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特許7269867転写シート、意匠製品及び意匠製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】転写シート、意匠製品及び意匠製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/175 20060101AFI20230427BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B44C1/175 D
B32B27/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019218878
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021088095
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 文寛
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-081169(JP,U)
【文献】特開平08-300896(JP,A)
【文献】特開昭60-083881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0246266(US,A1)
【文献】実開平01-104398(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0096062(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0243140(US,A1)
【文献】中国実用新案第201516778(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/175
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースシートと、
前記ベースシートに積層された転写体と、を備え、
前記転写体は、前記ベースシートに積層された液溶性の接着層と、前記液溶性の接着層に積層された非液溶性のシート本体層と、を有し、
前記シート本体層は、
前記ベースシート側とは反対側で、前記接着層に対して隣接して積層されて、貼付対象物に対する前記シート本体層の密着機能を付与する密着層と、
前記接着層側とは反対側で、前記密着層に対して隣接して積層された意匠層と、を含み、
前記密着層は、前記意匠層の端縁の外側に食み出した食み出し部を有し、前記食み出し部は、透明であり、
前記密着層は、前記接着層に対して隣接して積層された透明な透明密着層と、前記透明密着層に対して前記意匠層側に隣接して積層された非透明な密着隠蔽層と、を含み、
前記密着隠蔽層は、前記意匠層の端縁よりも内側に配置されている、転写シート。
【請求項2】
前記密着層の前記食み出し部は、前記意匠層の端縁に沿って一周する形状を有する前記透明密着層の端部である、請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
前記意匠層は、前記密着隠蔽層の主面を覆うとともに前記密着隠蔽層の端縁も覆うようにして前記透明密着層に到達している、請求項1又は2に記載の転写シート。
【請求項4】
ベースシートと、
前記ベースシートに積層された転写体と、を備え、
前記転写体は、前記ベースシートに積層された液溶性の接着層と、前記液溶性の接着層に積層された非液溶性のシート本体層と、を有し、
前記シート本体層は、
前記ベースシート側とは反対側で、前記接着層に対して隣接して積層されて、貼付対象物に対する前記シート本体層の密着機能を付与する密着層と、
前記接着層側とは反対側で、前記密着層に対して隣接して積層された意匠層と、を含み、
前記密着層は、前記意匠層の端縁の外側に食み出した食み出し部を有し、前記食み出し部は、透明であり、
前記密着層は、前記食み出し部を有する透明密着層と、積層方向に直交する方向において前記透明密着層の内側に配置された密着隠蔽層と、を含む、転写シート。
【請求項5】
前記透明密着層は、前記密着隠蔽層の周縁を囲んでいる、請求項に記載の転写シート。
【請求項6】
ベースシートと、
前記ベースシートに積層された転写体と、を備え、
前記転写体は、前記ベースシートに積層された液溶性の接着層と、前記液溶性の接着層に積層された非液溶性のシート本体層と、を有し、
前記シート本体層は、
前記ベースシート側とは反対側で、前記接着層に対して隣接して積層されて、貼付対象物に対する前記シート本体層の密着機能を付与する密着層と、
前記接着層側とは反対側で、前記密着層に対して隣接して積層された意匠層と、を含み、
前記密着層は、前記意匠層の端縁の外側に食み出した食み出し部を有し、前記食み出し部は、透明であり、
前記密着層は、前記接着層に積層された密着隠蔽層と、前記密着隠蔽層に前記意匠層側から積層され且つ前記食み出し部を有する透明密着層と、を含み、
