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特許7269850硝酸水溶液のリサイクル方法、それを用いた電解加工方法、硝酸水溶液のリサイクル液、及びリサイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】硝酸水溶液のリサイクル方法、それを用いた電解加工方法、硝酸水溶液のリサイクル液、及びリサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20230427BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20230427BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20230427BHJP
   C02F 1/70 20230101ALI20230427BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20230427BHJP
   B23H 3/10 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C02F1/44 E
B01D61/02 500
B01D61/04
C02F1/70 B
B01D65/06
B23H3/10 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019166918
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021041369
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000154794
【氏名又は名称】株式会社放電精密加工研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊次郎
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和宏
(72)【発明者】
【氏名】岡 真也
(72)【発明者】
【氏名】黒田 智明
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-190692(JP,A)
【文献】特開昭50-061379(JP,A)
【文献】特開2016-172219(JP,A)
【文献】特開昭53-115557(JP,A)
【文献】特開2011-025114(JP,A)
【文献】特開2018-089614(JP,A)
【文献】特開2012-196590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C02F 1/70- 1/78
B23H 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸イオン、水、及びクロムイオンを含む廃液を再利用するためのリサイクル方法であって、
前記廃液中のCr6+の濃度が5.0ppm以下となるように、前記廃液中に含まれるCr6+をCr3+に還元する還元工程と、
前記還元工程の後、Cr3+を含む前記廃液を逆浸透膜に透過させて、硝酸イオンおよび水を含む透過液を得る分離工程と、を含む、リサイクル方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリサイクル方法であって、
前記還元工程が、Cr6+の還元剤を接触させる工程を含む、リサイクル方法。
【請求項3】
請求項2に記載のリサイクル方法であって、
前記還元剤が、鉄元素粉を含む、リサイクル方法。
【請求項4】
請求項3に記載のリサイクル方法であって、
前記鉄元素粉の添加量が、前記廃液中に含まれるクロム元素の質量に対して、質量換算で2倍以上5倍以下である、リサイクル方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のリサイクル方法であって、
前記分離工程中、前記廃液中の液温を20℃以上35℃以下とする、リサイクル方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のリサイクル方法であって、
前記還元工程の後、前記分離工程の前に、前記廃液について、Cr6+の濃度を測定するCr濃度測定工程を含み、
前記Cr濃度測定工程において、Cr6+の濃度が所定以上の場合に、報知する第1報知工程を含む、リサイクル方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のリサイクル方法であって、
前記分離工程の前に、前記逆浸透膜を洗浄し、金属イオンを含まない硝酸水溶液に浸漬する前処理をする工程を含む、リサイクル方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のリサイクル方法であって、
