのうちの少なくとも1つが、アーチ形のエッジ面を有する、請求項8に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項10】
前記第1のブレード、前記第2のブレード、前記第3のブレード、及び前記第4のブレードのうちの少なくとも1つが、劈開したシリコンウェハの破断面を含む、請求項8に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項11】
前記第1のブレード、前記第2のブレード、前記第3のブレード、及び前記第4のブレードのうちの少なくとも1つが、低表面エネルギーコーティングを含む、請求項8に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項12】
ナノファイバーヤーンの紡糸機を更に備える、請求項1に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項13】
ナノファイバーヤーンが、前記ナノファイバーシート及び前記ナノファイバーフォレストと連続している、請求項12に記載のナノファイバーシートディスペンサー。
【請求項14】
ハウジングの内部の基材上にナノファイバーフォレストを配置するステップであって、前記ハウジングが、ナノファイバーシート出口間隙を画定し、前記ナノファイバーシート出口間隙の周囲に連続的なエッジ面を有する、ステップと、
前記ナノファイバーシート出口間隙を通して且つ前記エッジ面と接触させた状態で、前記ナノファイバーフォレストからナノファイバーシートを引き出すステップと、
前記エッジ面と接触した状態での前記引き出しに応答して、前記ナノファイバーシートを緻密化させるステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記ハウジングの内部であって前記基材上のナノファイバーフォレストと前記ナノファイバーシート出口間隙との間に、追加的なエッジ面を有する追加的なブレードを配置するステップと、
前記ナノファイバーシート出口間隙を通して前記ナノファイバーシートを引き出す前に、前記追加的なエッジ面と接触させた状態で前記ナノファイバーシートを引き出すステップと
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノファイバーフォレストと前記基材との間の界面に平行な基準軸と、前記ナノファイバーフォレストと前記追加的なブレードとの間における前記ナノファイバーシートの一部分との間の角度が2°~15°である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノファイバーシート出口間隙を通して前記ナノファイバーシートを引き出すステップが、前記ナノファイバーフォレストと前記基材との間の界面に平行な基準軸に対して45°未満の角度を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記エッジ面が、アーチ形のエッジ面である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してナノファイバーの製造に関する。具体的には、本開示はナノファイバーシートディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
単層ナノチューブと多層ナノチューブの両方からなるナノファイバーフォレストは、ナノファイバーリボンまたはシートへと引き出すこと(drawing)ができる。その引き出す前の状態では、ナノファイバーフォレストは、互いに平行かつ成長基材の表面に対して垂直なナノファイバーの層(または複数の積み重ねられた層)を含む。ナノファイバーシートへと引き出されると、ナノファイバーの配向は成長基材の表面に対して垂直から平行へと変わる。引き出されたナノファイバーシート中のナノチューブは、互いに端から端までの構成でつながることでナノファイバーの長手方向軸がシートの面に平行である(すなわちナノファイバーシートの第1と第2の両方の主表面に平行である)連続シートを形成する。ナノファイバーシートは、ナノファイバーシートをナノファイバーヤーンへと紡糸することを含む任意の様々な方法で処理することができる。
【発明の概要】
【0003】
例1(Example 1)は、ナノファイバーシートディスペンサーであり、これは、内部を画定するハウジングであって、前記ハウジングの中に開口部も画定する、ハウジングと、前記ハウジングの内部に配置されている基材及び前記基材上のナノファイバーフォレストと、エッジ面(edged surface)を有する少なくとも1つのブレードであって、前記少なくとも1つのブレードの前記エッジ面が、前記ハウジングの前記開口部に近接(proximate)して、ナノファイバーシート出口間隙を画定する、少なくとも1つのブレードとを備える。
【0004】
例2(Example 2)は、例1の主題を含み、少なくとも1つのブレードはハウジングに連結されている。
【0005】
例3(Example 3)は、例1または例2のいずれかの主題を含み、少なくとも1つのブレードは、第1のブレード及び第2のブレードを含み、第1のブレード及び第2のブレードは共にハウジングに接続されており、第1のブレード及び第2のブレードのそれぞれの第1のエッジ面及び第2のエッジ面は共に互いに向かい合ってナノファイバーシート出口間隙を画定する。
【0006】
例4(Example 4)は、前述の例のいずれかの主題を含み、少なくとも1つのブレードは、ナノファイバーシート出口間隙の周囲に連続的なエッジ面を有するブレードを含む。
【0007】
例5(Example 5)は、前述の例のいずれかの主題を含み、ナノファイバーフォレストと一体化したナノファイバーシートを更に備え、ナノファイバーシートの第1の部分が、第1のエッジ面と第2のエッジ面との間に配置されており且つ第1のエッジ面及び第2のエッジ面のうちの少なくとも一方と接触している。
【0008】
例6(Example 6)は、前述の例のいずれかの主題を含み、ナノファイバーシートの第2の部分が、ナノファイバーフォレストとナノファイバーシート出口間隙との間において、基材とナノファイバーフォレストとの間の界面に対して3°~15°の角度を成す。
【0009】
例7(Example 7)は、前述の例のいずれかの主題を含み、ナノファイバーシート出口間隙のナノファイバーフォレストとは反対側に、ナノファイバーシートの第3の部分を更に含み、第3の部分は、基材とナノファイバーフォレストとの間の界面に対して0°~30°の角度を成す。
【0010】
例8(Example 8)は、前述の例のいずれかの主題を含み、ハウジングの内部であってハウジングによって画定された開口部と基材との間に配置された第3のエッジ面を有する第3のブレードを更に含み、ナノファイバーシートが、第3のエッジ面と接触する。
【0011】
例9(Example 9)は、例8の主題を含み、ナノファイバーフォレストと第3のエッジ面との間において、ナノファイバーシートの第4の部分が、基材とナノファイバーフォレストとの間の界面に対して2°~15°の角度を成し、第3のエッジ面とナノファイバーシート出口間隙との間において、ナノファイバーフォレストの第5の部分が、基材とナノファイバーフォレストとの間の界面に対して0°~12°の角度を成す。
【0012】