前記密着隠蔽層は、積層方向に直交する方向において、前記意匠層よりも内側に位置し、前記透明密着層は、積層方向に直交する方向において、前記密着隠蔽層よりも外側に食み出している、転写シート。
【請求項7】
前記転写体の厚みは、10μmより大きく且つ100μmより小さく、
前記意匠層の厚みは、1μmより大きく且つ50μmより小さい、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の転写シート。
【請求項8】
貼付対象物となる基材と、
前記基材上に貼り付けられた転写シートのシート本体層と、
前記シート本体層の表面と前記基材のうち前記シート本体層の周囲部分の表面との両方にわたって塗装されるクリアコート層と、を備え、
前記シート本体層は、
前記基材に対する前記シート本体層の密着性を高めるために設けられて、前記基材側の面に設けられる密着層と、
前記基材側とは反対側で、前記密着層に対して隣接して積層された意匠層と、を含み、
前記密着層は、前記意匠層の端縁の外側に食み出した食み出し部を有し、前記食み出し部は、前記シート本体層が前記基材に貼り付けられた状態で、前記基材の表面色と同化した色に見えるように構成され
前記密着層は、前記食み出し部を有する透明密着層と、前記透明密着層に対して隣接して配置された非透明な密着隠蔽層と、を含み、
前記密着隠蔽層は、積層方向に直交する方向において、前記透明密着層よりも内側に配置されている、意匠製品。
【請求項9】
密着層、意匠層及びクリア層が基材側からこの順で積層されてなるシート本体層を有する転写シートであって、前記密着層が前記意匠層の端縁から外側に食み出した食み出し部を有し且つ前記食み出し部が透明であり、前記密着層は、前記食み出し部を有する透明密着層と、前記透明密着層に対して隣接して配置された非透明な密着隠蔽層と、を含み、前記密着隠蔽層は、積層方向に直交する方向において、前記透明密着層よりも内側に配置されるように前記転写シートを準備するシート準備工程と、
前記転写シートに液体を晒して前記シート本体層を前記基材の予め定められる位置に対して貼り付ける貼付工程と、
前記シート本体層が貼り付けられた前記基材を乾燥炉で乾燥させる乾燥工程と、を備える、意匠製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シート、意匠製品及び意匠製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に意匠を付与する際に転写シートを用いる場合がある(例えば、特許文献1参照)。転写シートでは、意匠を付与するための意匠層の基材に対する密着性を高めるために、基材と意匠層との間に密着層が形成されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-284125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写シートの製造工程においては、製造精度の影響で、密着隠蔽層に対して意匠層が若干ずれてしまう場合がある。そうすると、意匠層のうち密着隠蔽層からずれた位置ずれ部分が、密着隠蔽層を介さずに基材に直接的に付着する。この位置ずれ部分は、基材との密着性が弱いため、不具合の原因となりやすい。
【0005】
そこで本発明は、転写シートの不具合を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る転写シートは、ベースシートと、前記ベースシートに積層された転写体と、を備え、前記転写体は、前記ベースシートに積層された液溶性の接着層と、前記液溶性の接着層に積層された非液溶性のシート本体層と、を有し、前記シート本体層は、前記ベースシート側とは反対側で、前記接着層に対して隣接して積層されて、貼付対象物に対する前記シート本体層の密着機能を付与する密着層と、前記接着層側とは反対側で、前記密着層に対して隣接して積層された意匠層と、を含み、前記密着層は、前記意匠層よりも面積が大きく、前記密着層は、前記意匠層の端縁の外側に食み出した食み出し部を有し、前記食み出し部は、透明である。
【0007】
前記構成によれば、密着層が意匠層の端縁の外側に食み出しているため、意匠層の端縁が密着層を介さずに貼付対象物である基材に直接的に付着することが防がれる。そのため、密着性が良好に保たれて、密着性低下に起因する不具合を防止できる。また、密着層の食み出し部が透明であるので、食み出し部を通して基材の素地が外部から見える。そのため、密着層の食み出し部が目立つことを防いで、食み出し部による美観の低下を防止できる。従って、転写シートにおいて密着性と美観性とを両立でき、転写シートの不具合を好適に防止できる。
【0008】
本発明の一態様に係る意匠製品は、貼付対象物となる基材と、前記基材上に貼り付けられた転写シートのシート本体層と、前記シート本体層の表面と前記基材のうち前記シート本体層の周囲部分の表面との両方にわたって塗装されるクリアコート層と、を備え、前記シート本体層は、前記基材に対する前記シート本体層の密着性を高めるために設けられて、前記基材側の面に設けられる密着層と、前記基材側とは反対側で、前記密着層に対して隣接して積層された意匠層と、を含み、前記密着層は、前記シート本体層が前記基材に貼り付けられた状態で、前記基材の表面色と同化した色に見えるように構成される。
