(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】廃液収容容器、及びこれを備えた廃液貯留器並びに廃液吸引システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
A61M1/00 111
A61M1/00 171
(21)【出願番号】P 2019171753
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000205007
【氏名又は名称】大研医器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】漆間 正行
(72)【発明者】
【氏名】和田 武史
(72)【発明者】
【氏名】数原 幸平
(72)【発明者】
【氏名】大橋 慶郎
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-517285(JP,A)
【文献】特表2003-519460(JP,A)
【文献】米国特許第5589145(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する上方開口を有する有底容器状の容器本体と、前記上方開口を開閉可能に前記容器本体に支持される開閉蓋体とを含む容器収容器に収容され、所定の廃液を収容可能な廃液収容容器であって、
前記容器本体内に配置され、上方に開口を有する筒体と、
前記筒体の上端に接合され、前記筒体の上方側に前記開閉蓋体との間に上方空間を区画し、且つ、前記上方空間と連通して負圧とされることで吸引された廃液を収容する廃液収容空間を、前記上方空間の下側において前記筒体と共に区画する容器蓋体と、
前記容器蓋体に設けられ、前記廃液収容空間内に収容された廃液を処理する廃液処理剤を収納する廃液処理剤収納部と、を備え、
前記廃液処理剤収納部は、
前記上方空間に面して開口した第1開口と、前記廃液収容空間に面して開口した第2開口とを有し、前記第1開口と前記第2開口との間において前記廃液処理剤を収納する処理剤収納空間を区画する収納本体と、
前記第1開口を覆うように前記収納本体に接合された第1被覆部材と、
前記第2開口を覆うように前記収納本体に接合された第2被覆部材と、を含み、
前記第1被覆部材は、前記上方空間が負圧とされた状態では吸引力によって上方側へ塑性変形し、前記開閉蓋体が開放されて前記上方空間の負圧が解除された状態では下方側へ押し込む押圧力によって下方側へ塑性変形するような材料で構成され、
前記第2被覆部材は、前記廃液収容空間が負圧とされた状態での吸引力によっては塑性変形せず、前記第1被覆部材に前記押圧力が付与された場合に塑性変形することなく破断するような材料で構成されている、廃液収容容器。
【請求項2】
前記第2被覆部材は、前記廃液収容空間に収容された廃液の前記処理剤収納空間への通過を規制するように構成されている、請求項1に記載の廃液収容容器。
【請求項3】
前記収納本体において、前記第2開口は、前記第1開口よりも開口面積が小さくなるように設けられ、
前記第1被覆部材は、前記押圧力の付与位置の目印となる部分であって、前記第2開口の直上となる位置に設けられた押圧位置案内部を有している、請求項1又は2に記載の廃液収容容器。
【請求項4】
前記第1被覆部材は、前記第1開口を覆うように前記収納本体に接合された下層フィルムと、前記下層フィルム上に貼着された上層フィルムとを含む積層構造によって構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の廃液収容容器。
【請求項5】
前記上層フィルムは、前記下層フィルムに対する剥離が可能であり、
前記下層フィルムは、複数の貫通穴を有している、請求項4に記載の廃液収容容器。
【請求項6】
前記収納本体は、前記筒体の上端に対して前記廃液収容空間側へ突出している、請求項1~5のいずれか1項に記載の廃液収容容器。
【請求項7】
上方に開口する上方開口を有する有底容器状の容器本体と、前記上方開口を開閉可能に前記容器本体に支持される開閉蓋体とを含む容器収容器と、
前記容器収容器に収容され、所定の廃液を収容可能な、請求項1~6のいずれか1項に記載の廃液収容容器と、を備える、廃液貯留器。
【請求項8】
前記容器収容器において前記開閉蓋体は、前記廃液収容容器における前記第1被覆部材の、前記上方空間の負圧に伴う吸引力による上方側への塑性変形が規定値以上になることを規制する押さえ部を有している、請求項7に記載の廃液貯留器。
【請求項9】
前記押さえ部は、前記上方空間の負圧に伴う吸引力によって前記第1被覆部材が予め設定された高さ位置に達するまで塑性変形したときに、当該第1被覆部材に接触するように設けられている、請求項8に記載の廃液貯留器。
【請求項10】
所定の廃液を吸引し、この吸引された前記廃液を貯留可能に構成された廃液吸引システムであって、
吸引源と、
前記廃液の吸引起点となる吸引起点部から前記吸引源までの吸引経路を構成する吸引経路部と、
前記吸引経路上において前記吸引起点部と前記吸引源との間に配置され、前記吸引源の吸引力によって前記吸引起点部から吸引された前記廃液を貯留可能に構成された、請求項7~9のいずれか1項に記載の廃液貯留器と、を備える、廃液吸引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引源の吸引力によって吸引された所定の廃液を収容する廃液収容容器、及びこれを備えた廃液貯留器並びに廃液吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設等に配設された吸引源を利用して手術中等に生じる患者の体液や体腔内洗浄用の洗浄液を含む廃液を吸引し、この吸引された廃液を貯留するように構成された廃液吸引システムが知られている。廃液吸引システムは、吸引源の吸引力によって吸引された廃液を貯留可能な廃液貯留器を備えている。この種の廃液貯留器は、通常、廃液を収容する廃液収容容器(ライナー)と、当該廃液収容容器を収容する容器収容器(キャニスタ)とを備えている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、廃液を処理するための廃液処理剤を収納した廃液処理剤収納部が設けられたライナーが開示されている。廃液処理剤収納部は、ライナーの蓋体に設けられ、上部開口及び底部開口を有した貯蔵器と、前記上部開口を覆う可撓性のドーム状キャップと、前記底部開口を覆う穿孔フィルムシールと、を備えている。廃液処理剤収納部においては、ドーム状キャップに下方側へ押し込む押圧力が付与されることにより、穿孔フィルムシールが破裂し、貯蔵器内の廃液処理剤をライナーの内部に放出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるライナーにおいて、当該ライナー内に廃液を吸引させるときには、吸引源の吸引力によってライナーの内部空間が負圧とされる。廃液処理剤を収納する貯蔵器においてライナーの内部空間に面して開口した底部開口には、穿孔フィルムシールが設けられているが、このフィルムシールは微小穿孔を有している。このため、貯蔵器の内部空間とライナーの内部空間とは、穿孔フィルムシールの微小穿孔を介して連通していることとなる。このような構成では、ライナーの内部空間が負圧とされると、貯蔵器内も負圧とされる。貯蔵器内が負圧とされると、当該貯蔵器の上部開口を覆うドーム状キャップに吸引力が作用する。吸引力が作用するとドーム状キャップは、下方側への押圧力が付与される場合と同様に、下方側に変形することになる。