例10(Example 10)は、例8の主題を含み、ハウジングの内部であって第3のブレードとナノファイバーシート出口間隙との間に配置された第4のエッジ面を有する第4のブレードを更に含み、ナノファイバーシートが、第4のエッジ面と接触する。
【0013】
例11(Example 11)は、前述の例のいずれかの主題を含み、第1のブレード、第2のブレード、第3のブレード、及び第4のブレードのうちの1つ又は複数が、対応する(corresponding)アーチ形のエッジ面を有する。
【0014】
例12(Example 12)は、前述の例のいずれかの主題を含み、第1のブレード、第2のブレード、第3のブレード、及び第4のブレードのうちの1つ又は複数が、劈開した(cleaved)シリコンウェハの破断面を含む。
【0015】
例13(Example 13)は、前述の例のいずれかの主題を含み、第1のブレード、第2のブレード、第3のブレード、及び第4のブレードのうちの1つ又は複数が、低表面エネルギーコーティング(low surface energy coating)を含む。
【0016】
例14(Example 14)は、前述の例のいずれかの主題を含み、ナノファイバーヤーンの紡糸機をさらに備える。
【0017】
例15(Example 15)は、例14の主題を含み、ナノファイバーヤーンが、ナノファイバーシート及びナノファイバーフォレストと連続している。
【0018】
例16(Example 16)は、ハウジングの内部の基材上にナノファイバーフォレストを配置するステップであって、ハウジングが、ナノファイバーシート出口間隙を画定し、エッジ面を有する、ステップと、ナノファイバーシート出口間隙を通して且つエッジ面と接触させた状態で、ナノファイバーフォレストからナノファイバーシートを引き出すステップと、エッジ面と接触した状態での前記引き出しに応答して、ナノファイバーシートを緻密化させるステップとを含む方法である。
【0019】
例17(Example 17)は、例16の主題を含み、エッジ面は、ナノファイバーシート出口間隙の周囲に連続的なエッジ面を形成する。
【0020】
例18(Example 18)は、例16または17のいずれかの主題を含み、ハウジングの内部であって基材上のナノファイバーフォレストとナノファイバーシート出口間隙との間に、追加的なエッジ面を有する追加的なブレードを配置するステップと、ナノファイバーシート出口間隙を通してナノファイバーシートを引き出す前に、追加的なエッジ面と接触させた状態でナノファイバーシートを引き出すステップとを更に含む。
【0021】
例19(Example 19)は、例16~18のいずれかの主題を含み、ナノファイバーフォレストと基材との間の界面に平行な基準軸と、ナノファイバーフォレストと追加的なブレードとの間のナノファイバーシートの部分との間の角度が2°~15°である。
【0022】
例20(Example 20)は、例16~19のいずれかの主題を含み、ナノファイバーシート出口間隙を通してナノファイバーシートを引き出すステップが、ナノファイバーフォレストと基材との間の界面に平行な基準軸に対して45°未満の角度を含む。
【0023】
例21(Example 21)は、例16~20のいずれかの主題を含み、エッジ面が、アーチ形のエッジ面である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態における基材上のナノファイバーの例示的なフォレスト示す。
図2】本開示の例におけるナノファイバーフォレストの成長及び合成のための炉の概略図である。
図3】シートの相対的寸法を特定し、シートの表面に平行な面内の端から端まで配列したシート内のナノファイバーを模式的に示す、一例におけるナノファイバーシートの図である。
図4】ナノファイバーフォレストから横方向に引き出され、ナノファイバーが図2に模式的に示すように端から端まで配列している、ナノファイバーシートの写真である。
図5図5A図5B、及び図5Cは、複数の実施形態における、幾何学的制約がない場合にナノファイバーシートを基材上のナノファイバーフォレストから引き出すことができる様々な角度を示す。
図6-1】図6Aは、一実施形態における例示的なナノファイバーシートディスペンサーの一例の側断面図を示す。図6Bは、図6Aで図示されている例示的なナノファイバーシートディスペンサーのナノファイバーシート出口間隙(nanofiber sheet exit gap)を画定するために使用される、一実施形態におけるブレードの拡大図である。図6Cは、一実施形態における、ナノファイバーシートディスペンサー内に配置されているナノファイバーフォレストから引き出されたナノファイバーシートの透視平面図である。図6Dは、ナノファイバーシートディスペンサー内に配置されているナノファイバーフォレストから引き出されてから引き続きナノファイバーヤーンへと撚り合わされたナノファイバーシートの、一実施形態における透視平面図である。図6D’は、一実施形態における単層ナノファイバーヤーンの拡大写真を示す。
図6-2】図6Eは、複数の実施形態における、アーチ形のエッジ面(edged surface)の例、及びアーチ形のエッジ面の上で及び接触した状態で引き出されたナノファイバーシートの幅に対するそれらの対応する影響を示す。図6Fは、複数の実施形態における、アーチ形のエッジ面の例、及びアーチ形のエッジ面の上で及び接触した状態で引き出されたナノファイバーシートの幅に対するそれらの対応する影響を示す。図6Gは、複数の実施形態における、アーチ形のエッジ面の例、及びアーチ形のエッジ面の上で及び接触した状態で引き出されたナノファイバーシートの幅に対するそれらの対応する影響を示す。
図6-3】図6Hは、複数の実施形態における、アーチ形のエッジ面の例、及びアーチ形のエッジ面の上で及び接触した状態で引き出されたナノファイバーシートの幅に対するそれらの対応する影響を示す。図6Iは、複数の実施形態における、アーチ形のエッジ面の例、及びアーチ形のエッジ面の上で及び接触した状態で引き出されたナノファイバーシートの幅に対するそれらの対応する影響を示す。図6Jは、複数の実施形態における、アーチ形のエッジ面の例、及びアーチ形のエッジ面の上で及び接触した状態で引き出されたナノファイバーシートの幅に対するそれらの対応する影響を示す。図6Kは、複数の実施形態における、アーチ形のエッジ面の例、及びアーチ形のエッジ面の上で及び接触した状態で引き出されたナノファイバーシートの幅に対するそれらの対応する影響を示す。
図7図7A図7Dは、複数の実施形態においてナノファイバーシートを小分けに取り出すために使用されるナノファイバーシートディスペンサー600の様々な側面図を示す。
図8】ナノファイバーディスペンサー内部の中にブレードを含む例示的なナノファイバーシートディスペンサーの一実施形態、ならびに一実施形態におけるナノファイバーシート出口間隙を画定するブレードを示す。
図9】ナノファイバー出口間隙の周囲全体に連続的なエッジ面を有するブレードの一実施形態における透視図である。
図10】ナノファイバーフォレストディスペンサーを使用してナノファイバーシートを製造するための例示的な方法を示す、一実施形態におけるフロー図である。
【0025】
