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  • 特許-同期整流制御装置及び受電装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】同期整流制御装置及び受電装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/21 20060101AFI20230427BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20230427BHJP
【FI】
H02M7/21 A
H02J50/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019185374
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021061705
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】大森 洋一
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博志
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/064378(WO,A1)
【文献】特開2016-010248(JP,A)
【文献】特開2012-253964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/21
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流回路を制御する同期整流制御装置であって、
前記整流回路は、複数のスイッチング素子により、複数のコンデンサ及びリアクトルからなる直列共振回路の電流を整流して直流に変換する回路であり、
前記複数のコンデンサの中で前記整流回路に接続されているコンデンサの電圧の極性を判別する電圧極性判別器と、
前記電圧極性判別器の出力に位相同期した信号を出力する位相同期回路と、
前記位相同期回路の出力から位相を90度遅らせた信号を出力する位相遅延回路と、
前記位相遅延回路の出力に応じて前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するゲート信号を出力するゲート信号生成回路と、
を備えることを特徴とする同期整流制御装置。
【請求項2】
複数のスイッチング素子により、複数のコンデンサ及びリアクトルからなる直列共振回路の電流を整流して直流に変換する整流回路と、
前記複数のコンデンサの中で前記整流回路に接続されているコンデンサの電圧の極性を判別する電圧極性判別器と、
前記電圧極性判別器の出力に位相同期した信号を出力する位相同期回路と、
前記位相同期回路の出力から位相を90度遅らせた信号を出力する位相遅延回路と、
前記位相遅延回路の出力に応じて前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するゲート信号を出力するゲート信号生成回路と、
を備えることを特徴とする受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流回路を同期制御する同期整流制御装置及び受電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車などにおいて、ワイヤレス電力伝送の研究が行われている(例えば、非特許文献1参照)。図3を参照して、従来の一般的なワイヤレス電力伝送システムについて説明する。
【0003】
送電装置20は、コンデンサ2及びリアクトル3からなる直列共振回路と、該直列共振回路の共振周波数の交流電圧を出力する交流電圧源1と、を備える。
【0004】
受電側は、コンデンサ5及びリアクトル4からなる直列共振回路と、ダイオードが逆並列に接続されたスイッチング素子61~64で構成された整流回路60と、整流回路60に並列に接続された平滑コンデンサ7と、電流センサ9と、極性判別器10と、位相同期回路(PLL)11と、ゲート信号生成回路12と、を備える。コンデンサ5及びリアクトル4からなる直列共振回路以外は、受電装置(受電箱)21に納められる。負荷8は、平滑コンデンサ7と並列に接続される。
【0005】
コンデンサ5及びリアクトル4からなる直列共振回路の共振周波数は、送電装置20の直列共振回路の共振周波数と略一致している。極性判別器10は、コンデンサ5の電流を検出する電流センサ9の出力の極性を判別した2値(1及び0)の信号を出力する。位相同期回路11は極性判別器10の出力に同期した2値(0及び1)の信号を出力する。
【0006】
ゲート信号生成回路12は、位相同期回路11の出力が一方の値の時には、スイッチング素子61,64をオンさせ、且つスイッチング素子62,63をオフさせ、位相同期回路11の出力が他方の値の時には、スイッチング素子62,63をオンさせ、且つスイッチング素子61,64をオフさせるゲート信号を出力する。この回路構成により、スイッチング素子61,64の逆並列のダイオードがオンする方向の電流が流れている時には、スイッチング素子61,64をオンさせ、逆方向の電流が流れている時には、スイッチング素子62,63をオンさせることができる。一般にダイオードよりもスイッチング素子の電圧降下が低いので電流はダイオードにはほとんど流れずにスイッチング素子を流れるようになり、素子に電流が流れることによる損失を低減できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】竹内琢磨、外3名、「走行中ワイヤレス電力伝送を適用したワイヤレスインホイールモータのシステム制御に関する基礎研究」、半導体電力変換・モータドライブ 合同研究会資料、一般社団法人 電気学会、2017年1月27日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図3に示した従来のワイヤレス電力伝送システムでは、コンデンサ5の電流に含まれる高調波の影響により、位相同期回路11の出力がコンデンサ5の電流の基本波の極性を正確に表すことが困難であった。そのため、整流回路60の各スイッチング素子を電流極性に同期してスイッチングさせることができず、スイッチング損失が大きくなったり、整流動作ができなくなったりすることがあった。また、電流センサ9には検出遅れがあるため、コンデンサ5に流れる電流の周波数が高くなると電流を遅れて検出してしまい、それによって整流回路60の各スイッチング素子を電流極性に同期してスイッチングさせることができなくなる。
