(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】積層ガラス管から製作されたガラス物品、並びに、積層ガラス管をガラス物品に加工するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C03B 23/09 20060101AFI20230427BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C03B23/09
C03B17/06
(21)【出願番号】P 2020529690
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 US2018063077
(87)【国際公開番号】W WO2019108803
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-29
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】デネカ,デイヴィッド アラン
(72)【発明者】
【氏名】フレドホルム,アラン マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジュボー,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】マツシック,ジョセフ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パルンボ,アニエッロ マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ピエロン,クリストフ
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-521676(JP,A)
【文献】特表2016-506348(JP,A)
【文献】特表2016-534013(JP,A)
【文献】特開平11-157856(JP,A)
【文献】特開昭49-108118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297705(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/04
C03B 21/00
C03B 33/06 - 33/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品をガラス管から製造する方法において、
ガラス管を、少なくとも1つの形成ステーションおよび分離ステーションを含む加工部に導入する工程であって、前記ガラス管は、コアガラス組成物を含むコア層、外側ガラス組成物を含む外側クラッド層、および、内側ガラス組成物を含む内側クラッド層を有する積層ガラス管を含むものであり、前記コア層には引張応力が加わり、前記内側クラッド層または前記外側クラッド層の少なくとも1つには圧縮応力が加わったものである工程と、
ガラス物品の少なくとも1つの特徴物を、前記積層ガラス管の加工端部で形成する工程と、
前記ガラス物品を前記積層ガラス管の加工端部から分離して、前記コア層の一部を、該積層ガラス管の加工端部で露出させる工程と、
前記コア層の前記露出部分を、該コア層をクラッド層に完全に囲い込むことによって、修復する工程と
を含
み、
前記コア層の前記露出部分を修復する工程は、ガラスを、前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方から移動させて、該コア層を完全に囲い込む工程を含み、
前記ガラスを、前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方から移動させて、前記コア層を完全に囲い込む工程は、
前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方を、前記コア層の前記露出部分に近接して加熱して、前記内側ガラス組成物、前記外側ガラス組成物、または、それらの両方の粘度が低下して、該内側クラッド層、該外側クラッド層、または、それらの両方の変形を可能にする工程と、
前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方を変形させて、前記コア層の前記露出部分と接触させる工程と、
ガラス片を、前記積層ガラス管の加工端部から分離する工程と
を含むものである、方法。
【請求項2】
前記コア層の前記露出部分を修復する工程の前に、該コア層の該露出部分を、前記積層ガラス管の加工端部の軸面に配置するものである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コア層の前記露出部分を修復する工程は、ガラスシートを前記積層ガラス管の表面に連結する工程を含み、前記ガラスシートは、該コア層の該露出部分を覆うように配置されるものである、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、および、前記ガラスシートは、協働して、前記コア層の前記露出部分を表面破損の外因から隔離するものである、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ガラスシートは、ガラスリングを含むものである、
請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ガラスシートは、75マイクロメートル以上の厚さを有するものである、
請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガラスシートは、前記内側ガラス組成物および前記外側ガラス組成物の少なくとも1つと同じガラス組成物を含むものである、
請求項3から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ガラスシートを前記積層ガラス管の前記表面に連結する工程は、
前記積層ガラス管の前記表面を加熱する工程と、
前記ガラスシートを前記加熱した表面に接触させる工程と
を含むものである、
請求項3から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記積層ガラス管の前記表面を、該積層ガラス管の該表面での前記ガラスの粘度が100キロポアズ以下となる温度まで加熱するものである、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガラスシートを前記積層ガラス管の前記表面に連結する工程は、該ガラスシートおよび該表面を熱研磨して、該ガラスシートを該積層ガラス管の該表面に一体化し、それにより、該ガラスシートを、前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方に接合する工程を含むものである、
請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガラス片を前記積層ガラス管の加工端部から分離する工程は、
前記積層ガラス管のトリミング領域を加熱する工程であって、前記トリミング領域は、前記積層ガラス管の加工端部から軸方向に離間したものである工程と、
内側トリミング具と外側トリミング具を収束させて、前記積層ガラス管の前記トリミング領域で密着させ、前記内側クラッド層と前記外側クラッド層が該トリミング領域で接触して、前記ガラス片を前記積層ガラス管の加工端部から分離するまで、該内側クラッド層、該外側クラッド層、または、それらの両方を変形させる工程と
を含むものである、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
積層ガラス管を複数のガラス物品に加工する間に積層ガラス管を無傷に維持するシステムにおいて、
少なくともコア層、内側クラッド層、および、外側クラッド層を含む積層ガラス管を固定するように動作可能な保持部であって、前記コア層は引張状態で、前記内側クラッド層および前記外側クラッド層の少なくとも1つは圧縮状態である保持部と、
ガラス物品を前記積層ガラス管の加工端部から分離して、前記コア層の一部を該積層ガラス管の加工端部で露出させるように動作可能な分離部と、
前記コア層の前記露出部分を修復し、該コア層を表面破損の外因から完全に囲い込むように動作可能な再被覆ステーションと
を含
み、
前記再被覆ステーションは、内側トリミング具および外側トリミング具を含むトリミングステーションを含み、前記トリミングステーションは、前記内側トリミング具と前記外側トリミング具とを徐々に密着させるように動作可能である、システム。
【請求項13】
前記再被覆ステーションは、前記積層ガラス管を、該積層ガラス管の前記加工端部またはトリミング領域で加熱するように動作可能な予熱部を含むものである、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記再被覆ステーションは、ガラスシート保持部を含み、前記ガラスシート保持部に配置されたガラスシートを、前記積層ガラス管の表面と接触させるように動作可能である、
請求項12または13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第120条の下、「Glass Articles Made from Laminateted Glass Tubing and Systems and Methods for Converting Laminateted Glass Tubing into the Glass Articles」という名称で、2018年11月27日に出願された米国特許出願第16/201,493号、および、「Glass Articles Made from Laminateted Glass Tubing and Systems and Methods for Converting Laminateted Glass Tubing into the Glass Articles」という名称で、2018年11月27日に出願された米国特許出願第16/201,497号の優先権の利益を、更に、「Glass Articles Made from Laminateted Glass Tubing and Systems and Methods for Converting Laminateted Glass Tubing into the Glass Articles」という名称で、2017年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/592,725号の優先権の利益を主張し、それらの全内容は依拠され、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、ガラス物品に関し、特に、積層ガラス管から製作されたガラス物品、並びに、ガラス物品を積層ガラス管から製造するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスは、他の材料と比べて、気密性、光学透明性、および、優れた化学的耐久性を有するので、歴史的に、好ましい製薬容器材料として使われてきた。具体的には、製薬容器で用いるガラスは、その中に入れられた薬剤の安定性に影響しないように、適切な化学的耐久性を有さなくてはならない。適切な化学的耐久性を有するガラスは、化学的耐久性が証明されているASTM規格「Type IA」および「Type IB」ガラス組成物を含む。製薬産業では、バイアル、カートリッジ、注射器、アンプル、ボトル、ジャー、並びに、他のガラス容器またはガラス物品など、様々なガラス容器が用いられている。
【0004】
ガラス管は、例えば、「加工機」において、製薬用ガラス容器などのガラス物品に加工されうる。加工機は、75年以上も使われてきて、現在では、様々な市販および社内器具供給者によって製作されている。これらの加工機は、典型的には、長いガラス管を、火炎処理、回転および静止器具を用いた形成、熱分離、および/または、傷をつけてから衝撃を与える切断工程などを含む工程を用いて、複数のガラス物品に変形させる。
【0005】
ガラス容器を製薬容器および他の利用例で用いる際の主な弱点の1つは、ガラスは機械的に割れ易いことである。そのようなガラス容器が破損した場合、薬剤の損失により費用が高くなると共に、容器内にガラス粒子が存在、容器内に入れた組成物の完全な破壊、または、他の安全性の問題など、安全性についての問題も生じうる。ガラスの機械的性能を高める1つの選択肢は、熱または化学的強化処理を通して、ガラスを強化することである。しかしながら、ホウケイ酸ガラス組成物など、いくつかのガラス組成物は、イオン交換などの化学的強化処理を通して、強化することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、積層ガラス管から製造されて、改良された機械的耐久性を有するガラス物品、並びに、積層ガラス管のコア層を、1つ以上のクラッド層に囲い込まれた状態で維持しつつ、積層ガラス管をガラス物品に加工するシステムおよび方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様において、ガラス物品は、引張応力が加わったコア層、および、少なくとも1つのクラッド層を含む積層ガラスを含む。少なくとも1つのクラッド層の少なくとも1つに、圧縮応力が加わる。コア層は、少なくとも1つのクラッド層内に完全に囲い込まれる。ガラス物品は、更に、積層ガラスに形成された少なくとも1つの特徴物を含む。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様を含み、コア層は、少なくとも1つのクラッド層によって、大気から完全に隔離されうる。
【0009】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様を含み、少なくとも1つのクラッド層は、内側クラッド層および外側クラッド層を含み、内側クラッド層と外側クラッド層は、協働して、コア層を囲い込むものでありうる。
【0010】
本開示の第4の態様は、第3の態様を含み、内側クラッド層、外側クラッド層、または、それらの両方に圧縮応力が加わったものでありうる。
【0011】
本開示の第5の態様は、第3の態様を含み、内側クラッド層は、米国薬局方(USP)<660>でType Iガラスと分類される内側ガラス組成物を含むものでありうる。
【0012】
本開示の第6の態様は、第3の態様を含み、内側クラッド層は、ホウケイ酸ガラスを含みうる。
【0013】
本開示の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれか1つを含み、ガラス物品は、製薬容器でありうる。
【0014】
本開示の第8の態様は、第1から第7の態様のいずれか1つを含み、ガラス物品は、ボトル、バイアル、アンプル、注射器、または、カートリッジの1つを含みうる。
【0015】
本開示の第9の態様は、第1から第8の態様のいずれか1つを含み、ガラス物品は、製薬製品、ワクチン、生物工学製品、食品、または、溶液を保持するように適合された容器を含みうる。
【0016】
本開示の第10の態様は、第1から第9の態様のいずれか1つを含み、少なくとも1つのクラッド層における圧縮応力は、50MPa以上でありうる。
【0017】
本開示の第11の態様は、第1から第10の態様のいずれか1つを含み、コア層における引張応力は、10MPa以上でありうる。
【0018】
本開示の第12の態様は、第1から第11の態様のいずれか1つを含み、ガラス物品は、コア層の露出部分がないものでありうる。
【0019】
本開示の第13の態様は、第1から第12の態様のいずれか1つを含み、積層ガラス管は、ホウケイ酸ガラスを含みうる。
【0020】
本開示の第14の態様は、第1から第13の態様のいずれか1つを含み、少なくとも1つのクラッド層の厚さは、少なくとも約30μmでありうる。
【0021】
本開示の第15の態様は、第1から第14の態様のいずれか1つを含み、少なくとも1つのクラッド層の厚さは、積層ガラスの全厚さの15%から25%でありうる。
【0022】
本開示の第16の態様は、第1から第15の態様のいずれか1つを含み、積層ガラスの全厚さは、6mm以下でありうる。
【0023】
本開示の第17の態様は、第1から第16の態様のいずれか1つを含み、積層ガラスの全厚さは、0.3mmから1.5mmでありうる。
【0024】
本開示の第18の態様は、第1から第17の態様のいずれか1つを含み、コア層は、少なくとも1つのクラッド層のガラス組成物と異なるコアガラス組成物を含みうる。
【0025】
本開示の第19の態様において、製品は、第1から第18の態様のいずれか1つに記載のガラス物品と、ガラス物品内に入れられた組成物または物品とを含みうる。
【0026】
本開示の第20の態様において、製品は、内容積部を画定する積層ガラスを含むガラス容器を含み、積層ガラスは、引張応力が加わったコア層、および、圧縮応力が加わった少なくとも1つのクラッド層を含む。少なくとも1つのクラッド層は、コア層を完全に囲い込み、コア層を大気から隔離しうる。製品は、更に、ガラス容器の内容積部内に配置された組成物または物品を含みうる。
【0027】
本開示の第21の態様は、第20の態様を含み、少なくとも1つのクラッド層は、内側クラッド層および外側クラッド層を含み、内側クラッド層と外側クラッド層は、協働して、コア層を囲い込みうる。
【0028】
本開示の第22の態様は、第21の態様を含み、内側クラッド層、および、外側クラッド層に圧縮応力が加わりうる。
【0029】
本開示の第23の態様は、第21または第22の態様を含み、内側クラッド層は、米国薬局方(USP)<660>でType Iガラスと分類される内側ガラス組成物を含みうる。
【0030】
本開示の第24の態様は、第21から第23の態様のいずれか1つを含み、
内側クラッド層は、ホウケイ酸ガラスを含みうる。
【0031】
本開示の第25の態様は、第20から第24の態様のいずれか1つを含み、ガラス容器の内容積部内に配置された組成物を含みうる。
【0032】
本開示の第26の態様は、第25の態様を含み、組成物は、製薬製品、ワクチン、生物工学製品、食品、または、溶液でありうる
本開示の第27の態様は、第20から第26の態様のいずれか1つを含み、ガラス容器は、ボトル、バイアル、アンプル、注射器、または、カートリッジを含みうる。
【0033】
本開示の第28の態様において、ガラス物品をガラス管から製造する方法は、ガラス管を、少なくとも1つの形成ステーションおよび分離ステーションを含む加工部に導入する工程を含みうる。ガラス管は、コアガラス組成物を含むコア層、外側ガラス組成物を含む外側クラッド層、および、内側ガラス組成物を含む内側クラッド層を有する積層ガラス管でありうる。コア層には引張応力が加わり、内側クラッド層または外側クラッド層の少なくとも1つには圧縮応力が加わりうる。方法は、更に、ガラス物品の少なくとも1つの特徴物を、積層ガラス管の加工端部で形成する工程と、ガラス物品を積層ガラス管の加工端部から分離する工程とを含みうる。ガラス物品を積層ガラス管の加工端部から分離する工程は、コア層の一部を、積層ガラス管の加工端部で露出させうる。方法は、更に、コア層の露出部分を、コア層をクラッド層に完全に囲い込むことによって修復する工程を含みうる。
【0034】
本開示の第29の態様は、第28の態様を含み、内側クラッド層および外側クラッド層は、協働して、コア層を完全に囲い込みうる。
【0035】
本開示の第30の態様は、第28または第29の態様を含み、コア層をクラッド層内に完全に囲い込む工程は、コア層を表面破損の外因から隔離しうる。
【0036】
本開示の第31の態様は、第28から第30の態様のいずれか1つを含み、コア層の露出部分を修復する工程の前に、コア層の露出部分を、積層ガラス管の加工端部の軸面に配置しうる。
【0037】
本開示の第32の態様は、第28から第31の態様のいずれか1つを含み、内側ガラス組成物および外側ガラス組成物は、コアガラス組成物と異なりうる。
【0038】
本開示の第33の態様は、第28から第32の態様のいずれか1つを含み、コア層の露出部分を修復する工程は、ガラスシートを積層ガラス管の表面に連結する工程を含み、ガラスシートは、コア層の露出部分を覆うように配置されうる。
【0039】
本開示の第34の態様は、第33の態様を含み、内側クラッド層、外側クラッド層、および、ガラスシートは、協働して、コア層の露出部分を表面破損の外因から隔離しうる。
