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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】圧縮機、および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20230427BHJP
   H02K 5/136 20060101ALI20230427BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20230427BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
F04B39/00 106A
H02K5/136
H02K5/22
F25B1/00 396G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019152573
(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公開番号】P2021032129
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一彦
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-107960(JP,A)
【文献】特開2019-002408(JP,A)
【文献】特開2013-103199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
H02K 5/136
H02K 5/22
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、
前記密閉容器に収容され、かつ前記密閉容器内に導入される冷媒を圧縮可能な圧縮機構部と、
前記圧縮機構部を駆動させる電動機と、
前記密閉容器に設けられる密封端子と、
前記電動機から引き出されて前記密封端子に接続される口出線と、
前記密封端子に接続されるリード線を通す開口を有して前記密封端子を覆うカバーと、
前記カバーと前記密閉容器との間に挟み込まれ、または前記カバーと前記密閉容器に設けられる台座との間に挟み込まれて気体の流通を阻害するガスケットと、
前記カバーを前記密閉容器に固定する、または、または前記カバーを前記台座に固定する固定部と、
前記カバーの前記開口に配置されて前記リード線を保護し、30メッシュ以上の網目を有する金属製のブッシングと、を備え、
前記カバーの内側と外側とは、前記リード線と前記ブッシングとの間および前記カバーの前記開口と前記ブッシングとの間の0.9ミリメートル以下の隙間と、前記ブッシングの前記網目と、で繋がっている密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記ブッシングは、前記リード線に沿って前記カバーの内側へ折り返される折返部を有する請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記カバーの前記開口は、下方を臨む請求項1または2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
前記ブッシングは、ステンレス鋼製である請求項1から3のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載される密閉型圧縮機と、
放熱器と、
膨張装置と、
吸熱器と、
前記密閉型圧縮機、前記放熱器、前記膨張装置、および前記吸熱器を接続して前記冷媒を流通させる冷媒配管と、を備える冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密封端子を収納するターミナルカバーを、圧縮機の外壁にガスケットを介して取付けた保護装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-5019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地球温暖化防止のため、地球温暖化係数(Global Warming Potential、GWP)が低い自然系冷媒使用の気運が高まっている。そこで、冷凍サイクル装置では、炭化水素系(HC系)の冷媒の適用が進められている。HC系冷媒には、プロパンのように可燃性を有する冷媒が含まれている。
【0005】
電気機器を可燃性雰囲気の下で使用する場合には、「電気機械器具防爆構造規格」の第5条に基づく「工場電気設備防爆指針(国際整合防爆指針2015)」則って防爆構造の仕様が策定される。なお、「工場電気設備防爆指針(国際整合防爆指針2015)」は、国際電気標準会議(International Electro technical Commission)で制定されるIEC80079シリーズに整合する規格である。