上記の図は、例示のみを目的として、本開示の様々な実施形態を示すものである。以下の詳細な説明により、多くの変形例、構成、及び他の実施形態を明らかにする。さらに、理解されるように、図面は必ずしも一定の縮尺比で描かれているわけではなく、また記載の実施形態を示されている特定の構成に限定することを意図していない。例えば、いくつかの図面は概して直線、直角、及び滑らかな表面を示しているものの、製造プロセスの実際の限界を考慮すると、本開示の技術の実際の実施は完全な直線や直角未満である場合があり、いくつかの特徴は表面トポグラフィを有するか、あるいは滑らかでない場合がある。要するに、図面は単に例示的な構造を示すために提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[概説]
ナノファイバーフォレスト、ナノファイバーシート、及びナノファイバーヤーンは多くの技術的有望性を有しているものの、これらの材料を製品の中へ組み込むことを普及させるには実用上の障害が残っている。そのような実用上の障害の1つは、ナノファイバーシートの物理的及び機械的な脆弱性である。ナノファイバーシートは、しわが寄ったり、裂けたり、それ自体または他のシートに付着したりする可能性があり、あるいはその他機械的損傷を受ける可能性がある。これらの材料は軽量であるため、低速の空気の流れ(空調システムまたはオフィスのドアの開きからのものなど)であっても、ナノファイバーシートに折れを生じさせ、その結果それ自体に付着して多くの用途に使用できないナノファイバーシートの部分を与える可能性がある。
【0027】
これらの同じ理由のいくつかのために、ナノファイバーシートを輸送することも同様に困難である。輸送される際には、ナノファイバーシートは、通常、折れ、裂け、または曲げを防止する構成に維持されるように梱包される。出荷中に起こり得る物理的衝撃(例えば移動されるコンテナからの急速な加速及び減速)を考慮すると、注意深く梱包されたナノファイバーシートであっても出荷中に損傷を受ける可能性がある。
【0028】
そのため、本開示のいくつかの実施形態によれば、ナノファイバーシートを引き出すことができる、ナノファイバーフォレストを収納するナノファイバーシートディスペンサーのための技術が記述される。この方法では、基材(ステンレス鋼成長基材等)の上に配置されたナノファイバーフォレストを、輸送されたナノファイバーシートと比較して損傷の危険性を減らして移動、輸送、及び/または出荷することができる。基材上のナノファイバーフォレストは、通常、ナノファイバーシートよりも機械的に安定かつ物理的な耐久性を有しており、そのため移動中または輸送中の損傷の危険性が低減される。ナノファイバーシートをフォレストから都合よく引き出すことができ、場合によってはナノファイバーシートとナノファイバーフォレストの両方(後者はナノファイバーシートディスペンサー内に存在する)と連続するナノファイバーヤーンを形成するために引き出すことができるように、ナノファイバーシートディスペンサーを構成するための技術も記載される。
【0029】
これらの技術の実施形態のいくつかを説明する前に、次にナノファイバーフォレストの製造及びナノファイバーシートの説明を行う。
【0030】
[ナノファイバーフォレスト]
本明細書において、用語「ナノファイバー」とは、直径が1μm未満の繊維を意味する。本明細書の実施形態では、主にカーボンナノチューブから製造されたものとして記載するが、グラフェン、ミクロンまたはナノスケールグラファイト繊維及び/またはプレートなどの他の炭素同素体、さらに窒化ホウ素のようなナノスケール繊維の他の組成物も、以下に記載の技術を利用して緻密化できることが理解されるであろう。本明細書において、用語「ナノファイバー」及び「カーボンナノチューブ」は、炭素原子同士が結合して円筒構造を形成している単層カーボンナノチューブ及び/または多層カーボンナノチューブの両方を包含する。いくつかの実施形態では、本明細書で参照するカーボンナノチューブは、層数が4~10である。本明細書で使用する「ナノファイバーシート」または単に「シート」は、引き出しプロセス(国際公開第2007/015710号に記載されており、その全体は、ここに引用することにより本明細書の記載の一部をなすものとする)によって、シートのナノファイバーの長手方向軸が、シートの主表面に垂直ではなくシートの主表面に平行となるように配列したナノファイバーのシート(すなわち、堆積したシート形であり、しばしば「フォレスト」と呼ばれる)を指す。これはそれぞれ図3及び4で説明され示されている。
【0031】
カーボンナノチューブの寸法は、使用する製造方法によって大きく異なっていてもよい。例えば、カーボンナノチューブの直径は0.4nm~100nmであってもよく、長さは10μm~55.5cm超であってもよい。また、カーボンナノチューブは非常に高いアスペクト比(直径に対する長さの比)を有することができ、132,000,000:1以上になるものもある。広範な寸法を有し得ることを考えると、カーボンナノチューブの特性は高度に調節可能であるか、または「可変」である。カーボンナノチューブの多くの興味深い特性が確認されている一方、実際の用途でカーボンナノチューブの特性を利用するためには、カーボンナノチューブの特徴を維持または向上することができる、測定可能かつ制御可能な製造方法が必要である。
【0032】
カーボンナノチューブは、その特異な構造のため、特定の機械的、電気的、化学的、熱的、光学的特性を備えており、この特性のため、カーボンナノチューブは特定の用途に好適である。特に、カーボンナノチューブは優れた導電性、高い機械的強度、良好な熱安定性を示し、また疎水性でもある。これらの特性に加えて、カーボンナノチューブは有用な光学特性も示しうる。例えば、カーボンナノチューブを発光ダイオード(LED)及び光検出器に用いて、狭く選択された波長で光を放射または検出することができる。カーボンナノチューブは、光子輸送及び/またはフォノン輸送にも有用なものであることが証明され得る。
【0033】
本開示の様々な実施形態によれば、ナノファイバー(カーボンナノチューブを含むがこれに限定はされない)は、本明細書において「フォレスト」呼ばれる構成を含む様々な構成で配置することができる。本明細書において、ナノファイバーまたはカーボンナノチューブの「フォレスト」とは、基材上に互いに実質的に平行に配置されたほぼ同等の寸法を有するナノファイバーのアレイをいう。図1は、基材上のナノファイバーの例示的なフォレストを示す。上記基材は、任意の形状であってよいが、いくつかの実施形態において、上記基材はフォレストが組み立てられる平面を有する。図1から分かるように、上記フォレストのナノファイバーの高さ及び/または直径がほぼ同じとなりうる。いくつかの事例においては、フォレストは「堆積されたまま」、すなわちナノチューブが基材上に形成されていてもよく、あるいは別の事例においては成長基材から二次基材上に移動されていてもよい。
【0034】
本明細書で開示するナノファイバーフォレストは、比較的密度が高い。具体的には、開示するナノファイバーフォレストは、密度が少なくとも10億ナノファイバー/cmになり得る。いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載のナノファイバーフォレストは、密度が100億/cm~300億/cmとなり得る。他の例では、本明細書に記載のナノファイバーフォレストは、密度が900億ナノファイバー/cmの範囲になり得る。上記フォレストは、高密度または低密度の領域を含む場合があり、特定の領域ではナノファイバーが存在しない場合がある。フォレスト内のナノファイバーは、ファイバー間の接続性を示すこともある。例えば、ナノファイバーフォレスト内の隣接するナノファイバーは、ファンデルワールス力によって互いに引き寄せられる場合がある。いずれにせよ、フォレスト内のナノファイバー密度は、本明細書に記載の技術を利用することにより増加させることができる。
