(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、モータユニット、およびモータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 8/22 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
H02P8/22
(21)【出願番号】P 2019145627
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】宮路 永
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 圭
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆之
(72)【発明者】
【氏名】高田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】宮地 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】島田 彩加
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-038213(JP,A)
【文献】特開平07-131997(JP,A)
【文献】特開2011-067062(JP,A)
【文献】特開2013-022237(JP,A)
【文献】特開2011-259525(JP,A)
【文献】特開2007-215271(JP,A)
【文献】特開2010-093914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2相ステッピングモータにおける2相のコイルのうち1相分の前記コイルを励磁する1相励磁と前記2相のコイルのうち2相分の前記コイルを励磁する2相励磁とを交互に繰り返すように、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号を生成する制御部と、
前記制御信号に基づいて、前記2相のコイルを駆動する駆動部と、を有し、
前記制御部は、前記1相励磁中に非励磁の前記コイルに発生した逆起電圧に基づいて、前記1相励磁を行う期間を決定し、前記2相励磁の前に行われた前記1相励磁の期間に基づいて、前記2相励磁を行う期間を決定する
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御部は、前記1相励磁の期間において非励磁の前記コイルに発生した逆起電圧のゼロクロスの検出結果に応じて、前記2相ステッピングモータの励磁状態を前記1相励磁から前記2相励磁に切り替えるように前記制御信号を生成し、
前記制御部は、前記2相励磁の開始後、当該2相励磁の前に行われた前記1相励磁の期間に応じて決定した目標通電時間が経過した場合に、前記2相ステッピングモータの励磁状態を前記2相励磁から前記1相励磁に切り替えるように前記制御信号を生成する
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御部は、前記2相励磁の期間が当該2相励磁の直前に行われた前記1相励磁の期間と等しくなるように、前記目標通電時間を設定する
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御部は、前記2相励磁の期間が当該2相励磁の前に行われた複数の前記1相励磁の期間をもとに算出した値に基づいて、前記目標通電時間を設定する
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御部は、前記1相励磁の期間において、非励磁の前記コイルに発生した逆起電圧のゼロクロスが二回検出された場合に、前記2相ステッピングモータの励磁状態を前記1相励磁から前記2相励磁に切り替えるように前記制御信号を生成する
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御部は、
時間を計測する計時部と、
前記計時部を制御する計時制御部と、
前記計時部による計測時間を記憶する記憶部と、
前記2相のコイルに発生した逆起電圧のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部と、
前記ゼロクロス検出部の検出結果と前記計時部の計測結果とに基づいて、前記制御信号を生成する制御信号生成部と、を含み、
前記計時制御部は、前記1相励磁が開始されるとき、前記計時部に計時を開始させ、前記1相励磁中に、前記ゼロクロス検出部による逆起電圧のゼロクロスの検出結果に応じて、前記計時部の計時を停止させるとともに、前記計時部による計測時間を前記記憶部に記憶させ、
前記制御信号生成部は、前記1相励磁中に、前記ゼロクロス検出部による逆起電圧のゼロクロスの検出結果に応じて、前記2相ステッピングモータの励磁状態を前記1相励磁から前記2相励磁に切り替えるように前記制御信号を生成し、
前記計時制御部は、前記2相励磁が開始されるとき、前記記憶部に記憶された前記計時部の計測時間に基づいて、前記目標通電時間を前記計時部に設定するとともに、前記目標通電時間までの計時を前記計時部に開始させ、
前記制御信号生成部は、前記2相励磁中に、前記計時部の計測時間が前記目標通電時間に到達した場合に、前記2相ステッピングモータの励磁状態を前記2相励磁から前記1相励磁に切り替えるように前記制御信号を生成する
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記2相ステッピングモータと、を備える
