IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 朝日インテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガイドワイヤ 図1
  • 特許-ガイドワイヤ 図2
  • 特許-ガイドワイヤ 図3
  • 特許-ガイドワイヤ 図4
  • 特許-ガイドワイヤ 図5
  • 特許-ガイドワイヤ 図6
  • 特許-ガイドワイヤ 図7
  • 特許-ガイドワイヤ 図8
  • 特許-ガイドワイヤ 図9
  • 特許-ガイドワイヤ 図10
  • 特許-ガイドワイヤ 図11
  • 特許-ガイドワイヤ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
A61M25/09 550
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020530803
(86)(22)【出願日】2018-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2018027066
(87)【国際公開番号】W WO2020016984
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-12-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】米澤 聡
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-161589(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136581(WO,A1)
【文献】特表2006-508739(JP,A)
【文献】特開2008-188670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
先端側に位置する第1コアシャフトと、
基端側に位置する第2コアシャフトと、
前記第1コアシャフトと前記第2コアシャフトとを中心軸を一致させて対向配置した接置部と、前記接置部に隣接する前記第1コアシャフト及び前記第2コアシャフトの各一部分と、を覆うように配置された第1コイル体と、
少なくとも前記第1コイル体を覆い、前記第1コアシャフトと前記第2コアシャフトとの両方に固定されている金属製の管と、
前記第1コアシャフトを覆う第2コイル体であって、前記管の先端から、先端側へと離間した位置に配置された第2コイル体と、
を備え、
前記ガイドワイヤは、前記第1コアシャフトが前記第2コイル体の基端よりも基端側において前記第2コイル体から露出することによって、前記第2コイル体と前記管との間において最も径方向外側に配置された部材の外径が前記管の外径よりも小さい部分が存在する、ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記管は、
軸線方向における長さが、前記第1コイル体の軸線方向における長さより長く、
前記第1コイル体から露出した前記第1コアシャフトの少なくとも一部分と、前記第1コイル体から露出した前記第2コアシャフトの少なくとも一部分とを覆っている、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記管は、前記管の内側に配置された接合剤によって、前記第1コアシャフト、前記第2コアシャフト、及び前記第1コイル体と固定されている、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記第1コアシャフトは、第1太径部と、前記第1太径部よりも径が細い第1細径部とを有し、
前記第2コアシャフトは、第2太径部と、前記第2太径部よりも径が細い第2細径部とを有し、
前記第1コイル体は、前記第1細径部の端部と前記第2細径部の端部とが対向配置された前記接置部と、前記接置部に隣接する前記第1細径部及び前記第2細径部の少なくとも各一部分とを覆い、
前記管は、前記第1コイル体と、前記第1コイル体から露出した前記第1太径部及び前記第2太径部の少なくとも各一部分とを覆っている、ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記第1コイル体は、複数の素線を多条巻きにした多条コイルであり、
前記管は、超弾性材料で形成されている、ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記第1コアシャフトは、超弾性材料で形成され、
前記第2コアシャフトは、前記第1コアシャフトよりも高い剛性を有する材料で形成されている、ガイドワイヤ。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記第1コイル体は、前記第1コアシャフト、前記第2コアシャフト、及び前記管の夫々の剛性よりも低い剛性を有する、ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管にカテーテル等を挿入する際に用いられるガイドワイヤが知られている。このようなガイドワイヤでは、曲げに対する柔軟性や復元性、手元部分におけるガイドワイヤへの操作を先端側へと伝達するトルク伝達性や押し込み性、及び、折れ、ヨレ、潰れによる変形に強い耐キンク性が求められる。なお、トルク伝達性と押し込み性を総称して「操作性」とも呼ぶ。例えば、特許文献1~5には、ガイドワイヤにおいて、先端側に配置された第1コアシャフト(第1ワイヤ、挿入部材)と、第1コアシャフトの基端側に配置され、第1コアシャフトに接合された第2コアシャフト(第2ワイヤ、導入部材)とを備えることで、柔軟性や操作性を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-16359号公報
【文献】特許第4203358号公報
【文献】国際公開第2013/136581号パンフレット
【文献】特開2008-188670号公報