【0035】
ナノファイバーフォレストの製造方法は、例えば国際公開第2007/015710号に記載されており、その全体は、ここに引用することにより本明細書の記載の一部をなすものとする。
【0036】
ナノファイバー前駆体フォレストを作製するために様々な方法を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、図2に模式的に示されているもののように、ナノファイバーを高温炉内で成長させることができる。いくつかの実施形態では、触媒を基材上に堆積させ、反応器に入れ、次いで反応器に供給される燃料化合物に暴露してもよい。基材は800℃超、さらには1000℃超の温度に耐えることができ、不活性な材料でありえる。上記基材は、下地となるシリコン(Si)ウェハ上に配置したステンレス鋼またはアルミニウムを含むことができるが、Siウェハの代わりに他のセラミック基材(例えば、アルミナ、ジルコニア、SiO、ガラスセラミック)を使用してもよい。前駆体フォレストのナノファイバーがカーボンナノチューブである例では、アセチレンなどの炭素系化合物を燃料化合物として使用することができる。反応器に導入された後、上記燃料化合物(複数可)は触媒上に蓄積し始め、基材から上方に成長することによって組み立てられ、ナノファイバーのフォレストを形成することができる。
【0037】
また反応器は、燃料化合物(複数可)及びキャリアガスを反応器に供給することができるガス入口と、消費した燃料化合物及びキャリアガスを反応器から放出することができるガス出口と、を備えることができる。キャリアガスの例としては、水素、アルゴン、及びヘリウムが挙げられる。これらのガス、特に水素を反応器に導入して、ナノファイバーフォレストの成長を促進することができる。さらに、ナノファイバーに組み込まれるドーパントをガス流に添加してもよい。
【0038】
多層ナノファイバーフォレストを製造するために使用されるプロセスでは、1つのナノファイバーフォレストが基材上に形成され、引き続き第1のナノファイバーフォレストに接触して第2のナノファイバーフォレストが成長する。多層ナノファイバーフォレストは、基材上に第1のナノファイバーフォレストを形成し、第1のナノファイバーフォレスト上に触媒を堆積させ、その後第1のナノファイバーフォレスト上に位置する触媒からの第2のナノファイバーフォレストの成長を促進するために追加的な燃料化合物を反応器に導入するなどの多数の適切な方法によって形成することができる。適用する成長方法、触媒の種類、及び触媒の位置に応じて、第2のナノファイバー層は、第1のナノファイバー層の上面に成長させてもよいし、または触媒を例えば水素ガスなどで回復させた後に基材上に直接成長させて結果として第1のナノファイバー層の下で成長させてもよい。いずれにせよ、第1と第2のフォレストの間には容易に検出可能な界面が存在するものの、第2のナノファイバーフォレストは、第1のナノファイバーフォレストのナノファイバーとほぼ端から端まで整列することができる。多層ナノファイバーフォレストは、任意の数のフォレストを含んでいてもよい。例えば、多層前駆体フォレストは、2、3、4、5、またはそれ以上のフォレストを含んでいてもよい。
【0039】
[ナノファイバーシート]
フォレスト構造の配置に加えて、本出願のナノファイバーは、シート形状に配置してもよい。本明細書において、「ナノファイバーシート」、「ナノチューブシート」、または単に「シート」という用語は、ナノファイバーが平面内で端から端まで配列しているナノファイバーの配置を指す。図3に、例示的なナノファイバーシートの図が寸法の表示と共に示されている。いくつかの実施形態では、上記シートは、長さ及び/または幅がシートの厚さの100倍を超える。いくつかの実施形態では、長さ、幅またはその両方が、上記シートの平均厚さの10、10、または10倍を超える。上記ナノファイバーシートは、例えば厚さが約5nm~30μmであり、対象用途に適した任意の長さ及び幅を有することができる。いくつかの実施形態では、上記ナノファイバーシートは、長さが1cm~10m、幅が1cm~1mとなり得る。なお、これらの長さは単に例示のために示すものである。ナノファイバーシートの長さ及び幅は、上記ナノチューブ、フォレスト、またはナノファイバーシートのいずれかの物理的または化学的特性によってではなく、製造設備の構成によって制約される。例えば、連続プロセスによって、任意の長さのシートを作製することができる。このようなシートは、製造時にロールに巻き取ることができる。
【0040】
図3から分かるように、ナノファイバーが端から端まで配列する軸を、ナノファイバー配列の方向という。いくつかの実施形態では、上記ナノファイバー配列の方向は、ナノファイバーシート全体にわたって連続的であってもよい。ナノファイバーは、必ずしも完全に互いに平行である必要はなく、上記ナノファイバー配列の方向はナノファイバーの配列の方向の平均または一般的な尺度であることが理解できる。
【0041】
ナノファイバーシートは、シートを製造可能な任意のタイプの適切なプロセスを用いて組み立てることができる。いくつかの例示的な実施形態では、ナノファイバーシートは、ナノファイバーフォレストから引き出すこともできる。ナノファイバーフォレストから引き出されているナノファイバーシートの一例を図4に示す。
【0042】
図4に示すように、上記ナノファイバーは、上記フォレストから横方向に引き出され、端から端まで配列してナノファイバーシートを形成することができる。ナノファイバーシートがナノファイバーフォレストから引き出される実施形態では、上記フォレストの寸法を制御して、特定の寸法を有するナノファイバーシートを形成することができる。例えば上記ナノファイバーシートの幅は、シートを引き出した上記ナノファイバーフォレストの幅と略等しくなり得る。また上記シートの長さは、例えば、所望のシート長さが得られたときに引き出しプロセスを終了することによって制御することができる。
【0043】
ナノファイバーシートは、様々な用途に利用することができる多くの特性を有する。例えば、ナノファイバーシートは、調整可能な不透明度、高い機械的強度及び可撓性、熱伝導率及び電気伝導率を有することができ、また、疎水性を示し得る。シート内でナノファイバーの配列が高度であると考えると、ナノファイバーシートは非常に薄いものになり得る。いくつかの例では、ナノファイバーシートの厚みは(通常の測定公差内で測定して)約10nmのオーダーであり、ほぼ2次元の形状を示す。他の例では、ナノファイバーシートの厚みは、200nmまたは300nmほどとすることができる。このように、ナノファイバーシートは、構成要素に最小限の追加の厚さを加えることができる。
【0044】
ナノファイバーフォレスト同様、ナノファイバーシート内の上記ナノファイバーは、処理剤によって上記シートの上記ナノファイバーの表面に化学基または元素を加えることにより官能基化することができ、ナノファイバー単独とは異なる化学活性をもたらす。ナノファイバーシートの官能基化は、前もって官能基化されたナノファイバーで行うことができるか、または、前もって官能基化されていないナノファイバーで行うことができる。官能基化は、限定はされないが、CVD及び種々のドーピング技術を含む本明細書に記載の技術のいずれかを用いて行うことができる。
【0045】