前記分離工程の後、前記逆浸透膜をアルカリ性溶液で洗浄する工程を含む、リサイクル方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のリサイクル方法であって、
前記分離工程において、
前記逆浸透膜によって、前記透過液の他に、前記逆浸透膜を透過しなかった濃縮液を得る工程と、
得られた前記濃縮液を前記逆浸透膜に透過させる工程と、を含む、
リサイクル方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のリサイクル方法であって、
前記分離工程の前に、フィルターを用いて前記廃液を濾過する濾過工程を含む、リサイクル方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のリサイクル方法であって、
前記分離工程の後、前記透過液について、金属イオンの濃度を測定する金属イオン濃度測定工程を含み、
前記金属イオン濃度測定工程において、金属イオンの濃度が所定以上の場合に、報知する第2報知工程を含む、リサイクル方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のリサイクル方法であって、
Cr3+を水酸化物にして前記廃液中に沈殿させる工程を含まない、リサイクル方法。
【請求項13】
硝酸水溶液のリサイクル液を用いて電解加工を行う電解加工方法であって、
請求項1~12のいずれか一項に記載のリサイクル方法で得られた透過液を、加工液として用い、金属部材に電解加工を行う工程を含む、電解加工方法。
【請求項14】
請求項13に記載の電解加工方法であって、
電解加工に使用した電解加工後加工液を得る工程と、
前記電解加工後加工液に前記透過液を混合して混合液を得る工程と、
前記混合液を用いて、金属部材に電解加工を行う工程を含む、電解加工方法。
【請求項15】
硝酸水溶液のリサイクル液であって、
硝酸イオンと、
水と、
Al、Co、Cr、及びNiからなる群から選ばれる一または二以上を含む金属イオンと、を含み、
当該リサイクル液中のCr6+の濃度が5.0ppm以下である、硝酸水溶液のリサイクル液。
【請求項16】
請求項15に記載の硝酸水溶液のリサイクル液であって、
前記金属イオンの少なくとも一つの濃度が、3.0mg/l以下である、硝酸水溶液のリサイクル液。
【請求項17】
硝酸イオン、水、及びクロムイオンを含む廃液を再利用するためのリサイクルシステムであって、
前記廃液中のCr6+の濃度が5.0ppm以下となるように、前記廃液中に含まれるCr6+をCr3+に還元する還元処理設備と、
前記還元処理設備で得られたCr3+を含む前記廃液を逆浸透膜に透過させて、硝酸イオンおよび水を含む透過液を取得する硝酸分離設備と、
を備える、リサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸水溶液のリサイクル方法、それを用いた電解加工方法、硝酸水溶液のリサイクル液、及びリサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで硝酸イオンを含む廃液の処理方法について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、硫酸第一鉄を加えることで六価クロムを毒性の低い三価クロムに還元し、水酸化カルシウムを加えることで三価クロムを水酸化物として析出させ、汚泥として、前処理槽の底に沈殿させる前処理が記載されている(段落0027)。前処理で析出した汚泥は回収される一方で、汚泥から分離された液体は硝酸分離設備に供給されること、そして、液体には硝酸イオン、硫酸イオン及び1価の陽イオンが残留することが記載されている(段落0028)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-172219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の硝酸イオンを含む廃液のリサイクル方法において、製造安定性の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
通常の前処理方法では、フェライト法が採用され、硫酸第一鉄(FeSO)が使用される。
硫酸第一鉄に由来して残存する硫酸イオンは、金属加工性を変動させる恐れがあるため、リサイクル液から除去する必要がある。また、フェライト法とアルカリ沈殿法とを併用する場合、水酸化カルシウムなどのpH調整剤を添加する。pH調整剤は、通常、金属加工性を低下させる恐れがある。
そうすると、残存する硫酸イオン、pH調整剤、又は生じた沈殿物の除去を行う等の点で大幅に工数が増大するため、製造効率が低下することがあった。
【0007】
これに対して、本発明者は、上記の前処理方法を使用しない新たな方法を検討した。
