(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】保冷材除去方法および保冷材除去システム
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20230427BHJP
B65D 88/00 20060101ALI20230427BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
B65D88/00
E04G23/08 J
(21)【出願番号】P 2019155543
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168907
【氏名又は名称】本田 太久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 進一
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】杉田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】津井 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 伸彦
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-035199(JP,A)
【文献】特開平11-117543(JP,A)
【文献】特開2006-016872(JP,A)
【文献】特開2000-168884(JP,A)
【文献】特開平11-064519(JP,A)
【文献】特開平10-030347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
B65D 88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液体を貯蔵する内槽と、
前記内槽を囲う外槽と、
前記内槽と前記外槽との間に設けられ、粉状の保冷材が充填された保冷空間と、
を備えた低温タンクの保冷材除去方法であって、
前記保冷材除去方法は、
前記外槽に開口された開口部に吸引ホースを挿入して前記内槽の内槽側板と前記外槽の外槽側板との間に存在する前記保冷材を吸引除去する第1保冷材除去工程と、
前記開口部を通じて前記保冷材の堆積高さを含む堆積状態を測定する堆積状態測定工程と、
前記堆積状態測定工程をおこなうことにより測定された前記堆積状態に応じて前記開口部よりも下方の位置で前記外槽側板に開口された下方開口部に吸引ホースを挿入して前記下方開口部よりも下方に存在する前記保冷材を吸引除去する第2保冷材除去工程と、
を含む、
ことを特徴とする保冷材除去方法。
【請求項2】
前記保冷材除去方法は、
前記第2保冷材除去工程をおこなう前に、前記下方開口部を前記外槽側板に形成する下方開口部形成工程をさら含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の保冷材除去方法。
【請求項3】
前記保冷材除去方法は、
前記第2保冷材除去工程をおこなう前に、前記開口部に挿入された前記吸引ホースを引き抜いて前記下方開口部に挿入する吸引ホース挿入位置変更工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の保冷材除去方法。
【請求項4】
前記保冷材除去方法は、
前記第2保冷材除去工程をおこなった後、前記吸引ホースを用いて前記内槽の内槽底板の下方に存在する前記保冷材を吸引除去する第3保冷材除去工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項に記載の保冷材除去方法。
【請求項5】
前記保冷材除去方法は、
前記第3保冷材除去工程をおこなう前に、前記内槽底板の下方に存在する前記保冷材を前記低温タンクの外部に搬出するため保冷材搬出用開口部を前記外槽側板および前記内槽側板の各側板に形成する保冷材搬出用開口部形成工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の保冷材除去方法。
【請求項6】
低温液体を貯蔵する内槽と、
前記内槽を囲う外槽と、
前記内槽と前記外槽との間に設けられ、粉状の保冷材が充填された保冷空間と、
を備えた低温タンクの保冷材除去システムであって、
前記保冷材除去システムは、
前記外槽の外槽側板に開口された開口部に挿入可能な吸引ホースと、
前記吸引ホースを介して前記内槽の内槽側板と前記外槽側板との間に存在する前記保冷材を吸引除去する吸引装置と、
前記開口部を通じて前記保冷材の堆積高さを含む堆積状態を測定する測定装置と、
を備え、
前記吸引ホースは、
前記測定装置により測定された前記堆積状態に応じて前記開口部よりも下方の位置で前記外槽側板に開口された下方開口部に挿入可能に構成される、
ことを特徴とする保冷材除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷材除去方法および保冷材除去システムに関し、特に、低温タンクの内槽と外槽との間に充填された粉状の保冷材を除去する保冷材除去方法および保冷材除去システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液化天然ガス(Liquefied Natural Gas、以下、「LNG」と称す)等の低温液体を貯蔵する地上式のタンクとして、円筒状に形成された二重殻タンクが知られている。
