(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】内視鏡治療シミュレーションモデル
(51)【国際特許分類】
G09B 23/30 20060101AFI20230427BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
G09B23/30
G09B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2019117111
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】小杉 知輝
(72)【発明者】
【氏名】中西 裕太
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-12126(JP,A)
【文献】特開2015-85017(JP,A)
【文献】特開2011-203699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0086332(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0370474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56,
17/00-19/26,
23/00-29/14
A61B 1/00- 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡治療シミュレーションモデルであって、
内視鏡の先端側を模した内視鏡モデルであって、医療用デバイスを挿入するためのデバイスルーメンと、前記デバイスルーメンに連通する内視鏡先端口と、を有する内視鏡モデルと、
肝臓内の胆管を模した肝内胆管ルーメンを有する肝臓モデルと、
前記肝内胆管ルーメンに連通する総胆管を模した総胆管ルーメンを有する総胆管モデルであって、前記総胆管ルーメンに連通すると共に、前記内視鏡先端口から突出した前記医療用デバイスの先端が挿入される総胆管先端口を有する総胆管モデルと、
を備える、内視鏡治療シミュレーションモデル。
【請求項2】
請求項1に記載の内視鏡治療シミュレーションモデルであって、
前記内視鏡モデルは、
先端部が、前記肝臓モデルが配置されている方向に向かって湾曲すると共に、
前記内視鏡先端口が形成された先端面であって、前記肝臓モデルが配置されている方向を向いた先端面を有する、内視鏡治療シミュレーションモデル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内視鏡治療シミュレーションモデルであって、さらに、
前記内視鏡先端口と、前記総胆管先端口との間に所定の距離を開けた状態で、前記内視鏡モデルと前記総胆管モデルとを保持する保持部を備える、内視鏡治療シミュレーションモデル。
【請求項4】
請求項3に記載の内視鏡治療シミュレーションモデルであって、
前記保持部は、前記内視鏡先端口に対する前記総胆管先端口の相対的な位置を変更した状態で、前記内視鏡モデルと前記総胆管モデルとを保持することが可能な、内視鏡治療シミュレーションモデル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の内視鏡治療シミュレーションモデルであって、
前記肝臓モデルは、
前記肝内胆管ルーメンに連通すると共に、前記総胆管ルーメンに接続された肝臓接続口と、
前記肝内胆管ルーメンに連通すると共に、前記肝臓接続口よりも下流側に設けられた肝臓基端口と、を有する、内視鏡治療シミュレーションモデル。
【請求項6】
請求項5に記載の内視鏡治療シミュレーションモデルであって、
前記肝臓モデルは、さらに、前記肝臓接続口及び前記肝臓基端口にそれぞれ取り付けられた、略同一形状を有する複数の端部部材を備える、内視鏡治療シミュレーションモデル。
【請求項7】
請求項6に記載の内視鏡治療シミュレーションモデルであって、
前記複数の端部部材には、それぞれ異なる識別子が表示されている、内視鏡治療シミュレーションモデル。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の内視鏡治療シミュレーションモデルであって、
前記内視鏡モデルと、前記肝臓モデルと、前記総胆管モデルとの組が、複数並んで配置されている、内視鏡治療シミュレーションモデル。
【請求項9】
内視鏡治療シミュレーションモデルであって、
十二指腸乳頭部まで挿入された内視鏡を模した内視鏡モデルと、
前記内視鏡モデルの先端部から突出した医療用デバイスが、総胆管を通って肝臓まで進む経路を模した総胆管モデルと、
前記総胆管モデルを通過した前記医療用デバイスが、前記肝臓内の肝内胆管を進む経路を模した肝臓モデルと、
を備える、内視鏡治療シミュレーションモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡治療シミュレーションモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
胆管や膵管への低侵襲な治療または検査の一手法として、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP:Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)が知られている。ERCPでは、内視鏡を十二指腸まで進め、内視鏡の先端部から突出させたカテーテル等の医療用デバイスを、乳頭から総胆管等に進入させる。例えば、特許文献1には、大腸を模した管状臓器を備え、内視鏡を用いた手術又は検査をトレーニングすることが可能な装置が開示されている。例えば、特許文献2及び3には、冠動脈を模した経路を備え、カテーテル等の医療用デバイスを用いた経皮的冠動脈形成術(PTCA:Percutaneous Transluminal Catheter Angioplasty)をトレーニングすることが可能な装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-218415号公報