すなわち、クロムイオン等の金属イオンを含む廃液から、逆浸透膜を用いて、水、硝酸イオンを分離し、硝酸水溶液を取得(リサイクル)する方法を検討した。
しかしながら、廃液中のCr6+の濃度が高すぎると、逆浸透膜が破壊されてしまうことが判明した。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、廃液中のCr6+の濃度を所定値以下となるまで還元することで、クロムイオン等の金属イオンを含む廃液を用いたとしても、逆浸透膜の破壊が抑制されるため、廃液から硝酸水溶液を安定的にリサイクルできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明によれば、
硝酸イオン、水、及びクロムイオンを含む廃液を再利用するためのリサイクル方法であって、
前記廃液中のCr6+の濃度が5.0ppm以下となるように、前記廃液中に含まれるCr6+をCr3+に還元する還元工程と、
前記還元工程の後、Cr3+を含む前記廃液を逆浸透膜に透過させて、硝酸イオンおよび水を含む透過液を得る分離工程と、を含む、リサイクル方法が提供される。
【0009】
また本発明によれば、
硝酸水溶液のリサイクル液を用いて電解加工を行う電解加工方法であって、
上記のリサイクル方法で得られた透過液を、加工液として用い、金属部材に電解加工を行う工程を含む、電解加工方法が提供される。
【0010】
また本発明によれば、
硝酸水溶液のリサイクル液であって、
硝酸イオンと、
水と、
Al、Co、Cr、及びNiからなる群から選ばれる一または二以上を含む金属イオンと、を含み、
当該リサイクル液中のCr6+の濃度が5.0ppm以下である、硝酸水溶液のリサイクル液が提供される。
【0011】
また本発明によれば、
硝酸イオン、水、及びクロムイオンを含む廃液を再利用するためのリサイクルシステムであって、
前記廃液中のCr6+の濃度が5.0ppm以下となるように、前記廃液中に含まれるCr6+をCr3+に還元する還元処理設備と、
前記還元処理設備で得られたCr3+を含む前記廃液を逆浸透膜に透過させて、硝酸イオンおよび水を含む透過液を取得する硝酸分離設備と、
を備える、リサイクルシステムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造安定性に優れた硝酸水溶液のリサイクル方法、それを用いた電解加工方法、硝酸水溶液のリサイクル液、及びリサイクルシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るリサイクルシステムの構成概要を示す図である。
図2図2(a)は、逆浸透膜40の膜性能評価のための試験、図2(b)は、逆浸透膜40の膜寿命評価の試験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0015】
本実施形態の硝酸水溶液のリサイクル方法を概説する。
【0016】
一般的に、様々な金属表面処理の過程で、硝酸イオン、水、及びクロムイオン等を含む廃液が生じる。金属表面処理の一例に、電解加工、電解研磨、化成処理、酸洗、エッチング、不動態化処理等がある。
【0017】
この中でも電解加工を例に説明する。
電解加工には、硝酸ナトリウムが主に使用される。硝酸ナトリウムは良好な加工精度が得られるが、クロムを含む金属材料を電解加工する際に、加工液中及びスラッジ中にCr6+が残留することがある。また、強い電場はCr3+をCr6+に酸化させることがあった。
【0018】
一方で、電解加工時に溶解金属のスラッジが発生し、加工電極と加工ワークとの間に入り込み、それによって加工精度が低下することがある。これに対して、適当な濃度の硝酸水溶液を使用することによって、金属の水酸化物などの発生量を効果的に低減し、加工精度を向上することができる。
そして、硝酸水溶液を使用して電解加工を行うと、金属の溶出量の増加とともに加工性が変動してしまう。このことから、硝酸水溶液を一定の範囲で使用したあとは、廃棄することが通常であった。
【0019】
以上のように、電解加工などの金属表面処理で生じた廃液中には硝酸イオン、水、及びクロムイオンが含まれる。
【0020】
そこで、上記事情を踏まえて、本願発明者は、硝酸水溶液のリサイクルについて検討を行った。
すなわち、本実施形態のリサイクル方法は、硝酸イオン、水、及びクロムイオンを含む廃液を再利用するための硝酸リサイクル方法である。
【0021】
当該リサイクル方法は、廃液中のCr6+の濃度が5.0ppm以下となるように、廃液中に含まれるCr6+をCr3+に還元する還元工程と、還元工程の後、Cr3+を含む廃液を逆浸透膜に透過させて、硝酸イオンおよび水を含む透過液を得る分離工程と、を含む。
【0022】
本発明者の知見により、クロムイオンと逆浸透膜の劣化との技術的関係が見出された。すなわち、詳細なメカニズムは定かではないが、Cr6+は逆浸透膜の劣化に影響を与えるが、Cr3+はCr6+と比べて逆浸透膜の劣化に影響を与えない。