【0009】
前記構成によれば、基材に対するシート本体層の密着と意匠製品の美観性とを両立することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る意匠製品の製造方法は、密着層、意匠層及びクリア層が基材側からこの順で積層されてなるシート本体層を有する転写シートであって、前記密着層が前記意匠層の端縁から外側に食み出した食み出し部を有し且つ前記食み出し部が透明になるように前記転写シートを準備するシート準備工程と、前記転写シートに液体を晒して前記シート本体層を基材の予め定められる位置に貼り付ける貼付工程と、前記シート本体層が貼り付けられた前記基材を乾燥炉で乾燥させる乾燥工程と、を備える。
【0011】
前記方法によれば、意匠層が基材に直接接触することが防がれる。そのため、シート本体層と基材との密着性を維持しやすく、シート本体層と基材との間の流体の残留を防ぎやすい。これによって、乾燥過程の高温状態下においても、シート本体層と基材との間での流体の膨張が防がれ、皺や膨れ等の不具合を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、転写シートにおいて密着性と美観性とを両立でき、転写シートの不具合を好適に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る水転写シートを模式的に表した断面図である。
図2図2は、図1に示す水転写シートの主たる層の平面図である。
図3図3は、図1に示す水転写シートの転写体を基材に貼り付けた状態の断面図である。
図4図4は、図3に示すシート本体層の水抜き作業後にカバーコート層を剥離した状態の断面図である。
図5図5は、図4に示すシート本体層及び基材にクリアコート層を塗装した状態の断面図である。
図6図6は、意匠製品の製造手順を示すフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係る水転写シートの図1相当の図面である。
図8図8は、第3実施形態に係る水転写シートの図1相当の図面である。
図9図9は、第4実施形態に係る水転写シートの図1相当の図面である。
図10図10は、第5実施形態に係る水転写シートの図1相当の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る水転写シートは、例えば、自動二輪車の燃料タンクの装飾に用いられる。自動二輪車は、前輪及び後輪を備える。運転者が把持するバー型のハンドルの後方には、燃料タンクが配置されている。燃料タンクの後方には、運転者が跨って着座するシートが配置されている。
【0016】
本実施形態の自動二輪車において、燃料タンクは、車体の外方に露出する部品であって、車体外観の比較的大きい領域を示す。このことから、燃料タンクは、外観が重要視されることが多い。本実施形態では、燃料タンクは、燃料タンク本体と、燃料タンク本体に部分的に貼り付けられる後述する水転写シートの転写体と、を備える。即ち、燃料タンク本体は、転写体が貼り付けられる基材(貼付対象物)となる。燃料タンクは、燃料タンク本体に転写体が貼り付けられることで、転写体による意匠が施された意匠製品となる。
【0017】
後述の転写体は、積層される意匠層によって任意の形状・模様・色彩が表面上に形成される。転写体は、可撓性を有するシート状である。よって、転写体は、基材に貼り付けられた場合には、基材の表面形状に沿って湾曲変形する。
【0018】
このように、事前に意匠層が形成された転写体を燃料タンク本体に貼付して燃料タンクに意匠を形成する。これによって、燃料タンク本体に塗装を複数回繰り返して直接意匠を形成する場合に比べて、意匠形成作業を容易化することができる。たとえば、マスキング等の手間を省いて、二色以上のカラーリングが施された意匠製品を製作することが可能となる。なお、本実施形態では、水転写シートが適用される基材を燃料タンク本体としているが、他の自動二輪車の外観部品(例えば、カウル等)を水転写シートが適用される基材としてもよい。また、自動二輪車の部品に限らず、ヘルメットなど既存の水転写シートが貼り付けられる貼付対象物を基材としてもよい。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る水転写シート10を模式的に表した断面図である。図2は、図1に示す水転写シートの主たる層の平面図である。図1に示すように、水転写シート10は、ベースシート11と、ベースシート11に積層された転写体12とを備える。ベースシート11は、転写体12の基材9(燃料タンク本体)への貼付け時に除去される。ベースシート11は、水転写シート10の市場流通時において、転写体12に設けられる接着層13を保護するために設けられる。また、ベースシート11は、市場流通時における水転写シート10の変形を抑えるために転写体12よりも剛性が高く形成されてもよい。ベースシート11は、シート状に形成される。ベースシート11は、例えば、親水性の台紙であるが、紙以外のものでもよい。転写体12は、水転写シート10のうちベースシート11が除去された残余の部分であり、貼付対象物である基材9に貼り付けられる。