【文献】特開2001-343891号公報
【文献】特開2008-237304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、大腸を模した管状臓器を備えるのみであるため、胆管や膵管への治療または検査を模擬できないという課題があった。同様に、特許文献2及び3に記載の技術では、冠動脈を模した経路を備え備えるのみであるため、胆管や膵管への治療または検査を模擬できないという課題があった。また、特許文献1に記載の技術では、内視鏡を別途準備する必要があるという課題があった。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、胆管への治療または検査を模擬することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、内視鏡治療シミュレーションモデルが提供される。この内視鏡治療シミュレーションモデルは、内視鏡の先端側を模した内視鏡モデルであって、医療用デバイスを挿入するためのデバイスルーメンと、前記デバイスルーメンに連通する内視鏡先端口と、を有する内視鏡モデルと、肝臓内の胆管を模した肝内胆管ルーメンを有する肝臓モデルと、前記肝内胆管ルーメンに連通する総胆管を模した総胆管ルーメンを有する総胆管モデルであって、前記総胆管ルーメンに連通すると共に、前記内視鏡先端口から突出した前記医療用デバイスの先端が挿入される総胆管先端口を有する総胆管モデルと、を備える。
【0008】
この構成によれば、内視鏡治療シミュレーションモデルは、肝臓内の胆管(肝内胆管)を模した肝内胆管ルーメンを有する肝臓モデルと、肝内胆管ルーメンに連通する総胆管を模した総胆管ルーメンを有する総胆管モデルと、を備えるため、胆管への治療または検査を模擬することができる。また、内視鏡治療シミュレーションモデルは、内視鏡の先端側を模した内視鏡モデルをさらに備える。このため、例えば内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP:Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)のような、内視鏡を利用した手技を模擬する場合であっても、内視鏡を別途準備する必要がなく、手軽に手技を模擬できる。
【0009】
(2)上記形態の内視鏡治療シミュレーションモデルにおいて、前記内視鏡モデルは、先端部が、前記肝臓モデルが配置されている方向に向かって湾曲すると共に、前記内視鏡先端口が形成された先端面であって、前記肝臓モデルが配置されている方向を向いた先端面を有していてもよい。
この構成によれば、内視鏡モデルの先端部は、肝臓モデルが配置されている方向に向かって湾曲しているため、実際のERCPにおいて十二指腸乳頭部まで挿入された内視鏡の姿勢を模擬することができる。また、内視鏡モデルは、肝臓モデルが配置されている方向を向いた先端面を有するため、この先端面を利用して、ガイドワイヤ等の医療用デバイスを肝臓モデルが配置されている方向に向かって起上させることができる。すなわち、内視鏡モデルの先端面を利用して、内視鏡の鉗子起上台を模擬することができる。
【0010】
(3)上記形態の内視鏡治療シミュレーションモデルでは、さらに、前記内視鏡先端口と、前記総胆管先端口との間に所定の距離を開けた状態で、前記内視鏡モデルと前記総胆管モデルとを保持する保持部を備えていてもよい。
この構成によれば、内視鏡治療シミュレーションモデルは保持部を備えるため、内視鏡先端口と総胆管先端口との間に所定の距離を開けた状態で、内視鏡モデルと総胆管モデルとを保持することができる。
【0011】
(4)上記形態の内視鏡治療シミュレーションモデルにおいて、前記保持部は、前記内視鏡先端口に対する前記総胆管先端口の相対的な位置を変更した状態で、前記内視鏡モデルと前記総胆管モデルとを保持することが可能であってもよい。
この構成によれば、保持部は、内視鏡先端口に対する総胆管先端口の相対的な位置を変更した状態で、内視鏡モデルと総胆管モデルとを保持できる。このため、十二指腸乳頭部と総胆管との位置関係の個人差に合わせて、内視鏡先端口に対する総胆管先端口の相対的な位置を変更した状態で、胆管への治療または検査を模擬することができる。
【0012】
(5)上記形態の内視鏡治療シミュレーションモデルにおいて、前記肝臓モデルは、前記肝内胆管ルーメンに連通すると共に、前記総胆管ルーメンに接続された肝臓接続口と、前記肝内胆管ルーメンに連通すると共に、前記肝臓接続口よりも下流側に設けられた肝臓基端口と、を有していてもよい。
この構成によれば、肝臓モデルは、肝内胆管ルーメンに連通すると共に総胆管ルーメンに接続された肝臓接続口を備えるため、総胆管から肝内胆管へと繋がった実際の臓器の構成を模擬することができる。また、肝臓モデルは、肝臓接続口よりも下流側に設けられた肝臓基端口を備えるため、肝内胆管ルーメンに胆汁を模擬した液体を充填した際に、当該液体を肝臓基端口から外部へと排出することができる。
【0013】
(6)上記形態の内視鏡治療シミュレーションモデルにおいて、前記肝臓モデルは、さらに、前記肝臓接続口及び前記肝臓基端口にそれぞれ取り付けられた、略同一形状を有する複数の端部部材を備えていてもよい。
この構成によれば、肝臓モデルは、肝臓接続口及び肝臓基端口にそれぞれ取り付けられた端部部材を備える。この端部部材を用いることで、肝内胆管ルーメンに対する液体の供給を容易にできる。また、複数の端部部材は略同一形状を有するため、どの端部部材からでも、肝内胆管ルーメンに対する液体の供給を容易にできる。
【0014】
(7)上記形態の内視鏡治療シミュレーションモデルにおいて、前記複数の端部部材には、それぞれ異なる識別子が表示されていてもよい。
この構成によれば、複数の端部部材には、それぞれ異なる識別子が表示されているため、内視鏡治療シミュレーションモデルを用いた治療または検査の模擬の際に、目的の肝臓接続口又は肝臓基端口を容易に特定、伝達できる。
【0015】
