(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】プレスブレーキの金型誤装着検出装置及び金型誤装着検出方法
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20230427BHJP
B21D 37/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B21D5/02 P
B21D5/02 F
B21D37/00 B
(21)【出願番号】P 2019166132
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】仙波 晃
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-061879(JP,A)
【文献】特開2014-024118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B21D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品に設定されている複数の曲げ線を所定の金型を用いて順に曲げ加工する際に、各曲げ線
を曲げるために用いられる
、加工プログラムで設定されている金型の金型長さを仮想的に延長したときの、部品と金型とが干渉する干渉領域を求める干渉領域計算部と、
前記金型を金型ホルダに取り付ける左右方向の位置を示す、前記加工プログラムで設定されている金型ステーションの位置と、前記干渉領域とに基づいて、前記金型ホルダに金型を取り付けることができない前記金型ホルダの左右方向の第1の座標範囲を計算する座標範囲計算部と、
自動金型交換機が前記金型ホルダに取り付けた金型以外の金型である、オペレータが前記金型ホルダに追加で取り付けた追加金型の、前記金型ホルダの左右方向の左端部の座標値から右端部の座標値までの範囲である第2の座標範囲を検出する金型装着位置検出部と、
前記第1の座標範囲と前記第2の座標範囲とが重なっているか否か検出し、
前記第1の座標範囲と前記第2の座標範囲とが重なっていることを検出したとき、前記追加金型は誤装着された金型であると判定する重なり検出部と、
を備えるプレスブレーキの金型誤装着検出装置。
【請求項2】
前記重なり検出部が前記追加金型は誤装着された金型であると判定したとき、エラーが発生した旨を表示部に表示するよう制御する表示制御部をさらに備える請求項
1に記載のプレスブレーキの金型誤装着検出装置。
【請求項3】
前記重なり検出部が前記追加金型は誤装着された金型であると判定したとき、前記部品の曲げ加工を中止するよう曲げ加工実行部を制御す
る請求項
1または2に記載のプレスブレーキの金型誤装着検出装置。
【請求項4】
プレスブレーキを制御する制御装置が、
部品に設定されている複数の曲げ線を所定の金型を用いて順に曲げ加工する際に、各曲げ線
を曲げるために用いられる
、加工プログラムで設定されている金型の金型長さを仮想的に延長したときの、部品と金型とが干渉する干渉領域を求め、
前記金型を金型ホルダに取り付ける左右方向の位置を示す、前記加工プログラムで設定されている金型ステーションの位置と、前記干渉領域とに基づいて、前記金型ホルダに金型を取り付けることができない前記金型ホルダの左右方向の第1の座標範囲を計算し、
自動金型交換機が前記金型ホルダに取り付けた金型以外の金型である、オペレータが前記金型ホルダに追加で取り付けた追加金型の、前記金型ホルダの左右方向の左端部の座標値から右端部の座標値までの範囲である第2の座標範囲を検出し、
前記第1の座標範囲と前記第2の座標範囲とが重なっているか否か検出し、
前記第1の座標範囲と前記第2の座標範囲とが重なっていることを検出したとき、前記追加金型は誤装着された金型であると判定する
プレスブレーキの金型誤装着検出方法。
【請求項5】
前記制御装置が前記追加金型は誤装着された金型であると判定したとき、エラーが発生した旨を表示部に表示する請求項
4に記載のプレスブレーキの金型誤装着検出方法。
【請求項6】
前記制御装置が前記追加金型は誤装着された金型であると判定したとき、前記部品の曲げ加工を中止する請求項