【文献】特開2003-260140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のガイドワイヤでは、第1コアシャフトと第2コアシャフトとがそれぞれ切欠き部を備えているため、第1,2コアシャフトの中心軸を一致させることが困難であり、トルク伝達性(操作性)に改善の余地があった。特許文献2に記載のガイドワイヤでは、第1,2コアシャフトが溶接により接合されているため、接合部近傍で第1,2コアシャフトが折れなどの変形を起こすことがあり、耐キンク性に改善の余地があった。特許文献3~5に記載のガイドワイヤでは、第1,2コアシャフトの接合部は、環状又は管状部材(内側コイル、管状体、管状接合部材)によって覆われているものの、耐キンク性には依然として改善の余地があった。なお、このような課題は、血管系に限らず、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官等、人体内の各器官に挿入されるガイドワイヤに共通する。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、操作性及び耐キンク性に優れたガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、ガイドワイヤが提供される。このガイドワイヤは、先端側に位置する第1コアシャフトと、基端側に位置する第2コアシャフトと、前記第1コアシャフトと前記第2コアシャフトとを中心軸を一致させて対向配置した接置部と、前記接置部に隣接する前記第1コアシャフト及び前記第2コアシャフトの各一部分と、を覆うように配置された第1の管状部材と、少なくとも前記第1の管状部材を覆い、前記第1コアシャフトと前記第2コアシャフトとの両方に固定されている管形状の第2の管状部材と、を備える。
【0008】
この構成によれば、第1コアシャフトと第2コアシャフトとは中心軸を一致させて対向配置されているため、手元部分におけるガイドワイヤへの操作を先端側へと伝達することができ、トルク伝達性や押し込み性(操作性)を向上できる。また、第1及び第2コアシャフトの接置部と、接置部に隣接する第1及び第2コアシャフトの各一部分とは、第1の管状部材によって覆われているため、第1及び第2コアシャフトの剛性が相違する場合であっても、第1の管状部材によって、第1及び第2コアシャフト間の剛性ギャップを緩和することができる。さらに、第1の管状部材を覆うと共に、第1及び第2コアシャフトの両方に固定された第2の管状部材を備えているため、第1コアシャフトと、第2コアシャフトと、第1の管状部材との剛性がそれぞれ相違する場合であっても、第2の管状部材によって、これらの間の剛性ギャップを緩和することができる。このため、従来生じていた、接置部近傍における第1及び第2コアシャフトの変形(折れ、ヨレ、潰れ)を抑制することができ、耐キンク性を向上できる。この結果、本構成によれば、操作性及び耐キンク性に優れたガイドワイヤを提供することができる。
【0009】
(2)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記第2の管状部材は、軸線方向における長さが、前記第1の管状部材の軸線方向における長さより長く、前記第1の管状部材から露出した前記第1コアシャフトの少なくとも一部分と、前記第1の管状部材から露出した前記第2コアシャフトの少なくとも一部分とを覆っていてもよい。この構成によれば、第2の管状部材は、軸線方向における長さが第1の管状部材の軸線方向における長さより長く、第1の管状部材から露出した第1及び第2コアシャフトの少なくとも各一部分を覆っているため、接置部近傍における第1及び第2コアシャフトの変形に加えてさらに、第1の管状部材近傍における第1及び第2コアシャフトの変形を抑制することができ、耐キンク性をさらに向上できる。
【0010】
(3)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記第2の管状部材は、前記第2の管状部材の内側に配置された接合剤によって、前記第1コアシャフト、前記第2コアシャフト、及び前記第1の管状部材と固定されていてもよい。この構成によれば、第2の管状部材は、内側に配置された接合剤によって第1及び第2コアシャフトと第1の管状部材とに固定されているため、トルク伝達性(操作性)と、耐キンク性とをさらに向上できる。
【0011】
(4)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記第1コアシャフトは、第1太径部と、前記第1太径部よりも径が細い第1細径部とを有し、前記第2コアシャフトは、第2太径部と、前記第2太径部よりも径が細い第2細径部とを有し、前記第1の管状部材は、前記第1細径部の端部と前記第2細径部の端部とが対向配置された前記接置部と、前記接置部に隣接する前記第1細径部及び前記第2細径部の少なくとも各一部分とを覆い、前記第2の管状部材は、前記第1の管状部材と、前記第1の管状部材から露出した前記第1太径部及び前記第2太径部の少なくとも各一部分と、を覆っていてもよい。この構成によれば、第1の管状部材によって接置部と第1,2細径部の各一部分を覆い、第2の管状部材によって第1の管状部材と第1,2太径部の各一部分を覆うことで、剛性ギャップの緩和効果をより強くすることができ、耐キンク性をさらに向上できる。
【0012】
(5)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記第1の管状部材は、複数の前記素線を多条巻きにした多条コイルであり、前記第2の管状部材は、超弾性材料で形成されていてもよい。この構成によれば、内側に配置される第1の管状部材を多条コイルとし、外側に配置される第2の管状部材を超弾性材料の管形状とすることで、剛性ギャップの緩和効果をより強くすることができ、耐キンク性をさらに向上できる。
【0013】
(6)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記第1コアシャフトは、超弾性材料で形成され、前記第2コアシャフトは、前記第1コアシャフトよりも高い剛性を有する材料で形成されていてもよい。この構成によれば、第1コアシャフトを超弾性材料で形成することで、曲げに対する柔軟性や復元性を向上させることができ、第2コアシャフトを第1コアシャフトよりも高い剛性を有する材料で形成することで、トルク伝達性や押し込み性(操作性)を向上させることができる。
【0014】
(7)上記形態のガイドワイヤにおいて、前記第1の管状部材は金属または樹脂からなる管状体であって、前記第1コアシャフト、前記第2コアシャフト、及び前記第2の管状部材に対して、前記管状体は剛性が低い材料により形成されていても良い。この構成によれば、第1コアシャフトと第2コアシャフトの接置部と第2の管状部材の間の空間に接着剤又はロウ剤が充填された構造において、一体形状の管状体がガイドワイヤの長軸方向に接置部に係る力を分散させて第1コアシャフトと第2コアシャフトとに波及させる。それにより第1コアシャフトと第2コアシャフトとの接置部に係る応力を緩和することができ、耐キンク性をさらに向上できる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤに用いられる複数のコアシャフトからなるコアシャフト製品、ガイドワイヤの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のガイドワイヤの全体構成を示す部分断面図である。
図2】第1及び第2コアシャフトの接置部周辺(図1)の部分断面図である。