このため、ライナーへの廃液の吸引中において、ドーム状キャップの下方側への変形に応じて穿孔フィルムシールが破裂し、貯蔵器内の廃液処理剤がライナーの内部に放出されてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、廃液処理剤収納部を備えた廃液収容容器において、廃液の吸引中に廃液処理剤収納部から廃液処理剤が放出されることを防止することが可能な廃液収容容器、及びこれを備えた廃液貯留器並びに廃液吸引システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る廃液収容容器は、上方に開口する上方開口を有する有底容器状の容器本体と、前記上方開口を開閉可能に前記容器本体に支持される開閉蓋体とを含む容器収容器に収容され、所定の廃液を収容可能なものである。この廃液収容容器は、前記容器本体内に配置され、上方に開口を有する筒体と、前記筒体の上端に接合され、前記筒体の上方側に前記開閉蓋体との間に上方空間を区画し、且つ、前記上方空間と連通して負圧とされることで吸引された廃液を収容する廃液収容空間を、前記上方空間の下側において前記筒体と共に区画する容器蓋体と、前記容器蓋体に設けられ、前記廃液収容空間内に収容された廃液を処理する廃液処理剤を収納する廃液処理剤収納部と、を備える。前記廃液処理剤収納部は、前記上方空間に面して開口した第1開口と、前記廃液収容空間に面して開口した第2開口とを有し、前記第1開口と前記第2開口との間において前記廃液処理剤を収納する処理剤収納空間を区画する収納本体と、前記第1開口を覆うように前記収納本体に接合された第1被覆部材と、前記第2開口を覆うように前記収納本体に接合された第2被覆部材と、を含む。前記第1被覆部材は、前記上方空間が負圧とされた状態では吸引力によって上方側へ塑性変形し、前記開閉蓋体が開放されて前記上方空間の負圧が解除された状態では下方側へ押し込む押圧力によって下方側へ塑性変形するような材料で構成されている。前記第2被覆部材は、前記廃液収容空間が負圧とされた状態での吸引力によっては塑性変形せず、前記第1被覆部材に前記押圧力が付与された場合に塑性変形することなく破断するような材料で構成されている。
【0008】
この廃液収容容器によれば、容器収容器の開閉蓋体との間に筒体の上方側に区画された上方空間が負圧とされることに応じて、上方空間の下側において筒体と容器蓋体とで区画された廃液収容空間が負圧とされることにより、吸引された廃液が当該廃液収容空間内に収容される。この際、廃液処理剤収納部において前記上方空間に面して開口した第1開口を覆う第1被覆部材は、前記上方空間の負圧に伴う吸引力によって上方側へ塑性変形する。このため、収納本体の第2開口を覆う第2被覆部材は、上方側からの力を受けず、破断することが規制される。これにより、廃液収容容器の廃液収容空間への廃液の吸引中に、収納本体の処理剤収納空間から廃液処理剤が放出されることを防止することができる。
【0009】
一方、容器収容器の開閉蓋体が開放されて前記上方空間の負圧が解除された状態において、第1被覆部材を下方側へ押し込む押圧力が当該第1被覆部材に付与された場合、その押圧力が廃液処理剤を介して第2被覆部材に伝達される。これにより、第2被覆部材が破断すると、当該第2被覆部材による第2開口の被覆が解除される。この結果、収納本体の処理剤収納空間に収納されていた廃液処理剤が、第2開口を介して筒体の前記廃液収容空間内へ添加される。
【0010】
上記の廃液収容容器において、前記第2被覆部材は、前記廃液収容空間に収容された廃液の前記処理剤収納空間への通過を規制するように構成されていてもよい。
【0011】
この態様では、筒体の廃液収容空間に収容された廃液が、当該廃液収容空間から廃液処理剤収納部の処理剤収納空間へ通過することを、第2被覆部材によって規制することができる。これにより、前記処理剤収納空間に収納された廃液処理剤の廃液との接触による変質を防止することができる。
【0012】
上記の廃液収容容器では、前記収納本体において、前記第2開口は、前記第1開口よりも開口面積が小さくなるように設けられ、前記第1被覆部材は、前記押圧力の付与位置の目印となる部分であって、前記第2開口の直上となる位置に設けられた押圧位置案内部を有している構成であってもよい。
【0013】
この態様では、第1被覆部材において押圧位置案内部は、第2被覆部材によって覆われている第2開口の直上となる位置に設けられている。これにより、押圧位置案内部を目印として第1被覆部材を下方側へ押し込む押圧力が付与された場合に、その押圧力が効果的に第2被覆部材に伝達される。このため、第1被覆部材に押圧力が付与された場合に、より確実に第2被覆部材が破断され、第2開口を介して筒体の廃液収容空間内へ適切に廃液処理剤を添加することができる。
【0014】
上記の廃液収容容器において、前記第1被覆部材は、前記第1開口を覆うように前記収納本体に接合された下層フィルムと、前記下層フィルム上に貼着された上層フィルムとを含む積層構造によって構成されていてもよい。
【0015】
この態様では、第1被覆部材を積層構造とすることによって、前記上方空間の負圧に伴う吸引力による上方側への塑性変形と、押圧力の付与による下方側への塑性変形との、第1被覆部材の塑性変形に対する設計の自由度を向上することができる。
【0016】
上記の廃液収容容器において、前記上層フィルムは、前記下層フィルムに対する剥離が可能であり、前記下層フィルムは、複数の貫通穴を有している構成であってもよい。
【0017】
例えば、筒体の廃液収容空間に収容された廃液に添加される廃液処理剤として、凝集剤を用いる場合を想定する。この場合、前記廃液収容空間内に収容された廃液に凝集剤が添加されると、廃液に含まれる成分が凝集剤によって凝集物として前記廃液収容空間内に沈殿する。これにより、前記廃液収容空間内において廃液が、上澄み液と凝集物とに分離される。このような上澄み液を排出する場合に、上層フィルムを下層フィルムに対して剥離し、複数の貫通穴を有した下層フィルムを露出させるようにすればよい。これにより、上澄み液だけを貫通穴を通過させ、凝集物と分離して濾過するように排出することができる。
【0018】
上記の廃液収容容器において、前記収納本体は、前記筒体の上端に対して前記廃液収容空間側へ突出している構成であってもよい。
【0019】
この態様では、容器蓋体が筒体の上端に接合された状態において、収納本体は、筒体の廃液収容空間側へ突出している。これにより、容器蓋体に対して上方側に突出した部分を少なくし、廃液収容容器の全体としての低背化が可能となる。
【0020】
本発明の他の局面に係る廃液貯留器は、上方に開口する上方開口を有する有底容器状の容器本体と、前記上方開口を開閉可能に前記容器本体に支持される開閉蓋体とを含む容器収容器と、前記容器収容器に収容され、所定の廃液を収容可能な上記の廃液収容容器と、を備える。
【0021】
上記の廃液貯留器において、前記容器収容器において前記開閉蓋体は、前記廃液収容容器における前記第1被覆部材の、前記上方空間の負圧に伴う吸引力による上方側への塑性変形が規定値以上になることを規制する押さえ部を有している。
【0022】
また、上記の廃液貯留器において、前記押さえ部は、前記上方空間の負圧に伴う吸引力によって前記第1被覆部材が予め設定された高さ位置に達するまで塑性変形したときに、当該第1被覆部材に接触するように設けられている。
【0023】
この廃液貯留器によれば、第1被覆部材は、前記上方空間の負圧に伴う吸引力によって予め設定された高さ位置に達するまで塑性変形したときに、押さえ部に接触する。これにより、前記上方空間の負圧に伴う吸引力によって第1被覆部材が上方側へ塑性変形したときに、その塑性変形が規定値以上となって過度に変形することを押さえ部によって規制することができる。
