(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】ポリリン酸の製造方法及び該方法のための装置
(51)【国際特許分類】
C01B 25/40 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
C01B25/40
(21)【出願番号】P 2020551896
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2019057702
(87)【国際公開番号】W WO2019185698
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-26
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】516125587
【氏名又は名称】プラヨン ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Prayon S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヘプティア,バーナード
(72)【発明者】
【氏名】ソチ,カール
(72)【発明者】
【氏名】レルト,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル,ダミアン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-079540(JP,A)
【文献】特表2004-537490(JP,A)
【文献】国際公開第2010/108991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/00 - 25/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0%~70%のP2O5重量濃度xp0を示すリン酸供給溶液P0の接触器供給流F0を、ガス/酸接触器(1)に導入する段階と、
(b)前記ガス/酸接触器(1)に、再循環された濃縮リン酸溶液P2の再循環流F2を導入する段階と、
(c)前記ガス/酸接触器(1)に燃焼ガスG1を導入する段階と、
(d)
・xp0よりも大きい重量濃度xp1(xp1>xp0)を含む濃縮リン酸溶液P1、
を一方で形成し、
・接触済燃焼ガスG3、
を他方で形成するために、前記接触器の前記供給流F0、前記再循環流F2、及び前記燃焼ガスG1を接触させる段階と、
(e)前記接触済燃焼ガスG3を前記濃縮リン酸溶液P1から分離し、その後、
・前記接触済燃焼ガスG3を前記ガス/酸接触器(1)から排出し、
・前記濃縮リン酸溶液P1を前記ガス/酸接触器(1)から取り出す、
段階と、
(f)前記濃縮リン酸溶液P1から、
・一方で段階(b)で定義した通りに前記ガス/酸接触器(1)に導入するために、再循環された濃縮リン酸溶液P2の再循環流F2を、
・他方で燃焼室(2)に導入するための前記濃縮リン酸溶液P1の噴霧流Fpを、
形成する段階と、
(g)
・水を蒸発させて
混合溶液Pmを濃縮するために、
・リン酸
の混合溶液Pmの分子を重合してポリリン酸溶液P3を形成するために、及び
・燃焼ガスG1を形成するために、
・一方で前記濃縮リン酸溶液P1、及び
・任意選択的には、他方で少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%の重量濃度xdのリン酸直送供給水溶液Pdの直送供給流Fd、
により形成された、前記接触器の前記供給流F0の濃度よりも高い重量濃度xpmを有するリン酸
の混合溶液Pmの混合流Fmを前記燃焼室(2)の上部の燃焼炎を通して噴霧する段階と、
(h)前記ポリリン酸溶液P3を燃焼ガスG1から分離し、
・前記ポリリン酸溶液P3を回収し、
・段階(c)で定義した前記ガス/酸接触器(1)の中に前記燃焼ガスG1を移送する段階と、
を含むことを特徴とするポリリン酸P3の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
・前記接触器供給溶液P0が、0%~70%、好ましくは少なくとも54%、より好ましくは少なくとも58%、更には少なくとも60%のP2O5の濃度xp0を含み、
・前記燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される前記接触器への前記接触器供給溶液P0の流量Q0が、好ましくは100~3000kg/(hMW)、好ましくは500~2500kg/(hMW)である、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
・前記濃縮リン酸溶液P1が、前記再循環されたリン酸溶液P2と同一であり、5%~80%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも62%、更には少なくとも65%のP2O5濃度xp1を含み、
・前記燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される前記接触器から出る前記溶液P1の総流量Q1=(Qp+Q2)が、好ましくは600~123000kg/(hMW)、好ましくは1000~50000kg/(hMW)であり、
・前記総重量流量(Qp+Q2)に対する前記噴霧流Fpの重量流量Qpの比率Qp/(Qp+Q2)が、好ましくは50%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2.5%未満であり、前記比率Qp/(Qp+Q2)が0.1%より大きく、好ましくは0.5%より大きい、
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、
・前記リン酸の直送供給溶液Pdが、20%~80%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも62%、更には少なくとも65%のP2O5濃度xpdを含み、
・前記燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される前記燃焼室への前記直送供給溶液Pdの流量Qdが、好ましくは0~1500kg/(hMW)、好ましくは400~1000kg/(hMW)である、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、
・前記供給溶液P0が、少なくとも40%のP2O5、好ましくは少なくとも50%又は少なくとも54%、より好ましくは少なくとも58%、更には少なくとも60%のP2O5を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、
・前記供給溶液P0が、40%未満のP2O5、好ましくは30%未満又は20%未満、より好ましくは5%未満、更には0%のP2O5を含み、前記直送供給溶液Pdの流量Qdがゼロではない、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法において、
・前記混合溶液Pmが、15%~80%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、更には少なくとも75%のP2O5の濃度xpmを含み、前記直送供給溶液Pdの流量Qdが好ましくはゼロではなく、
・前記燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される前記燃焼室内の前記混合溶液Pmの流量Qmが、好ましくは600~3000kg/(hMW)、好ましくは900~2000kg/(hMW)である、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法において、
・前記ポリリン酸溶液P3が、少なくとも76%、好ましくは80%超、特に好ましくは88%超、又は好ましくは76%~90%、より好ましくは86%~88%のP2O5単位の当量の濃度xp3を含み、
・前記燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される前記燃焼室における前記ポリリン酸溶液P3の前記流量Q3が、好ましくは240~1500kg/(hMW)、好ましくは600~3000kg/である(hMW)、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法において、前記供給流F0と前記再循環流F2が、
・前記接触器の前記供給溶液P0と前記再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流れを形成するために、前記ガス/酸接触器に導入される前に混合される、又は
・前記接触器の前記供給溶液P0と前記再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流れを形成するために、前記ガス/酸接触器に別々に導入された後に接触させられる、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法において、前記直送供給流Fd及び前記噴霧溶液流Fpが、
・前記燃焼室内の前記炎に噴霧される前に前記混合流Fmを形成するために混合される、又は
・前記炎の中で又は前記炎に到達する直前に前記混合流Fmを形成するために、前記燃焼室に別々に噴霧される、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法において、段階(d)における前記接触器の前記供給流F0及び前記再循環流F2と前記燃焼ガスG1との間の接触が、ガス/酸接触器の上部から下部に向かって流れることにより、並流又は向流、好ましくは並流で行われ、接触段階(d)中、前記ガス/酸接触器(1)に導入される前記燃焼ガスG1の重量流量Qg1と、前記ガス/酸接触器(1)に導入される前記接触供給流F0及び前記再循環供給流F2の量の総重量流量(Q0+Q2)との間の比率(Qg1/(Q0+Q2))が、0.1%~50%、好ましくは0.5%~10%、より好ましくは1%~7%であることを特徴とする方法。
