(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】ビレット搬送装置
(51)【国際特許分類】
B66F 7/20 20060101AFI20230427BHJP
B66C 1/58 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B66F7/20 C
B66C1/58 M
(21)【出願番号】P 2019186631
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山敷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】新井 克彦
(72)【発明者】
【氏名】余川 渉
(72)【発明者】
【氏名】細川 潤
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178396(JP,A)
【文献】特開平05-162989(JP,A)
【文献】特開平05-162848(JP,A)
【文献】特開2011-105398(JP,A)
【文献】特開昭63-295305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0099788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 7/00-7/28
B66C 1/00-3/20
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向から見て門型をなす門型フレーム(1)と、前記門型フレーム(1)の下部に設置されると共に前記門型フレーム(1)を異なる前後地点にまで走行させる走行装置(2)と、左右に延びるビレット(B)を吊り下げる吊下げ装置(3)とを備え、
前記吊下げ装置(3)は、前記ビレット(B)の左右両側を把持する一対の把持装置(4,4)と、前記門型フレーム(1)の左右にそれぞれ固定されると共に各前記把持装置(4)を昇降させる一対の昇降装置(5,5)と、一対の前記昇降装置(5,5)の作動を同期させると共に前記門型フレーム(1)の左右において回転可能に支持される同期軸(6)とを備え、
前記把持装置(4)は、駆動によって前記ビレット(B)の把持、及び把持の解放をするものであり、
前記昇降装置(5)は、前記同期軸(6)を回転させる昇降用モータ(51)と、前記同期軸(6)の回転運動を前記把持装置(4)の昇降運動に変えて伝動する昇降用伝動装置(53)とを備え、
前記同期軸(6)はその長手方向の左右両側において一対の前記昇降用伝動装置(53)に連結されていることを特徴とするビレット搬送装置。
【請求項2】
前記昇降用伝動装置(53)はチェーン伝動装置であることを特徴とする請求項1に記載のビレット搬送装置。
【請求項3】
前記吊下げ装置(3)は、一対の前記昇降装置(5,5)に対し架設する状態で連結され且つ一対の前記把持装置(4,4)を固定する固定ビーム(7)を備え、
前記チェーン伝動装置は、複数のスプロケット(53d)と、前記複数のスプロケット(53d)に巻き掛けられると共に長手方向の両端が前記固定ビーム(7)に連結されるチェーン(53e)とを備えることを特徴とする請求項2に記載のビレット搬送装置。
【請求項4】
前記昇降用モータ(51)は前記門型フレーム(1)の下部に固定され、
前記昇降装置(5)は、前記昇降用モータ(51)の回転運動を前記昇降用モータ(51)よりも上方の前記同期軸(6)に伝動する同期軸用伝動装置(52,52U)を備えることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のビレット搬送装置。
【請求項5】
前記同期軸用伝動装置(52U)は、
前記昇降用伝動装置(53)とは異なる装置としての複数系統のチェーン伝動装置(52V)であって、前記昇降用モータ(51)の回転運動を前記同期軸(6)に異なる系統で伝動する
前記複数系統のチェーン伝動装置(52V)を備えることを特徴とする請求項4に記載のビレット搬送装置。
【請求項6】