【0024】
本発明の他の局面に係る廃液吸引システムは、所定の廃液を吸引し、この吸引された前記廃液を貯留可能に構成されたシステムである。この廃液吸引システムは、吸引源と、前記廃液の吸引起点となる吸引起点部から前記吸引源までの吸引経路を構成する吸引経路部と、前記吸引経路上において前記吸引起点部と前記吸引源との間に配置され、前記吸引源の吸引力によって前記吸引起点部から吸引された前記廃液を貯留可能に構成された、上記の廃液貯留器と、を備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、廃液処理剤収納部を備えた廃液収容容器において、廃液の吸引中に廃液処理剤収納部から廃液処理剤が放出されることを防止することが可能な廃液収容容器、及びこれを備えた廃液貯留器並びに廃液吸引システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るライナーを備えた廃液貯留器が適用された廃液吸引システムの構成を概略的に示す図である。
【
図3】廃液貯留器においてキャニスタの開閉蓋体が開放位置に配置された状態を示す斜視図である。
【
図4】廃液貯留器においてキャニスタからライナーが取り出された状態を示す斜視図である。
【
図5】廃液貯留器の要部を拡大して示す部分断面図である。
【
図8】
図6に示すライナーを切断面線VIII-VIIIから見た断面図である。
【
図11】
図9に示す容器蓋体を切断面線XI-XIから見た断面図である。
【
図12】容器蓋体において廃液処理剤収納部の第1被覆部材及び第2被覆部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図13】容器蓋体において廃液処理剤収納部の第1被覆部材及び第2被覆部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図14】廃液処理剤収納部の第1被覆部材の変形例を示す斜視図である。
【
図15】
図14に示す第1被覆部材において上層フィルムの剥離の様子を示す斜視図である。
【
図16】
図14に示す第1被覆部材において上層フィルムを剥離した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る廃液吸引システム及び廃液貯留器について説明する。
【0028】
[廃液吸引システムの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るライナー5を備えた廃液貯留器4が適用された廃液吸引システム1の構成を概略的に示す図である。廃液吸引システム1は、所定の吸引源2の吸引力によって廃液WLを吸引し、この吸引された廃液WLを貯留可能に構成されたシステムである。具体的には、廃液吸引システム1は、医療施設等に配設された吸引源2を利用して手術中等に生じる患者の体液(血液等)や体腔内洗浄用の洗浄液(例えば生理食塩水)を含む廃液WLを吸引し、この吸引された廃液WLを貯留するように構成されている。廃液吸引システム1は、吸引源2と、吸引経路部3と、廃液貯留器4とを備える。
【0029】
吸引源2は、医療施設等に配設されたものであって、その構造は特に限定されるものではないが、例えば吸引ポンプ等によって構成される。
【0030】
吸引経路部3は、廃液WLの吸引起点となる吸引起点部33から吸引源2までの吸引経路を構成する。吸引経路部3は、吸引源2と廃液貯留器4との間の第1吸引経路を区画する第1経路部材31と、廃液貯留器4と吸引起点部33との間の第2吸引経路を区画する第2経路部材32と、を有する。第1経路部材31と第2経路部材32とは、例えば可撓性を有するチューブからなる。
【0031】
廃液貯留器4は、吸引経路部3によって区画される吸引経路上において吸引起点部33と吸引源2との間に配置される。廃液貯留器4には、第1経路部材31及び第2経路部材32の両経路部材が接続される。廃液貯留器4は、吸引源2の吸引力によって吸引起点部33から吸引された廃液WLを貯留可能に構成される。
【0032】
[廃液貯留器の構成]
廃液貯留器4は、廃液WLを収容するライナー5(廃液収容容器)と、そのライナー5を収容するキャニスタ6(容器収容器)と、を備える。この廃液貯留器4の構成について、
図1に加えて
図2~
図5を参照して詳細に説明する。
図2~
図4は廃液貯留器4の斜視図であって、
図2はキャニスタ6の開閉蓋体62が閉塞位置に配置された状態を示し、
図3は開閉蓋体62が開放位置に配置された状態を示し、
図4はキャニスタ6からライナー5が取り出された状態を示す。
図5は、廃液貯留器4の要部を拡大して示す部分断面図である。
【0033】
廃液貯留器4は、キャニスタ6内にライナー5が収容された状態において、中心軸J1(
図2)が上下方向(鉛直方向)に沿って延びるように、吸引経路部3によって区画される吸引経路上で吸引起点部33と吸引源2との間に配置される。
【0034】
<キャニスタの構成>
キャニスタ6は、後述のライナー5を収容する容器収容器である。キャニスタ6は、容器本体61と、開閉蓋体62と、開閉操作部材63と、通気弁64と、を備える。
【0035】
容器本体61は、キャニスタ6においてライナー5を収容する本体部分を構成する。容器本体61は、上下方向に延びる容器軸に沿って長手の有底円筒状(有底容器状)に形成される。容器本体61の前記容器軸は、容器本体61の中心軸を表し、廃液貯留器4の中心軸J1と同軸上に配置され、上下方向に延びる。主として
図4に示すように、容器本体61は、上端面部6121において上方に開口する円形状の上方開口6121Hを有する有底円筒状に形成される。容器本体61は、ライナー5を収容する。更に、容器本体61は、後述の開閉蓋体62と共に、すなわち開閉蓋体62と協働して、収容したライナー5の外側に吸引源2の吸引力によって負圧とされる吸引空間S1を区画する。
【0036】
本実施形態では、容器本体61は、有底円筒状の本体部611と、本体部611の上端に接合された円筒体からなり、容器本体61の前記上端面部6121における上方開口6121Hを区画する上方構造部612と、を有する。容器本体61は、本体部611の上端に上方構造部612が接合されることにより、全体として一体に構成されている。
【0037】
容器本体61は、後述のライナー5よりも剛性の高い硬質の合成樹脂により形成されている。容器本体61において、本体部611と上方構造部612とは、同一の合成樹脂により形成されていてもよいし、異種の合成樹脂により形成されていてもよい。本実施形態では、容器本体61内に収容されたライナー5内における廃液WLの収容状態が視認可能となるように、本体部611は無色透明な光透過性を有する合成樹脂により形成されている。一方、上方構造部612は、キャニスタ6のデザイン性を考慮して着色された合成樹脂もしくは金属により形成されている。
【0038】
図1に示すように、上方構造部612は、吸引源接続部6122と大気開放部6123とを有する。吸引源接続部6122は、前記吸引空間S1と吸引経路部3の第1経路部材31とを連通し、吸引源2の吸引力によって前記吸引空間S1から排出される空気の流路となる空気排出路61221を区画する。空気排出路61221は、円筒体からなる上方構造部612の周壁を貫通して設けられる。吸引源接続部6122は、吸引経路部3の第1経路部材31と接続される。これにより、吸引源接続部6122の空気排出路61221と第1経路部材31とが連通し、吸引源2の吸引力によって前記吸引空間S1から吸引源2へ向かう方向(
