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特許7269796動物用衣類、および動物用生体情報計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】動物用衣類、および動物用生体情報計測装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 13/00 20060101AFI20230427BHJP
   A01K 29/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A01K13/00 J
A01K29/00 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019098621
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020191799
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (A)平成31年3月13日、https://www.makuake.com/project/huglabo/ (B)平成31年3月14日、株式会社繊研新聞社、繊研新聞 平成31年3月14日付朝刊、第4面 (C)平成31年3月15日、ダイセン株式会社、繊維ニュース 平成31年3月15日付朝刊、第2面 (D)平成31年3月18日、日刊工業新聞社、日刊工業新聞 平成31年3月18日付朝刊、第14面 (E)平成31年3月19日、テレビ東京、ガイアの夜明け (F)平成31年4月24日、朝日新聞社、朝日新聞 平成31年4月24日付朝刊・第6面(東京版)、第9面(大阪版) (G)令和1年5月14日、日本経済新聞社、日経産業新聞 令和1年5月14日付朝刊、第15面
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 陽子
(72)【発明者】
【氏名】西村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】山本 大地
(72)【発明者】
【氏名】栩野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】小林 将大
(72)【発明者】
【氏名】黒田 修広
(72)【発明者】
【氏名】森井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】表 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】河端 秀樹
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3212323(JP,U)
【文献】国際公開第2019/035420(WO,A1)
【文献】特開2001-333655(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0067163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 13/00
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編地を備える動物用衣類であって、
前記編地は、抗菌性繊維を2質量%以上、100質量%以下含有し、且つ単糸繊度が0.3dtex以上、1.1dtex以下の繊維を30質量%以上、100質量%以下含有し、
前記編地は、ISO 13629-2:2014に基づいて下記式(1)により求められる前記編地のマラセチア菌に対する抗菌活性値(L)が2.0以上であることを特徴とする動物用衣類。
抗菌活性値(L)=(logC ―logC )-(logT ―logT ) ・・・(1)
[式中、logC は、48時間培養後の対称布の生菌数の常用対数である。logC は、接種直後の対称布の生菌数の常用対数である。logT は、48時間培養後の前記編地の生菌数の常用対数である。logT は、接種直後の前記編地の生菌数の常用対数である。]
【請求項2】
前記抗菌性繊維は、銀含有繊維であり、
前記編地は前記銀含有繊維を2質量%以上、40質量%以下含有するものである請求項1に記載の動物用衣類。
【請求項3】
前記銀含有繊維100質量部に対する前記銀含有繊維に含まれる銀の含量は0.01質量部以上、10質量部以下である請求項に記載の動物用衣類。
【請求項4】
前記編地は、セルロース系繊維を30質量%以上、95質量%以下含有するものである請求項1~のいずれかに記載の動物用衣類。
【請求項5】
25℃、60%RHの環境下における前記編地の水分率は3%以上、15%以下である請求項1~のいずれかに記載の動物用衣類。
【請求項6】
前記編地の肌側面のウェール密度が30(ウェール/2.54cm)以上、60(ウェール/2.54cm)以下である請求項1~のいずれかに記載の動物用衣類。
【請求項7】
前記編地の肌側面のコース密度が40(コース/2.54cm)以上、80(コース/2.54cm)以下である請求項1~のいずれかに記載の動物用衣類。
【請求項8】
前記編地は紡績糸を含み、前記紡績糸は、前記単糸繊度が0.3dtex以上、1.1dtex以下の繊維を含むものである請求項1~のいずれかに記載の動物用衣類。
【請求項9】
前記編地は、弾性糸を2質量%以上、20質量%以下含有するものである請求項1~のいずれかに記載の動物用衣類。
【請求項10】