(8)上記形態の内視鏡治療シミュレーションモデルにおいて、前記内視鏡モデルと、前記肝臓モデルと、前記総胆管モデルとの組が、複数並んで配置されていてもよい。
この構成によれば、内視鏡治療シミュレーションモデルには、内視鏡モデルと、肝臓モデルと、総胆管モデルとの組が、複数並んで配置されている。このため、例えば、ある組に第1の医療用デバイスを挿入し、他の組に第2の医療用デバイスを挿入した場合において、第1の医療用デバイスと第2の医療用デバイスの挙動を比較しやすい。
【0016】
(9)本発明の一形態によれば、内視鏡治療シミュレーションモデルが提供される。この内視鏡治療シミュレーションモデルは、十二指腸乳頭部まで挿入された内視鏡を模した内視鏡モデルと、前記内視鏡モデルの先端部から突出した医療用デバイスが、総胆管を通って肝臓まで進む経路を模した総胆管モデルと、前記総胆管モデルを通過した前記医療用デバイスが、前記肝臓内の肝内胆管を進む経路を模した肝臓モデルと、を備える。
この構成によれば、内視鏡治療シミュレーションモデルは、十二指腸乳頭部まで挿入された内視鏡を模した内視鏡モデルと、内視鏡モデルの先端部から突出した医療用デバイスが、総胆管を通って肝臓まで進む経路を模した総胆管モデルと、肝臓内の肝内胆管を進む経路を模した肝臓モデルと、を備えるため、胆管への治療または検査を模擬することができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、他の臓器モデル(例えば、膵管を模した膵管ルーメンを有する膵臓モデル、十二指腸を模した十二指腸モデル、胃を模した胃モデル等)を備える内視鏡治療シミュレーションモデル、内視鏡治療シミュレーションモデルの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】内視鏡治療シミュレーションモデルの構成を例示した説明図である。
【
図2】第1の方向から見た内視鏡モデルの構成を例示した説明図である。
【
図3】第2の方向から見た内視鏡モデルの構成を例示した説明図である。
【
図5】内視鏡治療シミュレーションモデルの使用状態を例示した説明図である。
【
図6】第2実施形態の内視鏡モデルの構成を例示した説明図である。
【
図7】第3実施形態の内視鏡モデルの構成を例示した説明図である。
【
図8】第4実施形態の肝臓モデルの構成を例示した説明図である。
【
図9】第5実施形態の肝臓モデルの構成を例示した説明図である。
【
図10】第6実施形態の肝臓モデルの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、内視鏡治療シミュレーションモデル1の構成を例示した説明図である。内視鏡治療シミュレーションモデル1は、胆管に対して、内視鏡と医療用デバイスとを用いた治療または検査の手技を模擬するために使用される装置である。以降、内視鏡と医療用デバイスとを用いた手技の一例として、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP:Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)を例示して説明する。一般に、ERCPでは内視鏡を十二指腸乳頭部まで進め、内視鏡の先端部から突出させた医療用デバイスを、乳頭から総胆管等に進入させる。なお、医療用デバイスとは、カテーテルやガイドワイヤ等の、低侵襲な治療または検査のためのデバイスを意味する。
【0020】
図1に示すように、内視鏡治療シミュレーションモデル1は、内視鏡モデル10と、肝臓モデル20と、総胆管モデル30と、保持部40とを備えている。なお、
図1及び以降の各図では、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸は、内視鏡治療シミュレーションモデル1の幅方向に対応する。Y軸は、内視鏡治療シミュレーションモデル1の高さ方向に対応する。Z軸は、内視鏡治療シミュレーションモデル1の奥行き方向に対応する。
【0021】
図2は、第1の方向から見た内視鏡モデル10の構成を例示した説明図である。
図3は、第2の方向から見た内視鏡モデル10の構成を例示した説明図である。
図2及び
図3のXYZ軸は、
図1のXYZ軸とそれぞれ対応している。内視鏡モデル10は、十二指腸乳頭部まで挿入された状態の内視鏡の先端側を再現したモデルである。内視鏡モデル10は、内視鏡の挿入部を模したストレート部110と、内視鏡の先端部を模した湾曲部120と、4つの台座191~194とを備えている。
【0022】
ストレート部110は、体内における内視鏡の挿入部の姿勢を模しており、緩やかに湾曲しつつY軸方向に延びている。ストレート部110の内側には、ストレート部110の延伸方向に沿って延びるデバイスルーメン10Lが形成されている(
図1~
図3:破線)。ストレート部110のデバイスルーメン10Lは、+Y軸方向の端部が内視鏡基端口111に連通し、-Y軸方向の端部が湾曲部120のデバイスルーメン10Lに連通している。
【0023】
湾曲部120は、体内における内視鏡の先端部の姿勢を模しており、+Y軸方向においてストレート部110に接続されると共に、-Y軸方向において十二指腸乳頭部の方向、換言すれば、肝臓モデル20が配置されている方向(
図1の場合は+X軸方向)に向かって湾曲している。湾曲部120の内側には、湾曲部120の延伸方向に沿って延びるデバイスルーメン10Lが形成されている(
図1~
図3:破線)。湾曲部120のデバイスルーメン10Lは、+Y軸方向の端部がストレート部110のデバイスルーメン10Lに連通し、-Y軸方向の端部が内視鏡先端口154に連通している。
図3に示すように、湾曲部120の-Y軸方向の端部には、肝臓モデル20が配置されている方向を向き、かつ、内視鏡先端口154を有する先端面150が形成されている。本実施形態では、先端面150は、Y軸に対して約45度に傾斜している。なお、先端面150の傾斜角度は任意に定めることができる。
【0024】