図1の矢印H1)に空気が排出されて、前記吸引空間S1が負圧とされる。なお、空気排出路61221は、容器本体61の上方構造部612に設けられることに限定されず、開閉蓋体62に設けられていてもよい。
【0039】
大気開放部6123は、前記吸引空間S1と外部空間S4とを連通し、外部空間S4の空気が前記吸引空間S1へ流入する流路となる空気流入路61231を区画する。空気流入路61231は、円筒体からなる上方構造部612の周壁を貫通して設けられる。なお、空気流入路61231は、容器本体61の上方構造部612に設けられることに限定されず、開閉蓋体62に設けられていてもよい。また、大気開放部6123の空気流入路61231には、通気弁64が配置される。通気弁64は、空気流入路61231を閉鎖又は開放する弁体である。通気弁64によって空気流入路61231が閉鎖された状態では、吸引源2の吸引力の作用による前記吸引空間S1の負圧状態が維持される。一方、吸引源2の吸引力の作用が停止されて通気弁64によって空気流入路61231が開放された状態では、負圧とされていた前記吸引空間S1へ空気流入路61231を介して外部空間S4から空気が流入する。これにより、前記吸引空間S1が大気開放される。
【0040】
本実施形態では、上方構造部612において、吸引源接続部6122と大気開放部6123とは、上方構造部612の中心(上方開口6121Hの中心)を対称点とする点対称な位置関係にある。換言すると、上方構造部612を上方から見たときに、吸引源接続部6122と大気開放部6123とは、上方構造部612の中心(上方開口6121Hの中心)を通る仮想線上において、互いに対向配置されている。
【0041】
また、
図1~
図4に示すように、上方構造部612は、蓋体支持部6124と操作支持部6125とを、更に有する。蓋体支持部6124は、後述の開閉蓋体62を支持する。蓋体支持部6124は、容器本体61を上方から見たときに、本体部611よりも径方向外方に延出している。操作支持部6125は、後述の開閉操作部材63を支持する。操作支持部6125は、蓋体支持部6124と同様に、容器本体61を上方から見たときに、本体部611よりも径方向外方に延出している。上方構造部612において、蓋体支持部6124は吸引源接続部6122に近設され、操作支持部6125は大気開放部6123に近設されている。上方構造部612において、蓋体支持部6124と操作支持部6125とは、上方構造部612の中心(上方開口6121Hの中心)を対称点とする点対称な位置関係にある。換言すると、上方構造部612を上方から見たときに、蓋体支持部6124と操作支持部6125とは、上方構造部612の中心(上方開口6121Hの中心)を通る仮想線上において、互いに対向配置されている。
【0042】
また、
図4に示すように、上方構造部612は、第1シール溝6126を更に有する。第1シール溝6126は、上方構造部612において本体部611と接合された部分とは反対側の上端面部6121に形成された、上方開口6121Hの開口縁に沿った円環状の溝である。第1シール溝6126には、第1シール部材6126Aが嵌め込まれる。第1シール部材6126Aは、弾性変形可能なゴム材料からなるシール部材である。
【0043】
開閉蓋体62は、上方構造部612における蓋体支持部6124に支持され、上方構造部612における上端面部6121の上方開口6121Hを開閉する蓋体である。開閉蓋体62は、容器本体61と同様に、ライナー5よりも剛性の高い硬質の合成樹脂により形成されている。本実施形態では、開閉蓋体62は、容器本体61の上方構造部612と同一色に着色された合成樹脂により形成されている。
【0044】
図2~
図4に示すように、開閉蓋体62は、容器本体61の上下方向に延びる前記容器軸と直交する方向に延びる蓋体回動軸部621を有し、当該蓋体回動軸部621回りの回動が可能となるように、蓋体支持部6124に支持されている。開閉蓋体62は、蓋体回動軸部621回りに回動することにより、上方構造部612の上方開口6121Hを塞ぐ閉塞位置と、前記上方開口6121Hを開放する開放位置との間での変位が可能である。開閉蓋体62が閉塞位置に配置された状態が
図2に示され、開閉蓋体62が開放位置に配置された状態が
図3に示されている。開閉蓋体62は、前記閉塞位置に配置された状態において、容器本体61と共に、すなわち容器本体61と協働して、容器本体61に収容されたライナー5の外側に前記吸引空間S1を区画する。開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置されて前記上方開口6121Hが開閉蓋体62によって塞がれた状態においては、容器本体61内の前記吸引空間S1が密閉空間とされる。一方、開閉蓋体62が前記開放位置に配置されて前記上方開口6121Hが開放された状態においては、容器本体61に対するライナー5の出し入れが可能となる。
【0045】
図2~
図4に示すように、開閉蓋体62は、軸取付部622と、切欠き部623と、閉塞面部624と、天面部625と、押さえ部626とを有する。開閉蓋体62は、軸取付部622及び切欠き部623を除いて、平面視で円形状に形成される。
【0046】
軸取付部622は、開閉蓋体62において蓋体回動軸部621が取り付けられる部分である。開閉蓋体62は、軸取付部622を介して上方構造部612の蓋体支持部6124に支持される。切欠き部623は、開閉蓋体62の外周縁から中心62S(
図2)に向かって内側に切り欠かれた部分である。切欠き部623は、開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において、容器本体61内に収容されたライナー5における後述の容器蓋体52の廃液導入ポート522の露出を許容する(
図2参照)。開閉蓋体62において、軸取付部622と切欠き部623とは、開閉蓋体62の中心62Sを対称点とする点対称な位置関係にある。換言すると、開閉蓋体62の平面視において、軸取付部622と切欠き部623とは、開閉蓋体62の中心62Sを通り仮想線上において、互いに対向配置されている。
【0047】
閉塞面部624は、開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態で、上方構造部612の上端面部6121における上方開口6121Hに面して当該上方開口6121Hを塞ぐ部分である。閉塞面部624は、平面視において切欠き部623によって円の一部が切り欠かれた形状に形成される。
図3及び
図4に示すように、閉塞面部624は、その外周縁よりも僅かに内側に設けられた当接部6241と、当接部6241の内側の端縁から天面部625側に凹んだ凹部6242と、を有する。また、閉塞面部624には、その外周縁における切欠き部623の近傍に係合フック6243が設けられている。この係合フック6243は、後述の開閉操作部材63の係合部634と係合する。
【0048】
閉塞面部624の凹部6242は、開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において、容器本体61内に収容されたライナー5の上方側に上方空間S2(
図1)を区画する。当接部6241は、閉塞面部624の外周縁に沿った形状に形成され、開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において、ライナー5における後述の容器蓋体52のフランジ部521を介して、上方構造部612の上端面部6121に当接する。この当接部6241は、
図3及び