【0006】
密封端子とリード線との接続箇所は、圧縮機の運転中(通電中)に抜き差しされることはない。また、密封端子とリード線との接続箇所を覆うカバーの内部は、定常時には可燃性雰囲気になることはない。換言すると、カバーの内部は、第二類危険箇所である。そのため、密封端子とリード線との接続箇所、あるいはこれらを覆うカバーは、無火花形相当の構造と見なして防爆構造の仕様を策定できる。
【0007】
しかしながら、圧縮機の密閉容器から可燃性の冷媒が漏洩するような非定常時には、端子の緩みによる過熱が火源になる虞がある。仮にカバー内で可燃性の冷媒が点火すると、リード線を通すためのカバーの隙間、あるいは、リード線とカバーとの間に設けられるブッシングの隙間を通じた火炎の伝搬によって、その周囲の可燃性の冷媒に引火する虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、万一、カバー内で可燃性の冷媒に点火した場合であっても、カバー外にその影響を及ぼすことなく、カバー内に火炎を留めておくことが可能な防爆構造を有する密閉型圧縮機、および冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る密閉型圧縮機は、密閉容器と、前記密閉容器に収容され、かつ前記密閉容器内に導入される冷媒を圧縮可能な圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動させる電動機と、前記密閉容器に設けられる密封端子と、前記電動機から引き出されて前記密封端子に接続される口出線と、前記密封端子に接続されるリード線を通す開口を有して前記密封端子を覆うカバーと、前記カバーと前記密閉容器との間に挟み込まれ、または前記カバーと前記密閉容器に設けられる台座との間に挟み込まれて気体の流通を阻害するガスケットと、前記カバーを前記密閉容器に固定する、または、または前記カバーを前記台座に固定する固定部と、前記カバーの前記開口に配置されて前記リード線を保護し、30メッシュ以上の網目を有する金属製のブッシングと、を備え、前記カバーの内側と外側とは、前記リード線と前記ブッシングとの間および前記カバーの前記開口と前記ブッシングとの間の0.9ミリメートル以下の隙間と、前記ブッシングの前記網目と、で繋がっている。
【0010】
また、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置は、前記密閉型圧縮機と、放熱器と、膨張装置と、吸熱器と、前記密閉型圧縮機、前記放熱器、前記膨張装置、および前記吸熱器を接続して冷媒を流通させる冷媒配管と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置および圧縮機の概略的な図。
図2】本発明の実施形態に係る圧縮機の部分的な拡大図。
図3図2の矢印Aから圧縮機の一部を示す図。
図4】本発明の実施形態に係るブッシングの他の例を示す図。
図5図4の矢印Aからブッシングの他の例を示す図。
図6】本発明の実施形態に係る保護装置の他の例を示す図。
図7図6の矢印Aから保護装置の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る密閉型圧縮機、および冷凍サイクル装置の実施形態について図1から図7を参照して説明する。なお、複数の図面中、同じまたは相当する構成には同一の符号が付されている。
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置および圧縮機の概略的な図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、例えば空気調和機である。冷凍サイクル装置1に使用される冷媒は、炭化水素系(HC系)の冷媒、例えば、R290(プロパン、C3H8)を含んでいる。
【0014】
冷凍サイクル装置1は、密閉型の圧縮機2と、放熱器3と、膨張装置5と、吸熱器6と、アキュムレーター7と、冷媒配管8と、を備えている。冷媒配管8は、圧縮機2と放熱器3と膨張装置5と吸熱器6とアキュムレーター7とを順次に接続して冷媒を流通させる。放熱器3は、凝縮器とも呼ばれる。吸熱器6は蒸発器とも呼ばれる。
圧縮機2は、冷媒配管8を通じて吸熱器6を通過した冷媒を吸い込み、圧縮し、冷媒配管8を通じて高温高圧の冷媒を放熱器3へ吐き出す。
【0015】
圧縮機2は、縦置きされる円筒状の密閉容器11と、密閉容器11に収容され、かつ密閉容器11内に導入される冷媒を圧縮可能な圧縮機構部12と、圧縮機構部12を駆動させる電動機13と、電動機13の回転駆動力を圧縮機構部12へ伝達する回転軸15と、を備えている。