ナノファイバーシートは、ナノファイバーフォレストから引き出されても、高い純度も有している場合があり、いくつかの例では、ナノファイバーシートの90重量%超、95重量%超、または99重量%超がナノファイバーに起因する。同様に、上記ナノファイバーシートは、90重量%超、95重量%超、99重量%超または99.9重量%超の炭素を含むことができる。
【0046】
[ナノファイバーシートディスペンサー]
図5A、5B、及び5Cは、以下に詳しく説明する本開示の実施形態によって提供される、有益な幾何学的制約がない場合にナノファイバーシートを基材(成長基材または別の基材のいずれか)上のナノファイバーフォレストから引き出すことができる様々な角度を図示している。図5A、5B、及び5Cは、ナノファイバーシートが引き出される角度を制御する機構がない状態でナノファイバーフォレストからナノファイバーシートを引き出す場合に生じ得る問題を説明するために提示されている。これらの例は、図6A図8と関係して下で説明される実施形態に関連するいくつかの利点を説明するための前後関係を提供する。
【0047】
図5Aには、配置500が模式的に示されている。配置500は、基材504、ナノファイバーフォレスト508、及びナノファイバーシート512を含む。基材504とナノファイバーフォレスト508との間の界面に平行な基準軸510を図5Aに示す。図5Aから分かるように、ナノファイバーシート512は、基準軸510に対して測定される角度Θ1でナノファイバーフォレスト508(上述した通り)から引き出される。いくつかの実施形態では、角度Θ1は、5°~20°、5°~10°、及び5°~15°の範囲のうちのいずれかの範囲内であってもよい。
【0048】
図5Bには、配置502が模式的に示されている。配置502は、基材504、ナノファイバーフォレスト508、及びナノファイバーシート516を含む。上で説明したものと同じ理由で基準軸510を図5Bに示す。図5Bに示すように、ナノファイバーシート516は、図5Aに示されている角度Θ1よりも大きい角度Θ2でナノファイバーフォレスト508から引き出される。いくつかの実施形態では、角度Θ2は、15°~40°、15°~30°、及び15°~20°の範囲のうちのいずれかの範囲内であってもよい。ナノファイバーシート516が配置502において引き出される角度Θ2は、図5Aで示される角度Θ2と比較して大きく、このナノファイバー基材504及びナノファイバーフォレスト508の周囲に物理的及び/または幾何学的な制約がないため可能である。
【0049】
引き出し角度Θ1、Θ2の差は、対応するナノファイバーシート512、516の物理的、機械的、熱的、及び/または電気的特性に差異を生じさせる可能性がある。例えば、より大きい角度で引き出されたナノファイバーシート516は、Θ2より小さい角度Θ1で引き出されたシート512と比較して、互いにより整列したナノファイバーを有し、より高い密度を有し、対応する特性の変化(例えばより大きい熱伝導率及び/または導電率)を有する可能性がある。
【0050】
配置500及び502は、対応するナノファイバーフォレスト508とつながっている連続的なナノファイバーシート512、516を製造するが、引き出し角度に対する幾何学的なまたは物理的な制約がないと、引き出しプロセス中にナノファイバーシートが破損する危険性が増加する。これは、図5Cに示されるように配置506に示されている。配置506は、ナノファイバー基材504、ナノファイバーフォレスト508、及び基準軸510を含み、これら全ては上で説明されている。図5A、5Bで描かれている前述の配置とは異なり、図5C中のナノファイバーシート520は角度Θ3でナノファイバーフォレスト508から引き出される。角度Θ2より大きい角度Θ3は、ナノファイバーシート520の引張強さを超えるのに十分な大きさであり、そのため、隙間524によって示すように、ナノファイバーフォレストからの破れを生じさせる。いくつかの例では、角度Θ3は、40°、45°、50°の値のいずれかよりも大きい場合がある。
【0051】
以下で説明するように、本開示のいくつかの実施形態は、ナノファイバー材料の輸送及び移動のためのより耐久性のある機構を提供するだけでなく、いくつかはより一貫した引き出し角度によるより一貫した範囲の物理的、電気的、機械的、及び/または熱的特性を有するナノファイバーシートも提供し得る。ナノファイバーシートの様々な特性における予測可能性が高いほど、ナノファイバーシートが他の製品及び/または技術に組み入れられる能力及び利便性が改善される。
【0052】
次に図6Aを見ると、ナノファイバーシートディスペンサー600の一実施形態の側断面図が示されている。ナノファイバーシートディスペンサー600は、ハウジング604を備え、そしてこの例ではブレード608A及び608Bを備えている。
【0053】
ハウジング604は任意の形状であってもよいが、この実施形態では、ハウジング604はほぼ断面長方形を有している。ナノファイバーシートディスペンサー600のハウジング604は内部を画定し、その中に基材及びその上のナノファイバーフォレストを配置することができる。説明を明確にするために、図6Aには基材もナノファイバーフォレストも示されていないが、これらは下で説明する他の実施形態で図示される。ハウジング604は開口部も画定し、これはこの事例では断面長方形のナノファイバーシートディスペンサー600の1つの面の一部または全部に対応する。ハウジング604によって画定される開口部は、ハウジング604によって任意の位置で画定されてもよいことが以降の説明を踏まえて理解されるであろう。ハウジング604が、いくつかの実施形態では、周囲温度で使用されるように設計されていることがさらに理解されるであろう。別の実施形態では、ハウジング604は、炉または他の処理装置の中に挿入されるように設計することができる(例えばハウジングは、ステンレス鋼やアルミニウムのような高温で熱的に安定な材料で作られる)。
【0054】
ハウジング604と接続することができるブレード608A及び608B(図6Bの拡大図に示す)は、断面で示されている対応するエッジ面(edged surface)612A、612Bを含む。開口部を通過するナノファイバーシート(図示せず)が、これらエッジ面612A、612Bの間を且つそれらのうちの少なくとも1つと接触した状態で通過するように、エッジ面612A、612Bは、ハウジング604によって画定される開口部に対して配置される。エッジ面612A、612Bによって画定される間隙は、基材及びその上のナノファイバーシートに対して固定されているため、ナノファイバーシートの引き出し角度も図5A~5Cに示されている制約がない引き出し角度よりもはるかに狭い角度範囲内に固定される。上述したように、引き出し角度は、幾何学的及び/または物理的制約のない配置におけるよりも変動が少ないため、これはナノファイバーシートの特性の一貫性を増加させる。一貫した引き出し角度はまた、引き出し中にナノファイバーシートが破れる危険性を低減させる。
【0055】
引き出される際には、ナノファイバーシートは、通常、エッジ面612のうちの1つと接触し、エッジ面612から離れたブレード(複数可)608の他の部分とは接触しないようにすべきである。ナノファイバーシートは緻密化され(及び任意選択的には後述するようにその幅を増減されてもよく)、その連続性はエッジ面612のみとの接触によって維持される。ブレード608の他の部分との接触は、ナノファイバーシートに皺や裂けをより生じ易くする。