【0020】
転写体12は、接着層13及びシート本体層14を有する。転写体12は、接着層13、シート本体層14がこの順にベースシート11側から積層されている。接着層13は、ベースシート11上に塗布されることで積層された液溶性樹脂膜(例えば、水溶性樹脂膜)である。接着層13は、基材9と転写体12との接着性を得るような材料からなり、例えば、水糊であってもよい。なお、接着層13は、水以外の液体で溶ける材料であってもよい。
【0021】
シート本体層14は、非液溶性(例えば、非水溶性)の塗膜である。シート本体層14は、少なくとも接着層13を溶かす液体によって溶けることがない材料からなる。前述しとおり、シート本体層14は、ベースシート11と反対側となる水溶性の接着層13の表面上に積層されている。即ち、シート本体層14は、接着層13を介してベースシート11に接着されている。
【0022】
シート本体層14は、接着層13が塗布されたベースシート11に対して既存の印刷法が複数繰り返して複数の層を積層してなる積層構造体である。本実施形態では、シート本体層14は、スクリーン印刷が繰り返されることで積層構造が形成されたものである。スクリーン印刷は、以下の手順によって実現する。
(1)意匠に応じてインク通過領域と非通過領域とが形成されたスクリーンマスクを作製する製版工程。
(2)スクリーンマスクのインク通過領域(網目)にインクを通過させて、印刷対象物に選択的にインクを印刷する印刷工程。
印刷工程では、多色印刷のようにインク色毎に転写領域を異ならせる場合には、インク色毎に、スクリーンマスクを用意したり位置合わせしたりする必要がある。印刷工程に関して、スクリーンマスクの位置合わせ精度の影響によって、印刷位置に位置ずれが生じることがある。
【0023】
シート本体層14は、密着層15及び意匠層16を有する。本実施形態では、シート本体層14は、密着層15、意匠層16及びクリア層17を有する。前述したように、シート本体層14は、スクリーン印刷が繰り返し行われることで、密着層15、意匠層16及びクリア層17がこの順に接着層13が塗布されたベースシート11上に積層される。密着層15は、基材9との密着性を付与する機能を有する透明な樹脂膜である。密着層15が密着する基材9の外表面は、アクリルメラミン塗料やアクリルウレタン塗料となり得る。なお、クリア層17が省略されてもよい。
【0024】
本実施形態では、密着層15は、基材9に対する密着性を付与するとともに、基材9の表面色と同化した色味に見えるように構成されたスクリーン印刷用樹脂によって実現される。具体的には、密着層15は、可視光を透過するインク材料によって実現される。密着層15は、基材9に貼り付けられた状態で、その存在が目立たない程度に透明であればよい。したがって、密着層15は、半透明材料、即ち、光透過性を有しつつ若干の色味が付与された材料であってもよい。例えば、可視光透過率が90%以上の材料を密着層15として用いることができる。このように、密着層15には、基材9の表面色に対して同化する材料、言い換えると、基材9の表面色に対して目立たなくなる程度に透明であるような材料が選ばれる。密着層15は、基材の表面の色味と同じ又は類似した色味であってもよい。
【0025】
基材9に対する密着層15の密着性確保のためには、以下の(1)~(3)の少なくともいずれかが採用されるとよい。
(1)基材の被貼付面をサンディングしてファンデルワールスカを発揮させること。
(2)密着層を柔らかいものとして粘着による接着力を高めること。
(3)基材の表面との化学的硬化作用を高めること。(例えば、基材の塗膜表面にOH基を残留させると共に密着層に二液硬化型塗料のようにイソシアネートを入れること。)
本実施形態では前記(1)(2)が採用され、特に前記(2)が密着性確保に寄与している。
【0026】
本実施形態では、密着層15は、少なくとも貼付時において、意匠層16のインク材料よりも粘着性を有するインク材料からなる。密着層15のインク材料は、例えば、少なくとも貼付時において意匠層16のインク材料よりも柔らかい材料からなる。密着層15は、意匠層16に比べて無機物の含有率が低くなるように設定される。たとえば、意匠層16は、色味を表現するために、光輝材(アルミフレーク、パール、ガラスフレーク等)、及び/又は、顔料(鉱物顔料等)の無機物を大量に含有している。意匠層16では、密着を阻害する無機物が樹脂膜内に分散しているため、意匠層16の柔軟性は密着層に比べて低い。これに対して、密着層15は、そのような無機物の含有率が低く設定されるために、意匠層16に比べて密着性が高い。
【0027】
意匠層16は、所望の色からなる顔料を含有するインク層を形成する樹脂膜である。本実施形態では、意匠層16は、1つ又は複数の層からなる。意匠層16を構成する各層の形状・模様・色彩のいずれかが異なり、スクリーン印刷によって各層がそれぞれ積層されることで、多様な意匠を得ることができる。例えば、意匠層16として、5層の積層構造に形成されてもよい。
【0028】