【0023】
詳細なメカニズムは定かでないが、加工金属中に含まれる金属Crが、電解加工時にCr6+として溶解する。このCr6+が、逆浸透膜に通水された時、逆浸透膜の一部を構成するポリアミド膜を破壊するとともにCr3+に還元される。これにより、クロムイオンを含む廃液を通水するとポリアミド膜が破壊され、逆浸透膜の金属イオンの阻止性能を失うことになる、と考えられる。
【0024】
そこで、Cr6+の発生を抑制したり、Cr6+をCr3+に還元すると、クロムイオンを含む廃液を通水したとしても、ポリアミド膜の破壊が抑制されることが判明した。
【0025】
したがって、Cr6+をCr3+に還元し、廃液中のCr6+の濃度を適切に制御すれば、クロムイオンを含む廃液を逆浸透膜に用いたとしても、その劣化(膜寿命の低下や膜特性のバラツキなど)を抑制し、硝酸リサイクルの製造安定性を向上できることが判明した。
【0026】
本実施形態によれば、安定的に硝酸水溶液のリサイクル液が得られるリサイクル方法を実現できる。
その上、当該リサイクル方法で得られた硝酸水溶液のリサイクル液は、電解加工等の金属表面処理に再利用可能となる。
【0027】
以下、本実施形態のリサイクル方法の構成について図1を用いて詳述する。
図1は、リサイクルシステム100の構成概要を示す図である。
【0028】
リサイクルシステム100は、硝酸イオン、水、及びクロムイオンを含む廃液を再利用するためのリサイクルシステムである。リサイクルシステム100は、廃液中のCr6+の濃度が5.0ppm以下となるように、廃液中に含まれるCr6+をCr3+に還元する還元処理設備110と、還元処理設備120で得られたCr3+を含む廃液を逆浸透膜40に透過させて、硝酸イオンおよび水を含む透過液を取得する硝酸分離設備120と、を備える。
【0029】
図1の廃液タンク20は、電解加工などの金属表面処理で生じた廃液を一時的に保管する。
所定量あるいは所定タイミングに基づいて、廃液タンク20中の廃液は、配管80aを介してバッファータンク22に供給される。
【0030】
廃液タンク20中の廃液中には硝酸イオン、水、及びクロムイオンが含まれる。この他にも硝酸水溶液中に可溶な金属成分や、これに不溶解成分が含まれてもよい。
金属成分として、ニッケル、鉄、アルミニウム、銅などの金属イオンが挙げられる。
不溶解成分として、タングステン、タンタルを含む金属または金属化合物(金属水和物)等が挙げられる。
これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
リサイクル方法は、分離工程の前に、フィルターを用いて廃液を濾過する濾過工程を含んでもよい。
【0032】
図1の廃液タンク20からの廃液は、廃液タンク20、配管80a、バッファータンク22のいずれか中で濾過されてもよい。濾過により、廃液中の硝酸水溶液に不溶な不溶解成分を除去できる。濾過には、例えば、バッグフィルター、プリーツフィルター、UF濾過等を使用できる。
フィルターの目開きサイズは、適宜選択可能であるが、例えば、0.1μm~1μm程度としてもよい。
濾過に使用されるフィルターは、必要に応じて、洗浄してもよい。
【0033】
リサイクル方法は、Cr6+の濃度が5.0ppm以下となるように、廃液中に含まれるCr6+をCr3+に還元する(還元工程)。還元工程は、公知の還元方法を採用してもよいが、例えば、廃液にCr6+の還元剤を接触させる工程を用いてもよい。
【0034】
接触させる方法として、例えば、廃液に粉末状の還元剤を添加してもよく、還元剤を含む濾過体に廃液を通液してもよい。還元剤の添加や還元剤への通液は、1または複数回行われてもよい。この中でも、製造効率の観点から、還元剤の添加方法を用いてもよい。
【0035】
還元剤としては、Cr6+を還元する特性を有する物質であればとくに限定されないが、好ましくは、鉄、または還元鉄を含んでもよい。
粉末状の還元剤として、鉄粉、還元鉄粉、ダライコ鉄粉(屑鉄を原料とする)、アトマイズ鉄粉などの鉄元素粉が挙げられる。これらの中でも、鉄粉や還元鉄粉を使用してもよい。
【0036】
ここで、鉄元素粉を用いた廃液中のCr6+の還元機構は、以下のように考えられる。
Cr6++3e→Cr3+
Fe2+→Fe3++e
このときの硝酸イオンを含む廃液は、pHが約1程度となる。このため、酸化した鉄元素粉は廃液中で溶解するため、事後的に、フィルターなどで除去する必要がない。また、三価クロムの水酸化鉄との共沈も生じない工程とすることも可能になる。フィルタリングが不要となる点でも製造効率を高めることが可能になる。また、廃液のpH調整も不要となる。
【0037】
通常、Cr6+の還元剤として、硫酸第一鉄、重亜硫酸ソーダ等の硫酸塩が使用されることがある。