【0056】
以降でより詳しく説明されるように、ナノファイバーシートがエッジ面612A、612Bの間を引き出される角度は、引き出される間にエッジ面612A、612Bのどちらにナノファイバーシートが接触することになるかを決定する。ナノファイバーシートとエッジ面との間の接触は、ナノファイバーシートの複数の独立したナノファイバーが互いに整列するのを助け、結果として溶媒を使用せずにシートを緻密化することができる。さらに、いくつかの実施形態では、エッジ面は、以降でより詳しく記載されるように、アーチ形のエッジ面であってもよい。アーチ形のエッジ面が凹状であるか凸状であるかに応じて、ナノファイバーシートは、エッジ面と接触する前にシートの幅に対してより広くまたはより狭く調整されることもできる。これらの特徴については以降でより詳しく説明する。
【0057】
図6Cは、その中に配置されているナノファイバーフォレストとナノファイバーシートとを含むナノファイバーシートディスペンサー600の平面透視図を示す。この実施形態では、ナノファイバーシートディスペンサー600は、基材504、ナノファイバーフォレスト508、ハウジング604、ブレード608A、608B、ナノファイバーシート616を備える。説明を容易にするために、図6A図6B、及び図6Cを同時に参照する。
【0058】
図6Cに示されているように、基材504及びその上に配置されているナノファイバーフォレスト508は、共にディスペンサー600のハウジング604の内部にある。基材504、ナノファイバーフォレスト508、及びハウジング604の実施形態は上で全て説明されており、さらなる説明は不要である。ナノファイバーシート616は、断面長方形のハウジング604の片方の側壁内部及びブレード608A、608B間に画定された開口部を通過するようにフォレスト508から引き出される。透視図であることから、この図にはブレード608Aのみが示されている。図示のように、ナノファイバーシート616の幅W1は、ナノファイバーシート616に沿った様々な位置で一定のままであり、そのような位置は、ブレード608とフォレスト508との間、及びハウジング604の外側であってブレード608のナノファイバーフォレスト508とは反対の側も含む。
【0059】
いくつかの例では、図6Cに示す実施形態または本明細書に記載の任意の他の実施形態のいずれについても、ナノファイバーシート(この例ではナノファイバーシート616)は、出荷及びその後の受取人による引き出しに備えて一時的にハウジング604に取り付けることができる。例えば、ハウジング604の外部にあるナノファイバーシート616の部分は、粘着テープ、のり、または別の接着剤もしくはコネクタを使用してハウジング604に取り付けることができる。粘着テープはハウジング604から剥がすことができ、必要に応じて追加の長さのナノファイバーシート616をフォレスト508から引き出すことができる。
【0060】
図6Dは、ディスペンサー600と同様であるが、最終的にナノファイバーヤーン628まで狭くなるナノファイバーシート620を製造するように構成されたディスペンサー601を示しており、その一例が走査型電子顕微鏡写真である図6D’に示されている。より狭い実施形態のナノファイバー(シート、リボン、ストランド、またはヤーンのいずれか)の製造は、W0からW0よりも狭い幅まで、さらには直径10ミクロン未満であってもよいナノファイバーヤーン628まで減少するナノファイバーシート620の幅W0により示されている。
【0061】
ディスペンサー600に共通のディスペンサー601の構成要素は上で説明されている。ディスペンサー601は、2つの異なる実施形態の一方または両方を使用してナノファイバーシート620及び/またはナノファイバーヤーン628を製造するために使用することができる。一実施形態では、ディスペンサー601は、アーチ形のエッジ面、より具体的には凹状のアーチ形のエッジ面を有するブレード608C及び608Dを含む。さらに、異なる種類のアーチ形のエッジ面、ならびにナノファイバーシートの幅及び/または密度への対応する影響の例は、米国仮特許出願第62/542,355号に記載されており、その全体はここに引用することで本明細書の記載の一部をなすものとする。
【0062】
アーチ形のエッジ面及びそれらの利用のいくつかの例は、図6E~6Kとの関係で説明される。
【0063】
ナノファイバーシートを引き出す方向は、ラベル付きの矢印により図6E~6Kのそれぞれの中で示されている。図6E、6F、及び6Gは、エッジ面のアーチ形の表面に直交するベクトルがナノファイバーシートの引き出し方向に平行(または反平行)である実施形態を示している。図6H、6I、6J、及び6Kは、アーチ形表面の半径がナノファイバーシートの引き出し方向に対して垂直であり、整列したナノファイバーの軸に対して垂直である実施形態を示している。
【0064】
図6Eは、ナノファイバーシートのナノファイバーに力を加えるために直線状のエッジ(すなわちアーチ形ではない)面が使用される例を示している。示されているように、まだエッジ面627と接触していないナノファイバーシートの部分626は、引き出されて(すなわち接触して)エッジ面627を通過した部分629の幅と同じ幅W1を有する。
【0065】
図6Fは、ナノファイバーシートのナノファイバーに力を加えるために使用されるエッジ面630がアーチ形であり、ナノファイバーシート626を引き出す方向に向かって配置された凸状の面631を有する例を示している。図示するように、その引き出されようとしている(またはより一般的には供給された)状態のナノファイバーシートの部分626は、幅W1を有している。図6Fに示すように、ナノファイバーシート626を凸状のエッジ面631上で接触させた状態で引き出すと、ナノファイバーシート626は、第2の部分633において幅W1よりも大きい幅W2まで広がる。ナノファイバーシートのこの第2の部分633は、その供給されたままの状態(または引き出される状態)のナノファイバーシートの部分626よりも密度を低くすることができる。いくつかの例では、この幅の広がりは、ナノファイバーシート626と凸状の面631との間の実際の接触の前に始まる。これは、幅W1からW2に増加する幅を有する移行部分632として図6Fに示されている。この移行部分632(及び後述のその他のもの)は、ナノファイバーシートとエッジ面との間の接触線でまたは接触線に近接して生じ得る。
【0066】
ナノファイバーシートの幅を、供給されたままの部分626での幅W1から第2の部分633でのより大きい幅W2へと機械的に変更した結果は、第2の部分の密度を供給されたままの状態の部分626の密度よりも低い密度に減少させる効果を有する。
【0067】
図6Gは、エッジ面634の凹状の面636がナノファイバーシートを引き出す方向に向かって配置されていることを除いては、図6Fに示されているものと類似の状態を示している。図6Fに示した状況と同様に、図6Gに描かれている状況は、供給されたままの状態の幅W1を有するナノファイバーシートの部分626を含む。ナノファイバーシートの幅は、図6Gに示すように方向付けられた(すなわち凹状の面636が引き出し方向に向かって配置された)凹状のエッジ面634上で引き出されると減少する。ナノファイバーシートのこの幅がより狭い部分644は、幅W1よりも小さい幅W3を有する。この例では、幅の減少は、移行部分648によって示されるように、ナノファイバーシートと凹状のエッジ面636との間の実際の接触の前に始まり得る。