【0040】
本開示の第35の態様は、第33または第34の態様を含み、ガラスシートは、ガラスリングを含みうる。
【0041】
本開示の第36の態様は、第33から第35の態様のいずれか1つを含み、ガラスシートは、75マイクロメートル以上の厚さを有しうる。
【0042】
本開示の第37の態様は、第33から第36の態様のいずれか1つを含み、ガラスシートは、内側ガラス組成物および外側ガラス組成物の少なくとも1つと同じガラス組成物を含みうる。
【0043】
本開示の第38の態様は、第33から第37の態様のいずれか1つを含み、ガラスシートは、内側ガラス組成物および外側ガラス組成物の少なくとも1つと異なるガラス組成物を含みうる。
【0044】
本開示の第39の態様は、第33から第38の態様のいずれか1つを含み、ガラスシートを積層ガラス管の表面に連結する工程は、積層ガラス管の表面を加熱する工程と、ガラスシートを加熱した表面に接触させる工程とを含みうる。
【0045】
本開示の第40の態様は、第39の態様を含み、積層ガラス管の表面を、積層ガラス管の表面でのガラスの粘度が100キロポアズ以下となる温度まで加熱しうる。
【0046】
本開示の第41の態様は、第39または第40の態様を含み、ガラスシートを積層ガラス管の表面に連結する工程は、ガラスシートおよび表面を熱研磨して、ガラスシートを積層ガラス管の表面に一体化し、それにより、ガラスシートを、内側クラッド層、外側クラッド層、または、それらの両方に接合する工程を含みうる。
【0047】
本開示の第42の態様は、第28から第41の態様のいずれか1つを含み、コア層の露出部分を修復する工程は、ガラスを、内側クラッド層、外側クラッド層、または、それらの両方から移動させて、コア層を完全に囲い込む工程を含みうる。
【0048】
本開示の第43の態様は、第42の態様を含み、ガラスを、内側クラッド層、外側クラッド層、または、それらの両方から移動させて、コア層を完全に囲い込む工程は、内側クラッド層、外側クラッド層、または、それらの両方を、コア層の露出部分に近接して加熱して、内側ガラス組成物、外側ガラス組成物、または、それらの両方の粘度が低下して、内側クラッド層、外側クラッド層、または、それらの両方の変形を可能にする工程を含みうる。ガラスを移動させる工程は、更に、内側クラッド層、外側クラッド層、または、それらの両方を変形させて、コア層の露出部分と接触させる工程を含みうる。
【0049】
本開示の第44の態様は、第43の態様を含み、変形させる工程は、内側クラッド層、外側クラッド層、または、それらの両方を、1つ、または、複数の形成具と接触させる工程を含みうる。
【0050】
本開示の第45の態様は、第42または第43の態様を含み、ガラスを、内側クラッド層、外側クラッド層、または、それらの両方から移動させて、コア層を完全に囲い込む工程は、ガラス片を、積層ガラス管の加工端部から分離する工程を含みうる。
【0051】
本開示の第46の態様は、第45の態様を含み、ガラス片を積層ガラス管の加工端部から分離する工程は、積層ガラス管のトリミング領域を加熱する工程であって、トリミング領域は、積層ガラス管の加工端部から軸方向に離間したものである工程と、内側トリミング具と外側トリミング具を収束させて、積層ガラス管のトリミング領域で密着させ、内側クラッド層と外側クラッド層がトリミング領域で接触して、ガラス片を積層ガラス管の加工端部から分離するまで、内側クラッド層、外側クラッド層、または、それらの両方を変形させる工程とを含みうる。
【0052】
本開示の第47の態様は、第46の態様を含み、内側トリミング具と外側トリミング具を収束させて、内側クラッド層と外側クラッド層が、トリミング領域で接触するように変形させる工程は、コア層を、内側クラッド層および外側クラッド層内に、積層ガラス管の新たな加工端部で完全に囲い込みうる。
【0053】
本開示の第48の態様において、積層ガラス管を複数のガラス物品に加工する間に積層ガラス管を無傷に維持するシステムは、積層ガラス管を固定するように動作可能な保持部を含みうる。積層ガラス管は、少なくともコア層、内側クラッド層、および、外側クラッド層を含みうる。コア層は引張状態で、内側クラッド層および外側クラッド層の少なくとも1つは圧縮状態でありうる。システムは、更に、ガラス物品を積層ガラス管の加工端部から分離するように動作可能な分離部を含みうる。ガラス物品を積層ガラス管の加工端部から分離する工程は、コア層の一部を積層ガラス管の加工端部で露出させうる。システムは、更に、コア層の露出部分を修復し、コア層を表面破損の外因から完全に囲い込むように動作可能な再被覆ステーションを含みうる。
【0054】
本開示の第49の態様は、第48の態様を含み、再被覆ステーションは、積層ガラス管を、積層ガラス管の加工端部またはトリミング領域で加熱するように動作可能な予熱部を含みうる。
【0055】
本開示の第50の態様は、第49の態様を含み、予熱部は、ガストーチ、または、レーザを含みうる。
【0056】
本開示の第51の態様は、第48から第50の態様のいずれか1つを含み、再被覆ステーションは、ガラスシート保持部を含み、ガラスシート保持部に配置されたガラスシートを、積層ガラス管の表面と接触させるように動作可能でありうる。
【0057】
本開示の第52の態様は、第48から第51の態様のいずれか1つを含み、再被覆ステーションは、内側トリミング具および外側トリミング具を含むトリミングステーションを含み、トリミングステーションは、内側トリミング具と外側トリミング具とを徐々に密着させるように動作可能でありうる。
【0058】
ここまでの概略的記載、および、以下の詳細な記載の両方が、様々な実施形態を記載したものであり、請求した主題の本質および特徴を理解するための概観および枠組みを提供することを意図すると理解すべきである。添付の図面は、様々な実施形態の更なる理解のために含められ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載の様々な実施形態を示し、記載と共に、請求した主題の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1A】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による積層ガラス管の実施形態を概略的に示す斜視図である。
【
図1B】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図1Aの積層ガラス管を参照線1B‐1Bに沿って概略的に示す側断面図である。
【
図1C】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図1Bの積層ガラス管を
図1Bの参照線1C‐1Cに沿って概略的に示す上方から見た断面図である。
【
図2A】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図1Aの積層ガラス管の加工端部から物品を熱分離する分離部の実施形態を概略的に示す。
【
図2B】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による積層ガラス管の加工端部から物品を熱分離した後の
図2Aの分離部を概略的に示す。
【
図3A】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による積層ガラス管から物品を
図2Aの分離部によって分離した直後の積層ガラス管の加工端部を概略的に示す側断面図である。
【
図3B】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による積層ガラス管の加工端部から、
図2Aの分離部によって分離された物品を概略的に示す側断面図である。
【
図4】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態によるコア層の露出部分を有する積層ガラス管の加工端部に形成されたフランジの写真である。
【
図5A】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態によるコア層の露出部分を有さないバイアルのフランジについて開発した応力モデルの2次元応力プロファイルを示す図である。
【
図5B】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態によるコア層の露出部分を有するバイアルのフランジについて開発した応力モデルの2次元応力プロファイルを示す図面である。
【
図6A】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による再被覆ステーションを概略的に示す。
【
図6B】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図6Aの再被覆ステーションを概略的に示し、再被覆ステーションのガラスシート保持部が、積層ガラス管の加工端部と係合している。
【
図6C】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図6Aの再被覆ステーションを概略的に示し、ガラスシート保持部が、積層ガラス管の加工端部から外れている。
【
図7A】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図6Aの再被覆ステーションのガラスシート保持部を概略的に示す斜視図である。
【
図7B】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図6Aの再被覆ステーションのガラスシート保持部の他の実施形態を概略的に示す斜視図である。
【
図8】コア層の露出部分が、積層ガラス管の内側クラッド層および外側クラッド層と同じガラス組成を有するガラスシートで覆われた本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による積層ガラス管の加工端部の写真である。
【
図9】コア層の露出部分が、積層ガラス管の内側クラッド層および外側クラッド層と異なるガラス組成を有するガラスシートで覆われた本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による積層ガラス管の加工端部の写真である。
【
図10A】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による内側トリミング具および外側トリミング具を含むトリミングステーションを概略的に示す。
【
図10B】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図10Aのトリミングステーションを概略的に示し、内側トリミング具および外側トリミング具が、積層ガラス管の加工端部と係合している。
【
図10C】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図10Bのトリミングステーションを概略的に示し、外側トリミング具が、内側トリミング具に向かって平行移動している。
【
図10D】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図10Cのトリミングステーションを概略的に示し、外側トリミング具が、更に、内側トリミング具に向かって平行移動している。
【
図10E】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図10Dのトリミングステーションを概略的に示し、外側トリミング具が、更に、内側トリミング具に向かって平行移動して、積層ガラス管のセグメントを、積層ガラス管の加工端部から分離している。
【
図11A】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図10Aのトリミングステーションの内側トリミング具の実施形態を概略的に示す斜視図である。
【
図11B】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図11Aの内側トリミング具を概略的に示す断面図である。
【
図12A】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図10Aのトリミングステーションの外側トリミング具の実施形態を概略的に示す斜視図である。
【
図12B】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図12Aの外側トリミング具を概略的に示す部分断面図の側面図である。
【
図12C】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図12Aの外側トリミング具の接触リングの一部を概略的に示す側面図である。
【
図13】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による積層ガラス管のトリミング中の
図10A~10Eの積層ガラス管の各層の相対的層厚さ(y軸)を、トリミング領域での積層ガラス管の全局所厚さの関数として示すグラフである。
【
図14】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図1Aの積層ガラス管からガラス物品を製造する加工部の実施形態を概略的に示す。
【
図15】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による
図14の加工部のメインタレット、第2のタレット、および、フィードタレットを概略的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
ここで、積層ガラス管から製造されたガラス物品、並びに、ガラス物品を積層ガラス管から製造するシステムおよび方法の実施形態を詳細に記載する。全図を通して、同じ、または、類似の部分を称するには、可能な限り同じ参照番号を用いている。
【0061】
本明細書で用いる方向を表す用語、例えば、上、下、右、左、前、後ろ、最上部、および、底部は、示した図面との関連での記載であり、それについて示した座標軸は、絶対的向きを意味することを意図しない。
【0062】
別段の記載がない限りは、本明細書に示したいずれの方法が、工程が特定の順序で行われることを要するとも、装置の特定の向きを要するとも、解釈されることを意図しない。したがって、方法の請求項が、工程の順序を実際に記載しないか、いずれの装置の請求項も、個々の構成要素の順序も向きも実際に記載しないか、請求項および明細書で、そうではなく、工程が特定の順序に限定されると記載されたり、装置の構成要素について、特定の順序または向きが記載されたりしない場合には、いかなる点でも、順序も向きも推定されることを意図しない。このことは、記載がないことに基づく任意の解釈に当てはまり、それは、工程の配列についての論理事項、動作フロー、構成要素の順序、構成要素の向き、文法構造または句読点に由来する単純な意味、並びに、明細書に記載の実施形態の数を含む。
【0063】
本明細書で用いるように、原文の英語の不定冠詞、および、単数形の前の不定冠詞は、そうでないことが、文脈から明らかでない限りは、複数のものを含む。したがって、例えば、不定冠詞を付けた構成要素は、そうでないことが、文脈から明らかでない限りは、そのような構成要素を2つ以上有する態様を含む。
【0064】
本明細書で用いるように、ガラス管の「加工端部」は、ガラス管から製作されるガラス物品の1つ以上の特徴物へと形成されうるガラス管の端部である。ガラス物品を、加工部を用いて製造する場合、ガラス管の加工端部を、保持部と相対的に、加工部の処理ステーションに向けうるもので、ガラス管の「非加工端部」は、処理ステーションから遠くに向いたガラス管の端部である。
【0065】
本明細書で用いるように、「特徴物」という用語は、積層ガラス管102のガラスが元の管形状から異なる形状に変形されたガラス物品の構造領域のことを称する。例えば、ガラス物品103の「特徴物」は、限定するものではないが、ネック部、肩状部、フランジ、底部、リッジ、リブ、ノズル、チャネル、窪み、表面テクスチャ、または、他の構造形状を含みうる。
【0066】
本明細書で用いるように、「軸の」という用語は、図面に示した座標軸の+/-Z方向のことを称し、ガラス管の中心軸CLに略平行な表面または構造物を称する。
【0067】
ガラスは、他の材料と比べて、気密性、光学透明性、および、優れた化学的耐久性を有するので、製薬容器をガラスで製作しうる。アルミノケイ酸ガラス組成物を含むものなど、いくつかのガラス物品およびガラスシートは、イオン交換によって、化学的に強化されうる。イオン交換による強化処理では、ガラスの表面層のイオンが、同じ原子価または酸化状態を有する、より大きいイオンによって置換、または、それと交換される。イオン交換が可能ないくつかのガラス組成物において、ガラス組成物の表面層のイオン、および、それより大きいイオンは、Li+、Na+、K+、Rb+、および、Cs+などの一価のアルカリ金属カチオンでありうる。アルカリ金属イオンが、アルミノケイ酸ガラス組成物のガラスマトリックスに存在することで、アルミノケイ酸ガラスは、イオン交換処理を通して、容易に化学的に強化されうる。しかしながら、例えば、ホウケイ酸ガラスなど、いくつかのガラス組成物は、アルカリ金属イオンを、これらのガラス組成物が容易に、および/または、効率的に、イオン交換を通して化学的に強化されるのに十分な割合で含まない。更に、イオン交換による強化、および、ガラス管を強化する他の強化処理は、ガラス管の製造のための資本、材料、および、運転コストを上昇させる更なる工程を必要としうる。
【0068】
米国薬局方(USP)<660>でType Iガラスと分類されるガラス製薬容器は、概して、ホウケイ酸ガラスから形成される。USP<660>によれば、Type Iガラスと分類されたガラスは、高い耐加水分解を有し、それにより、ほとんどの非経口および経口組成物を入れる容器として適するものとなる。しかしながら、ここで、ガラス製薬容器に現在使われているType Iホウケイ酸ガラス組成物は、13MPa以上の中央張力を実現するように強化できないことがありうると確認された。したがって、そのようなガラス組成物から形成されたガラス製薬容器は、厚さを貫通するような亀裂が形成され易く、ガラス容器の気密性を損ないうる。
【0069】
その代わりに、積層ガラス管を形成し、次に、積層ガラス管をガラス物品に加工することによって、ガラス管、および、それから製作されたガラス物品を、改良された機械的耐久性を有して製造しうる。例えば、米国特許第9,034,442号明細書に記載のように、積層ガラス管は、複数のガラス層を含みうるもので、その記載は、全体として参照により、本明細書に組み込まれる。例えば、いくつかの実施形態において、積層ガラス管は、コア層、および、少なくとも1つのクラッド層を含みうる。クラッド層は、少なくとも、コア層の内側部分に近接した内側クラッド、および、コア層の外側部分に近接した外側クラッド層を含みうる。そのような実施形態において、内側クラッド層および外側クラッド層のガラス組成物の熱膨張係数(CTE)が、コア層のガラス組成物のCTEと異なると、次に、各ガラス層の熱膨張の違いは結果的に、圧縮応力を内側クラッド層および外側クラッド層で生じ、引張応力をコア層で生じうる。クラッド層で圧縮応力を生じることで、表面破損に対するガラス外面の抵抗が高まり、ガラスの機械的耐久性を高めうる。
【0070】
ガラス物品を積層ガラス管から製造する際の課題の1つは、コア層の一部がガラス物品の表面で露出するのを防ぐことである。例えば、ガラス管をガラス物品に加工する典型的な処理は、熱分離、または、傷/破損分離などの分離処理を含み、ガラス物品が、ガラス管の加工端部から分離される。積層ガラス管について、この分離処理を行うと、コア層が、積層ガラス管の加工端部の軸面で、大気、および/または、表面破損の外因に曝されうる。コア層の一部が積層ガラス管の表面で露出することで、ガラス物品の表面で、圧縮応力が低下した領域、または、むしろ引張応力が加わった領域を生じる。圧縮応力が低下した、または、引張状態の表面部分を有することで、ガラス物品の機械的耐久性、および、表面破損の外因に対するガラス物品の抵抗が、著しく低下する。
【0071】