図1及び2に示すように、密着層15は、積層方向に垂直な方向において、意匠層16の端縁の外側に食み出した食み出し部15aを有する。意匠層16から食み出し部15aが食み出す方向にスクリーン印刷の版が位置ずれしたとしても、意匠層16が密着層15から食み出ることが防がれる。例えば、スクリーン印刷の版の位置ずれが生じやすい位置ずれ方向が既知の場合、密着層15の食み出し部分15aは、少なくとも位置ずれ方向に関して意匠層16から食み出すように形成されることが好ましい。これによって、意匠層16が密着層15の内側に留まる確率が高まる。また、前記積層方向に垂直な面において、密着層15は、意匠層16よりも面積が大きく形成される。言い換えると、意匠層16は、密着層15よりも小さい領域に形成される。
【0029】
図4に示すように、本実施形態では、前記積層方向に垂直な面において、食み出し部15aは、意匠層16の端縁に沿って一周する。これによって、任意の方向にスクリーン印刷の版がずれて意匠層16が位置ずれした場合でも、密着層15の内側に意匠層16を留めやすく、意匠層16が密着層15から食み出る可能性を低減することができる。なお、食み出し部15aは、意匠層16の少なくとも一部から食み出す構成であればよく、食み出し部15aは、意匠層16から部分的に食み出す構成としてもよい。
【0030】
また、食み出し部15aが意匠層16の端縁から食み出した量である食み出し幅Wは、スクリーン印刷の版の位置ずれ許容範囲以上に設定されることが好ましい。例えば、意匠層16を一周する食み出し部15aの食み出し幅Wが1mm以上に設定されることで、高精度の位置決め機能を有するスクリーン印刷を準備する必要がなく、製造コストを低減しやすい。また、食み出し幅Wが5mm以下に設定されることで、密着不具合を防ぎながら密着層15の大型化を防ぐことができる。例えば、食み出し幅Wは、意匠層16の周縁における接線に直交する方向における食み出し部15aの幅とし得る。
【0031】
意匠層16から露出した密着層15の食み出し部15aは、意匠層16で隠されることなく、意匠製品外方から視認可能となる。本実施形態では、密着層15の全体が透明であるため、食み出し部15aは透明である。したがって、食み出し部15aは、可視光が透過して、基材9の表面色と同化した色味に見える。これによって、食み出し部15aは、基材9に対して目立つことが防がれる。また、食み出し幅Wが5mm以下に設定されることで、仮に食み出し部15aが視認可能であったとしても、幅Wが小さいことから目立つことが防がれる。
【0032】
クリア層17は、透明な樹脂膜である。クリア層17は、例えば、可視光透過率が90%以上に設定される。クリア層17は、意匠層16を覆うように形成される。前記積層方向に垂直な面において、クリア層17は、意匠層16よりも大きく形成される。本実施形態では、クリア層17は、意匠層16の端縁の全域を覆うように、意匠層16よりも面積が大きく形成される。クリア層17は、カバーコート層18に対する密着性・剥離性を発揮する添加物が付与される点で密着層15と異なる。クリア層17は、密着層15と同様に、基材9に対する密着性を備える。即ち、クリア層17は、意匠層16に比べて無機物の含有率が低い。本実施形態では、クリア層17は、密着層15の食み出し部15aに達している。クリア層17は、密着層15及び意匠層16の全体を覆っている。クリア層17の外面側には、カバーコート層18が積層されている。カバーコート層18は、シート本体層14を保護するための樹脂膜であり、最終的には剥離される。そのため、クリア層17は、カバーコート層18の剥離性を向上させる機能を有する。なお、クリアコート層18は省略されてもよい。
【0033】
前述したように、シート本体層14は、スクリーン印刷のインク材料によって実現された印刷体である。このため、前記積層方向に垂直な方向におけるインク材料同士の結びつきが小さく柔軟性を有する。また、シート本体層14が、シート状材料を積層されてなる場合に比べて、比較的薄く形成しやすい。
【0034】
例えば、転写体12の厚みは、10μmより大きく且つ100μmより小さく、好ましくは、20μmより大きく且つ80μmより小さい。密着層15の厚みは、1μmより大きく且つ10μmより小さく、好ましくは、5μmより大きく且つ7μmより小さい。意匠層16の厚みは、5μmより大きく且つ50μmより小さい。
【0035】
シート本体層14は、ポリエステル系樹脂やウレタン系樹脂等が用いられる。シート本体層14は、柔軟性を有しており、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂であって完全に架橋してない状態の樹脂を用いることができる。例えば、シート本体層14には、熱硬化性樹脂が用いられ、硬化性を得るほどの熱が与えられない状態、すなわち強固な架橋構造を形成する前の樹脂が用いられる。例えば、クリア層17は、ウレタン系樹脂を含有し、密着層15、意匠層16及びカバーコート層18は、ポリエステル系樹脂を含有する。
【0036】