前記編地は、身丈方向または身幅方向において、最大荷重50gf/cmの条件下における引張伸度が10%以上、150%以下である請求項1~のいずれかに記載の動物用衣類。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の動物用衣類と、前記動物用衣類に設けられた生体情報計測用電極とを備えることを特徴とする動物用生体情報計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編地を備える動物用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動物の防寒、体毛の汚れ防止、ファッショ性向上等の観点から、動物に衣類を着用させたいという需要が増大しており種々の動物用衣類が開発されている。例えば特許文献1では、胴体覆い部及び前脚覆い部裏側の少なくとも一部に防臭・抗菌加工が施されているメッシュ体で形成された裏地を備えるペット用衣服が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-333655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでに特許文献1のような防臭・抗菌加工が施されたペット用衣服等が知られているが、更に動物にとって快適な衣類の開発が切望されている。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、快適性に優れた動物用衣類および動物用生体情報計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明に係る動物用衣類および動物用生体情報計測装置は、以下の構成からなる。
【0006】
[1]編地を備える動物用衣類であって、
上記編地は、抗菌性繊維を2質量%以上、100質量%以下含有し、且つ単糸繊度が0.3dtex以上、1.1dtex以下の繊維を30質量%以上、100質量%以下含有することを特徴とする動物用衣類。
[2]上記編地は、ISO 13629-2:2014に基づいて下記式(1)により求められる上記編地のマラセチア菌に対する抗菌活性値(L)が2.0以上である[1]に記載の動物用衣類。
抗菌活性値(L)=(logC―logC)-(logT―logT) ・・・(1)
[式中、logCは、48時間培養後の対称布の生菌数の常用対数である。logCは、接種直後の対称布の生菌数の常用対数である。logTは、48時間培養後の上記編地の生菌数の常用対数である。logTは、接種直後の上記編地の生菌数の常用対数である。]
[3]上記抗菌性繊維は、銀含有繊維であり、
上記編地は上記銀含有繊維を2質量%以上、40質量%以下含有するものである[1]または[2]に記載の動物用衣類。
[4]上記銀含有繊維100質量部に対する上記銀含有繊維に含まれる銀の含量は0.01質量部以上、10質量部以下である[3]に記載の動物用衣類。
[5]上記編地は、セルロース系繊維を30質量%以上、95質量%以下含有するものである[1]~[4]のいずれかに記載の動物用衣類。
[6]25℃、60%RHの環境下における上記編地の水分率は3%以上、15%以下である[1]~[5]のいずれかに記載の動物用衣類。
[7]上記編地の肌側面のウェール密度が30(ウェール/2.54cm)以上、60(ウェール/2.54cm)以下である[1]~[6]のいずれかに記載の動物用衣類。
[8]上記編地の肌側面のコース密度が40(コース/2.54cm)以上、80(コース/2.54cm)以下である[1]~[7]のいずれかに記載の動物用衣類。
[9]上記編地は紡績糸を含み、上記紡績糸は、上記単糸繊度が0.3dtex以上、1.1dtex以下の繊維を含むものである[1]~[8]のいずれかに記載の動物用衣類。
[10]上記編地は、弾性糸を2質量%以上、20質量%以下含有するものである[1]~[9]のいずれかに記載の動物用衣類。
[11]上記編地は、身丈方向または身幅方向において、最大荷重50gf/cmの条件下における引張伸度が10%以上、150%以下である[1]~[10]いずれかに記載の動物用衣類。
[12]上記[1]~[11]のいずれかに記載の動物用衣類と、上記動物用衣類に設けられた生体情報計測用電極とを備えることを特徴とする動物用生体情報計測装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば上記構成により、マラセチア皮膚炎の発症またはマラセチア皮膚炎の悪化を防止し易く快適性に優れた動物用衣類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は動物用生体情報計測装置の内面(生体に接する面)の展開図である。
図2図2は動物用生体情報計測装置の外面(生体に接していない面)の展開図である。
図3図3は犬に着用させたときの動物用生体情報計測装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の動物用衣類は、編地を備える動物用衣類であって、編地は、抗菌性繊維を2質量%以上、100質量%以下含有し、且つ単糸繊度が0.3dtex以上、1.1dtex以下の繊維を30質量%以上、100質量%以下含有するものである。
【0010】
上記構成により、マラセチア皮膚炎の発症またはマラセチア皮膚炎の悪化を防止し易く快適性に優れた動物用衣類を提供することができる。詳細には、まず犬等の動物の皮膚に常在する真菌のマラセチア菌は、湿度の高い環境下等では過剰に増殖してしまいマラセチア皮膚炎を引き起こすことが知られていた。そのため、動物に衣類を着用させると蒸れ易くなってマラセチア皮膚炎が発症するか、または悪化し易くなるおそれがあった。そこで本発明者らは鋭意検討した結果、衣類に抗菌性繊維を所定量含有させること、特に銀含有の抗菌性繊維を含有させることにより、マラセチア菌の増殖を抑制し易くできることを見出した。更に衣類を編物とし、且つ単糸繊度が0.3dtex以上、1.1dtex以下の極細繊維を所定量含有させることにより、衣類を柔軟で膨らみのある風合いにすることができ、且つ表面摩擦を低減してマラセチア皮膚炎等の患部の悪化を低減できることを見出した。このような衣類は、動物にとって快適なものとなる。以下では本発明の動物用衣類の各構成について詳述する。
【0011】
動物用衣類は、編地を備えるものである。即ち、動物用衣類の少なくとも一部は、編物により構成されているものであり、編物として、例えば緯編物または経編物が好ましく、緯編物がより好ましい。なお緯編物には丸編物も含まれる。
【0012】