【0009】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、整流回路を高精度に同期制御することが可能な同期整流制御装置及び受電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係る同期整流制御装置は、整流回路を制御する同期整流制御装置であって、前記整流回路は、複数のスイッチング素子により、複数のコンデンサ及びリアクトルからなる直列共振回路の電流を整流して直流に変換する回路であり、前記複数のコンデンサの中で前記整流回路に接続されているコンデンサの電圧の極性を判別する電圧極性判別器と、前記電圧極性判別器の出力に位相同期した信号を出力する位相同期回路と、前記位相同期回路の出力から位相を90度遅らせた信号を出力する位相遅延回路と、前記位相遅延回路の出力に応じて前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するゲート信号を出力するゲート信号生成回路と、を備える。
【0013】
一実施形態に係る受電装置は、複数のスイッチング素子により、複数のコンデンサ及びリアクトルからなる直列共振回路の電流を整流して直流に変換する整流回路と、前記複数のコンデンサの中で前記整流回路に接続されているコンデンサの電圧の極性を判別する電圧極性判別器と、前記電圧極性判別器の出力に位相同期した信号を出力する位相同期回路と、前記位相同期回路の出力から位相を90度遅らせた信号を出力する位相遅延回路と、前記位相遅延回路の出力に応じて前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御するゲート信号を出力するゲート信号生成回路と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、整流回路を高精度に同期制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムを示す回路図である。
図2】第2の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムを示す回路図である。
図3】従来のワイヤレス電力伝送システムを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1を参照して、第1の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムについて説明する。送電装置20は、図3と同様であるため、説明を省略する。
【0018】
受電側は、コンデンサ5及びリアクトル4からなる直列共振回路と、ダイオードが逆並列に接続されたスイッチング素子61~64で構成された整流回路60と、整流回路60に並列に接続された平滑コンデンサ7と、電圧極性判別器14と、位相同期回路(PLL)11と、位相遅延回路13と、ゲート信号生成回路12と、を備える。このうちリアクトル4以外は、受電装置(受電箱)22に納められる。また、コンデンサ5と、電圧極性判別器14と、位相同期回路11と、位相遅延回路13と、ゲート信号生成回路12とにより、同期整流制御装置71を構成する。すなわち、受電装置22は、同期整流制御装置71と、整流回路60と、平滑コンデンサ7と、を備える。
【0019】
負荷8は、平滑コンデンサ7と並列に接続される。
【0020】
コンデンサ5及びリアクトル4からなる直列共振回路の共振周波数は、送電装置20の直列共振回路の共振周波数と略一致している。
【0021】
整流回路60は、複数のスイッチング素子61~64により、コンデンサ5及びリアクトル4からなる直列共振回路の電流を整流して直流に変換する。
【0022】
電圧極性判別器14は、コンデンサ5の電圧の極性を検出した2値(1及び0)の信号を位相同期回路11に出力する。
【0023】
位相同期回路11は、電圧極性判別器14の出力に位相同期した2値(0及び1)の信号を位相遅延回路13に出力する。
【0024】
位相遅延回路13は、位相同期回路11の出力から位相を90度遅らせた2値の信号をゲート信号生成回路12に出力する。コンデンサ電圧とコンデンサ電流との位相差は90度であるので、位相遅延回路13により位相差を補正することができ、コンデンサ5の電圧の極性から、直列共振回路の電流の極性を推定することができる。
【0025】
ゲート信号生成回路12は、位相遅延回路13の出力に応じて、スイッチング素子61~64のスイッチングを制御するゲート信号G1~G4をそれぞれスイッチング素子61~64に出力する。具体的には、ゲート信号生成回路12は、位相遅延回路13の出力が一方の値の時には、スイッチング素子61,64をオンさせ、且つスイッチング素子62,63をオフさせ、位相遅延回路13の出力が他方の値の時には、スイッチング素子62,63をオンさせ、且つスイッチング素子61,64をオフさせるゲート信号を出力する。この回路構成により、スイッチング素子61,64の逆並列のダイオードがオンする方向の電流が流れている時には、スイッチング素子61,64をオンさせ、逆方向の電流が流れている時には、スイッチング素子62,63をオンさせることができる。