図4に示すように、第2シール溝6241Aを有する。第2シール溝6241Aは、当接部6241に沿った、すなわち、閉塞面部624の外周縁に沿った溝である。第2シール溝6241Aには、第2シール部材6241Bが嵌め込まれる。第2シール部材6241Bは、弾性変形可能なゴム材料からなるシール部材である。
【0049】
開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態においては、詳細については後述するが、ライナー5における容器蓋体52のフランジ部521は、上方から第2シール部材6241Bが圧接され、下方から前記第1シール部材6126Aが圧接される。換言すると、フランジ部521は、開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において、第1シール部材6126Aと第2シール部材6241Bとの間に挟み込まれる。これにより、容器本体61内の前記吸引空間S1と、前記上方空間S2との気密性が保持される。なお、開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態においては、ライナー5における容器蓋体52のフランジ部521に形成された複数の貫通穴5211(
図1,
図3)は、フランジ部521において第1シール部材6126A及び第2シール部材6241Bが圧接する圧接部分よりも内側に配置され、前記吸引空間S1と前記上方空間S2とを連通させる。これにより、吸引源2の吸引力によって前記吸引空間S1が負圧とされると共に、前記上方空間S2も負圧とされる。
【0050】
天面部625は、開閉蓋体62において閉塞面部624に対して厚み方向の反対側に配置された部分である。天面部625は、開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において、外方に露出する。天面部625は、閉塞面部624と同様に、平面視において切欠き部623によって円の一部が切り欠かれた形状に形成される。
図2に示すように、天面部625は、切欠き部623の周辺において傾斜部6251を有する。傾斜部6251は、開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において、ライナー5における容器蓋体52の、切欠き部623から露出する廃液導入ポート522に面し、切欠き部623の端縁から離れるに従い上に傾斜している。これにより、看護師等の医療従事者が、廃液導入ポート522に第2経路部材32を接続する作業を行う際に、開閉蓋体62の天面部625が邪魔となることを抑制し、第2経路部材32の接続作業の作業性の向上を図ることができる。
【0051】
押さえ部626は、
図3及び
図4に示すように、開閉蓋体62の閉塞面部624における凹部6242に設けられる。押さえ部626は、凹部6242に対し、天面部625とは反対側の内方側に向かって突設される。押さえ部626は、詳細については後述するが、ライナー5の廃液処理剤収納部524における第1被覆部材5242の、前記上方空間S2の負圧に伴う吸引力による上方側への塑性変形が規定値以上になることを規制する。開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において、前記上方空間S2が負圧とされていない場合を想定する。この場合、
図5に示すように、押さえ部626と第1被覆部材5242との間には、隙間GAが形成される。すなわち、押さえ部626は、前記上方空間S2の負圧に伴う吸引力によって第1被覆部材5242が予め設定された高さ位置に達するまで塑性変形したときに、当該第1被覆部材5242に接触するように設けられている。
【0052】
次に、
図1~
図4を参照して、開閉操作部材63について説明する。開閉操作部材63は、容器本体61の上方構造部612における操作支持部6125に支持され、開閉蓋体62の開閉を操作する部材である。なお、開閉操作部材63は、容器本体61の上方構造部612に支持されることに限定されず、開閉蓋体62に支持されていてもよい。開閉操作部材63は、開閉蓋体62を開閉させるときに看護師等の医療従事者によって操作される。開閉操作部材63は、開閉蓋体62の開放を規制して当該開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態を保持する閉塞保持姿勢と、開閉蓋体62の前記閉塞位置から前記開放位置への変位に応じた前記上方開口6121Hの開放を許容する開放許容姿勢との間で、姿勢変更が可能である。
【0053】
開閉操作部材63は、容器本体61及び開閉蓋体62と同様に、ライナー5よりも剛性の高い硬質の合成樹脂により形成されている。本実施形態では、開閉操作部材63は、容器本体61の上方構造部612及び開閉蓋体62との区別が容易となるように、これらとは異なる色に着色された合成樹脂により形成されている。
【0054】
開閉操作部材63は、操作回動軸部631と、押圧操作部632と、係合部634とを有する。
【0055】
操作回動軸部631は、容器本体61の前記容器軸と直交する方向に延びる軸部であって、前記蓋体回動軸部621と平行に延びる軸部である。操作回動軸部631は、上方構造部612の操作支持部6125に対して開閉操作部材63を回動可能に支持する機能を有する。開閉操作部材63は、操作回動軸部631回りの回動が可能となるように、操作支持部6125に支持されている。開閉操作部材63は、操作回動軸部631回りの回動によって、前記閉塞保持姿勢と前記開放許容姿勢との間での姿勢変更が可能である。
【0056】
押圧操作部632は、看護師等の医療従事者の押圧操作によって下方に向かう押圧力が付与される。係合部634は、開閉操作部材63が前記閉塞保持姿勢を取った状態において、開閉蓋体62の係合フック6243と係合する。係合部634が係合フック6243と係合した状態においては、開閉蓋体62の前記閉塞位置に配置された状態が保持される。押圧力の付与によって押圧操作部632が押し下げられると、開閉操作部材63は、前記閉塞保持姿勢から前記開放許容姿勢へと姿勢変更するように、操作回動軸部631回りに回動する。この際、係合部634と係合フック6243との係合状態が解除される。これにより、開閉蓋体62の前記閉塞位置から前記開放位置への回動が可能となる。一方、押圧操作部632に押圧力が付与されていない状態では、開閉操作部材63の前記閉塞保持姿勢が維持される。この際、係合部634と係合フック6243との係合が可能である。これにより、開閉蓋体62の前記閉塞位置に配置された状態の保持が可能となる。
【0057】
<ライナーの構成>
次に、
図1、
図3及び
図5に加えて、
図6~
図13を参照して、ライナー5について説明する。ライナー5について、
図6は側方から見た図であり、
図7は上方から見た図であり、
図8は断面図である。また、
図9~
図13は、ライナー5に備えられる容器蓋体52を示す図である。
【0058】
ライナー5は、キャニスタ6内に収容される廃液収容容器である。ライナー5は、キャニスタ6の前記吸引空間S1及び前記上方空間S2が負圧とされることに応じて、その内部が負圧とされることによって、吸引起点部33から吸引された廃液WLを収容する。ライナー5は、筒体軸J2を取り囲む周壁を有する円筒状に形成され、筒体軸J2に沿った軸方向(上下方向)の一端と他端とにそれぞれ開口51H1,51H2を有した筒体51と、筒体51の一端側の開口51H1を塞ぐ容器蓋体52と、筒体51の他端側の開口51H2を塞ぐ底板53と、を備える。ライナー5は、筒体51の一端に容器蓋体52が接合され、筒体51の他端に底板53が接合されることにより、全体として一体に構成されている。ライナー5は、筒体51の筒体軸J2が上下方向に延び、筒体51の一端側が上方側に向き他端側が下方側に向くように、キャニスタ6に収容される。すなわち、ライナー5がキャニスタ6に収容された状態においては、筒体51が上下方向に延び、筒体51の一端に接合された容器蓋体52が上方側に配置され、筒体51の他端に接合された底板53が下方側に配置される。