緯編物(丸編物)として、例えば天竺編(平編)、ベア天竺編、ウエルト天竺編、フライス編(ゴム編)、パール編、片袋編、スムース編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等の編組織を有するものが挙げられる。このうち天竺編、ベア天竺編、フライス編、またはスムース編が好ましく、ベア天竺編またはスムース編がより好ましい。これらの編組織は少なくとも片面がフラットな組織であるため、滑らかな肌触りを持ち、患部との接触を優しくすることができる。ベア天竺編は伸縮性に優れ、動物の身体の動きに追従し易く皮膚への負担が少ないため特に好ましい。
【0013】
経編物として、シングルデンビー編、開目デンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフ編、ハーフベース編、サテン編、トリコット編、ハーフトリコット編、ラッセル編、ジャガード編等の編組織を有するものが挙げられる。
【0014】
編地は、単糸繊度が0.3dtex以上、1.1dtex以下の繊維(以下では単に極細繊維と呼ぶ場合がある)を30質量%以上、100質量%以下含有するものである。極細繊維を30質量%以上含むことにより、編地の肌側面の摩擦力を低減し易くすることができる。更に柔軟で膨らみのある風合いになり易く、ぬいぐるみのような感触になり、飼い主がペットを抱いたときの癒やし効果を向上し易くすることができる。そのため、極細繊維の含量は好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更により好ましくは80質量%以上である。一方、極細繊維の含量の上限は特に限定されないが、例えば98質量%以下、95質量%以下であってもよい。
【0015】
極細繊維としては、天然繊維、合成繊維、再生繊維、半合成繊維等を用いることができる。天然繊維として、綿、麻、羊毛、絹等が挙げられる。なお天然繊維は、そのまま用いてもよいが親水処理や防汚処理等の後加工を施してもよい。合成繊維として、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド等が挙げられる。再生繊維として、レーヨン、リヨセル、キュプラ等が挙げられる。半合成繊維として、アセテート等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。これらのうち合成繊維と、再生繊維若しくは半合成繊維との組み合わせによれば、柔軟で膨らみのある風合いにし易くでき、更に吸湿性を向上し易くできる。そのため、合成繊維と再生繊維との組み合わせ、または合成繊維と半合成繊維との組み合わせが好ましく、合成繊維と再生繊維との組み合わせがより好ましい。なお極細繊維は、抗菌性が付与されていてもよく、後記する抗菌性繊維を含んでいてもよい。
【0016】
編地は、抗菌性繊維を2質量%以上、100質量%以下含有するものである。抗菌性繊維を2質量%以上含有することにより抗菌性が発揮され易くなって、動物の皮膚炎の発症を防止し易くすることができる。そのため抗菌性繊維の含量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上である。一方、抗菌性繊維の含量をある程度、低減することにより抗菌性物質に対するアレルギー反応の発症を防止し難くすることができる。そのため抗菌性繊維の含量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更により好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0017】
抗菌性繊維は、抗菌性物質を含んでいることが好ましい。抗菌性物質を含む抗菌性繊維として、樹脂中に抗菌性物質が混練されたものや、繊維を構成する高分子中に抗菌性物質が導入されたものや、繊維表面に抗菌性物質が保持されているものが挙げられる。これらのうち繊維表面に抗菌性物質が保持されたものは抗菌性が発揮され易いため好ましい。抗菌性物質として、第4級アンモニウム塩系化合物、トリアゾール系化合物、イミダゾール系化合物等の有機系抗菌物質や、銀、亜鉛、銅等の貴金属及びそれらの金属塩、更には銀イオン、亜鉛イオン、銅イオン等の金属イオンを担持させたゼオライト等の無機系抗菌性物質が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。このうち貴金属はマラセチア菌増殖の抑制効果に優れるため好ましく、銀、銀塩、銀イオンがより好ましい。
【0018】
抗菌性繊維として、市販の繊維を用いればよいが、例えば貴金属を繊維に保持させる方法としては、特開平7-243169号公報や特開平9-13221号公報等を参照することができる。これらの方法により得られた抗菌性繊維は、貴金属イオンが繊維と強固にイオン結合で結びついているため、繰り返しの洗濯後においても抗菌性が維持され易くなる。また繊維の高分子中に第4級アンモニウム塩基を導入する方法としては、特公昭58-10510号公報を参照することができる。
【0019】
抗菌性繊維の素材としては、上記極細繊維の素材を参照することができる。それらのうち貴金属含有繊維として合成繊維、再生繊維が好ましく、合成繊維がより好ましく、アクリル繊維が更により好ましい。
【0020】
抗菌性繊維の単糸繊度は、1.1dtex超、2.5dtex以下であることが好ましい。1.1dtex超であることにより抗菌性繊維の強度を向上し易くすることができる。抗菌性繊維の単糸繊度は、好ましくは1.2dtex以上、より好ましくは1.3dtex以上、更に好ましくは1.4dtex以上である。一方、抗菌性繊維の単糸繊度を2.5dtex以下とすることにより、抗菌性を発揮し易くすることができる。抗菌性繊維の単糸繊度は、好ましくは2.2dtex以下、より好ましくは2.0dtex以下、更に好ましくは1.8dtex以下である。
【0021】
抗菌性繊維が銀含有繊維である場合、編地は銀含有繊維を2質量%以上、40質量%以下含有することが好ましい。銀含有繊維の含量が2質量%以上であることにより、マラセチア菌の増殖を抑制し易くすることができる。銀含有繊維の含量は、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上である。一方、銀含有繊維の含量を40質量%以下とすることにより、銀に対するアレルギー反応を発症し難くさせることができる。そのため、銀含有繊維の含量は、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更により好ましくは15質量%以下、特に好ましくは8質量%以下である。