硫酸塩を使用すると、廃液中に硫酸イオンが残存する。硫酸イオンは、金属加工性を変動させる恐れがある。一方の重亜硫酸ソーダ等の硫酸塩を使用すると、pHの大幅な変動が必要となる。そうすると、硫酸イオンの除去やpH調整の点で、リサイクル工程の工数が増大し、製造効率が低下してしまう。その結果、コストメリットが得られ難い。
また、フェライト法(硫酸第一鉄の使用)とアルカリ沈殿法とを併用する場合、pH調整剤として水酸化カルシウムを用いると、Cr3+は水酸化物(Cr(OH))となり廃液中に沈殿する。残存したpH調整剤は、通常、金属加工性を低下させる恐れがある。したがって、pH調整剤の除去や沈殿物の除去が必要となり、製造効率が低下する。
【0038】
これに対して、鉄元素粉を使用することで、製造効率を高められる。また、本実施形態のリサイクル方法は、Cr3+を水酸化物にして廃液中に沈殿させる工程を含まないように構成されてもよい。これにより、大幅なコストメリットを確保することができる。
【0039】
鉄元素粉の添加量の下限は、廃液中に含まれるクロム元素の質量に対して、質量換算で、例えば、2倍以上、好ましくは2.5倍以上、より好ましくは3倍以上である。これにより、廃液中のCr6+の濃度を所望の範囲内に低減できる。一方、鉄元素粉の添加量の上限は、廃液中に含まれるクロム元素の質量に対して、質量換算で、例えば、5倍以下、好ましくは4.5倍以下、より好ましくは4倍以下である。これにより、鉄元素粉を添加した廃液において、発熱やNOの発生を抑制できる。このため、製造安定性を高められる。
【0040】
図1の還元処理設備110は、バッファータンク22中の廃液を還元処理する。
バッファータンク22は、例えば、還元剤を添加する機構や還元剤を含む濾過体を備えてもよい。
バッファータンク22中の還元処理された廃液は、配管80bを介して濃縮液タンク30に供給される。
【0041】
リサイクル方法は、還元工程の後、Cr3+を含む廃液を逆浸透膜40に透過させて、硝酸イオンおよび水を含む透過液を得る(分離工程)。
【0042】
図1の硝酸分離設備120は、濃縮液タンク30、逆浸透膜40、及び透過液タンク60を備える。
【0043】
逆浸透膜40を用いた分離工程の一例は以下の通りである。
廃液は、配管80cを介して濃縮液タンク30から逆浸透膜40に供給される。
逆浸透膜40は、硝酸イオン、水、及びクロムイオン等を含む廃液を処理する。ポンプ82(高圧ポンプ)を使用して、たとえば0.5MPa~4.0MPa程度、より好ましくは2.5MPa~3.0MPa程度の圧力条件で、逆浸透膜40に廃液を加圧送液してもよい。
逆浸透膜40中で、廃液は、硝酸イオンおよび水を含む透過液と、クロムイオンや他の金属イオン濃度が濃縮された濃縮液とに分離される。
透過液は、配管80dを介して透過液タンク60に供給される。
【0044】
以上により、逆浸透膜40によって、硝酸イオンおよび水を含む透過液、すなわち、硝酸水溶液を得ることができる。
【0045】
濃縮液タンク30に供給される廃液中のCr6+の濃度の上限は、5.0ppm以下、好ましくは1.0ppm以下、より好ましくは0.3ppm以下、さらに好ましくは0.01ppm以下である。これにより、逆浸透膜40の破壊を抑制できるため、製造安定性を高めることが可能になる。一方、上記廃液中のCr6+の濃度の下限は、とくに限定されないが、0ppm(検出限界値以下)としてもよい。
【0046】
本実施形態では、たとえば廃液中に含まれる各成分の種類や配合量、廃液の還元処理等を適切に選択することにより、上記廃液中のCr6+の濃度を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば鉄元素粉などの還元剤の使用や、鉄元素粉の添加量を適切に調整すること等が、上記廃液中のCr6+の濃度を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0047】
リサイクル方法は、還元工程の後、分離工程の前に、廃液について、Cr6+の濃度を測定するCr濃度測定工程を含み、Cr濃度測定工程において、Cr6+の濃度が所定以上の場合に、報知する第1報知工程を含んでもよい。これにより、基準値以上のCr6+の濃度を含む廃液が逆浸透膜40に供給されることを抑制できる。報知を検知した場合、リサイクルシステム100のシステムの一部または全体を停止してもよい。
【0048】
図1の還元処理設備110は、センサー50を有してもよい。センサー50は、配管80bを介してバッファータンク22から濃縮液タンク30に供給される廃液中のCr6+の濃度を測定する。
【0049】
センサー50としては、酸化還元電位(ORP)計、吸光光度法により六価クロム濃度を測定するCr濃度センサー等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。複数併用することで、安定的な濃度管理が可能になる。
【0050】
リサイクル方法は、分離工程中、液温が20℃以上35℃以下となるように廃液の液温を管理してもよい。逆浸透膜40に接触する廃液の温度を適当な範囲内に管理することで、製造安定性を向上できる。
