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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】顔面保護マスク
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/10 20060101AFI20230427BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20230427BHJP
   A41D 13/015 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A63B71/10 Z
A41D13/05
A41D13/015 106
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019164601
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021040879
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000108258
【氏名又は名称】ゼット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】時枝 健一
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-142071(JP,U)
【文献】特開2016-112413(JP,A)
【文献】実開昭57-197978(JP,U)
【文献】登録実用新案第3219312(JP,U)
【文献】特開2006-192092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/00-71/16
A41D 13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の顔面を被覆する姿勢で着用者の両眼に対向する部位に目視用開口部を有するマスクフレームが備えられ、
前記マスクフレームには、左右方向に延びて前記目視用開口部の上縁を構成する眼上側横フレーム部と、左右方向に延びて前記目視用開口部の下縁を構成する眼下側横フレーム部とが備えられ、
前記眼上側横フレーム部と前記眼下側横フレーム部の上下方向の離れ寸法が前方側よりも後方側で小さくなるように、前記眼上側横フレーム部及び前記眼下側横フレーム部の断面形状が設定され、
前記眼上側横フレーム部及び前記眼下側横フレーム部の断面形状が、前方側に向かって凸となる略三角形に形成される顔面保護マスク。
【請求項2】
着用者の顔面を被覆する姿勢で着用者の両眼に対向する部位に目視用開口部を有するマスクフレームが備えられ、
前記マスクフレームには、左右方向に延びて前記目視用開口部の上縁を構成する眼上側横フレーム部と、左右方向に延びて前記目視用開口部の下縁を構成する眼下側横フレーム部とが備えられ、
前記眼上側横フレーム部と前記眼下側横フレーム部の上下方向の離れ寸法が前方側よりも後方側で小さくなるように、前記眼上側横フレーム部及び前記眼下側横フレーム部の断面形状が設定され、
前記眼上側横フレーム部の断面形状が、前方側に向かって凸となる略三角形に形成される顔面保護マスク。
【請求項3】
着用者の顔面を被覆する姿勢で着用者の両眼に対向する部位に目視用開口部を有するマスクフレームが備えられ、
前記マスクフレームには、左右方向に延びて前記目視用開口部の上縁を構成する眼上側横フレーム部と、左右方向に延びて前記目視用開口部の下縁を構成する眼下側横フレーム部とが備えられ、
前記眼上側横フレーム部と前記眼下側横フレーム部の上下方向の離れ寸法が前方側よりも後方側で小さくなるように、前記眼上側横フレーム部及び前記眼下側横フレーム部の断面形状が設定され、
前記眼下側横フレーム部の断面形状が、前方側に向かって凸となる略三角形に形成される顔面保護マスク。
【請求項4】
前記眼上側横フレーム部の下面が、前方側ほど上方側に位置する形状に構成される請求項1~3のいずれか1項に記載の顔面保護マスク。
【請求項5】
前記眼下側横フレーム部の上面が、前方側ほど下方側に位置する形状に構成される請求項1~4のいずれか1項に記載の顔面保護マスク。
【請求項6】
前記眼上側横フレーム部の長手方向の中間部に同一面上で接続される上部中央側縦フレーム部、及び、前記眼下側横フレーム部の長手方向の中間部に同一面上で接続される下部中央側縦フレーム部の一方又は両方の断面形状が、左右幅よりも前後幅を大とする形状に形成される請求項1~のいずれか1項に記載の顔面保護マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球等のスポーツに好適に用いられる顔面保護マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の顔面保護マスクでは、例えば、特許文献1、2に示すように、着用者の顔面を被覆する姿勢で着用者の両眼に対向する部位に目視用開口部を有するマスクフレームが備えられる。マスクフレームには、左右方向に延びて目視用開口部の上縁を構成する眼上側横フレーム部と、左右方向に延びて前記目視用開口部の下縁を構成する眼下側横フレーム部とが備えられる。眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の関係により目視用開口部の上下方向の幅寸法が決定され、その結果、目視用開口部を通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角が決定される。