【0059】
筒体51は、ライナー5において廃液WLを収容する廃液収容空間S3を、容器蓋体52及び底板53と共に区画する本体部分を構成する。筒体51は、上下方向に延びる筒体軸J2に沿って長手の円筒状に形成される。筒体51の前記筒体軸J2は、筒体51の中心軸を表し、ライナー5がキャニスタ6内に収容された状態において、廃液貯留器4の中心軸J1と同軸上に配置され、上下方向に延びる。筒体51は、キャニスタ6よりも剛性が低く、可撓性を有する合成樹脂により形成されている。
【0060】
筒体51は、可撓性を有する合成樹脂により形成されることによって、前記筒体軸J2に沿った圧縮力が付与されることで押し潰された形態の圧縮変形が可能である。筒体51の圧縮変形によってライナー5のコンパクト化が可能となり、ライナー5の保管時や輸送時においてライナー5の占有スペースを小さくすることができる。なお、筒体51を圧縮変形させるときには、前記筒体軸J2に沿って筒体51に圧縮力を付与するようにすればよいが、前記筒体軸J2回りに捻転させながら筒体51に圧縮力を付与することが望ましい。これにより、筒体51の圧縮変形後の形態において、筒体51の一部が径方向外方に飛び出る形態となることを防止し、ライナー5のより適切なコンパクト化が可能となる。なお、圧縮変形状態の筒体51は、前記筒体軸J2に沿った引張力が付与されることで、前記筒体軸J2に沿って長手の円筒状に復元される。このように筒体51が円筒状とされた状態でライナー5はキャニスタ6にセットされ、ライナー5がキャニスタ6に収容された状態とされる。
【0061】
底板53は、円板状に形成され、筒体51の軸方向(上下方向)の他端(下端)に接合されることにより、当該筒体51の他端側の開口51H2を塞ぐ部材である。底板53は、筒体51よりも剛性の高い硬質の合成樹脂により形成されており、筒体51のように可撓性を有していない。本実施形態では、底板53は、筒体51との区別が容易となるように、着色された合成樹脂により形成されている。
【0062】
容器蓋体52は、上方から見た平面視で円形状に形成され、筒体51の軸方向(上下方向)の一端(上端)に接合されることにより、当該筒体51の一端側の開口51H1を塞ぐ蓋体である。容器蓋体52は、底板53と同様に、筒体51よりも剛性の高い硬質の合成樹脂により形成されており、筒体51のように可撓性を有していない。本実施形態では、容器蓋体52は、筒体51との区別が容易となるように、底板53と同一の色に着色された合成樹脂により形成されている。
【0063】
ライナー5がキャニスタ6に収容された状態において、容器蓋体52は、筒体51の上方側にキャニスタ6の開閉蓋体62との間に前記上方空間S2を区画する。すなわち、容器蓋体52は、ライナー5がキャニスタ6に収容された状態において、キャニスタ6の前記上方空間S2に面して配置される。この状態において容器蓋体52は、吸引された廃液WLを収容する前記廃液収容空間S3を、前記上方空間S2の下側において筒体51及び底板53と共に区画する。
【0064】
容器蓋体52は、上方から見た平面視で円板状の基部52Aと、基部52Aの下面において外周縁よりも内側で垂直下方に延出した円筒状の挿入部52Bと、を有する。容器蓋体52において基部52Aと挿入部52Bとは一体に構成されている。容器蓋体52は、挿入部52Bが筒体51内に挿入され、当該挿入部52Bの外周面が筒体51の内周面に密着した状態で筒体51の一端(上端)に接合される。
【0065】
容器蓋体52において基部52Aは、フランジ部521と、廃液導入ポート522と、廃液排出ポート523と、連通ポート526と、廃液処理剤収納部524と、把持部材525と、を有する。
【0066】
フランジ部521は、容器蓋体52が筒体51の一端に接合された状態において、基部52Aにおける挿入部52Bよりも径方向外方に延出した部分である。すなわち、フランジ部521は、筒体51に対して径方向外方に延出している。フランジ部521は、ライナー5がキャニスタ6に収容された状態において、容器本体61の上方構造部612における上端面部6121に当接する。更に、キャニスタ6の開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態においては、フランジ部521は、当該開閉蓋体62の閉塞面部624における当接部6241と、上方構造部612における上端面部6121との間に挟み込まれる。すなわち、フランジ部521は、開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において、前記第1シール部材6126Aと前記第2シール部材6241Bとの間に挟み込まれて両シール部材が圧接する圧接部分を有する。既述の通り、開閉蓋体62の閉塞面部624は、切欠き部623に対応して円の一部が切り欠かれた形状を有している。このため、フランジ部521の下面は、全周にわたって前記第1シール部材6126Aが圧接しているが、フランジ部521の上面は、切欠き部623に対応した部分を除いて前記第2シール部材6241Bが圧接している。換言すると、フランジ部521において、前記第1シール部材6126A及び前記第2シール部材6241Bの両シール部材が圧接する圧接部分は、切欠き部623に対応した部分を除いた残余の部分となる。
【0067】
フランジ部521には、厚み方向(上下方向)に貫通して設けられた複数の貫通穴5211が形成されている。複数の貫通穴5211は、フランジ部521において、前記圧接部分よりも内側に配置され、キャニスタ6の前記吸引空間S1と前記上方空間S2とを連通させる。これにより、吸引源2の吸引力によって前記吸引空間S1が負圧とされると共に、前記上方空間S2も負圧とされる。なお、フランジ部521において切欠き部623に対応した部分には、貫通穴5211は形成されていない。
【0068】
連通ポート526は、容器蓋体52が筒体51の一端に接合された状態において、筒体51よりも径方向の内側で容器蓋体52を貫通して設けられた、上下方向に延びるポートである。連通ポート526の上端部は、キャニスタ6の開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において、容器本体61内に収容されたライナー5の上方側に形成された前記上方空間S2内に配置される。一方、連通ポート526の下端部は、筒体51の廃液収容空間S3内に配置される。すなわち、連通ポート526は、ライナー5の内部に相当する筒体51の廃液収容空間S3と、ライナー5の上方側に形成された前記上方空間S2とを連通する。これにより、吸引源2の吸引力によって前記吸引空間S1及び前記上方空間S2が負圧とされることに伴って、筒体51の廃液収容空間S3も負圧とされる。
【0069】