具体的には、逆浸透膜40に供給される廃液の液温の下限は、例えば、20℃以上、好ましくは25℃以上、より好ましくは28℃以上である。これにより、逆浸透膜40で分離される透過液の量が低下することを抑制できる。これにより、安定的にリサイクルが可能になる。一方で、上記廃液の液温の上限は、例えば、35℃以下、好ましくは33℃以下、より好ましくは30℃以下である。これにより、逆浸透膜40の金属阻止能の低下を抑制できる。よって、逆浸透膜40の交換頻度の増加を抑制できる。
詳細なメカニズムは定かでないが、液温が高すぎると、逆浸透膜40の目開きが変動するため、と考えられる。
【0051】
図1中、逆浸透膜40の供給される廃液は、任意に配置された、ヒーターなどの温度調整機構により液温が調整されてもよい。一例として、バッファータンク22がヒーターを備えてもよい。これにより、濃縮液タンク30中の廃液の液温を安定的に制御することが可能である。
【0052】
図1の逆浸透膜40は、公知のものが使用できるが、水や硝酸イオンを通し、金属イオンや不純物の透過を抑制する性質を有する濾過膜を備える。
逆浸透膜40の孔サイズ(目開き)は、金属イオンなどの不純物に応じて適切に選択可能であるが、が0.1nm程度としてもよい。
【0053】
濾過膜としては、例えば、芳香族ポリアミド膜等のポリアミド膜、酢酸セルロース膜、ポリサルフォン膜等を使用できる。この中でも、芳香族ポリアミド膜が適する。酢酸セルロース膜、ポリサルフォン膜では金属イオンを十分に阻止できず透過してしまう恐れがある。
【0054】
リサイクル方法は、分離工程の前に、逆浸透膜40を洗浄し、金属イオンを含まない硝酸水溶液に浸漬する前処理をする工程を含んでもよい。前処理として、逆浸透膜40の膜保存液であるSBS(重亜硫酸ソーダ)等をイオン交換水等で洗浄した後、金属イオンを含まない、濃度17%程度の硝酸溶液で1時間~24時間程度循環させる処理を行ってもよい。これにより、新規の逆浸透膜40を使用したとしても、比較的安定的に透過液が得られる。
【0055】
リサイクル方法は、分離工程の後、逆浸透膜40をアルカリ性溶液で洗浄する工程を含んでもよい。すなわち、使用後の逆浸透膜40を洗浄することで、安定的に透過液を得ることができる。
洗浄方法としては、例えば、pH11程度の水酸化ナトリウムを逆浸透膜40に通水し、膜に付着、目詰まりなどした成分を除去する方法が挙げられる。適当な使用期間後、汚れ具合に応じて、数分~1日程度、洗浄を実施してもよい。
【0056】
逆浸透膜40は、クロスフロー方式で使用されてもよく、デットエンド方式で使用されてもよい。製造効率の観点から、クロスフロー方式が好ましい。クロスフロー方式では、廃液を、ある程度の流速を持たせて濾過膜の表面に沿って流し続ける。これによって、濾過液と濃縮液に分離される。
【0057】
リサイクル方法は、分離工程において、逆浸透膜40によって、透過液の他に、逆浸透膜40を透過しなかった濃縮液を得る工程と、得られた濃縮液を、再度、逆浸透膜40に透過させる工程と、を含んでもよい。
【0058】
図1中、逆浸透膜40で分離された濃縮液は、配管80eを介して濃縮液タンク30に回収される。配管80eから供給された濃縮液は、濃縮液タンク30で配管80bから供給された廃液と混合し、再び、逆浸透膜40に通液される。これにより、廃液中の硝酸の回収効率を高められる。
【0059】
なお、繰り返し逆浸透膜40で濃縮された濃縮液の一部は、廃棄タンク32に破棄されてもよい。
【0060】
逆浸透膜40で分離された透過液は、配管80dを介して透過液タンク60に回収される。
【0061】
リサイクル方法は、分離工程の後、透過液について、金属イオンの濃度を測定する金属イオン濃度測定工程を含み、金属イオン濃度測定工程において、金属イオンの濃度が所定以上の場合に、報知する第2報知工程を含んでもよい。
【0062】
図1の硝酸分離設備120は、センサー52を有してもよい。センサー52は、配管80dを介して逆浸透膜40から透過液タンク60に供給される透過液中の金属イオンの濃度を測定する。
【0063】
センサー52としては、吸光光度法により金属濃度を測定する金属濃度センサー等が用いられる。
金属濃度センサーの一例として、ニッケル濃度センサーを用いてもよい。ニッケル濃度などの金属濃度を管理することで、透過液中の金属イオンの濃度を管理できるとともに、逆浸透膜40の交換時期を検知することが可能になる。
【0064】
設定値以上の金属イオン濃度が検知された場合、リサイクルシステム100のシステムの一部または全部を停止してもよい。必要に応じて逆浸透膜40の洗浄や交換を行う。
【0065】
透過液タンク60で回収された透過液は、硝酸イオンおよび水を含む硝酸水溶液となる。
この硝酸水溶液は、クロムイオン等の金属イオンが含まれていなくてもよいが、1または2以上の金属イオンが微量含まれていてもよい。透過液中の金属イオンの合計濃度は、廃液タンク20中の廃液中の金属イオンの合計濃度よりも十分に低い値となる。