図3】コイル体の概略構成を示す斜視図である。
図4】第2実施形態のガイドワイヤの第1及び第2コアシャフトの接置部周辺の部分断面図である。
図5】第3実施形態のガイドワイヤの第1及び第2コアシャフトの接置部周辺の部分断面図である。
図6】第4実施形態のガイドワイヤの第1及び第2コアシャフトの接置部周辺の部分断面図である。
図7】第5実施形態のガイドワイヤの全体構成を示す部分断面図である。
図8】第5実施形態のガイドワイヤの第1及び第2コアシャフトの接置部周辺(図7)の部分断面図である。
図9】第6実施形態のガイドワイヤの第1及び第2コアシャフトの接置部周辺の部分断面図である。
図10】第7実施形態のガイドワイヤの第1及び第2コアシャフトの接置部周辺の部分断面図である。
図11】第8実施形態のガイドワイヤの第1及び第2コアシャフトの接置部周辺の部分断面図である。
図12】第9実施形態のガイドワイヤの第1及び第2コアシャフトの接置部周辺の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガイドワイヤ1の全体構成を示す部分断面図である。ガイドワイヤ1は、例えば血管にカテーテルを挿入する際に用いられる医療器具であり、第1コアシャフト10と、コイル体20と、第2コアシャフト30と、コイル体40と、先端側固定部51と、基端側固定部52と、中間固定部61と、管状部材70とを備えている。図1では、ガイドワイヤ1の中心に通る軸を軸線O(一点鎖線)で表す。以降の例では、第1コアシャフト10、コイル体20、第2コアシャフト30、コイル体40、及び管状部材70の各部材の中心を通る軸は、いずれも軸線Oと一致する。しかし、これらの各部材の中心を通る軸は、それぞれ軸線Oとは相違していてもよい。なお、本実施形態においてコイル体40は「第1の管状部材」に相当し、管状部材70は「第2の管状部材」に相当する。
【0018】
また、図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。X軸は、ガイドワイヤ1の軸線方向に対応し、Y軸は、ガイドワイヤ1の高さ方向に対応し、Z軸は、ガイドワイヤ1の幅方向に対応する。図1の左側(-X軸方向)をガイドワイヤ1及び各構成部材の「先端側」と呼び、図1の右側(+X軸方向)をガイドワイヤ1及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、ガイドワイヤ1及び各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端部」または単に「先端」と呼び、基端側に位置する端部を「基端部」または単に「基端」と呼ぶ。本実施形態において、先端側は「遠位側」に相当し、基端側は「近位側」に相当する。これらの点は、図1以降の全体構成を示す図においても共通する。
【0019】
第1コアシャフト10は、中央が太径で、両端側(先端側、基端側)が細径とされた長尺状の部材である。第1コアシャフト10は、超弾性材料、例えば、NiTi(ニッケルチタン)合金や、NiTiと他の金属との合金により形成されている。第1コアシャフト10は、先端側から基端側に向かって順に、先端細径部11、先端縮径部12、第1太径部13、第1中間部14、第1細径部15を有している。各部の外径や長さは任意に決定できる。
【0020】
先端細径部11は、第1コアシャフト10の先端部に配置されている。先端細径部11は、第1コアシャフト10の外径が最小の部分であり、一定の外径を有する略円柱形状である。先端縮径部12は、先端細径部11と第1太径部13との間に配置されている。先端縮径部12は、基端側から先端側に向かって外径が縮径した略円錐台形状である。第1太径部13は、先端縮径部12と第1中間部14との間に配置されている。第1太径部13は、第1コアシャフト10の外径が最大の部分であり、一定の外径を有する略円柱形状である。第1中間部14は、第1太径部13と第1中間部14との間に配置されている。第1中間部14は、基端側から先端側に向かって外径が拡径した略円錐台形状である。第1細径部15は、第1コアシャフト10の基端部に配置されている。第1細径部15は、第1太径部13よりも小さく、かつ、先端細径部11よりも大きな一定の外径を有する略円柱形状である。
【0021】
第2コアシャフト30は、基端側が太径で先端側が細径とされた、先細りした長尺状の部材である。第2コアシャフト30は、第1コアシャフト10よりも高い剛性を有する材料、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金により形成されている。第2コアシャフト30は、先端側から基端側に向かって順に、第2細径部31、第2中間部32、第2太径部33、基端縮径部34、基端太径部35を有している。各部の外径や長さは任意に決定できる。
【0022】
第2細径部31は、第2コアシャフト30の先端部に配置されている。第2細径部31は、第2コアシャフト30の外径が最小の部分であり、第1コアシャフト10の第1細径部15と略同一な一定の外径を有する略円柱形状である。第2中間部32は、第2細径部31と第2太径部33との間に配置されている。第2中間部32は、基端側から先端側に向かって外径が縮径した略円錐台形状である。第2太径部33は、第2中間部32と基端縮径部34との間に配置されている。第2太径部33は、基端太径部35よりも小さく、かつ、第2細径部31よりも大きな一定の外径を有する略円柱形状である。基端縮径部34は、第2太径部33と基端太径部35との間に配置されている。基端縮径部34は、基端側から先端側に向かって外径が縮径した略円錐台形状である。基端太径部35は、第2コアシャフト30の基端部に配置されている。基端太径部35は、第2コアシャフト30の外径が最大の部分であり、一定の外径を有する略円柱形状である。
【0023】
第1コアシャフト10のうち、先端細径部11、先端縮径部12、及び第1太径部13の先端側は、後述するコイル体20によって覆われている。一方、第1コアシャフト10の第1太径部13の基端側と、第2コアシャフト30の各部とは、コイル体20によって覆われておらず、コイル体20から露出している。第2コアシャフト30の基端太径部35は、術者がガイドワイヤ1を把持する際に使用される。
【0024】
コイル体20は、第1コアシャフト10に対して素線21を螺旋状に巻回して形成される略円筒形状である。コイル体20を形成する素線21は、1本の素線からなる単線でもよいし、複数の素線を撚り合せた撚線でもよい。素線21を単線とした場合、コイル体20は単コイルとして構成され、素線21を撚線とした場合、コイル体20は中空撚線コイルとして構成される。また、単コイルと中空撚線コイルとを組み合わせてコイル体20を構成してもよい。素線21の線径と、コイル体20におけるコイル平均径(コイル体20の外径と内径の平均径)とは、任意に決定できる。