なお、湾曲部120は、ストレート部110に対して一体的に構成されてもよく、取り外し可能に構成されてもよい。取り外し可能に構成された場合、例えば、湾曲度合いや先端面150の角度の異なる複数の湾曲部120を予め準備しておくことが好ましい。そうすれば、十二指腸乳頭部と総胆管との位置関係の個人差に応じて、適切な湾曲度合い又は先端面150の角度を有する湾曲部120を選択し、使用することができ、より実情に応じた態様で治療または検査を模擬することができる。なお、ストレート部110及び湾曲部120のデバイスルーメン10Lには、チューブ(管状体)が内挿されていてもよい。この場合、内挿されたチューブを、実際の内視鏡においてデバイスルーメンを構成しているチューブの材料と同一又は類似した材料により形成することで、内視鏡モデル10を、実際の内視鏡により似せることができる。
【0025】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1は、3組の内視鏡モデル10を備えている。3組の内視鏡モデル10は一体的に形成され、それぞれ、上述したストレート部110、湾曲部120、デバイスルーメン10L(
図2、
図3:破線)を備えている。
図1~
図3では、各内視鏡モデル10の構成要素を区別するために、符号の後ろにa,b,cの添え字を付している。例えば、ストレート部110aは、第1の内視鏡モデル10のストレート部110を意味し、ストレート部110bは、第2の内視鏡モデル10のストレート部110を意味し、ストレート部110cは、第3の内視鏡モデル10のストレート部110を意味する。本実施形態では、それぞれについて特に区別する必要のない場合は、a,b,cの添え字を省略して説明する。
【0026】
4つの台座191~194は、ストレート部110cの端部に形成された略矩形状の支持部材である。台座191~194によって、3組の内視鏡モデル10をZ軸方向に積層した状態で、内視鏡モデル10を机上に裁置できる。
【0027】
図4は、肝臓モデル20の構成を例示した説明図である。肝臓モデル20は、肝臓内の胆管(以降、単に「肝内胆管」とも呼ぶ)を再現したモデルである。肝臓モデル20の内側には、人体における肝内胆管の配置を模擬した肝内胆管ルーメン20Lが形成されている(
図4:破線)。
図1及び
図4の例では、肝内胆管ルーメン20Lは、肝臓接続口211と、第1肝臓基端口221と、第2肝臓基端口231と、第3肝臓基端口241との4か所に連通している。肝臓接続口211には、後述する総胆管モデル30が接続される。第1~第3肝臓基端口221~241は、肝臓接続口211よりも下流側(医療用デバイスの進行方向における下流側を意味する)において、外部に向かって開放された開口である。なお、第1~第3肝臓基端口221~241を総称して「肝臓基端口」とも呼ぶ。
【0028】
肝臓接続口211には、端部部材210が取り付けられている。同様に、第1肝臓基端口221には第1端部部材220が、第2肝臓基端口231には第2端部部材230が、第3肝臓基端口241には第3端部部材240が、それぞれ取り付けられている。端部部材210と、第1~第3端部部材220~240とは、それぞれ、略同一形状のルアーロックコネクタである。図示の例では、端部部材210と、第1~第3端部部材220~240には、それぞれ異なる識別子(空白,1,2,3)が表示されている。図示の例では、識別子の一例として数字を例示したが、文字、記号、図形、これらの組み合わせ等の任意の識別子を表示することができる。なお、端部部材210と、第1~第3端部部材220~240とを総称して「端部部材」とも呼ぶ。
【0029】
また、肝内胆管ルーメン20Lは、端部250,251,252,253,254,255,256,257,259の9か所において、外部に連通しない流路の終端を有している。本実施形態の肝臓モデル20では、肝臓接続口211から第1~第3肝臓基端口221~241までの各流路の長さは、肝臓接続口211から終端250~259までの各流路の長さよりも長い。例えば、
図4に示すように、肝臓接続口211から第2肝臓基端口231までの流路の長さL1(
図4:実線矢印)は、肝臓接続口211から終端259までの流路の長さL3(
図4:破線矢印)よりも長い。このようにすれば、肝臓モデル20を小型化することができる。
【0030】
なお、本実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1は、
図2及び
図3で説明した3組の内視鏡モデル10にそれぞれ対応するように、3組の肝臓モデル20を備えている。3組の肝臓モデル20は一体的に形成され、それぞれ、上述した肝内胆管ルーメン20L、端部部材210~240を備えており、Z軸方向に積層されている。
【0031】
図5は、内視鏡治療シミュレーションモデル1の使用状態を例示した説明図である。
図5では、保持部40に覆われた各構成部材を破線で表している。
図5に示すように、総胆管モデル30は、総胆管を再現したモデルである。
図5に示すように、総胆管モデル30は、管状部310と、可動部材320とを備えている。
【0032】
管状部310は、内側に総胆管ルーメン30Lが形成された管状体である。管状部310の総胆管ルーメン30Lは、一端(
図5の場合は+Y軸方向の端部)が胆管接続口311に連通し、他端(
図5の場合は-Y軸方向の端部)が開口312に連通している。胆管接続口311は、端部部材210を介して、肝臓モデル20の肝臓接続口211に接続されている。開口312は、可動部材320の開口325に接続されている。
【0033】
可動部材320は、
図2及び
図3に示すように、角柱状の本体部321と、本体部321の両端に形成された一対の第1腕部322及び第2腕部323とを備えている。本体部321には、下面と上面とを貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔は、下面側において総胆管先端口324に連通し(
図2)、上面側において開口325に連通している(
図3)。開口325は、上述の通り総胆管モデル30の開口312に接続されている。このような構成とすることで、総胆管先端口324によって十二指腸乳頭部を模擬し、可動部材320の貫通孔と管状部310の総胆管ルーメン30Lとによって、十二指腸乳頭部から延びる総胆管を模擬することができる。また、