密閉容器11は、上下方向に延びる円筒形状の胴部11aと、胴部の上端部を塞ぐ鏡板11bと、胴部の下端部を塞ぐ鏡板11cと、を備えている。
【0016】
密閉容器11の上側の鏡板11bには、冷媒の吐出用の吐出管8aが接続されている。吐出管8aは冷媒配管8に繋がれている。また、密閉容器11の上側の鏡板11bには、電力供給用の密封端子18と、密封端子18を覆う保護装置21と、が設けられている。
【0017】
電動機13は、密閉容器11内の上半部に配置されている。電動機13は、密封端子18を経て供給される電力で圧縮機構部12を回転させる駆動力を発生させる。電動機13は、圧縮機構部12よりも上方に配置されている。電動機13は、密封端子18に接続される口出線23を備えている。
【0018】
複数の口出線23は、密封端子18を通じて電動機13に電力を供給する配線であり、いわゆるリード線である。口出線23は、電動機13から引き出されて密封端子18に接続されている。口出線23は、電動機13の種類に応じて複数配線される。
回転軸15は、電動機13と圧縮機構部12とを連結している。回転軸15は、電動機13が発生させる回転駆動力を圧縮機構部12に伝達する。
【0019】
圧縮機構部12は、密閉容器11内の下半部に配置されている。圧縮機構部12は、冷媒を圧縮することができる。電動機13が回転軸15を回転駆動することによって、圧縮機構部12は、冷媒配管8からガス状の冷媒を吸込んで圧縮し、かつ密閉容器11内に吐出する。
アキュムレーター7は、吸熱器6でガス化しきれなかった液状の冷媒が圧縮機2に吸い込まれることを防ぐ。
次いで、密封端子18の保護装置21について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る圧縮機の部分的な拡大図である。
図3は、図2の矢印Aから圧縮機の一部を示す図である。
図2および図3に示すように、本実施形態に係る圧縮機2は、密閉容器11の鏡板11bに設けられる密封端子18、および保護装置21を備えている。
鏡板11bは、密封端子18、および保護装置21を配置する平坦面11dを有している。
【0020】
密封端子18は、鏡板11bの平坦面11dを貫通する端子口36に設けられている。密封端子18は、上方へ突出する複数の接続端子37を備えている。それぞれの接続端子37は、電動機13の駆動回路に繋がるリード線Wに接続される。リード線Wは、圧縮機2の機外に敷設されている。
【0021】
保護装置21は、リード線Wを通す配線用開口31aを有して密封端子18を覆う端子カバー31と、端子カバー31を密閉容器11に固定する固定部32と、端子カバー31と密閉容器11との間に挟み込まれて気体の流通を阻害するガスケット33と、端子カバー31の配線用開口31aに配置されてリード線Wを保護するブッシング35と、を備えている。
【0022】
端子カバー31は、密閉容器11の平坦面11dから密閉容器11の外へ露出する密封端子18の一部18aを収容している。端子カバー31は、密封端子18の一部18aを収容する十分な容積を有する筒形状を有している。端子カバー31の底面は開放されている。端子カバー31の底面をガスケット33へ押さえ付けることによって端子カバー31と密閉容器11との間の気体の流通が妨げられる。
【0023】
また、端子カバー31は、密閉容器11の径方向外側へ向かって突出し、かつ下方へ向かって傾斜するリード線取出部38を有している。リード線取出部38の下面は、リード線Wを配線する配線用開口31aである。
【0024】
端子カバー31の配線用開口31aは、密封端子18の接続端子37に接続されるリード線Wを通す。配線用開口31aは、下方を臨んでいる。配線用開口31aは、接続端子37から遠ざかるほど低くなるように傾斜している。なお、配線用開口31aは、端子カバー31のみで画定されず、密閉容器11によって画定される縁、またはガスケット33によって画定される縁を含んでいる。
固定部32は、密閉容器11の鏡板11bに設けられるスタッドボルト41と、スタッドボルト41に締め付けられるナット42と、を備えている。
【0025】
端子カバー31は、スタッドボルト41を貫通させるボルト穴45と、ナット42の座面46と、を有している。スタッドボルト41にナット42を締め付けてナット42で座面46を押さえ付けることによって、端子カバー31は、ガスケット33に押さえ付けられる。また、端子カバー31は、接続端子37を収容する端子室47とは別個に、スタッドボルト41を挿し通すボルト挿通室48を有している。端子室47とボルト挿通室48との間には、隔壁49が設けられている。隔壁49は、端子室47とボルト挿通室48との間の気体の流通を妨げる。
【0026】