なお、特許文献1の顔面保護マスクでは、眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の断面形状が略円形に構成され、特許文献2の顔面保護マスクでは、眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の断面形状がやや前後方向に長い略長方形に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-12039号公報
【文献】特許第6063028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような顔面保護マスクにおいて、目視用開口部を通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角を拡大すれば、野球等のスポーツのプレーを一層行い易くすることができる。
しかしながら、野球ボール等の障害物が目視用開口部に衝突したときに着用者の両眼に障害物が当たらない安全上の観点から、目視用開口部Aの上下方向の幅寸法(つまり、眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部との上下方向の離れ寸法)が設定寸法L1(図4参照)に規定されている。また、着用者の両眼から目視用開口部までの距離(着用者の眼と眼上側横フレーム部及び眼下側横フレーム部との前後方向の離れ寸法)も設定寸法L2(図4参照)に規定されている。更に、必要強度を確保する強度上の観点から眼上側横フレーム部及び眼下側横フレーム部の断面積を変更するにも限度がある。
そのため、安全上の上記設定寸法L1,L2、及び、強度上の必要断面積を確保しながら、着用者の上下方向の視野角を拡大することが望まれる。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、目視用開口部の上下に備えられる眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部との上下方向の離れ寸法、着用者の眼と眼上側横フレーム部及び眼下側横フレーム部との前後方向の離れ寸法、眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の断面積を安全上及び強度上の適切なものに設定しながら、目視用開口部を通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角を拡大することができる顔面保護マスクを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、棒状の多数のフレーム部にて着用者の顔面の前方を被覆自在で、且つ、その被覆状態で着用者の両眼に対向する部位に目視用開口部を有する形状に構成され、
前記フレーム部として、左右方向に延びて前記目視用開口部の上縁を構成する眼上側横フレーム部と、左右方向に延びて前記目視用開口部の下縁を構成する眼下側横フレーム部とが備えられ、
前記眼上側横フレーム部と前記眼下側横フレーム部の上下方向の離れ寸法が前方側よりも後方側で小さくなるように、前記眼上側横フレーム部及び前記眼下側横フレーム部の断面形状が設定される点にある。
【0007】
本構成によれば、上述の如く、眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の断面形状を設定することにより、眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の必要断面積を確保しながら、眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の上下方向の離れ寸法が最も小さくて安全上の設定寸法を維持する必要のある最狭位置を後方側の着用者に近い側に配置し、それよりも上下方向の離れ寸法の大きな位置を前方側に配置することができる。
そのため、眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の上下方向の離れ寸法が最も小さな最狭位置を前後中央側や前方側等の着用者から遠い側に配置される場合に比べて、目視用開口部を通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角を拡大することができる。
【0008】
したがって、目視用開口部の上下に備えられる眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部との上下方向の離れ寸法、着用者の眼と眼上側横フレーム部及び眼下側横フレーム部との前後方向の離れ寸法、眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の断面積を安全上及び強度上の適切なものに設定しながら、目視用開口部を通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角を拡大することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記眼上側横フレーム部の下面が、前方側ほど上方側に位置する形状に構成される点にある。
【0010】
本構成によれば、目視用開口部の上方に備えられる眼上側横フレーム部の下面を前方側ほど上方側に位置する形状にすることにより、当該眼上側横フレーム部の下面によって目視用開口部を通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角の上向き側の限度角(仰角)が縮小されるのを抑制することができ、着用者の上向きの視界を良好なものとすることができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記眼下側横フレーム部の上面が、前方側ほど下方側に位置する形状に構成される点にある。
【0012】