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項8】
モータ駆動制御装置によって2相ステッピングモータの駆動を制御するためのモータ駆動制御方法であって、
前記モータ駆動制御装置が、前記2相ステッピングモータにおける2相のコイルのうち1相分の前記コイルを励磁する1相励磁と前記2相のコイルのうち2相分の前記コイルを励磁する2相励磁とを交互に繰り返すように、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号を生成する第1ステップと、
前記モータ駆動制御装置が、前記制御信号に基づいて、前記2相のコイルを駆動する第2ステップと、を含み、
前記第1ステップは、前記1相励磁中に非励磁の前記コイルに発生した逆起電圧に基づいて前記1相励磁を行う期間を決定する第3ステップと、
前記2相励磁の前に行われた前記1相励磁の期間に基づいて、前記2相励磁を行う期間を決定する第4ステップと、を含む
モータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、モータユニット、およびモータ駆動制御方法に関し、例えば、ステッピングモータを駆動するためのモータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータとして、2つの相を有する2相ステッピングモータが知られている。
2相ステッピングモータの駆動方式としては、1相励磁方式、2相励磁方式、1-2相励磁方式が知られている。
【0003】
1相励磁方式は、一つの相毎に励磁する相を切り替える方式である。2相励磁方式は、二つの相毎に励磁する相を切り替える方式である。1-2相励磁方式は、1相励磁と2相励磁を交互に切り替えて励磁する相を切り替える方式である。
【0004】
例えば、特許文献1には、2相ステッピングモータを1-2相励磁方式で駆動したときのステッピングモータの回転速度のばらつきを抑えるために、1相励磁期間中に、次の2相励磁期間と同じ相で2相励磁する期間を設けるモータ駆動制御技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、所定のアプリケーションに採用する2相ステッピングモータの駆動方式として、1相励磁よりも発生するトルクの大きい1-2相励磁方式を採用することを検討した。
【0007】
しかしながら、特許文献1に代表される一般的な1-2相励磁方式では、予め、1相励磁が実施される期間と2相励磁が実施される期間のそれぞれの長さが固定されている(一定である)。そのため、1-2相励磁方式では、負荷変動に対する耐性が低いという問題がある。具体的には、2相ステッピングモータの負荷が大きくなった場合に、ロータが適切な位置まで移動する前に励磁相が切り替わることにより、トルクが低下し、脱調が発生し易くなるという課題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、2相ステッピングモータの負荷変動に対する耐性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、2相ステッピングモータにおける2相のコイルのうち1相分の前記コイルを励磁する1相励磁と前記2相のコイルのうち2相分の前記コイルを励磁する2相励磁とを交互に繰り返すように、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号を生成する制御部と、前記制御信号に基づいて、前記2相のコイルを駆動する駆動部と、を有し、前記制御部は、前記1相励磁中に非励磁の前記コイルに発生した逆起電圧に基づいて、前記1相励磁を行う期間を決定し、前記2相励磁の前に行われた前記1相励磁の期間に基づいて、前記2相励磁を行う期間を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るモータ駆動制御装置によれば、2相ステッピングモータの負荷変動に対する耐性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るモータユニットの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るモータの構成を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置による、2相ステッピングモータの通電切替制御を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置における制御部の機能ブロックである。
【
図5】モータ駆動制御装置による2相ステッピングモータの通電切替制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(10)は、2相ステッピングモータ(20)における2相のコイル(21A,21B)のうち1相分の前記コイルを励磁する1相励磁と前記2相のコイルのうち2相分の前記コイルを励磁する2相励磁とを交互に繰り返すように、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号(Sc)を生成する制御部(11)と、前記制御信号に基づいて、前記2相のコイルを駆動する駆動部(12)と、を有し、前記制御部は、前記1相励磁中に非励磁の前記コイルに発生した逆起電圧に基づいて、前記1相励磁を行う期間(T1,T3,T5等)を決定し、前記2相励磁の前に行われた前記1相励磁の期間に基づいて、前記2相励磁を行う期間(T2,T4,T6等)を決定する。