例えば、密着層15、意匠層16及びカバーコート層18は、主剤としてポリエステル系樹脂が用いられ、副剤として他の樹脂が混合される。副剤は、例えばアクリルウレタン系の二液硬化性樹脂が用いられる。また、硬化剤としてイソシアネートが用いられる場合がある。例えば、この主剤及び副材の混合剤は塗布後に加熱しないことで熱による架橋の促進を抑える。また副剤として、架橋反応を抑制するブロック剤が含有されてもよい。主剤としてエポキシ樹脂系が用いられ、副剤として、メラミン樹脂やイソシアネートが含有される場合もある。
【0037】
各層15~18のTg(ガラス転移点)は、0℃~100℃、好ましくは20℃~80℃、更に好ましくは40℃~60℃として設定されることで、各層15~18を構成する塗料に柔らかい性質を与えることができる。
【0038】
図3乃至5は、図1に示す水転写シート10の転写体12を基材9に貼り付けて意匠製品を完成させる作業を説明する断面図である。図6は、意匠製品の製造手順を示すフローチャートである。以下、図6の流れに沿って図3乃至5を順番に参照しながら説明する。
【0039】
先ず、基材9(燃料タンク本体)に貼り付ける水転写シート10を準備する準備工程を実施する(ステップS1)。このとき準備する水転写シート10は、透明な食み出し部分15aを有する密着層15を有する。次に、水転写シート10を水Lに浸して水溶性の接着層13を溶かすことでベースシート11を剥がして転写体12を取り外す剥離工程を実施する(ステップS2)。次に、接着層13を露出させた転写体12を基材9の被貼付面に貼り付ける貼付工程を実施する(ステップS3:図3)。その際、基材9と密着層15との間に溶けた接着層13が残っている間に、シート本体層14の最終位置調整を行う。
【0040】
次に、カバーコート層18の外表面をスキージーで擦ることで、シート本体層14と基材9との間にある水をシート本体層14の端縁から外部に排出する水抜工程を実施する(ステップS4)。シート本体層14は、塗膜であり、剛性が低く柔らかいため、スキージーでカバーコート層18の外表面を擦ることで、水の排出とともにシート本体層14の表面を平坦化できる。なお、この水抜工程が完了すると、水に溶けた接着層13が基材9と密着層15との間から外部に排出された状態となる。但し、水溶性の接着層13は、基材9と密着層15との間に残存して接着剤として機能してもよい。
【0041】
次に、作業者はカバーコート層18をクリア層17から剥がして取り外す(ステップS5:図4)。そして、シート本体層14が貼り付けられた基材9を乾燥炉に入れて乾燥させる乾燥工程を実施する(ステップS6)。その乾燥後に、シート本体層14の外表面と、基材9の表面との両方にクリアコート層19を塗装して意匠製品(燃料タンク)が出来上がる(ステップS7:図5)なお、クリアコート層19の塗装後は、自然乾燥させても乾燥炉により乾燥させてもよい。
【0042】
以上に説明した構成によれば、密着層15が意匠層16の端縁の外側に食み出しているため、意匠層16の端縁が密着層15を介さずに貼付対象物(燃料タンク本体9)に直接的に付着することが防がれる。そのため、シート本体層14と基材9との間の密着性が良好に保たれて、密着性低下に起因する不具合を防止できる。密着性低下を防ぐことで、スキージを用いて、シート本体層14と基材9との間に浸入した水や空気を容易に押し出すことができ、シート本体層と基材との間の流体の残留(再浸入)を防ぎやすい。これによって乾燥過程の高温状態下においても、シート本体層14と基材9との間での流体の膨張が防がれ、皺や膨れ等の不具合を防止できる。
【0043】
また、密着層15の食み出し部15aが透明であるので、食み出し部15aを通して基材(燃料タンク本体9)の素地が外部から見える。そのため、密着層15の食み出し部15aが目立つことを防いで、食み出し部15aによる美観の低下を防止できる。従って、基材9に対するシート本体層14の密着性と意匠製品の美観性とを両立でき、水転写シート10の不具合を好適に防止できる。
【0044】
また、密着層15の食み出し部15aは、意匠層16の端縁に沿って一周する形状を有するので、密着層15に対して意匠層16がずれる方向が任意であったとしても、密着性低下を防止でき、位置ずれに対する許容量を高めて製造コストを低減できる。また、密着層15の食み出し部15aは、意匠層16の端縁から1mm以上の食み出し幅Wを有するので、密着層15に対する意匠層16の位置ずれが発生しても、密着層15から意匠層16が食み出ること好適に防止できる。
【0045】
また、密着層15の全体が透明であるので、水転写シート10の製造において一度の工程で食み出し部15aを含む密着層15を形成でき、製造工程の単純化を図ることができる。また、クリア層17は、意匠層16の全体を覆って密着層15の食み出し部15aに達しているので、意匠層16が外部に露出することを確実に防止できる。
【0046】
また、転写体12の厚みが10μmより大きいので、スキージーによる水抜工程での破れや皺などが生じることを防ぐことができ、水抜き作業の容易化を図ることができる。また転写体の厚みが100μmより小さいので、基材9への貼り付け後における転写体12の周囲との境界が目立ち難くて曲面追従性も良く、美観を良好にできる。しかも、意匠層16の厚みは5μmより大きく、意匠層16の全体が密着層15に密着するため、カバーコート層18の剥離作業において、意匠層16の端縁がカバーコート層18に連れられて破断することも防止できる。また、意匠層16の厚みが50μmより小さいので、転写体12の厚みが大きくなることが防がれ、転写体12とその周囲との境界が目立つことを防ぐことができる。