本構成によれば、目視用開口部の下方に備えられる眼下側横フレーム部の上面を前方側ほど下方側に位置する形状にすることにより、当該眼下側横フレーム部の上面によって目視用開口部を通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角の下向き側の限度角(俯角)が縮小されるのを抑制することができ、着用者の下向きの視界を良好なものとすることができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記眼上側横フレーム部及び前記眼下側横フレーム部の断面形状が、前方側に向かって凸となる略三角形に形成される点にある。
【0014】
本構成によれば、安全性を確保しながら、目視用開口部を通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角を拡大することができるという上述の優れた効果を、眼上側横フレーム部及び眼下側横フレーム部の断面形状を前方側に向かって凸となる略三角形とするシンプルな構造にて実現することができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記眼上側横フレーム部の長手方向の中間部に同一面上で接続される上部中央側縦フレーム部、及び、前記眼下側横フレーム部の長手方向の中間部に同一面上で接続される下部中央側縦フレーム部の一方又は両方の断面形状が、左右幅よりも前後幅を大とする形状に形成される点にある。
【0016】
本構成によれば、眼上側横フレーム部の長手方向の中間部に同一面上で接続される上部中央側縦フレーム部、及び、眼下側横フレーム部の長手方向の中間部に同一面上で接続される下部中央側縦フレーム部の一方又は両方の断面形状が、左右幅よりも前後幅を大とする前後方向の強度が高い形状であるので、フレーム部どうしを同一面上で接続するスマートなフレーム形状を構成しながら、前方からのボール等の衝突による目上側横フレーム部や目下側横フレーム部に変形やフレーム接続箇所の破損等を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】顔面保護マスクの使用状態を示す側面断面図
図2】顔面保護マスクのマスクフレームの斜視図
図3】顔面保護マスクのマスクフレームの正面図
図4】着用者の眼と眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の関係を示す図
図5】上部中央側縦フレーム部と下部中央側縦フレーム部の断面形状を示す図
図6】別実施形態の顔面保護マスクにおける着用者の眼と眼上側横フレーム部と眼下側横フレーム部の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の顔面保護マスクの実施形態を図面に基づいて説明する。
この顔面保護マスクMは、野球のキャッチャーの顔面を保護するマスクとして構成され、図1図3に示すように、着用者の顔面の前方を被覆自在で、且つ、その被覆状態で着用者の両眼に対向する部位に目視用開口部Aを有する形状に構成されるマスクフレーム1が主要構成として備えられる。マスクフレーム1には、着用者の顔面を保護する前方膨出形状の本体フレーム部位2と、本体フレーム部位2の上端から上方に突出する頂部保護フレーム部位3と、本体フレーム部位2の左右両端から左右外方に突出して着用者の耳を保護する左右の耳保護フレーム部位4とが一体的に備えられる。
【0019】
図1に示すように、本体フレーム部位2の裏面側の下側部には、着用者の顔面の顎部に当て付けられる顎部用緩衝パット5が取り付けられ、本体フレーム部位2の裏面側の上側部には、着用者の顔面の額部に当て付けられる額部用緩衝パット6が取り付けられる。また、頂部保護フレーム部位3と左右の耳保護フレーム部位4とに亘って装着ベルト7が取り付けられる。
【0020】
図2及び図3に示すように、本体フレーム部位2は、外周部を構成する環状の外周フレーム部21と、外周フレーム部21の内部で左右方向に延びる多数の横フレーム部22と、外周フレーム部21の内部で上下方向に延びる多数の縦フレーム部23とを備えて構成される。
【0021】
なお、マスクフレーム1は、3Dプリンター等により金属素材の一例であるチタン合金にて一体成形することができ、本体フレーム部位2,頂部保護フレーム部位3,耳保護フレーム部位4が同一面上で接続され、本体フレーム部位2を構成する外周フレーム部21,横フレーム22,縦フレーム部23が同一面上で接続される形状に構成される。ちなみに、マスクフレーム1は、金属素材に限らず、ポリカーボネ-ト等の樹脂素材で一体成形したり、インサート成形や複数パーツの接着等により異素材(例えば金属素材と樹脂素材等)で一体成形してもよい。
【0022】
本体フレーム部位2の目視用開口部Aの上下には、左右方向に延びる横フレーム部22として、目視用開口部Aの上縁を構成する眼上側横フレーム部22Aと、目視用開口部Aの下縁を構成する眼下側横フレーム部22Bとが備えられる。眼上側横フレーム部22Aと眼下側横フレーム部22Bは、例えば、他の横フレーム部22や縦フレーム部23、外周フレーム部21よりも大断面に構成される。
眼上側横フレーム部22Aと眼下側横フレーム部22Bの関係により目視用開口部Aの上下幅が決定され、目視用開口部Aを通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角が決定される。この上下方向の視野角を拡大すれば、野球等のスポーツのプレーを一層行い易くすることができる。
【0023】
上述の如く、野球ボール等の障害物が目視用開口部Aに衝突したときに着用者の両眼に障害物が当たらない安全上の観点から、目視用開口部Aの上下幅(つまり、眼上側横フレーム部22Aと眼下側横フレーム部22Bとの上下方向の離れ寸法)は設定寸法L1(図4参照)に規定されている。また、着用者の両眼から目視用開口部Aまでの距離(着用者の眼と眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bとの前後方向の離れ寸法)は設定寸法L2(図4参照)に規定されている。更に、強度上の問題から眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの断面積を変更するにも限度がある。