図3に示すように、第1腕部322及び第2腕部323は、内視鏡モデル10の先端面150からの出口(すなわち内視鏡先端口154)の近傍を回転軸O(
図3:一点鎖線)とするように、保持部40に回転可能に支持されている。
【0034】
保持部40は、内視鏡先端口154と総胆管先端口324との間に所定の距離を開けた状態で、内視鏡モデル10と、総胆管モデル30とを保持する部材である。保持部40は、一対の第1保持板410及び第2保持板420を備えている。第1保持板410及び第2保持板420は、略半円形状の板状部材である。第1保持板410は、湾曲部120aの外側(
図3:-Z軸方向)に固定されており、第2保持板420は、湾曲部120cの外側(
図3:+Z軸方向)に固定されている。第1保持板410及び第2保持板420には、回転軸Oを中心として可動部材320をスライドさせるための溝である第1レール部411及び第2レール部421が、それぞれ形成されている。利用者は、回転軸Oを中心として可動部材320をスライドさせ、所望の位置で、ねじ431を用いて可動部材320を保持部40に固定する。これにより、内視鏡先端口154に対する総胆管先端口324の相対的な位置を変更した状態で、内視鏡モデル10と総胆管モデル30とを保持することができる。
【0035】
なお、本実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1は、
図2及び
図3で説明した3組の内視鏡モデル10にそれぞれ対応するように、3つの管状部310と、3つの貫通孔が形成された可動部材320と、を備えている。図示の例では、可動部材320は、内視鏡先端口154a~cに対する総胆管先端口324a~cの相対的な位置を、ひとまとめに変更する構成である。しかし、可動部材320は、内視鏡先端口154aに対する総胆管先端口324aの位置と、内視鏡先端口154bに対する総胆管先端口324bの位置と、内視鏡先端口154cに対する総胆管先端口324cの位置と、を個別に変更可能に構成されてもよい。
【0036】
上述した内視鏡モデル10、肝臓モデル20、総胆管モデル30、及び保持部40は、合成樹脂(例えば、ABS樹脂、PLA樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、PET樹脂、PVA樹脂、シリコン等)や、ゴム、石膏、金属等の任意の材料によって形成できる。内視鏡モデル10、総胆管モデル30の可動部材320、及び保持部40は、透明又は半透明な樹脂(例えば、アクリル樹脂、PET樹脂等)により形成することが好ましい。そうすれば、デバイスルーメン10Lを通過する医療用デバイスの様子を外部から容易に観察することができる。また、肝臓モデル20及び総胆管モデル30の管状部310は、透明又は半透明であり、かつ、柔軟性を有する樹脂(例えば、PVA樹脂、シリコン)により形成することが好ましい。そうすれば、肝内胆管ルーメン20Lと総胆管ルーメン30Lとを通過する医療用デバイスの様子を外部から容易に観察することができると共に、肝臓モデル20及び総胆管モデル30の触感を、実際の肝臓及び総胆管の触感に似せることができる。
【0037】
例えば、内視鏡モデル10、肝臓モデル20、総胆管モデル30の可動部材320、及び保持部40は、それぞれ、外側形状、ルーメン形状、及び開口形状を予め入力したデータを、例えば3Dプリンタに入力し、印刷することによって作製できる。3Dプリンタを用いることで、複雑な形状を有する内視鏡モデル10、肝臓モデル20、総胆管モデル30の可動部材320、及び保持部40を、簡単に作製できる。
【0038】
図5を参照しつつ、内視鏡治療シミュレーションモデル1の使用例について説明する。以下では、医療用デバイスとしてガイドワイヤ2を例示して説明する。まず、肝内胆管ルーメン20Lと総胆管ルーメン30Lの内部を、胆汁を模した液体で満たす。具体的には、端部部材210と、第1~第3端部部材220~240とのいずれかに対して、シリンジを装着して液体を供給する。供給された液体は、肝内胆管ルーメン20Lに充填され、次いで、肝内胆管ルーメン20Lに連通された総胆管ルーメン30Lに充填される。
【0039】
例えば、端部部材210から液体を供給した場合、供給された液体は、背圧(流路に掛かる圧力)の低い第1~第3端部部材220~240に流入しやすいため、肝内胆管ルーメン20L内の空気を、第1~第3端部部材220~240から速やかに排出できる。肝内胆管ルーメン20L内に空気(気泡)が残存している場合、シリンジから液体を追加することにより、第1~第3端部部材220~240から気泡を排出することができる。このように、背圧差によって効率的に肝内胆管ルーメン20L内の空気や気泡を外部に排出することができるため、液体を循環させるためのポンプ等を必要とせず、内視鏡治療シミュレーションモデル1を小型化できる。
【0040】
次に、ガイドワイヤ2を、内視鏡モデル10の内視鏡基端口111からデバイスルーメン10Lに挿入する。ガイドワイヤ2を、デバイスルーメン10Lを通して内視鏡モデル10の先端部(湾曲部120)まで押し進め、ガイドワイヤ2の先端部を、内視鏡先端口154から外部へと突出させる。
【0041】
次に、ガイドワイヤ2の先端部を、十二指腸乳頭部を模擬した総胆管先端口324から、総胆管ルーメン30Lに挿入する。この状態は、ERCPにおいて、ガイドワイヤ2が十二指腸乳頭部から総胆管に挿入された状態に相当する。この際、
図5に示すように、ガイドワイヤ2は、角部154E(
図5:一点鎖線円)と、角部324E(
図5:一点鎖線円)との二点で把持されることによって、実際のERCPにおいてガイドワイヤ2が内視鏡の鉗子起上台によって急峻な曲がり具合で起上させられる場合と同様に、ガイドワイヤ2に対して急峻な湾曲を付与できる。換言すると、角部154Eと角部324Eが内視鏡の鉗子起上台と同様に機能する。これにより、ガイドワイヤ2の先端部を、十二指腸乳頭部を模擬した総胆管先端口324の方向に向けることができる。この状態は、ERCPにおいて、十二指腸まで進めた内視鏡の先端部からガイドワイヤ2を突出させ、ガイドワイヤ2の先端部を十二指腸乳頭部に向けた状態に相当する。ここで、角部154Eは、肝臓モデル20が配置されている方向を向いて傾斜した先端面150と、内視鏡先端口154とにより形成された部位である。角部324Eは、可動部材320を構成する本体部321の下面と、総胆管先端口324とにより形成された部位である。ガイドワイヤ2の出口である内視鏡先端口154において、角部154E(