4または5に記載のプレスブレーキの金型誤装着検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキの金型誤装着検出装置及び金型誤装着検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキは、上部テーブルに設けられたパンチホルダにパンチを装着し、下部テーブルに設けられたダイホルダにダイを装着する。プレスブレーキは、上部テーブルを下部テーブルに向けて下降させることによって、板金をパンチとダイとで挟んで折り曲げる。オペレータが金型(パンチまたはダイ)を金型ホルダ(パンチホルダまたはダイホルダ)に装着する代わりに、ATC(Automatic Tool Changer)と称される自動金型交換機が、板金を曲げ加工するのに必要な金型を金型ホルダに装着することがある(特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-173172号公報
【文献】特開2014-24118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定の部品を作製するためにATCが金型を金型ホルダに装着した状態で、さらに、オペレータが同じ部品の曲げ加工で用いられる他の金型、または、他の部品の曲げ加工で用いられる他の金型を金型ホルダに追加で取り付けることがある。このとき、オペレータが本来装着してはいけない金型ホルダの位置に追加金型を取り付けてしまい、部品の曲げ加工が実行されてしまうと、部品または追加金型が破損することがある。
【0005】
本発明は、オペレータが金型ホルダに取り付けた追加金型の誤装着を検出することができるプレスブレーキの金型誤装着検出装置及び金型誤装着検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、部品に設定されている複数の曲げ線を所定の金型を用いて順に曲げ加工する際に、各曲げ線を曲げるために用いられる、加工プログラムで設定されている金型の金型長さを仮想的に延長したときの、部品と金型とが干渉する干渉領域を求める干渉領域計算部と、前記金型を金型ホルダに取り付ける左右方向の位置を示す、前記加工プログラムで設定されている金型ステーションの位置と、前記干渉領域とに基づいて、前記金型ホルダに金型を取り付けることができない前記金型ホルダの左右方向の第1の座標範囲を計算する座標範囲計算部と、自動金型交換機が前記金型ホルダに取り付けた金型以外の金型である、オペレータが前記金型ホルダに追加で取り付けた追加金型の、前記金型ホルダの左右方向の左端部の座標値から右端部の座標値までの範囲である第2の座標範囲を検出する金型装着位置検出部と、前記第1の座標範囲と前記第2の座標範囲とが重なっているか否か検出し、前記第1の座標範囲と前記第2の座標範囲とが重なっていることを検出したとき、前記追加金型は誤装着された金型であると判定する重なり検出部とを備えるプレスブレーキの金型誤装着検出装置を提供する。
【0007】
本発明は、プレスブレーキを制御する制御装置が、部品に設定されている複数の曲げ線を所定の金型を用いて順に曲げ加工する際に、各曲げ線を曲げるために用いられる、加工プログラムで設定されている金型の金型長さを仮想的に延長したときの、部品と金型とが干渉する干渉領域を求め、前記金型を金型ホルダに取り付ける左右方向の位置を示す、前記加工プログラムで設定されている金型ステーションの位置と、前記干渉領域とに基づいて、前記金型ホルダに金型を取り付けることができない前記金型ホルダの左右方向の第1の座標範囲を計算し、自動金型交換機が前記金型ホルダに取り付けた金型以外の金型である、オペレータが前記金型ホルダに追加で取り付けた追加金型の、前記金型ホルダの左右方向の左端部の座標値から右端部の座標値までの範囲である第2の座標範囲を検出し、前記第1の座標範囲と前記第2の座標範囲とが重なっているか否か検出し、前記第1の座標範囲と前記第2の座標範囲とが重なっていることを検出したとき、前記追加金型は誤装着された金型であると判定するプレスブレーキの金型誤装着検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプレスブレーキの金型誤装着検出装置及び金型誤装着検出方法によれば、オペレータが金型ホルダに取り付けた追加金型の誤装着を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の金型誤装着検出装置を備えるプレスブレーキ100の構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示すデータ管理サーバ20の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す加工プログラム作成装置30が実行する加工プログラムの作成処理を示すフローチャートである。