【0025】
素線21は、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金、NiTi合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金等の放射線透過性合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)等の放射線不透過性合金で形成することができる。なお、素線21は、上記以外の公知の材料によって形成されてもよい。
【0026】
先端側固定部51は、ガイドワイヤ1の先端部に配置され、第1コアシャフト10の先端細径部11の先端部と、コイル体20の先端部とを一体的に保持している。先端側固定部51は、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだや、エポキシ系接着剤などの接着剤によって形成できる。基端側固定部52は、第1コアシャフト10の第1太径部13の基端側寄りの一部分に配置され、第1コアシャフト10と、コイル体20の基端部とを一体的に保持している。基端側固定部52は、先端側固定部51と同様に任意の接合剤によって形成できる。基端側固定部52と先端側固定部51とは、同じ接合剤を用いてもよく、異なる接合剤を用いてもよい。
【0027】
中間固定部61は、コイル体20の軸線O方向の中間部近傍において、コイル体20と、第1コアシャフト10とを一体的に保持している。中間固定部61は、先端側固定部51と同様に任意の接合剤によって形成できる。中間固定部61と先端側固定部51とは、同じ接合剤を用いてもよく、異なる接合剤を用いてもよい。図1では、1つの中間固定部61について例示したが、ガイドワイヤ1には複数の中間固定部61を設けてもよい。
【0028】
図2は、第1及び第2コアシャフト10,30の接置部周辺1pa(図1)の部分断面図である。図2に示すXYZ軸は、図1のXYZ軸にそれぞれ対応する。この点は、図2以降のXYZ軸を付した図についても同様である。第1及び第2コアシャフト10,30は、第1コアシャフト10の中心軸と、第2コアシャフト30の中心軸とを互いに一致させた状態で、対向して配置されている。図示の例では、第1及び第2コアシャフト10,30の各中心軸は、軸線Oに一致している。しかし、第1及び第2コアシャフト10,30は、軸線Oとは異なるYZ平面上の位置で互いの中心軸が一致していてもよい。以降、第1及び第2コアシャフト10,30が対向する部分を「接置部CP」と呼ぶ。図示の例では、接置部CPは、第1コアシャフト10の第1細径部15の基端部と、第2コアシャフト30の第2細径部31の先端部との隣接部分である。
【0029】
本実施形態では、第1及び第2コアシャフト10,30は、接置部CPにおいて接合されている。接合は、例えば、接置部CPにおいて隣接して配置された第1コアシャフト10の第1細径部15と、第2コアシャフト30の第2細径部31との間の隙間を、接合剤81で埋め固めることにより実施できる。この際、第1細径部15と第2細径部31との間の隙間の全体(換言すれば、第1細径部15の基端側の端面と第2細径部31の先端側の端面との全面)に接合剤81が配置されてもよいし、隙間の一部分にのみ接合剤81が配置されて他の部分は空隙であってもよい。接合剤81には、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだや、エポキシ系接着剤などの接着剤を使用できる。また、接置部CPにおける接合は、第1及び第2コアシャフト10,30の溶接により実施されてもよい。
【0030】
なお、第1及び第2コアシャフト10,30は、接置部CPにおいて接合されていなくてもよい。この場合、接置部CPでは、第1細径部15の基端側の端面と、第2細径部31の先端側の端面とが接触していてもよく、第1細径部15の基端側の端面と、第2細径部31の先端側の端面とが空隙を介して隣接していてもよい。
【0031】
図3は、コイル体40の概略構成を示す斜視図である。本実施形態のコイル体40は、8本の素線41を多条巻きにした多条コイルであり、一定の外径を有する略円筒形状である。コイル体40は、第2コアシャフト30よりも曲げ剛性が低い構成とされることが好ましい。コイル体40は、例えば、芯金上に8本の素線41を互いに接触するように密に撚り合せた後、公知の熱処理方法を用いて残留応力を除去し、芯金を抜き取ることで形成できる。このようにして形成されたコイル体40は、図3に示すように、内腔40h(図3:破線)を有する多条コイルとなる。素線41の材料は、素線21と同じであってもよく、異なっていてもよい。なお、コイル体40には、任意の態様を採用でき、例えば、コイル体40を構成する素線の本数は8本に限らず、任意に決定できる。コイル体40は多条コイルに限らず、1本の素線を用いて形成された単条コイルであってもよく、疎水性を有する樹脂材料、親水性を有する樹脂材料、またはこれらの混合物によってコーティングされていてもよい。
【0032】
図2に示すように、コイル体40は、第1及び第2コアシャフト10,30の接置部CPと、接置部CPに隣接する第1コアシャフト10の一部分(図示の例では、第1細径部15の基端部より先端側)と、接置部CPに隣接する第2コアシャフト30の一部分(図示の例では、第2細径部31の先端部より基端側)と、をそれぞれ覆うように配置されている。換言すれば、接置部CPにおいて接合された第1及び第2コアシャフト10,30は、コイル体40の内腔40hを貫通するように、軸線O方向に延伸している。本実施形態では、コイル体40の軸線O方向における長さL12は、第1細径部15の軸線O方向における長さと、第2細径部31の軸線O方向における長さとの和とほぼ等しい。なお、コイル体40の長さL12は任意に決定できる。
【0033】
本実施形態の管状部材70は、一定の外径を有する管形状(略円筒形状)に形成された金属製の部材である。管状部材70は、第2コアシャフト30よりも曲げ剛性が低く、かつ、第1コアシャフト10と同程度の弾性率を有する構成とされることが好ましい。管状部材70は、第1コアシャフト10と同様に、超弾性材料、例えば、NiTi合金や、NiTiと他の金属との合金により形成できる。管状部材70は、第1コアシャフト10と同じ材料により形成されてもよく、異なる材料により形成されてもよい。
【0034】
図2に示すように、管状部材70は、コイル体40と、コイル体40から露出した第1コアシャフト10の一部分(図示の例では、第1中間部14と、第1太径部13の基端側の一部分)と、コイル体40から露出した第2コアシャフト30の一部分(図示の例では、第2中間部32と、第2太径部33の先端側の一部分)と、をそれぞれ覆うように配置されている。換言すれば、コイル体40に覆われた第1及び第2コアシャフト10,30は、管状部材70の内腔を貫通するように、軸線O方向に延伸している。本実施形態では、管状部材70の軸線O方向における長さL11は、コイル体40の軸線O方向における長さL12よりも長い。なお、管状部材70の長さL11は任意に決定できる。