【0014】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部は、前記1相励磁の期間において非励磁の前記コイルに発生した逆起電圧のゼロクロスの検出結果に応じて、前記2相ステッピングモータの励磁状態を前記1相励磁から前記2相励磁に切り替えるように前記制御信号を生成してもよい。また、前記制御部は、前記2相励磁の開始後、当該2相励磁の前に行われた前記1相励磁の期間に応じて決定した目標通電時間が経過した場合に、前記2相ステッピングモータの励磁状態を前記2相励磁から前記1相励磁に切り替えるように前記制御信号を生成してもよい。
【0015】
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部は、前記2相励磁の期間が当該2相励磁の直前に行われた前記1相励磁の期間と等しくなるように、前記目標通電時間を設定してもよい。
【0016】
〔4〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部は、前記2相励磁の期間が当該2相励磁の前に行われた複数の前記1相励磁の期間をもとに算出した値に基づいて、前記目標通電時間を設定してもよい。
【0017】
〔5〕上記〔2〕乃至〔4〕の何れか一つに記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部は、前記1相励磁の期間において、非励磁の前記コイルに発生した逆起電圧のゼロクロスが二回検出された場合に、前記2相ステッピングモータの励磁状態を前記1相励磁から前記2相励磁に切り替えるように前記制御信号を生成してもよい。
【0018】
〔6〕上記〔2〕乃至〔5〕の何れか一つに記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部(11)は、時間を計測する計時部(114)と、前記計時部を制御する計時制御部(113)と、前記計時部による計測時間を記憶する記憶部(115)と、前記2相のコイルに発生した逆起電圧のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部(112)と、前記ゼロクロス検出部の検出結果と前記計時部の計測結果とに基づいて、前記制御信号を生成する制御信号生成部(116)と、を含む。前記計時制御部は、前記1相励磁が開始されるとき、前記計時部に計時を開始させ、前記1相励磁中に、前記ゼロクロス検出部による逆起電圧のゼロクロスの検出結果に応じて、前記計時部の計時を停止させるとともに、前記計時部による計測時間を前記記憶部に記憶させる。前記制御信号生成部は、前記1相励磁中に、前記ゼロクロス検出部による逆起電圧のゼロクロスの検出結果に応じて、前記2相ステッピングモータの励磁状態を前記1相励磁から前記2相励磁に切り替えるように前記制御信号(Sc)を生成する。また、前記計時制御部は、前記2相励磁が開始されるとき、前記記憶部に記憶された前記計時部の計測時間に基づいて、前記目標通電時間(tg)を前記計時部に設定するとともに、前記目標通電時間までの計時を前記計時部に開始させる。前記制御信号生成部は、前記2相励磁中に、前記計時部の計測時間が前記目標通電時間に到達した場合に、前記2相ステッピングモータの励磁状態を前記2相励磁から前記1相励磁に切り替えるように前記制御信号を生成してもよい。
【0019】
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータユニット(1)は、上記〔1〕乃至〔6〕の何れか一つに記載のモータ駆動制御装置(10)と、前記2相ステッピングモータ(20)とを備える。
【0020】
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御方法は、モータ駆動制御装置(10)によって2相ステッピングモータ(20)の駆動を制御するための方法である。本方法は、前記モータ駆動制御装置が、前記2相ステッピングモータにおける2相のコイルのうち1相分の前記コイルを励磁する1相励磁と前記2相のコイルのうち2相分の前記コイルを励磁する2相励磁とを交互に繰り返すように、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号を生成する第1ステップと、前記モータ駆動制御装置が、前記制御信号に基づいて、前記2相のコイルを駆動する第2ステップ(S1,S6)とを含む。前記第1ステップは、前記1相励磁中に非励磁の前記コイルに発生した逆起電圧に基づいて前記1相励磁を行う期間を決定する第3ステップ(S2~S5)と、前記2相励磁の前に行われた前記1相励磁の期間に基づいて、前記2相励磁を行う期間を決定する第4ステップ(S7,S8)と、を含む。
【0021】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係るモータユニットの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、モータユニット1は、2相ステッピングモータ20と、2相ステッピングモータ20を駆動するモータ駆動制御装置10とを備えている。モータユニット1は、例えば、印刷機における紙を搬送する装置等のモータを動力源として用いる各種装置に適用可能である。
【0023】
図2は、2相ステッピングモータ20の構成を模式的に示す図である。
2相ステッピングモータ20は、2相のコイルを有するステッピングモータである。
【0024】
図2に示されるように、2相ステッピングモータ20は、A相のコイル21Aと、B相のコイル21Bと、ロータ22と、2相のステータヨーク(図示せず)とを有している。