本開示は、積層ガラス管を複数のガラス物品に加工するシステムおよび方法を含み、システムおよび方法は、ガラス物品を積層ガラス管の加工端部から分離した後に、コア層の露出部分を修復する工程を含む。分離中に露出したコア層の露出部分を修復することで、引張状態のコア層を、圧縮状態のクラッド層に完全に囲い込み、それにより、コア層を、大気、並びに、表面破損および欠陥の外因から隔離する。本開示は、積層ガラス管から製造されたガラス物品も含み、ガラス物品は、圧縮応力が加わった1つ、または、複数のクラッド層によって、完全に包囲されるか、または、囲い込まれた積層ガラスのコア層を有する。
【0072】
本開示で用いるように、「によって、完全に囲い込まれた」という語句は、クラッド層がコア層を包囲して、クラッド層の内面がコア層を内包し、積層ガラス管の外部のいずれの表面破損物質または原因も、最初にクラッド層に接触しない限り、コア層のいずれの部分にも接触しないことを称する。本開示で用いるように、「コア層を完全に隔離」という語句は、クラッド層をコア層と表面破損物質および原因との間に挟むことによって、コア層を、積層ガラス管の外部の表面破損物質または原因から分離し、積層ガラス管の外部のいずれの表面破損物質または原因も、最初にクラッド層に接触して、その中を通過しない限り、コア層のいずれの部分にも接触しないことを称する。
【0073】
図1A~1Cを参照すると、ガラス物品を積層ガラス管102から分離する前の積層ガラス管102の実施形態を示している。積層ガラス管102は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または、6より多くのガラス層などの複数のガラス層を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、例えば、米国特許第9,034,442号明細書に記載のように、積層ガラス管102は、少なくとも、コア層120および少なくとも1つのクラッド層を含みうる。例えば、積層ガラス管102は、コア層120を含み、クラッド層は、外側クラッド層122および内側クラッド層124を含みうる。外側クラッド層122は、コア層120の外面と接触し、積層ガラス管102の中心線C
Lに対して、コア層120から放射状に外側に向かって位置しうる。内側クラッド層124は、コア層120の内面に接触し、コア層120から放射状に内側に向かって位置しうる。外側クラッド層122および内側クラッド層124は、協働して、コア層120を積層ガラス管102の軸面148で囲い込む。外側クラッド層122は、積層ガラス管102の外面140であり、内側クラッド層124は、積層ガラス管102の内面146を提供しうる。本開示のシステムおよび方法を、本明細書において、3つの層を有する積層ガラス管102について記載するが、積層ガラス管は、3より多くの層を有しうることが分かる。例えば、いくつかの実施形態において、積層ガラス管は、複数のコア層120、複数の外側クラッド層122、および/または、複数の内側クラッド層124を有しうる。
【0074】
コア層120は、コアガラス組成物を含み、外側クラッド層122は、外側層ガラス組成物を含み、更に、内側クラッド層124は、内側層ガラス組成物を含みうる。コアガラス組成物は、外側層ガラス組成物、内側層ガラス組成物、または、それらの両方と異なりうる。いくつかの実施形態において、外側層ガラス組成物は、内側層ガラス組成物と同じでありうる。その代わりに、他の実施形態において、外側層ガラス組成物は、内側層ガラス組成物と異なりうる。
【0075】
いくつかの実施形態において、内側クラッド層124の内側ガラス組成物は、USP(米国薬局方)、EP(欧州薬局方)、および、JP(日本薬局方)などの規制機関が、製薬ガラスについて耐加水分解性に基づいて規定した基準を満たすガラス組成物でありうる。USP<660>およびEP7によれば、ホウケイ酸ガラスは、Type I基準を満たし、非経口薬容器として通常使われる。ホウケイ酸ガラスの例は、限定するものではないが、Corning(登録商標)のPyrex(登録商標)7740、7800、および、Wheaton180、200、400、Schott Duran、Schott Fiolax、KIMAX(登録商標)N-51A、Gerrescheimer GX-51 Flintなどを含む。ソーダライムガラスは、Type III基準を満たし、乾燥粉末を入れるのに容認され、乾燥粉末は、次に、溶解されて溶液または緩衝液となる。Type IIIガラスは、アルカリに反応しないことが証明された液状製剤を入れるのにも適する。Type IIIソーダライムガラスの例は、Wheaton800、900を含む。脱アルカリ処理されたソーダライムガラスは、水酸化ナトリウムおよび酸化カルシウムを高いレベルで有し、Type II基準を満たす。これらのガラスは、耐溶出性が、Type Iガラスより低いが、Type IIIガラスより高い。Type IIガラスを、品質保持期限の間、pH7未満に保たれる製品に用いうる。例として、硫酸アンモニウムで処理したソーダライムガラスを含む。いくつかの実施形態において、内側クラッド層124の内側層ガラス組成物は、米国薬局方(USP)<660>のType Iガラスの性能基準を満たすか、他の方法で、それに分類されたガラス組成物であるか、および/または、ISO720によるHGA1の耐加水分解性を有するガラスでありうる。いくつかの実施形態において、内側クラッド層124の内側層ガラス組成物は、USP<660>のType I性能基準、および/または、ISO720によるHGA1性能基準を満たすホウケイ酸ガラスまたはアルミノケイ酸ガラスでありうる。
【0076】
内側層ガラス組成物および外側層ガラス組成物は、コアガラス組成物と異なる熱膨張率(CTE)、ヤング率、または、他の物性などの物性を有しうる。例えば、内側層ガラス組成物、および/または、外側層ガラス組成物は、コアガラス組成物のCTEと異なるCTEを有しうる。積層ガラス管102の形成中にガラス組成物が冷却されると、コアガラス組成物と、外側クラッド層122および内側クラッド層124のガラス組成物とのCTEの違いにより、圧縮応力が、外側クラッド層122および内側クラッド層124で生じ、張力または引張応力が、コア層120で生じる。外側クラッド層122および内側クラッド層124で生じた圧縮応力は、積層ガラス管102を強化し、表面破損の外因に対する積層ガラス管102の抵抗を高める。ガラスに内包された欠陥が積層ガラス管102を通って伝播するのに十分な張力を受ける前に、これらの外側クラッド層122および内側クラッド層124での圧縮応力を、まず克服しなくてはならない。したがって、CTEの違いを通して、圧縮応力を外側クラッド層122および内側クラッド層124に導入することで、積層ガラス管102の機械的耐久性、および、表面欠陥による破損に対する積層ガラス管102の抵抗を高める。
【0077】
コアガラス組成物と、内側層ガラス組成物と、外側層ガラス組成物との物性(例えば、CTE、ヤング率など)の差を増加または減少させるように、コアガラス組成物、内側層ガラス組成物、および/または、外側層ガラス組成物を変化させることによって、積層ガラス管102における圧縮応力の量を調節しうる。外側クラッド層122における圧縮応力の量、および/または、深さを、外側クラッド層122の厚さTOを変化させることによって調整しうる。同様に、内側クラッド層124における圧縮応力の量、および/または、深さを、内側クラッド層124の厚さTIを変化させることによって調整しうる。コア層120、外側クラッド層122、および、内側クラッド層124のガラス組成物、外側クラッド層122の厚さTO、並びに、内側クラッド層124の厚さTIの選択により、外側クラッド層122、および/または、内側クラッド層124における圧縮応力の量および深さを、具体的利用例に応じて調整しうる。
【0078】
いくつかの実施形態において、積層ガラス管102の全厚さTは、4mm以下、2mm以下、1.5mm以下、または、1mm以下など、6ミリメートル(mm)以下でありうる。いくつかの実施形態において、積層ガラス管102の全厚さTは、0.1mmから6mm、0.3mmから4mm、0.5mmから4mm、0.5mmから2mm、または、0.5mmから1.5mmでありうる。外側クラッド層122の厚さTO、および/または、内側クラッド層124の厚さTIは、積層ガラス管102の全厚さTの10%から30%、または、15%から25%など、積層ガラス管102の全厚さTの5%から33%でありうる。いくつかの実施形態において、外側クラッド層122の厚さTO、および/または、内側クラッド層124の厚さTIは、50μm以上、75μm以上、100μm以上、または、150μm以上など、30マイクロメートル(μm)以上でありうる。いくつかの実施形態において、外側クラッド層122の厚さTO、および/または、内側クラッド層124の厚さTIは、50μmから0.75mm、75μmから0.5mm、100μmから0.5mm、または、150μmから0.5mmなど、30μmから1mmでありうる。
【0079】
いくつかの実施形態において、積層ガラス管102の外側クラッド層122、および/または、内側クラッド層124に、積層ガラス管102に機械的耐久性を与えるのに十分な圧縮応力が加わりうる。例えば、いくつかの実施形態において、外側クラッド層122、および/または、内側クラッド層124に、50メガパスカル(MPa)以上、75MPa以上、100MPa以上、または、150MPa以上の圧縮応力が加わりうる。例えば、いくつかの実施形態において、積層ガラス管102の外側クラッド層122、および/または、内側クラッド層124に、50MPaから700MPa、50MPaから500MPa、50MPaから400MPa、75MPaから750MPa、75MPaから500MPa、75MPaから400MPa、100MPaから700MPa、100MPaから500MPa、または、100MPaから400MPaの圧縮応力が加わりうる。いくつかの実施形態において、積層ガラス管102のコア層120には、10MPaから40MPa、10MPaから30MPa、15MPaから50MPa、15MPaから40MPa、または、15MPaから30MPaなど、10MPaから50MPaの引張応力が加わりうる。積層ガラス管102から製作したガラス物品103のクラッド層122、124の圧縮応力およびコア層120の引張応力も、積層ガラス管102の圧縮応力および引張応力と同様でありうる。
【0080】
積層ガラス管102を、米国特許第4,023,953号明細書に記載の処理などのベロー処理を用いて製造しうる。ダナー処理など、他の処理を、積層ガラス管102を製造するのに用いうる。
【0081】
図2Aおよび2Bを参照すると、積層ガラス管102を、ボトル、バイアル、注射器、アンプル、カートリッジ、および、製薬で利用される他のガラス製品など、複数のガラス物品103に加工しうる。積層ガラス管102は、例えば、食品容器など、製薬利用以外で用いられるガラス物品103にも加工しうる。いくつかの実施形態において、積層ガラス管102を、複数の処理ステーションを含む加工部を用いて、これらのガラス物品103に加工しうる。処理ステーションは、加熱ステーション、形成ステーション、分離ステーション、および、穿孔ステーションなど、更に、他の種類の処理ステーションを含みうる。概して、加工処理中に、積層ガラス管102の加工端部150は、ガラス物品103の1つ以上の特徴物に変形される。ガラス物品103の特徴物が形成されると、ガラス物品103は、積層ガラス管102の加工端部150から分離される。次に、加工部、および、加工処理を、
図14および15を参照して詳細に記載する。
【0082】
図2Aおよび2Bを参照すると、ガラス物品103を、熱分離、機械的に傷を付けて破損、レーザ切断、または、他の分離方法によって、積層ガラス管102の加工端部150から分離しうる。
図2Aおよび2Bは、ガラス物品103が積層ガラス管102の加工端部150から、熱の分離を通して分離される分離ステーション206を示している。
図2Aで、積層ガラス管102の加工端部150は、例えば、バイアルを製造するために、肩状部142、フランジ144、および、ネック部145などの複数の特徴物を含むように変形されている。
図2Aでは、ガラス物品103を、バイアルとして示しているが、ガラス物品103は、アンプル、注射器、カートリッジ、ボトル、または、他の物品に特有の特徴物を有しうることが分かる。熱分離について、分離ステーション206は、積層ガラス管102の加工端部150から距離L
Aで位置する分離トーチ252を含みうる。距離L
Aは、ガラス物品103で望ましい長さ寸法を生成するように選択されうる。積層ガラス管102が、保持部130によって、分離トーチ252に対して回転される間に、分離トーチ252は、積層ガラス管102を積層ガラス管102の分離領域で加熱する。積層ガラス管102の分離領域でガラスの温度が上昇すると、ガラスの粘度が低下する。ガラスの転移温度より高い温度では、分離領域のガラスは流動自在になり、それにより、ガラス物品103を、積層ガラス管102の加工端部150から分離できる。熱分離により、メニスカス状ガラス部分156が、積層ガラス管102の新たな加工端部152の上方に生成される。メニスカス状部分156は、熱分離工程の次の穿孔工程によって、再び開口されうる。積層ガラス管102から分離されたガラス物品103の端部に亘って生成されたガラスのメニスカス状部分160は、ガラス物品103の底部を形成するので、熱分離は、概して、バイアル、ボトル、アンプル、および、他の底が閉じた容器または物品の製造で用いられうる。いくつかの実施形態において、熱分離は、分離トーチ252の代わりにレーザを用いる分離ステーション206で実現されうる。
【0083】
いくつかの実施形態において、積層ガラス管102の内面146、外面140、または、それらの両方を、積層ガラス管102の分離領域で、傷付け具(不図示)または刻み目入れ具(不図示)を用いて機械的に傷付け、更に、物品103を、積層ガラス管102の加工端部150から離れるように破損させることによって、ガラス物品103を、積層ガラス管102から分離しうる。ガラス物品103を積層ガラス管102から分離する傷/破損方法を、カートリッジ、注射器、または、少なくとも1つの開口端部を有する他のガラス物品など、少なくとも1つの開口端部を有するガラス物品103に用いうる。いくつかの実施形態において、ガラス物品103を積層ガラス管102から機械的に分離する工程は、次の火炎研磨工程を含み、物品103の軸端部を変形させて、尖った縁部を除去しうる。
【0084】
図3Aを参照すると、ガラス物品103を積層ガラス管102から分離ステーション206で分離した後の積層ガラス管102の加工端部150を示している。ガラス物品103を、積層ガラス管102から、熱または機械的な分離によって分離することで、コア層120の一部が、積層ガラス管102の軸面148で露出する。コア層120の露出部分126は、外側クラッド層122または内側クラッド層124のガラス組成物で被覆されず、したがって、潜在的な表面破損要因に曝される。
【0085】
ここで、
図3Bを参照すると、積層ガラス管102の加工端部150を、バイアルについての特徴物に変形させた後の積層ガラス管102の加工端部150を概略的に示しており、バイアルの特徴物は、肩状部142、フランジ144、および、ネック部145を含む。いくつかの実施形態において、積層ガラス管102の加工端部150を変形させた後に、積層ガラス管102の軸面148は、コア層120の露出部分126を表したままでありうる。
図4は、積層ガラス管102から製造されたガラス物品103のフランジ144の一部を示す一例の写真である。
図4に示すように、積層ガラス管102の軸面148でのコア層120の露出部分126は、変形処理の間、存在し続け、更に、最終ガラス物品103にも存在しうる。変形処理の間に、外側クラッド層122または内側クラッド層124から、いくらかのガラスが移動して、コア層120の露出部分126を覆いうる。しかしながら、コア層120の露出部分126の一部は、最終ガラス物品103でも被覆されないままである。したがって、
図4は、コア層120の露出部分126が、従来の加工部の分離ステーション206で生成されると、少なくとも部分的には、従来の加工処理の間、維持されて、最終ガラス物品103にも存在したままとなるのを示している。
【0086】
ここで、
図5Aを参照すると、応力モデルを、加工後のガラス物品103のフランジ144およびネック部145の断面について示している。コア層120の露出部分126をガラス物品103の軸面148で有さない
図5Aのガラス物品103について、応力モデルを開発した。各層のガラス内の相対応力を、グレイスケールの濃淡で示しており、薄いグレイは圧縮応力を示し、濃いグレイは引張応力を示す。最も薄いグレイの色は、最も高い圧縮応力を示し、最も濃いグレイは、最も高い引張応力を示す。コア層120を囲い込むクラッド層は、外側クラッド層122および内側クラッド層124を含む。
図5Aの外側クラッド層122および内側クラッド層124領域で薄いグレイで示すように、クラッド層には、圧縮応力が加わっている。
図5Aのコア層120領域で濃いグレイで示すように、コア層120には、中央張力が加わっている。
【0087】
ここで、
図5Bを参照すると、コア層120の露出部分126をガラス物品103の軸面148で有するガラス物品103のフランジ144およびネック部145の断面についての応力モデルを示している。応力モデルの全パラメータは、コア層120の露出部分126が存在すること以外は、
図5Aの応力モデルと
図5Bの応力モデルで変わらない。
図5Aと同様に、
図5Bにおける薄いグレイは、圧縮応力を示し、濃いグレイは、引張応力を示す。
図5Bに示すように、コア層120の露出部分126を、ガラス物品103の軸面148で導入することで、
図5Bのコア層を
図5Aのコア層120と比べて濃いグレイで示すように、コア層120での引張応力を高める。更に、コア層120の露出部分126をガラス物品103の軸面148に導入することで、軸面148に沿ったクラッド層の濃いグレイの領域で示すように、クラッド層の圧縮応力を、ガラス物品103の軸面148で低下させる。クラッド層の軸面148に沿った部分は、圧縮状態ではなく、引張状態で示されている。軸面148に沿ったクラッド層で、圧縮応力が低下し、更に、張力が加わるようになることは、ガラス物品103の機械的耐久性、および、表面破損に対する抵抗が、軸面148に沿って低下することを示す。
【0088】
本開示は、コア層120の露出部分126の修復システムおよび方法に関する。加工処理は、ガラス物品103を積層ガラス管102から分離した後で、積層ガラス管102の加工端部150を熱で変形させる前に、再被覆工程、または、再被覆ステーションを含みうる。再被覆工程において、ガラス組成物を、コア層120の露出部分126に加えるか、ガラスを、外側クラッド層122または内側クラッド層124から、コア層120の露出部分126に移動させて、コア層120の露出部分126の再被覆を行う。例えば、いくつかの実施形態において、環状の薄板状ガラスなどのガラスシートを、積層ガラス管102の軸面148に連結して、コア層120の露出部分126を再被覆しうる。その代わりに、他の実施形態において、外側クラッド層122、および/または、内側クラッド層124からのガラスを、溶融状態に転移させて、更に、1つ以上の形成具またはトリミング具によって、積層ガラス管102の露出部分126に移動させて、露出部分126を再被膜しうる。コア層120の露出部分126を再被覆することで、コア層120を完全に囲い込み、コア層120の露出部分126をなくしうる。再被覆後に、積層ガラス管102のコア層120は、外側クラッド層122、および、内側クラッド層124によって、更に、いくつかの実施形態においては、再被覆工程でコア層120の露出部分126の上に再被覆されたガラス組成物によって、大気および表面破損の原因から完全に隔離される。コア層120の露出部分126の上に再被覆されたガラス組成物は、維持されて、コア層120は、加工処理の形成動作の間を通して、破損の外因から隔離され、積層ガラス管102から製造されたガラス物品103は、コア層120の露出部分126がないものでありうる。ガラス物品103は、大気、および/または、表面破損の外因から完全に隔離されたコア層120を有しうる。
【0089】