【0003】
現状、このような二重殻タンクでは、内外槽間の保冷空間(断熱空間)に、粉状の保冷材(例えば、真珠岩を焼成して発砲させたパーライト、以下、「粉状パーライト」と称す)が充填されたものが、主流となっている。
【0004】
ところで、二重殻タンクを解体する場合には、保冷材の飛散等を防止する観点から、これに先立ち、
(a)まず、保冷材を内外槽間から除去する、
(b)その後、内槽および外槽をバーナ等の溶断装置で順次切断して撤去する、
といった作業をおこなうのが一般的である。
【0005】
近年、このような保冷材を除去する手法として、例えば、特許文献1に記載の技術が提案されている。
この特許文献1に記載の技術は、吸込み真空法を用いて、
(a)屋根側の保冷材を外槽屋根板に設けられたマンホールを介して吸引除去する、
(b)その後、側部側の保冷材を外槽側板の下部側に設けられたマンホールを介して吸引除去する、
ように構成されたものである。
【0006】
このような技術によれば、内外槽間に充填された保冷材を効率よく除去することができそうである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、内槽側板と外槽側板との間の保冷空間(以下、「側部保冷空間」と称す)には、各種部材(例えば、この「側部保冷空間」に、いわゆるパーライトダイアフラムが設けられている場合にあっては、このパーライトダイアフラムと外槽側板とを接続するロッドや、外槽側板の内周面から突出するステフィナ(補強部材)、以下、これらを単に「各種部材」と称す)が高さ方向(例えば、40~60m)に沿って、多数設けられているのが一般的である。
【0009】
この点、特許文献1の技術は、保冷材を外槽側板の下部側から吸引除去しているため、「各種部材」上の保冷材までは除去しきれず、そのまま残存してしまうおそれがあるものといえる。
【0010】
すなわち、特許文献1の技術では、外槽側板および内槽側板(二重殻タンクの側部側)を解体した際に、「各種部材」上に残存する大量の「粉状パーライト」が大気中に飛散してしまう、といった問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その目的は、低温タンクの保冷空間に充填された粉状の保冷材をより確実に除去することが可能な保冷材除去方法および保冷材除去システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、本発明にかかる保冷材除去方法によれば、低温液体を貯蔵する内槽と、前記内槽を囲う外槽と、前記内槽と前記外槽との間に設けられ、粉状の保冷材が充填された保冷空間と、を備えた低温タンクの保冷材除去方法であって、前記保冷材除去方法は、前記外槽に開口された開口部に吸引ホースを挿入して前記内槽の内槽側板と前記外槽の外槽側板との間に存在する前記保冷材を吸引除去する第1保冷材除去工程と、前記開口部を通じて前記保冷材の堆積高さを含む堆積状態を測定する堆積状態測定工程と、前記堆積状態測定工程をおこなうことにより測定された前記堆積状態に応じて前記開口部よりも下方の位置で前記外槽側板に開口された下方開口部に吸引ホースを挿入して前記下方開口部よりも下方に存在する前記保冷材を吸引除去する第2保冷材除去工程と、を含む、ことにより解決される。
【0013】
また、上記課題は、本発明にかかる保冷材除去システムによれば、低温液体を貯蔵する内槽と、前記内槽を囲う外槽と、前記内槽と前記外槽との間に設けられ、粉状の保冷材が充填された保冷空間と、を備えた低温タンクの保冷材除去システムであって、前記保冷材除去システムは、前記外槽の外槽側板に開口された開口部に挿入可能な吸引ホースと、前記吸引ホースを介して前記内槽の内槽側板と前記外槽側板との間に存在する前記保冷材を吸引除去する吸引装置と、前記開口部を通じて前記保冷材の堆積高さを含む堆積状態を測定する測定装置と、を備え、前記吸引ホースは、前記測定装置により測定された前記堆積状態に応じて前記開口部よりも下方の位置で前記外槽側板に開口された下方開口部に挿入可能に構成される、ことによっても解決される。
【0014】
なお、ここでいう「低温液体」とは、いわゆる極低温または超低温の液体を意味し、「LNG」、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas、以下、「LPG」と称す)、液化水素、液化酸素およびアンモニアのほか、その他の流体(例えば、エチレンや液化窒素)をも包含する趣旨である。
【0015】
また、上記「保冷材」とは、断熱性を有する粉状の部材であればよく、例えば、上述した「粉状パーライト」が該当する。
【0016】
さらに、上記「保冷材の堆積高さを含む堆積状態を測定」する装置(「測定装置」)とは、開口部を通じて保冷材がどの程度堆積しているかを把握することができるものであればよく、例えば、レーザ光を照射して距離を計測することが可能なレーザ式の距離センサが該当する。
【0017】
上記本発明にかかる構成では、
(a)外槽側板の上部側に開口された開口部に吸引ホースを挿入して、「側部保冷空間」(外槽側板と内槽側板との間の保冷空間)に存在する保冷材を、上から順に吸引除去する、
(b)開口部を通じて、保冷材の堆積状態を(上方から)測定する、
(c)保冷材の堆積位置よりも上方の位置で外槽側板に新たな開口部(下方開口部)を形成する、