なお、連通ポート526は、その下端部に止水フィルタが設けられている。ライナー5においては、筒体51の廃液収容空間S3内に収容された廃液WLの液面が連通ポート526の下端部に設けられた止水フィルタに達した場合に、廃液収容空間S3内に収容された廃液WLが満杯状態になったとされる。ここで、廃液排出ポート523は、容器蓋体52が筒体51の上端に接合された状態において、筒体51よりも径方向の内側で容器蓋体52を貫通して設けられた、上下方向に延びるポートである。廃液排出ポート523は、ライナー5がキャニスタ6から取り出された状態において、ライナー5内(筒体51の廃液収容空間S3内)に収容された廃液WLを排出するためのポートである。容器蓋体52には、把持部材525が取り付けられている。看護師等の医療従事者は、把持部材525を把持しつつ、ライナー5をキャニスタ6から取り出すことができる。
【0070】
廃液導入ポート522は、容器蓋体52が筒体51の一端に接合された状態において、筒体51よりも径方向の内側で容器蓋体52を貫通して設けられた、上下方向に延びるポートである。本実施形態では、廃液導入ポート522と廃液排出ポート523とは、筒体51の筒体軸J2を含む仮想平面を基準として対称な位置関係にある。より望ましくは、廃液導入ポート522と廃液排出ポート523とは、容器蓋体52を上方から見た平面視において、筒体軸J2上に配置される容器蓋体52の中心を対称点とする点対称な位置関係にある。換言すると、容器蓋体52を上方から見た平面視において、廃液導入ポート522と廃液排出ポート523とは、容器蓋体52の中心を通る仮想線上において、互いに対向配置されている。
【0071】
廃液導入ポート522は、キャニスタ6の開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において、切欠き部623から露出するように、容器蓋体52から上方側へ突出している。廃液導入ポート522は、吸引経路部3の第2経路部材32と接続される。廃液導入ポート522は、吸引源2の吸引力によって前記吸引空間S1及び前記上方空間S2が負圧とされることに応じて、ライナー5の廃液収容空間S3が負圧とされると、吸引起点部33から吸引された廃液WLを、前記廃液収容空間S3内に導入する。すなわち、吸引源2の吸引力によってライナー5の廃液収容空間S3が負圧とされた場合、吸引起点部33から吸引された廃液WLは、第2経路部材32及び廃液導入ポート522を流れて(
図1の矢印H2方向に流れて)、ライナー5の廃液収容空間S3内に収容される。
【0072】
廃液処理剤収納部524は、容器蓋体52において、廃液収容空間S3内に収容された廃液WLを処理するための廃液処理剤を収納する部分である。廃液処理剤収納部524は、容器蓋体52の中央において筒体51よりも径方向の内側で、且つ、廃液導入ポート522、廃液排出ポート523及び連通ポート526よりも内側に配置される。
【0073】
廃液処理剤収納部524に収納される廃液処理剤としては、凝固剤や凝集剤を挙げることができる。凝固剤は、廃液WLを凝固させることが可能な処理剤である。凝固剤としては、粉末状、粒状、塊状などの固体状のものが用いられる。ただし、廃液WLとの接触面積を可及的に大きくするために、凝固剤は、粉末状又は粒状であるのが望ましい。ライナー5の廃液収容空間S3内に収容された廃液WLに凝固剤が添加されると、廃液WLが凝固剤によって凝固する。一方、凝集剤は、廃液WLに含まれる成分を凝集させてライナー5の廃液収容空間S3内において凝集物を生成させることが可能な処理剤である。具体的には、凝集剤は、例えば、血液に含まれる細胞成分である赤血球、液状成分である血漿に含まれるタンパク質などを凝集させる。凝集剤としては、粉末状、粒状、塊状などの固体状のものが用いられる。ただし、廃液WLに分散しやすいようにするために、凝集剤は、粉末状又は粒状であるのが望ましい。ライナー5の廃液収容空間S3内に収容された廃液WLに凝集剤が添加されると、廃液WLに含まれる成分が凝集剤によって凝集物として廃液収容空間S3内に沈殿する。これにより、廃液収容空間S3内において廃液WLが、上澄み液と凝集物とに分離される。
【0074】
廃液処理剤収納部524は、廃液処理剤が収納される本体部分を構成する収納本体5241と、収納本体5241に接合される第1被覆部材5242及び第2被覆部材5243と、第2被覆部材5243を覆うように設けられる保護フィルム5244と、を含む。
【0075】
収納本体5241は、キャニスタ6の前記上方空間S2に面して開口した第1開口524H1と、当該第1開口524H1と対向し、筒体51の前記廃液収容空間S3に面して開口した第2開口524H2と、を有する。そして、収納本体5241は、第1開口524H1と第2開口524H2との間において廃液処理剤を収納する処理剤収納空間S5を区画する。収納本体5241において、第2開口524H2は、前記処理剤収納空間S5内に収納された廃液処理剤を前記廃液収容空間S3へ導出するための導出口を構成し、第1開口524H1よりも開口面積が小さくなるように設けられている。収納本体5241は、容器蓋体52における基部52Aの中央において、下方側に凹んで設けられた部分によって構成される。このため、容器蓋体52が筒体51の一端(上端)に接合された状態においては、収納本体5241は、筒体51の一端に対して前記廃液収容空間S3側へ突出している。換言すると、収納本体5241は、筒体51の前記廃液収容空間S3内に配置されている。これにより、容器蓋体52に対して上方側に突出した部分を少なくし、ライナー5の全体としての低背化が可能となる。なお、収納本体5241は、容器蓋体52と一体に形成されている。このため、収納本体5241は、硬質の合成樹脂により形成されている。
【0076】
第1被覆部材5242は、第1開口524H1を覆うように収納本体5241に接合された部材である。
図3に示すように、第1被覆部材5242は、キャニスタ6の開閉蓋体62が前記開放位置に配置されて前記上方空間S2の負圧が解除された状態では、露出する。この状態で、第1被覆部材5242を下方側へ押し込む押圧力が看護師等の医療従事者によって付与される。
【0077】
第1被覆部材5242は、上下方向への塑性変形が可能な材料(合成樹脂)で構成されている。すなわち、第1被覆部材5242は、キャニスタ6の前記上方空間S2が負圧とされた状態では、吸引力によって上方側へ塑性変形する。一方、開閉蓋体62の前記開放位置に配置されて前記上方空間S2の負圧が解除された状態では、第1被覆部材5242は、看護師等の医療従事者による下方側への押圧力によって下方側へ塑性変形する。
【0078】
ここで、既述の通り、キャニスタ6の前記上方空間S2を区画する開閉蓋体62の凹部6242には、押さえ部626が設けられている。第1被覆部材5242は、前記上方空間S2の負圧に伴う吸引力によって予め設定された高さ位置に達するまで塑性変形したときに、押さえ部626に接触する。これにより、第1被覆部材5242は、前記上方空間S2の負圧に伴う吸引力による上方側への塑性変形が規定値以上になることが規制される。また、開閉蓋体62が前記閉塞位置に配置された状態において前記上方空間S2が負圧とされていない場合、押さえ部626と第1被覆部材5242との間に隙間GAが形成されるように、押さえ部626の凹部6242に対する突出長さが設定されている(
図5参照)。すなわち、ライナー5がキャニスタ6に収容された状態において、開閉蓋体62が前記開放位置から前記閉塞位置に向かって回動するときには、押さえ部626の第1被覆部材5242に対する接触が回避される。これにより、開閉蓋体62の開閉動作によって第1被覆部材5242が破損することを防止することができる。
【0079】