ガスケット33は、ゴム製または弾力性の高い合成樹脂製である。ガスケット33は、密閉容器11の平坦面11dに設置されている。ガスケット33は、端子カバー31の開口端31bの外形形状より一回り大きく広がる板状の形状を有している。ガスケット33は、密封端子18を配置する第一開口33aと、スタッドボルト41を配置する第二開口33bと、を有している。ガスケット33は、端子カバー31と密閉容器11との間に挟み込まれ、かつ端子カバー31を介して固定部32によって密閉容器11に押し付けられている。そのため、ガスケット33は、端子カバー31と密閉容器11との間で押し潰されて、端子カバー31の底面を通じて気体が流通することを阻止している。なお、端子カバー31の底面には、隔壁49の下端縁が含まれる。つまり、隔壁49の下端縁もガスケット33に押し付けられている。ガスケット33は、隔壁49の下端縁における、端子室47とボルト挿通室48との間の気体の流通も妨げている。
【0027】
ブッシング35は、リード線Wを端子カバー31の内外に通して配線させるとともに、端子カバー31の配線用開口31aを塞いでいる。ブッシング35は、30メッシュ以上の網目を有する金網製である。つまり、ブッシング35は、金属製であって、ステンレス鋼製であることが好ましい。ブッシング35は、金属の線材で織られた織網であっても良いし、多数の穴が打ち抜かれた板材、いわゆるパンチングメタルであっても良い。
【0028】
なお、金網の網目の細かさを表す単位である「メッシュ」とは、1インチ(25.4ミリメートル)当たりの網目の数を表している。つまり、30メッシュ以上とは、1インチ当たり30以上の網目があることを指している。
【0029】
ブッシング35の外縁は、端子カバー31の配線用開口31aにはまり、あるいは、端子カバー31の配線用開口31aを経て端子カバー31の内側へ折り返されている。このように折り返される外縁は、ブッシング35と配線用開口31aとの間の隙間を、ブッシング35の網目より確実に狭める。
【0030】
ブッシング35は、リード線Wを挿し通すリード線挿通孔51と、リード線Wに沿って端子カバー31の内側へ折り返される折返部52を有している。リード線挿通孔51の開口径は、リード線Wの直径以下である。換言すると、リード線挿通孔51とリード線Wとの嵌め合いの関係は、中間ばめ、またはしまりばめの関係を有している。このような嵌め合い関係は、リード線挿通孔51とリード線Wとの間の隙間をブッシング35の網目以下に抑える。
【0031】
折返部52は、リード線挿通孔51を端子カバー31の内側へ向けて折り返した部位である。折返部52は、リード線挿通孔51とリード線Wとの間の隙間をより確実に狭める。また、折返部52は、リード線Wに加えられる張力の影響によって、リード線挿通孔51とリード線Wとの隙間が開くことを防いでいる。
【0032】
なお、ブッシング35は、リード線Wをリード線挿通孔51に配置するための切り込み(図示省略)を有している。切り込みは、ブッシング35の外縁からリード線挿通孔51に達している。切り込みは、ブッシング35を端子カバー31の配線用開口31aを塞ぐ適宜の形状へ復元する過程で閉じられる。
図4は、本発明の実施形態に係るブッシングの他の例を示す図である。
図5は、図4の矢印Aからブッシングの他の例を示す図である。
【0033】
本実施形態に係る圧縮機2のブッシング35は、図2および図3に示す第一例のブッシング35のように、ガスケット33と密閉容器11との間に挟み込まれる部分を有していても良いし、図4および図5に示す第二例のブッシング35Aのように、ガスケット33と端子カバー31の配線用開口31aとの間に嵌め込まれて保持されていても良い。
【0034】
第二例のブッシング35Aは、リード線Wに巻き付けられた板状の金網である。ブッシング35Aは、第一例のブッシング35と異なりリード線Wの延びの方向へ、より長い距離に渡ってリード線Wを保護し、かつリード線挿通孔51とリード線Wとの隙間を確実に狭める。また、第二例のブッシング35Aは、第一例のブッシング35と異なりリード線Wをリード線挿通孔51に配置するための切り込みを必要としない。
【0035】
なお、ブッシング35Aは、それぞれのリード線Wに個別に巻き付けられている。つまり、ブッシング35Aは、それぞれのリード線Wに筒状に巻き付いている。そのため、それぞれのブッシング35Aの間の部分は、第一例のブッシング35の様な板状の金網で塞がれている
このような構成を有する保護装置21の組立順序を説明する。
【0036】
第一例のブッシング35では、ブッシング35が密閉容器11の平坦面11dに敷かれ、その上にガスケット33が敷かれる。第二例のブッシング35Aでは、ブッシング35が密閉容器11の平坦面11dに直に敷かれる。そして、密封端子18のそれぞれの接続端子37にそれぞれのリード線Wが接続される。
【0037】