【0022】
銀含有繊維100質量部に対する銀含有繊維に含まれる銀の含量は0.01質量部以上、10質量部以下であることが好ましい。銀の含量が0.01質量部以上であることにより、マラセチア菌の増殖を抑制し易くすることができる。そのため、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、更により好ましくは0.15質量部以上である。一方、銀の含量を10質量部以下とすることにより、銀に対するアレルギー反応を発症し難くさせることができる。そのため銀の含量は、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、更により好ましくは0.50質量部以下、特に好ましくは0.40質量部以下である。
【0023】
抗菌性繊維中の銀の含量は、例えば0.1grの抗菌性繊維を95%の濃硫酸と62%の濃硝酸溶液で湿式分解して、得られた溶液を日本ジャーレルアッシュ株式会社製の原子吸光分析装置AA855型を用いて原子吸光度を測定して求めることができる。
【0024】
抗菌性繊維が第4級アンモニウム塩系化合物を含有する繊維である場合、当該繊維100質量部に対する当該繊維に含まれる第4級アンモニウム塩系化合物の含量は0.01質量部以上、10質量部以下であることが好ましい。第4級アンモニウム塩系化合物の含量が0.01質量部以上であることにより、マラセチア菌の増殖を抑制し易くすることができる。そのため、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、更により好ましくは0.15質量部以上である。一方、第4級アンモニウム塩系化合物の含量を10質量部以下とすることにより、第4級アンモニウム塩系化合物に対するアレルギー反応を発症し難くさせることができる。そのため第4級アンモニウム塩系化合物の含量は、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更により好ましくは2質量部以下である。
【0025】
編地は、ISO 13629-2:2014に基づいて下記式(1)により求められる編地のマラセチア菌に対する抗菌活性値(L)が2.0以上であることが好ましい。
抗菌活性値(L)=(logC―logC)-(logT―logT) ・・・(1)
[式中、logCは、48時間培養後の対称布の生菌数の常用対数である。logCは、接種直後の対称布の生菌数の常用対数である。logTは、48時間培養後の編地の生菌数の常用対数である。logTは、接種直後の編地の生菌数の常用対数である。]
編地の抗菌活性値(L)が2.0以上であることにより、マラセチア皮膚炎の発症や悪化を防止し易くすることができる。抗菌活性値(L)は、より好ましくは2.1以上、更に好ましくは2.2以上、更により好ましくは2.3以上である。一方、抗菌活性値(L)の上限は特に限定されないが、例えば5.0以下、4.0以下であってもよい。抗菌活性値(L)は、具体的には後記する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
編地は、JIS L 0217(1995)の103法に基づく洗濯30回後の抗菌活性値(L)が、1.8以上であることが好ましい。これにより繰り返し洗濯しても、マラセチア皮膚炎の発症や悪化の防止効果を維持し易くすることができる。より好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.2以上である。一方、上限は特に限定されないが、例えば3.5以下、3.0以下であってもよい。
【0027】
編地は、セルロース系繊維を30質量%以上、95質量%以下含有するものであることが好ましい。セルロース系繊維を30質量%以上含有することにより、編地の吸湿性が向上して、衣類内の湿度を適度に保持し易くすることができる。その結果、蒸れ感、べたつきや、皮膚炎の発症や悪化等を抑制し易くすることができる。セルロース系繊維の含量は、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。一方、セルロース系繊維の含量を95質量%以下とすることにより、衣類の皺や収縮の発生を防止し易くすることができる。そのため、セルロース系繊維の含量は、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更により好ましくは60質量%以下、特に好ましくは55質量%以下である。
【0028】
セルロース系繊維として、綿、麻等の天然セルロース系繊維;ビスコースレーヨン、ポリノジック、ハイウェットモジュラスレーヨン、リヨセル、キュプラ等の再生セルロース繊維;アセテート等の半合成セルロース繊維が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。このうち再生セルロース繊維は、吸湿性を有し、且つ絹のような風合い、肌触りを実現し易くできるため好ましく、より好ましくはポリノジック(例えば東洋紡株式会社製のタフセル(登録商標))、ハイウエットモジュラスレーヨン(例えばレンチング社製のモダール(登録商標))等である。
【0029】
20℃、65%RHの環境下における編地の水分率は3%以上、15%以下であることが好ましい。水分率が上記範囲であることにより、編地の吸湿性と乾燥性のバランスが良好になり、衣類内の湿度が適度に保持しされ易くなる。その結果、皮膚炎の発症や悪化等を抑制し易くすることができる。編地の水分率は、より好ましくは4%以上、10%以下、更に好ましくは5%以上、7%以下である。上記水分率は、JIS L1096(2010)8.10に基づいて、乾燥前の環境を20℃、65%RHの環境として、求めることができる。
【0030】