【請求項12】
(A)以下を示す燃焼室(2):
・前記噴霧された形態の濃縮リン酸溶液P1をある流量で燃焼ユニット(2c)に導入することを可能にする前記燃焼室の濃縮リン酸導入口(2pu)、
・噴霧された形態の直送供給溶液Pd又は直送供給溶液Pdと濃縮リン酸溶液P1との混合物の燃焼ユニット(2c)への導入を可能にする、前記燃焼室に又は前記濃縮リン酸導入口(2pu)の上流に直送供給するための導入口(2pdu)、
・前記燃焼室の上部に配置されており、燃料の燃焼によって少なくとも1500℃の温度を有する炎を形成することができる燃焼ユニット(2c)において、
○バーナー、
○前記炎への供給を可能にする、バーナーと、一方では酸素源、他方では燃料源(10)との間の流体接続部、
を含む燃焼ユニット(2c)、
・前記濃縮リン酸導入口(2pu)の下流にそれ自体配置されている前記燃焼ユニットの下流に配置されている、液相を回収するための前記燃焼室からのポリリン酸(2pd)の排出口、
・炎に起因する燃焼ガスG1の排出のための排出口;
(B)以下を示すガス/酸接触器(1):
・前記接触器供給溶液P0の接触供給流量Q0での前記導入を可能にする、前記接触器供給溶液P0の供給源に接続された接触供給流導入口(1pu)、
・前記ガス/酸接触器への、流量Qg1での前記燃焼ガスG1の前記導入を可能にする燃焼ガス(1gu)の導入口、
・再循環流量Q2での再循環された濃縮リン酸溶液P2の前記導入を可能にする、前記接触供給流導入口(1pu)と同じ又は異なる再循環導入口(1pru)、
・
○一方で前記接触器の前記供給溶液P0と前記再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流れを形成するために、前記接触供給流F0と前記再循環流F2とを接触させること、
○他方でこのようにして形成された前記混合物と前記燃焼ガスG1とを接触させること、
を可能にするように配置された前記接触供給流導入口(1pu)並びに/又は前記再循環導入口(1pru)及び前記ガス導入口(1gu)、
・濃縮リン酸(1pd)のための1つ以上の排出口;
(C)前記燃焼ガスを前記燃焼室(2)から排出するための前記排出口に連結されている一端(6u)を、前記ガス/酸接触器(1)への燃焼ガス導入口(1gu)に連結されている端部(6d)に連結する燃焼ガス流体接続部(6);
(D)
・前記ガス/酸接触器(1)の濃縮リン酸(1pd)の前記排出口に、又は
・濃縮リン酸(1pd)の排出口に連結されている第1の流体接続部(3)を有する分岐点(5)に、
・前記燃焼室(2)への前記濃縮リン酸導入口(2pu)に連結された下流端(3d)に、連結された上流端(3u)を連結する第1の噴霧流体接続部(3p):
を含む、請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法に従ってポリリン酸p3を製造するための装置において、追加的に
(E)
・前記ガス/酸接触器(1)の再循環された濃縮リン酸(1rd)の排出口に、又は
・第1の流体接続部(3)を有する分岐点(5)に、
・連結されている下流端(3r)に、
・前記ガス/酸接触器(1)の前記再循環導入口(1pru)に、又は
・前記ガス/酸接触器に前記接触器供給溶液P0を供給する接触供給流接続部(3a)に、連結された、上流端を連結する再循環流体接続部(3、3r);並びに
(F)前記噴霧流体接続部(3p)を流れる噴霧重量流量Qpと、噴霧重量流量Qp及び前記再循環流体接続部(3r)を流れる再循環重量流量Q2の合計として定義される総流量重量(Qp+Q2)との間の比率(Qp/(Qp+Q2))を、50%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2.5%未満の値に制御及び維持するための手段において、前記比率Qp/(Qp+Q2)が0.1%超、好ましくは0.5%超の値である手段;
を含むことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸溶液からのポリリン酸(=PPA)の製造方法及び製造装置に関する。本発明の方法は特に有効であり、一方では市場で現在入手可能なものよりも高い濃度でPPA溶液を製造することを可能にし、他方では市場で現在入手可能なものに匹敵する濃度の前記ポリリン酸溶液の製造に必要なエネルギー消費量を低減することを可能にする。本発明により、プロセスによって生成する燃焼ガスを大気中に放出する前によりよく管理することができる。最後に、本発明により、特に高濃度のポリリン酸溶液を製造することができる。
【背景技術】
【0002】
ポリリン酸(=PPA)は、特にリン酸から製造できる粘性のある液体である。これは、ファインケミストリーやポリマーの分野、製薬産業、石油化学産業、又は様々な化学品の製造における脱水剤としての用途を有している。PPAの一般式はHO[P(OH)(O)O]
nH(n>1)である。n=2の場合にはPPAはピロリン酸として一般に知られており、n=3の場合にはトリポリリン酸という用語が一般的に使用されている。n>3の場合には、使用される用語はnの値にかかわらず単にポリリン酸である。n=1の場合には、オルトリン酸の式を見ることになる。PPAは、特に、化学式(1)に従って、オルトリン酸H
3PO
4の脱水及び重縮合によって製造することができる。このようにしてポリリン酸水溶液が得られ、その化学種の分子量分布は特に重縮合温度(=Tpc)に依存する。
【0003】
ポリリン酸は、一般的には直鎖の形態で存在する。しかしながら、メタリン酸型の環状形態、実際には分岐形態さえも存在し得る。
図1に示すように、重縮合温度は液体状態における平衡状態でのH
3PO
4濃度を決定し(
図1(a))、H
3PO
4濃度はnの異なる値に応じて縮合又は非縮合の分子種の重量分布を決定する(
図1(c))。したがって、約61%未満の濃度のリン酸水溶液は、ほとんどがH
3PO
4分子からなる重量分率を有することになる。すなわち、事実上H
3PO
4(又はHO[P(OH)(O)O]
nH(n=1))分子のみから構成される。濃度が増加すると、溶液は次第に重合した分子を含むようになり、
図1(c)に示すようにnの値はP
2O
5当量としての濃度と共に増加する。
【0004】
ポリリン酸を得るためのリン酸の脱水及び重縮合は、エネルギー、一般的には発熱エネルギーの寄与を必要とする水分子の蒸発を要する。欧州特許第2411325B1号明細書では、ポリリン酸の数多くの公知の製造プロセスが概説されており、また概説されているプロセスに対して新規な、優れたエネルギー効率の利点を有し環境への影響を大幅に抑制することを可能にする湿式プロセスが記載されている。この特許には、ポリリン酸製造のための非常に過酷な運転条件に対して耐性を有する装置が記載されており、それによりメンテナンスコストを抑制し、機器に耐久性を付与し、最終的に製造プロセス中の汚染がない高品質のポリリン酸を確実に製造することができる。欧州特許第2411325B1号明細書に記載されているプロセスは、
・高温の燃焼ガスの形成を伴う重縮合によってポリリン酸の溶液を形成するために、燃焼室の上部に位置する炎の中に接触器供給溶液P0を噴霧する段階、
・ポリリン酸溶液と高温燃焼ガスを分離する段階、及び
・溶液を炎の中に噴霧する段階の前に、このように分離された高温ガスを接触器供給溶液P0と共にガス/酸接触器の中で接触させる任意選択的な段階、
を含む。
【0005】
ガス/酸接触器の中で高温ガスを接触器供給溶液P0と接触させる段階からはいくつかの利点が生じる。まず第1に、接触器供給溶液P0は、炎の中に噴霧する段階の前に溶液からの水の蒸発によって結果として予熱及び濃縮され、これは、燃焼室内での重縮合中のエネルギー要件を大幅に低減する。続いて、燃焼ガスは、接触器供給溶液P0との接触中に交換することによりリン酸液滴又は蒸気を含むことができ、これにより噴霧段階の前に濃度を増加させ、結果として濃縮リン酸溶液を形成することができる。「濃縮リン酸溶液」という用語は、5%~80%のP2O5を含むリン酸溶液のことであると理解される。最後に、接触段階は、排出される前の燃焼ガスの温度の低下に寄与する。
【0006】
本発明は、欧州特許第2411325B1号明細書に記載のプロセスの改良であり、このプロセスによって得られる利点を維持し、エネルギー消費を減らしながらも、収率を大幅に増加させる。更に、本発明の方法は、86%のP2O5よりもはるかに高い濃度で、これまで達成されていなかった濃度及び純度でポリリン酸溶液を製造することを可能にする。本発明及びその利点は、以降の段落で更に詳しく説明される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、添付の独立請求項に記載されている。好ましい変形形態は従属請求項に規定されている。具体的には、本発明は、以下の段階を含むポリリン酸P3の製造方法に関する:
(a)0%~70%のP2O5重量濃度xp0を示すリン酸供給溶液P0の接触器供給流F0を、ガス/酸接触器に導入する段階、
(b)ガス/酸接触器に、再循環された濃縮リン酸溶液P2の再循環流F2を導入する段階、
(c)ガス/酸接触器に燃焼ガスG1を導入する段階、
(d)
・xp0よりも大きい重量濃度xp1(xp1>xp0)を含む濃縮リン酸溶液P1、
を一方で形成し、
・接触済燃焼ガスG3、
を他方で形成するために、接触器供給流F0、再循環流F2、及び燃焼ガスG1を接触させる段階、
(e)接触済燃焼ガスG3を濃縮リン酸溶液P1から分離し、その後、
・接触済燃焼ガスG3をガス/酸接触器から排出し、
・濃縮リン酸溶液P1をガス/酸接触器から取り出す、
段階、
(f)前記濃縮リン酸溶液P1から、
・一方で段階(b)で定義した通りにガス/酸接触器(1)に導入するために、再循環された濃縮リン酸溶液P2の再循環流F2を、
・他方で燃焼室に導入するための濃縮リン酸溶液P1の噴霧流Fpを、
形成する段階、
(g)
・水を蒸発させて混合溶液Pmを濃縮するために、
・リン酸混合溶液Pmの分子を重合してポリリン酸溶液P3を形成するために、及び