【0024】
そこで、本発明の顔面保護マスクMでは、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの断面形状を適切に設定することにより、安全上の上記の設定寸法L1,L2、及び、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの強度上の必要断面積を確保しながら、目視用開口部Aを通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角を拡大するようにしている。
【0025】
具体的には、眼上側横フレーム部22Aと眼下側横フレーム部22Bの上下方向の離れ寸法が前方側よりも後方側(着用者側)で小さくなるように、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの断面形状が設定される。図1及び図4に示す実施例では、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの断面形状が、前方側に向かって凸となる略三角形、本実施形態では水平面に対称な略二等辺三角形に形成される。
【0026】
図4中に仮想線(一転鎖線)で示すように、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの断面形状が円形とされた比較例では、眼上側横フレーム部22Aと眼下側横フレーム部22Bの上下方向の離れ寸法が最も小さくなる目視用開口部Aの最狭位置が、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの前後中央位置Paとなる。そして、当該前後中央位置Paでの眼上側横フレーム部22Aと眼下側横フレーム部22Bの上下方向の離れ寸法を設定寸法L1とし、着用者の眼から眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bまでの前後方向の離れ寸法を設定寸法L2とすると、目視用開口部Aを通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角はθaとなる。
【0027】
これに対し、図4中に実線で示す本実施形態では、眼上側横フレーム部22Aと眼下側横フレーム部22Bの上下方向の離れ寸法が最も小さくなる目視用開口部Aの最狭位置が、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの前後中央位置Paよりも後方側の位置Pb(着用者側の位置)となる。
そして、当該後方側の位置Pbでの上下方向の離れ寸法を設定寸法L1とし、着用者の眼から眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bまでの前後方向の離れ寸法をL2とすると、目視用開口部Aを通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角は比較例のθaよりも大きなθbとなり、安全上の上記の設定寸法L1,L2や眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの強度上の必要断面積を確保しながら、上下方向の視野角が拡大される。
【0028】
図4に示すように、眼上側横フレーム部22Aの下面22aが、前方側ほど上方側に位置する形状の一例として、前方側ほど上方側に位置する傾斜面に構成される。この眼上側横フレーム部22Aの下面22aの傾斜角(仰角)は、好ましくは、上述した着用者の上下方向の視野角の上向き側の限度角である仰角αと同等又はそれよりも大きな角度(急傾斜)に構成することができる。このようにすることで、眼上側横フレーム部22Aの下面22aによって目視用開口部Aを通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角の上向き側の限度角(仰角α)が縮小されるのを確実に回避することができ、着用者の上向きの視界を特に良好なものとすることができる。
【0029】
また、眼下側横フレーム部22Bの上面22cが、前方側ほど下方側に位置する形状の一例として、前方側ほど下方側に位置する傾斜面に構成される。この眼下側横フレーム部22Bの上面22cの傾斜角(俯角)は、好ましくは、上述した着用者の上下方向の視野角の下向き側の限度角である俯角βと同等又はそれよりも大きな角度(急傾斜)に構成することができる。このようにすることで、眼下側横フレーム部22Bの上面22cによって目視用開口部Aを通じて着用者が目視可能な上下方向の視野角の下向き側の限度角(俯角β)が縮小されるのを確実に回避することができ、着用者の下向きの視界を特に良好なものとすることができる。
【0030】
眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの断面形状は、上述の如く、前方側に向かって凸となる略三角形、本実施形態では、左右幅よりも前後幅を大とし、水平面に対称な略二等辺三角形に形成される。つまり、眼上側横フレーム部22Aは、その下面22aが前方側ほど上方側に位置する傾斜面に構成されるのに対して、その上面22bが前方側ほど下方側に位置する傾斜面に構成される。また、眼下側横フレーム部22Bは、その上面22cが前方側ほど下方側に位置する傾斜面に構成されるのに対して、その下面22dが、前方側ほど下方側に位置する傾斜面に構成される。このような形状とすることで、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bは、野球ボール等による斜め上方側からの衝撃と斜め下方側からの衝撃の両方に対応できる強度を実現している。
【0031】