コイル21A,21Bは、それぞれ、ステータヨークを励磁するコイルである。コイル21A,21Bは、それぞれ、後述する駆動部12に接続されている。コイル21A,21Bには、それぞれ異なる位相の電流(コイル電流)が流される。
なお、本実施の形態において、コイル21A,21Bをそれぞれ区別しない場合には、単に、「コイル21」と表記する場合がある。
【0025】
ロータ22は、円周方向に沿って、S極22SとN極22Nとが交互に反転するように、多極着磁された永久磁石を備えている。なお、
図2では、ロータ22が2極である場合が一例として示されている。ステータヨークは、ロータ22の周囲に、ロータ22の外周部に近接して配置されている。ロータ22は、コイル21A,21Bのそれぞれに流れるコイル電流の位相が周期的に切り替えられることにより、回転する。ロータ22には、出力軸(図示せず)が接続されており、ロータ22の回転力により、出力軸が駆動される。
【0026】
モータ駆動制御装置10は、2相ステッピングモータ20を駆動させるための装置である。モータ駆動制御装置10は、例えば上位装置(図示せず)からの駆動指令に基づいて、2相ステッピングモータ20の各相のコイル21A,21Bの通電状態を制御することにより、2相ステッピングモータ20の回転および停止を制御する。
【0027】
図1に示すように、モータ駆動制御装置10は、制御部11と駆動部12を有している。
駆動部12は、2相ステッピングモータ20のコイル21A,21Bに通電して、2相ステッピングモータ20を駆動する機能部である。駆動部12は、モータ駆動部121を有している。
【0028】
モータ駆動部121は、制御部11によって生成された制御信号Scに基づいて、2相ステッピングモータ20に駆動電力を供給する。
図2に示すように、モータ駆動部121は、コイル21Aの正極側の端子AP、コイル21Aの負極側の端子AN、コイル21Bの正極側の端子BP、およびコイル21Bの負極側の端子BNにそれぞれ接続されており、各端子AP,AN,BP,BNに電圧を印加することにより、コイル21A,21Bを通電させる。
【0029】
モータ駆動部121は、例えば、4つのスイッチング素子(例えばトランジスタ)から構成されたHブリッジ回路等によって構成されている。モータ駆動部121は、例えば、Hブリッジ回路を構成する各スイッチング素子を選択的にオン・オフさせることにより、コイル21A,21Bの通電を切り替える。
【0030】
図2に示すように、A相のコイル21Aに電流+Iaを流す場合には、モータ駆動部121は、例えば、コイル21Aの端子ANに対して端子APに“+Va”の電圧を印加する。一方、A相のコイル21Aに電流-Iaを流す場合には、モータ駆動部121は、コイル21Aの端子ANに対して端子APに“-Va”の電圧を印加する。B相のコイル21Bについても同様に、電流+Ibを流す場合には、モータ駆動部121は、例えば、コイル21Bの端子BNに対して端子BPに“+Vb”の電圧を印加し、B相のコイル21Bに電流-Ibを流す場合には、モータ駆動部121は、コイル21Bの端子BNに対して端子BPに“-Vb”の電圧を印加する。
【0031】
上述したように、モータ駆動部121は、制御部11からの制御信号Scに基づいて、各コイル21A,21Bの端子間に印加する電圧を切り替えることにより、各コイル21A,21Bの通電状態を切り替える。
【0032】
制御部11は、2相ステッピングモータ20の駆動を制御するための制御信号Scを生成して、駆動部12を介して2相ステッピングモータ20の駆動を制御する。
【0033】
制御部11は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、タイマ(カウンタ)、A/D変換回路、D/A変換回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とがバスを介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)である。本実施の形態において、制御部11は、IC(集積回路)としてパッケージ化されているが、これに限られるものではない。
【0034】
制御部11は、2相ステッピングモータ20における2相のコイル21A,21Bのうち1相分のコイル21を励磁する1相励磁と2相分のコイル21を励磁する2相励磁とを交互に繰り返すように、2相ステッピングモータ20の駆動を制御するための制御信号Scを生成する。すなわち、制御部11は、1-2相励磁方式によって、2相ステッピングモータ20のコイル21A,21Bの通電切替制御を行う。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置による、2相ステッピングモータの通電切替制御を説明するための図である。
【0036】
同図において、参照符号301は、A相のコイル21Aの端子ANに対する端子APの電圧(以下、「A相電圧」とも称する。)を表し、参照符号302は、B相のコイル21Bの端子BNに対する端子BPの電圧(以下、「B相電圧」とも称する。)を表している。
【0037】
図3に示すように、制御部11は、1相励磁と2相励磁とを交互に繰り返すように、2相ステッピングモータ20の通電状態を切り替える。例えば、
図3における1相励磁の期間T1では、A相電圧を“+Va”としてコイル21Aを正(+)に励磁させるとともに、B相電圧を“0”として、コイル21Bを励磁させない。期間T1の次の2相励磁の期間T2では、引き続き、A相電圧を“+Va”としてコイル21Aを正(+)に励磁させるとともに、B相電圧を“+Vb”としてコイル21Bを正(+)に励磁させる。期間T2の次の1相励磁の期間T3では、A相電圧を“0”として、コイル21Aを励磁させず、B相電圧を“+Vb”としてコイル21Bを正(+)に励磁させる。期間T3の次の2相励磁の期間T4では、A相電圧を“-Va”としてコイル21Aを負(-)に励磁させるとともに、B相電圧を“+Vb”として、コイル21Bを正(+)に励磁させる。