・燃焼ガスG1を形成するために、
・一方で濃縮リン酸溶液P1、及び
・任意選択的には、他方で少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%の重量濃度xdのリン酸直送供給水溶液Pdの直送供給流Fd、
により形成された、接触器供給流F0の濃度よりも高い重量濃度xpmを有するリン酸混合溶液Pmの混合流Fmを燃焼室の上部の燃焼炎を通して噴霧する段階、
(h)ポリリン酸溶液P3を燃焼ガスG1から分離し、
・ポリリン酸溶液P3を回収し、
・段階(c)で定義した通りにガス/酸接触器(1)の中に燃焼ガスG1を移送する段階。
【0008】
本発明の好ましい変形形態では、接触器供給溶液P0は、少なくとも54%、好ましくは少なくとも58%、更には少なくとも60%のP2O5の濃度xp0を含む。燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される接触器への接触器供給溶液P0の流量Q0は、好ましくは100~3000kg/(hMW)、好ましくは500~2500kg/(hMW)である。
【0009】
濃縮リン酸溶液P1は、再循環されたリン酸溶液P2と同一であり、好ましくは5%~80%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも62%、更には少なくとも65%のP2O5濃度xp1を含む。燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される接触器から出る溶液P1の総流量Q1=(Qp+Q2)は、好ましくは600~123000kg/(hMW)、好ましくは1000~50000kg/(hMW)である。噴霧流Fpの重量流量Qpと総重量流量(Qp+Q2)との間の比率Qp/(Qp+Q2)は、好ましくは50%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2.5%未満であり、この比率Qp/(Qp+Q2)は0.1%より大きく、好ましくは0.5%より大きい。
【0010】
リン酸の直送供給溶液Pdは、20%~80%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも62%、更には少なくとも65%のP2O5濃度xpdを含み得る。燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される燃焼室への直送供給溶液Pdの流量Qdは、好ましくは0~1500kg/(hMW)、好ましくは400~1000kg/(hMW)である。
【0011】
本発明の変形形態では、供給溶液P0は、少なくとも40%のP2O5、好ましくは少なくとも50%又は少なくとも54%、より好ましくは少なくとも58%、更には少なくとも60%のP2O5を含み得る。
【0012】
本発明の別の変形形態では、供給溶液P0は、40%未満のP2O5、好ましくは30%未満又は20%未満、より好ましくは5%未満、更には0%のP2O5を含み、直送供給溶液Pdの流量はQdは、好ましくはゼロではない。
【0013】
混合溶液Pmは、15%~80%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、更には少なくとも75%のP2O5の濃度xpmを含み得る。直送供給溶液Pdの流量Qdは好ましくはゼロではない。燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される燃焼室内の混合溶液Pmの流量Qmは、好ましくは600~3000kg/(hMW)、好ましくは900~2000kg/(hMW)である。
【0014】
ポリリン酸溶液P3は、少なくとも76当量%のP2O5単位、好ましくは80%超、特に好ましくは88%超、又は好ましくは76%~90%、より好ましくは86%~88%のP2O5単位の濃度xp3を含み得る。燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される燃焼室におけるポリリン酸溶液P3の流量Q3は、好ましくは240~1500kg/(hMW)、好ましくは600~3000kg/である(hMW)。
【0015】
供給流F0と再循環流F2は、
・接触器供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流れを形成するために、ガス/酸接触器に導入される前に混合されてもよく、或いは
・接触器供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流れを形成するために、ガス/酸接触器に別々に導入された後に接触させられてもよい。
【0016】
同様に、直送供給流Fd及び噴霧溶液流Fpは、
・燃焼室内の炎に噴霧される前に混合流Fmを形成するために混合される、又は
・炎の中で又は炎に到達する直前に混合流Fmを形成するために、燃焼室に別々に噴霧される。
【0017】
段階(d)における接触器供給流F0及び再循環流F2と燃焼ガスG1との間の接触は、ガス/酸接触器の上部から下部に向かって流れることにより、並流又は向流、好ましくは並流で行うことができる。接触段階(d)中、ガス/酸接触器に導入される燃焼ガスG1の重量流量Qg1と、ガス/酸接触器に導入される接触供給流F0及び再循環供給流F2の量の総重量流量(Q0+Q2)との間の比率(Qg1/(Q0+Q2))は、好ましくは0.1%~50%、好ましくは0.5%~10%、より好ましくは1%~7%である。
【0018】
本発明は、
(A)以下を示す燃焼室:
・噴霧された形態の濃縮リン酸溶液P1をある流量で燃焼ユニットに導入することを可能にする燃焼室の濃縮リン酸導入口、
・噴霧された形態の直送供給溶液Pd又は直送供給溶液Pdと濃縮リン酸溶液P1との混合物の燃焼ユニットへの導入を可能にする、燃焼室に又は濃縮リン酸導入口の上流に直送供給するための導入口、
・燃焼室の上部に配置されており、燃料の燃焼によって少なくとも1500℃の温度を有する炎を形成することができる燃焼ユニットにおいて、
○バーナー、
○炎への供給を可能にする、バーナーと、一方では酸素源、他方では燃料源との間の流体接続部、
を含む燃焼ユニット、
・濃縮リン酸導入口の下流にそれ自体配置されている燃焼ユニットの下流に配置されている、液相を回収するための燃焼室からのポリリン酸の排出口、
・炎に起因する燃焼ガスG1の排出のための排出口;
(B)以下を示すガス/酸接触器:
・接触器供給溶液P0の接触供給流量Q0での導入を可能にする、接触器供給溶液P0の供給源に接続された接触供給流導入口、
・ガス/酸接触器への、流量Qg1での燃焼ガスG1の導入を可能にする燃焼ガス導入口、・再循環流量での再循環された濃縮リン酸溶液P2の導入を可能にする、接触供給流導入口と同じ又は異なる再循環導入口、
・
○一方で接触器供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流れを形成するために、接触供給流F0と再循環流F2とを接触させること、
○他方でこのようにして形成された混合物と燃焼ガスG1とを接触させること、
を可能にするように配置された接触供給流導入口並びに/又は再循環導入口及びガス導入口、
・濃縮リン酸のための1つ以上の排出口;
(C)燃焼ガスを燃焼室から排出するための排出口に連結されている一端を、ガス/酸接触器への燃焼ガス導入口に連結されている端部(6d)に連結する燃焼ガス流体接続部;
(D)
・ガス/酸接触器の濃縮リン酸の排出口に、又は
・濃縮リン酸の排出口に連結されている第1の流体接続部を有する分岐点に、
・燃焼室への濃縮リン酸導入口(2pu)に連結されている下流端に、
連結された上流端を連結する第1の噴霧流体接続部:
を含む、上述した方法によるポリリン酸P3の製造のための装置において、追加的に
(E)
・ガス/酸接触器(1)の再循環された濃縮リン酸(1pd)の排出口に、又は
・第1の流体接続部(3)を有する分岐点(5)に、
・連結されている下流端(3r)に、
・ガス/酸接触器(1)の再循環導入口(1pru)に、又は
・ガス/酸接触器に接触器供給溶液P0を供給する接触供給接続部(3a)に、
連結された、上流端を連結する再循環流体接続部(3、3r);並びに
(F)噴霧流体接続部(3p)を流れる噴霧重量流量Qpと、噴霧重量流量Qp及び再循環流体接続部(3r)を流れる再循環重量流量Q2の合計として定義される総流量重量(Qp+Q2)との間の比率(Qp/(Qp+Q2))を、50%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2.5%未満の値に制御及び維持するための手段において、比率Qp/(Qp+Q2)が0.1%超、好ましくは0.5%超の値である手段;
を含むことを特徴とする装置にも関する。
【0019】
本発明の様々な態様を以下の図面に示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、液相(パート(a))と気相(パート(b))の平衡状態における沸点とP
2O
5濃度との間の関係、及びP
2O
5の濃度と様々なnの値に応じた分子種の存在の重量分布(パート(c))を示すグラフである。
【
図2】
図2は、本発明による装置の変形形態を示す。
【
図3】
図3は、本発明のプロセスを例示するパラメータの選択の値である。
【
図4】
図4は、本発明による装置の変形形態を示す。
【
図5】
図5は、本発明による装置の変形形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図2~
図5は、プロセス、及び前記プロセスを実行することを可能にする装置の非網羅的な変形形態を示している。以降で、文字「F」で表されている「流れ」という用語は、一般的に受け入れられている流体の流れの解釈で使用されている。
図3のみが文字「F」で流れを示している。装置を示す他の図は、
図3の流れ「F」に対応する流量「Q」を示している。装置を図示する他の図面は、