(d)下方開口部に吸引ホースを挿入して「側部保冷空間」に存在する保冷材を、上から順に吸引除去する、
(e)以降、上記(b)~(e)の作業を繰り返しおこなう、
ことができるように構成されている。
【0018】
すなわち、上記構成では、「側部保冷空間」内の保冷材が下方に向けて順に吸引除去されるように構成されているため、「側部保冷空間」内に設けられた「各種部材」上の保冷材を十分に除去することが可能である。
【0019】
したがって、上記構成では、「側部保冷空間」内の保冷材をほぼ完全に除去することができるため、内槽側板および外槽側板の解体(撤去)時に、大気中に飛散する保冷材の飛散量を確実に低減することが可能である。
【0020】
なお、上記保冷材除去方法にかかる発明においては、前記保冷材除去方法は、前記第2保冷材除去工程をおこなう前に、前記下方開口部を前記外槽側板に形成する下方開口部形成工程をさら含む、と好適である。
【0021】
また、上記保冷材除去方法にかかる発明においては、前記保冷材除去方法は、前記第2保冷材除去工程をおこなう前に、前記開口部に挿入された前記吸引ホースを引き抜いて前記下方開口部に挿入する吸引ホース挿入位置変更工程をさらに含む、と好適である
【0022】
さらに、上記保冷材除去方法にかかる発明においては、前記保冷材除去方法は、前記第2保冷材除去工程をおこなった後、前記吸引ホースを用いて前記内槽の内槽底板の下方に存在する前記保冷材を吸引除去する第3保冷材除去工程をさらに含む、と好適である。
この場合、前記保冷材除去方法は、前記第3保冷材除去工程をおこなう前に、前記内槽底板の下方に存在する前記保冷材を前記低温タンクの外部に搬出するため保冷材搬出用開口部を前記外槽側板および前記内槽側板の各側板に形成する保冷材搬出用開口部形成工程をさらに含む、とより好適である。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明にかかる保冷材除去方法にかかる発明によれば、比較的簡易な構成でありながらも、低温タンクの保冷空間に充填された粉状の保冷材をより確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態にかかる低温タンクの概要を説明するための概要図である。
【
図2】
図1における破線部分IIの要部拡大断面図である。
【
図3】
図1における破線部分IIIの要部拡大断面図である。
【
図5】本実施形態にかかる保冷材除去方法の作業の流れを示すフロー図である。
【
図6】
図5の保冷材除去方法における側部保冷材除去工程を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態にかかる低温タンクの概要を説明するための概要図、
図2は
図1における破線部分IIの要部拡大断面図、
図3は
図1における破線部分IIIの要部拡大断面図、
図4は
図3のIV―IV矢視断面図、
図5は本実施形態にかかる保冷材除去方法の作業の流れを説明するためのフロー図、
図6は
図5の保冷材除去方法における側部保冷材除去工程を説明するためのフロー図である。
【0026】
図1は、本実施形態にかかる保冷材除去システム1(
図2参照)およびこれを用いた保冷材除去方法が適用される低温タンク100を示したものである。なお、上記保冷材除去システム1と、保冷材除去方法と、低温タンク100とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「保冷材除去システム」と、「保冷材除去方法」と、「低温タンク」とに該当する。
【0027】
(低温タンク100の構成)
ここで、保冷材除去システム1および保冷材除去方法について説明する前に、本実施形態にかかる低温タンク100について説明する。
図1に示すように、低温タンク100は、地上式のいわゆる二重殻タンクであって、「LNG」を貯蔵する内槽110と、内槽110の周囲を囲むようにして設けられる外槽120と、内槽110と外槽120との間に形成される保冷空間Sとを備えている。なお、上記「LNG」と、内槽110と、外槽120と、保冷空間Sとが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「低温液体」と、「内槽」と、「外槽」と、「保冷空間」とに該当する。
【0028】
(内槽110)
図1~
図3に示すように、内槽110は、板状の金属部材(例えば、ニッケル鋼、ステンレス鋼およびアルミ合金)からなり、円状の内槽底板111と、円筒状の内槽側板112と、ドーム状の内槽屋根板113とを有している。なお、上記内槽底板111と、内槽側板112とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「内槽底板」と、「内槽側板」とに該当する。
【0029】
内槽底板111は、後述する底部リング124および複数の円筒ブロック132上に載置固定されている。また、内槽側板112は、内槽底板111の外周部から立設されるように接続される一方、内槽屋根板113は、円環状のナックルリング114を介して内槽側板112の上端部に接続されている。
【0030】
ここで、ナックルリング114について説明すると、このナックルリング114は、公知のもの(ナックルプレートともいう)と同様に、内槽側板112や内槽屋根板113(例えば、板厚:10mm~15mm)よりも板厚の金属部材(例えば、板厚:30mm~50mm)からなり、応力がとかく集中しやすい内槽屋根板113の外周部を補強するための部材(補強部材)である。