【0066】
透過液として回収された硝酸水溶液中の金属イオンとしては、廃液タンク20に含まれる金属イオン種が挙げられるが、例えば、クロムイオン(Cr3+)、ニッケルイオン、アルミニウムイオン、コバルトイオン等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
透過液としての硝酸水溶液中の金属イオンの合計濃度の上限は、例えば、10mg/l以下、好ましくは5mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下である。この中でも、硝酸水溶液中の、金属イオンの少なくとも一つの濃度、例えば、Cr3+の濃度の上限は、例えば、3mg/l以下、好ましくは1mg/l以下、より好ましくは0.5mg/l以下である。一方、金属イオンの合計濃度の下限やCr3+イオンの濃度の下限は、例えば、0mg/l以上でもよく、0.01mg/l以上でもよい。
【0068】
硝酸水溶液中の金属イオンの合計濃度の上限を上記上限値以下とすることで、リサイクルされた硝酸水溶液を電解加工などの金属表面処理のための薬液として使用する際に、追加の工程が不要となる。すなわち、ICP等による金属イオン濃度の分析と調整を実施することや、更に中和滴定等による硝酸濃度の測定と調整を行わなくてもよい。このため、高価な分析機器が不要となり、リサイクル工程も簡潔となるため、コストメリットが得られる。
【0069】
ここで、本発明者が行った実験について図2を用いて説明する。
図2(a)は、逆浸透膜40の膜性能評価のための試験、図2(b)は、逆浸透膜40の膜寿命評価の試験を説明するための図になる。
【0070】
膜性能評価の試験は、次のような結果を示した。
まず、図2(a)の濃縮液タンク30中に、濾過前の廃液(複数種の金属イオン、および硝酸イオンを含む水溶液)を投入した。
濾過前の廃液の金属イオン濃度は、クロムイオン:58.00mg/l、ニッケルイオン:205.00:mg/l、アルミニウムイオン:13.90mg/l、コバルトイオン:58.80mg/lであった。金属イオン濃度は、ICP発光分析装置を用いて測定した。なお、六価クロムを測定するために吸光光度法で測定したところ、全クロムイオンは、Cr3+であった。
続いて、クロスフロー方式を用いて、濾過前の廃液を、濃縮液タンク30から配管80cを介して逆浸透膜40(芳香族ポリアミド膜、目開きサイズ:0.1nm)に加圧送液した。透過液は配管80dを介して透過液タンク60に回収され、一方の濃縮液は配管80eを介して濃縮液タンク30に回収された。回収された濃縮液は再び逆浸透膜40に供給した。この評価試験を50時間(1000L処理)行った。
その後、50時間後の濃縮液タンク30中の濃縮液の金属イオン濃度は、クロムイオン:157.00mg/l、ニッケルイオン:598.00:mg/l、アルミニウムイオン:27.30mg/l、コバルトイオン:125.00mg/lであった。
一方、50時間後の透過液タンク60中の透過液の金属イオン濃度は、クロムイオン(Cr3+):0.27mg/l、ニッケルイオン:1.55:mg/l、アルミニウムイオン:0.96mg/l、コバルトイオン:0.27mg/lであった。
以上の膜性能評価の試験より、透過液として、金属イオンが十分に除去された硝酸水溶液が得られることが分かった。
【0071】
膜寿命評価の試験は、次のような結果を示した。
まず、図2(b)の濃縮液タンク30中に、濾過前の廃液として、クロムイオンおよび硝酸イオンを含む水溶液サンプル1~3を投入した。水溶液サンプル1~3中のCr6+濃度は、それぞれ、0ppm、0.4ppm、6.0ppmであった。Cr6+濃度は、鉄粉を添加し、鉄粉の添加量を調整することにより調整した。Cr6+濃度は、ジフェニルカルバジド吸光光度法を用いて測定した。
続いて、クロスフロー方式を用いて、濃縮液タンク30中の水溶液サンプルを配管80cを介して逆浸透膜40(芳香族ポリアミド膜、目開きサイズ:0.1nm)に加圧送液し、濃縮液を配管80eを介して、透過液を配管80fを介して、それぞれを濃縮液タンク30に回収した。回収された濃縮液および透過液は、再び逆浸透膜40に供給した。この評価試験を3ヶ月間行った。
膜寿命評価の試験について、3ヶ月間問題なく使用できた場合を◎、1週間~1ヶ月使用できた場合を○、試験開始後すぐに逆浸透膜40が破壊された場合を×と評価した。
その結果、実施例1の水溶液サンプル1は◎、実施例2の水溶液サンプル2は○、比較例1の水溶液サンプル3は×との結果が示された。
以上より、硝酸イオン、水、及びクロムイオンを含む水溶液サンプル(廃液)について、実施例1,2のように、Cr6+の濃度が5.0ppm以下となるようにCr6+をCr3+に還元した水溶液サンプルを逆浸透膜に透過させることによって、比較例1と比べて、安定的に硝酸水溶液が得られることが分かった。