図3の流れ「F」に対応する流量「Q」を示している。「Q」という文字で表される「流量」という用語は、単位時間あたりの流れの重さを特徴付け、[kg/s]又は[kg/h]で表される。したがって、「流量」という用語は、単独で使用される場合であっても重量流量を定義している。
【0022】
規定及び定義
本特許において別段の記載がない限り、濃度という用語は、重量濃度(重量パーセント、w/o)を表すために使用される。主に関係する化学種の含有量を定義するために、リン酸溶液又はその他の濃度に言及する場合、「%eq.P2O5」又は「%P2O5」と記載されるP2O5当量の単位として表される重量基準の含有量を理解すべきである。例えば対象の複数の化学種が、運転条件に応じて、気体又は液体の形で(例えば液滴の同伴によって)、実際には更に場合によっては固体形態(煙)で共存し得る燃焼ガスなどのガス流に関しては、これらの流れの中の濃度は、P2O5当量の単位(重量基準、w/o)としても表される。本明細書では、関係する化学種のイオン解離は考慮されていない。なお、リン酸溶液の濃度は、場合によってはH3PO4当量の単位で表すこともできる。2つの濃度単位間の対応関係は、次の関係式によって定義される:1当量のP2O5=0.7245当量のH3PO4。
【0023】
本明細書では、次の表現は以下の意味を有すると理解される:
- 「リン酸溶液」、HO[P(OH)(O)O]
nH(n≧1)を含有する水溶液;
- 「オルトリン酸」、圧倒的にHO[P(OH)(O)O]
nH(n=1)を含有する水溶液、すなわちP
2O
5を61重量%未満含有するリン酸水溶液;
- 「ポリリン酸溶液」(=PPA)、主にHO[P(OH)(O)O]
nH(n>1)を含有する水溶液、すなわちP
2O
5を76重量%より多く含有するリン酸水溶液;
- 「リン酸又はオルトリン酸の重縮合」、以下の式(1)及び/又は(2)で表されるとみなされる分子の重縮合;
- 「リン含有水溶液」、オルトリン酸又はポリリン酸タイプの化学種の形態で溶解しているリンを含有する溶液。これらの溶液のP
2O
5含有量に応じて、
図1(c)で表されるようにオルト-又はポリリン酸化学種が存在し得る。これらの化学種は、イオン形態で存在することができる。
【0024】
プロセス-ガス/酸の接触
本発明の方法は、以下の流れをガス/酸接触器(1)の中に導入することを含む。
・供給流量Q0の接触器供給溶液P0の供給流F0。供給溶液P0は、0重量%~70重量%のP
2O
5の重量濃度xp0のリン酸水溶液である。本発明の変形形態では、溶液P0は水である。この場合、ポリリン酸P3の製造には、直送供給溶液Pdと呼ばれる、P
2O
5を含む別のリン酸供給源が必要とされる。この製造については、以下のセクション「プロセス-重縮合」で説明する。本発明の変形形態では、溶液P0はリン酸溶液であり、P
2O
5(xp0>0)を含む。例えば、接触供給溶液P0は、少なくとも40%のP
2O
5、好ましくは少なくとも50%、更には少なくとも54%又は少なくとも58%、より好ましくは少なくとも60%、更には少なくとも65%のP
2O
5の濃度xp0を含み得る。供給溶液P0は通常62%未満のP
2O
5を含むが、特にリン酸の直送供給溶液Pdの供給源がない場合には、より高濃度の供給溶液はいかなる形であってもプロセスを妨げない(セクション「プロセス-重縮合」を参照)。そのような濃度においては、供給溶液P0は主に水溶液中のオルトリン酸H
3PO
4から形成される(
図1(c)を参照)が、縮合した分子(n>1)を含み得る。
・接触器内の溶液P0の流量Q0は、燃焼室の公称出力単位[MW
-1]により表され、好ましくは100~3000kg/(hMW)、好ましくは500~2500kg/(hMW)である。
・以降で詳しく定義する、再循環された濃縮リン酸溶液P2の再循環流F2。接触器内の再循環された濃縮リン酸溶液P2の流量Q2は、燃焼室の公称出力単位[MW
-1]により表され、300~120000kg/(hMW)、好ましくは600~100000kg/(hMW)、好ましくは9000kg/(hMW)~90000kg/(hMW)であってもよい。再循環された濃縮リン酸溶液P2の再循環流F2は、供給流F0と、前のサイクルの再循環された濃縮リン酸溶液P2の再循環流F2との混合物を燃焼ガス流G1と接触させた結果物である。
・燃焼室内の接触供給流F0の濃度よりも高い重量濃度xpmを含むリン酸溶液Pmの混合溶液の混合流Fmの重縮合中に形成された燃焼ガス流G1。これらの2つの流れについては、以降で詳しく記載及び説明する。燃焼ガス流G1は、燃焼室からガス/酸接触器に向かって運ばれる、液滴又は蒸気の形態の様々なリン含有分子を含む。例えば、燃焼ガスの流れG1は、0.5%~40%のP
2O
5を含み得る。
【0025】
結果として、供給流F0及び再循環流F2及び燃焼ガスG1は、一方で濃縮リン酸溶液P1を、他方では接触済燃焼ガスG3を形成するために、ガス/酸接触器内で互いに接触させられる(したがって直接ガス/酸接触器について述べる)。
【0026】
図2及び
図4に示されている好ましい変形形態では、接触器供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流れを形成するために、供給流F0及び再循環流F2がガス/酸接触器に導入される前に混合される。このためには、流れF2を移送する再循環パイプ(3r)と、ガス/酸接触器(1)の導入口(1pu)の上流に流れF0を移送する供給パイプ(3a)とを連結すれば十分である。再循環パイプ(3r)と供給パイプ(3a)の圧力は、液体が2つの連結されたパイプの一方に逆流しないように制御しなければならない。
図2は、再循環パイプ(3r)に連結されている供給パイプ(3a)を示しており、
図4は供給パイプ(3a)に連結されている再循環パイプ(3r)を示している。2つの構成において、燃焼ガスG1は、ガス/酸接触器(1)への混合物の導入後にこのようにして形成された溶液の流れの混合物(F0+F2)と接触させられる。
【0027】
図3及び5に示されている別の変形形態では、供給流F0と再循環流F2は、ガス/酸接触器の中に別々に導入された後、接触器供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流れを形成するために接触させられる。したがって、リン酸の流れF0及びF2と燃焼ガスG1の流れは、全てガス/酸接触器の中で接触させられる。これは、再循環流F2の導入口(1pru)から分離された供給流F0の導入口(1pu)をガス/酸接触器に設けることで十分である。
【0028】
供給流F0及び再循環流F2又はそれらの混合物(F0+F2)と燃焼ガスG1との間のガス/酸接触器中での接触は、並流又は向流での流れの接触によって行うことができる。特に、液相は重力方向に下向きに流れ、気相は上向きに上昇する。好ましい変形形態では、2つ又は3つの流れは、ガス/酸接触器の上部から下部に向かって並流で流れる。本発明の文脈において、「上向き」及び「下向き」という用語は、地球の重心方向に延びる地球の重力の方向に沿って理解される。したがって、圧力勾配がない場合には、液体は反応器の上部から下部に向かって自然に流れ、これは地球重力の方向に従って上部の下流にある。
【0029】
リン酸の流れを横切る流れに燃焼ガスを導くことにより、燃焼ガスG1を、供給流、並びにリン酸再循環流F0及びF2又はそれらの混合物(F0+F2)と接触させることも可能である。しかしながら、並流により接触させることが好ましい。
【0030】
供給流F0と、再循環流F2又はそれらの混合物(F0+F2)と、燃焼ガスG1との間の接触は、濃縮リン酸溶液P1及び接触済燃焼ガスG3を形成する。この接触は、運転条件に耐える充填材に流れを通すことによって行うことができる。燃焼ガスG1と供給流F0及び再循環流F2との間の接触中に、交換が行われる。一方で、液滴及び/又は蒸気の形態で燃焼ガスによって移送されたリン含有分子は、流れF0及びF2によって運ばれて、流れF0及びF2のそれぞれのP
2O
5含有量以上のP
2O
5含有量を特徴とする濃縮リン酸溶液P1の形成を可能にする。他方で、熱交換器への供給は、
図3に示されているような500~600℃程度の温度Tg1の高温燃焼ガスの間で、より低い温度である流れF0及びF2の水溶液に行われる。したがって、接触済ガスG3の温度はTg3<Tg1であり、大気への放出を目的としたその後の処理を促進する。それと同時に、濃縮リン酸溶液P1は、溶液P0とP2との混合物の温度よりも高い温度T1である。T1は、供給溶液P0の温度T0(20~200℃程度であってもよい)よりも高く、再循環ループ(3r)の2つの端部は同じ溶液であるため、再循環された濃縮リン酸溶液P2の温度T2に実質的に等しい。
【0031】
リン酸の供給流及び再循環流F0及びF2を燃焼ガスG1と接触させる操作の後に形成される濃縮リン酸溶液P1及び接触済燃焼ガスG3は、重力分離器又は遠心分離機、コアレッサー、ミストエリミネーター、マット、バッフルなどの当業者に周知の分離手段によって分離される。その後、接触済燃焼ガスG3は、前記ガス/酸接触器に導入された接触済燃焼ガスG3の温度よりも大幅に低い温度での後続の処理のためにガス/酸接触器(1)から排出される。燃焼ガス流G1に含まれるリンの大部分は、流れG1と流れF0及びF2との接触中に濃縮リン酸溶液P1の流れF1に移動するため、接触ガス流G3は、1%未満のP2O5含有量の場合がある燃焼ガス流G1よりもはるかに少ないP2O5しか含まない。
【0032】
接触済燃焼ガスG3は、ガス/酸接触器から出た後、望ましくない化合物(例えばフッ素、塩素、又は硫黄化合物など)を溶解及び除去するために、大気にガスが放出される前に水性洗浄溶液で洗浄されてもよい。例えば、間接式凝縮器中でのガスの凝縮などの、接触済燃焼ガスG3の他の処理も可能である。接触済燃焼ガスG3とは別に、濃縮リン酸溶液P1も、ガス/酸接触器から取り出される。
【0033】
プロセス-流れF1、及び流れFpとF2への分割
濃縮リン酸溶液P1は、5%~80%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも62%、更には少なくとも65%のP2O5濃度xp1を含み得る。濃縮リン酸溶液P1の濃度は、当然、供給溶液P0の濃度と燃焼ガス流G1の濃度に依存する。以下で説明するように、噴霧溶液Ppの濃度は、通常供給溶液P0の濃度よりも高い。