【0031】
(外槽120)
外槽120は、板状の金属部材(例えば、炭素鋼)からなり、内槽110と同様に、円状の外槽底板121と、円筒状の外槽側板122と、ドーム状の外槽屋根板123とを有している。なお、上記外槽側板122が特許請求の範囲に記載の「外槽側板」に該当する。
【0032】
外槽底板121は、基礎B(コンクリート基礎)上に載置固定され、その上面には、円環状の底部リング124と、この底部リング124の内周面側に敷き詰められる複数の円筒状のブロック(以下、単に、「円筒ブロック」と称す)132とが設けられている。
底部リング124および円筒ブロック132は、何れも、パーライトコンクリート(パーライトにセメントや砂等を混ぜたもの)からなり、内槽底板111を載置した状態で、これを下方から支持するとともに、内槽底板111と外槽底板121との間に保冷空間S(後述する底部保冷空間SB)を形成するためのものである。
【0033】
一方、外槽側板122は、内槽側板112との間に保冷空間S(後述する側部保冷空間SS)が形成されるように、内槽側板112から所定の間隔を空けた状態で、外槽底板121の外周部上に接続されている。
【0034】
他方、外槽屋根板123は、外槽側板122の上端部に接続され、外槽側板122と同様に、保冷空間S(後述する屋根部保冷空間SU)を有した状態で、内槽屋根板113に対向とするように配置される。
【0035】
なお、本実施形態にかかる外槽屋根板123には、その適宜位置に、保冷空間S(後述する屋根部保冷空間SU)内へ出入りするためのマンホール125が複数設置されている。
【0036】
(保冷空間S)
本実施形態にかかる保冷空間Sは、内槽底板111と外槽底板121との間に形成される底部保冷空間SBと、内槽側板112と外槽側板122との間に形成される側部保冷空間SSと、内槽屋根板113と外槽屋根板123との間に形成される屋根部保冷空間SUとを有している。
【0037】
(底部保冷空間SB)
図1および
図3に示すように、底部保冷空間SBには、上述したように、外槽底板121上に載置固定される底部リング124と、複数の円筒ブロック132とが配置されている。
また、円筒ブロック132の内部と、互い隣接する複数の円筒ブロック132の間の隙間とには、それぞれ、その内部に、粉状パーライト131が充填されている。なお、上記底部保冷空間SBに充填される粉状パーライト131が、特許請求の範囲に記載の「内槽底板」の下方に存在する(粉状の)「保冷材」に該当する。
【0038】
(側部保冷空間SS)
図1および
図2に示すように、側部保冷空間SSには、
(a)内槽側板112の外周面を覆うようにパーライトダイアフラム133が配置されるとともに、
(b)外槽側板122の内周面の適宜位置から突設されるステフィナ134(補強部材)や、このステフィナ134に固定されるロッド135等の「各種部材」が設けられている。なお、本実施形態では、パーライトダイアフラム133が設けられた低温タンク100に適用した場合を例示して説明するが、これに限られず、本発明は、このようなパーライトダイアフラム133が設けられていないタンクにも適用することが可能である。
【0039】
パーライトダイアフラム133は、板状の金属部材(例えば、板厚1mmのアルミニウム板)からなり、
(a)外槽屋根板123を下方から支持する鋼材(例えば、いわゆるH鋼)に、ロッド138を介して吊り下げ固定されるとともに、
(b)ロッド135のネジ部にボルト締めすることによって外槽側板122に支持固定されている。
【0040】
このように、本実施形態では、パーライトダイアフラム133を外槽側板122等に支持固定しなければならない必要性から、パーライトダイアフラム133が設けられていない低温タンク(二重殻タンク)に比して、側部保冷空間SSに配置される支持金物類(例えば、ステフィナ134やロッド135)の部品点数が多くなっている。
【0041】
本実施形態では、このパーライトダイアフラム133を境として、
(a)その内槽側板112側には、断熱材としてのグラスウール136が内槽側板112の外周面に貼設される一方、
(b)外槽側板122側には、粉状パーライト131が充填される、
ように構成されている。なお、上記(側部保冷空間SSに充填される)粉状パーライト131が、特許請求の範囲に記載の「内槽側板」と「外槽側板」との間に充填される(粉状の)「保冷材」に該当する。
【0042】
ここで、上述したように、側部保冷空間SSに、粉状パーライト131に加えて、グラスウール136を設けた理由について説明すると、これは、仮に、側部保冷空間SSに粉状パーライト131のみが充填されていたとすると、
(a)内槽110内に「LNG」が流入された場合(内槽110が冷やされた場合)、内槽110の熱収縮に伴って、粉状パーライト131が沈下しやすくなる一方、
(b)この状態で、内槽110から「LNG」が排出された場合(内槽110が温められた場合)、沈下した粉状パーライト131によって、内槽側板112に対して、内槽110の熱膨張を妨げる力が作用してしまい、
その結果、内槽側板112が破損等するおそれがあるからである。
【0043】
そこで、本実施形態では、パーライトダイアフラム133を境として、内槽側板112側にグラスウール136を、また、外槽側板122側に粉状パーライト131を、それぞれ、設けることで、断熱性能を確保したうえで、内槽110の熱収縮および熱膨張を許容することができるようにしている。