【0026】
図3に示した従来のワイヤレス電力伝送システムと比較して、第1の実施形態では、同期整流制御装置71は、コンデンサ5に流れる電流の極性を判別するのではなく、電圧極性判別器14によりコンデンサ5の電圧の極性を判別する。コンデンサ電圧はコンデンサ電流を積分したものなので、コンデンサ電圧の高調波成分はコンデンサ電流の高調波成分よりも小さくなる。そのため、高調波の影響を低減でき、直列共振回路の電流の極性を正確に推定することが可能となる。また、電流の極性判別には、電流センサ9、及び電圧コンパレータで構成される極性判別器10の2つの部品が必要であるが、同期整流制御装置71は、電圧コンパレータで構成される電圧極性判別器14のみにより電圧の極性を判別する。そのため、極性の検出遅れを低減することが可能となる。したがって、同期整流制御装置71により、整流回路60を高精度に同期制御でき、スイッチング損失の増加を抑制でき確実な整流動作が可能となる。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、図2を参照して、第2の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムについて説明する。図1を参照して説明した第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0028】
第2の実施形態では、受電側は、複数のコンデンサ51,52及びリアクトル4からなる直列共振回路と、ダイオードが逆並列に接続されたスイッチング素子61~64で構成された整流回路60と、整流回路60に並列に接続された平滑コンデンサ7と、電圧極性判別器14と、位相同期回路(PLL)11と、位相遅延回路13と、ゲート信号生成回路12と、を備える。このうちリアクトル4とコンデンサ51以外は、受電装置(受電箱)23に納められる。また、コンデンサ52と、電圧極性判別器14と、位相同期回路11と、位相遅延回路13と、ゲート信号生成回路12とにより、同期整流制御装置72を構成する。すなわち、受電装置23は、同期整流制御装置72と、整流回路60と、平滑コンデンサ7と、を備える。
【0029】
複数のコンデンサ51,52及びリアクトル4からなる直列共振回路の共振周波数は、送電装置20の共振周波数と略一致する。
【0030】
整流回路60は、複数のスイッチング素子61~64により、複数のコンデンサ51,52及びリアクトル4からなる直列共振回路の電流を整流して直流に変換する。
【0031】
電圧極性判別器14は、複数のコンデンサ51,52の中で整流回路60に接続されているコンデンサ52の電圧の極性を判別して、2値(1及び0)の信号を位相同期回路11に出力する。
【0032】
位相同期回路11は、電圧極性判別器14の出力に位相同期した2値(0及び1)の信号を位相遅延回路13に出力する。
【0033】
位相遅延回路13は、位相同期回路11の出力から位相を90度遅らせた2値の信号をゲート信号生成回路12に出力する。コンデンサ電圧とコンデンサ電流との位相差は90度であるので、位相遅延回路13により、位相差を補正することができ、コンデンサ52の電圧の極性から、直列共振回路の電流の極性を推定することができる。
【0034】
ゲート信号生成回路12は、位相遅延回路13の出力に応じて、スイッチング素子61~64のスイッチングを制御するゲート信号をスイッチング素子61~64に出力する。具体的には、ゲート信号生成回路12は、位相遅延回路13の出力が一方の値の時には、スイッチング素子61,64をオンさせ、且つスイッチング素子62,63をオフさせ、位相遅延回路13の出力が他方の値の時には、スイッチング素子62,63をオンさせ、且つスイッチング素子61,64をオフさせるゲート信号を出力する。
【0035】
図1を参照して説明した第1の実施形態では、コンデンサ5の電圧極性を判別する必要があるため、コンデンサ5が受電装置22に収納される。共振によりリアクトル4とコンデンサ5との接続点の電圧は非常に高くなり、その箇所が受電装置22の境界部分となる。そのため、前記接続点と受電装置22との間に高い絶縁耐圧を施す必要があり、その結果、受電装置22が大きくなる。
【0036】
その点、第2の実施形態では、図1に示したコンデンサ5を複数の直列接続されたコンデンサに分割し、その中の1つを受電装置23内に納める。コンデンサ51の静電容量よりもコンデンサ52の静電容量を大きくすることで、コンデンサ51とコンデンサ52との接続部の電圧を低く抑えることができる。そのため、コンデンサ52を受電装置23の中に納めても、その接続部と受電装置23との絶縁耐圧を低くすることができる。したがって、第2の実施形態では、第1の実施形態の効果に加えて、受電装置23を小型化することが可能となる。
【0037】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。
【0038】
例えば、第2の実施形態では、受電側の直列共振回路のコンデンサの数を2つとしているが、該コンデンサの数は3つ以上であってもよい。例えば、受電側の直列共振回路のコンデンサの数がn個である場合、整流回路60に接続された1個のコンデンサのみが受電装置23に納められる。
【符号の説明】
【0039】
1 交流電圧源
2,5,51,52 コンデンサ
3,4 リアクトル
7 平滑コンデンサ
8 負荷
9 電流センサ
11 位相同期回路
12 ゲート信号生成回路
13 位相遅延回路
14 電圧極性判別器
20 送電装置
22,23 受電装置
60 整流回路
61,62,63,64 スイッチング素子
71,72 同期整流制御装置
図1
図2
図3