【0035】
また、管状部材70は、管状部材70の内側に配置された接合剤82によって、第1及び第2コアシャフト10,30と、コイル体40と固定されている。管状部材70の固定は、管状部材70と、管状部材70に覆われた各部材(第1コアシャフト10、第2コアシャフト30、コイル体40)との間の隙間を、接合剤82で埋め固めることにより実施できる。この際、図示のように、管状部材70と各部材との間の隙間の全体に接合剤82が配置されてもよいし、隙間の一部分にのみ接合剤82が配置されてもよい。一部分にのみ接合剤82が配置された場合、管状部材70と、管状部材70に覆われた各部材との間には、空隙が残存してもよい。また、接合剤82をコイル体40の各素線41の間に配置することで、コイル体40を固定してもよい。さらに、接合剤82をコイル体40の内側にも配置することで、コイル体40と、第1及び第2コアシャフト10,30とを固定してもよい。接合剤82は、接合剤81と同様に任意の接合剤を使用できる。接合剤82と接合剤81とは、同じ接合剤を用いてもよく、異なる接合剤を用いてもよい。
【0036】
以上のように、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、第1コアシャフト10と第2コアシャフト30とは中心軸を一致させて対向配置されている。このため、第2コアシャフト30の基端太径部35を把持して回転させる操作(図2:太線矢印)や、第1コアシャフト10の基端太径部35を押し込む操作等の、手元部分におけるガイドワイヤ1への操作を、ガイドワイヤ1の先端側(第1コアシャフト10)へと伝達することができ、ガイドワイヤ1のトルク伝達性や押し込み性(操作性)を向上できる。
【0037】
また、第1及び第2コアシャフト10,30の接置部CPと、接置部CPに隣接する第1及び第2コアシャフト10,30の各一部分とは、コイル体40によって覆われている。このため、第1及び第2コアシャフト10,30に異なる材料を用いたこと等に起因して、第1及び第2コアシャフト10,30の剛性が相違する場合であっても、コイル体40によって、第1及び第2コアシャフト10,30間の剛性ギャップを緩和することができる。ここで、コイル体40の曲げ剛性を第2コアシャフト30よりも低くすれば、コイル体40による剛性ギャップの緩和効果をより高くできる。さらに、コイル体40を覆うと共に、第1及び第2コアシャフト10,30の両方に固定された管状部材70を備えている。このため、第1コアシャフト10と、第2コアシャフト30と、コイル体40との剛性がそれぞれ相違する場合であっても、管状部材70によって、これらの間の剛性ギャップを緩和することができる。ここで、管状部材70の曲げ剛性を第2コアシャフト30よりも低くし、かつ、管状部材70の弾性率を第1コアシャフト10と同程度とすれば、管状部材70による剛性ギャップの緩和効果をより高くできる。このため、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、従来生じていた、接置部CP近傍における第1及び第2コアシャフト10,30の変形(折れ、ヨレ、潰れ)を抑制することができ、ガイドワイヤ1の耐キンク性を向上できる。
【0038】
さらに、接置部CPをコイル体40で覆い、かつ、コイル体40を第1及び第2コアシャフト10,30に固定された管状部材70で覆うことによって、操作がなされた際の第1及び第2コアシャフト10,30の横ずれを抑制することができると共に、せん断応力の集中を抑制することができる。これらの結果、本構成によれば、操作性及び耐キンク性に優れたガイドワイヤ1を提供することができる。
【0039】
さらに、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、管状部材70は、軸線O方向における長さL11がコイル体40の軸線O方向における長さL12より長く(図2)、コイル体40から露出した第1及び第2コアシャフト10,30の少なくとも各一部分を覆っている。このため、接置部CP近傍における第1及び第2コアシャフト10,30の変形に加えてさらに、コイル体40近傍における第1及び第2コアシャフト10,30の変形を抑制することができ、耐キンク性をさらに向上できる。さらに、管状部材70は、内側に配置された接合剤82によって第1及び第2コアシャフト10,30とコイル体40とに固定されている。このため、操作性(特にトルク伝達性)と、耐キンク性とをさらに向上できる。
【0040】
さらに、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、コイル体40によって、接置部CPと、第1及び第2コアシャフト10,30の第1,2細径部15,31を覆い、かつ、管状部材70によって、コイル体40と、第1及び第2コアシャフト10,30の第1,2太径部13,33を覆うことで、コイル体40と管状部材70とによる剛性ギャップの緩和効果をより強くすることができ、耐キンク性をさらに向上できる。
【0041】
さらに、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、内側に配置されるコイル体40を多条コイル(図3)とし、外側に配置される管状部材70を超弾性材料の管形状とすることで、剛性ギャップの緩和効果をより強くすることができ、耐キンク性をさらに向上できる。さらに、第1コアシャフト10を超弾性材料で形成することで、曲げに対する柔軟性や復元性を向上させることができ、第2コアシャフト30を第1コアシャフト10よりも高い剛性を有する材料で形成することで、トルク伝達性や押し込み性(操作性)を向上させることができる。
【0042】
さらに、本実施形態のガイドワイヤ1において、コイル体40を、第1コアシャフト10、第2コアシャフト30、及び管状部材70の夫々よりも低い剛性とすれば、接置部CPを含む第1及び第2コアシャフト10,30と、管状部材70との間の空間に接合剤(接着剤又はロウ剤)が充填された構造において、コイル体40がガイドワイヤ1の軸線O方向(長軸方向)に向かい接置部CPに係る力を分散させ、第1及び第2コアシャフト10,30に波及させやすくできる。それにより、第1及び第2コアシャフト10,30の接置部CPに係る応力をより緩和することができ、耐キンク性をさらに向上できる。