【0038】
このように、制御部11は、1相励磁と2相励磁が交互に切り替わるように、制御信号Scを生成し、駆動部12に与える。
【0039】
本実施の形態に係るモータユニット1において、2相ステッピングモータ20の1相励磁が行われる期間と2相励磁が行われる期間は、コイル21A,21Bに発生した逆起電圧に基づいて決定される。すなわち、モータユニット1において、2相ステッピングモータ20の1相励磁の期間と2相励磁の期間は、固定期間ではなく、可変期間となる。
【0040】
先ず、2相ステッピングモータ20の1相励磁の期間は、以下のように決定される。
2相ステッピングモータ20の1相励磁の期間は、一方のコイル21が励磁されているときに、他方の非励磁のコイル21に発生した逆起電圧に基づいて、決定される。
【0041】
具体的には、制御部11は、1相励磁の期間において、非励磁のコイル21に発生した逆起電圧のゼロクロスの検出結果に応じて、2相ステッピングモータ20の励磁状態を第1励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。
【0042】
例えば、
図3に示すように、1相励磁の期間T3において、非励磁のA相のコイル21Aの逆起電圧は、時刻taにおいて0Vとなり、その後、時刻tbにおいて再び0Vとなる。すなわち、1相励磁の期間T3において、逆起電圧のゼロクロスが二回発生する。そこで、制御部11は、1相励磁の期間T3において、非励磁のコイル21Aに発生した逆起電圧のゼロクロスが二回検出された場合に、第1励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。
【0043】
次に、2相ステッピングモータ20の2相励磁の期間は、以下のように決定される。
上述したように、2相ステッピングモータ20の1相励磁が行われる期間では、非励磁のコイル21に逆起電圧が発生する。一方、2相ステッピングモータ20の2相励磁が行われる期間(例えば、
図3の期間T2,T4等)では、A相のコイル21AとB相のコイル21Bがともに励磁されているので、いずれのコイル21A,21Bにも逆起電圧の測定はできない。そのため、1相励磁から2相励磁への切り替えと同じように、2相励磁から1相励磁に切り替えるタイミングをコイル21の逆起電圧に基づいて決定することはできない。
【0044】
そこで、本実施の形態では、2相励磁の期間は、その2相励磁の前に行われた1相励磁の期間に基づいて、決定される。
【0045】
具体的には、制御部11は、2相励磁の開始後、当該2相励磁の前に行われた1相励磁の期間に応じて決定した目標通電時間tgが経過した場合に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を2相励磁から1相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。
【0046】
例えば、
図3に示すように、2相励磁の期間T4では、A相のコイル21AとB相のコイル21Bはともに励磁されているので、逆起電圧の測定はできない。そこで、制御部11は、2相励磁が開始されてから目標通電時間tgが経過したタイミング(時刻t4)で、2相励磁から1相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。
【0047】
ここで、目標通電時間tg、すなわち2相励磁の期間は、例えば、以下に示す手法によって決定することができる。
【0048】
例えば、第1の手法として、目標通電時間tgは、2相励磁の直前に行われた1相励磁の期間に基づいて決定される。すなわち、制御部11は、2相励磁の期間が当該2相励磁の直前に行われた1相励磁の期間と等しくなるように、目標通電時間tgを設定する。例えば、
図3において、2相励磁の期間T4(目標通電時間tg)は、期間T4の直前に行われた1相励磁の期間T3と同じ長さに設定される。
【0049】
例えば、第2の手法として、目標通電時間tgは、2相励磁の前に行われた複数の1相励磁の期間に基づいて決定される。例えば、制御部11は、2相励磁の前に行われた複数の1相励磁の期間をもとに算出した値を用いて、目標通電時間tgを設定する。より具体的には、制御部11は、2相励磁の期間が当該2相励磁の前に行われた複数の1相励磁の期間の平均値に基づいて、目標通電時間tgを設定する。例えば、
図3において、2相励磁が行われる期間T4の長さは、期間T4の前に行われた1相励磁の期間T1,T3の平均値に設定される。また、2相励磁の前に行われた複数の1相励磁の期間に重み付けをして平均値を算出し、その平均値に基づいて目標通電時間tgを設定してもよい。例えば、基準となる2相励磁に時間的に近いものほど比重が大きくなるように、各1相励磁の期間に重み付けをして平均値を算出してもよい。
【0050】
以下の説明では、一例として、制御部11が、第1の手法によって目標通電時間tgを決定するものとして、説明する。
【0051】
図4は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置における制御部11の機能ブロックである。
【0052】
図4に示すように、制御部11は、上述したコイル21A,21Bの通電切替制御を実現するための機能部として、逆起電圧監視部111、ゼロクロス検出部112、計時制御部113、計時部114、記憶部115、および制御信号生成部116を有している。