【0044】
なお、本実施形態では、グラスウール136を上方に、その内部への粉状パーライト131の侵入を防止するためのパーライト侵入防止部材137(例えば、布部材)が覆設されている。
【0045】
(屋根部保冷空間SU)
屋根部保冷空間SUには、マンホール125等を介して、粉状パーライト131が充填されている。
【0046】
(保冷材除去システム1の構成)
次に、保冷材除去システム1について
図2を参照しつつ説明する。
図2に示すように、保冷材除去システム1は、吸引装置(図示省略)と、吸引装置に接続される吸引ホース10と、距離センサ20とを備えている。なお、上記吸引装置と、吸引ホース10と、距離センサ20とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「吸引装置」と、「吸引ホース」と、「測定装置」とに該当する。
【0047】
(吸引装置)
吸引装置は、粉状パーライト131を吸引するための負圧を生じさせる装置で、例えば、公知のバキュームポンプを用いて構成することができるものである。
【0048】
(吸引ホース10)
吸引ホース10は、保冷空間Sに存在する粉状パーライト131を吸引除去するためのもので、例えば、樹脂製の蛇腹ホースを用いて構成することができるものである。
【0049】
(距離センサ20)
距離センサ20は、外槽側板122に形成された開口部(例えば、後述する上部開口部OUや下方開口部OL1)を通じて、粉状パーライト131の堆積高さを測定するための装置である。
このような距離センサ20としては、例えば、レーザ光を測定対象物(本実施形態では、粉状パーライト131)に向けて照射した後、その反射光を受光するまでの時間差に基づいて、測定対象物までの距離を演算する、いわゆるレーザ式の距離センサを用いることが可能である。なお、以下においては、距離センサ20が、レーザ式の距離センサであることを前提として説明するが、他の距離センサを用いることも可能である。
【0050】
詳しくは後述するが、本実施形態では、
(a)外槽側板122に形成された上部開口部OUに吸引ホース10を挿入して、側部保冷空間SSの上部側に存在する粉状パーライト131を吸引除去する、
(b)所定量の粉状パーライト131が吸引除去された後、距離センサ20を上部開口部OUに挿入して、粉状パーライト131の堆積高さを測定する、
(c)距離センサ20による測定結果が所定の値(例えば、上部開口部OUから粉状パーライト131までの距離が「5m」)に達すると、粉状パーライト131の堆積高さよりも若干高めの位置(例えば、粉状パーライト131の堆積位置から「1m」上方の位置)で外槽側板122に下方開口部OL1を形成する、
(d)下方開口部OL1に吸引ホース10を挿入して、側部保冷空間SS内に存在する粉状パーライト131をさらに吸引除去する、
(e)以降、上記(b)~(d)の作業と同様な作業を繰り返しおこなう、
ことで、側部保冷空間SS内の粉状パーライト131が除去されるように構成されている。
【0051】
(保冷材除去方法の構成)
次に、本実施形態にかかる保冷材除去システム1を用いた保冷材除去方法について
図1~
図6を参照しつつ説明する。なお、以下においては、
(a)低温タンク100の周囲に外部足場TSが既に組み立てられていること、また、
(b)保冷空間S(屋根部保冷空間SU、側部保冷空間SSおよび底部保冷空間SB)に存在する粉状パーライト131が吸引除去された後に、低温タンク100の解体作業がおこなわれること、
を前提として説明する。
【0052】
図5に示すように、本実施形態にかかる保冷材除去方法は、ステップS100の屋根部保冷材除去工程と、ステップS200の側部保冷材除去工程と、ステップS300の保冷材搬出用開口部形成工程と、ステップS400の底部保冷材除去工程とを備えている。
【0053】
(ステップS100)
図1、
図2および
図5に示すように、本実施形態にかかる保冷材除去方法は、ステップS100の屋根部保冷材除去工程をおこなうことから始まる。
【0054】
このステップS100の屋根部保冷材除去工程では、例えば、
(a)吸引装置に接続された吸引ホース10をマンホール125に挿入して、屋根部保冷空間SUに充填された粉状パーライト131をできる限り吸引除去する、
(b)その後、作業員が、マンホール125から屋根部保冷空間SUに入って、残留する粉状パーライト131を吸引ホース10で吸引除去する、
作業をおこなう。
【0055】
なお、本実施形態では、このステップS100の屋根部保冷材除去工程において、屋根部保冷空間SU内の粉状パーライト131に加え、側部保冷空間SSの上部付近に存在する粉状パーライト131の一部を吸引ホース10で吸引除去するように構成されている。
【0056】
本実施形態では、このようなステップS100の屋根部保冷材除去工程をおこなった後、次工程であるステップS200の側部保冷材除去工程がおこなわれるように構成されている。
【0057】
(ステップS200)
図5に示すように、ステップS200の側部保冷材除去工程では、側部保冷空間SS内の粉状パーライト131を除去する作業、具体的に、
図6に示すステップS201~ステップS209の作業をおこなう。
【0058】
(ステップS201)
図1、
図2および