次に、ブッシング35がリード線Wに装着される。第一例のブッシング35では、リード線Wがリード線挿通孔51に配置される。第二例のブッシング35Aでは、リード線Wに金網が巻き付けられる。この状態でリード線Wが端子カバー31のリード線取出部38の配線用開口31aに通され、かつブッシング35、35Aが配線用開口31aに配置されつつ、端子カバー31が密封端子18に被せられる。
この後、スタッドボルト41にナット42が締め込まれて端子カバー31が密閉容器11に固定される。そうして保護装置21が組立てられる。
【0038】
このような組み立て過程を経て、端子カバー31とガスケット33との間は気密に閉じられる。また、端子カバー31の配線用開口31aは、ブッシング35、35Aで塞がれる。こうして、端子カバー31の内側と外側とは、0.9ミリメートル以下の隙間、具体的にはブッシング35、35Aの網目を通じて繋がることになる。
スタッドボルト41は、端子室47とは独立したボルト挿通室48を通っている。そのため、端子カバー31のボルト穴45は、端子室47には通じていない。
【0039】
なお、IEC 80079-20-1 (2017) Part20-1:Material characteristics for gas and vapour classification - Test methods and date (ガス及び蒸気の分類のための材料特性 - 試験方法及びデータ)において、電気機器グループIIAに要求される可燃性ガス(可燃性冷媒)、例えばプロパンに対する最大安全隙間(Maximum Expermental Safe Gap、MESG)は、0.92ミリメートルである。したがって、端子カバー31の内側と外側とは、この最大安全隙間よりも小さい隙間で通じている。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、0.9ミリメートル以下の隙間を通じて端子カバー31の内側と外側とを繋げている。そのため、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、仮に冷媒であるプロパンが密閉容器11から漏れて端子カバー31内で点火した場合であっても、端子カバー31内の炎が端子カバー31外へ伝わることを防ぐことができる。また、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、仮に冷媒であるプロパンが密閉容器11から漏れて端子カバー31内に入り込んでも、隙間を通じて端子カバー31外へプロパンを排気できる。
【0041】
また、本実施形態に係る圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、リード線Wに沿って端子カバー31の内側へ折り返す折返部52を有するブッシング35を備えている。そのため、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、ブッシング35の網目のサイズよりもリード線挿通孔51とリード線Wとの間の隙間を確実に狭めることができる。また、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、リード線Wに加えられる張力の影響によって、リード線挿通孔51とリード線Wとの隙間が開くことを防ぐことができる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、下方を臨む配線用開口31aを有する端子カバー31を備えている。そのため、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、仮に冷媒であるプロパン(空気よりも比重が重い)が密閉容器11から端子カバー31内に漏れ出た場合であっても、冷媒に点火する以前に冷媒を端子カバー31外へ容易に排出することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、ステンレス鋼製のブッシング35、35Aを備えている。そのため、室外機に納められて室外に設置される圧縮機2のブッシング35、35Aが、発錆によって破れ、網目のサイズが拡大してしまうことを防ぐことができる。
次いで、保護装置21の第二例について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る保護装置の他の例を示す図である。
図7は、図6の矢印Aから保護装置の他の例を示す図である。
【0044】
図6および図7に示すように、本実施形態に係る圧縮機2の第二例の保護装置21B(以下、単に「保護装置21B」と呼ぶ。)は、密閉容器11に設けられる台座61と、リード線Wを通す配線用開口31aを有して密封端子18を覆い、かつ台座61を閉じる端子カバー31Bと、端子カバー31Bを台座61に固定する固定部32Bと、端子カバー31Bと台座61との間に挟み込まれて気体の流通を阻害するガスケット33Bと、端子カバー31Bの配線用開口31aに配置されてリード線Wを保護するブッシング35Bと、を備えている。