【0072】
以上により、得られた透過液からなる硝酸水溶液のリサイクル液は、様々な金属表面処理に用いる薬液(加工液)に好適に用いることができる。
【0073】
硝酸水溶液のリサイクル液は、一例として、電解加工における加工液に再利用することが可能である。
【0074】
硝酸水溶液のリサイクル液を用いて電解加工を行う電解加工法は、上記のリサイクル方法で得られた透過液(硝酸水溶液)を加工液として用い、金属部材に電解加工を行う工程を含む。
【0075】
硝酸水溶液のリサイクル液は、比重や中和滴定等を用いた硝酸濃度の測定結果を踏まえて、所望の濃度となるように、硝酸濃度が調整されてもよい。金属表面加工によって所望の硝酸濃度は適宜調整可能であるが、電解加工液に使用する場合、硝酸濃度は約17%であってもよい。これにより、金属の水酸化物などの発生量を抑制し、加工精度を高めることが可能になる。
【0076】
図1中、透過液タンク60に回収された透過液(硝酸水溶液のリサイクル液)は、配管80gを介してバッファータンク62に供給される。
バッファータンク62中のリサイクル液は、配管80h、弁72、配管80kを介して混合タンク70に供給される。
混合タンク70中、リサイクル液は、所望の濃度となるように調整される。例えば、給水74から配管80jを介して、市水などの水が混合タンク70に供給されてもよい。また、硝酸新液タンク76から配管80jを介して、硝酸を混合タンク70に供給されてもよい。硝酸新液タンク76中の硝酸は、市販品を用いてもよく、使用前の新液を用いてもよい。
【0077】
混合タンク70で水や硝酸、その他必要な成分と混合されたリサイクル液は、配管80lを介して加工機タンク12に供給される。混合タンク70中のリサイクル液の濃度はセンサー54で測定されてもよい。センサー54の濃度値に応じて、所望の濃度となるよう水や硝酸が添加されてもよい。
【0078】
加工機タンク12中に供給されたリサイクル液は、電解加工用の加工液として、配管80mを介して電解加工機10に供給される。
【0079】
この硝酸水溶液のリサイクル液は、硝酸イオンと、水と、Al、Co、Cr、及びNiからなる群から選ばれる一または二以上を含む金属イオンと、含んでもよい。当該リサイクル液中のCr6+の濃度は、5.0ppm以下となる。リサイクル液中のCr6+の濃度は、上述の、濃縮液タンク30に供給される廃液中のCr6+の濃度を用いることができる。
【0080】
また、硝酸水溶液のリサイクル液中、上述の、金属イオンの少なくとも一つの濃度が、例えば、3.0mg/l以下となるように構成されてもよい。
【0081】
硝酸イオンおよび水を含み金属イオンを含まない場合と比較して、少量の金属イオンを含むリサイクル液を加工液に使用する方が、加工安定性を向上できる。
詳細なメカニズムは定かでないが、硝酸イオンおよび水をのみの場合、電解加工開始後に金属イオンが生じ、その結果、初期から加工性が変動し、加工性がバラツクため、と考えられる。
【0082】
また、電解加工法は、電解加工に使用した電解加工後加工液を得る工程と、電解加工後液に透過液(リサイクル液)を混合して混合液を得る工程と、混合液を用いて、金属部材に電解加工を行う工程を含んでもよい。
【0083】
図1の電解加工機10中で、電解加工に使用された使用済みの加工液(電解加工後加工液)は、配管80nを介して加工機タンク12に供給されてもよい。このとき、加工機タンク12では、混合タンク70から供給されたリサイクル液と、電解加工機10から供給された電解加工後加工液とが混合される。そして、混合された混合液を、再び、配管80mを介して電解加工機10に供給し、加工液として使用してもよい。
混合液中のリサイクル液と電解加工後加工液との混合比率は、適宜調整できるが、例えば、質量換算で、99:1~50:50としてもよく、95:5~80:20としてもよい。これにより、加工液中の金属イオンの濃度の上昇を抑えられるため、加工安定性を維持することができる。
【0084】
このように繰り返し使用した加工液は、金属イオンや金属の溶解量が所定の範囲内となったとき、加工機タンク12から配管80oを介して廃液タンク20に廃液として供給する。
この廃液は、再度、リサイクルシステム100により再利用することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
10 電解加工機
12 加工機タンク
20 廃液タンク
22 バッファータンク
30 濃縮液タンク
32 廃棄タンク
40 逆浸透膜
50 センサー
52 センサー
54 センサー
60 透過液タンク
62 バッファータンク
70 混合タンク
72 弁
74 給水
76 硝酸新液タンク
80a、80b、80c、80d、80e、80f、80g、80h、80i、80j、80k、80l、80m、80n、80o 配管
82 ポンプ
100 リサイクルシステム
110 還元処理設備
120 硝酸分離設備
図1
図2