【
図4】プレスブレーキ100が曲げ加工する部品の一例である部品P1を示す平面図である。
【
図5】
図4に示す部品P1の2つの曲げ線BL1及びBL2の曲げ工程で使用する2か所の金型ステーションを示す平面図である。
【
図6】部品P1の2つの曲げ工程における曲げ位置を示す平面図である。
【
図7】一実施形態の金型誤装着検出方法を含む、
図1に示すNC装置40が実行する部品の曲げ加工の処理を示すフローチャートである。
【
図8】干渉領域の計算処理の基本モデルを示す斜視図である。
【
図9】部品P1を曲げ線BL1で曲げる際の干渉領域の計算結果を示す平面図である。
【
図10】
図7に示すステップS16の詳細な処理を示すフローチャートである。
【
図11】部品P1を曲げ線BL1で曲げる際の金型ホルダに対する金型の取り付け位置に対応して、
図9で求めた干渉領域を金型ホルダの長手方向の軸上に反映させた状態を示す図である。
【
図12】一実施形態の金型誤装着検出装置を実現するNC装置40の内部構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態のプレスブレーキの金型誤装着検出装置及び金型誤装着検出方法について、添付図面を参照して説明する。
図1において、プレスブレーキ100は、上下動自在の上部テーブル11と、位置が固定された下方テーブル13を備える。上部テーブル11の下方端部には、パンチTpを取り付けるためのパンチホルダ12が設けられている。下方テーブル13の上端部には、ダイTdを取り付けるためのダイホルダ14が設けられている。パンチTp及びダイTdを金型と称することがあり、パンチホルダ12及びダイホルダ14を金型ホルダと称することがある。
【0011】
ダイTd上には、所定の製品を作製するために折り曲げようとする板金Wが置かれている。図示していないオペレータが板金Wを把持してダイTd上に置くことがあり、図示していないロボットが板金Wを把持してダイTd上に置くことがある。プレスブレーキ100は、板金Wを位置決めするためのバックゲージ15を備える。バックゲージ15は一対の突き当て150を有する。板金Wの高さ方向の位置及び板金Wを曲げる位置に対応して突き当て150が移動するように構成されている。板金Wの奥側の端部は突き当て150に突き当てられて、位置決めされる。
【0012】
プレスブレーキ100は、操作パネル16を備える。操作パネル16は、各種の情報を表示する表示部161と、複数の操作ボタンを有する操作部162とを有する。操作部162は、曲げ加工を開始するときに押下される加工開始ボタン1620を有する。
【0013】
NC装置40は、プレスブレーキ100の全体的な動作を制御する。具体的は、NC装置40は上部テーブル11の昇降を制御し、バックゲージ15を制御する。NC装置40は、プレスブレーキ100を制御する制御装置の一例である。
【0014】
プレスブレーキ100は、金型装着位置検出部50を備える。NC装置40及び金型装着位置検出部50は、プレスブレーキ100の構成として設けられている。金型装着位置検出部50は、NC装置40の外部に設けられていてもよいし、NC装置40内に設けられていてもよい。NC装置40の外部に設けた構成とNC装置40とが、金型装着位置検出部50を構成していてもよい。一例として、特許文献2に記載されている構成を金型装着位置検出部50として採用することができる。
【0015】
NC装置40は、データ管理サーバ20と接続されている。加工プログラム作成装置30も、データ管理サーバ20と接続されている。NC装置40及び加工プログラム作成装置30は、ネットワークを介してデータ管理サーバ20と接続されていてもよい。加工プログラム作成装置30は、CAM(Computer Aided Manufacturing)として機能するコンピュータ機器によって構成される。
【0016】