図6A、6Bを参照すると、積層ガラス管102を複数のガラス物品103に加工する加工部は、再被覆ステーション300を含みうる。いくつかの実施形態において、再被覆ステーション300は、ガラスシート304を積層ガラス管102の軸面148に連結することによって、コア層120の露出部分126を再被覆するように動作可能で、それにより、コア層120の露出部分をガラスシート304で再被覆しうる。
【0090】
ガラスシート304を、限定するものではないが、フュージョンダウンドロー処理、スロットドロー処理、再ドロー処理、フロート処理、または、他のガラスシート形成処理などの任意の従来のガラスシート形成処理で形成しうる。ガラスシート304は、コア層120の露出部分126を再被覆するのに十分な厚さTSを有しうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304は、ガラスシート304が圧縮層をコア層120の露出部分126の上に形成して、コア層120を表面破損の外因から保護するのに十分な厚さTSを有しうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304の厚さTSは、50マイクロメートル(μm)以上でありうる。例えば、いくつかの実施形態において、ガラスシート304の厚さTSは、75μm以上、100μm以上、125μm以上、または、150μm以上でありうる。ガラスシート304の厚さTSは、225μm以下、200μm以下、175μm以下、または、150μm以下など、250μm以下でありうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304の厚さTSは、50μmから250μm、75μmから225μm、100μmから200μm、または、125μmから175μmでありうる。ガラスシート304の厚さTSを調節して、ガラスシート304によって形成される圧縮応力層深さ、および、圧縮応力層の圧縮応力の大きさを変更し、それにより、コア層120の露出部分126を覆う再被覆の強化量を変更しうる。
【0091】
ガラスシート用のガラスを形成し、ガラスを、別々のガラスシート304へと切断しうる。ガラスを、レーザ切断、機械的な傷付け、または、他のガラス切断処理によって、別々のガラスシート304に切断しうる。別々の各ガラスシート304は、積層ガラス管102の軸面148の断面形状に一致するような形状を有しうる。例えば、いくつかの実施形態において、ガラスシート304は、積層ガラス管102の軸面148を完全に覆う大きさの環状の薄板またはリングでありうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304は、コア層120の露出部分126を覆う大きさを有する平坦なリングでありうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304は、中心開口部を有するリングまたはディスクでありうる。本開示では、環状のディスクとして図示し記載しているが、ガラスシート304は、積層ガラス管102の断面形状を覆いうる任意の他の形状を有しうることが分かる。例えば、ガラスシート304は、限定するものではないが、中心開口部を有するか、有さない正方形、三角形、多角形、円形、楕円、または、不規則な形状でありうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304は、コア層120の露出部分126を完全に覆うのに十分な内径、および/または、外径などの寸法を有しうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304は、積層ガラス管102の軸面148を完全に覆うのに十分な内径、および/または、外径などの寸法を有しうる。
【0092】
ガラスシート304は、コア層120のコアガラス組成物と異なる再被覆ガラス組成物を含みうる。ガラスシート304の再被覆ガラス組成物は、コア層120のコアガラス組成物と異なるCTE、ヤング率、または、他の物性などの物性を有しうる。例えば、ガラスシート304の再被覆ガラス組成物は、コアガラス組成物のCTEと異なるCTEを有しうる。ガラスシート304のコアガラス組成物と再被覆ガラス組成物のCTEが異なることで、積層ガラス管102の軸面148に連結されたガラスシート304で、圧縮応力を生じうる。ガラス物品103が仕上げられて、冷却された後、ガラスシート304の再被覆ガラス組成物で生じた圧縮応力は、コア層120の露出部分126を有するガラス物品と比べて、より高い機械的耐久性(つまり、衝撃破損、引っ掻き傷などの表面破損に対して、より高い抵抗)を提供しうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304の再被覆ガラス組成物は、外側クラッド層122の外側層ガラス組成物、内側クラッド層124の内側層ガラス組成物、または、それらの両方と同じでありうる。その代わりに、他の実施形態において、ガラスシート304の再被覆ガラス組成物は、外側クラッド層122の外側層ガラス組成物、内側クラッド層124の内側層ガラス組成物、または、それらの両方と異なりうる。
【0093】
図6Aを参照すると、再被覆ステーション300は、ガラスシート304を保持するように動作可能なガラスシート保持部302、および、積層ガラス管102を保持するように動作可能な保持部130を含みうる。いくつかの実施形態において、保持部130は、各積層ガラス管102を再被覆ステーション300に対して取り外し自在に固定するように構成されうる。保持部130は、クランプ、チャック、または、他の保持装置、若しくは、保持装置の組合せでありうる。いくつかの実施形態において、積層ガラス管102の加工端部150を垂直に下方に向かって-Z方向に向けた状態で、保持部130は、各積層ガラス管102を略垂直な向きに(つまり、
図6Aの座標軸の+/-Z方向に)配置しうる。本明細書では、加工部を垂直に向けるものとして記載するが、保持部130は、積層ガラス管102を、水平に、または、斜めに配置しうると理解すべきである。いくつかの実施形態において、保持部130は、積層ガラス管102を、再被覆ステーション300に対して配置しうる。保持部130は、再被覆ステーション300に対して、保持部軸Dを中心に回転自在で、保持部軸Dは、積層ガラス管102の中心線C
L(
図1A~1C)と同じ位置でありうる。各保持部130は、各保持部130を再被覆ステーション300に対して回転させるモータ(不図示)、連続駆動ベルト、または、他の駆動機構に、動作可能に連結されうる。保持部130が回転することで、積層ガラス管102が、加熱要素、形成具、冷却ノズル、若しくは、再被覆ステーション300、および/または、加工部の他の特徴物に対して、回転できるようになる。いくつかの実施形態において、保持部130は、保持部130および積層ガラス管102を複数の処理ステーションを通って移動させる加工部などによって、再被覆ステーション300の中へ、更に、そこから外に平行移動されうる。
【0094】
図6Aに示すように、再被覆ステーション300は、ガラスシート304を受け付けて保持するように構成されたガラスシート保持部302も含みうる。
図7Aおよび7Bを参照すると、ガラスシート保持部302は、ガラスシート304の形状に少なくとも部分的に一致する形状を有するクレイドル322を含みうる。クレイドル322は、内面324および底面326を含みうる。内面324および底面326は、協働して、ガラスシート304を受け付ける形状を有する空洞部を画定しうる。内面324は、ガラスシート304の外側形状に一致するような形状を有する輪郭を有しうる。
図7Aを参照すると、いくつかの実施形態において、底面326は、平面でありうる。
図7Bを参照すると、他の実施形態において、底面326は、例えば、凹状面などの曲面でありうる。コア層120の露出部分126を再被覆する間に、
図7Bの底面326など、凹状の底面326は、ガラスシート304が、積層ガラス管102の丸まった加工端部150の周りに形成されるのを可能にしうる。
図7Bを参照すると、いくつかの実施形態において、クレイドル322は、ガラスシート304がクレイドル322の空洞部に配置された時に、ガラスシート304の中心開口部を通って延伸するように構成された中心位置決め部328を含みうる。
【0095】
更に
図7Aおよび7Bを参照すると、ガラスシート保持部302は、保持部基部320を含み、クレイドル322は、保持部基部320に連結されうる。いくつかの実施形態において、保持部基部320は、ガラスシート保持部302を保持部130に対して垂直方向に(つまり、
図7Aの座標軸の+/-Z方向に)平行移動させるように動作可能な作動部308に、動作可能に連結されうる。他の実施形態において、保持部基部320は、加工部の基部に固定して連結されうる。
【0096】
再び、
図6Aを参照すると、保持部130が、積層ガラス管102を再被覆ステーション300に配置すると、ガラスシート保持部302は、積層ガラス管102の加工端部150の垂直方向下方に(つまり、
図6Aの座標軸の-Z方向に)配置されうる。いくつかの実施形態において、保持部130が、積層ガラス管102を再被覆ステーション300に配置すると、ガラスシート保持部302は、積層ガラス管102の加工端部150の垂直方向の真下に配置されうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート保持部302は、クレイドル322に受け付けられたガラスシート304が、積層ガラス管102の軸面148と垂直方向に(つまり、
図6Aの座標軸の+/-Z方向に)位置合わせされるように配置されうる。ガラスシート304が、積層ガラス管102の軸面148と垂直方向に位置合わせされると、ガラスシート304は、コア層120の露出部分126を、積層ガラス管102の軸面148において完全に覆いうる。
【0097】
再び、
図6A~6Cを参照すると、再被覆ステーション300は、ガラスシート保持部302または保持部130に動作可能に連結された作動部308を含み、作動部308は、ガラスシート保持部302または保持部130を垂直方向に平行移動(つまり、
図6Bの座標軸の+/-Z方向に平行移動)しうる。いくつかの実施形態において、作動部308は、ガラスシート保持部302に動作可能に連結され、ガラスシート保持部302を、垂直方向の位置を固定(つまり、+/-Z方向に固定)して維持された保持部130に対して、垂直方向に平行移動させるように動作しうる。その代わりに、他の実施形態において、作動部308は、保持部130に動作可能に連結されて、保持部130を、垂直方向(つまり、+/-Z方向)の位置を固定して維持されたガラスシート保持部302に対して、垂直方向に平行移動させるように動作可能でありうる。作動部308は、限定するものではないが、1つ以上の空圧作動部、電気作動部、水圧作動部、磁気作動部、サーボモータ、ギアシステム、または、他の作動部を含みうる。いくつかの実施形態において、作動部308は、ガラスシート保持部302または保持部130に連結された位置決めステージ、および、ガラスシート保持部302または保持部130を位置決めステージに沿って移動させるように動作可能なサーボモータを含みうる。いくつかの実施形態において、保持部130およびガラスシート保持部302の両方が、作動部に、動作可能に連結されて、保持部130が、垂直に下方に向かって(つまり、-Z方向に)ガラスシート保持部302に向かって平行移動され、同時に、ガラスシート保持部302を、垂直方向上方に向かって(つまり、+Z方向に)保持部130に向かって平行移動させうる。
【0098】
いくつかの実施形態において、再被覆ステーション300は、再被覆ステーション300に導入された各積層ガラス管102について、ガラスシート304をクレイドル322に送出するように構成されたガラスシート供給部(不図示)を含みうる。いくつかの実施形態において、各ガラスシート304は、オペレータによって、手動で供給されうる。
【0099】
更に
図6Aを参照すると、再被覆ステーション300は、任意で、積層ガラス管102の軸面148に熱を供給するように配置された予熱部306を含みうる。予熱部306は、積層ガラス管102の加工端部150に近接して配置されうる。いくつかの実施形態において、予熱部306は、積層ガラス管102の軸面148でのガラスの粘度が100キロポアズ(kP)以下まで低下するのに十分な熱を、積層ガラス管102の加工端部150に供給するように動作可能でありうる。他の実施形態において、予熱部306は、積層ガラス管102の軸面148でのガラスの粘度を、75kP以下、50kP以下、以下25kP以下、更に、10kP以下の粘度まで低下させるように動作可能でありうる。予熱部306は、ガラスを、積層ガラス管102の軸面148でのガラスの粘度が100kP以下になる温度まで加熱することが可能なガストーチ(つまり、火炎バーナー)、レーザ、放射加熱部、または、他の熱源を含みうる。いくつかの実施形態において、予熱部306は、ガストーチでありうる。
【0100】
図6Cを参照すると、いくつかの実施形態において、再被覆ステーション300は、任意で、仕上げ加熱部310を含みうる。仕上げ加熱部310は、積層ガラス管102の加工端部150に近接して配置されうる。仕上げ加熱部310は、ガラスシート304を、積層ガラス管102の外側クラッド層122および内側クラッド層124に融着させるように動作可能でありうる。仕上げ加熱部310は、ガラスを、積層ガラス管102の軸面148で、ガラスシート304と外側クラッド層122および内側クラッド層124とが融着する温度まで加熱することが可能なガストーチ(つまり、火炎バーナー)、レーザ、放射熱源、または、他の熱源を含みうる。いくつかの実施形態において、仕上げ加熱部310は、火炎研磨トーチなどのガストーチで、ガラスシート304が積層ガラス管102の軸面148に連結された後に、積層ガラス管102の加工端部150を火炎研磨するように動作可能でありうる。その代わりに、他の実施形態において、仕上げ加熱部310は、レーザ加熱部で、ガラスシート304を積層ガラス管102の軸面148に連結した後に、積層ガラス管102の加工端部150をレーザ仕上げするように動作可能でありうる。更に他の実施形態において、ガラスシート保持部302自体が加熱されて、次に、ガラスシート304と外側クラッド層122および内側クラッド層124とが融着するようにしうる。これらの実施形態において、ガラスシート保持部は、バーナーによって加熱されるか、誘導加熱などされうる。
【0101】
図6Aを参照すると、再被覆ステーション300の動作において、積層ガラス管102の加工端部150、特に、積層ガラス管102の軸面148は、積層ガラス管102の軸面148でのガラスの粘度が低下するのに十分な温度まで予熱されて、ガラスシート304が積層ガラス管102の軸面148に付着するのを可能にしうる。いくつかの実施形態において、積層ガラス管102の加工端部150は、再被覆ステーション300の直前の処理ステーションで予熱されうる。例えば、いくつかの実施形態において、再被覆ステーション300の直前に、積層ガラス管102の加工端部150を加熱するように動作可能な加熱ステーションが位置しうる。他の例において、再被覆ステーション300は、熱分離ステーション、または、火炎穿孔ステーションの直後に位置して、熱分離または穿孔処理中の積層ガラス管102の加工端部150の加熱が、積層ガラス管102の加工端部150でガラスの粘度が低下するのに十分となるようにしうる。
【0102】
その代わりに、他の実施形態において、予熱部306を積層ガラス管102の加工端部150に近接して配置し、更に、積層ガラス管102を回転させることによって、積層ガラス管102の加工端部150は、再被覆ステーション300で予熱されうる。ガラスは、積層ガラス管102の加工端部150での粘度が、75kP以下、50kP以下、25kP以下、または、10kP以下など、100kP以下に低下するのに十分な温度まで予熱されうる。例えば、いくつかの実施形態において、ガラスは、積層ガラス管102の加工端部150で、ガラスの粘度が、1kPから100kP、1kPから75kP、1kPから50kP、1kPから25kP、1kPから10kP、5kPから100kP、5kPから75kP、5kPから50kP、5kPから25kP、5kPから10kP、または、10kPから100kPとなる温度、または、それより高い温度まで予熱されうる。
【0103】
更に
図6Aを参照すると、ガラスシート304を、ガラスシート保持部302のクレイドル322に配置しうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304は、手動で、ガラスシート保持部302のクレイドル322に配置されうる。その代わりに、他の実施形態において、ガラスシート304は、自動で、供給機構によって、ガラスシート保持部302のクレイドル322に配置されうる。積層ガラス管102は、保持部130によって、再被覆ステーション300内に平行移動され、それにより、積層ガラス管102を再被覆ステーション300に配置しうる。いくつかの実施形態において、積層ガラス管102の加工端部150を予熱した後に、積層ガラス管102を、再被覆ステーション300内に平行移動させうる。その代わりに、他の実施形態において、積層ガラス管102の加工端部150を予熱する前に、積層ガラス管102を、再被覆ステーション300内に平行移動させうる。
【0104】
図6Bを参照すると、積層ガラス管102を再被覆ステーション300内に移動させ、積層ガラス管102の軸面148でのガラスの粘度が低下するように、軸面148が予熱されると、ガラスシート304の上面312は、積層ガラス管102の軸面148と接触しうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート保持部302を、ガラスシート304の上面312が積層ガラス管102の軸面148に接触するまで、垂直方向上方に向かって(つまり、
図6Bの座標軸の+Z方向に)平行移動させることによって、ガラスシート304の上面312は、積層ガラス管102の軸面148と接触しうる。これらの実施形態において、保持部130および積層ガラス管102は、固定した垂直方向位置に維持されうる。その代わりに、他の実施形態において、保持部130は、垂直に下方に向かって(つまり、
図6Bの座標軸の-Z方向に)ガラスシート保持部302に向かって平行移動され、一方、ガラスシート保持部302は、固定した垂直方向位置に維持される。更に他の実施形態において、ガラスシート保持部302は、垂直方向上方に向かって平行移動され、保持部130は、垂直に下方に向かって平行移動され、ガラスシート保持部302および積層ガラス管102の両方が、互いに近づく向きに平行移動されうる。
【0105】
いくつかの実施形態において、ガラスシート304の上面312と積層ガラス管102の軸面148は、圧縮状態で接触しうる。ガラスシート304の上面312と積層ガラス管102の軸面148を圧縮状態で接触させることで、ガラスシート304の上面312と積層ガラス管102の軸面148が、確実に密着し完全に接触しうる。圧縮は、保持部130の位置に対するガラスシート保持部302の位置に関係する。本明細書で用いるように、保持部130に対するガラスシート保持部302の「ゼロ位置」という用語は、ガラスシート304の上面312が、最初に積層ガラス管102の軸面148に接する時の、保持部130に対するガラスシート保持部302の位置を称する。ガラスシート保持部302と保持部130を、互いに近づくようにゼロ位置に対して移動させることで、ガラスシート304の上面312および積層ガラス管102の軸面148に加わる圧縮力が高まる。本開示で用いるように、ガラスシート304および積層ガラス管102の「圧縮」という用語は、ゼロ位置でのガラスシート保持部302と保持部130の間の距離から、保持部130に対するガラスシート保持部302の最終位置でのガラスシート保持部302と保持部130の間の距離を減算した値を称する。いくつかの実施形態において、ガラスシート304と積層ガラス管102の圧縮は、50μmから400μm、50μmから300μm、50μmから200μm、50μmから100μm、100μmから500μm、100μmから400μm、100μmから300μm、または、100μmから200μmなど、50μmから500μmでありうる。
【0106】