前記同期軸(6)は前記門型フレーム(1)の上部に支持されることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のビレット搬送装置。
【請求項7】
前記門型フレーム(1)の梁部(12)が移動する前後範囲の真下にビレット(B)を積み上げて保管する保管部(9)を備えることを特徴とする請求項6に記載のビレット搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビレットを吊り下げて搬送する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のビレット搬送装置として、地上よりも上方において設置される一対のレールと、各レールを支持する一対の支柱と、一対のレール上を走行する水平移動体と、水平移動体に固定されると共にビレットを保持するチャック装置とを備えるものが存在する(特許文献1参照)。
またチャック装置は、水平移動体の上側に固定される垂直シリンダーと、垂直シリンダーのうち下方に延びるピストンロッドに対し左右に延びる状態で固定される水平部材と、水平部材の左右にそれぞれ支持される一対のビレット保持腕とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記したビレット搬送装置は、ビレットの積み上げ高さに応じた高さ位置にレールを配置しなければならない。そしてビレットの積み上げ高さを高くしようとすると、レール・水平移動体・垂直シリンダー等の重量を支える支柱の本数を増やしたり、支柱を頑丈なものにしたりせねばならず、設備が大掛かりになる。また垂直シリンダーが一つであるので、大きな垂直シリンダーを使用しなければならないことも、設備が大掛かりになる要因である。
また垂直シリンダーはピストンロッドのストローク分の高さが必要なため、建屋の天井からそのストローク分だけ下方に垂直シリンダーを設置しなければならない。そうすると、ビレットの積み上げ高さは垂直シリンダーに制約を受けることになる。
このような問題はビレットを昇降させるアクチュエータとして垂直シリンダーを採用したことを一因とするものである。
またビレットを姿勢の安定する状態で昇降させるには、ビレットの左右の昇降量をできるだけ等しくすることが要求され、上記したビレット搬送装置ではビレットを昇降させるアクチュエータとして一つの垂直シリンダーを採用することによって、その要求を達成している。
【0005】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は垂直シリンダー以外のアクチュエータを採用し、且つビレットを姿勢の安定した状態で昇降できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のビレット搬送装置は、前後方向から見て門型をなす門型フレームと、門型フレームの下部に設置されると共に門型フレームを異なる前後地点にまで走行させる走行装置と、左右に延びるビレットを吊り下げる吊下げ装置とを備える。
吊下げ装置は、ビレットの左右両側を把持する一対の把持装置と、門型フレームの左右にそれぞれ固定されると共に各把持装置を昇降させる一対の昇降装置と、一対の昇降装置の作動を同期させると共に門型フレームの左右において回転可能に支持される同期軸とを備える。
把持装置は、駆動によってビレットの把持、及び把持の解放をするものである。
昇降装置は、同期軸を回転させる昇降用モータと、同期軸の回転運動を把持装置の昇降運動に変えて伝動する昇降用伝動装置とを備える。
同期軸はその長手方向の左右両側において一対の昇降用伝動装置に連結されている。
【0007】
昇降用伝動装置としては、ラックとピニオンを用いた装置や巻き掛け伝動装置が挙げられる。巻き掛け伝動装置は、駆動軸となる同期軸の回転を従動軸に伝達する場合、それぞれの軸に対し回転用の車を取り付けて、この回転用の車にベルト・チェーンなどのように屈曲自由なもの(以下、「巻掛け部材」と言う。)を巻き掛けて伝動するものである。そして昇降用伝動装置として耐久性の向上を図るには次のようにすることが望ましい。
すなわち昇降用伝動装置をチェーン伝動装置にすることである。
【0008】
吊下げ装置は、左右の昇降装置と左右の把持装置とを左右の同じ側で別々に連結するか、まとめて連結するかを問わない。しかし装置の構成を簡素化するには次のようにすることが望ましい。