【0053】
これらの機能部は、例えば、上述したプログラム処理装置(マイクロコントローラ)において、プロセッサが記憶装置に記憶されたプログラムに従って各種演算を実行し、A/D変換回路やタイマ等の周辺回路を制御することによって、実現される。
【0054】
逆起電圧監視部111は、各相のコイル21A,21Bに発生する逆起電圧を監視する機能部である。
【0055】
ゼロクロス検出部112は、逆起電圧監視部111の監視結果に基づいて、2相ステッピングモータ20のコイル21A,21Bに発生する逆起電圧のゼロクロスを検出するための機能部である。ゼロクロス検出部112は、非励磁のコイル21の逆起電圧のゼロクロスを検出した場合に、ゼロクロスが検出されたことを示す検出信号Szを出力する。
【0056】
計時制御部113は、計時部114を制御する機能部である。計時制御部113は、例えば、上述したマイクロコントローラを構成するプロセッサによるプログラム処理等によって実現することができる。
【0057】
計時制御部113は、計時部114による時間の計測の開始および停止を制御する。計時制御部113は、計時部114に目標通電時間tgを設定することにより、目標通電時間tgまでの計時を実行させる。計時部114は、計測時間が目標通電時間tgに到達した場合に、目標通電時間が経過したことを示す通知信号Stを出力し、計測した時間(計時結果)をリセットする。
【0058】
記憶部115は、計時部114による計時結果を記憶する機能部である。
【0059】
計時制御部113は、2相ステッピングモータ20の1相励磁が開始されるとき、計時部114に対して計時を開始させる。計時制御部113は、ゼロクロス検出部112の検出信号Szに基づいて、2相ステッピングモータ20の1相励磁中に逆起電圧のゼロクロスが二回検出されたと判定した場合に、計時部114による計時を停止させるとともに、計時部114によって計測された時間(計測時間)を記憶部115に記憶する。すなわち、記憶部115には、2相ステッピングモータ20の1相励磁の通電時間が記憶される。
【0060】
ここで、記憶部115には、計時部114によって計測された、複数の1相励磁の期間の情報が記憶されてもよいし、最新の1相励磁の期間の情報のみが記憶されてもよい。本実施の形態では、上述した第1の手法によって2相励磁の通電時間が決定されるので、記憶部115には、最新の1相励磁の通電時間の情報のみが記憶されるものとする。
【0061】
計時制御部113は、2相ステッピングモータ20の2相励磁が開始されるとき、計時部114に計時を開始させる。このとき、計時制御部113は、目標通電時間tgを計時部114に設定する。具体的には、2相ステッピングモータ20の2相励磁が開始されるとき、計時制御部113は、記憶部115に記憶された計時結果に基づいて目標通電時間tgを決定し、決定した目標通電時間tgを計時部114に設定する。例えば、計時制御部113は、記憶部115に記憶されている、直前の1相励磁が行われた時間を目標通電時間tgとして計時部114に設定し、計時部114に計時を開始させる。計時部114は、計測時間が目標通電時間tgに到達したら、目標通電時間が経過したことを示す通知信号Stを出力する。
【0062】
制御信号生成部116は、ゼロクロス検出部112の検出結果(検出信号Sz)と計時部114の計時結果(通知信号St)とに基づいて、制御信号Scを生成する機能部である。制御信号生成部116は、例えば、上述したマイクロコントローラを構成するプロセッサによるプログラム処理と入出力I/F回路等の周辺回路によって実現することができる。
【0063】
制御信号生成部116は、1相励磁中に、ゼロクロス検出部112による逆起電圧のゼロクロスの検出結果に応じて、2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。例えば、制御信号生成部116は、ゼロクロス検出部112の検出信号Szに基づいて、1相励磁中に逆起電圧のゼロクロスが二回検出されたと判定した場合に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。
【0064】
また、制御信号生成部116は、2相励磁中に、計時部114による計測時間が目標通電時間tgに到達した場合に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を2相励磁から1相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。例えば、制御信号生成部116は、計時部114から通知信号Stが出力された場合に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を2相励磁から1相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。
【0065】
図5は、モータ駆動制御装置10による2相ステッピングモータ20の通電切替制御の流れを示すフローチャートである。
【0066】
モータ駆動制御装置10は、例えば、電源投入後、外部の上位装置から2相ステッピングモータ20の駆動指令が入力されているか否かを判定する(ステップS0)。ステップS0において、駆動指令が入力されていない場合(Noの場合)には、2相ステッピングモータ20の駆動を開始しない。
【0067】
一方、ステップS0において、駆動指令が入力されている場合(Yesの場合)には、モータ駆動制御装置10は、2相ステッピングモータ20を駆動する。先ず、モータ駆動制御装置10は、2相ステッピングモータ20の1相励磁を開始する(ステップS1)。例えば、