【0068】
ナノファイバーシートの幅を、供給されたままの部分626の幅W1から部分644における狭い幅W3まで機械的に変更した結果は、供給されたままの状態の部分626の密度よりも大きい密度まで第3の部分の密度を増加させる効果を有する。
【0069】
一実施形態では、ナノファイバーフォレスト(または他のナノファイバーシート供給源)から引き出され、本明細書に記載の実施形態に従って処理されたナノファイバーシートは、3つの部分を有すると考えることができる。第1の部分(例えば部分626)は、ナノファイバーフォレストから引き出された、またはナノファイバーシート供給源(例えば巻き取られた状態のナノファイバーシート)から供給されたナノファイバーシートに対応する密度を有する。この第1の部分は、ナノファイバーシートの供給源(例えば図示されていないフォレスト)とアーチ形のエッジ面(例えばアーチ形のエッジ面630、634)との間に配置されている。第2の部分は、低密度(例えば部分633)と高密度(例えば部分644)のいずれかに関わらず、第1の部分とは異なる密度を有する。この第2部分は、アーチ形のエッジ面と引き出し機構(図示省略)との間に配置されている。他の部分は、これらの第1の部分と第2の部分との間に配置されており、これら2つの間の移行部分である(例えば部分628、648)。この移行部分は、第1部分の密度と第2部分の密度との間の中間の密度を有する。いくつかの実施形態では、この移行部分の密度は、第1の部分と第2の部分との間で均一に減少または増加する。
【0070】
図6H図6Kは、図6F~6Gで図示したものの代替の構成を示しており、これらのうちの前の部分は、アーチ形の面の半径が、ナノファイバーシートが引き出される方向に対して実質的に垂直であるように構成及び配置されたアーチ形の面を含む。関連する実施形態では、アーチ形の面の半径は、引き出し軸または整列したナノファイバーの軸のいずれか、またはその両方から、0°~90°、0°~80°、0°~70°、0°~60°、20°~90°、20°~70°、または30°~90°の角度範囲のいずれかの範囲内で、引き出し方向に又は引き出し方向から離れるように配向することができる。図6Hは、アーチ形の面652のエッジ656(湾曲したブレード等)がナノファイバーシートの幅を広げるために使用される実施形態を示している。上で示した例と同様に、ナノファイバーシートの部分626は、その引き出される(または供給されたままの)状態では幅W1を有している。ナノファイバーシートは、エッジ構造のアーチ形の面652の凸状のアーチ形のエッジ656上で接触した状態で引き出される。凸状のアーチ形のエッジ656は、ナノファイバーシートの第2の部分654において、ナノファイバーシート626の幅を、幅W1より大きい幅W4まで広げる。上述したように、第2の部分654は、供給されたままの状態または引き出される状態のナノファイバーシートの第1の部分626よりも密度が低くなってもよい。先の実施形態でも説明したように、いくつかの例では、ナノファイバーシートの幅の広がりは、ナノファイバーシートと凸状アーチ形のエッジ656との間の接触の前に始まり得る。これは、移行ゾーン658として、移行ゾーン658内のナノファイバーシート上の矢印により図6Hの中に示されている。図6Hの断面図は図6Iに示されている。
【0071】
図6Jは、凹状アーチ形エッジ662のエッジ666が、ナノファイバーシートの幅を、引き出される状態または供給されたままの状態から減少させるために使用される実施形態を示している。上述したように、供給されたままの状態のナノファイバーシートの部分626は幅W1を有している。これは、構造662の凸状エッジ666の上で接触した状態で引き出される。図6Jに示されている全体の構造662はアーチ形で凹状であるが、これは一実施形態にすぎず、エッジ666のみが凸状である必要があり、構造662は(ブレード652について図6Iに示されているように)任意の形状であってもよいことが理解されるであろう。いずれにしても、凸状のエッジ666との接触により、幅W1は、ナノファイバーシートの第2の部分664における幅W1よりも小さい幅W5に減少する。複数の例においては、第2の部分664は供給されたままの状態の部分626よりも密度が大きい。前述した例と同様に、幅の減少はエッジ666とナノファイバーシートとの間の接触に先行する移行部分668で生じ得る。これは矢印で示されている。図6Jの断面図は図6Kに示されている。
【0072】
別の実施形態では、ディスペンサー601は、任意の紡糸装置624と直列に配置される。紡糸装置624は、ナノファイバーヤーンの自由端または端部間にそれぞれ撚りをかける本撚り紡糸機または仮撚り紡糸機などの実施形態を含んでいてもよい。本撚り紡糸機及び仮撚り紡糸機は、PCT出願番号PCT/US2017/066665号に記載されており、その全体はここに引用することにより本明細書の記載の一部をなすものとする。1つの例においては、紡糸装置624は、シリコーンゴムリングまたはバンドを横切って引き出されるナノファイバーのストランドと接触するように配置される回転シリコーンゴムリングまたはバンドを含んでいてもよい。この「仮撚り」紡糸機は、ストランドのナノファイバーを互いに引き寄せて糸へと撚り合わせる力を付与することができる。
【0073】
また別の実施形態では、ディスペンサー601は、アーチ形のブレード608C及び608Dと、任意選択的な紡糸装置624の両方を備える。
【0074】
図7A図7Dは、本開示の実施形態においてナノファイバーシートを小分けに取り出すために使用されるナノファイバーシートディスペンサー600の様々な側面図を示す。これらの図に示されている全ての実施形態は、前述したように、ハウジング604、対応するエッジ面612を有するブレード608を含む。基準軸510及び710は、ナノファイバーフォレスト508と基材504との間の界面に平行であり、ナノファイバーシートがディスペンサー600に引き出される角度Θ4の基準として与えられており、ナノファイバーシートをナノファイバーディスペンサー600の外側に引き出すことができる角度Φ1、Φ2、Φ3、Φ4(それぞれ図7A図7D)が測定される。
【0075】
図7A図7Dに示すように、図示する幾何学的配置については(言い換えると、同じ(1)ナノファイバーフォレスト/シート界面(フォレストの「先端」とも呼ばれる)と開口を画定するハウジングの表面との間の水平距離、ならびに同じ(2)ナノファイバーフォレスト/シート界面とナノファイバーシート出口間隙(nanofiber sheet exit gap)との間の垂直距離、を有する構成については)、角度Θ4は、ナノファイバーシートがナノファイバーシートディスペンサー600の外側に1回引き出される角度にかかわらず、ほぼ(±0.5°)一定のままである。ナノファイバーシートが、出口間隙の上面(例えばブレード608Aの612A)のブレードのエッジと、出口間隙の下面(例えばブレード608Bの612B)のブレードのエッジのいずれと接触するように引き出されるかに応じて、及びナノファイバーのフォレスト/シート界面に対するそれらの対応する高さに応じて、角度に多少の変動が生じる場合がある。上述したように、これは、ナノファイバーフォレストと、ブレード608の対向するエッジ面612によって画定されるナノファイバー出口間隙との間の角度及び寸法が、ナノファイバーシートがディスペンサー600内部で引き出される角度(この場合はΘ4)を決定するためである。