すなわち吊下げ装置は、一対の昇降装置に対し架設する状態で連結され且つ一対の把持装置を固定する固定ビームを備える。そしてチェーン伝動装置は、複数のスプロケットと、前記複数のスプロケットに巻き掛けられると共に長手方向の両端が固定ビームに連結されるチェーンとを備えるようにする。
【0009】
昇降用モータの固定位置は限定されず、例えば門型フレームの上部であっても良い。
また昇降用モータを同期軸から離れた位置に固定する場合には次のようにすることが望ましい。
すなわち昇降用モータは門型フレームの下部に固定されるようにし、昇降装置は昇降用モータの回転運動を昇降用モータよりも上方の同期軸に伝動する同期軸用伝動装置を備えるようにする。
【0010】
また同期軸用伝動装置は、チェーン伝動装置の系統(昇降用モータの回転運動を同期軸に伝動する系統)を一系統にするか否かを問わない。そして望ましくは次のようにする。
同期軸用伝動装置は、昇降用伝動装置とは異なる装置としての複数系統のチェーン伝動装置であって、昇降用モータの回転運動を同期軸に異なる系統で伝動する複数系統のチェーン伝動装置を備えるようにする。
また同期軸は門型フレームの上部に支持されるようにする。
またビレット搬送装置は、門型フレームの梁部が移動する前後範囲の真下にビレットを積み上げて保管する保管部を備えるようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のビレット搬送装置は、ビレットを昇降させるアクチュエータとして昇降用モータを採用し、且つ左右の昇降用モータの回転速度の差を同期軸で無くすので、左右の昇降装置による一対の把持装置の昇降量を等しくでき、ビレットを安定した姿勢で昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態のビレット搬送装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】第一実施形態のビレット搬送装置の吊下げ装置の作動原理を主として示す斜視図である。
【
図4】(A)(B)図は、吊下げ装置の把持装置を昇降可能に案内するためのガイド装置を示す側面図、A-A線断面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一実施形態のビレット搬送装置は
図1に示すように、前後方向から見て門型をなす門型フレーム1と、門型フレーム1の下部に設置されると共に門型フレーム1を異なる前後地点にまで走行させる走行装置2とを備える。
【0014】
門型フレーム1は、左右の柱部11,11と、左右の柱部11,11の上部に架設される梁部12を備える。左右の柱部11,11の間隔は、アルミニウムに代表されるビレットBの長手方向の寸法よりも長い。
柱部11は、前後に延びる土台14と、土台14の上から鉛直に延びると共に前後に間隔を開けて配置される一対の支柱15,15と、前後に延びると共に一対の支柱15,15の上端を固定する横部材16とを備える。土台14と横部材16は一対の支柱15,15に対して前後に延びる形となっている。
また門型フレーム1は、横部材16の前後両端部と土台14の前後両端部との間に架設する前後の補強部材17,17を備える。前後の補強部材17,17は、鉛直に対して斜めに傾いており、下方に向かうにつれて前後の間隔が広がる形となっている。
【0015】
走行装置2は、左右の柱部11,11の下方において前後に延びる状態で別々に床上に設置される左右の走行用レール21,21と、左右の走行用レール21,21に別々に案内されると共に左右の走行用レール21,21に沿って走行する左右の走行子(図示せず)とを備える。
走行子は本実施形態では、走行用レール21を左右から挟む形で案内する一対のローラである。これら一対のローラは柱部11の下面から下方に突出する形で回転可能に固定されるものとする。
【0016】
また走行装置2は、左右の走行用レール21,21と左右の走行子の他に、左右の走行用モータ22,22を備える。走行用モータ22は柱部11の下部(土台14)に固定される。ちなみに走行用モータ22として本実施形態ではACサーボモータが採用されるものとする。