【0043】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態のガイドワイヤ1Aの第1及び第2コアシャフト10A,30Aの接置部周辺の部分断面図である。第2実施形態のガイドワイヤ1Aは、第1実施形態の構成において、第1コアシャフト10Aが第1中間部14を備えず、第2コアシャフト30が第2中間部32を備えていない。第2実施形態においても、管状部材70の軸線O方向における長さL21は、コイル体40の軸線O方向における長さL22よりも長い。長さL21,22は任意に決定できる。
【0044】
このように、第1コアシャフト10Aの基端側は、第1太径部13と第1細径部15とから構成されてもよく、第2コアシャフト30Aの先端側は、第2太径部33と第2細径部31とから構成されてもよい。なお、第1及び第2コアシャフト10A,30Aのうち少なくとも一方が、第実施形態の構成とされ、他方は第1実施形態の構成とされてもよい。第2実施形態のガイドワイヤ1Aにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0045】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態のガイドワイヤ1Bの第1及び第2コアシャフト10B,30Bの接置部周辺の部分断面図である。第3実施形態のガイドワイヤ1Bは、第1実施形態の構成において、第1コアシャフト10Bが第1中間部14と第1細径部15とを備えず、第2コアシャフト30Bが第2細径部31と第2中間部32とを備えていない。第3実施形態では、接置部CPBは、第1コアシャフト10Bの第1太径部13の基端部と、第2コアシャフト30Bの第2太径部33の先端部との隣接部分である。コイル体40Bは、接置部CPBと、接置部CPBに隣接する第1コアシャフト10Bの一部分(図示の例では、第1太径部13の基端部より先端側の一部分)と、接置部CPBに隣接する第2コアシャフト30Bの一部分(図示の例では、第2太径部33の先端部より基端側の一部分)とをそれぞれ覆っている。第3実施形態においても、管状部材70の軸線O方向における長さL31は、コイル体40Bの軸線O方向における長さL32よりも長い。長さL31,32は任意に決定できる。
【0046】
このように、第1コアシャフト10Bの基端側は、第1太径部13のみから構成されてもよく、第2コアシャフト30Bの先端側は、第2太径部33のみから構成されてもよい。なお、第1及び第2コアシャフト10B,30Bのうち少なくとも一方が、第実施形態の構成とされ、他方は上述した第実施形態や、第1実施形態の構成とされてもよい。このような第3実施形態のガイドワイヤ1Bにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0047】
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態のガイドワイヤ1Cの第1及び第2コアシャフト10,30の接置部周辺の部分断面図である。第4実施形態のガイドワイヤ1Cは、第1実施形態の構成において、軸線O方向の長さL41が、コイル体40の軸線O方向の長さL42と略同一の管状部材70Cを備えている。管状部材70Cは、管状部材70Cの内側に配置された接合剤82Cによって、第1及び第2コアシャフト10,30と、コイル体40と固定されている。例えば、接合剤82Cを、管状部材70Cとコイル体40との隙間にのみ配置した場合、管状部材70Cは、第1及び第2コアシャフト10,30に対して、コイル体40を介して間接的に固定される。一方、例えば、接合剤82Cを、管状部材70Cとコイル体40との隙間に加えてさらに、コイル体40と第1及び第2コアシャフト10,30(第1細径部15、第2細径部31)との隙間にも配置した場合、管状部材70Cは、第1及び第2コアシャフト10,30に対して直接固定されるため好ましい。
【0048】
このように、管状部材70Cの軸線O方向の長さL41と、コイル体40の軸線O方向の長さL42とは任意に決定できる。例えば、長さL41,42は、上述のように略同一でもよく、管状部材70Cの軸線O方向の長さL41が、コイル体40の軸線O方向の長さL42より短くてもよい。このような第4実施形態のガイドワイヤ1Cにおいても、第1実施形態と同様に、中心軸を一致させて対向配置された第1及び第2コアシャフト10,30によって、ガイドワイヤ1Cの操作性を向上できる。また、コイル体40と管状部材70Cとによって、接置部CP近傍における第1及び第2コアシャフト10,30の変形(折れ、ヨレ、潰れ)を抑制することができ、ガイドワイヤ1Cの耐キンク性を向上できる。
【0049】
<第5実施形態>
図7は、第5実施形態のガイドワイヤ1Dの全体構成を示す部分断面図である。図8は、第5実施形態のガイドワイヤ1Dの第1及び第2コアシャフト10D,30Dの接置部周辺1pa(図7)の部分断面図である。第5実施形態のガイドワイヤ1Dは、接置部周辺1paにおける第1及び第2コアシャフト10D,30D、コイル体40D、及び管状部材70Dの構成が第1実施形態とは相違する。
【0050】
具体的には、第1コアシャフト10Dは、第1中間部14を備えず、第1細径部15が、第1端部側細径部15e及び第1中間細径部15mを備えている。第1端部側細径部15eは、第1コアシャフト10Dの基端部側に設けられ、第1中間細径部15mよりも細い一定の外径を有する略円柱形状である。第1中間細径部15mは、第1端部側細径部15eと第1太径部13との間に設けられ、第1端部側細径部15eよりも太く、第1太径部13よりも細い一定の外径を有する略円柱形状である。第2コアシャフト30Dは、第2中間部32を備えず、第2細径部31が、第2端部側細径部31e及び第2中間細径部31mを備えている。第2端部側細径部31eは、第2コアシャフト30Dの先端部側に設けられ、第2中間細径部31mよりも細い一定の外径を有する略円柱形状である。第2中間細径部31mは、第2端部側細径部31eと第2太径部33との間に設けられ、第2端部側細径部31eよりも太く、第2太径部33よりも細い一定の外径を有する略円柱形状である。
【0051】
図8に示すように、接置部CPDでは、第1コアシャフト10Dの第1端部側細径部15eの基端側の端面と、第2コアシャフト30Dの第2端部側細径部31eの先端側の端面と、が隣接して配置されている。接置部CPDでは、第1及び第2コアシャフト10D,30Dが接合されている。この接合には、第1実施形態と同様に、種々の態様を採用することができるほか、接合を省略してもよい。
【0052】
コイル体40Dは、接置部CPDと、接置部CPDに隣接する第1コアシャフト10Dの一部分(図示の例では、第1端部側細径部15e)と、接置部CPDに隣接する第2コアシャフト30Dの一部分(図示の例では、第2端部側細径部31e)と、をそれぞれ覆うように配置されている。本実施形態では、コイル体40Dの軸線O方向における長さL52は、第1端部側細径部15eの軸線O方向における長さと、第2端部側細径部31eの軸線O方向における長さの和とほぼ等しい。なお、コイル体40Dの長さL52は任意に決定できる。