編地の肌側面のウェール密度が30(ウェール/2.54cm)以上、60(ウェール/2.54cm)以下であることが好ましい。ウエール密度が高い程、ループ密度が高くなって、緻密で凹凸の少ない表面構造になり易くなるため、肌触りを滑らかにし易くすることができる。そのためウエール密度は、より好ましくは35ウエール/2.54cm以上、更に好ましくは40ウエール/2.54cm以上である。一方、ウエール密度を60ウエール/2.54cm以下とすることにより通気性を向上し易くすることができる。そのため、ウエール密度は、より好ましくは55ウエール/2.54cm以下、更に好ましくは53ウエール/2.54cm以下である。
【0031】
編地の肌側面のコース密度が40(コース/2.54cm)以上、80(コース/2.54cm)以下であることが好ましい。コース密度が高い程ループ密度が高くなり、緻密で凹凸の少ない表面構造になり易くなるため、肌触りを滑らかにし易くすることができる。そのためコース密度は、より好ましくは50コース/2.54cm以上、更に好ましくは55コース/2.54cm以上である。一方、コース密度を80コース/2.54cm以下とすることにより通気性を向上し易くすることができる。そのためコース密度は、より好ましくは78コース/2.54cm以下、更に好ましくは75コース/2.54cm以下である。
【0032】
編地は紡績糸を含むことが好ましい。紡績糸中に極細繊維が含まれる場合、極細繊維の効果が発揮され易くなる。また紡績糸中に抗菌性繊維が含まれる場合、抗菌性繊維の効果が維持され易くなる。そのため紡績糸の含量は、編地100質量%中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。紡績糸の含量の上限は特に限定されないが、例えば98質量%以下、95質量%以下、93質量%以下であってもよい。
【0033】
紡績糸は、上記極細繊維(単糸繊度が0.3dtex以上、1.1dtex以下の繊維)を含むことが好ましい。極細繊維が紡績糸に含まれることにより、極細繊維の摩擦力低減効果や、柔軟性の向上等の効果を発揮し易くすることができる。そのため紡績糸100質量部中、極細繊維の含量は好ましくは40質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは70質量部以上、更により好ましくは85質量部以上である。一方、紡績糸中における極細繊維の含量の上限は特に限定されないが、例えば98質量部以下、95質量部以下であってもよい。
【0034】
紡績糸は、上記抗菌性繊維を含むことが好ましい。抗菌性繊維が紡績糸に含まれていることにより、抗菌性が維持され易くなる。そのため紡績糸100質量部中、抗菌性繊維の含量は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。一方、抗菌性繊維の含量をある程度、低減することにより、抗菌性物質に対するアレルギー反応を発症し難くさせることができる。そのため、紡績糸100質量部中における抗菌性繊維の含量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、更により好ましくは20質量部以下、特に好ましくは15質量部以下である。
【0035】
紡績糸の英式番手(′s/1)は、好ましくは20以上、80以下である。英式番手が20以上であることにより、編地の柔軟性を向上することができる。そのため紡績糸の英式番手は、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上である。一方、英式番手が80以下であることにより、編地の強度を向上し易くすることができる。そのため紡績糸の英式番手は、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である。英式番手は、後記する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0036】
紡績糸は1種に限定されず、2種以上の紡績糸を組み合わせて用いてもよい。例えば、抗菌性繊維を含有する第1の紡績糸と、抗菌性繊維を含有しない第2の紡績糸との組み合わせ、又は抗菌性繊維を含有する第1の紡績糸と、抗菌性繊維を含有する第2の紡績糸との組み合わせが好ましい。このうち抗菌性繊維を含有する第1の紡績糸と、抗菌性繊維を含有しない第2の紡績糸との組み合わせは、抗菌性を発揮させつつ、抗菌性物質に対するアレルギー反応の発症を防止し易くできるため、より好ましい。
【0037】
第1の紡績糸100質量部に対して、第2の紡績糸は70質量部以上、130質量部以下含まれていることが好ましく、80質量部以上、120質量部以下含まれていることがより好ましく、90質量部以上、110質量部以下含まれていることが更に好ましい。
【0038】
第1の紡績糸は、抗菌性繊維とセルロース系繊維を含むことが好ましい。セルロース系繊維の吸水性、吸湿性により抗菌性繊維の周囲にある程度、水分が存在し易くなることにより抗菌性繊維の抗菌性が発揮され易くなる。第1の紡績糸中、抗菌性繊維10質量部に対して、セルロース系繊維は70質量部以上、95質量部以下含まれていることが好ましく、80質量部以上、90質量部以下含まれていることがより好ましい。一方、第2の紡績糸は、第2の紡績糸100質量部中、合成繊維と半合成繊維よりなる群から選択される少なくとも1種を70質量部以上含むことが好ましい。より好ましくは80質量部以上、更に好ましくは90質量部以上、最も好ましくは100質量部である。
【0039】
その他、極細繊維を含有する第1の紡績糸と、極細繊維を含有する第2の紡績糸との組み合わせ、又は極細繊維を含有する第1の紡績糸と、極細繊維を含有しない第2の紡績糸との組み合わせが好ましい。このうち、極細繊維を含有する第1の紡績糸と、極細繊維を含有する第2の紡績糸との組み合わせは、柔軟で膨らみのある風合いを向上し易いためより好ましい。第1の紡績糸100質量部中、極細繊維は70質量部以上、95質量部以下含まれていることが好ましく、80質量部以上、90質量部以下含まれていることがより好ましい。一方、第2の紡績糸100質量部中、極細繊維は70質量部以上含まれていることが好ましく、より好ましくは80質量部以上、更に好ましくは90質量部以上、最も好ましくは100質量部である。
【0040】