ガラスシート304の上面312を、予熱された積層ガラス管102の軸面148と接触させることで、熱が、積層ガラス管102の軸面148からガラスシート304の上面312へ直に伝達される。積層ガラス管102の軸面148からの熱伝達は、ガラスシート304の上面312の温度を上昇させ、それにより、ガラスシート304の上面312でのガラス組成物の粘度が低下する。積層ガラス管102の軸面148からの熱伝達は、ガラスシート304の上面312でのガラスの粘度が、75kP以下、50kP以下、25kP以下、または、10kP以下など、100kP以下に低下するのに十分でありうる。ガラスシート304の上面312でのガラスの粘度が低下することで、ガラスシート304の上面312の積層ガラス管102の軸面148への最初の付着(つまり、「粘着」)が可能になる。更に、積層ガラス管102の軸面148からガラスシート304に熱が伝達されることで、ガラスシート304の上面312の積層ガラス管102の軸面148への付着を高め、結果的に、ガラスシート304を積層ガラス管102の加工端部150と一体にし、積層ガラス管102の軸面148を完全に被覆しうる。
【0107】
いくつかの実施形態において、ガラスシート304の上面312を、積層ガラス管102の軸面148に接触する前に予熱して、ガラスシート304の上面312でのガラスの粘度を低下させうる。ガラスシート304の上面312を、任意の外部の予熱部によって、予熱しうる。例えば、ガラスシート304の上面312を、ガラスシート304の上面312を加熱可能なガストーチ(つまり、火炎バーナー)、レーザ、放射加熱部、または、他の熱源によって予熱して、ガラスの粘度を低下させうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304の上面312は、予熱されて、ガラスシート304の上面312でのガラスの粘度が、75kP以下、50kP以下、25kP以下、または、10kP以下など、100kP以下に低下しうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304の上面312は、予熱されて、ガラスシート304の上面312でのガラスの粘度が、1kPから100kP、1kPから75kP、1kPから50kP、1kPから25kP、1kPから10kP、5kPから100kP、5kPから75kP、5kPから50kP、5kPから25kP、5kPから10kP、または、10kPから100kPに低下しうる。
【0108】
いくつかの実施形態において、ガラスシート保持部302の底面326は、(例えば、凹状などの)輪郭を有しうる。ガラスシート304が積層ガラス管102の軸面148と接触すると、積層ガラス管102の軸面148からガラスシート304に熱が伝達されて、ガラスシート304のガラスの粘度を低下させ、ガラスシート304の軟化を生じさせ、曲げ易くなりうる。ガラスシート304が、ガラスシート保持部302によって、積層ガラス管102の軸面148と接触したままに維持されるので、ガラスシート保持部302の底面326の輪郭は、ガラスシート304の一部を、積層ガラス管102の加工端部150の周囲で変形させ、積層ガラス管102の加工端部150を完全に覆いうる。
【0109】
ここで、
図6Cを参照すると、ガラスシート304が積層ガラス管102の軸面148に付着すると、ガラスシート保持部302、保持部130、または、それらの両方が、係合状態から平行移動されて、ガラスシート304が、積層ガラス管102の軸面148に連結されたままにしうる。次に、積層ガラス管102の加工端部150は、熱研磨されて、ガラスシート304を積層ガラス管102の加工端部150に、完全に融着させうる。熱研磨は、ガラスシート304、および、積層ガラス管102の加工端部150を、ガストーチまたは他の加熱装置により処理する工程を含みうる。いくつかの実施形態において、再被覆ステーション300は、積層ガラス管102の加工端部150を、再被覆ステーション300で熱研磨するように動作可能な仕上げ加熱部310を含みうる。その代わりに、他の実施形態において、積層ガラス管102は、保持部130によって、積層ガラス管102の加工端部150を熱研磨するように動作可能な下流側加熱ステーションに平行移動されうる。
【0110】
熱研磨後に、積層ガラス管102に、次に、1つ以上の加熱工程を含む加工動作、および、1つ以上の変形動作が行われて、ガラス物品103の最終的な形状および寸法を生成する。積層ガラス管102を、再被覆ステーション300の下流側で処理する間に、積層ガラス管102の軸面148に連結されたガラスシート304によって提供された被覆が維持されて、最終ガラス物品103に、コア層120の露出部分126がないようにする。
【0111】
ここで、
図8を参照すると、積層ガラス管102の軸面148を、ガラスシート304を用いて再被覆した後の積層ガラス管102の加工端部150の写真を示している。
図8に示した積層ガラス管102について、ガラスシート304は、内側クラッド層124の内側層ガラス組成物、および、外側クラッド層122の外側層ガラス組成物と同じ再被覆ガラス組成物を含むものだった。
図8に示すように、外側クラッド層122、内側クラッド層124、および、ガラスシート304は、協働して、コア層120を完全に包囲し囲い込む連続したクラッド層を生成しうる。外側クラッド層122、内側クラッド層124、および、ガラスシート304は、協働して、コア層120を包囲し囲い込む連続した圧縮層を形成しうる。ここで、
図9を参照すると、他の積層ガラス管102の軸面148を、ガラスシート304を用いて再被覆した後の、積層ガラス管102の加工端部150の写真を示している。
図9に示した積層ガラス管102について、ガラスシート304は、内側クラッド層124の内側層ガラス組成物、外側クラッド層122の外側層ガラス組成物、および、コア層120のコアガラス組成物とは異なる再被覆ガラス組成物を含むものだった。ガラス組成物は異なるが、
図9に示すように、外側クラッド層122、内側クラッド層124、および、ガラスシート304は、協働して、コア層120を完全に包囲し囲い込む連続したクラッド層を生成しうる。
【0112】
再被覆ステーションは、ガラスシートまたはガラス片を積層ガラス管102の軸面148に連結する代わりに、ガラスを、外側クラッド層122、および/または、内側クラッド層124から移動させて、コア層120の露出部分126を覆うように動作可能でありうる。例えば、いくつかの実施形態において、再被覆ステーションは、外側クラッド層122、および/または、内側クラッド層124からの溶融ガラスを変形させてコア層120の露出部分126を覆うように動作可能な1つまたは複数の形成具を含みうる。その代わりに、他の実施形態において、再被覆ステーションは、ガラス片を積層ガラス管102の加工端部150から「トリミング」するトリミング具を含みうる。トリミング処理中に、積層ガラス管102の外側クラッド層122と内側クラッド層124は、ガラス片が積層ガラス管102の加工端部150から分離される積層ガラス管102の領域で、トリミング具によって、互いに接触させられる。したがって、トリミング処理において、露出部分126を有するガラス片を積層ガラス管102の加工端部150から除去し、更に、外側クラッド層122および内側クラッド層124からのガラスを変形させてコア層120を積層ガラス管の新たな加工端部102において覆うことによって、コア層120の露出部分126は除去される。
【0113】
ここで、
図10A~10Eを参照すると、トリミングステーション400の態様による再被覆ステーションを示している。
図10A~10Eのトリミングステーション400において、外側クラッド層122が内側クラッド層124と接触して、コア層120を完全に包囲し完全に囲い込む連続したクラッド層を形成するように、積層ガラス管102を変形させることによって、コア層120の露出部分126がなくなる。トリミングステーション400は、保持部130、内側トリミング具402、外側トリミング具404、更に任意で、予熱部406を含みうる。保持部130は、再被覆ステーション300について記載した通りである。保持部130は、積層ガラス管102を保持し、積層ガラス管102を、保持部軸Dを中心に回転させるように動作可能である。
【0114】
図11Aおよび11Bを参照すると、内側トリミング具402は、シャフト422に連結された器具ヘッド420を含みうる。シャフト422は、内側器具基部424に連結されうる。器具ヘッド420は、積層ガラス管102を変形させるのに適した任意の形状を有しうる。いくつかの実施形態において、器具ヘッド420は、上面426および下面427を含み、上面426および下面427は、各々、外側に向かって、内側トリミング具402の中心軸Eから延伸する。上面426と下面427は、接触部分428で収束し、器具ヘッド420の外縁部を形成しうる。例えば、いくつかの実施形態において、上面426および下面427は、円錐状で、上面426と下面427の間の軸方向の距離は、器具ヘッド420の中心軸Eから外側に向かって減少する。上面426および下面427は、それらの間の角度αを画定しうる。いくつかの実施形態において、上面426と下面427の間の角度αを変更して、トリミング処理中に器具ヘッド420が積層ガラス管102のガラスを操作変形させる程度を変化させうる。いくつかの実施形態において、上面426、および/または、下面427は、一定の傾斜を有しうる。その代わりに、他の実施形態において、上面426、および/または、下面427は、凹状または凸状の形状を有するなど湾曲して、上面426、および/または、下面427は、可変の傾きを有しうる。
【0115】
図11Bを参照すると、接触部分428は、上面426から下面427に、器具ヘッド420の周縁部に沿って延伸しうる。いくつかの実施形態において、接触部分428は、平面で、内側トリミング具402の中心軸Eに略平行か、または、内側トリミング具402の中心軸Eに対して、ゼロでない角度でありうる。その代わりに、他の実施形態において、接触部分428は、上面426と下面427の間で、(例えば、凸状に)湾曲しうる。更に他の実施形態において、上面426と下面427は、交差部で収束し、接触部分428は、上面426と下面427の交差部で尖った縁部を含みうる。器具ヘッド420は、積層ガラス管102の内面146を変形させるのに適した任意の他の形状を有しうる。
【0116】
いくつかの実施形態において、器具ヘッド420は、内側器具基部424に対して自由に回転しうる。器具ヘッド420が内側器具基部424に対して自由に回転することで、器具ヘッド420は、接触部分428の積層ガラス管102の内面146との接触を通して、積層ガラス管102と共に回転しうる。いくつかの実施形態において、内側トリミング具402は、器具ヘッド420が自由に回転自在なように動作可能なベアリングまたは他の機械的なシステムを含みうる。その代わりに、いくつかの実施形態において、器具ヘッド420の回転を、積層ガラス管102の回転速度と同じか、または、異なる回転速度で駆動させうる。
【0117】
再び、
図10A~10Eを参照すると、いくつかの実施形態において、内側トリミング具402は、積層ガラス管102の加工端部150に対して、垂直方向に(つまり、
図10Aの座標軸の+/-Z方向に)平行移動自在でありうる。内側トリミング具402の垂直方向の平行移動は、内側トリミング具402の器具ヘッド420が、積層ガラス管102の内容積部に挿入されて、接触部分428が積層ガラス管102の内面146に接触するのを可能にしうる。保持部130が積層ガラス管102をトリミングステーション400内に移動させると、内側トリミング具402は、垂直方向上方に向かって(つまり、+Z方向に)、器具ヘッド420が積層ガラス管102の内容積部に位置するまで平行移動されうる。器具ヘッド420を積層ガラス管102内に配置した時、積層ガラス管102の軸面148から内側トリミング具402の接触部分428までの垂直距離(つまり、+/-Z方向で測定した距離)は、接触部分428に近接した外側クラッド層122および内側クラッド層124がコア層120の上に変形されてコア層120を囲い込む連続したクラッド層を形成するのに十分なガラスを含む積層ガラス管102の軸面148からの距離でありうる。いくつかの実施形態において、器具ヘッド420が積層ガラス管102に挿入された時の積層ガラス管102の軸面148から器具ヘッド420の接触部分428への垂直距離は、1mmから7mm、1mmから5mm、2mmから7mm、2mmから5mm、3mmから10mm、3mmから7mm、または、3mmから5mmなど、1ミリメートル(mm)から10mmでありうる。
【0118】
トリミング完了後に、内側トリミング具402は、垂直に下方に向かって(つまり、-Z方向に)平行移動されて、保持部130が、積層ガラス管102を、トリミングステーション400から移動させうる。いくつかの実施形態において、内側トリミング具402は、内側トリミング具402を垂直方向に平行移動させるように動作可能な垂直作動部410を含みうる。垂直作動部410は、内側トリミング具402を、積層ガラス管102と係合させたり、外したりするように平行移動させることが可能な任意の種類の作動部でありうる。垂直作動部410は、限定するものではないが、1つ以上の空圧作動部、電気作動部、水圧作動部、磁気作動部、サーボモータ、ギアシステム、または、他の作動部を含みうる。いくつかの実施形態において、垂直作動部410は、内側トリミング具402に連結された位置決めステージ、および、内側トリミング具402を位置決めステージに沿って移動させるように動作可能なサーボモータを含みうる。その代わりに、いくつかの実施形態において、内側トリミング具402は、垂直方向に(つまり、+/-Z方向に)固定され、保持部130は、積層ガラス管102を垂直に下方に向かって(つまり、-Z方向に)平行移動させて、積層ガラス管102を内側トリミング具402の上方に配置するように動作可能でありうる。更に他の実施形態において、保持部130および内側トリミング具402の両方が、垂直方向に(つまり、+/-Z方向に)平行移動自在でありうる。
【0119】
いくつかの実施形態において、内側トリミング具402は、固定した水平位置に(つまり、
図10Aの座標軸の+/-Z軸に垂直なX/Y平面の固定位置に)維持されうる。その代わりに、内側トリミング具402は、積層ガラス管102に対して、水平方向に平行移動自在でありうる。内側トリミング具402は、内側トリミング具402の垂直方向の平行移動について記載した任意の作動部などの他の作動部(不図示)によって、保持部130および積層ガラス管102に対して、水平方向に平行移動されうる。
【0120】
ここで、
図12A~12Cを参照すると、外側トリミング具404は、積層ガラス管102を変形させるのに適した任意の形状を有しうる。例えば、いくつかの実施形態において、外側トリミング具404は、接触リング430、上側フランジ432、および、下側フランジ433を含みうる。接触リング430は、上側フランジ432と下側フランジ433の間に配置されうる。接触リング430は上面434および下面435を含み、上面434および下面435は、各々、上側フランジ432および下側フランジ433から外側に向かって延伸しうる。上面434と下面435は、外側トリミング具404の外縁部を形成する接触面436で収束しうる。例えば、いくつかの実施形態において、上面434および下面435は、略円錐台状で、上面434と下面435の間の距離が、放射状に外側に向かって、外側トリミング具404の中心軸Fから離れる方向に減少しうる。
図12Cを参照すると、上面434および下面435は、それらの間の角度βを画定しうる。いくつかの実施形態において、上面434と下面435の間の角度βを変更して、トリミング処理中に外側トリミング具404が積層ガラス管102のガラスを操作変形させる程度を変化させうる。いくつかの実施形態において、上面434、および/または、下面435は、一定の傾斜を有しうる。その代わりに、他の実施形態において、上面433、および/または、下面435は、凹状または凸状の形状を有するなど湾曲して、上面434、および/または、下面435は、可変の傾きを有しうる。
【0121】
図12Bを参照すると、接触面436は、上面434の末端部から下面435の末端部へ、接触リング430の周縁部に沿って延伸しうる。いくつかの実施形態において、接触面436は、平面で、それは、外側トリミング具404の中心軸Fに略平行か、または、外側トリミング具404の中心軸Fに対してゼロ以外の角度でありうる。その代わりに、他の実施形態において、接触面436は、上面434と下面435の間で(例えば、凸状に)湾曲しうる。更に他の実施形態において、上面434と下面435は、交差部で収束し、接触面436は、上面434と下面435の交差部で尖った縁部を含みうる。上面434、下面435、および、接触面436は協働して、積層ガラス管102を変形されるのに適した任意の形状を形成しうる。
【0122】
再び、
図10Aから10Eを参照すると、いくつかの実施形態において、外側トリミング具404は、外側器具基部438に連結されうる。外側トリミング具404は、外側器具基部438に対して、回転自在でありうる。いくつかの実施形態において、外側トリミング具404は、基部に対して自由に回転自在で、外側トリミング具404の接触面436が、積層ガラス管102の外面140と接触することで、外側トリミング具404を積層ガラス管102と共に積層ガラス管102の回転速度で回転させうる。いくつかの実施形態において、外側トリミング具404または外側器具基部438は、外側トリミング具404が自由に回転自在なように動作可能なベアリングまたは他の機械的なシステムを含みうる。その代わりに、他の実施形態において、外側トリミング具404を、外側器具基部438に対して回転するように駆動しうる。
【0123】
図10Bを参照すると、外側トリミング具404、および/または、外側器具基部438は、外側器具作動部408に、動作可能に連結されうる。外側器具作動部408は、外側トリミング具404、および/または、外側器具基部438を、
図10A~10Eの座標軸のX‐Y平面で静止しうる内側トリミング具402に対して水平方向に(つまり、
図10A~10Eの座標軸のX-Y平面で)平行移動させるように動作可能でありうる。例えば、外側器具作動部408は、外側トリミング具404を、放射状に内側トリミング具402に向かって、更に、そこから離れるように平行移動させて、積層ガラス管102の外面140と係合させたり、外したりするように動作可能でありうる。外側器具作動部408は、外側トリミング具404を平行移動させて、積層ガラス管102の外面140と係合させたり、外したりすることが可能な任意の種類の作動部でありうる。外側器具作動部408は、限定するものではないが、1つ以上の空圧作動部、電気作動部、水圧作動部、磁気作動部、サーボモータ、ギアシステム、または、他の作動部を含みうる。いくつかの実施形態において、外側器具作動部408は、外側トリミング具404、および/または、外側器具基部438に連結された位置決めステージ、並びに、外側トリミング具404、および/または、外側器具基部438を、位置決めステージに沿って移動させるように動作可能なサーボモータを含みうる。
【0124】
図10Bを参照すると、いくつかの実施形態において、外側トリミング具404は、垂直方向について配置されて(つまり、
図10A~10Eの座標軸の+/-Z方向について配置されて)、外側トリミング具404の接触面436が、内側トリミング具402の接触部分428と垂直方向に位置合わせされるようにしうる。これらの実施形態において、外側トリミング具404と内側トリミング具402とが、徐々に近くに移動される時に、外側トリミング具404の接触面436と内側トリミング具402の接触部分428が収束し、それにより、積層ガラス管102を、外側トリミング具404の接触面436と内側トリミング具402の接触部分428との間で挟むようにしうる。積層ガラス管102を、外側トリミング具404の接触面436と内側トリミング具402の接触部分428との間に挟むことで、外側クラッド層122を、内側クラッド層124と接触させて、それにより、コア層120を、積層ガラス管の新たな加工端部102において覆いうる。
【0125】
その代わりに、他の実施形態において、外側トリミング具404は、垂直方向について配置されて、外側トリミング具404の接触面436が、内側トリミング具402の接触部分428から垂直方向にずれる(つまり、