【0034】
濃縮リン酸溶液P1は、ガス/酸接触器からの排出の前、最中、又は後に2つの別々の流れに分割される:
・上述した通りに供給流F0及び燃焼ガスG1と接触させるために再循環ループ(3r)を介してガス/酸接触器(1)に導入するための、再循環された濃縮リン酸溶液P2の再循環流F2、並びに
・燃焼室(2)に導入するための噴霧溶液Ppの噴霧流Fp。
【0035】
噴霧溶液Pp及び再循環された濃縮リン酸溶液P2は、それらがガス/酸接触器の中で形成された時点と、2つの別々の流れである再循環流F2と噴霧流Fpへの分割との間に有害な変化を受けていないため、互いに組成が同一であり、また濃縮リン酸溶液P1と同一である(P1=Pp=P2)。溶液Pp及びP2の温度Tp、T2も、溶液P1の温度T1と実質的に同一であり、これは120~400℃程度であってもよい。溶液Pp及びP2は、好ましくは、定常条件下で、接触器供給溶液P0よりも大きいP2O5単位の当量の値を含む。これは2つの主な理由により説明される。
【0036】
第1に、リン酸の供給流及び再循環流を、500~600℃程度のより高い温度Tg1である燃焼ガスG1と接触させると(
図3参照)、リン酸溶液P0とP2の水相に含まれる水の一部の蒸発が生じ、事実上P
2O
5濃度が増加する。
【0037】
第2に、後に説明するように、特に燃焼室における噴霧溶液Ppの噴霧流Fpの重縮合中に形成される燃焼ガスG1は、液滴形態又は蒸気形態のP
2O
5を含む。燃焼ガスG1は、0.5%~40%、好ましくは1%~30%、好ましくは2%~25%、又は5%~20%のP
2O
5を含み得る(
図3参照)。溶液P0の供給流及び再循環流と、再循環された濃縮リン酸溶液P2との接触中に、これらの分子の大部分は、燃焼ガスから酸溶液の混合物(P0+P2)に移動する。接触後、接触済燃焼ガスG3は、接触前よりもはるかに少ないリン含有分子、通常0.1%未満のP
2O
5を含む(
図3を参照)。この分子の酸混合物への移動により、後者のP
2O
5濃度が増加する。
【0038】
本発明の変形形態では、濃縮リン酸溶液P1は、
図2に示されているように、ガス/酸接触器の排出口で、それぞれ噴霧流体接続部(3p)と再循環流体接続部(3r)への2つの流れ、噴霧流Fpと再循環流F2に分割される。各流体接続部(3p)及び(3r)は、流量及び燃焼室(2)への噴霧流量Qpでの噴霧流れFpを提供するために、及びガス/酸接触器への流量Q2での再循環流F2を同伴するために、ポンプ系(4、4r)を備えており、結果として再循環ループが形成される。
【0039】
代替の変形形態では、濃縮リン酸溶液P1は、ガス/酸接触器から第1の流体接続部(3)又は(3u)の中へと取り出され、これは共有されて、一方では噴霧流Fpを流量Qpで燃焼室(2)に同伴する噴霧流体接続部(3p)を有し、他方で再循環流F2を流量Q2でガス/酸接触器に同伴する再循環流体接続部(3r)を有する「T字形」又は「Y字型」の分岐点(5)に分割され、結果として再循環ループが形成される。分岐点(5)を含むこの構成の様々な変形形態が
図3~5に示されている。噴霧流量Qp及び再循環流量Q2は、1つ以上のバルブによって(
図3及び4を参照)、分岐点(5)の各分岐上のポンプ(4、4r)によって(
図5を参照)、及び/又は望みの流量が得られるようなバランスがとられた噴霧パイプ(3p)と再循環パイプ(3r)の部分によって、又は2つの供給流間で流れを分配するために工業的によく知られており使用されている任意の他の手段(例えば調節又は未調節のバルブのセット有するT型又はY型のパイプ)によって、供給することができる。
【0040】
濃縮リン酸溶液P1は、総流量Q1=(Qp+Q2)で接触器から出る。燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される総流量Q1は、好ましくは600~123000kg/(hMW)又は1000~120000kg/(hMW)、好ましくは12000~100000kg/(hMW)である。上で説明したように、濃縮リン酸P1の流れF1は、2つの流れFpとF2に分割され、それぞれが噴霧流量Qpと再循環流量Q2を有する。2つの流れへの分割は、ガス/酸接触器からの出発前、ガス/酸接触器からの出発時点、又は出発後に行うことができる。噴霧流量Qp及び再循環流量Q2は、特に、燃焼室及びガス/酸接触器の容量、燃焼ガスG1の温度、及びそれらのP2O5含有量に応じて決定する必要がある。
【0041】
定常的な製造状態では、噴霧流Fpの重量流量Qpと濃縮リン酸流F1の総重量流量(Qp+Q2)との間の比率Qp/(Qp+Q2)(F1は実際は噴霧流Fpと再循環流F2の合計である)は、好ましくは50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満である。本発明の好ましい変形形態では、比率Qp/(Qp+Q2)は、5%未満、好ましくは4%未満、より好ましくは2.5%未満、更には2%未満である。比率Qp/(Qp+Q2)は、好ましくは0.1%よりも大きく、又は0.2%よりも大きく、好ましくは0.5%よりも大きい。流量Qpに対して流量Q2を増加させることは、一方では、燃焼ガスG1をそれらの排出前に必要なより低い温度へと冷却することを可能にし、他方では、濃縮リン酸溶液PpにおいてP2O5を更に濃縮することを可能にする。
【0042】
再循環流F2の重量流量Q2と総重量流量(Qp+Q2)との間の比率Q2/(Qp+Q2)は、当然比率Qp/(Qp+Q2)の補数であり、その合計は100%になる。したがって、再循環流量Q2は、好ましくは噴霧流量Qp以上であり、いくつかの好ましい変形形態では、これは0.1/99.9~49/51(=0.1%~96%)の範囲の流量比率Qp/Q2でありQpよりも大幅に大きい。好ましくは、流量比率Qp/Q2は1/99~5/95(=1%~5.3%)である。
【0043】
上述したように、接触器内の再循環された濃縮リン酸溶液P2の流量Q2は、燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表され、300~120000kg/(hMW)、好ましくは600~110000kg/(hMW)、好ましくは9000~90000kg/(hMW)であってもよい。したがって、燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される燃焼室に流れる噴霧溶液Ppの流量Qpは、300~3000kg/(hMW)、好ましくは600~2000kg/(hMW)、好ましくは1000~1500kg/(hMW)であってもよい。
【0044】
プロセス-流れFp、Fd、及びFm
接触供給流F0の濃度よりも高い重量濃度xpmを有する混合溶液Pmの混合流Fmは、
・水を蒸発させ、その結果混合溶液Pmを濃縮するために、
・重合によりポリリン酸P3を得るために、及び
・燃焼ガスG1を形成するために、
燃焼室(2)の上部の燃焼炎を通して噴霧される。
【0045】
混合流Fmは、少なくとも燃焼室(2)に導入される噴霧流Fpによって形成される。好ましい変形形態では、混合流Fmは、一方では噴霧流Fpから、他方ではリン酸の直送供給溶液Pdの直送供給流Fdから形成される。
【0046】
直送供給流Fdを含む変形形態では、直送リン酸供給溶液Pdは、少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%の濃度xdを含む。好ましくは、濃度xdは、20%~80%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも62%、更には少なくとも65%のP2O5である。燃焼室内の公称出力単位[MW-1]により表される燃焼室内の直送供給溶液Pdの流量Qdは、好ましくは0~1500kg/(hMW)、好ましくは100~1000kg/(hMW)、好ましくは400~700kg/(hMW)である。流量Qd=0kg/(hMW)は、当然直送供給流Fdを含まない本発明の変形形態に対応する。直送供給溶液Fdの温度は、20~200℃、好ましくは40~150℃、より好ましくは50~100℃であってもよい。溶液Fdの予熱は、炎の中での混合溶液Fmの燃焼の有効性の点で有利である。
【0047】
定常製造状態では、噴霧流Fpの流量Qpと供給流F0の流量Q0との間の比率Qp/Q0は、好ましくは100%~250%、好ましくは101%~140%、好ましくは110%~115%である。気液接触器における流れQ0及びQ2と燃焼ガスとの接触が気液接触器から出る流れF1の重量を増加させるため、この比率は100%より高くなり得る。直送供給流量Qdの値が増加すると、この比率の値は減少し得る。
【0048】
噴霧流量Qpと直送供給流量Qdの合計に対する直送供給流量Qdの流量比率Qd/(Qp+Qd)は、燃焼室に入る直送供給溶液Pdの流量割合を表す。この比率の値は、特に供給溶液P0のP2O5含有量に依存し、これは、噴霧溶液PpのP2O5含有量を決定する。
【0049】
供給溶液P0が少なくとも40%のP2O5、好ましくは少なくとも50%、又は少なくとも54%、より好ましくは少なくとも58%、更には少なくとも60%のP2O5を含む場合、噴霧溶液の濃度は高く、流量の比率Qd/(Qp+Qd)を低くすることができる。つまり、直送供給溶液Pdの寄与を低くすることができ、実際にはゼロにさえもすることができる。例えば、比率Qd/(Qp+Qd)は、0%~50%、好ましくは5%~30%、又は10%~20%であってもよい。
【0050】
供給溶液P0が40%未満のP2O5、好ましくは30%未満又は20%未満、より好ましくは5%未満、更には0%のP2O5を含む場合、噴霧溶液のP2O5濃度は低く、実際にはゼロでさえある。その後、P2O5の含有量が0%(=水)の場合には、直送供給溶液を流量Qdで炎に導入することにより混合溶液Pmの重量濃度を増加させることが有利な場合があり、実際には必須な場合さえある。その後、比率Qd/(Qp+Qd)は、好ましくは40%~99%、より好ましくは50%~90%、又は60%~75%である。接触供給溶液P0が0%~49%、好ましくは1%~45%、より好ましくは最大40%、実際には更には最大20%、更には最大10%のP2O5濃度xp0を含む場合が好ましく、その場合、直送供給流量Qdは好ましくはゼロでない。