【0017】
また本実施形態では走行装置2は、走行用レール21に対し平行に延びる左右の補助レール23,23と、各補助レール23を左右から挟む形で案内する一対の補助ローラ(図示せず)とを備える。
左右の補助レール23,23の間には左右の走行用レール21,21が配置される。
一対の補助ローラは、柱部11の下部に対して図示しないブラケットを介して固定されるものとする。そして一対の補助ローラのうち一つは走行用モータ22の駆動軸に連結され、走行用モータ22の駆動によって回転させる。つまり本実施形態では、走行用モータ22が補助ローラを回転させることによって、一対の補助ローラが補助レール23に沿って走行し、一対の補助ローラが固定された門型フレーム1は、一対のローラを介して走行用レール21に沿って走行することになる。
【0018】
また第一実施形態のビレット搬送装置は、門型フレーム1と走行装置2の他に、門型フレーム1に固定されると共にビレットBを吊り下げる吊下げ装置3を備える。
【0019】
吊下げ装置3は、ビレットBをその長手方向の左右両側で把持する一対の把持装置4,4と、門型フレーム1の左右にそれぞれ固定されると共に各把持装置4を昇降させる昇降装置5と、一対の昇降装置5,5の作動を同期させると共に門型フレーム1の左右において回転可能に支持される同期軸6と、一対の昇降装置5,5に対し架設する状態で連結されると共に一対の把持装置4,4を固定する固定ビーム7と、固定ビーム7をその左右両側において昇降可能に案内する一対のガイド装置G,Gとを備える。
【0020】
把持装置4は図では詳細を示さないが、エアシリンダと、リンク機構の一種であるトグル機構(倍力機構)とを組み合わせたものである。トグル機構はビレットBを把持するものである。またエアシリンダは、トグル機構によるビレットBの把持を解放するものである。したがって把持装置4は、エアシリンダにエアが供給されなくても、ビレットBの把持が保持できるものである。
【0021】
固定ビーム7は左右に延びるものである。ちなみに本実施形態では固定ビーム7は、左右の昇降装置5,5に別々に連結する左右のビーム連結部7a,7aと、左右のビーム連結部7a,7aから別々に下方に延びる左右のビーム中間部7b,7bと、左右のビーム中間部7b,7bの下部の間に架設する状態で左右に延びるビーム本体部7cとを備える。そしてビーム本体部7cに対して左右に間隔をあけて一対の把持装置4,4が固定される。ちなみにビーム連結部7aについては追って詳述する。このような固定ビーム7の左右両端部(ビーム連結部7a)を昇降可能に別々に案内するのが左右のガイド装置G,Gである。
【0022】
ガイド装置Gは
図4に示すようにガイドレールとして兼用される門型フレーム1の前後の支柱15,15と、ビーム連結部7aに固定されると共に前後の支柱15,15に沿って移動する複数の移動子としてのガイドローラRとを備える。
前後の支柱15,15の前後に対向する面には、上下方向に延びる溝15aが形成される。
また複数のガイドローラRは、ビーム連結部7aが前後にぶれるのを防止すると共に前後の支柱15,15における前後の対向面に沿って移動する縦ぶれ防止ガイドローラR1と、ビーム連結部7aが左右にぶれるのを防止すると共に前後の支柱15,15の溝15a,15aに沿って移動する横ぶれ防止ガイドローラR2とに分類される。
【0023】
縦ぶれ防止ガイドローラR1が回転運動するときの中心となる軸の延びる方向は左右方向である。横ぶれ防止ガイドローラR2が回転運動するときの中心となる軸の延びる方向は前後方向である。
横ぶれ防止ガイドローラR2は、いわゆる段付き形状であり、軸の先側に配置されると共に溝15aに収容される小径部R2aと、溝15aの外側に配置されると共に小径部R2aに対して直径の大きな大径部R2bとを備えるものである。
このような縦ぶれ防止ガイドローラR1・横ぶれ防止ガイドローラR2を固定するのがビーム連結部7aである。
【0024】
ビーム連結部7aは
図2に示すように、ビーム本体部7cに対して遠ざかるようにビーム中間部7bの上部から左または右に延びるビーム端部材71と、ビーム端部材71に対して下側に固定されると共にビーム端部材71に対して前後に延びる第2のビーム端部材72とを備える。ちなみに第2のビーム端部材72の前後両端部は、前後の支柱15,15の溝15a,15a内に収容される。