図6に示すように、ステップS200の側部保冷材除去工程では、まず、ステップS201において、外槽側板122に上部開口部OUを形成する上部開口部形成工程をおこなうことから始まる。なお、上記上部開口部OUが特許請求の範囲に記載の「開口部」に該当する。
【0059】
具体的に、このステップS201の作業(上部開口部形成工程)では、外槽側板122の上部付近に、吸引ホース10および距離センサ20を挿入可能な上部開口部OUを形成する作業をおこなう。このような作業は、作業員が、外部足場TS側から所望の切断手段(例えば、いわゆるウォールソーカッターや溶断装置)を用いることによりおこなわれる。
本実施形態では、このようなステップS201の作業をおこなった後、次工程であるステップS202の作業がおこなわれるように構成されている。
【0060】
なお、上部開口部OUは、例えば、吸引ホース10および距離センサ20を同時に挿入することが可能な大きさであれば足りるため、作業員の作業負担等を考慮して、極力、その大きさを小さめとするのが好ましい。
【0061】
(ステップS202)
ステップS202では、外槽側板122に形成された上部開口部OUに吸引ホース10を挿入して、粉状パーライト131を吸引除去する作業(上部保冷材吸引工程)をおこなう。なお、上記ステップS202の作業が特許請求の範囲に記載の「第1保冷材除去工程」に該当する。
本実施形態では、このようなステップS202の作業をおこなった後、ステップS203の作業がおこなわれるように構成されている。
【0062】
(ステップS203)
ステップS203の作業では、上部開口部OUに距離センサ20を挿入して、粉状パーライト131の堆積高さを測定する作業(上部保冷材堆積状態測定工程)をおこなう。なお、上記ステップS203の作業が特許請求の範囲に記載の「堆積状態測定工程」に該当する。
本実施形態では、このようなステップS203の作業をおこなった後、次工程であるステップS204の作業がおこなわれるように構成されている。
【0063】
なお、本実施形態では、ステップS203の作業(上部保冷材堆積状態測定工程)を、ステップS202の作業(上部保冷材吸引工程)の後におこなったが、これらの作業を同時、すなわち、粉状パーライト131の堆積高さを測定しながら、これを吸引除去するように構成することも可能である。また、本実施形態では、ステップS203の作業において、粉状パーライト131の堆積高さを測定するように構成したが、これに加えて、撮像装置(例えば、CCDカメラ)を用いて粉状パーライト131の除去状態を確認するように構成することもできる。
【0064】
(ステップS204)
ステップS204では、上記ステップS203の作業で測定した粉状パーライト131の堆積高さ(上部開口部OUから粉状パーライト131の堆積位置までの距離)が、予め定めた距離(例えば、「5m」)を超えているか否かを確認する作業をおこなう。
本実施形態では、このようなステップS204の作業をおこなった結果、予め定めた距離を超えていることが確認された場合、次工程であるステップS205の作業がおこなわれる一方、予め定めた距離を超えていないことが確認された場合、上記ステップS202およびステップS203の作業を再度おこなうように構成されている。
【0065】
(ステップS205)
ステップS205では、上部開口部OUよりも低く、かつ、粉状パーライト131の堆積位置よりも高い位置で、外槽側板122に、吸引ホース10および距離センサ20を挿入可能な下方開口部OL1を形成する作業(下方開口部形成工程)をおこなう。なお、上記ステップS205の作業と、下方開口部OL1とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「下方開口部形成工程」と、「下方開口部」とに該当する。
【0066】
このような作業は、上記ステップS201の作業(上部開口部形成工程)と同様に、外部足場TS側から所望の切断工具を用いることによりおこなうことが可能である。
本実施形態では、このようなステップS205の作業をおこなった後、次工程であるステップS206の作業がおこなわれるように構成されている。
【0067】
(ステップS206)
ステップS206では、上記ステップS202の作業(上部保冷材吸引工程)と同様に、外槽側板122に形成された下方開口部OL1に吸引ホース10を挿入(上部開口部OUに挿入されていた吸引ホース10を引き抜いて下方開口部OL1に挿入)して、粉状パーライト131を吸引除去する作業(下方保冷材吸引工程)をおこなう。なお、上記下方開口部OL1に吸引ホース10を挿入する作業と、下方開口部OL1を介して粉状パーライト131を吸引除去する作業とが、特許請求の範囲に記載の「吸引ホース挿入位置変更工程」と、「第2保冷材除去工程」とに該当する。
本実施形態では、このようなステップS206の作業をおこなった後、次工程であるステップS207の作業がおこなわれるように構成されている。
【0068】
なお、本実施形態では、上部開口部OUおよび下方開口部OL1の各開口部に挿入される吸引ホース10として、同一のものを用いたが、上部開口部OU用の吸引ホース10および下方開口部OL1用の吸引ホース10といったように別のものを用いることも可能である。
【0069】
(ステップS207)
ステップS207の作業では、上記ステップS203の作業(上部保冷材堆積状態測定工程)と同様に、下方開口部OL1に距離センサ20を挿入して、粉状パーライト131の堆積高さを測定する作業(下方保冷材堆積状態測定工程)をおこなう。