【0045】
台座61と端子カバー31Bとは箱状に組み合わされて密封端子18を囲む空間を画定している。箱状に組み合わされた台座61と端子カバー31Bとは、密閉容器11の平坦面11dから密閉容器11の外へ露出する密封端子18の一部18aを収容している。
【0046】
台座61は、密閉容器11の平坦面11dに接着や溶接などの接合方法で固定されている。台座61は、上下方向に扁平な矩形状を有し、かつ密閉容器11に固定される矩形の底壁62と、3つの側壁63、64、65と、を有している。台座61は、上方および1つの側方へ開放されている。底壁62は、平板状であって密閉容器11に固定される平坦な第一面62bと、上方を臨む平坦な第二面62tと、密封端子18を配置する開口62aと、を有している。対面する一対の側壁63、64は、バンド状の固定部32Bの端部を引っ掛けておく開口66を有している。また、側壁63、64の突出高さは、台座61の開放側面へ向かって低くなるように傾斜している。側壁65は、一対の側壁63、64を繋いでいる。
【0047】
ガスケット33Bは、ゴム製または弾力性の高い合成樹脂製である。ガスケット33Bは、台座61の第二面62tに設置されている。ガスケット33Bは、端子カバー31Bの開口端31bの外形形状より一回り大きく広がる板状の形状を有している。ガスケット33Bは、密封端子18の接続端子37を配置する第一開口33aを有している。ガスケット33Bは、端子カバー31Bと台座61との間に挟み込まれ、かつ固定部32Bによって端子カバー31Bを介して台座61に押し付けられている。そのため、ガスケット33Bは、端子カバー31Bと台座61との間で押し潰されて、端子カバー31Bの底面を通じて気体が流通することを阻止している。
【0048】
端子カバー31Bは、台座61の底壁62から露出する密封端子18の一部18aを収容している。端子カバー31Bは、密封端子18の一部18aを収容する十分な容積を有する矩形状を有している。端子カバー31Bは、台座61の内側に嵌め込まれるようにして底壁62上のガスケット33に着座している。端子カバー31Bは、台座61の側壁63、64に対向する一対の側壁73、32と、台座61の側壁65に対向する側壁75と、台座61の開放側面を通じて全面が露出する側壁76と、を有している。端子カバー31Bの底面は開放されている。端子カバー31Bの底面をガスケット33Bへ押さえ付けることによって端子カバー31Bと台座61との間の気体の流通が妨げられる。
【0049】
側壁75には、台座61の側壁65に上方から引っ掛かって端子カバー31Bを位置決めするフック77が設けられている。フック77は、端子カバー31Bが台座61の側壁65から離れてしまうこと、換言すると、台座61の開放側面へ向かって端子カバー31Bが移動することを防いでいる。
【0050】
端子カバー31Bの配線用開口31aは、側壁76に設けられている。そのため、端子カバー31Bの配線用開口31aは、水平方向を臨んでいる。配線用開口31aは、側壁73、74のいずれか一方、ここでは側壁73に寄って縦長に開口されている。配線用開口31aは、密封端子18の接続端子37に接続されるリード線Wを通す。なお、配線用開口31aは、端子カバー31Bのみで確定されず、台座61によって画定される縁、またはガスケット33Bによって画定される縁を含んでいる。つまり配線用開口31aの下端は、端子カバー31Bの開口端31bで開放されている。
【0051】
固定部32Bは、端子カバー31Bを台座61に押さえ付けるように弾性変形して台座61の開口66に引っ掛けられている。固定部32Bは、端子カバー31Bの天面を跨いで台座61の側壁63、64の開口66へアーチ状に掛けられている。
【0052】
ブッシング35Bは、リード線Wを端子カバー31の内外に通して配線させるとともに、端子カバー31Bの配線用開口31aを塞いでいる。ブッシング35Bは、30メッシュ以上の網目を有する金網製である。つまり、ブッシング35Bは、金属製であって、ステンレス鋼製であることが好ましい。ブッシング35Bは、金属の線材を織った織網であっても良いし、板材に多数の穴を打ち抜いた、いわゆるパンチングメタルであっても良い。
【0053】
ブッシング35Bの外縁は、端子カバー31Bの配線用開口31aに嵌まり、あるいは、端子カバー31Bの配線用開口31aを経て端子カバー31Bの内側へ折り返されている。このように折り返される外縁は、ブッシング35Bと配線用開口31aとの間の隙間を、ブッシング35Bの網目より確実に狭める。
【0054】