図10A~10Eの座標軸の+/-Z方向にずれる)ようにしうる。いくつかの実施形態において、外側トリミング具404は、垂直方向について配置されて、外側トリミング具404の接触面436が、垂直方向に、内側トリミング具402の接触部分428より高くなる(つまり、外側トリミング具404の接触面436が、内側トリミング具402の接触部分428のZ軸位置より大きいZ軸位置を有する)ようにしうる。その代わりに、他の実施形態において、外側トリミング具404は、垂直方向について配置されて、外側トリミング具404の接触面436が、垂直方向に、内側トリミング具402の接触部分428より低くなる(つまり、外側トリミング具404の接触面436が、内側トリミング具402の接触部分428のZ軸位置より小さいZ軸位置を有する)ようにしうる。外側トリミング具404の接触面436が、内側トリミング具402の接触部分428から垂直方向にずれている時に、外側トリミング具404を内側トリミング具402に向かって平行移動させることで、シザリング効果を生じ、外側クラッド層122を内側クラッド層124と接触させ、それにより、コア層120を積層ガラス管の新たな加工端部102において覆いうる。
【0126】
図11A、11B、12A、12B、および、12Cを参照して記載した内側トリミング具402および外側トリミング具404は、積層ガラス管102の加工端部150にトリミングを行うのに用いうるトリミング具の1つのアプローチを表すものである。しかしながら、他の種類および形状のトリミング具も、トリミングステーション400で用いて、同様の効果を得うる。例えば、積層ガラス管102のガラスを変形するように動作可能な少なくとも2つの収束接触面を有する任意の組合せ、または、形状の器具が、トリミングステーション400での使用に適しうる。
【0127】
図10Aを参照すると、いくつかの実施形態において、トリミングステーション400は、積層ガラス管102の外面140をトリミング領域412で局所的に加熱するように動作可能な予熱部406を含みうる。予熱部406は、垂直方向について(つまり、
図10Aの座標軸の+/-Z方向について)配置されて、積層ガラス管102のトリミング領域412を局所的に加熱しうる。予熱部406は、トリミング領域412のガラスの粘度が100キロポアズ(kP)以下に低下するのに十分な熱を、積層ガラス管102のトリミング領域412に送るように動作可能でありうる。他の実施形態において、予熱部406は、トリミング領域412のガラスの粘度を、75kP以下、50kP以下、25kP以下、または、10kP以下に低下させるように動作可能でありうる。予熱部406は、トリミング領域412を局所的に加熱して、トリミング領域412から軸方向に測定した予熱部406の加熱効果が、トリミング領域412から5mm未満、4mm未満、3mm未満、または、2mm未満内など、トリミング領域412から数ミリメートル内に局所化されるように動作可能でありうる。予熱部406は、ガラスの粘度を低下させるように加熱することが可能なガストーチ(つまり、火炎バーナー)、レーザ、放射加熱部、または、他の熱源を含みうる。いくつかの実施形態において、予熱部406は、ガストーチでありうる。その代わりに、他の実施形態において、予熱部406は、レーザであり、ガストーチと比べて、積層ガラス管102を、対象を絞って狭い範囲で加熱するように動作自在でありうる。
【0128】
いくつかの実施形態において、トリミングステーション400は、任意で、仕上げ加熱部を含み、外側クラッド層122および内側クラッド層124が互いに融着されて、コア層120の露出部分126を完全に覆うようにしうる。
【0129】
更に
図10Aを参照すると、タイトリミングステーション400の動作において、積層ガラス管102は、積層ガラス管102の加工端部150に近接して位置する積層ガラス管102のトリミング領域412において、局所的に加熱されうる。トリミング領域412は、積層ガラス管102の軸面148から垂直距離H(つまり、
図10Aの座標軸の+/-Z方向の距離)で、垂直距離Hは、外側クラッド層122および/または内側クラッド層124がコア層120の上に変形してコア層120を囲い込む連続したクラッド層を形成するのに十分なガラスを含む距離でありうる。いくつかの実施形態において、積層ガラス管102の軸面148からトリミング領域412までの垂直距離Hは、1mmから7mm、1mmから5mm、2mmから7mm、2mmから5mm、3mmから10mm、3mmから7mm、または、3mmから5mmなど、1ミリメートル(mm)から10mmでありうる。
【0130】
積層ガラス管102は、トリミング領域412において、積層ガラス管102のトリミング領域412でのガラスの粘度を低下させて、コア層120、外側クラッド層122、および/または、内側クラッド層124のガラスが、内側トリミング具402および外側トリミング具404によって変形されるのに十分な温度まで予熱されうる。いくつかの実施形態において、積層ガラス管102のトリミング領域412は、トリミングステーション400の直前の処理ステーションで、予熱されうる。例えば、いくつかの実施形態において、トリミングステーション400の直前には、積層ガラス管102のトリミング領域412を加熱するように動作可能な加熱ステーションがありうる。その代わりに、他の実施形態において、積層ガラス管102のトリミング領域412は、予熱部406をトリミング領域412に近接配置させ、積層ガラス管102を回転するなどによって、トリミングステーション400で予熱されうる。ガラスは、トリミング領域412において、75kP以下、50kP以下、25kP以下、または、10kP以下など、100kP以下に粘度を低下させるのに十分な温度まで予熱されうる。例えば、いくつかの実施形態において、ガラスは、トリミング領域412で、ガラスの粘度が、1kPから100kP、1kPから75kP、1kPから50kP、1kPから25kP、1kPから10kP、5kPから100kP、5kPから75kP、5kPから50kP、5kPから25kP、5kPから10kP、または、10kPから100kP以上となるように予熱されうる。
【0131】
ここで、
図10Bを参照すると、内側トリミング具402および外側トリミング具404は、トリミング領域412に対して配置されうる。内側トリミング具402は、垂直方向に(つまり、
図4の座標軸の+Z方向に)、内側トリミング具402の器具ヘッド420が積層ガラス管102の内容積部の内部に配置されて器具ヘッド420の接触部分428が積層ガラス管102の内面146に近接する位置へ平行移動されうる。器具ヘッド420の接触部分428は、トリミング領域412と位置合わせされうる。外側トリミング具404は、内側トリミング具402の器具ヘッド420に対して垂直方向について配置されて、接触面436が、接触部分428と位置合わせされるか、または、接触部分428から垂直方向にずれるようにしうる。
【0132】
ここで、
図10Cおよび10Dを参照すると、外側トリミング具404と内側トリミング具402とは、徐々に密着しうる。内側トリミング具402、外側トリミング具404、または、それらの両方が、放射状に平行移動して、内側トリミング具402と外側トリミング具404とを密着させうる。例えば、いくつかの実施形態において、内側トリミング具402は、固定した水平位置(つまり、
図10C~10Dの座標軸のX‐Y平面の固定した位置)に維持され、外側トリミング具404は、内側トリミング具402に向かって徐々に平行移動されうる。その代わりに、他の実施形態において、内側トリミング具402および外側トリミング具404の両方が、水平方向に平行移動自在で、内側トリミング具402および外側トリミング具404が、各々、他方に向かって徐々に平行移動されて、内側トリミング具402と外側トリミング具404とが密着しうる。本明細書で用いるように、「密着」という用語は、内側トリミング具402と外側トリミング具404が互いに接触するか、または、ガラス片414(
図10E)を積層ガラス管102からトリミング領域412で分離させるのに十分近い状態である内側トリミング具402と外側トリミング具404の相対的な位置を称する。
【0133】
内側トリミング具402と外側トリミング具404が徐々に接触させられる間に、積層ガラス管102は、保持部130によって正しい位置で回転される。いくつかの実施形態において、内側トリミング具402および外側トリミング具404が、回転する積層ガラス管102と接触することで、内側トリミング具402および外側トリミング具404を、積層ガラス管102の回転と共に自由に回転させうる。その代わりに、他の実施形態において、内側トリミング具402、外側トリミング具404、または、それらの両方を、駆動システムによって、機械的に回転させうる。いくつかの実施形態において、内側トリミング具402、外側トリミング具404、または、それらの両方は、保持部130によって回転させられた積層ガラス管102の回転速度と等しい回転速度で回転するように駆動されうる。
【0134】
内側トリミング具402と外側トリミング具404とを密接させる速度は、加工部の停留時間にガラス片414を積層ガラス管102の加工端部150から分離させるのに十分速い速度でありうる。いくつかの実施形態において、内側トリミング具402と外側トリミング具404とを密着させる速度は、積層ガラス管102に加わる力を弱めて、積層ガラス管102の破損を防ぐのに十分遅い速度でありうる。内側トリミング具402と外側トリミング具404とを密着させる速度は、結果的に、ガラス片414を積層ガラス管102から分離させるのに要するトリミング時間となる。このトリミング時間は、内側トリミング具402、外側トリミング具404、または、それらの両方を平行移動させ始める時から、ガラス片414が積層ガラス管102から完全に分離されるまでの時間を測定する。いくつかの実施形態において、トリミング時間は、10秒以下、5秒以下、3秒以下、または、1秒以下でありうる。いくつかの実施形態において、トリミング時間は、0.1秒から10.0秒、0.1秒から5.0秒、0.1秒から3.0秒、0.1秒から1.0秒、0.5秒から10.0秒、0.5秒から5.0秒、0.5秒から3.0秒、0.5秒から1.0秒、または、0.2秒から1.0秒でありうる。いくつかの実施形態において、トリミング時間は、管全体の厚さ、加工部のセットアップ、ガラスの種類、若しくは、ガラス管102または加工部100の他の特性に応じうる。更に、いくつかの実施形態において、内側トリミング具402、外側トリミング具404、または、それらの両方は、積層ガラス管102に加えられるトリミング力を、トリミング力の最大値に制限するように動作する力制限システム(不図示)に動作可能に連結されうる。トリミング力が、トリミング力の最大値を超えると、積層ガラス管102、または、トリミングステーション400の1つ以上の構成要素を破損させうる。
【0135】
いくつかの実施形態において、潤滑油などの潤滑剤を、例えば、内側トリミング具402および外側トリミング具404上に塗布して、内側トリミング具402と積層ガラス管102の内面146との間の摩擦、および、外側トリミング具404と積層ガラス管102の外面140との間の摩擦を削減しうる。そのような油は、内側トリミング具402および外側トリミング具404が高温ガラスにトリミング領域412で接触することによる欠陥の生成も削減させうる。いくつかの実施形態において、内側トリミング具402、外側トリミング具404、または、それらの両方は、任意で、600℃を超えない温度、100℃から600℃、200℃から600℃、または、300℃から600℃などの温度に予熱されうる。器具の温度が約600℃より高いと、積層ガラス管102のガラスは、内側トリミング具402、および/または、外側トリミング具404に粘着または付着しうる。
【0136】
図10Cおよび10Dを参照すると、トリミング工程中に、積層ガラス管102のガラスは、内側トリミング具402と外側トリミング具404が徐々に収束することによって、トリミング領域412で局所的に薄くされる。特に、積層ガラス管102をトリミング領域412で局所的に薄くすることは、内側トリミング具402の接触部分428が積層ガラス管102の内面146と接触すること、および、外側トリミング具404の接触面436が積層ガラス管102の外面140と接触することにより生じうる。積層ガラス管102をトリミング領域412で薄くすることは、主にコア層120で実現されて、
図10Dに概略的に示したように、内側トリミング具402と外側トリミング具404が徐々に収束する間のある時点で、外側クラッド層122と内側クラッド層124が接触しうる。
【0137】
ここで、
図13を参照すると、コア層120、外側クラッド層122、および、内側クラッド層124の各々の相対的層厚さを、トリミング処理中の積層ガラス管102の相対的な全局所厚さの関数として、グラフで示している。
図13に示すように、積層ガラス管102の全局所厚さの関数としてのコア層の厚さ1302の傾きは、全局所厚さの関数としての内側クラッド層の厚さ1304の傾き、および、全局所厚さの関数としての外側クラッド層の厚さ1306の傾きより、概して大きい。したがって、
図13は、全局所厚さが減少すると、内側クラッド層の厚さ1304、および、外側クラッド層の厚さ1306と比べて、コア層の厚さ1302は急速に減少することを示している。
【0138】
理論に縛られるものではないが、全局所厚さの変化当りのコア層120の層厚さの変化が、外側クラッド層122および内側クラッド層124と比べて異なるのは、コア層120の粘度が、外側クラッド層122および内側クラッド層124と比べて異なることによると考えられる。外側クラッド層122および内側クラッド層124の粘度は、各々、積層ガラス管102より低い温度に維持されうる外側トリミング具404および内側トリミング具402の接触を通して低下しうると考えられる。外側トリミング具404および内側トリミング具402の温度が、積層ガラス管102と比べて低いことで、各々、外側クラッド層122および内側クラッド層124に対して冷却効果を生じ、それにより、外側クラッド層122および内側クラッド層124の温度を低下させ、外側クラッド層122および内側クラッド層124の粘度を上昇させうる。コア層120と、外側クラッド層122および内側クラッド層124との粘度の差は、内側トリミング具402および外側トリミング具404の温度を変化させるか、または、コア層120、外側クラッド層122、および、内側クラッド層124のガラス組成物を変化させることによって操作しうる。例えば、外側クラッド層122および内側クラッド層124のガラス組成物を、選択したコア層120のガラス組成物より、所定の温度で高い粘度を有するように選択しうる。
【0139】
図10Eを参照すると、内側トリミング具402と外側トリミング具404が、徐々に収束し続けて密着すると、内側トリミング具402と外側トリミング具404の間の積層ガラス管102の厚さは、ガラス片414が積層ガラス管102の加工端部150で積層ガラス管102から自然に分離されうる積層ガラス管102の最小閾値厚さに達しうる。このようなガラス片414の積層ガラス管102からの分離は、更なる機械的補助を必要とせずに起こりうる。積層ガラス管102をトリミング領域412で内側トリミング具402および外側トリミング具404を用いて薄くすることを通して、外側クラッド層122と内側クラッド層124を接触させることで、積層ガラス管102の新たな加工端部152で、コア層120を覆い、完全に囲い込む連続したクラッド層を生じうる。積層ガラス管102の新たな加工端部152は、外側クラッド層122および内側クラッド層124の組合せによって完全に覆われて囲い込まれたコア層120を示しうる。
【0140】
いくつかの例において、最小閾値厚さは、コア層120が、外側クラッド層122および内側クラッド層124で完全に覆われて囲い込まれる前に生じうるもので、本明細書において、その状態を、本明細書で、「脆弱分離」と称しうる。脆弱分離は、積層ガラス管102の新たな加工端部152で、コア層120の他の露出部分126を形成しうる。器具の予熱処理を増加させること(つまり、器具温度を上昇させること)、器具を構成する材料の熱浸透率を低下させること、積層ガラス管102と、内側トリミング具402、および/または、外側トリミング具404との間の接触面積を削減すること、若しくは、トリミング工程を加速することによって、脆弱分離を避けたり、遅らせたりしうる。積層ガラス管102と、内側トリミング具402、および/または、外側トリミング具404との間の接触面積の削減は、内側トリミング具402の接触部分428、または、外側トリミング具404の接触面436の幅を削減すること(つまり、より先鋭な器具を用いること)によって実現しうる。トリミング工程の加速は、内側トリミング具402と外側トリミング具404とを徐々に平行移動して密着させる速度を高めること、または、内側トリミング具402と外側トリミング具404とを密着させるのに要するトリミング時間を短縮することを称しうる。
【0141】
いくつかの実施形態において、脆弱分離は、トリミング工程を、2つの連続した工程で行うことによって削減または排除しうる。例えば、トリミング処理は、積層ガラス管102のトリミング領域412を予熱する工程、内側トリミング具402と外側トリミング具404を部分的に密着させることによって、積層ガラス管102を部分的にトリミングする工程、積層ガラス管102のトリミング領域412を再加熱する工程、および、内側トリミング具402および外側トリミング具404を残りの距離を平行移動させて、互いに密着されることによって、トリミングを仕上げる工程を含みうる。
【0142】
トリミングステーション400でのトリミング後に、積層ガラス管102に、1つ以上の加熱工程を含む次の加工動作、および、1つ以上の変形動作が行われ、最終形状および寸法のガラス物品103を製造しうる。トリミングステーション400の下流側での積層ガラス管102の処理中に、トリミングステーション400でのトリミング処理中に積層ガラス管102のコア層120の上に形成されたクラッド層は、維持されて、最終ガラス物品103に、コア層120の露出部分126がないようにしうる。
【0143】
再被覆ステーション300、および/または、トリミングステーション400を、ガラス管を複数のガラス物品103に加工する加工部で提供しうる。ここで、
図14を参照すると、ガラス物品103を積層ガラス管102から製造する加工部100を概略的に示している。加工部100を用いて、積層ガラス管102を、限定するものではないが、バイアル、注射器、カートリッジ、アンプル、または、他のガラス物品などの複数のガラス物品に加工しうる。加工部100は、複数の処理ステーション106を有する基部104、基部104の上方に位置して、基部104に対して中心軸Aを中心に回転自在のメインタレット108、および、メインタレット108の上方に配置されて、積層ガラス管102をメインタレット108に供給するガラス管ロードタレット110を含みうる。加工部100は、基部104の上の複数の第2の処理ステーション112、および、基部104に対して回転自在の第2のタレット114を含みうる。
【0144】
図14に概略的に示したように、加工部100の基部104は静止し、処理ステーション106は、基部104の上側部分105に連結されうる。複数の処理ステーション106は、互いに離間されて、主経路116に配列される。1つ以上の実施形態において、主経路116は円形で、メインタレット108が、メインタレット108の中心軸Aを中心とした回転によって、積層ガラス管102を複数の処理ステーション106を通ってインデックス送りしうる。その代わりに、他の実施形態において、主経路116は、線形でありうる。本明細書では、円形に配置された処理ステーション106について記載したが、本明細書に開示の主題を、他の配列の処理ステーション106を有する加工部にも同様に適用しうることが分かる。
【0145】