図2に示すように、データ管理サーバ20は、部品データ管理データベース201と加工プログラム管理データベース202を備える。部品データ管理データベース201には、複数の部品データが記憶されている。加工プログラム管理データベース202には、加工プログラム作成装置30で作成された複数の加工プログラムが記憶されている。
【0017】
図3に示すフローチャートを用いて、加工プログラム作成装置30が加工プログラムを作成する処理を説明する。
図3において、加工プログラム作成装置30は、ステップS1にて、部品データ管理データベース201より、加工対象の部品の部品データを読み出して取得する。一例として、加工プログラム作成装置30は
図4に示す部品P1の部品データを取得したとする。部品P1には切り欠き10cが形成されており、切り欠き10cで囲まれた部分が切り起こし片10となる。
【0018】
加工プログラム作成装置30は、ステップS2にて、部品の各曲げ線に対して曲げ工程を設定する。
図4に示す部品P1では、加工プログラム作成装置30は、切り起こし片10の根元に設定された曲げ線BL1を最初の第1の曲げ工程と設定し、曲げ線BL2を2番目の第2の曲げ工程と設定する。なお、部品の曲げ線は部品データに設定されている。
【0019】
加工プログラム作成装置30は、ステップS3にて、各曲げ工程で使用するパンチTp及びダイTdを選択して、金型長さを決定する。加工プログラム作成装置30は、図示していない金型管理データベースで管理されている金型より各曲げ工程で使用するパンチTp及びダイTdを選択する。
【0020】
図4において、曲げ線BL1の長さはL1であり、曲げ線BL2の長さはL2である。長さをL1の曲げ線BL1の両端部において許容長さLaだけ短い金型であっても曲げ線BL1を曲げることができる。よって、曲げ線BL1を曲げることができる最も短い金型長さは長さL1aとなる。曲げ線BL1を曲げるとき、切り欠き10cの部分まで金型を長くすることができる。よって、曲げ線BL1を曲げることができる最も長い金型長さはL1maxとなる。
【0021】
同様に、長さをL2の曲げ線BL2の両端部において許容長さLaだけ短い金型であっても曲げ線BL2を曲げることができる。よって、曲げ線BL2を曲げることができる最も短い金型長さは長さL2aとなる。曲げ線BL1に対する許容長さLaと曲げ線BL2に対する許容長さLaは同じではない。曲げ線BL2を曲げる際には、金型長さを左右に制限なく伸ばすことができる。加工プログラム作成装置30は、金型管理データベースで管理されている金型であって、最も短い金型長さ以上で、最も長い金型長さがある場合には最も長い金型長さ以下のパンチTp及びダイTdを選択する。
【0022】
図3に戻り、加工プログラム作成装置30は、ステップS4にて、各金型ステーションの位置を設定する。金型ステーションの位置とは、パンチホルダ12及びダイホルダ14に対してパンチTp及びダイTdを取り付ける左右方向の軸上の位置である。パンチホルダ12及びダイホルダ14の長手方向である左右方向の軸をX軸とする。一例として、
図5に示すように、加工プログラム作成装置30は、第1の曲げ工程で使用するパンチTp1及びダイTd1を金型ステーションSt1に設定し、第2の曲げ工程で使用するパンチTp2及びダイTd2を金型ステーションSt2に設定する。
【0023】
このとき、金型ステーションSt2は、パンチTp2及びダイTd2が第1の曲げ工程において部品P1を曲げ加工する際の部品P1と干渉しない位置に設定する必要がある。
図4に示す切り欠き10cの端部から部品P1の端部までの距離をL12とすると、金型ステーションSt1と金型ステーションSt2とは、少なくとも距離L12だけ離す必要がある。加工プログラム作成装置30は、後述する干渉領域の計算処理によって距離L12を求めることができる。
【0024】
加工プログラム作成装置30は、ステップS5にて、各曲げ工程における曲げ位置を設定する。具体的には、
図6に示すように、加工プログラム作成装置30は、ダイTd1及びダイTd2の左右方向の長さに対してそれぞれ曲げ線BL1及び線BL2をどの位置で曲げるかを設定する。典型的には、曲げ線BL1及び線BL2の各長さの中央がダイTd1及びダイTd2の長さの中央と一致するように曲げ位置が設定される。
【0025】