【0053】
管状部材70Dは、コイル体40Dと、コイル体40Dから露出した第1コアシャフト10Dの一部分(図示の例では、第1細径部15の第1中間細径部15m)と、コイル体40Dから露出した第2コアシャフト30Dの一部分(図示の例では、第2細径部31の第2中間細径部31mの先端側の一部分)と、をそれぞれ覆うように配置されている。本実施形態では、管状部材70Dの軸線O方向における長さL51は、第1中間細径部15mの軸線O方向における長さと、第2中間細径部31mの軸線O方向における長さの和とほぼ等しい。また、管状部材70Dの軸線O方向における長さL51は、コイル体40Dの軸線O方向における長さL52よりも長い。なお、管状部材70Dの長さL51は任意に決定できる。
【0054】
また、本実施形態の管状部材70Dは、先端部が、第1コアシャフト10Dの第1太径部13と第1細径部15(第1中間細径部15m)との境界近傍に位置するように配置されている。このような配置において、図8に示すように、管状部材70Dの外径と第1太径部13の外径とを略同一とすれば、第1コアシャフト10Dと管状部材70Dとの接続部分(図8:二点鎖線)の表面形状を、凹凸のない平坦な形状とすることができ、より低侵襲なガイドワイヤ1Dを提供できる。なお、管状部材70Dは、基端部が、第2コアシャフト30Dの第2太径部33と第2細径部31(第2中間細径部31m)との境界近傍に位置するように配置されてもよい。また、管状部材70Dは、第1コアシャフト10Dの上述した境界部分や、第2コアシャフト30Dの上述した境界部分から距離を空けて配置されていてもよい。
【0055】
このように、第1コアシャフト10Dの第1細径部15は、異なる構成を有する複数の細径部(第1中間細径部15m、第1端部側細径部15e)から構成されてもよく、第2コアシャフト30Dの第2細径部31は、異なる構成を有する複数の細径部(第2中間細径部31m、第2端部側細径部31e)から構成されてもよい。なお、第1及び第2コアシャフト10D,30Dのうち少なくとも一方が、第5実施形態の構成とされ、他方は第1実施形態の構成とされてもよい。このような第5実施形態のガイドワイヤ1Dにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0056】
<第6実施形態>
図9は、第6実施形態のガイドワイヤ1Eの第1及び第2コアシャフト10D,30Dの接置部周辺の部分断面図である。第6実施形態のガイドワイヤ1Eは、第5実施形態の構成において、コイル体40Dを第1及び第2コアシャフト10D,30Dに固定する内側固定部90を備えている。内側固定部90は、コイル体40Dを覆うように配置され、第1コアシャフト10Dの第1端部側細径部15eと、第2コアシャフト30Dの第2端部側細径部31eと、コイル体40Dとを一体的に固定している。内側固定部90は、接合剤81や接合剤82と同様に任意の接合剤によって形成できる。内側固定部90と接合剤81,82とは、同じ接合剤を用いてもよく、異なる接合剤を用いてもよい。
【0057】
このように、コイル体40Dと管状部材70Dとは、それぞれ個別に第1及び第2コアシャフト10D,30Dに固定されていてもよい。このような第6実施形態のガイドワイヤ1Eにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第6実施形態のガイドワイヤ1Eによれば、ガイドワイヤ1Eの製造において、第1及び第2コアシャフト10D,30Dにコイル体40Dを固定する(内側固定部90を形成する)工程と、第1及び第2コアシャフト10D,30Dに管状部材70Dを固定する(接合剤82を配置する)工程と、を独立して実施できる。
【0058】
<第7実施形態>
図10は、第7実施形態のガイドワイヤ1Fの第1及び第2コアシャフト10D,30Dの接置部周辺の部分断面図である。第7実施形態のガイドワイヤ1Fは、第5実施形態の構成において、接合剤を使用せず、第1及び第2コアシャフト10D,30Dに固定された管状部材70Fを備えている。管状部材70Fは、第5実施形態と同様に、コイル体40Dと、コイル体40Dから露出した第1中間細径部15m及び第2中間細径部31mとを覆うように配置されている。管状部材70Fの先端側は、先端部70dをかしめることによって、第1コアシャフト10Dの第1中間細径部15mに固定されている。管状部材70Fの基端側は、基端部70pをかしめることによって、第2コアシャフト30Dの第2中間細径部31mに固定されている。図示の例では、管状部材70Fの内側は、接合剤が配置されていない空隙であり、管状部材70Fは、コイル体40Dには固定されていない。かしめ後の管状部材70Fの軸線O方向における長さL71は、コイル体40Dの軸線O方向における長さL72よりも長い。長さL71,72は任意に決定できる。
【0059】
このように、管状部材70Fを第1及び第2コアシャフト10D,30Dに固定する方法には、接合剤を用いる以外の種々の方法(例えば、かしめる、溶接する等)を採用できる。また、管状部材70Fは、第1及び第2コアシャフト10D,30Dに固定されていれば足り、コイル体40Dには固定されていなくてもよい。なお、第7実施形態の構成において、例えば、管状部材70Fの内側に、さらに接合剤が配置されてもよい。また、管状部材70Fの内側において、コイル体40Dは、内側固定部90(図9)によって第1及び第2コアシャフト10D,30Dに固定されていてもよい。このような第7実施形態のガイドワイヤ1Fにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0060】
<第8実施形態>
図11は、第8実施形態のガイドワイヤ1Gの第1及び第2コアシャフト10,30の接置部周辺の部分断面図である。第8実施形態のガイドワイヤ1Gは、第1実施形態の構成において、軸線O方向の長さL82が短いコイル体40Gを備えている。コイル体40Gは、第1及び第2コアシャフト10,30の接置部CPと、接置部CPに隣接する第1コアシャフト10の一部分(図示の例では、第1細径部15の基端側の一部分)と、接置部CPに隣接する第2コアシャフト30の一部分(図示の例では、第2細径部31の先端側の一部分)と、をそれぞれ覆うように配置されている。本実施形態においても、管状部材70の軸線O方向における長さL81は、コイル体40Gの軸線O方向における長さL82よりも長い。長さL81,82は任意に決定できる。
【0061】
このように、コイル体40Gは、接置部CPと、接置部CPに隣接する第1及び第2コアシャフト10,30の各一部分とを覆う限りにおいて、任意の長さを採用でき、第1及び第2細径部15,31の全体を覆わなくてもよい。このような第8実施形態のガイドワイヤ1Gにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