【0051】
流量Qd>0の場合、直送供給流Fdは、炎の中で直接又はその上流で混合流Fmを形成するために、炎の中に直接噴霧することができる。或いは、直送供給流は、2つの流れの混合物Fmを燃焼室に導入する前に、噴霧流Fpと予備混合することができる。1つ目の場合、燃焼室は、直送供給流Fdを導入するための別々の導入口を含むことになる。2つ目の場合、噴霧流Fpと直送供給流Fdの間の混合は、濃縮リン酸の導入口(2pu)の上流で行われることになる。接触器に導入される供給流F0の流量に対する燃焼室に導入される直送供給流Fdの流量の比率は、上述した通りである。
【0052】
比率Qd/(Qp+Qd)の値とは無関係に、混合溶液Pmは、好ましくは20%~80%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、更には少なくとも75%のP2O5濃度xpmを含む。燃焼室内の溶液Pmの流量Qmは、噴霧流量Qpと直送供給流量Qdの合計である。燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される混合物の流量Qmは、好ましくは600~3000kg/(hMW)、好ましくは900~2000kg/(hMW)である。
【0053】
プロセス-重縮合
混合溶液Pmの炎の中での燃焼は、溶液Pmに含まれるリン酸分子の重縮合によりポリリン酸溶液P3を形成し、燃焼ガスG1を形成する。
【0054】
図1(a)のグラフによって示されるように、この溶液で得られるP
2O
5濃度は、炎の中でポリリン酸溶液P3が到達する温度に依存するため、炎の中でポリリン酸溶液P3が到達する温度はプロセスの重要なパラメータである。期待されるP
2O
5濃度を得るために、及び確実にポリリン酸へ変換するために、必要とされる重縮合温度Tpcで十分な滞留時間の間、混合溶液Pmを炎及び燃焼ガスと接触させ続けることも重要である。
【0055】
炎には、燃料及び酸素供給源、典型的には空気が、或いはより高温のためには酸素が供給される。炎は、好ましくはわずかに酸化性の炎であり、好ましくは1体積%~5体積%、好ましくは2体積%~3体積%の過剰空気である。燃料は、好ましくは、気体であるか液体であるかに関わらず、天然ガス、ブタン、プロパン、又は他の任意の燃料である。混合溶液Pmの噴霧がない場合、炎は、好ましくは少なくとも1000℃、好ましくは少なくとも1500℃、より好ましくは少なくとも1700℃、例えば1800℃±50℃の理論温度に達する。本発明の方法では、一方では混合溶液Pmがより低い約50~400℃程度の温度Tmで供給されるため、他方では重縮合反応及び重縮合中に形成される溶液からの水分子の蒸発はエネルギーを消費するため、温度の上昇は瞬時に抑えられる。
【0056】
直送供給流Fdがない場合(すなわちQd=0)、噴霧溶液Ppのみが炎に噴霧される。直送供給流量Qdがゼロでない場合には、
図2及び
図5に示されているように、直送供給流Fdと噴霧溶液供給流Fpは、燃焼室内の炎に噴霧される前に、混合流Fmを形成するために混合されてもよい。或いは、
図3及び4に示されているように、2つの流れは、炎の中で又は炎に到達する直前に混合流Fmを形成するために燃焼室の中に別々に噴霧されてもよい。
【0057】
炎の中に噴霧された混合溶液は、予め規定された重縮合時間の間、少なくとも400℃、好ましくは少なくとも500℃、更には550℃を超える、実際には更には650℃又は700℃程度の重縮合温度Tpcに到達することが好ましい。高い重縮合温度Tpcにより、86%以上程度のP
2O
5単位に相当する高いP
2O
5濃度を有する、より長い鎖長n(例えばn≧5~12)のポリリン酸溶液を得ることができる(
図1(c)を参照)。リン酸の重縮合に必要な温度は、反応装置の様々な要素に対して化学的に及び熱的に耐性のある材料を要する。オルトリン酸分子とポリリン酸のポリマー鎖(m+1個の縮合単位)を含む混合溶液Pmは、上述した式(1)に従って、及び化学式(2)に従って(m≧1且つr≧1)、温度の作用下で重縮合反応を行って水を放出し、より長いポリマー鎖を形成する:
【0058】
このようにして形成されたポリリン酸溶液P3は、その後、気液分離器(9)におけるリン酸の重縮合中に形成される燃焼ガスG1から分離される。ポリリン酸溶液P3が回収される一方で、燃焼ガスG1は、上述したように、供給流F0及び再循環流F2と接触するためにガス/酸接触器(1)の中に移される。
【0059】
このようにして回収されたポリリン酸溶液P3の流れF3は、使用される重縮合温度Tpcに応じて、350~700℃、好ましくは400~650℃程度の高温を有することができる。熱交換器(11)(
図2を参照)で、溶液P3を100~200℃、例えば110~150℃、好ましくは120~130℃程度の温度まで冷却することが好ましく、これにより、溶液を液体状態に保ちながらこのように形成及び冷却されたポリリン酸を貯蔵するためのタンクの材料の選択肢を広くすることができる。
【0060】
このようにして形成及び回収されたポリリン酸P3は、混合液Pmよりも高濃度で含まれる。これは、溶液が炎を通過する際の溶液からの水の大部分の蒸発によって説明される。ポリリン酸溶液P3の濃度は、通常76%超、好ましくは80%超、特に好ましくは86%超、又は少なくとも87%、更には少なくとも88%である。これは、例えば、76%~90%、好ましくは86%~89%のP2O5であってもよい。本発明の方法により、湿式ルートで86%を超えるP2O5含有量が可能になる。
【0061】
燃焼室におけるポリリン酸溶液P3の流量Q3は、ポリリン酸P3の生産能力を表す。燃焼室の公称出力単位[MW-1]により表される流量Q3は、好ましくは240~1500kg/(hMW)、好ましくは500~1000kg/(hMW)である。
【0062】
燃焼ガスG1は、特にリン含有分子から形成され、リン含有分子は、0.5重量%~40重量%のP2O5、通常0.5重量%~35重量%のP2O5、好ましくは1重量%~30重量%、好ましくは2重量%~25重量%、又は5重量%~20重量%のP2O5で変動し得る量で存在することができる。移送された燃焼ガスG1の温度Tg1は、炎が到達し得る温度よりも大幅に低い。これは、前述したように、主に重縮合反応の水を蒸発さるために大量のエネルギーを必要とする重縮合反応中に燃焼ユニット内の温度が低下するためである。燃焼ガスは、重縮合温度Tpc程度であり通常400~700℃、好ましくは500~600℃である温度Tg1で酸/ガス接触器に入る。
【0063】
プロセス-再循環ループ及び燃焼ガス
上述したように、ガス/酸接触器(1)から出る濃縮リン酸溶液P1の再循環フラクションは、ガス/酸接触器の中に再び導入されて再循環ループを形成し、一方で噴霧フラクションPpは燃焼室(2)に移送される。再循環フラクションは、好ましくは噴霧フラクション以上であり、理想的には噴霧フラクションよりもかなり大きく、再循環流量Q2に対する噴霧流量Qpの比率Qp/Q2は、0.1/99.9~49/51(=0.1~96%)の範囲であってもよい。好ましくは、流量比率Qp/Q2は、1/99~5/95(=1~5.3%)である。
【0064】
ガス/酸接触器へのそれらの導入の間、供給流F0と再循環流F2は、
図2及び
図4に示されているように、接触供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流れを形成するために、ガス/酸接触器への導入前に混合されてもよい。或いは、流れF0とF2は、
図3及び
図5に示されているように、接触供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流れを形成するために、ガス/酸接触器の中に別々に導入された後に接触させることができる。
【0065】
再循環ループは、本発明と欧州特許第2411325B1号明細書に記載のプロセスとの間の主要な識別される要素である。そのような再循環ループを取り入れることの主な結果は、ガス/酸接触器(1)に導入される供給流F0と再循環流F2の総重量流量(Q0+Q2)に対するガス/酸接触器(1)に導入される燃焼ガスG1の重量流量Qg1の比率(Qg1/(Q0+Q2))が、そのような再循環ループがない場合よりもはるかに小さいことである。本発明による比率(Qg1/(Q0+Q2))は、好ましくは0.1%~50%、より好ましくは0.5%~20%又は10%未満であり、理想的には1%~7%である。燃焼ガスを供給流F0と接触させる(すなわち、Qg1>0、Q0>0)が、再循環流F2と接触させない(すなわちQ2=0)ことを含む欧州特許第2411325B1号明細書によるプロセスでは、比率(Qg1/Q0)は大幅に大きく、60%を超える値、通常は100%を超える値であり、これは接触器供給溶液P0の供給流量Q0よりも燃焼ガス流量Qg1が大きいことを示している。
【0066】
そのため、再循環ループにより、リン酸供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液P2の総流量(Q0+Q2)に対する燃焼ガスG1の流量の比率を制御することができる。特に、燃焼ガスと接触するリン酸溶液の重量を大幅に増加させることができる。これはいくつかの利点を有している。
【0067】
第1に、燃焼ガスG1に含まれる液滴及び/又は蒸気中のリン含有分子の、溶液P0とP2との混合物の流れへの移動がはるかに大きい。そのため、燃焼ガスとの接触中に形成される噴霧溶液のP2O5濃度は、欧州特許第2411325B1号明細書のように流量比率Qg1/(Q0+Q2)が大きい場合よりも高い。このようにして得られるよりよい気液接触は、燃焼ガスG1に含まれるリンの濃縮リン酸溶液P1によるよりよい回収を可能にする。更に、燃焼ガスG3は、流れF0及びF2との接触後、それらのP2O5成分を結果として取り除き、それらが大気に放出される前のそれらの処理を簡単にする。