【0076】
これも上述したように、異なる角度で行われると引き出し角度がナノファイバーシートの様々な特性を変える可能性があるため、これはナノファイバーシート間の一貫性の維持に役立つ。いくつかの例では、角度Θ4は、わずか3°、4°、または5°の最小値を有することができる。1つの例では、角度は約10°(+/-5°)である。通常、角度が大きいほど、引き出し中にナノファイバーシートの緻密化が生じることになる。ナノファイバーシート508の平面が、エッジ面612によって画定されるナノファイバーシート出口間隙を含む平面の下にあることから、通常、角度の値は正である。具体的な構成についての最小引き出し角度は、ナノファイバー開口部から最も遠いフォレストの端部で計算できることが理解されるであろう。より多くのフォレストがシートへと引き出されるにつれて、基材504上のナノファイバーフォレストの先端は、ナノファイバーシートが引き出される方向とは反対の方向に後退するであろう。これらの方向は図7Aの中に示されており、これらは本明細書に記載の他の例にも当てはまる。
【0077】
図7Aでは、角度Φ1は、5°~30°、2°~30°、5°~15°、15°~30°、10°~15°の範囲のいずれかの範囲内の大きさを有し、これは基準軸710の「下」で(またはより一般的にはその第1の側で)測定される。
【0078】
図7Bでは、角度Φ2は、5°~30°、2°~30°、5°~15°、15°~30°、10°~15°の範囲のいずれかの範囲内の大きさを有し、これは基準軸710の「上」で(またはより一般的にはその第1の側と反対の第2の側で)測定される。
【0079】
図7Cでは、角度Φ3は、0°~5°、0°~2°、2°~5°、2°~3°の範囲のいずれかの範囲内で基準軸710の上または下であってもよい。
【0080】
図7Dでは、角度Φ4は、シートの部分704及び720によって画定される間隙724によって示されるように、ナノファイバーシート720を破れさせるのに十分である。この例では、角度は、35°、40°、45°(基準軸710の「上」または「下」のいずれかで測定)の値のいずれかよりも大きくてもよい。
【0081】
図8は、ナノファイバーディスペンサー800の内部の中のブレードと、ナノファイバーシート出口間隙を画定するブレードとを含むナノファイバーシートディスペンサー800の実施形態を示している。この例では、ナノファイバーシートディスペンサー800は、基材804、ナノファイバーフォレスト808、ナノファイバーシート812、ブレード816、820、824、及び828を備える。
【0082】
上述した例と同様に、ナノファイバーシート812は、エッジ面818、822、ならびに対応するブレード830及び826のうちの1つと接触するように、ナノファイバーフォレスト808から引き出される。ディスペンサー800内部の中のブレードは、上述したように適切に成形されたエッジ面を使用することによって、ナノファイバーシートをさらに緻密化するか密度を減少させることができる。さらに、ディスペンサー800を使用することによって得ることができるナノファイバーシート812の密度及び/または幅は、上述した実施形態によって達成可能なものよりも大きいか小さいかのいずれかである。これは、一部には、ホルダー800内の複数の位置で、及びナノファイバーシート出口間隙でのフォレスト808とブレード824、828との間で、ナノファイバーシートに力を加えるブレード816、820、824、828の数(または他の実施形態ではそれ以上)によるものである。フォレスト808とブレード816との間、ブレード816と820との間、及びブレード820と824/848との間の、ナノファイバーシート812の様々な部分の角度は、ナノファイバーシート812の破れを回避するのに十分に小さい上述した範囲内のいずれかとすることができる。いくつかの例では、これらの角度のいずれも、フォレスト808/基材804の界面または平行な基準軸に対して測定して2°から30°の間とすることができる。
【0083】
図9は、引き出し中にナノファイバーシートが損傷を受けることを防止するために使用できるブレードの代替の構成を示している。この透視図では、ブレード900は、上述したブレードと類似した上下のエッジ面904A及び904Bを含む。さらに、ブレード900は、取り付けられたナノファイバーフォレストディスペンサーのナノファイバー出口間隙の周囲全体に連続的なエッジ面を形成するように、側部のエッジ面908A及び908Bを含む。これらの側部のエッジ面908A、908Bは、上述の構成のいずれかを有することができる(例えば図6Bに示されるもののような直線状のエッジ面、図6E~6Kに記載のもののようなアーチ形のエッジ面)。エッジ面908A、908Bの形状または輪郭に関わらず、エッジ面の存在は、上述したホルダーのいずれかのナノファイバーシート出口間隙のエッジのない側に接触する場合に起こりやすいナノファイバーシートの損傷を防止する。
【0084】
様々な他の実施形態は、上述したブレードのうちの1つ又は複数への電気的接続を含んでいてもよく、その場合ブレードは印加電流に応答して抵抗型ヒーターとして機能する。ある角度で引き出される際にエッジ面によってシートに加えられる圧力と組み合わせてエッジ面でナノファイバーシートに熱を加えると、圧力のみを用いた場合よりもさらにシートを緻密化することができる。さらに、別の実施形態では、ナノファイバーフォレストは、ナノファイバーフォレストディスペンサー内でコイル状にされたステンレス鋼シートなどのフレキシブル基材上に供給することができる。電気モーター及びベアリングと連携して、ナノファイバーシートをコイル状のナノファイバーフォレストから引き出すことができる。
【0085】
図10は、本開示のナノファイバーフォレストディスペンサーを使用するための例示的な方法1000の方法フロー図である。一実施形態では、方法1000は、ハウジングの内部にある基材上にナノファイバーフォレストを配置すること(1004)によって開始され、ハウジングは、エッジ面を有するナノファイバーシート出口間隙を画定する。その後、ナノファイバーシートは、ナノファイバーシート出口間隙を通してエッジ面と接触した状態でナノファイバーフォレストから引き出される(1008)。エッジ面と接触した状態でのナノファイバーシートの引き出し(1008)に応答して、ナノファイバーシートは緻密化される(1012)。
【0086】
[いくつかの例における追加的な検討事項]
前述した本開示の実施形態の説明は例示を目的とした説明であり、網羅的であることを意図するものではなく、また、特許請求の範囲を開示した正確な形態に限定することを意図するものではない。当業者であれば、上記の開示に照らして多くの変更及び変形が実行可能であることを理解することができる。
【0087】
本明細書で使用する文言は主に読みやすさ及び教示の目的のために選択したものであり、本発明の主題を詳述するかまたは制限するために選択したものではない。したがって、本開示の範囲は、発明を実施するための形態によってではなく、本明細書に基づいて出願で発行される請求項によって限定されるものとする。したがって、上記実施形態の開示は、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を例示するものであり、限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
図9
図10