加工プログラム作成装置30は、ステップS6にて、各曲げ工程で部品を曲げる際の一対の突き当て150の位置を設定する。
【0026】
加工プログラム作成装置30は、ステップS7にて、ステップS2~S6で設定した各情報に基づいて部品を曲げ加工するための曲げ加工プログラムを作成し、加工プログラム管理データベース202に格納して、処理を終了させる。
【0027】
次に、
図7に示すフローチャートを用いて、NC装置40が部品を曲げ加工する処理を説明する。
図7において、NC装置40は、ステップS11にて、部品データ管理データベース201より加工対象の部品の部品データ、加工プログラム管理データベース202より加工対象の部品の曲げ加工プログラムを取得する。NC装置40は、
図4に示す部品P1の部品データ及び部品P1の曲げ加工プログラムを取得したとする。
【0028】
NC装置40は、ステップS12にて、操作パネル16の表示部161に、曲げ加工の設定状況を表示する。具体的には、NC装置40は、
図6と同様の、パンチホルダ12及びダイホルダ14に対する金型ステーションSt1及びSt2の位置と、部品P1の各曲げ工程における曲げ位置を示す画像を設定状況として表示する。
【0029】
オペレータは、ステップS13にて、加工開始ボタン1620を押下する。加工開始ボタン1620を押下すると、図示していないフットボタンの操作によって、上部テーブル11を下降させることができる状態となる。但し、本実施形態においては、ステップS14以降の処理によって金型の誤装着の有無が検出され、金型の誤装着が検出されなければ、オペレータはフットボタンを操作して上部テーブル11を下降させることができる。金型の誤装着が検出されれば、上部テーブル11を下降させることができる状態は解除される。
【0030】
オペレータが加工開始ボタン1620を押下すると、NC装置40は、ステップS14にて、干渉領域の計算処理を実行する。
【0031】
図8を用いて、干渉領域の計算処理の基本モデルを説明する。
図8に示す基本モデルの部品Pxを曲げ領域Ax1の曲げ線BLxを曲げる場合を考える。部品Pxを曲げ線BLxの位置で、無限長さの金型モデルであるパンチTpx及びダイTdxを用いて仮想的に曲げるとする。このとき、領域Ax2及びAx3がパンチTpx及びダイTdxと干渉するから領域Ax2及びAx3は干渉領域Ax2及びAx3となる。曲げ領域Ax1と干渉領域Ax2及びAx3との間は、非干渉領域Ax12及びAx13となる。ここでは無限長さの金型モデルを用いているが、干渉領域の計算処理においては部品の大きさを超える長さの金型を用いて部品を曲げることを考えればよい。
【0032】
図9に示すように、部品P1を曲げ線BL1で曲げる際の干渉領域の計算処理を実行すると、曲げ線BL1の範囲が曲げ領域Ax1、切り欠き10cより左側の領域が干渉領域Ax2、切り欠き10cより右側の領域が干渉領域Ax3となる。切り起こし片10左右の切り欠き10cの幅の部分が、非干渉領域Ax12及びAx13となる。干渉領域Ax3の幅は距離L12に相当する。
【0033】
NC装置40は、ステップS15にて、金型装着位置検出部50が検出した金型の取り付け位置を取得する。NC装置40は、ATCがパンチホルダ12またはダイホルダ14に装着した金型以外の、オペレータが手動で追加した追加金型の取り付け位置を取得する。NC装置40は、ステップS16にて、干渉領域と追加金型の取り付け位置との重なりを検出する。
【0034】
図10は、ステップS16の詳細な処理を示している。NC装置40は、ステップS161にて、各曲げ工程におけるパンチホルダ12及びダイホルダ14のX軸上での干渉領域の座標範囲(第1の座標範囲)を計算する。
【0035】
図11は、部品P1を曲げ線BL1で曲げる際のダイホルダ14に対するダイTd1の取り付け位置に対応して、
図9で求めた干渉領域をX軸上に反映させた状態を示している。具体的には、NC装置40は、ダイTd1の長さの中央に曲げ領域Ax1の中央を一致させるように曲げ領域Ax1を配置し、その左右に非干渉領域Ax12及びAx13を配置する。NC装置40は、非干渉領域Ax12の左端から左方向に干渉領域Ax2を設定し、非干渉領域Ax13の右端から干渉領域Ax3を設定する。
図11では、簡略化のため、パンチホルダ12とパンチTp1及びTp2の図示を省略している。
【0036】