編地は、第1の紡績糸と第2の紡績糸を40質量%以上含有することが好ましい。これにより第1の紡績糸と第2の紡績糸の効果が発揮され易くなる。より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更により好ましくは65質量%以上である。一方、上限は特に限定されないが、例えば95質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0041】
編地は、弾性糸を2質量%以上、20質量%以下含有することが好ましい。編地100質量%に対する弾性糸の含量が2質量%以上であることにより、伸長率を向上し、衣類の着用時の着圧を低減し易くすることができるため、皮膚炎の発症や悪化を防止し易くすることができ、また皮膚炎を発症している動物の皮膚炎の悪化を回避し易くすることができる。弾性糸の含量は、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。一方、弾性糸の含量を20質量%以下とすることにより、編成し易くすることができ生産性が向上する。更にフィット性を向上し、寸法変化を起こし難くさせることができる。弾性糸の含量は、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0042】
弾性糸は、ゴム状弾性を持った糸である。弾性糸は、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれも用いることができる。弾性糸として、具体的にはポリウレタン弾性糸、ポリエステル系弾性糸、ポリオレフィン系弾性糸、天然ゴム糸、合成ゴム糸、伸縮性を有する複合繊維からなる糸等が挙げられる。弾性糸は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。これらのうちポリウレタン弾性糸は、糸の弾性、熱セット性、耐薬品性等に優れているため好ましい。ポリウレタン弾性糸として、例えば融着タイプのポリウレタン弾性糸、合着タイプのポリウレタン弾性糸等を用いることができる。
【0043】
編地は、身丈方向または身幅方向において、最大荷重50gf/cmの条件下における引張伸度が10%以上、150%以下であることが好ましい。引張伸度が10%以上であることにより、動物の身体の動きに衣類が追従し易くなり、また編地の伸び止まりによる窮屈感を防止し易くすることができる。更に衣類の着脱性も向上させることができる。引張伸度は、より好ましくは30%以上、更に好ましくは60%以上、更により好ましくは80%以上である。一方、引張伸度が150%以下であることにより、動物が動き回ることにより衣類が脱げてしまうことを回避し易くすることができる。引張伸度は、より好ましくは130%以下、更に好ましくは110%以下、更により好ましくは100%以下である。引張伸度は、後記する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0044】
編地の目付は100g/m以上、250g/m以下であることが好ましい。編地の目付が100g/m以上であることにより、編地の強度が向上し易くなる。そのため編地の目付は、より好ましくは120g/m以上、更に好ましくは140g/m以上である。一方、編地の目付が250g/m以下であることにより、編地を軽量化し、通気性を向上易くすることができる。そのため編地の目付は、より好ましくは240g/m以下、更に好ましくは220g/m以下、更により好ましくは180g/m以下である。編地の目付は、後記する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0045】
編地の肌側面は、平均摩擦係数が0.33以下であることが好ましい。平均摩擦係数が0.33以下であることにより、衣類による動物の肌への刺激を低減することができる。これにより、皮膚炎を発症している動物の皮膚炎の悪化を回避し易くすることができる。そのため、平均摩擦係数は、より好ましくは0.32以下、更に好ましくは0.31以下、更により好ましくは0.30以下である。一方、平均摩擦係数の下限は特に限定されないが、例えば0.05以上、0.10以上であってもよい。平均摩擦係数は後記する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
以上では編地について詳述したが、このような編地を用いて形成された衣類は、快適性に優れ動物用衣類として好適なものとなる。更に上記編地は、単独で用いてもよいが、公知の生地と組み合わせて重ね着等の形で衣類を形成して動物に着用させてもよい。
【0047】
動物用衣類は、例えば犬、猫等のペット用衣類;馬、牛、羊などの家畜用衣類;爬虫類、両生類などの愛玩動物用衣類;野生動物用衣類として用いることができる。このうちペット用衣類が好ましく、犬用衣類がより好ましい。
【0048】
動物用衣類は、防寒具として好ましく用いることができる。その他に動物用衣類は、動物の体毛の汚れ防止や、虫刺され防止、自身による引っ掻き防止等を目的として用いることもできる。また動物用衣類は、既に皮膚炎を発症している動物に対しても引っ掻き防止や炎症部の保護等を目的として着用させることもできる。
【0049】
動物用衣類は、その形態は特に限定されず、例えば動物の胸部、腹部、前脚部、後脚部、頸部、及び顔部のうち少なくとも一部を覆うものであることが好ましく、胸部、及び腹部のうち少なくとも一部を覆うものであることがより好ましい。
【0050】
本発明には、上記説明した動物用衣類と、当該動物用衣類に設けられた生体情報計測用電極とを備える動物用生体情報計測装置も含まれる。動物用生体情報計測装置は、電極の他に必要に応じて配線、スナップファスナー等のコネクタ、電子ユニット、コネクタを介して着脱可能な電子ユニットなどを備えていてもよい。例えば、二つ以上の電極を動物用衣類の内面(動物の体表面に接する側の面)に設けることにより、心電位、筋電位等を測定することができる。また動物用衣類の内面や外面に非接触電極を設けて、身体のインピーダンス変化を測定することにより脈拍、呼吸、運動状態などを計測することも可能である。
【0051】