【0047】
また、密着層15の食み出し部15aが透明に形成されることで、基材9の色味にかかわらず、食み出し部15aは基材9の表面色と同化した色味に見えやすい。したがって、基材9の色味にかかわらず同じ水転写シート10を利用することができ、水転写シート10の汎用性を向上させることができる。
【0048】
また、クリア層17が意匠層16の端縁を覆って密着層15に接触するので、意匠層16の端縁と密着層15との境界部分を透明材料で充填することができ、密着層15が目立つことを防ぐことができる。更に、クリア層17が密着層15を覆うことで、意匠層16の端縁と密着層15の食み出し部15aとで構成される段差を透明材料で充填することができ、密着層15が目立つことをさらに防ぐことができる。
【0049】
また、基材9の全体ではなく基材9の一部の領域にシート本体層14が貼り付けられる場合には、基材9の全体にシート本体層14が貼り付けられる場合に比べて、シート本体層14とその周囲の基材9との境界が目立ちやすいが、前述したように美観を向上することができるので、基材9に対する部分的な転写に水転写シート10を好適に用いることができる。また、本実施形態では、クリアコート層19が形成されることで、シート本体層14と基材9との間の段差が目立つことが防がれ、美観を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態の意匠製品は、燃料タンクのような比較的大型な部品である。このようにスキージーによる一回の水の掻き出し面積よりも大きな面積に転写体12が貼り付けられて、基材9とシート本体層14との間に流体が残留しやすい場合であっても、密着性が維持されやすく水転写シート10を好適に用いることができる。また、本実施形態の意匠製品の被貼付面は、曲面形状を有する。このような曲面(特に、曲率が非一様である曲面)に転写体12が貼り付けられて基材9とシート本体層14との間に流体が残留しやすい場合であっても、密着性を維持しやすく水転写シート10を好適に用いることができる。なお、転写体12は、基材の全面に貼り付けられてもよいし、基材の平坦面に貼り付けられてもよい。
【0051】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る水転写シート110の図1相当の図面である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図7に示すように、第2実施形態の水転写シート110では、密着層115及び意匠層116の構成が第1実施形態のものと異なる。なお、ベースシート11、接着層13、クリア層17及びカバーコート層18の構成は、第1実施形態と同様である。
【0052】
密着層115は、透明密着層121及び密着隠蔽層122を含む。透明密着層121及び密着隠蔽層122は、基材9に対する密着性をそれぞれ付与する機能を有する。透明密着層121及び密着隠蔽層122は、それぞれスクリーン印刷によって形成される。透明密着層121は、接着層13に対して隣接して積層された透明な樹脂膜である。密着隠蔽層122は、透明密着層121に対して意匠層116側に隣接して積層された非透明な樹脂膜である。透明密着層121は、基材9に貼り付けられた状態で、その存在が目立たない程度に透明であればよい。密着隠蔽層122は、透明密着層121よりも非透明に形成される。より具体的には、密着隠蔽層122は、意匠層116の発色性を上げるために基材9の表面色を透過させない機能を有し、例えばグレー色を有する。
【0053】
本実施形態では、透明密着層121及び密着隠蔽層122は、透明密着層121が密着隠蔽層122よりもベースシート11に近くなるように積層されている。透明密着層121は、意匠層116及び密着隠蔽層122の各々よりも大面積である。透明密着層121は、積層方向に垂直な方向において、意匠層116の端縁の外側に食み出した食み出し部121aを有する。透明密着層121は、前記積層方向に垂直な方向において、密着隠蔽層122の端縁の外側に食み出している。密着隠蔽層122は、前記積層方向に垂直な方向において、意匠層116よりも内側に配置されて意匠層116よりも小面積である。言い換えると、意匠層116は、密着隠薇層122の全体を覆っている。意匠層116は、密着隠蔽層122の主面を覆うとともに、密着隠蔽層122の端縁も覆い隠すようにして透明密着層121に到達している。その他の構成及び製造手順は、第1実施形態と同様である。
【0054】
第2実施形態の構成によれば、密着隠蔽層122が基材9と意匠層116との間に介在するので、意匠層116の発色性を良好に保つことができる。しかも、密着隠蔽層122が透明密着層121よりも小面積であり意匠層116が密着隠蔽層122の端縁の外側に食み出すので、密着隠蔽層122の端縁部が外部から直接視認されることも防止できる。また、密着層115として、意匠層116の端縁の外側に食み出す透明の食み出し部121aを有するので、密着性と美観性とを両立できる。