なお、図示例では、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bは、中実なフレームとして構成され、その着用者側の面である後面に軽量化を図るための肉盗みとしての凹部22eが形成されているが、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bを、中空なフレームとして構成してもよい。
【0032】
図2図3に示すように、本体フレーム部位2の目視用開口部Aの左右には、上下方向に延びる縦フレーム部23として、目視用開口部Aの左右両横縁を構成する左右の眼横側縦フレーム部23Aが備えられる。また、本体フレーム部位2の目視用開口部Aの四隅には、目視用開口部Aの形状を維持するための補強用の斜めフレーム部24が備えられる。
【0033】
本体フレーム部位2の上部側で左右方向の中央側には、上下方向に延びる縦フレーム部23として、外周フレーム部21と眼上側横フレーム部22Aの長手方向の中間部とに亘る左右一対(複数本の一例)の上部中央側縦フレーム部23Bが備えられる。
また、本体フレーム部位2の下部側で左右方向の中央側には、上下方向に延びる縦フレーム部23として、外周フレーム部21と眼下側横フレーム部22Bの長手方向の中間部とに亘る左右一対の(複数本の一例)の下部中央側縦フレーム部23Cが備えられる。
【0034】
これらの上部中央側縦フレーム部23B及び下部中央側縦フレーム部23Cは、例えば、他の縦フレーム部23よりも大断面に構成される。また、図5に示すように、上部中央側縦フレーム部23Bの少なくとも眼上側横フレーム部22A側の部位の断面形状、及び、下部中央側縦フレーム部23Cの少なくとも眼下側横フレーム部22B側の部位の断面形状が、左右幅よりも前後幅を大とする楕円形等の前後方向の強度が高い形状に構成される。これら中央側縦フレーム部23B,23Cの断面形状の前後幅は、例えば、図1に示すように、眼上側横フレーム部22Aや眼下側横フレーム部23Aに近づくほど大きくなるように構成される。そして、図2図3に示すように、眼上側横フレーム部22Aと上部中央側縦フレーム部23Bとの同一面上の接続箇所(交差箇所)の左右両脇、及び、眼下側横フレーム部22Bと下部中央側縦フレーム部23Cとの同一面上の接続箇所(交差箇所)の左右両脇には、当該接続箇所を補強する補強リブ25が備えられる。
【0035】
本体フレーム部位2の上部側で左右方向の外周側には、上下方向に延びる縦フレーム部23として、眼上側横フレーム部22Aの上方で隣接する横フレーム部22と眼上側横フレーム部22Aの長手方向の端部側とに亘る左右一対(複数本の一例)の上部外周側縦フレーム部23Dが備えられる。この左右の上部外周側縦フレーム部23Dは、目視用開口部Aの左右両横縁を構成する左右の眼横側縦フレーム部23Aよりも左右中央側に配置され、その下端が眼上側横フレーム部22Aと斜めフレーム部24の接続部位に接続される。
【0036】
また、本体フレーム部位2の下部側で左右方向の外周側には、上下方向に延びる縦フレーム部23として、外周フレーム部21と眼下側横フレーム部22Bの長手方向の端部側とに亘る左右一対(複数本の一例)の下部外周側縦フレーム部23Eが備えられる。この左右の下部外周側縦フレーム部23Eは、目視用開口部Aの左右両横縁を構成する左右の眼横側縦フレーム部23Aよりも左右中央側に配置され、その上端が眼下側横フレーム部22Bと斜めフレーム部24の接続部位に接続される。
【0037】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0038】
(1)上記実施形態では、図4に示すように、眼上側横フレーム部22A及び眼下側横フレーム部22Bの断面形状が、水平面を対称とする略二等辺三角形に形成される場合を例に示したが、例えば、図6に示すように、略直角三角形に形成されていてもよい。
この場合、図6に示すように、眼上側横フレーム部22Aは、その下面22aが前方側ほど上方側に位置する傾斜面に構成されるのに対して、その上面22bが水平面に構成される。また、眼下側横フレーム部22Bは、その上面22cが前方側ほど下方側に位置する傾斜面に構成されるのに対して、その下面22dが、水平面に構成される。
【0039】
(2)上記実施形態では、眼上側横フレーム部22Aの下面22aが、前方側ほど上方側に位置する形状に形成され、且つ、眼下側横フレーム部22Bの上面22cが、前方側ほど下方側に位置する形状に構成される場合を例に示したが、眼上側横フレーム部22Aの下面22aと眼下側横フレーム部22Bの上面22cのいずれか一方が上記形状に形成されていてもよい。
【0040】
(3)上記実施形態では、眼上側横フレーム部22Aの下面22aの形状として、前方側ほど上方側に位置する傾斜面を例に示したが、前方側ほど上方側に位置する階段状等の形状であってもよい。同様に、上記実施形態では、眼下側横フレーム部22Bの上面22cの形状として、前方側ほど下方側に位置する傾斜面を例に示したが、前方側ほど下方側に位置する階段状等の形状であってもよい。
【0041】
(4)上記実施形態では、上部中央側縦フレーム部23B、及び、下部中央側縦フレーム部23Cの両方の断面形状が、左右幅よりも前後幅を大とする形状に形成される場合を例に示したが、上部中央側縦フレーム部23B、及び、下部中央側縦フレーム部23Cの一方の断面形状が、左右幅よりも前後幅を大とする形状に形成されていてもよい。
【0042】
(5)本発明は、前述の実施形態で示した野球のキャッチャー用のマスクに限らず、野球の審判用のマスク、野球以外の他の球技用のマスク、格闘技用のマスクなど、顔面を保護する各種のマスクに適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
M 顔面保護マスク
1 マスクフレーム
22A 眼上側横フレーム部
22B 眼下側横フレーム部
22a 眼上側横フレーム部の下面
22c 眼下側横フレーム部の上面
23B 上部中央側縦フレーム部
23C 下部中央側縦フレーム部
A 目視用開口部

図1
図2
図3
図4
図5
図6