電極としては、導電繊維を含むファブリック電極、導電粒子と柔軟性樹脂を主成分として含む伸縮性導体組成物により形成される伸縮性電極等が挙げられる。一般に、これらの電極は透湿性が低いため、電極周辺部分は蒸れ易い部分であるが、本発明の動物用衣類は、抗菌性繊維を含むものであるため、皮膚病の発生を予防することができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】
英式番手:JIS L 1095(2010) 9.4.2に準じて、紡績糸の見掛け綿番手を測定し、これを英式番手とした。
【0054】
繊度:単糸繊度は、JIS L 1013(2010)8.3.1 A法に基づいて、正量繊度を測定して総繊度とし、それを単繊維数で除することにより単糸繊度を求めた。
【0055】
ウェール密度、コース密度:JIS L 1096(2010)8.6.2の測定方法に基づいて編地のウェール密度、コース密度を測定した。
【0056】
目付:JIS L 1096(2010) 8.3.2に規定されている「標準状態における単位面積当たりの質量」に準拠して編地の目付を測定した。
【0057】
水分率:JIS L 1096(2010)8.10に基づいて、環境温湿度を20℃、65%RHとして、編地の水分率を測定した。
【0058】
抗菌性評価:下記実施例、比較例で得られた編地を用いて、ISO 13629-2:2014 Textiles―Determination of antifungal activity of textile products-part2:Plate count method 11 Testing procedure 11.1.2 Absorption methodに準じて抗菌性試験を行った。試験菌株はMalassezia pachydermatis NBRC 10064を用いた。試験菌を接種した直後、及び30℃で48時間培養後において、洗い出し液1mL当たりの生菌数を求めて、それぞれの平均値を下記式(1)に当てはめて抗菌活性値を求めた。
抗菌活性値(L)=(logC―logC)-(logT―logT) ・・・(1)
[式中、logCは、48時間培養後の対称布の生菌数の常用対数である。logCは、接種直後の対称布の生菌数の常用対数である。logTは、48時間培養後の編地の生菌数の常用対数である。logTは、接種直後の編地の生菌数の常用対数である。]
【0059】
更に下記実施例、比較例で得られた編地に対してJIS L 0217(1995)の103法に基づく洗濯を30回行ったものについても同様に抗菌活性値を求めた。
【0060】
防臭性:ライオン社製のクイック&リッチ トリートメントインシャンプーを用いてマラセチア菌による皮膚炎に罹患したシーズーの体を洗浄した後、下記実施例、比較例で得られた編地により形成された犬服を、上記シーズー1頭に、それぞれ1週間着用させた後、マラセチア臭(発酵臭のような独特の臭い)の強弱を4段階で評価した。具体的には、1週間着用させた各試料を、チャック付アルミ袋(チャック下260mm、袋幅180mm)に入れ、さらにその袋に0.5Lの空気を入れ、20℃で24時間放置した。20℃65%RHの環境にて、被験者5名で臭気を4段階(0点:臭気が無い、1点:臭気が少しある、2点:臭気がある、3点:臭気がきつい)で評価した。被験者5名の評価点の平均値を算出し、0点以上、0.5点未満を臭気が無いとして◎、0.5点以上、1.5点未満を臭気が少しあるとして○、1.5点以上、2.5点未満を臭気があるとして△、2.5点以上、3.0点以下を臭気がきついとして×で評価した。
【0061】
平均摩擦係数:下記実施例、比較例で得られた編地についてMIU(平均摩擦係数)を測定した。測定装置及び測定条件は以下の通りである。各編地3サンプルずつ測定を行い、肌側面のMIUの平均値をそれぞれ求めた。
測定装置:カトーテック株式会社製の摩擦感テスター「KES SE SURFACE TESTER」
環境:20℃、65%RH
静荷重:25gf/cm
速度:1mm/秒
摩擦子:10mm角ピアノワイヤ
【0062】
引張伸度:下記実施例、比較例で得られた編地から縦15cm、横15cmの試験片を採取し、カトーテック社製の引張りせん断試験機(KES-FB1-A)を用いて、コース方向、ウェール方向における引張速度0.2mm/s、最大荷重50gf/cmの条件下における引張伸度(EMT)を測定し、コース方向、ウェール方向の平均最大伸度を求めた。詳細には、最大荷重を負荷したときの試験片の長さをB、もとの試験片の長さをAとしたとき((B-A)/A)×100の値を引張伸度(%)とした。
【0063】
衣服温湿度:不感蒸泄を行っている犬が衣類を着用した際に感じる暖かさの指標として、冬場に温度制御された部屋の中で衣類を着用するという実用環境を考慮したモデル評価法による衣服内温度を測定した。具体的には、発汗シミュレーション測定装置(東洋紡株式会社製)を用い、水供給量:30g/m2・h、熱板温度:37℃、試料と熱板の距離:1cm、環境温湿度:20℃、30%RH、発汗パターン:試験開始15分後より5分間水供給を実施し、熱板と試料の間の空間の温度、更には湿度を測定した。犬が感じる暖かさの指標として、上記モデル評価法による衣服内温度を採用した理由は以下の通りである。まず、犬が衣類を着用した際に感じる暖かさは、犬の体と衣服の間の空間の温度が高いほど暖かく感じると推定される。そこで発明者らは、環境温湿度:20℃、30%RHの条件で犬に衣類を着用させて、発汗シミュレーション装置試験法(スキンモデル試験法)を使用して検討した。その結果、上記空間の温度が発汗開始後に30℃以上となる編地からなる衣類を犬に着用させた場合、上記空間の温度が30℃未満となる編地からなる衣類を犬に着用させた場合よりも、犬がパネルヒーターの前で臥位姿勢となる時間が短くなること、即ち暖かく感じていることを確認した。
【0064】
癒し感:20℃、65%RHの環境下で、下記実施例、比較例で得られた編地により形成された犬服をそれぞれトイプードルに着用させた。その後、被験者10名がトイプードルを抱きかかえたときの癒し感を4段階で評価した。犬服の肌触りが良くとても癒されたものを◎、癒されたものを〇、やや癒されたものを△、全く癒されなかったものを×とした。
【0065】
べたつき、蒸れ感:20℃、65%RHの環境下で、下記実施例、比較例で得られた編地により形成された犬服をそれぞれトイプードルに着用させた。その後、被験者10名がトイプードルを15分間抱きかかえたときの、べたつき、蒸れ感の有無を評価した。べたつきと蒸れ感があったものを「有」、べたつきと蒸れ感がなかったものを「無」とした。