第2被覆部材5243は、第2開口524H2を覆うように収納本体5241に接合された部材である。第2被覆部材5243は、第1被覆部材5242とは異なり、可及的に塑性変形を生じないような材料で構成されている。第2被覆部材5243は、例えば紙などによって構成される。第2被覆部材5243は、筒体51の前記廃液収容空間S3が負圧とされた状態での吸引力によっては塑性変形せず、第1被覆部材5242に前記押圧力が付与された場合に塑性変形することなく破断する。すなわち、第2被覆部材5243は、第1被覆部材5242を下方側へ押し込む押圧力が当該第1被覆部材5242に付与された場合に、その押圧力が廃液処理剤を介して伝達されて破断する。第2被覆部材5243が破断すると、当該第2被覆部材5243による第2開口524H2の被覆が解除される。これにより、収納本体5241の前記処理剤収納空間S5に収納されていた廃液処理剤が、第2開口524H2を介して筒体51の前記廃液収容空間S3内へ添加される。
【0080】
なお、収納本体5241は、
図12及び
図13に示すように、複数の第2開口524H2を有するように構成されていてもよい。この場合、複数の第2開口524H2の各々に個別に第2被覆部材5243が設けられていてもよいし、複数の第2開口524H2の全体を覆うように1つの第2被覆部材5243が設けられていてもよい。
【0081】
また、第2被覆部材5243は、筒体51の前記廃液収容空間S3に収容された廃液WLの前記処理剤収納空間S5への通過を規制するように構成されている。すなわち、第2被覆部材5243は、前記廃液収容空間S3と前記処理剤収納空間S5とを連通させるような貫通孔を有していない。これにより、前記処理剤収納空間S5に収納された廃液処理剤の廃液WLとの接触による変質を防止することができる。
【0082】
また、第1被覆部材5242は、看護師等の医療従事者による前記押圧力の付与位置の目印となる押圧位置案内部52421を有している。この押圧位置案内部52421の設置数は、収納本体5241の第2開口524H2の数に対応している。例えば、収納本体5241において2つの第2開口524H2が設けられている場合には、それに対応して2つの押圧位置案内部52421が設けられる。第1被覆部材5242において、押圧位置案内部52421は、
図7に示すように、第2開口524H2の直上となる位置に設けられている。これにより、押圧位置案内部52421を目印として第1被覆部材5242を下方側へ押し込む押圧力が付与された場合に、その押圧力が効果的に第2被覆部材5243に伝達される。このため、第1被覆部材5242に押圧力が付与された場合に、より確実に第2被覆部材5243が破断され、第2開口524H2を介して筒体51の前記廃液収容空間S3内へ適切に廃液処理剤を添加することができる。
【0083】
保護フィルム5244は、前記廃液収容空間S3側から第2被覆部材5243を覆うように設けられ、当該第2被覆部材5243を保護する部材である。この保護フィルム5244は、ライナー5の保管時や輸送時などに筒体51が圧縮変形された状態において、当該筒体51の一部が第2被覆部材5243に当接し、これによって第2被覆部材5243が破断してしまうことを防止して第2被覆部材5243を保護する機能を有する。保護フィルム5244は、第1被覆部材5242に対する押圧力の作用によって第2被覆部材5243が破断したときに、第2開口524H2を介した廃液処理剤の排出の邪魔とならないように、廃液処理剤の重みによって開閉自在に収納本体5241に固定されている。
【0084】
以上のように構成されたライナー5においては、吸引源2の吸引力によってキャニスタ6の前記吸引空間S1及び前記上方空間S2が負圧とされることに応じて、筒体51の廃液収容空間S3が負圧とされることにより、吸引された廃液WLが当該廃液収容空間S3内に収容される。この際、廃液処理剤収納部524において前記上方空間S2に面して開口した第1開口524H1を覆う第1被覆部材5242は、前記上方空間S2の負圧に伴う吸引力によって上方側へ塑性変形する。このため、収納本体5241の第2開口524H2を覆う第2被覆部材5243は、上方側からの力を受けず、破断することが規制される。これにより、ライナー5の廃液収容空間S3への廃液WLの吸引中に、収納本体5241の処理剤収納空間S5から廃液処理剤が放出されることを防止することができる。
【0085】
一方、キャニスタ6の開閉蓋体62が開放されて前記上方空間S2の負圧が解除された状態において、第1被覆部材5242を下方側へ押し込む押圧力が当該第1被覆部材5242に付与された場合、その押圧力が廃液処理剤を介して第2被覆部材5243に伝達される。これにより、第2被覆部材5243が破断すると、当該第2被覆部材5243による第2開口524H2の被覆が解除される。この結果、収納本体5241の処理剤収納空間S5に収納されていた廃液処理剤が、第2開口524H2を介して筒体51の前記廃液収容空間S3内へ添加される。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取り得る。
【0087】
上記の実施形態では、廃液処理剤収納部524を構成する第1被覆部材5242が一層構造である場合について説明したが、このような構成に限定されるものではない。第1被覆部材5242は、
図14~
図16に示すような、下層フィルム5242Aと上層フィルム5242Bとを含む積層構造によって構成されていてもよい。
【0088】
積層構造の第1被覆部材5242において、下層フィルム5242Aは、第1開口524H1を覆うように収納本体5241に接合された層であり、上層フィルム5242Bは、下層フィルム5242A上に貼着された層である。このように、第1被覆部材5242を積層構造とすることによって、前記上方空間S2の負圧に伴う吸引力による上方側への塑性変形と、押圧力の付与による下方側への塑性変形との、第1被覆部材5242の塑性変形に対する設計の自由度を向上することができる。
【0089】
また、上層フィルム5242Bは、把持部5242BAを有し、この把持部5242BAを把持しつつ、下層フィルム5242Aに対する剥離が可能である。そして、下層フィルム5242Aは、複数の貫通穴5242Cを有している。
【0090】
例えば、筒体51の廃液収容空間S3に収容された廃液WLに添加される廃液処理剤として、凝集剤を用いる場合を想定する。この場合、前記廃液収容空間S3内に収容された廃液WLに凝集剤が添加されると、廃液WLに含まれる成分が凝集剤によって凝集物として前記廃液収容空間S3内に沈殿する。これにより、前記廃液収容空間S3内において廃液WLが、上澄み液と凝集物とに分離される。このような上澄み液を排出する場合に、上層フィルム5242Bを下層フィルム5242Aに対して剥離し、複数の貫通穴5242Cを有した下層フィルム5242Aを露出させるようにすればよい(
図16参照)。これにより、上澄み液だけを貫通穴5242Cを通過させ、凝集物と分離して濾過するように排出することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 廃液吸引システム
2 吸引源
3 吸引経路部
4 廃液貯留器
5 ライナー(廃液収容容器)
51 筒体
52 容器蓋体
522 廃液導入ポート
524 廃液処理剤収納部
5241 収納本体
524H1 第1開口
524H2 第2開口
5242 第1被覆部材
52421 押圧位置案内部
5242A 下層フィルム
5242B 上層フィルム
5242C 貫通穴
5243 第2被覆部材
5244 保護フィルム
53 底板
6 キャニスタ(容器収容器)
61 容器本体
6121 上端面部
6121H 上方開口
62 開閉蓋体
6242 凹部
626 押さえ部
S1 吸引空間
S2 上方空間
S3 廃液収容空間
S4 外部空間
S5 処理剤収納空間