積層ガラス管102から製作する物品の種類、および/または、形状は、基部104に連結される処理ステーション106の数に影響しうる。メインタレット108の処理ステーション106の数は、14から32でありうる。本明細書において、加工部100および加工処理を、加工部100が16の処理ステーション106を主経路116に有する場合について記載したが、加工部100は、16より多いか、または少ない数の処理ステーション106を主経路116に有しうることが分かる。例であって、限定するものではないが、処理ステーション106は、1つ以上の加熱、形成、研磨、冷却、分離、穿孔、再被覆、トリミング、測定、供給、または、放出ステーション、若しくは、ガラス物品を積層ガラス管102から製造する他の処理ステーションを含みうる。積層ガラス管102から製作する物品の種類、および/または、形状は、処理ステーション106の種類、および/または、加工部100の処理ステーション106の順序にも影響しうる。
【0146】
メインタレット108は、基部104の上方に配置され、基部104に回転自在に連結されて、メインタレット108が、中心軸Aを中心に、基部104に対して回転自在でありうる。駆動モータ(不図示)を用いて、メインタレット108を基部104に対して回転させうる。メインタレット108は、各積層ガラス管102をメインタレット108に取り外し自在に固定するように構成された複数の保持部130を含む。保持部130は、クランプ、チャック、または、他の保持装置、若しくは、保持装置の組合せでありうる。保持部130は、各積層ガラス管102を、メインタレット108の中心軸Aに略平行で、基部104の上側部分105に略垂直となるように向けうる。本明細書では、加工部100を、加工部100が垂直方向に向いた場合について記載しているが、加工部100は、水平方向に、または、斜めに向きうると理解すべきである。各保持部130は、メインタレット108の底部分109から、基部104に向かう方向に(つまり、
図14の座標軸について‐Z方向に)延伸する。各保持部130は、メインタレット108が中心軸Aを中心にインデックス送りされる時に、積層ガラス管102を、基部104の主経路116の連続した各処理ステーション106に、または、近接して配置するように向ける。積層ガラス管102が垂直な向きであることで、積層ガラス管102の下方突出部分が主経路116の処理ステーション106を通って徐々に循環しうる。各保持部130は、メインタレット108の中央軸Aに略平行でありうる保持部軸Dを中心に、メインタレット108に対して個々に回転自在でありうる。各保持部130は、各保持部130をメインタレット108に対して回転させるモータ(不図示)、連続駆動ベルト、または、他の駆動機構に動作可能に連結されうる。保持部130が回転することで、積層ガラス管102が、静止バーナー、形成具、トリミング具、ガラスシート保持部、加熱要素、冷却ノズル、または、処理ステーション106の他の特徴物に対して回転しうる。
【0147】
図14および15を参照すると、加工部100は、離間して第2経路118(
図15)に配列された複数の第2の処理ステーション112、および、積層ガラス管102から分離されたガラス物品103を複数の第2の処理ステーション112を通ってインデックス送りする第2のタレット114(
図14)を含みうる。第2のタレット114は、第2の軸Bを中心に基部104に対して回転自在でありうる。第2の軸Bは、メインタレット108の中心軸Aに略平行でありうる。第2のタレット114は、ガラス物品103を保持し、ガラス物品103を連続した各第2の処理ステーション112と係合するように配置する複数の保持部130も含む。第2のタレット114は、物品103を、メインタレット108の分離ステーション206(
図15)から受け付け、ガラス物品103を、第2のタレット114の回転を通して、複数の第2の処理ステーション112を通してインデックス送りし、仕上げた物品を加工部100から放出しうる。
【0148】
ガラス管ロードタレット110は、メインタレット108の上方に配置されうる。実施形態において、ガラス管ロードタレット110は、メインタレット108の中心軸Aからずれうる。ガラス管ロードタレット110は、メインタレット108の中心軸Aに略平行な軸Cを中心に回転自在でありうる。ガラス管ロードタレット110は、メインタレット108に対して静止位置に独立に支持され、ガラス管ロードタレット110の回転は、メインタレット108の回転と独立でありうる。
図14および15を参照すると、いくつかの実施形態において、ガラス管ロードタレット110は、円形の経路134に配列されて、積層ガラス管102を保持するように構成された複数のロードチャネル132を含みうる。ガラス管ロードタレット110は、ロードチャネル132の1つが、加工部100の主経路116の処理ステーション106、および、主経路116の処理ステーション106を通ってインデックス送りされる、メインタレット108上の対応する保持部130と、垂直方向に位置合わせされるように(つまり、メインタレット108の中心軸Aに平行な方向に、および/または、
図14のZ軸に平行に位置合わせされるように)配置されうる。1つ以上の実施形態において、ガラス管ロードタレット110と位置合わせされた処理ステーション106は、管ロードステーション214(
図15)でありうる。加工部100が、積層ガラス管102の全て、または、少なくとも一部を、特定の保持部位置136で、1つ以上のガラス物品103に加工すると、ガラス管ロードタレット110は、新たな積層ガラス管102を、メインタレット108の最上部を通して、保持部位置136がインデックス送りされて主経路116の管ロードステーション214と位置合わせされた時の保持部位置136で保持部130に送出しうる。
【0149】
図15を参照すると、上記のように、加工部100の複数の処理ステーション106は、1つ以上の加熱ステーション202、形成ステーション204、分離ステーション206、研磨ステーション208、冷却ステーション210、穿孔ステーション212、管ロードステーション214、放出ステーション216、測定ステーション218、管落下ステーション220、再被覆ステーション300、トリミングステーション400(
図10A)、または、他のステーション、並びに/若しくは、これらのステーションの組合せを含みうる。
図15は、16の処理ステーション106を有する主経路116、および、8つの第2の処理ステーション112を有する第2の経路118を有する加工部100について、処理ステーション106の配列を概略的に示している。記載したように、主経路116の処理ステーション106は、等間隔で離間し、円形の経路に均一に分布し、第2経路118の第2の処理ステーション112も等間隔で離間し、円形の経路に均一に分布する。
図15は、複数のロードチャネル132を有するガラス管ロードタレット110も概略的に示している。
図15において、図示のために、ガラス管ロードタレット110を、主経路116から離間した位置に示している。
【0150】
図15に概略的に示した加工部の主経路116は、1つ以上の加熱ステーション202、分離ステーション206、穿孔ステーション212、再被覆ステーション300、または、トリミングステーション400(
図10A)、1つ以上の形成ステーション204、1つ以上の冷却ステーション210、測定ステーション218、管落下ステーション220、並びに、管ロードステーション214を含みうる。
図15は、主経路116を、円形に配列された上記処理ステーション106を有するものとして示しているが、主経路116は、線状、多角形状、または、他の配列など、他の形状で配置された処理ステーション106を含みうる。メインタレット108のインデックス送り方向222について、加熱ステーション202は、分離ステーション206および各形成ステーション204の前に配置されて、積層ガラス管102の対象領域を、積層ガラス管102の対象領域が可塑的に変形自在になり、ガラスの亀裂も粉砕もなく効果的に形成または分離される対象温度に予熱しうる。分離ステーション206において、形成されたガラス物品103(
図14)は、積層ガラス管102(
図14)から分離されうる。分離ステーション206も、部分的に形成されて分離されたガラス物品103が、第2の処理ステーション112の第2の経路118を通ってインデックス送りされるように第2のタレット114(
図14)に転送される処理ステーション106でありうる。穿孔ステーション212は、メインタレット108のインデックス送り方向222について分離ステーション206の下流側の主経路116に配置されうる。穿孔ステーション212において、分離ステーション206において積層ガラス管102の加工端部150の上方に形成されたメニスカス状のガラス部分は、穿孔されて、それにより、積層ガラス管102の加工端部150を再び開口させる。
【0151】
再被覆ステーション300は、分離ステーション206、および/または、穿孔ステーション212の後に(つまり、下流側に)配置されうる。本明細書で既に記載したように、再被覆ステーション300は、ガラス物品103を積層ガラス管102から熱的または機械的に分離することで生じたコア層120の露出部分126を、積層ガラス管102の軸面148で再被覆するように動作可能でありうる。
図15では、加工部100が再被覆ステーション300を含むものとして示しているが、その代わりに、加工部100が、トリミングステーション400などのトリミングステーション、または、溶融ガラスを積層ガラス管102の外側クラッド層122および内側クラッド層124から移動させて、コア層120の露出部分126を覆うように動作可能な他の処理ステーションを含みうることが分かる。いくつかの実施形態において、加工部100は、再被覆ステーション300またはトリミングステーション400と、分離ステーション206および/または穿孔ステーション212との間など、再被覆ステーション300またはトリミングステーション400の直前に配置された加熱ステーション202を含みうる。いくつかの実施形態において、加工部100は、再被覆ステーション300またはトリミングステーション400の直後に配置された研磨ステーション208を含みうる。
【0152】
メインタレット108の形成ステーション204は、インデックス送り方向222について再被覆ステーション300またはトリミングステーション400の下流側に配置されうる。形成ステーション204において、積層ガラス管102の加工端部150は、繰返し形成されて、最終ガラス物品103の望ましい特徴物に形成されうる。上記のように、1つ以上の加熱ステーション202を、各形成ステーション204の前に配置して、積層ガラス管102の対象領域を、積層ガラス管102を形成しうる温度に予熱しうる。メインタレット108の形成ステーション204は、積層ガラス管102の加工端部150を形成してガラス物品103の1つの端部を形成し、次に、ガラス物品103が積層ガラス管102から分離された後に、第2のタレット114の形成ステーション204は、ガラス物品103の他方の端部を形成しうる。1つ以上の実施形態において、加工部100を用いて、積層ガラス管102からバイアルを形成し、加工部100の形成ステーション204は、1つ以上の肩状部形成ステーション、1つ以上のフランジ形成ステーション、および、1つ以上のフランジ仕上げステーションを含み、1つ以上の加熱ステーション202が、各形成ステーション204の前、および、それらの間に配置されうる。主経路116は、更に、例えば、直径および厚さなど、積層ガラス管102の1つ以上の寸法、並びに、形成ステーション204によって形成された特徴物の1つ以上の寸法を、寸法測定システム(不図示)を用いて測定する測定ステーション218を含みうる。
【0153】
更に
図15を参照すると、1つ以上の冷却ステーション210を、メインタレット108のインデックス送り方向222について形成ステーション204の後に配置しうる。管落下ステーション220は、形成ステーション204の後に、形成ステーション204と分離ステーション206に間に配置されて、ガラス物品103の特徴物が形成された積層ガラス管102を落下させ、それにより、ガラス物品103を積層ガラス管102から分離ステーション206で分離するために、積層ガラス管102を配置しうる。主経路116は、新たな積層ガラス管102をガラス管ロードタレット110からメインタレット108(
図14)にロードする管ロードステーション214も含みうる。1つ以上の実施形態において、管ロードステーション214を、冷却ステーション210に組み込みうる。管ロードステーション214を、最終形成ステーション204と分離ステーション206の間に配置しうる。
【0154】
メインタレット108の形成ステーション204は、特徴物を、ガラス物品103の第1の端部で形成しうる。ガラス物品103を、積層ガラス管102から分離ステーション206で分離すると、ガラス物品103を、第2のタレット114の第2の処理ステーション112に転送しうる。第2の処理ステーション112は、ガラス物品103の第1の端部の反対側であるガラス物品103の第2の端部を形成する1つ以上の形成ステーション204を含みうる。例えば、第2の処理ステーション112の形成ステーション204は、1つ以上の特徴物を、ガラス物品103の底部(第2の端部)で形成しうる。
【0155】
第2の経路の第2の処理ステーションは、1つ以上の加熱ステーション202、形成ステーション204、研磨ステーション208、冷却ステーション210、放出ステーション216、または、他のステーション、若しくは、第2の処理ステーション112の組合せを含みうる。
図15では、第2経路を、円形に配列された上記第2の処理ステーション112を有するものとして示しているが、第2経路は、線状、多角形状、または、他の配列など、他の形状で配置された第2の処理ステーション112を含みうる。1つ以上の実施形態において、第2経路118の第2の処理ステーション112を用いて、例えば、バイアル、アンプル、カートリッジ、または、注射器など、ガラス物品103の1つ以上の特徴物を、メインタレット108によって形成された端部の反対側のガラス物品103の端部で形成しうる。例えば、いくつかの実施形態において、ガラス物品103は、バイアルであり、第2経路118の形成ステーション204は、バイアルの底部を形成しうる。アンプル、カートリッジ、注射器などの特徴物など、他の特徴物も企図している。第2経路118は、1つ以上の研磨ステーション208を含み、ガラス物品の表面を仕上げうる。第2経路118は、更に、複数の冷却ステーション210、および、最終ガラス物品103が加工部100から放出される放出ステーション216を含みうる。
【0156】
主経路116の処理ステーション106、および、第2経路118の第2の処理ステーション112の上記記載は、バイアルを積層ガラス管102から製造する典型的な加工部100を記載したものである。しかしながら、もっと多い数か、または、少ない数の処理ステーション106および第2の処理ステーション112を用いて、異なる形状のバイアル、または、カートリッジ、注射器、アンプルなどの他のガラス物品を製作しうることが分かる。更に、異なる形状のガラス物品を製造するために、処理ステーション106および第2の処理ステーション112を、多数の異なる順序、および/または、構成の任意の態様で配列しうることが分かる。
【0157】
再び、
図15を参照すると、動作において、メインタレット108は、保持部130に固定された積層ガラス管102を、処理ステーション106にインデックス送りする。加熱、形成、穿孔、分離、再被覆、トリミング、冷却、落下、供給などの特定の動作を、積層ガラス管102に、各処理ステーション106で行う。本明細書で用いるように、加工部100の「停留時間」とは、積層ガラス管102が、メインタレット108によって、次の処理ステーション106にインデックス送りされる前に特定の処理ステーション106で費やす時間のことを称する。加工部100を調整して、全ての処理ステーション106が停留時間内に動作を完了するようにしうる。停留時間の終わりに、メインタレット108は、積層ガラス管102を、次の処理ステーション106にインデックス送りする。本明細書で用いるように、「インデックス送り時間」とは、メインタレット108が、積層ガラス管102を、1つの処理ステーション106から次の処理ステーション106にインデックス送りするのにかかる時間のことを称し、時間の単位で測定される。本開示で用いるように、ステーション当りの合計時間は、本開示で用いるように、停留時間とインデックス送り時間の合計である。
【0158】
積層ガラス管102をガラスのバイアルに加工する加工部100の例は、AMBEG Dr.J.Dichter GmbHによって製造されたAutomatic Tube Feederを備えたVial Forming Machine Model RP16を含み、それは、16の処理ステーション106を主経路116に、更に、8つの第2の処理ステーション112を含むものである。他の例は、AMBEG Dr.J.Dichter GmbHによって製造されたVial Forming Machine Model RP32を含み、それは、32の処理ステーション106を主経路116に、更に、2つの第2経路118を含み、各第2経路118に8つの第2の処理ステーション112を含むものであり、更なる例は、Euromatic S.R.L.によって製造されたZeta 098 Vial Forming Machineを含み、それは、36の処理ステーションを有するものである。他の例は、Euromatic S.R.L.によって製造されたZeta 103 Cartridge Forming Machineを含み、それは、ガラス管をカートリッジに加工する加工部である。カートリッジ加工部は、上記バイアル加工部100と同様の特徴を有するが、バイアルではなくカートリッジ形状要素を有するガラス物品を製造するのに用いられる。
【0159】
加工部100が、ガラスのバイアルを積層ガラス管102から製造する場合について記載したが、加工部100は、形成ステーション204で用いる形成具、並びに/若しくは、主経路116の処理ステーション106、または、1つ以上の第2経路118の第2の処理ステーション112の順序または構成を変えることによって、カートリッジ、注射器、アンプル、または、他のガラス物品などの1つ以上の他の物品を製造するように構成されうると理解すべきである。
【0160】
本開示は、ガラス物品103をガラス管から製造する方法を含む。いくつかの実施形態において、ガラス物品103をガラス管から製造する方法は、ガラス管を、少なくとも1つの形成ステーション204および分離ステーション206を含む加工部100に導入する工程を含みうる。ガラス管は、コアガラス組成物を含むコア層120、および、クラッドガラス組成物を含む少なくとも1つのクラッド層を有する積層ガラス管102でありうる。例えば、いくつかの実施形態において、クラッド層は、外側ガラス組成物を含む外側クラッド層122、および、内側ガラス組成物を含む内側クラッド層124を含みうる。コア層120に引張応力が加わり、内側クラッド層124または外側クラッド層122の少なくとも1つに圧縮応力が加わりうる。ガラス物品103をガラス管から製造する方法は、ガラス物品103の少なくとも1つの特徴物を、積層ガラス管102の加工端部150で形成する工程と、ガラス物品103を積層ガラス管102の加工端部150から分離する工程も含みうる。ガラス物品103を積層ガラス管102から分離する工程は、コア層120の一部を、積層ガラス管102の加工端部150で露出させうる。方法は、更に、コア層120を少なくとも内側クラッド層124および外側クラッド層122を含むクラッド層に完全に囲い込むことによって、コア層120の露出部分126を修復する工程を含む。内側クラッド層124および外側クラッド層122は、協働して、コア層120を完全に囲い込みうる。コア層120を、内側クラッド層124および外側クラッド層122の組合せ内に完全に囲い込むことで、コア層120を、表面破損の外因から隔離しうる。いくつかの実施形態において、コア層120の露出部分126は、コア層120の露出部分126を修復する前に、積層ガラス管102の加工端部150の軸面148に配置されうる。
【0161】
図6A~6Cを参照すると、ガラス物品103をガラス管から製造する方法のいくつかの実施形態において、コア層120の露出部分126を修復する工程は、ガラスシート304を積層ガラス管102の表面(例えば、軸面148)に連結する工程を含みうる。ガラスシート304は、コア層120の露出部分126を覆うように配置されうる。内側クラッド層124、外側クラッド層122、および、そこに付着したガラスシート304は、協働して、コア層120の露出部分126を、表面破損の外因から隔離しうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304は、内側ガラス組成物または外側ガラス組成物と同じガラス組成物を含みうる。その代わりに、他の実施形態において、ガラスシート304は、内側ガラス組成物または外側ガラス組成物と異なるガラス組成物を含みうる。