図5:一点鎖線円)を有することにより、可動部材320をどのような角度にした場合であっても、ガイドワイヤ2の二点把持(角部154Eと角部324Eによる把持)を維持できる。この結果、臨床における色々な状況が模擬できる。
【0042】
次に、ガイドワイヤ2をそのまま押し進めて、ガイドワイヤ2の先端部を、総胆管ルーメン30Lを通して肝内胆管ルーメン20Lまで押し進める。この状態は、ERCPにおいて、ガイドワイヤ2が肝内胆管に挿入された状態に相当する。その後は、ガイドワイヤ2の先端部が、第1~第3肝臓基端口221~241のうち、所望の肝臓基端口へと到達するように、ガイドワイヤ2を押し進める。
【0043】
上述の通り、総胆管ルーメン30Lと肝内胆管ルーメン20Lとには、胆汁を模した液体が充填されている。また、第1~第3肝臓基端口221~241に設けられた端部部材(第1~第3端部部材220~240)は、それぞれ、肝臓モデル20の外側に突出して設けられている。このため、外側に連通した第1~第3肝臓基端口221~241と、外側に連通しない終端250~259とを容易に区別できる。
【0044】
以上のように、第1実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1によれば、肝臓内の胆管(肝内胆管)を模した肝内胆管ルーメン20Lを有する肝臓モデル20と、肝内胆管ルーメン20Lに連通する総胆管を模した総胆管ルーメン30Lを有する総胆管モデル30と、を備えるため、胆管への治療または検査を模擬することができる。また、第1実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1は、内視鏡の先端側を模した内視鏡モデル10をさらに備える。このため、例えば内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)のような、内視鏡を利用した手技を模擬する場合であっても、内視鏡を別途準備する必要がなく、手軽に手技を模擬できる。
【0045】
また、第1実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1によれば、内視鏡モデル10の先端部の湾曲部120は、肝臓モデル20が配置されている方向に向かって湾曲している。このため、実際のERCPにおいて十二指腸乳頭部まで挿入された内視鏡の姿勢を模擬することができる。また、内視鏡モデル10は、肝臓モデル20が配置されている方向を向いた先端面150を有するため、先端面150を利用してガイドワイヤ2等の医療用デバイスを、肝臓モデル20が配置されている方向に向かって起上させることができ、内視鏡の鉗子起上台を模擬することができる。具体的には、先端面150に形成された角部154Eと、可動部材320を構成する本体部321の下面に形成された角部324Eとによって、ガイドワイヤ2を肝臓モデル20が配置されている方向に向かって起上させることができ、内視鏡の鉗子起上台を模擬することができる。
【0046】
さらに、第1実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1によれば、保持部40を備えるため、内視鏡先端口154と総胆管先端口324との間に所定の距離を開けた状態で、内視鏡モデル10と総胆管モデル30とを保持することができる。また、保持部40は、内視鏡先端口154に対する総胆管先端口324の相対的な位置を変更した状態で、内視鏡モデル10と総胆管モデル30とを保持できる。このため、十二指腸乳頭部と総胆管との位置関係の個人差に合わせて、内視鏡先端口154に対する総胆管先端口324の相対的な位置を変更した状態で、胆管への治療または検査を模擬することができる。この結果、臨床における色々な状況が模擬できる。
【0047】
さらに、第1実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1によれば、肝臓モデル20は、肝内胆管ルーメン20Lに連通すると共に総胆管ルーメン30Lに接続された肝臓接続口211を備えるため、総胆管から肝内胆管へと繋がった実際の臓器の構成を模擬することができる。また、肝臓モデル20は、肝臓接続口211よりも医療用デバイスの進路上の下流側に設けられた第1~第3肝臓基端口221~241を備えるため、肝内胆管ルーメン20Lに胆汁を模擬した液体を充填した際に、当該液体を第1~第3肝臓基端口221~241から外部へと排出することができる。
【0048】
さらに、第1実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1によれば、肝臓モデル20は、肝臓接続口211及び第1~第3肝臓基端口221~241にそれぞれ取り付けられた端部部材210及び第1~第3端部部材220~240(端部部材)を備える。この端部部材210及び第1~第3端部部材220~240を用いることで、肝内胆管ルーメン20Lに対する流体の供給を容易にできる。また、端部部材210及び第1~第3端部部材220~240は略同一形状を有するため、どの端部部材からでもシリンジを装着することができ、肝内胆管ルーメン20Lに対する流体の供給を容易にできる。また、端部部材210及び第1~第3端部部材220~240には、それぞれ異なる識別子が表示されているため、内視鏡治療シミュレーションモデル1を用いた治療または検査の模擬の際に、目的の肝臓接続口211及び第1~第3肝臓基端口221~241を容易に特定、伝達できる。
【0049】