例えば、パンチホルダ12及びダイホルダ14の左端部が座標値0である。干渉領域Ax2の左端部の座標値から右端部の座標値までの範囲と、干渉領域Ax3の左端部の座標値から右端部の座標値までの範囲が、X軸上での干渉領域の座標範囲となる。
【0037】
NC装置40は、ステップS162にて、金型装着位置検出部50が検出した追加金型のX軸上の座標範囲(第2の座標範囲)を取得する。追加金型の左端部の座標値から右端部の座標値までの範囲が追加金型の座標範囲となる。
【0038】
NC装置40は、ステップS163にて、干渉領域の座標範囲と追加金型の座標範囲との重なりを検出する。例えば、
図11に破線で示す位置に追加金型であるダイTd+が取り付けられていれば、干渉領域の座標範囲と追加金型の座標範囲とが重なっていることになる。NC装置40は、干渉領域の座標範囲と追加金型の座標範囲とが重なっていれば、追加金型は誤装着された金型であると判定する。
【0039】
図7に戻り、NC装置40は、ステップS17にて、干渉領域の座標範囲と追加金型の座標値の範囲とが重なっているか否かを判定する。重なっていなければ(NO)、NC装置40は、ステップS18にて、部品を曲げ加工を実行して処理を終了させる。重なっていれば(YES)、NC装置40は、ステップS19にて、操作パネル16の表示部161にエラーが発生した旨を表示し、部品の曲げ加工を中止して処理を終了させる。
【0040】
NC装置40は、表示部161にエラーが発生した旨を表示することなく、部品の曲げ加工を中止して処理を終了させてもよい。NC装置40は、表示部161にエラーが発生した旨を表示することが好ましい。NC装置40は、エラーが発生したことをオペレータに知らせる音を発生させてもよい。
【0041】
図12は、
図7に示す処理を実現するNC装置40の構成例を示す。
図12において、干渉領域計算部401は、部品データ及び加工プログラムに基づいて、部品に設定されている複数の曲げ線を所定の金型を用いて順に曲げ加工する際に、各曲げ線で用いられる金型の金型長さを仮想的に延長したときの、部品と金型とが干渉する干渉領域を求める計算処理を実行する。座標範囲計算部402は、干渉領域に基づいて、金型ホルダに金型を取り付けることができないX軸上の第1の座標範囲を計算する。
【0042】
金型装着位置検出部50は追加金型が金型ホルダに取り付けられているX軸上の第2の座標範囲を検出している。重なり検出部403は第2の座標範囲を取得する。重なり検出部403は、干渉領域と金型ホルダに取り付けられた追加金型とが干渉するか否か検出し、干渉領域と追加金型とが干渉することを検出したとき、追加金型は誤装着された金型であると判定する。具体的には、重なり検出部403は、第1の座標範囲と第2の座標範囲とが重なっているか否かを検出し、第1の座標範囲と第2の座標範囲とが重なっていることを検出したとき、追加金型は誤装着された金型であると判定する。
【0043】
NC装置40は、重なり検出部403が追加金型は誤装着された金型であると判定したとき、エラーが発生した旨を表示部161に表示するよう制御する表示制御部404を備えることが好ましい。重なり検出部403は、部品の加工開始が指示された後に、追加金型は誤装着された金型であると判定したときには、部品の曲げ加工を中止するよう曲げ加工実行部405を制御することが好ましい。曲げ加工実行部405は、追加金型は誤装着された金型であると判定しなければ、加工プログラムに基づいて部品の曲げ加工を実行するよう、プレスブレーキ100の各部を制御する。
【0044】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
11 上部テーブル
12 パンチホルダ(金型ホルダ)
13 下方テーブル
14 ダイホルダ(金型ホルダ)
15 バックゲージ
16 操作パネル
20 データ管理サーバ
30 加工プログラム作成装置
40 NC装置(制御装置)
50 金型装着位置検出部
100 プレスブレーキ
150 突き当て
161 表示部
162 操作部
201 部品データ管理データベース
202 加工プログラム管理データベース
401 干渉領域計算部
402 座標範囲計算部
403 重なり検出部
404 表示制御部
405 曲げ加工実行部
1620 加工開始ボタン
P1 部品
Td,Td1,Td2 ダイ(金型)
Tp,Tp1,Tp2 パンチ(金型)
W 板金