【0066】
実施例1
0.2質量%の銀を含有する銀含有アクリル繊維である東洋紡STC株式会社製のアグリーザ(単糸繊度1.5dtex、繊維長38mm)と、セルロース系繊維であるモダールレンチング社製のマイクロモダール(単糸繊度1.0dtex、繊維長38mm)とを混綿し、カードスライバー、スライバーとして、最終的に粗糸を得た。この粗糸に対してリング精紡機を用いて、撚り係数:3.5回/2.54cmの実撚りを付与する事で英式番手50(′s/1)の紡績糸1を得た。
【0067】
同様にアクリル繊維である日本エクスラン工業株式会社製のUFタイプ(単糸繊度0.5dtex、繊維長32mm)を用いて粗糸を作製し、実撚りを付与する事で英式番手50(′s/1)の紡績糸2を得た。
【0068】
得られた紡績糸1、2と、フィラメント糸として融着ポリウレタン繊維である日清紡テキスタイル株式会社製のモビロン(繊度22dtex)とを用いて福原精機製の積極給糸装置つきシングル丸編機を用いて、ドラフト率3.0倍の条件でベア天竺編にて製編した。得られた生機に対し、常法の精錬漂白、反応染料による染色を行った後、親水加工を行って編地を仕上げた。なお各繊維の含量は、編地100質量%に対して表1に示す含量(質量%)となるようにして上記作業を行った。
【0069】
実施例2
実施例1における紡績糸2の素材であるアクリル繊維(単糸繊度0.5dtex)の代わりに、アクリル繊維である日本エクスラン工業社製のK822タイプ(単糸繊度1.0dtex、繊維長38mm)を用いたこと、及びフィラメント糸として融着ポリウレタン繊維であるモビロン(繊度22dtex)の代わりにポリウレタン繊維である東レ・オペロンテックス株式会社製のオペロン(繊度22dtex)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、編地を得た。
【0070】
実施例3
実施例2における紡績糸1の素材である銀含有アクリル繊維とセルロース系繊維であるマイクロモダールとの含量を表1に示す含量としたこと、紡績糸2のアクリル繊維をマイクロモダールとしたこと以外は実施例2と同様にして、編地を得た。
【0071】
実施例4
実施例2における紡績糸2の素材であるアクリル繊維(単糸繊度1.0dtex)の代わりにアクリル繊維である日本エクスラン工業社製のK60(単糸繊度2.2dtex、繊維長38mm)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、編地を得た。
【0072】
実施例5
実施例2における紡績糸2の代わりに紡績糸1と同じ紡績糸を用いたこと、フィラメント糸を用いなかったこと、及びダブル丸編機を用いて、インターロックゲージングにてスムース編にて製編した。この生機を通常の染色加工を行った後、実施例1と同様に仕上げて編地を得た。
【0073】
実施例6
実施例2における紡績糸1の素材である銀含有アクリル繊維を用いずにセルロース系繊維であるマイクロモダールのみで紡績糸1を形成したこと以外は実施例2と同様にして、編地を仕上げた。更にこの編地に対して、パディング法にてシリコーン系第四級アンモニウム塩による抗菌加工を行った。具体的には抗菌剤(マイクロバン社製AEM5700)を2%owf(繊維重量に対する薬剤付着率%)になるよう処方液と絞り率を調整して薬剤を付与したのち、乾燥し150℃、1分間の熱処理を行った。
【0074】
比較例1
実施例2における紡績糸1の素材である銀含有アクリル繊維の含量を表1に示す含量としたこと、紡績糸1のセルロース系繊維であるマイクロモダール(単糸繊度1.0dtex)の代わりにモダール(単糸繊度1.5dtex、繊維長38mm)を表1に示す含量で用いたこと、紡績糸2の素材であるアクリル繊維(単糸繊度1.0dtex)の代わりにアクリル繊維である日本エクスラン工業社製のK60(単糸繊度2.2dtex、繊維長38mm)を用いたこと以外は実施例2と同様にして編地を得た。
【0075】
比較例2
実施例2における紡績糸1の素材として銀含有アクリル繊維を用いなかったこと、紡績糸1の素材であるマイクロモダール(単糸繊度1.0dtex)の代わりにアクリル繊維である日本エクスラン工業社製のK60(単糸繊度2.2dtex、繊維長38mm)を表1に示す含量で用いたこと、及び紡績糸2の素材であるアクリル繊維(単糸繊度1.0dtex)の代わりにアクリル繊維である日本エクスラン工業社製のK60(単糸繊度2.2dtex、繊維長38mmを用いたこと以外は実施例2と同様にして編地を得た。
【0076】
上記のようにして得られた実施例1~6、比較例1、2の編地を用いて、犬用の衣服を作製した。当該編地、犬用衣服を用いて上記各評価を行った。これらの編地、犬用衣服の物性や評価結果を表1、2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
実施例7
実施例1で得られた編地を用いて犬用衣服を作製し、図1図2に示すように電極201、配線部202、コネクタとしてのスナップファスナー500、面ファスナー700、着脱可能な電子デバイスである電子ユニット900とを衣服本体800に取り付けて、生体情報計測装置を作製した。図1は動物用生体情報計測装置の内面(生体に接する面)の展開図であり、図2は動物用生体情報計測装置の外面(生体に接していない面)の展開図である。なお電極201には、電極ゲルであるParker Laboratories社製のsinga gelを塗布した。更に電子ユニット900としてユニオンツール社製のWHS-1を用いた。次いで図3に示す様に、得られた生体情報計測装置をチワワ(メス、3歳)に着用させて、日常生活における心電計測を行った。その結果、長時間にわたり安定的に心電計測を行うことができた。更に1ヶ月間にわたって心電計測を継続しても、その間、安定した計測結果が得られた。
【符号の説明】
【0080】
201:電極
202:配線部
500:スナップファスナー
700:面ファスナー
800:衣服本体
900:電子ユニット(着脱可能な電子デバイス)
図1
図2
図3