さらに、第1実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1では、内視鏡モデル10と、肝臓モデル20と、総胆管モデル30との組が、複数並んで配置されている。このため、例えば、ある組に第1の医療用デバイスを挿入し、他の組に第2の医療用デバイスを挿入した場合において、第1の医療用デバイスと第2の医療用デバイスの挙動を比較しやすい。以上の通り、内視鏡治療シミュレーションモデル1は、十二指腸乳頭部まで挿入された内視鏡を模した内視鏡モデル10と、内視鏡モデル10の先端部の湾曲部120から突出した医療用デバイスが、総胆管を通って肝臓まで進む経路を模した総胆管モデル30と、肝臓内の肝内胆管を進む経路を模した肝臓モデル20と、を備えるため、胆管への治療または検査を模擬することができる。
【0050】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の内視鏡モデル10Aの構成を例示した説明図である。第2実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1Aは、内視鏡モデル10に代えて内視鏡モデル10Aを備えている。内視鏡モデル10Aは、内視鏡先端口154に対する総胆管先端口324の相対的な位置を変更不可能な構成である。内視鏡モデル10Aは、可動部材320に代えて保持部材320Aを備え、保持部40に代えて保持部40Aを備えている。
【0051】
保持部材320Aは、角柱状の本体部321Aを有している。本体部321Aには、下面側において総胆管先端口324に連通し、上面側において開口325に連通した貫通孔が形成されている。本体部321Aの-Z軸方向の端部は、保持部40Aの第1保持板410Aに対して、ねじ431を用いて固定されている。同様に、本体部321Aの+Z軸方向の端部は、保持部40Aの第2保持板420Aに対して、ねじを用いて固定されている。保持部40Aは、略半円形状の板状部材である第1保持板410A及び第2保持板420Aを備えている。第1保持板410A及び第2保持板420Aには、第1実施形態で説明した第1レール部411及び第2レール部421が形成されていない。
【0052】
このように、内視鏡モデル10Aの構成は種々の変更が可能であり、保持部材320Aや保持部40Aの構成を変更することによって、内視鏡先端口154に対する総胆管先端口324の相対的な位置を変更不可能な構成としてもよい。また、
図6において説明した構成において、保持部材320Aと保持部40Aとが一体的に形成されていてもよい。このような第2実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1Aにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0053】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の内視鏡モデル10Bの構成を例示した説明図である。第3実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1Bは、内視鏡モデル10に代えて内視鏡モデル10Bを備えている。内視鏡モデル10Bは、湾曲部120Bの-Y軸方向の端部の先端面150Bが、肝臓モデル20が配置されている方向を向いていない。換言すれば、先端面150Bは、Y軸に沿って形成されており、Y軸に対して傾斜していない。このように、内視鏡モデル10Bの構成は種々の変更が可能であり、ストレート部110や湾曲部120Bの構成を変更することによって、内視鏡における種々の先端側形状を模擬してよい。このような第3実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1Bにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態の肝臓モデル20Cの構成を例示した説明図である。第4実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1Cは、肝臓モデル20に代えて肝臓モデル20Cを備えている。肝臓モデル20Cは、端部259に代えて端部259Cを備えている。端部259Cは、外部に連通しない流路(肝内胆管ルーメン20L)の終端である。肝臓モデル20Cでは、肝臓接続口211から第2肝臓基端口231までの流路の長さL1(
図8:実線矢印)は、肝臓接続口211から終端259Cまでの流路の長さL3C(
図8:破線矢印)よりも短い。このように、肝臓モデル20Cの構成は種々の変更が可能であり、外部に連通しない流路の長さを、外部に連通する流路の長さよりも長くしてもよい。また、肝臓モデル20Cにおける肝内胆管ルーメン20Lの形状は任意に変更が可能であり、人体における肝内胆管の配置を模擬していなくてもよい。このような第4実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1Cにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0055】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態の肝臓モデル20Dの構成を例示した説明図である。第5実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1Dは、肝臓モデル20に代えて肝臓モデル20Dを備えている。肝臓モデル20Dは、第1実施形態において第1~第3肝臓基端口221~241に設けられるとした第1~第3端部部材220~240を備えていない。このように、肝臓モデル20Dの構成は種々の変更が可能であり、端部部材を省略してもよい。図示の例では、第1~第3肝臓基端口221~241の端部部材を省略する一方、肝臓接続口211の端部部材210を備える構成を例示したが、肝臓接続口211の端部部材210についても同様に、省略可能である。このような第5実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1Dにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0056】