図3の時刻t0において、制御信号生成部116は、2相ステッピングモータ20のA相のコイル21AにA相電圧“+Va”を印加し、B相のコイル21BのB相電圧は“0”として印加しないように、制御信号Scを生成し、駆動部12に与える。
【0068】
また、制御部11は、1相励磁が行われている期間の計時を開始する(ステップS2)。具体的には、例えば、
図3の時刻t0において、計時制御部113が、計時部114を制御して、1相励磁が行われている期間T1の計時を開始させる。
【0069】
次に、制御部11は、2相ステッピングモータ20のコイル21Bの逆起電圧を監視する(ステップS3)。具体的には、ゼロクロス検出部112が、逆起電圧監視部111の監視結果に基づいて、コイル21Bの逆起電圧のゼロクロスの発生の有無を監視する。
【0070】
次に、制御部11は、コイル21Bの逆起電圧の二回目のゼロクロスが検出されたか否かを判定する(ステップS4)。
【0071】
ステップS4において、逆起電圧のゼロクロスが二回検出されていない場合(Noの場合)には、制御部11は、引き続き、逆起電圧のゼロクロスの発生を監視する。
【0072】
ステップS4において、二回目の逆起電圧のゼロクロスが検出された場合(Yesの場合)には、制御部11は、1相励磁が行われている期間の計時を停止し、計時結果を記憶する(ステップS5)。例えば、
図3における時刻t1において、ゼロクロス検出部112によってコイル21Bの二回目の逆起電圧のゼロクロスが検出されたとき、計時制御部113は、計時部114による、1相励磁の期間T1の計測を停止させて、その計測結果(1相励磁の期間T1の時間tn-1)を記憶部115に記憶する。
【0073】
次に、制御部11は、2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替える(ステップS6)。例えば、
図3の時刻t1において、制御信号生成部116は、A相のコイル21AにA相電圧“+Va”を、B相のコイル21BにB相電圧“+Vb”を印加するように、制御信号Scを生成し、駆動部12に与える。
【0074】
次に、制御部11は、目標通電時間tgを設定して、2相励磁の期間の計時を開始する(ステップS7)。例えば、計時制御部113が、計時部114の計測時間をリセットするとともに、記憶部115に記憶されている計測時間、すなわち直前の1相励磁の期間T1の時間(tn-1)を目標通電時間tgとして計時部114にセットし、計時部114に目標通電時間tgまでの計時を開始させる。
【0075】
次に、制御部11は、2相励磁を開始してから目標通電時間tgが経過したか否かを判定する(ステップS8)。具体的には、制御信号生成部116が、計時部114から、計測時間が目標通電時間tgに到達したことを示す通知信号Stが出力されたか否かを判定する。
【0076】
ステップS8において、目標通電時間tgが経過していない場合(Noの場合)には、制御部11は、2相ステッピングモータ20の2相励磁を継続する。
【0077】
一方、ステップS8において、2相励磁を開始してから目標通電時間tgが経過した場合(Yesの場合)には、制御部11は、ステップS1に戻り、2相ステッピングモータ20を2相励磁から1相励磁に切り替える。例えば、
図3の時刻t2において計時部114から通知信号Stが出力された場合、制御信号生成部116は、2相ステッピングモータ20のA相のコイル21AのA相電圧は“0”として印加せず、B相のコイル21BにB相電圧“+Vb”を印加するように、制御信号Scを生成し、駆動部12に与える。
【0078】
その後、モータ駆動制御装置10は、上記装置から2相ステッピングモータ20の停止指令が入力されるまで、上述した処理を繰り返し実行する。
上述した通電切替制御によれば、
図3に示すように、1相励磁の期間T1と次の2相励磁の期間T2とは同一期間(tn-1)となり、1相励磁の期間T3と次の2相励磁の期間T4とは同一期間(tn)となり、1相励磁の期間T5と次の2相励磁の期間T6とは同一期間(tn+1)となる。すなわち、制御部11は、1相励磁と2相励磁を一組とした一周期毎に、コイル21に発生した逆起電圧に基づいて、2相ステッピングモータ20の励磁期間を更新する。
【0079】
以上、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10は、2相ステッピングモータ20を1-2相励磁方式で通電制御するとき、1相励磁中に非励磁のコイル21に発生した逆起電圧に基づいて、1相励磁を行う期間を決定し、2相励磁の前に行われた1相励磁の期間に基づいて、2相励磁を行う期間を決定する。
【0080】
一般に、ステッピングモータにおいて、ステッピングモータの負荷の大きさが変化した場合、コイルに発生する逆起電圧も変化する。例えば、1-2相励磁方式では、ステッピングモータの負荷が大きくなった場合に、逆起電圧が0Vに収束するまでの時間が長くなる傾向がある。
【0081】
そこで、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10のように、1相励磁中にコイル21に発生した逆起電圧に基づいて、1相励磁を行う期間を決定し、2相励磁の前に行われた1相励磁の期間に基づいて、2相励磁を行う期間を決定することにより、2相ステッピングモータ20の負荷の大きさに応じて、1相励磁の期間と2相励磁の期間を調整(可変)することが可能となる。
【0082】
これにより、1相励磁の期間および2相励磁の期間が固定されている従来の1-2相励磁方式による通電制御に比べて、2相ステッピングモータの負荷変動に対する耐性を高めることが可能となり、脱調が発生し難くなる。