【0025】
またビーム連結部7aは
図4に示すように、ビーム端部材71と第2のビーム端部材72の他に、横ぶれ防止ガイドローラR2を固定するためにビーム端部材71の前後面に固定される前後のプレート73,73と、縦ぶれ防止ガイドローラR1をビーム端部材71の前後面側に固定するためにビーム端部材71の前後面に固定される前後のブラケット74,74とを備える。
【0026】
プレート73はビーム端部材71よりも上下に張り出す状態である。前後のプレート73,73の下端には第2のビーム端部材72が架設される。またプレート73には軸受75が固定され、軸受75には横ぶれ防止ガイドローラR2が回転可能に支持される。
【0027】
ブラケット74は平面視してT字状である。ブラケット74はビーム端部材71の前面又は後面に重ね合わせて固定される固定板部74aと、ビーム端部材71に対して遠ざかるように固定板部74aの前後中央部から前又は後に延びると共に縦ぶれ防止ガイドローラR1を回転可能に支持する支持板部74bとを備える。支持板部74bには厚み方向に貫通する貫通穴(図示略)が形成されている。この貫通穴に縦ぶれ防止ガイドローラR1の軸部が通され、軸部の端部にナット76が固定される。このようなブラケット74を含むビーム連結部7aには昇降装置5が連結される。
【0028】
昇降装置5は
図2,3に示すように、昇降用モータ51と、昇降用モータ51の回転運動を昇降用モータ51よりも上方の同期軸6に伝動する同期軸用伝動装置52と、同期軸用伝動装置52を経由して伝動された同期軸6の回転運動を把持装置4の昇降運動に変えて伝動する昇降用伝動装置53とを備える。
【0029】
昇降用モータ51は、ACモータである。昇降用モータ51は門型フレーム1の下部に設置される。
【0030】
同期軸用伝動装置52は巻き掛け伝動装置であり、より詳しく言えばチェーン伝動装置である。同期軸用伝動装置52としてのチェーン伝動装置は、複数の回転軸52aと、回転軸52aに対して同心状に固定されたスプロケット52bと、これら複数のスプロケット52bに環状に巻き掛けられたチェーン52cとを備える。なお
図1に示すように門型フレーム1の下部と上部との間には複数個所において軸受52dが固定されており、この軸受52dに回転軸52aが回転可能に支持される。
【0031】
また
図2,3に示すように同期軸用伝動装置52としてのチェーン伝動装置は、門型フレーム1の下部に設置された昇降用モータ51の動力を門型フレーム1の上部に伝動する第1のチェーン伝動部52sと、門型フレーム1の上部において第1のチェーン伝動部52sの動力を同期軸6に向かって伝動する第2のチェーン伝動部52tとを備える。言い換えると、同期軸用伝動装置52は、門型フレーム1の下部から上部へ向かって上下方向に昇降用モータ51の動力を伝動する第1のチェーン伝動部52sと、門型フレーム1の前後方向の中間部へ向かって水平方向に第1のチェーン伝動部52sの動力を伝動する第2のチェーン伝動部52tとを備える。ちなみに第1のチェーン伝動部52sと第2のチェーン伝動部52tとはいずれも、複数の回転軸52aと複数のスプロケット52bと一本のチェーン52cとを備えるものである。
【0032】
同期軸6はその長手方向(左右)の両端部を左右の同期軸用伝動装置52,52の回転軸52aとして兼用している。なお
図1に示すように同期軸6の左右両側は門型フレーム1の左右の上部に固定された軸受52dによって支持される。そして
図2,3に示すように同期軸6の動力が伝動されるのが昇降用伝動装置53である。
【0033】
昇降用伝動装置53は、同期軸6の動力(回転運動)を固定ビーム7の左右端部の各々(ビーム連結部7a)において異なる系統で伝動する2系統の巻き掛け伝動装置53A,53Bを備えるものである。これら巻き掛け伝動装置53A,53Bはいずれもチェーン伝動装置である。チェーン伝動装置は同期軸用伝動装置52のチェーン伝動装置と同様に、複数の回転軸53cと、回転軸53cに対して同心状に固定されたスプロケット53dと、これら複数のスプロケット53dに対して巻き掛けられるチェーン53eであってその長手方向の両端が固定ビーム7の左右のビーム連結部7a,7aに連結されるチェーン53eとを備える。なお