【0162】
ガラス物品103をガラス管から製造する方法のいくつかの実施形態において、ガラスシート304を積層ガラス管102の表面に連結する工程は、積層ガラス管102の表面を加熱する工程と、ガラスシート304を加熱された表面と接触させる工程を含みうる。積層ガラス管102の表面は、ガラスの粘度が100キロポアズ以下になる温度まで加熱されうる。いくつかの実施形態において、ガラスシート304を積層ガラス管102の表面に連結する工程は、更に、表面およびガラスシート304を熱研磨する工程を含み、熱研磨により、ガラスシート304が積層ガラス管102の表面と一体になり、それにより、ガラスシート304を、内側クラッド層124、外側クラッド層122、または、それらの両方に接合しうる。
【0163】
ここで、
図10A~10Eを参照すると、ガラス物品103をガラス管から製造する方法のいくつかの実施形態において、コア層120の露出部分126を修復する工程は、ガラスを、内側クラッド層124、外側クラッド層122、または、それらの両方から移動させて、コア層120を完全に囲い込む工程を含みうる。ガラスを、内側クラッド層124、および/または、外側クラッド層122から移動させて、コア層120を完全に囲い込む工程は、内側クラッド層124、外側クラッド層122、または、それらの両方を、コア層120の露出部分126に近接した位置で加熱して、加熱により、内側ガラス組成物、外側ガラス組成物、または、それらの両方の粘度を低下させて、内側クラッド層124、外側クラッド層122、または、それらの両方の変形が可能なようにする工程と、内側クラッド層124、外側クラッド層122、または、それらの両方を変形させて、コア層120の露出部分126と接触させる工程を含みうる。いくつかの実施形態において、内側クラッド層124、外側クラッド層122、または、それらの両方を変形させて、コア層120の露出部分126と接触させる工程は、内側クラッド層124、外側クラッド層122、または、それらの両方を、1つ、または、複数の形成具と接触させる工程を含みうる。
【0164】
その代わりに、他の実施形態において、ガラスを、内側クラッド層124、外側クラッド層122、または、それらの両方から移動させて、コア層120を完全に囲い込む工程は、ガラス片414を、積層ガラス管102の加工端部150から分離する工程を含みうる。ガラス片414を積層ガラス管102の加工端部150から分離する工程は、積層ガラス管102のトリミング領域412を加熱する工程を含みうる。トリミング領域412は、積層ガラス管102の加工端部150から、軸方向に離間しうる。更に、ガラス片414を積層ガラス管102の加工端部150から分離する工程は、内側トリミング具402と外側トリミング具404を収束させて、積層ガラス管102のトリミング領域412で密着させる工程を更に含み、内側トリミング具402と外側トリミング具404を収束させて密着させる工程は、内側クラッド層124、外側クラッド層122、または、それらの両方を、内側クラッド層124と外側クラッド層122がトリミング領域412で接触して、ガラス片414を積層ガラス管102の加工端部150から分離するまで変形させうる。内側クラッド層124、および/または、外側クラッド層122を変形させて、トリミング領域412で接触させる工程は、コア層120を、積層ガラス管102の新たな加工端部152で完全に囲い込む。
【0165】
本明細書に開示のシステムおよび方法で製造されたガラス物品103は、引張応力が加わったコア層120、および、圧縮応力が加わった少なくとも1つのクラッド層を含む積層ガラスを含みうる。コア層120は、少なくとも1つのクラッド層内に完全に囲い込まれうる。ガラス物品103は、更に、積層ガラスに形成された少なくとも1つの特徴を含みうる。積層ガラスのコア層は、クラッド層によって、大気から完全に隔離されうる。例えば、いくつかの実施形態において、ガラス物品103は、コア層の露出部分がないものでありうる。
【0166】
少なくとも1つのクラッド層は、圧縮応力が加わった内側クラッド層124、および、圧縮応力が加わった外側クラッド層122を含みうる。内側クラッド層124および外側クラッド層122は、協働して、コア層120を囲い込みうる。いくつかの実施形態において、内側クラッド層124の内側層ガラス組成物は、米国薬局方(USP)<660>のType Iガラスの性能基準を満たすか、他の方法で、それに分類されたガラス組成物であるか、および/または、ISO720によるHGA1の耐加水分解性を有するガラスでありうる。いくつかの実施形態において、内側クラッド層124の内側層ガラス組成物は、USP<660>のType I性能基準、および/または、ISO720のHGA1性能基準を満たすホウケイ酸ガラスまたはアルミノケイ酸ガラスでありうる。
【0167】
いくつかの実施形態において、ガラス物品103の少なくとも1つのクラッド層の圧縮応力は、少なくとも150MPaでありうる。例えば、少なくとも1つのクラッド層の圧縮応力は、50MPa以上、75MPa以上、100MPa以上、または、150MPa以上でありうる。例えば、いくつかの実施形態において、ガラス物品103の少なくとも1つのクラッド層に、50MPaから700MPa、50MPaから500MPa、50MPaから400MPa、75MPaから750MPa、75MPaから500MPa、75MPaから400MPa、100MPaから700MPa、100MPaから500MPa、または、100MPaから400MPaの圧縮応力が加わりうる。いくつかの実施形態において、ガラス物品103のコア層120に、10MPaから40MPa、10MPaから30MPa、15MPaから50MPa、15MPaから40MPa、または、15MPaから30MPaなど、10MPaから50MPaの引張応力が加わりうる。
【0168】
いくつかの実施形態において、ガラス物品103は、4mm以下、2mm以下、1.5mmまたは、1mm以下など、6ミリメートル(mm)以下の全厚さを有しうる。いくつかの実施形態において、ガラス物品103の全厚さは、0.1mmから6mm、0.3mmから4mm、0.5mmから4mm、0.5mmから2mm、または、0.5mmから1.5mmでありうる。ガラス物品103の内側クラッド層124または外側クラッド層122などのクラッド層の厚さは、ガラス物品103の全厚さの10%から30%、または、15%から25%など、ガラス物品103の全厚さの5%から33%でありうる。いくつかの実施形態において、ガラス物品103のクラッド層の厚さは、50μm以上、75μm以上、100μm以上、または、150μm以上など、30マイクロメートル(μm)以上でありうる。いくつかの実施形態において、クラッド層の厚さは、50μmから0.75mm、75μmから0.5mm、100μmから0.5mm、または、150μmから0.5mmなど、30μmから1mmでありうる。ガラス物品103は、積層ガラス管102について本明細書に記載の任意の他の特性、特徴、または、特徴物を有しうる。
【0169】
いくつかの実施形態において、ガラス物品103は、ボトル、バイアル、アンプル、ジャー、注射器、カートリッジ、または、他の容器の1つ以上などの容器でありうる。例えば、いくつかの実施形態において、ガラス物品103は、製薬容器でありうる。いくつかの実施形態において、ガラス物品103は、製薬製品、ワクチン、生物工学製品、食品、または、溶液を保持するように適合された容器でありうる。
【0170】
いくつかの実施形態において、ガラス物品103は、本明細書に記載のガラス物品103、並びに、ガラス物品103に入れられた組成物または物品を含む製品に組み込まれうる。例えば、いくつかの実施形態において、製品は、内容積部を画定する積層ガラスを含むガラス容器(つまり、ガラス物品)を含み、積層ガラスは、中央張力が加わったコア層、および、圧縮応力が加わった少なくとも1つのクラッド層を含みうる。少なくとも1つのクラッド層は、コア層を完全に囲い込み、コア層を、大気、および/または、表面破損の外因から隔離しうる。製品は、ガラス容器の内容積部に配置された組成物または物品も含みうる。いくつかの実施形態において、製品は、ガラス容器の内容積部内に配置された組成物を含みうる。例えば、製品は、ガラス容器の内容積部内に配置された製薬製品、ワクチン、生物工学製品、食品、溶液、または、他の組成物を含みうる。いくつかの実施形態において、ガラス容器は、ボトル、バイアル、アンプル、注射器、または、カートリッジでありうる。いくつかの実施形態において、製品は、更に、ガラス容器の開口端部の上方に連結されたキャップ、蓋、または、他の閉鎖部などの閉鎖部を含みうる。いくつかの実施形態において、閉鎖部は、ガラス容器の内容積部を封止して、ガラス容器の内容積部を大気から隔離し、それにより、ガラス容器内に入れた組成物または物品が大気に曝されるのを防ぎうる。製品のガラス容器は、ガラス物品103または積層ガラス管102に関連して本明細書に記載の任意の他の特徴物または属性を含みうる。
【0171】
コア層120の露出部分126を積層ガラス管102の加工端部150で再被覆する加工部、システム、および、方法、並びに、それから製作されるガラス物品および製品の様々な実施形態を記載したが、これらの各実施形態および技術を、別々に、または、1つ以上の実施形態および技術と組み合わせて用いうることを企図していると理解すべきである。
【0172】
当業者には、請求した主題の精神および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に、様々な変更および変形が可能なことが明らかだろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載の様々な実施形態の変更および変形も、そのような変更および変形が添付の請求項および等価物の範囲である限りは、網羅することを意図する。
【0173】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0174】
実施形態1
ガラス物品において、
引張応力が加わったコア層、および、少なくとも1つのクラッド層を含む積層ガラスであって、前記少なくとも1つのクラッド層の少なくとも1つに圧縮応力が加わって、前記コア層は、該少なくとも1つのクラッド層内に完全に囲い込まれたものである積層ガラスと、
前記積層ガラスに形成された少なくとも1つの特徴物と
を含む物品。
【0175】
実施形態2
前記コア層は、前記少なくとも1つのクラッド層によって、大気から完全に隔離されたものである、実施形態1に記載のガラス物品。
【0176】
実施形態3
前記少なくとも1つのクラッド層は、内側クラッド層および外側クラッド層を含み、前記内側クラッド層と前記外側クラッド層は、協働して、前記コア層を囲い込むものである、実施形態1または2に記載のガラス物品。
【0177】
実施形態4
前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方に圧縮応力が加わったものである、実施形態3に記載のガラス物品。
【0178】
実施形態5
前記内側クラッド層は、米国薬局方(USP)<660>でType Iガラスと分類される内側ガラス組成物を含むものである、実施形態3または4に記載のガラス物品。
【0179】
実施形態6
前記少なくとも1つのクラッド層における前記圧縮応力は、50MPa以上である、実施形態1から5のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0180】
実施形態7
前記コア層における前記引張応力は、10MPa以上である、実施形態1から6のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0181】
実施形態8
前記少なくとも1つのクラッド層の厚さは、少なくとも約30μmである、実施形態1から7のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0182】
実施形態9
前記少なくとも1つのクラッド層の厚さは、前記積層ガラスの全厚さの15%から25%である、実施形態1から8のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0183】
実施形態10
前記コア層は、前記少なくとも1つのクラッド層のガラス組成物と異なるコアガラス組成物を含むものである、実施形態1から9のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0184】
実施形態11
製品において、
実施形態1から10のいずれか1つに記載のガラス物品と、
前記ガラス物品内に入れられた組成物または物品と
を含む製品。
【0185】
実施形態12
ガラス物品をガラス管から製造する方法において、
ガラス管を、少なくとも1つの形成ステーションおよび分離ステーションを含む加工部に導入する工程であって、前記ガラス管は、コアガラス組成物を含むコア層、外側ガラス組成物を含む外側クラッド層、および、内側ガラス組成物を含む内側クラッド層を有する積層ガラス管を含むものであり、前記コア層には引張応力が加わり、前記内側クラッド層または前記外側クラッド層の少なくとも1つには圧縮応力が加わったものである工程と、
ガラス物品の少なくとも1つの特徴物を、前記積層ガラス管の加工端部で形成する工程と、
前記ガラス物品を前記積層ガラス管の加工端部から分離して、前記コア層の一部を、該積層ガラス管の加工端部で露出させる工程と、
前記コア層の前記露出部分を、該コア層をクラッド層に完全に囲い込むことによって、修復する工程と
を含む方法。
【0186】
実施形態13
前記コア層の前記露出部分を修復する工程の前に、該コア層の該露出部分を、前記積層ガラス管の加工端部の軸面に配置するものである、実施形態12に記載の方法。
【0187】
実施形態14
前記コア層の前記露出部分を修復する工程は、ガラスシートを前記積層ガラス管の表面に連結する工程を含み、前記ガラスシートは、該コア層の該露出部分を覆うように配置されるものである、実施形態12または13に記載の方法。
【0188】
実施形態15
前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、および、前記ガラスシートは、協働して、前記コア層の前記露出部分を表面破損の外因から隔離するものである、実施形態14に記載の方法。
【0189】
実施形態16
前記ガラスシートは、ガラスリングを含むものである、実施形態14または15に記載の方法。
【0190】
実施形態17
前記ガラスシートは、75マイクロメートル以上の厚さを有するものである、実施形態14から16のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
実施形態18
前記ガラスシートは、前記内側ガラス組成物および前記外側ガラス組成物の少なくとも1つと同じガラス組成物を含むものである、実施形態14から17のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
実施形態19
前記ガラスシートを前記積層ガラス管の前記表面に連結する工程は、
前記積層ガラス管の前記表面を加熱する工程と、
前記ガラスシートを前記加熱した表面に接触させる工程と
を含むものである、実施形態14から18のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
実施形態20
前記積層ガラス管の前記表面を、該積層ガラス管の該表面での前記ガラスの粘度が100キロポアズ以下となる温度まで加熱するものである、実施形態19に記載の方法。
【0194】
実施形態21
前記ガラスシートを前記積層ガラス管の前記表面に連結する工程は、該ガラスシートおよび該表面を熱研磨して、該ガラスシートを該積層ガラス管の該表面に一体化し、それにより、該ガラスシートを、前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方に接合する工程を含むものである、実施形態19または20に記載の方法。
【0195】
実施形態22
前記コア層の前記露出部分を修復する工程は、ガラスを、前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方から移動させて、該コア層を完全に囲い込む工程を含むものである、実施形態12または13に記載の方法。
【0196】
実施形態23
前記ガラスを、前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方から移動させて、前記コア層を完全に囲い込む工程は、
前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方を、前記コア層の前記露出部分に近接して加熱して、前記内側ガラス組成物、前記外側ガラス組成物、または、それらの両方の粘度が低下して、該内側クラッド層、該外側クラッド層、または、それらの両方の変形を可能にする工程と、
前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方を変形させて、前記コア層の前記露出部分と接触させる工程と、
を含むものである、実施形態22に記載の方法。
【0197】
実施形態24
前記ガラスを、前記内側クラッド層、前記外側クラッド層、または、それらの両方から移動させて、前記コア層を完全に囲い込む工程は、ガラス片を、前記積層ガラス管の加工端部から分離する工程を含むものである、実施形態22または23に記載の方法。
【0198】
実施形態25
前記ガラス片を前記積層ガラス管の加工端部から分離する工程は、
前記積層ガラス管のトリミング領域を加熱する工程であって、前記トリミング領域は、前記積層ガラス管の加工端部から軸方向に離間したものである工程と、
内側トリミング具と外側トリミング具を収束させて、前記積層ガラス管の前記トリミング領域で密着させ、前記内側クラッド層と前記外側クラッド層が該トリミング領域で接触して、前記ガラス片を前記積層ガラス管の加工端部から分離するまで、該内側クラッド層、該外側クラッド層、または、それらの両方を変形させる工程と
を含むものである、実施形態24に記載の方法。
【0199】
実施形態26
積層ガラス管を複数のガラス物品に加工する間に積層ガラス管を無傷に維持するシステムにおいて、
少なくともコア層、内側クラッド層、および、外側クラッド層を含む積層ガラス管を固定するように動作可能な保持部であって、前記コア層は引張状態で、前記内側クラッド層および前記外側クラッド層の少なくとも1つは圧縮状態である保持部と、
ガラス物品を前記積層ガラス管の加工端部から分離して、前記コア層の一部を該積層ガラス管の加工端部で露出させるように動作可能な分離部と、
前記コア層の前記露出部分を修復し、該コア層を表面破損の外因から完全に囲い込むように動作可能な再被覆ステーションと
を含むシステム。
【0200】
実施形態27
前記再被覆ステーションは、前記積層ガラス管を、該積層ガラス管の前記加工端部またはトリミング領域で加熱するように動作可能な予熱部を含むものである、実施形態26に記載のシステム。
【0201】
実施形態28
前記再被覆ステーションは、ガラスシート保持部を含み、前記ガラスシート保持部に配置されたガラスシートを、前記積層ガラス管の表面と接触させるように動作可能である、実施形態26または27に記載のシステム。
【0202】
実施形態29
前記再被覆ステーションは、内側トリミング具および外側トリミング具を含むトリミングステーションを含み、前記トリミングステーションは、前記内側トリミング具と前記外側トリミング具とを徐々に密着させるように動作可能である、実施形態26から28のいずれか1つに記載のシステム。
【符号の説明】
【0203】
102 積層ガラス管
103 ガラス物品
120 コア層
122 外側クラッド層
124 内側クラッド層
126 露出部分
148 軸面
150 加工端部
206 分離ステーション
300 再被覆ステーション
302 ガラスシート保持部
304 ガラスシート
306、406 予熱部
308 作動部
400 トリミングステーション
402 内側トリミング具
404 外側トリミング具