本実施形態では、このようなステップS207の作業をおこなった後、次工程であるステップS208の作業がおこなわれるように構成されている。
【0070】
なお、本実施形態では、ステップS207の作業を、ステップS206の作業(下方保冷材吸引工程)後におこなったが、これらの作業を同時におこなうことも可能である。また、ステップS207の作業においては、粉状パーライト131の堆積高さの測定に加え、撮像装置を用いて粉状パーライト131の除去状態を確認するように構成することもできる。
【0071】
(ステップS208)
ステップS208の作業では、上記ステップS204の作業と同様に、上記ステップS207の作業で測定した粉状パーライト131の堆積高さ(下方開口部OL1から粉状パーライト131までの距離)が、予め定めた距離(例えば、「5m」)を超えているか否かを確認する作業をおこなう。
本実施形態では、このようなステップS208の作業をおこなった結果、予め定めた距離を超えていることが確認された場合、次工程であるステップS209の作業がおこなわれる一方、予め定めた距離を超えていないことが確認された場合、上記ステップS206およびステップS207の作業を再度おこなうように構成されている。
【0072】
(ステップS209)
ステップS209の作業では、側部保冷空間SS内の粉状パーライト131が下部まで除去されたか否かを確認する作業をおこなう。
本実施形態では、側部保冷空間SS内の粉状パーライト131の除去が完了していないことが確認されると、再度、上記ステップS205~ステップS208の作業が繰り返しおこなわれる一方、粉状パーライト131の除去が完了していることが確認されると、ステップS300の保冷材搬出用開口部形成工程(
図5参照)がおこなわれるように構成されている。
【0073】
ここで、ステップS209において、側部保冷空間SS内の粉状パーライト131の除去が完了していないと判断される場合について説明する。
例えば、低温タンク100の外槽側板122の高さが「40m」である場合において、
(a)上部開口部OUが形成される高さが「35m」、
(b)上部開口部OUと下方開口部OL1との間の高さ方向の距離が「5m」(下方開口部OL1が形成される高さが「30m」)、
(c)下方開口部OL1等の開口部を介して、吸引ホース10により吸引可能な距離(上部開口部OUや下方開口部OL1等の開口部からの距離)が「6m」、
であったとすると、下方開口部OL1を介して粉状パーライト131を吸引した状態で、未だ、側部保冷空間SS内には、高さ「24m」(「35m」-「5m」-「6m」)程度の粉状パーライト131が堆積しているため、ステップS209の作業においては、粉状パーライト131の除去が完了していない、と判断されることとなる。
【0074】
この場合、本実施形態では、ステップS205の作業(下方開口部形成工程)がおこなわれることによって、高さ「25m」の位置に、下方開口部OL2が形成され、その後、ステップS206~ステップS208の作業が繰り返し実行されるようになっている。
【0075】
なお、上記例では、側部保冷空間SS内の粉状パーライト131の除去が完了するまで、高さ「20m」、高さ「15m」、高さ「10m」および高さ「5m」の各位置に、下方開口部が形成されることとなる。
【0076】
(ステップS300)
図1、
図3および
図5に示すように、ステップS300の保冷材搬出用開口部形成工程では、内槽側板112および外槽側板122の各側板の下部側に、作業員または運搬車両が内槽110内に出入りすることが可能な保冷材搬出用開口部OWを形成する作業をおこなう。なお、上記ステップS300の保冷材搬出用開口部形成工程と、保冷材搬出用開口部OWとが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「保冷材搬出用開口部形成工程」と、「保冷材搬出用開口部」とに該当する。
【0077】
保冷材搬出用開口部OWは、主に、ステップS400の底部保冷材除去工程をおこなうことにより撤去された円筒ブロック132等を低温タンク100外に搬出するためのものである。なお、本実施形態では、側部保冷空間SSにパーライトダイアフラム133が設けられているため、ステップS300の保冷材搬出用開口部形成工程において、内槽側板112および外槽側板122に加え、パーライトダイアフラム133にも保冷材搬出用開口部OWが形成されるように構成されている。
本実施形態では、このようなステップS300の保冷材搬出用開口部形成工程をおこなった後、次工程であるステップS400の底部保冷材除去工程がおこなわれるように構成されている。
【0078】
(ステップS400)
ステップS400の底部保冷材除去工程では、保冷材搬出用開口部OWを介して、底部保冷空間SB内の粉状パーライト131および円筒ブロック132を低温タンク100外に搬出等する作業をおこなう。なお、底部保冷空間SB内の粉状パーライト131を除去する作業が、特許請求の範囲に記載の「第3保冷材除去工程」に該当する。
【0079】
具体的に、ステップS400の底部保冷材除去工程では、
(a)内槽底板111を撤去する、
(b)底部保冷空間SB内の粉状パーライト131を吸引ホース10で吸引除去する、
(c)円筒ブロック132を撤去する、
等の作業をおこなう。
【0080】