【0068】
第2に、このような流量比率では、リン酸溶液の流れF0及びF2との接触後の燃焼ガスG3の温度Tg3は、欧州特許第2411325B1号明細書に記載のプロセスよりもはるかに効果的に低下し、そのため、燃焼ガスの温度を大気への放出に許容される値まで下げるために欧州特許第2411325B1号明細書のプロセスで不可欠な他の熱交換器(又は少なくとも少ない容量のもの)は必要とされない。
【0069】
装置
本発明のプロセスは、燃焼室(2)、ガス/酸接触器(1)、及び燃焼室とガス/酸接触器との間の様々な流体接続部を含む装置で実施することができる。並列又は直列に配置されている複数の燃焼室及び/又は複数のガス/酸接触器を装置が含んでいてもよいことは明らかである。
【0070】
装置-燃焼室(2)
燃焼室(2)は、混合溶液Pmを炎中に噴霧することにより混合溶液Pmの重縮合を行うことを可能にする。混合溶液Pmは、噴霧溶液Ppから形成され、適切な場合には、ポリリン酸溶液P3を形成するために直送供給溶液Pdと混合される。燃焼室の壁は、噴霧溶液Ppと直送供給溶液Pdの腐食特性と、燃焼室内に行き渡る高温に耐える必要がある。壁は、炭化ケイ素製又はアモルファスカーボン製であることが好ましい。中性ガス又はその燃焼ガスが2つの壁の間を循環する二重壁を使用することができ、これは、壁の温度、及び(ポリ)リン酸溶液に対する壁の不透過性の点で利点を有することができる。
【0071】
燃焼室(2)は、燃焼室内に1つ以上の噴霧導入口(2pu)を示し、燃焼室の上部に配置されている燃焼ユニットの中に噴霧された形態での、流量Qpでの噴霧溶液Pp、又は流量(Qp+Qd)での混合溶液Pmの導入を可能にする(
図2及び4を参照)。本発明の変形形態では、燃焼室は、噴霧導入口(2pu)とは別の流量Qdでの直接噴霧溶液Pdの導入を可能にする1つ以上の直送供給流導入口(2pdu)を含んでいてもよい(
図3及び5を参照)。燃焼室の導入口でかなりの粘度を有する場合がある噴霧溶液Pp及び/又は直送供給溶液Pd及び/又は混合溶液Pmの噴霧を最適化するために、窒素などの不活性ガスの供給が行われてもよい。
【0072】
燃焼室(2)は、酸素の存在下での燃料の燃焼によって少なくとも1000℃、好ましくは少なくとも1500℃、更には少なくとも1700℃、好ましくは1800℃±50℃の温度を有する炎を形成可能な、燃焼室の上部に配置されている燃焼ユニット(2c)を含む。炎の温度は、炎に供給する酸素の流量を変えることで制御することができる。燃焼ユニットは以下のものを含む:
・バーナー、
・炎の供給を可能にする、バーナーと、一方では酸素源、他方では燃料源(10)との間の流体接続部。バーナーへの酸素の寄与に対する燃料の寄与の比率を制御することにより、炎の温度を制御することができる。好ましくは、使用される燃料は、天然ガス、メタン、ブタン、又はプロパンから選択される。酸素源は通常は空気又は酸素である。
【0073】
このようにして形成されたポリリン酸溶液P3を燃焼ガスG1から分離するために、燃焼室(2)は気液分離器(9)を備えている。例えば、燃焼ガスは、表面積横断方向の流量を大きくすることによってポリリン酸溶液から分離することができ、その結果、流量が減少し、そのためガス流とポリリン酸流の運動エネルギーが減少する。流れが上方から下方に流れると、ガスは運動エネルギーの低下によって減速し、燃焼ガスの排出口に導くデフレクターの方に曲げることができる。密度の高さのため、ポリリン酸の液滴P3は、重力によってそれらの下向きの流れを継続する。
【0074】
燃焼室(2)には、燃焼ユニットの下流に配置される、液相を回収するための燃焼室のポリリン酸排出口(2pd)が示されており、燃焼ユニット自体は濃縮リン酸導入口(2pu)と直送供給流導入口(2pdu)の下流に配置される。「下流」という用語は、燃焼室における噴霧溶液Ppとポリリン酸溶液P3の流れの方向に対して表される。上で説明したように、流れの方向は、好ましくは、重力の方向に従って上側から下側である。したがって、装置は、このようにして製造されたポリリン酸の貯蔵タンクを備えていてもよい(図示せず)。好ましくは、装置は、貯蔵タンクに到達した際にポリリン酸溶液を約350~650℃の温度から100~150℃程度の温度まで冷却するために、ポリリン酸排出口(2pd)と貯蔵タンクとの間に配置される熱交換器(11)を含む。
【0075】
最後に、燃焼室(2)は、炎から生じる燃焼ガスG1を排出するための排出口を備えている。これらの燃焼ガスは、重縮合温度Tpc程度の温度Tg1を有しており、ガス/酸接触器の中に導入される前に冷却される必要はない。
【0076】
装置-ガス/酸接触器(2)
ガス/酸接触器(1)は、重縮合反応の収率及びエネルギー消費を最適化するために、接触器に導入される接触器供給溶液が燃焼室(2)に入る前にこれを加熱しP2O5濃度を増加させることを可能にする。
【0077】
ガス/酸接触器(1)は、接触器供給溶液P0の供給源又は接触器供給溶液P0と濃縮リン酸溶液P2との混合物の供給源に接続された供給流導入口(1pu)を示す。上述したように、接触器供給溶液P0は0%~70%のP2O5を含み、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも54%、より好ましくは少なくとも58%、更には少なくとも60%のP2O5を含む。供給流導入口(1pu)は、供給流量Q0での接触器供給溶液P0の導入、又は接触器供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物の流量(Q0+Q2)での導入を可能にするように構成される必要がある。再循環された濃縮リン酸溶液P2は、供給流導入口(1pu)から分離された再循環された濃縮リン酸P2の導入口(1pru)にも導入することができる。
【0078】
ガス/酸接触器(1)は、好ましくは直接接触器である。これは、燃焼ガスG1の排出のための排出口から生じる燃焼ガスG1のガス/酸接触器への導入を可能にする燃焼ガス導入口(1gu)を含む。流量Qg1での燃焼ガスG1の導入を可能にするために、供給流導入口(1gu)のバランスをとる必要がある。上述したように、接触器供給溶液P0と接触する燃焼ガスG1は、(a)接触器供給溶液P0の温度を上げること、(b)接触器供給溶液P0の水の一部を蒸発させること、(c)溶液P0と、燃焼ガスG1に含まれるP2O5の液滴及び蒸気とを交換すること、を可能にする。
【0079】
ガス/酸接触器(1)は、再循環導入口(1pru)を備えており、これは再循環された濃縮リン酸溶液P2の導入を可能にする。本発明の変形形態では、流れF0及びF2は、ガス/酸接触器の中に導入される前に混合され、その場合の再循環導入口は供給流導入口(1pu)と同じである。別の変形形態では、供給流導入口(1pu)と再循環導入口(1pru)は別々である。再循環導入口は、再循環された濃縮リン酸溶液P2を供給流量Q2で導入するために、バランスをとる必要がある。
【0080】
ガス導入口(1gu)、供給流導入口(1pu)、及び後者とは別個である場合の再循環導入口(1pru)は、
・一方で接触器供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液P2との混合物(P0+P2)の流れ(F0+F2)を形成するために、供給流F0と再循環流F2とを接触させること、
・他方でこのようにして形成された混合物の流れと燃焼ガスG1の流れとを接触させること、
を可能にするように配置される。
【0081】
ガス導入口(1gu)は、好ましくは、燃焼ガスG1(接触中にG2と示される)がリン酸溶液の供給流F0及び再循環流F2と並流で流れるように配置される。しかしながら、燃焼ガスが流れF0及びF2に対して逆向きに流れるようにガス導入口を配置することも可能である。
【0082】
ガス/酸接触器は、好ましくは、リン酸溶液の供給流F0及び再循環流F2が通される充填材を含む。充填材は、好ましくは、有孔支持体、例えば支持格子上に配置される。
【0083】
ガス/酸接触器(1)は、1つ以上の濃縮リン酸排出口(1pd、1prd)を含む。濃縮リン酸排出口(1pd、1prd)は、それ自体が供給流導入口(1pu)の下流に配置されるガス導入口(1gu)の下流に、及びガス導入口(1gu)とは別個である場合には再循環導入口(1pru)の下流に配置される。「下流」という用語は、ガス/酸接触器におけるリン酸供給溶液の供給流及び再循環流と再循環された濃縮リン酸溶液P2の流れの方向に対して表される。濃縮リン酸排出口(1pd、1prd)により、流れF0及びF2と燃焼ガスG1との接触によって形成されたガス/酸接触器で形成された濃縮リン酸溶液P1を取り出すことができる。
【0084】
ガス/酸接触器(1)は、燃焼ガスG1と溶液P0及びP1との間の接触後にガスから液体を分離することを可能にする気液分離器を含む。例えば、ガス/酸接触器は、ガス排出口(1gd)から出る前に、接触済燃焼ガスG3中に存在し得る液滴を回収することを可能にするデミスタを含んでいてもよい。
【0085】
ガス/酸接触器(1)は、溶液P0と溶液P2との混合物との接触後に接触済燃焼ガスG3をガス/酸接触器から排出することを可能にする燃焼ガス排出口(1gd)も含む。この装置の後に、ガス/酸接触器の燃焼ガス排出口(1gd)の下流にある接触済燃焼ガスG3の洗浄塔が続いていてもよく、これにより、大気に放出される前に、例えばガスの中に含まれ得るフッ素化合物や硫黄化合物などの存在し得る望ましくない化合物を除去することができる。
【0086】
装置は、燃焼室(2)の燃焼ガスの排出口に連結されている一端(6u)を、ガス/酸接触器(1)の燃焼ガス導入口(1gu)に連結されている端部(6d)に連結する燃焼ガス用の流体接続部(6)を備えている。この流体接続部(6)の温度は、好ましくは、ガス/酸接触器の導入口(1gu)で燃焼ガスG1が燃焼室の排出口での温度Tg1にできるだけ近い温度(すなわち約500~600℃)を有するように、できるだけ高く保つ必要がある。