<第9実施形態>
図12は、第9実施形態のガイドワイヤ1Hの第1及び第2コアシャフト10,30の接置部周辺の部分断面図である。第9実施形態のガイドワイヤ1Hは、第1実施形態の構成において、コイル体40に換えて樹脂又は金属からなる管状体40Hを備えている。管状体40Hは、第1コアシャフト10、第2コアシャフト30、及び管状部材70の夫々の剛性に対して、管状体40Hの剛性を低い材料により形成する。管状体40Hの剛性は、管状体40Hを構成する素材自体に起因する剛性に限らず、管状体40Hの形状等により剛性が調整されるものであって良い。また、管状体40Hは、管状体40Hの内側に配置された接合剤83によって、第1及び第2コアシャフト10,30に固定されている。接合剤83は、接合剤81と同様に任意の接合剤を使用できる。接合剤83と接合剤81とは、同じ接合剤を用いてもよく、異なる接合剤を用いてもよい。
【0063】
このように、剛性を調整した管状体40Hで第1及び第2コアシャフト10,30の接置部CPを覆うことにより、第9実施形態のガイドワイヤ1Hにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0064】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0065】
[変形例1]
上記第1~9実施形態では、ガイドワイヤ1,1A~1Hの構成を例示した。しかし、ガイドワイヤの構成は種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態のガイドワイヤは、血管にカテーテルを挿入する際に使用される医療器具として説明したが、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官等、人体内の各器官に挿入されるガイドワイヤとして構成することもできる。例えば、ガイドワイヤは、第1及び第2コアシャフトの全体(換言すれば、第1コアシャフトの先端部から第2コアシャフトの基端部までの全体)がコイル体に覆われた構成であってもよい。例えば、ガイドワイヤは、先端側が予め湾曲された状態で製品化されてもよい。
【0066】
[変形例2]
上記第1~9実施形態では、第1及び第2コアシャフト10,10A,10B,10D,30,30A,30B,30Dの構成を例示した。しかし、第1コアシャフト及び第2コアシャフトの構成は種々の変更が可能である。例えば、第1コアシャフトは、先端細径部や先端縮径部を備えていなくてもよく、第2コアシャフトは、基端縮径部や基端太径部を備えていなくてもよい。例えば、第1コアシャフトは、超弾性材料以外の種々の材料によって形成されてもよく、第2コアシャフトは、第1コアシャフトよりも高い剛性を有する材料によって形成されてもよい。第1及び第2コアシャフトは、同じ材料によって形成されてもよい。例えば、第1及び第2コアシャフトの各部における横断面形状は、略円形形状でなくてもよく、種々の形状(例えば、略矩形形状、略楕円形形状等)を採用できる。
【0067】
[変形例3]
上記第1~9実施形態では、コイル体20の構成の一例を示した。しかし、コイル体の構成は種々の変更が可能である。例えば、コイル体は、隣接する素線の間に隙間を有さない密巻きに構成されてもよく、隣接する素線の間に隙間を有する疎巻きに形成されてもよく、密巻きと疎巻きとが混合された構成であってもよい。また、コイル体は、例えば、疎水性を有する樹脂材料、親水性を有する樹脂材料、またはこれらの混合物によってコーティングされた樹脂層を備えていてもよい。例えば、コイル体の素線の横断面形状は、略円形でなくてもよい。
【0068】
[変形例4]
上記第1~9実施形態では、第1の管状部材としてのコイル体40,40B,40D,40G、及び管状体40Hの構成の一例を示した。しかし、第1の管状部材の構成は種々の変更が可能である。例えば、第1の管状部材は、多条コイルではなく、1本の素線を螺旋状に巻回して形成された単コイルであってもよい。また、第1の管状部材には、例えば、接合剤の下地層を備えていてもよい。例えば、第1の管状部材を形成する素線の横断面形状は、略円形でなくてもよい。例えば、第1の管状部材は、第2コアシャフトと比較して曲げ剛性が略同一または高い構成であってもよい。
【0069】
[変形例5]
上記第1~9実施形態では、第2の管状部材としての管状部材70,70C,70D,70Fの構成の一例を示した。しかし、管状部材の構成は種々の変更が可能である。例えば、管状部材は、金属以外の材料(例えば、樹脂等)により形成されてもよい。例えば、管状部材には、接合剤を充填するための貫通孔等が形成されていてもよい。例えば、管状部材は、第2コアシャフトと比較して曲げ剛性が略同一または高い構成であってもよく、第1コアシャフトとは異なる弾性率を有する構成であってもよい。
【0070】
[変形例6]
上記第1~9実施形態のガイドワイヤ1,1A~1Hの構成、及び上記変形例1~5のガイドワイヤの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態のガイドワイヤ1A(第1及び第2中間部を有さない構成)、第3実施形態のガイドワイヤ1B(第1及び第2細径部を有さない構成)、第5~第7実施形態のガイドワイヤ1D~1F(第1及び第2中間細径部、第1及び第2端部側細径部を有する構成)において、第4実施形態で説明した長さを有する管状部材を使用してもよく、第8実施形態で説明した長さを有するコイル体を使用してもよい。例えば、第5~第7実施形態のガイドワイヤ1D~1F(第1及び第2中間細径部、第1及び第2端部側細径部を有する構成)において、第1実施形態で説明した、第1及び第2太径部を覆う管状部材を使用してもよい。
【0071】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0072】
1,1A~1H…ガイドワイヤ
10,10A,10B,10D…第1コアシャフト
11…先端細径部
12…先端縮径部
13…第1太径部
14…第1中間部
15…第1細径部
15e…第1端部側細径部
15m…第1中間細径部
20…コイル体
21…素線
30,30A,30B,30D…第2コアシャフト
31…第2細径部
31e…第2端部側細径部
31m…第2中間細径部
32…第2中間部
33…第2太径部
34…基端縮径部
35…基端太径部
40,40B,40D,40G…コイル体
40H…管状体
41…素線
51…先端側固定部
52…基端側固定部
61…中間固定部
70,70C,70D,70F…管状部材
81…接合剤
82,82C…接合剤
83…接合剤
90…内側固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12