図1に示すように門型フレーム1の下部と上部との間には複数個所において軸受53fが固定されており、この軸受53fに回転軸53cが回転可能に支持される。
【0034】
また
図2,3に示すように2系統の巻き掛け伝動装置53A,53Bはビーム連結部7aに対するチェーン53eの両端の連結箇所が異なる。より詳しく言えば、一つの系統の巻き掛け伝動装置53A,におけるチェーン53eは、ビーム端部材71の上面と第2のビーム端部材72の下面後部とに連結される。もう一つの系統の巻き掛け伝動装置53Bにおけるチェーン53eは、ビーム端部材71の上面と第2のビーム端部材72の下面前部とに連結される。なお第2のビーム端部材72の前部と下部との真下には別系統のチェーン53eを巻き掛けるスプロケット53d及び回転軸53cが配置される。また2系統の巻き掛け伝動装置53A,53Bは、チェーン53eの連結箇所が異なるだけで、同期軸6の回転量に対するチェーン53eの移動量を同じにしてある。
【0035】
第一実施形態のビレット搬送装置は
図1,2に示すように門型フレーム1、走行装置2、吊下げ装置3の他に、左右の走行用レール21,21に対して左右の一方に離れた位置から左右の走行用レール21,21の間の位置にビレットBをその長手方向に沿って水平に送る送り装置8を備える。
【0036】
送り装置8は前後方向に延びる走行用レール21の前後方向における一方側の端部に配置されている。また送り装置8は左右に間隔を開けて配置されたローラ81を備える。このローラ81の軸が延びる方向は前後方向である。そしてローラ81の軸を回転可能に支持する支持部材82が
図1に示すように、左右の走行用レール21,21に対して左右の一方に離れた位置と、左右の走行用レール21,21の間の位置との2つの位置に配置される。また2つの位置に配置された支持部材82,82は左右に一直線に配置される。なお送り装置8は、ローラ81で送られるビレットBに衝突するストッパ(図示せず)を備える。ストッパは、門型フレーム1の一対の柱部11,11の間にビレットBの左右方向の位置を定める。
【0037】
その他に第一実施形態のビレット搬送装置は
図1に示すようにビレットBを積み上げて保管する保管部9を備える。保管部9は左右の走行用レール21,21の間に配置される。また保管部9は、前後方向に延びると共にビレットBを載せる台となる複数本の台部材91と、複数本の台部材91上に積み上げるビレットBの前後左右を支える複数本のポスト92からなるポスト群92Gとを備える。
【0038】
台部材91は本実施形態では細長い棒状で、4本である。これら4本の台部材91は左右に間隔を開けて平行に配置される。
【0039】
ポスト群92Gは、平行な4本の台部材91のうち中央側の2本の台部材91の上に設置される。またポスト群92Gは、左右に対向する一対のポスト92を前後方向に等間隔開けて配置したものである。ちなみに一対のポスト92の前後方向の間隔は、一本のビレットBの直径よりも僅かに長い寸法にしてある。
【0040】
上記した第一実施形態のビレット搬送装置は次のように使用する。
1)門型フレーム1に対し左右の一方に離れた位置においてビレットBが送り装置8のローラ81の上に載せられる。
2)ローラ81の上に載せられたビレットBが門型フレーム1の方に動力または人力によって送り出され、ビレットBが送り装置8の図示しないストッパに衝突して門型フレーム1の内側に位置決めされる。ちなみにビレットBの真上には一対の把持装置4,4が配置されるように、一対の把持装置4,4および門型フレーム1の初期位置が設定される。
3)吊下げ装置3の左右の昇降用モータ51,51が駆動する。左右の昇降用モータ51,51の動力は同期軸用伝動装置52から同期軸6を経由することで均一化され、その均一化された動力で左右の昇降装置5,5が作動する。そして左右の昇降装置5,5に連結された固定ビーム7が下降し、一対の把持装置4,4が初期位置からビレットBを把持する位置にまで下降する。
4)一対の把持装置4,4が駆動し、ビレットBの左右を把持する。
5)左右の昇降用モータ51,51が駆動し、一対の把持装置4,4が上昇し、ビレットBを保管部9のポスト群92Gよりも高く吊り上げる。