【0087】
装置は、ガス/酸接触器(1)の濃縮リン酸排出口(1pd)に連結されている上流端(3u)を、燃焼室(2)の濃縮リン酸導入口(2pu)に連結されている下流端(3d)に連結する噴霧流体接続部(3p)を備えている。濃縮リン酸溶液P1は、接触器供給溶液P0よりも高い温度及びP2O5濃度を有するため、燃焼室内での重縮合の収率が改善される。燃焼ガスG1からのリン酸の供給溶液及び再循環溶液P0及びP2の混合物へのリン含有分子の移動は、欧州特許第2411325B1号明細書の装置に記載の燃焼ガスG1と接触器供給溶液P0との間の移動よりも優れているため、本発明の装置及びプロセスで得られる収率は、欧州特許第2411325B1号明細書で得られるものよりも大きい。
【0088】
リン酸分子の移動及び重縮合反応の収率におけるこの改善は、同じガス/酸接触器から取り出されたリン酸溶液P1の流れの一部をガス/酸接触器の中に再導入することを可能にする再循環ループによって実現される。したがって、装置は、ガス/酸接触器の再循環導入口(1pru)又は(1pu)に連結された下流端(3r)で、
・ガス/酸接触器(1)の再循環された濃縮リン酸溶液(1prd)の排出口、又は
・第1の流体接続部(3)を有する分岐点(5v)、又は
・第1の流体接続部(3u)を有する分岐点(4r)、
の何れかに連結されている上流端を連結する再循環流体接続部(3r)を追加的に含む。
【0089】
装置は、再循環流体接続部(3r)を流れる噴霧重量流量Qpと再循環重量流量Q2の合計として定義される総重量流量(Qp+Q2)に対する第1の流体接続部(3)を流れる噴霧重量流量Qpの比率Qp/(Qp+Q2)を、50%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2.5%未満の値で制御及び維持するための手段を備えており、その比率Qp/(Qp+Q2)は、0.1%を超える、好ましくは0.5%を超える値を有する。
【0090】
図2に示されているように、流体接続部(3p)及び(3r)は、一方では第1の濃縮リン酸排出口(1pd)を燃焼室の濃縮リン酸導入口(2pu)に連結する噴霧流体接続部(3p)により、他方では第2の濃縮リン酸排出口(1prd)をガス/酸接触器の再循環濃縮リン酸導入口(1pu)に又は接触器供給溶液P0をガス/酸接触器に供給する供給流接続部(3a)に連結する再循環流体接続部(3r)により、ガス/酸接触器と燃焼室との間の全長にわたって分割することができ、噴霧流体接続部(3p)と再循環流体接続部(3r)のそれぞれは、比率Qp/(Qp+Q2)を目的の値で維持するようにバランスをとったポンプ(4、4r)を備えているか、流体を移送するためのシステムを備えている。
【0091】
図3~5に示されている代替の変形形態では、ガス/酸接触器は、第1の流体接続部(3)に連結されているガス/酸接触器の濃縮リン酸P1のための単一の排出口(1pd)を備えている。噴霧流体接続部(3p)と再循環流体接続部(3r)の上流部分は分岐点(5)に連結されており、結果として第1の流体接続部(3)とT字型又はY字型の接合部を形成する。この変形形態では、比率Qp/(Qp+Q2)を望まれる値に制御及び維持するために様々な手段を使用することができる。
【0092】
図5に示す第1の変形形態では、確実に比率Qp/(Qp+Q2)を望まれる値にするための手段は、噴霧流体接続部(3p)上に配置されており噴霧流量Qpで液体をポンプ移送能力を有するポンプ(4)と、再循環流体接続部(3r)に配置されており再循環流量Q2で液体をポンプ移送する能力を有する再循環ポンプ(4r)とを含む。
【0093】
図3及び4に示されている第2の変形形態では、比率Qp/(Qp+Q2)を確実にするための手段は、分岐点(5)の上流の第1の流体接続部(3)に配置されており主流量(Qp+Q2)での液体のポンプ移送能力を有しているポンプ(4)、及び分岐点(5)に配置されており主流量を噴霧流体接続部(3p)への噴霧流量Qpと再循環流体接続部(3r)への再循環流量Q2とに分割することを可能にする1つ以上のバルブ(5v)(例えば三方バルブ)を含む。
【0094】
第3の変形形態(図示せず)では、比率Qp/(Qp+Q2)を制御するための手段は、分岐点(5)の上流の第1の流体接続部(3)に配置されており主流量(Qp+Q2)での液体のポンプ移送能力を有しているポンプ(4)と、望まれる比率Qp/(Qp+Q2)が得られるようにバランスがとられている噴霧流体接続部(3p)及び再循環流体接続部(3r)を形成する導管とを含む。この解決手段は、導管のバランスをとった後に、比率Qp/(Qp+Q2)を容易には変更できなくなるという点で最初の2つよりも柔軟性が低い。これは、装置の寿命中に比率を変える必要がない場合には、必ずしも問題ではない。
【0095】
ポリリン酸溶液P3
本発明の方法により得られる混合溶液Pmを炎の中に噴霧することにより、これまでにない特性を有するポリリン酸溶液P3を製造することができる。本発明の方法に適した噴霧溶液Pmが有し得る高いP2O5含有量のため、及び燃焼室に入る瞬間のその高い温度のため、非常に高濃度のP2O5を有するポリリン酸溶液は、湿式ルートにより製造することができ、その値は特に重縮合温度に依存する。
【0096】
重縮合反応中の噴霧溶液Ppの重縮合温度Tpcが少なくとも500℃、好ましくは少なくとも600℃、又は少なくとも650℃に到達する場合には、
・少なくとも86%、好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%のP2O5含有量、
・総有機炭素(=TOC)の形式で表される、100ppm以下、好ましくは80ppm以下である非常に低い有機化合物含有量、
・100ppm以下、好ましくは80ppm以下である同様に非常に低いSiO2含有量、を含む、粘稠な液体の形態の、これまで全く製造されていなかったポリリン酸溶液P3が得られる。
【0097】
好ましくは、本発明のポリリン酸溶液P3は、10ppm以下、好ましくは5ppm以下のFe含有量、10ppm以下、好ましくは5ppm以下のSb含有量、及び11ppm以下、好ましくは5ppm以下のSO4含有量を有する。上の様々な化合物の含有量はポリリン酸溶液に対するものとして表されている。
【実施例】
【0098】
本発明によるパイロット装置を構築し、試験した。これは、ガス/酸接触器(1)及び燃焼室(2)を含む。流体接続部は、
図2に示されているように、再循環接続部(3r)から完全に分離されており独立している噴霧流体接続部(3p)を含む。噴霧流体接続部(3p)と再循環流体接続部(3r)のそれぞれは、0.75%~6.7%の間の様々な値で流量比率Qp/(Qp+Q2)を制御して一定に保つことを可能にするポンプ(4、4r)を備えている。燃焼ユニットは、天然ガスの供給源及び空気供給流に接続されており、その流量は、炎の温度を制御するために制御することができる。
図4に示されているように、燃焼室には直送供給流導入口(2mu)が設けられている。
【0099】
パイロット装置で試験した様々なリン酸流P0~P3並びに燃焼ガスG1及びG3のP
2O
5濃度、流量、及び温度の範囲を表1に示す。本発明による装置における前記流れの位置を
図3に示す。重縮合温度Tpcは、400~650℃であった。
【0100】
表1では、62%のP2O5を含む供給溶液P0及びTpc=630℃の重縮合温度で、流量比率Qp/(Qp+Q2)=1%を適用することによって、パイロット装置で88%のP2O5を含むポリリン酸溶液P3が製造されたことがわかる。
【0101】
本発明の方法の実施に適した様々なパラメータの一連の値の範囲を表2に列挙する。
【符号の説明】
【0102】
1 ガス/酸接触器
1gd ガス/酸接触器の燃焼ガス排出口
1gu ガス/酸接触器の燃焼ガス導入口
1pd ガス/酸接触器の濃縮リン酸溶液P1の排出口
1pu ガス/酸接触器の接触溶液P0又は混合物(P0+P2)の供給流導入口
1pru ガス/酸接触器の再循環濃縮リン酸P2の導入口(任意選択)
2 燃焼室
2c 燃焼ユニット
2pd 燃焼室のポリリン酸P3の排出口
2pdu 燃焼室の直送供給溶液Pdの導入口
2pu 燃焼室の中の噴霧酸溶液Ppの導入口、又は直送供給流と噴霧流の組み合わされた導入口
3 第1の流体接続部
3a 供給流体接続部
3d 第1の流体接続部(3)又は噴霧流体接続部(3p)の下流端
3p 噴霧流体接続部
3r 気液接触器(1)への再循環のための流体接続部
3rd 再循環液接続部(3r)の下流端
3u 噴霧流体接続部(3p)又は第1の流体接続部(3)の上流端
4 ポンプ
4r 再循環ポンプ
5v バルブ又はバルブのセット(例えば三方バルブ)
6 燃焼ガスの流体接続部
6d 燃焼ガス接続部の排出口
6u 燃焼ガス接続部の導入口
10 燃焼ユニットの燃料源(10)
11 熱交換器
Fp 濃縮ポリリン酸溶液の噴霧流
F2 再循環された濃縮リン酸溶液の再循環流
F3 ポリリン酸溶液の流れ
Fd 直送供給溶液Pdの直送供給流
Fp 濃縮リン酸溶液の噴霧流
Fm 混合溶液の混合流Fm (=Fd+Fp)
G1 燃焼ガス
G3 接触済燃焼ガス
P0 接触器供給溶液
P0+P2 接触器供給溶液P0と再循環された濃縮リン酸溶液(P2)との混合物
P1 濃縮リン酸溶液
P2 再循環された濃縮リン酸溶液
P3 ポリリン酸
Pd 直送供給溶液
Pp 噴霧溶液
Pm 混合溶液(=Pd+Pp)
Q0 接触器供給溶液P0の供給流量
Q1 接触器の排出口での濃縮リン酸の流量(=Q2+Qp)
Q2 再循環された濃縮リン酸溶液の再循環流量
Q3 ポリリン酸の流量
Qg1 ガス/酸接触器(1)への燃焼ガスの流量
Qg2 ガス/酸接触器(1)内の燃焼ガスの流量
Qd 直送供給溶液Pdの流量
Qp 噴霧溶液Ppの噴霧流量
Qm 混合溶液Pmの流量
Gg3 ガス/酸接触器(1)の外部の接触済燃焼ガスの流量
T0 接触器供給溶液P0の温度
T1 濃縮リン酸溶液P1の温度
T2 再循環された濃縮リン酸溶液P2の温度
T3 ポリリン酸溶液P3の温度
Tg1 燃焼ガスG1の温度
Tg3 接触済燃焼ガスG3の温度