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態の肝臓モデル20Eの構成を例示した説明図である。第6実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1Eは、肝臓モデル20に代えて肝臓モデル20Eを備えている。肝臓モデル20Eは、端部部材210及び第1~第3端部部材220~240に代えて、端部部材210E及び第1~第3端部部材220E~240Eを備えている。端部部材210E及び第1~第3端部部材220E~240Eは、識別子の表示のないルアーロックコネクタである。このように、肝臓モデル20Eの構成は種々の変更が可能であり、端部部材210E及び第1~第3端部部材220E~240Eにおける識別子の表示を無くすほか、端部部材を任意の大きさ、色、形状とすることができる。例えば、端部部材210E及び第1~第3端部部材220E~240Eは、ルアーロックコネクタでなくてもよい。また、端部部材210E及び第1~第3端部部材220E~240Eは、大きさ、色、形状の少なくともいずれかが相互に異なっていてもよい。このような第6実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1Eにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0057】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
[変形例1]
上記第1~6実施形態では、内視鏡治療シミュレーションモデル1,1A~1Eの構成の一例を示した。しかし、内視鏡治療シミュレーションモデルの構成は種々の変更が可能である。例えば、内視鏡治療シミュレーションモデルは、Z軸方向に積層された3組の内視鏡モデルと、肝臓モデルと、総胆管モデルとを備える構成とした。しかし、内視鏡治療シミュレーションモデルは、1組の内視鏡モデルと、肝臓モデルと、総胆管モデルとにより構成されてもよく、2組又は4組以上の内視鏡モデルと、肝臓モデルと、総胆管モデルとにより構成されてもよい。また、内視鏡モデルと、肝臓モデルと、総胆管モデルとの数は同一でなくてもよく、相互に異なっていてもよい。
【0059】
例えば、内視鏡治療シミュレーションモデルは、上述しない他のモデル(例えば、膵管を模した膵管ルーメンを有する膵臓モデル、十二指腸を模した十二指腸モデル、胃を模した胃モデル等)を備えていてもよい。例えば、内視鏡治療シミュレーションモデルは、内視鏡モデル、肝臓モデル、総胆管モデル、及び他のモデルの少なくとも一部を制御し、又はこれらのモデルに設置されたセンサからの出力値を取得する制御装置を備えていてもよい。例えば、内視鏡治療シミュレーションモデルは、肝臓モデル(肝内胆管ルーメン)及び総胆管モデル(総胆管ルーメン)における液体の循環を行うためのポンプを備えていてもよい。
【0060】
[変形例2]
上記第1~6実施形態では、内視鏡モデル10,10A,10Bの構成の一例を示した。しかし、内視鏡モデルの構成は種々の変更が可能である。例えば、ストレート部に形成されるとした台座は、省略してもよい。例えば、ストレート部と湾曲部とは一体的に形成されており、取り外し不可能な構成であってもよい。例えば、湾曲部の先端面はY軸に対する角度が変更可能に構成されていてもよい。
【0061】
[変形例3]
上記第1~6実施形態では、肝臓モデル20,20C~20Eの構成の一例を示した。しかし、肝臓モデルの構成は種々の変更が可能である。例えば、肝内胆管ルーメンには、チューブ(管状体)が内挿されていてもよい。この場合、内挿されたチューブをPVA樹脂とすれば、PVA樹脂の親水性によって、肝内胆管ルーメンに胆汁を模した液体が充填された際に、肝内胆管ルーメン内の触感を、実際の人体に似せることができる点で好ましい。
【0062】
[変形例4]
上記第1~6実施形態では、総胆管モデル30の構成の一例を示した。しかし、総胆管モデルの構成は種々の変更が可能である。例えば、十二指腸乳頭部を模した総胆管先端口に、ゴムや柔軟性を有する樹脂材料により形成された弁を設けてもよい。このようにすれば、総胆管先端口をより一層、実際の人体に似せることができる点で好ましい。例えば、管状部の貫通孔の内部や、総胆管ルーメンには、チューブ(管状体)が内挿されていてもよい。この場合、内挿されたチューブをPVA樹脂とすることが好ましい。
【0063】
[変形例5]
第1~6実施形態の内視鏡治療シミュレーションモデル1,1A~1Eの構成、及び上記変形例1~4の内視鏡治療シミュレーションモデル、内視鏡モデル、肝臓モデル、及び総胆管モデルの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態又は第3実施形態で説明した内視鏡モデルと、第4~6実施形態で説明した肝臓モデルと、を組み合わせて内視鏡治療シミュレーションモデルを構成してもよい。
【0064】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0065】
1,1A~1E…内視鏡治療シミュレーションモデル
2…ガイドワイヤ
10,10A,10B…内視鏡モデル
20,20C~20E…肝臓モデル
30…総胆管モデル
40,40A…保持部
110,110a~110c…ストレート部
111…内視鏡基端口
120,120B…湾曲部
150,150B…先端面
154…内視鏡先端口
154E…角部
191…台座
210…端部部材
211…肝臓接続口
220…第1端部部材
221…第1肝臓基端口
230…第2端部部材
231…第2肝臓基端口
240…第3端部部材
241…第3肝臓基端口
250~259…端部
310…管状部
311…胆管接続口
312…開口
320…可動部材
320A…保持部材
321,321A…本体部
322…第1腕部
323…第2腕部
324…総胆管先端口
324E…角部
325…開口
410,410A…第1保持板
420,420A…第2保持板
411…第1レール部
421…第2レール部