ブッシング35Bは、リード線Wを挿し通すリード線挿通孔51を有している。リード線挿通孔51の開口径は、リード線Wの直径以下である。換言すると、リード線挿通孔51とリード線Wとの嵌め合いの関係は、中間ばめ、またはしまりばめの関係を有している。このような嵌め合い関係は、リード線挿通孔51とリード線Wとの間の隙間をブッシング35Bの網目以下に抑える。
【0055】
また、ブッシング35Bは、リード線Wをリード線挿通孔51に配置するための切込(図示省略)を有している。切込は、ブッシング35Bの外縁からリード線挿通孔51に達している。切込は、ブッシング35Bを端子カバー31Bの配線用開口31aを塞ぐ適宜の形状へ復元する過程で閉じられる。
なお、ブッシング35Bは、第一例のブッシング35のように、リード線Wに沿って端子カバー31の内側へ折り返される折返部を有していても良い。
このような構成を有する保護装置21Bの組立順序を説明する。
【0056】
先ず、台座61が密閉容器11の平坦面11dに固定される。そして、ガスケット33Bが台座61の第二面62tに敷かれる。密封端子18のそれぞれの接続端子37にそれぞれのリード線Wが接続される。
【0057】
次に、ブッシング35Bがリード線Wに装着される。リード線Wがリード線挿通孔51に配置される。この状態でリード線Wが端子カバー31Bの配線用開口31aに通され、かつブッシング35Bが配線用開口31aに配置されつつ、端子カバー31が密封端子18に被せられる。
この後、固定部32Bが台座61の開口66に引っ掛けられて端子カバー31Bが台座61に固定される。そうして保護装置21Bが組立てられる。
【0058】
このような組み立て過程を経て、端子カバー31Bとガスケット33Bとの間は気密に閉じられる。また、端子カバー31Bの配線用開口31aは、ブッシング35Bで塞がれる。こうして、端子カバー31Bの内側と外側とは、0.9ミリメートル以下の隙間、具体的にはブッシング35Bの網目を通じて繋がることになる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、0.9ミリメートル以下の隙間を通じて端子カバー31Bの内側と外側とを繋げている。そのため、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、仮に冷媒であるプロパンが密閉容器11から漏れて端子カバー31B内で点火した場合であっても、端子カバー31B内の炎が端子カバー31B外へ伝わることを防ぐことができる。また、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、仮に冷媒であるプロパンが密閉容器11から漏れて端子カバー31B内に入り込んでも、隙間を通じて端子カバー31外へプロパンを排気できる。
【0060】
また、本実施形態に係る圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、ステンレス鋼製のブッシング35Bを備えている。そのため、室外機に納められて室外に設置される圧縮機2のブッシング35Bが、発錆によって破れ、網目のサイズが拡大してしまうことを防ぐことができる。
【0061】
したがって、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、および圧縮機2によれば、万一、カバー内で可燃性の冷媒に点火した場合であっても、カバー外にその影響を及ぼすことなく、カバー内に火炎を留めておく防爆構造を有することができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…冷凍サイクル装置、2…圧縮機、3…放熱器、5…膨張装置、6…吸熱器、7…アキュムレーター、8…冷媒配管、8a…吐出管、11…密閉容器、11a…胴部、11b…鏡板、11c…鏡板、11d…平坦面、12…圧縮機構部、13…電動機、15…回転軸、18…密封端子、18a…一部、21、21B…保護装置、23…口出線、31、31B…端子カバー、31a…配線用開口、31b…開口端、32、32B…固定部、33、33B…ガスケット、33a…第一開口、33b…第二開口、35、35A、35B…ブッシング、36…端子口、37…接続端子、38…リード線取出部、41…スタッドボルト、42…ナット、45…ボルト穴、46…座面、47…端子室、48…ボルト挿通室、49…隔壁、51…リード線挿通孔、52…折返部、61…台座、62…台座の底壁、62b…第一面、62t…第二面、62a…開口、63、64、65…台座の側壁、66…開口、73、74、75、76…端子カバーの側壁、77…フック。
図1
図2
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図5
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図7