6)左右の走行用モータ22,22が駆動して、門型フレーム1を走行させ、ビレットBを所望の保管位置の上方まで移動させる。ちなみに左右の走行用モータ22がいずれもサーボモータなので、サーボ機能がないモータに比べれば、走行距離が均一化され、門型フレーム1は左右の走行用レール21,21に沿って走行する。
7)吊下げ装置3の左右の昇降用モータ51,51が駆動し、それに伴って一対の把持装置4,4がビレットBの積み上げ高さまで下降する。
8)一対の把持装置4,4が駆動し、ビレットBの左右を離し、ビレットBを積み上げる。
9)左右の昇降用モータ51,51が駆動し、一対の把持装置4,4を初期位置の高さまで上昇させる。また左右の走行用モータ22,22が駆動し、門型フレーム1を初期位置まで走行させる。
10)以後1)~9)が繰り返される。
【0041】
本発明の第一実施形態のビレット搬送装置は、ビレットBを昇降させるアクチュエータとして昇降用モータ51を採用し、且つ左右の昇降用モータ51,51の回転速度の差を同期軸6で無くすので、左右の昇降装置5,5による一対の把持装置4,4の昇降量を等しくでき、ビレットBを安定した姿勢で昇降させることができる。
また第一実施形態のビレット搬送装置は、昇降用モータ51を採用しているので、シリンダーに比べれば、アクチュエータとしての高さ寸法を短くでき、ビレットBの積み上げ高さを高くできる。また第一実施形態のビレット搬送装置は、昇降用モータ51を門型フレーム1の下部に設置してあるので、例えば門型フレーム1の上部に昇降用モータ51を設置するものに比べて、門型フレーム1を簡素化することができるし、昇降用モータ51を点検し易くなる。
【0042】
上記した第一実施形態のビレット搬送装置は、同期軸用伝動装置52に第1のチェーン伝動部52sと第2のチェーン伝動部52tを用いるが、昇降用モータ51の回転運動を同期軸6に伝動する系統がまず上方へ向かい(門型フレーム1の下部から上部へ向かい)、次に水平方向に向かう(門型フレーム1の上部において同期軸6に向かう)という一系統の同期軸用伝動装置52を備えるものであった。
図5に示す第一実施形態のビレット搬送装置の変形例は、同期軸用伝動装置52Uに異なる系統からなる二系統のチェーン伝動装置52V,52Vを備えるものである。
【0043】
この変形例の同期軸用伝動装置52Uは、第一実施形態で採用した一系統のチェーン伝動装置(第1のチェーン伝動部52sと第2のチェーン伝動部52t)をそれぞれ左右に並列させたものである。より詳しく言えば、変形例の同期軸用伝動装置52Uは、第一実施形態で採用したチェーン伝動装置のうち回転軸52aを二系統のチェーン伝動装置52V,52Vで兼用し、当該回転軸52aの左右に各系統のスプロケット52bを別々に固定し、左側のスプロケット52bと右側のスプロケット52bとに各系統のチェーン52cを巻き掛けたものである。
【0044】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 門型フレーム
11 柱部
12 梁部
14 土台
15 支柱
15a 溝
16 横部材
17 補強部材
2 走行装置
21 走行用レール
22 走行用モータ
23 補助レール
3 吊下げ装置
4 把持装置
5 昇降装置
51 昇降用モータ
52,52U 同期軸用伝動装置
52a 回転軸
52b スプロケット
52c チェーン
52d 軸受
52s 第1のチェーン伝動部
52t 第2のチェーン伝動部
52V チェーン伝動装置
53 昇降用伝動装置
53A,53B 巻き掛け伝動装置
53c 回転軸
53d スプロケット
53e チェーン
53f 軸受
6 同期軸
7 固定ビーム
7a ビーム連結部
7b ビーム中間部
7c ビーム本体部
71 ビーム端部材
72 第2のビーム端部材
73 プレート
74 ブラケット
74a 固定板部
74b 支持板部
75 軸受
76 ナット
8 送り装置
81 ローラ
82 支持部材
9 保管部
91 台部材
92 ポスト
92G ポスト群
B ビレット
G ガイド装置
R ガイドローラ
R1 縦ぶれ防止ガイドローラ
R2 横ぶれ防止ガイドローラ
R2a 小径部
R2b 大径部