本実施形態では、このようなステップS400の底部保冷材除去工程がおこなわれることによって、本実施形態にかかる保冷材除去方法の作業が全て完了するように構成されている。
【0081】
その後、本実施形態では、外槽屋根板123および内槽屋根板113の解体(撤去)、外槽側板122および内槽側板112の解体(撤去)、および、外槽底板121の解体(撤去)といった順で作業がおこなわれるようになっている。
【0082】
以上のように、本実施形態では、屋根部保冷空間SUの粉状パーライト131を除去した後、
(a)外槽側板122の上部側に上部開口部OUを形成する(ステップS201の上部開口部形成工程)、
(b)上部開口部OUに吸引ホース10を挿入して、側部保冷空間SSの上部側の粉状パーライト131を吸引除去する(ステップS202の上部保冷材吸引工程)、
(c)上部開口部OUに距離センサ20を挿入して、粉状パーライト131の堆積高さを測定する(ステップS203の上部保冷材堆積状態確認工程)、
(d)粉状パーライト131の堆積高さ(上部開口部OUから粉状パーライト131の堆積位置までの距離)が予め定めた値に達していることを条件に、粉状パーライト131の堆積位置よりも上方の位置で、外槽側板122に下方開口部OL1を形成する(ステップS205の下方開口部形成工程)、
(e)下方開口部OL1に吸引ホース10を挿入して側部保冷空間SS内の粉状パーライト131を吸引除去する(ステップS206の下方保冷材吸引工程)、
(f)以降、上記(c)~(e)と同様な作業を繰り返しおこなう、
といった手順を踏むことで、側部保冷空間SS内の粉状パーライト131が除去されるように構成されている。
【0083】
すなわち、本実施形態では、側部保冷空間SSに存在する粉状パーライト131が下方に向けて順に吸引除去されるように構成されているため、側部保冷空間SS内に設けられた「各種部材」(例えば、ステフィナ134やロッド135)上の粉状パーライト131を十分に除去することが可能である。
【0084】
したがって、本実施形態では、側部保冷空間SSに存在する粉状パーライト131をほぼ完全に除去することができるため、外槽側板122および内槽側板112の解体(撤去)時に大気中に飛散する粉状パーライト131の飛散量を確実に低減することが可能である。
【0085】
なお、本実施形態では、外槽側板122に形成される開口部の高さ方向の距離(例えば、上部開口部OUと下方開口部OL1との間の高さ方向の距離や、下方開口部OL1と下方開口部OL2との間の高さ方向の距離)を短くすることで、側部保冷空間SS内の粉状パーライト131を、より一層、除去することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態では、側部保冷空間SSに存在する粉状パーライト131を除去した後、
(a)外槽側板122および内槽側板112の各側板の保冷材搬出用開口部OWを形成する(ステップS300の保冷材搬出用開口部形成工程)、
(b)内槽底板111を解体(撤去)した後、底部保冷空間SB内の粉状パーライト131を吸引ホース10で吸引除去する(ステップS400の底部保冷材除去工程)、
(c)その後、外槽屋根板123および内槽屋根板113、外槽側板122および内槽側板112、外槽底板121の順でこれらを解体(撤去)する、
ように構成されている。
【0087】
このため、本実施形態では、外槽底板121の解体(撤去)時においても、大気中への粉状パーライト131の飛散を抑制することが可能である。
【0088】
なお、上記実施形態では、外槽側板122の上部側に上部開口部OUを形成したが、例えば、これと同等の位置に開口部(例えば、点検用のマンホール)が既に設けられている場合や、外槽屋根板123のマンホール125を利用して粉状パーライト131を吸引除去することができる場合、この作業を省略することができる。
【0089】
同様に、外槽側板122に、高さ方向に所定の間隔を空けて開口部(例えば、点検用マンホール)が設けられている場合にあっては、これを利用することで、下方開口部OL1,OL2等を形成する作業を省略することも可能である。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述および図面により、本発明は限定されるものではない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実例および運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることはもちろんであることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0091】
1 保冷材除去システム
10 吸引ホース
20 距離センサ
100 低温タンク
110 内槽
111 内槽底板
112 内槽側板
113 内槽屋根板
114 ナックルリング
120 外槽
121 外槽底板
122 外槽側板
123 外槽屋根板
124 底部リング
125 マンホール
131 粉状パーライト
132 円筒ブロック
133 パーライトダイアフラム
134 ステフィナ
135 ロッド
136 グラスウール
137 パーライト侵入防止部材
138 ロッド
B 基礎
S 保冷空間
SB 底部保冷空間
SS 側部保冷空間
SU 屋根部保冷空間
OU 上部開口部
OL1,OL2 下方開口部
OW 保冷材搬出用開口部
TS 外部足場