【0055】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る水転写シート210の図1相当の図面である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図8に示すように、第3実施形態の水転写シート210では、転写体212のシート本体層214の密着層215及びクリア層117の構成が第1実施形態のものと異なる。なお、ベースシート11、接着層13、意匠層16及びカバーコート層18の構成は、第1実施形態と同様である。
【0056】
密着層215は、積層方向に直交する方向において、意匠層16よりも外側に食み出した食み出し部215aを有する。クリア層217は、積層方向に直交する方向において、意匠層16よりも外側に食み出して意匠層16の端縁を覆っている。密着層215の食み出し部215aは、積層方向に直交する方向において、クリア層217よりも外側に食み出している。なお、積層方向に直交する方向において、密着層215の端縁は、クリア層217の端縁と同じ位置にあってもよい。この構成によっても、水転写シート210において密着性と美観性とを両立できる。
【0057】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る水転写シート310の図1相当の図面である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図9に示すように、第4実施形態の水転写シート310では、転写体312のシート本体層314の密着層315の構成が第1実施形態のものと異なる。なお、ベースシート11、接着層13、意匠層16、クリア層17及びカバーコート層18の構成は、第1実施形態と同様である。
【0058】
密着層315は、密着隠蔽層322と、密着隠蔽層322の周縁を囲む形状(例えば、リング形状)を有する透明密着層321とを備える。透明密着層321は、密着隠蔽層322の端縁に連なっている。密着隠蔽層322及び透明密着層321は、互いに同じ階層に存在する。例えば、透明密着層321の肉厚は、密着隠蔽層322の肉厚と同じである。
【0059】
密着隠蔽層322は、積層方向に直交する方向において、意匠層16よりも内側に位置している。密着隠蔽層322は、平面視において、意匠層16に包含されている。透明密着層321は、積層方向に直交する方向において、意匠層16よりも外側に食み出した食み出し部321aを有する。この構成によっても、水転写シート310において密着性と美観性とを両立できる。更に、透明密着層321及び密着隠蔽層322を含む密着層315の肉厚の増加を防ぐことができる。
【0060】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態に係る水転写シート410の図1相当の図面である。なお、第1又は第2実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図10に示すように、第5実施形態の水転写シート410では、転写体412のシート本体層414の密着層415の構成が第2実施形態のものと異なる。なお、ベースシート11、接着層13、意匠層116、クリア層17及びカバーコート層18の構成は、第2実施形態と同様である。
【0061】
密着層415は、接着層12に積層された密着隠蔽層422と、密着隠蔽層422に意匠層166側から積層された透明密着層421と、を備える。密着隠蔽層422は、積層方向に直交する方向において、意匠層116よりも内側に位置している。密着隠蔽層422は、平面視において、意匠層116に包含されている。
【0062】
透明密着層421は、積層方向に直交する方向において、密着隠蔽層422よりも外側に食み出して密着隠蔽層422の端縁を覆っている。即ち、透明密着層421は、密着隠蔽層422に積層された上層部421aと、上層部421aに段差状に繋がって密着隠蔽層422と同じ階層で外側に突出した下層部421bとを有する。透明密着層421の下層部421bは、積層方向に直交する方向において、意匠層116よりも外側に食み出した食み出し部421cを有する。意匠層116は、透明密着層421の上層部421aの端縁を覆い、透明密着層421の下層部421bに到達している。この構成によっても、水転写シート410において密着性と美観性とを両立できる。
【符号の説明】
【0063】
5 意匠製品(燃料タンク)
9 基材(燃料タンク本体)
10,110,210,310,410 水転写シート
11 ベースシート
12,112,212,312,412 転写体
13 接着層
14,114,214,314,414 シート本体層
15,115,215,315,415 密着層
15a,215a,315a 食み出し部
16,116 意匠層
17,217 クリア層
18 カバーコート層
19 クリアコート層
121,321,421 透明密着層
121a,321a、421c 食み出し部
122,322,422 密着隠蔽層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10