【0083】
また、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10において、制御部11は、1相励磁の期間において非励磁のコイル21に発生した逆起電圧のゼロクロスの検出結果に応じて、2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。
これによれば、逆起電圧が発生している期間の長さに応じて、1相励磁の通電時間を適切な長さに調整することができる。
【0084】
また、制御部11は、2相励磁の開始後、当該2相励磁の前に行われた1相励磁の期間に応じて決定した目標通電時間tgが経過した場合に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を2相励磁から1相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。
これによれば、2相励磁の期間は、2相ステッピングモータ20の負荷に応じて適切に調整された1相励磁の期間に基づいて決定される。すなわち、逆起電圧が検出できない2相励磁の通電時間についても、1相励磁の通電時間と同様に、負荷に応じた適切な長さに調整することが可能となる。
【0085】
また、モータ駆動制御装置10において、制御部11は、2相励磁の期間が当該2相励磁の直前に行われた1相励磁の期間と等しくなるように、目標通電時間tgを設定する。
これによれば、2相ステッピングモータ20の負荷の変動に対して、より速やかに追従して2相励磁の期間を調整することができるので、2相ステッピングモータ20の負荷変動に対する耐性を更に高めることが可能となる。また、これによれば、目標通電時間tg(2相励磁の期間)を決定するために必要なプロセッサ(CPU)による演算量を少なくすることができるので、プロセッサの消費電力の増大を抑えることが可能となる。
【0086】
また、モータ駆動制御装置10において、制御部11は、2相励磁の期間が当該2相励磁の前に行われた複数の1相励磁の期間の平均値に基づいて、目標通電時間tgを設定してもよい。
これによれば、1相励磁の期間を、2相ステッピングモータ20の負荷の変動に対して速やかに追従させつつ、2相励磁の期間を、2相ステッピングモータ20の負荷の変動に対して緩やかに追従させることができる。
【0087】
また、モータ駆動制御装置10において、制御部11は、1相励磁の期間において、非励磁のコイル21に発生した逆起電圧のゼロクロスが二回検出された場合に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する。
【0088】
一般に、1-2相励磁方式で通電制御されている2相ステッピングモータでは、ステッピングモータの負荷が大きくなるほど、1相励磁の期間においてコイルに発生する逆起電圧のゼロクロスのタイミングが遅くなる傾向がある。
【0089】
したがって、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10のように、1相励磁の期間において、非励磁のコイル21に発生した逆起電圧のゼロクロスが二回検出された場合に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替えるタイミングを決定することにより、負荷の大きさに応じた適切なタイミングで、通電切替を行うことができるので、2相ステッピングモータ20の負荷変動に対する耐性を更に高めることが可能となる。
【0090】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0091】
例えば、上記実施の形態に係るモータユニット1は、
図1に開示した構成に限定されない。例えば、駆動部12は、上述したモータ駆動部121の他に、コイル21A,21Bのコイル電流を検出するための電流検出回路等の他の回路を有していてもよい。
【0092】
また、上記実施の形態において、制御部11が、コイルの逆起電圧のゼロクロスが二回検出された場合に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成する場合を例示したが、これに限られない。例えば、コイルの逆起電圧のゼロクロスが二回検出されてから一定時間が経過した後に、制御部11が、2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Scを生成してもよい。
【0093】
また、上記実施の形態において、制御部11が、2相励磁の期間が当該2相励磁の前に行われた複数の1相励磁の期間の平均値に基づいて目標通電時間tgを設定する場合を例示したが、これに限られない。例えば、制御部11が、2相励磁の期間が当該2相励磁の前に行われた複数の1相励磁の期間のうち、最も長い期間に基づいて、目標通電時間tgを設定してもよい。
【0094】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…モータユニット、10…モータ駆動制御装置、11…制御部、12…駆動部、20…2相ステッピングモータ、21…コイル、21A…A相のコイル、21B…B相のコイル、22…ロータ、22N…N極、22S…S極、111…逆起電圧監視部、112…ゼロクロス検出部、113…計時制御部、114…計時部、115…記憶部、116…制御信号生成部、121…モータ駆動部、Sc…制御信号、St…通知信号、Sz…検出信号、tg…目標通電時間、AP…A相のコイルの正極側の端子、AN…A相のコイルの負極側の端子、BP…B相のコイルの正極側の端子、BN…B相のコイルの負極側の端子。