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7269952風力タービンブレード回転装置の自己整列ティルト及びヨーシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】風力タービンブレード回転装置の自己整列ティルト及びヨーシステム
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20230427BHJP
   F03D 13/40 20160101ALI20230427BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
F03D80/00
F03D13/40
F03D1/06 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020554280
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 US2019025425
(87)【国際公開番号】W WO2019195318
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】62/651,581
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/651,586
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/651,588
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/651,601
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520005303
【氏名又は名称】ティーピーアイ コンポジッツ,インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウユヌク,メーメット
(72)【発明者】
【氏名】ウナル,フルカン
(72)【発明者】
【氏名】アルパー,アタ,メンデレス
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-216317(JP,A)
【文献】特表2012-500150(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0124833(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02584191(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0361127(US,A1)
【文献】国際公開第2013/092597(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/048719(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0356113(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
F03D 13/40
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲率半径を有する上面を有し、風力タービンブレードの一部を受け付けるように構成されている基台と、
前記基台の側面に配置され、ベアリングを受け付けるように構成されている溝を有する少なくとも1つのハウジングと、
前記基台及びハウジングを少なくとも部分的に通って延びるシャフトと、
前記ハウジング内に少なくとも部分的に配置される少なくとも1つのベアリングと、
を有するルート装置と、
基台と、
風力タービンブレードの圧力側を受け付けるように構成されている第1支持体と、
風力タービンブレードの吸い込み側を受け付けるように構成されている第2支持体と、
風力タービンブレードの一部を受け付けるように構成されている開口部と、
を有する回転可能支持フレームと、
を有する先端装置と、
を備え
前記先端装置は、回転中に前記回転可能支持フレームの軸方向の撓みを抑制するように構成されている少なくとも1つのボールトランスファユニットを有する風力タービンブレード装置。
【請求項2】
前記先端装置の前記回転可能支持フレームは外側曲率半径を有する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項3】
前記先端装置の基台は、底面と、湾曲した形状を有する上面とを有する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項4】
前記ルート装置又は先端装置の少なくとも一方は、前記タービンブレードの2つの自由度を提供する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項5】
前記ルート装置又は先端装置の少なくとも一方は、前記タービンブレードの2つの自由度を前記タービンブレードのティルト及びヨー軸回りに提供する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項6】
前記ルート装置及び先端装置は分離したコンポーネントである、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項7】
前記ルート装置又は先端装置の少なくとも一方は、複数のキャスターを有する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項8】
前記ルート装置又は先端装置の少なくとも一方は、少なくとも1つのバランサを有する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項9】
前記ルート装置又は先端装置の少なくとも一方は、前記風力タービンブレードを回転させるための推進機構を有する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項10】
前記ルート装置及び前記先端装置は共通の長手方向軸に整列する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項11】
前記ルート装置は、前記ブレードの長手方向軸に平行な長手方向軸を有する少なくとも1つのローラを有する、請求項1に記載の風力タービン装置
【請求項12】
前記ハウジングは少なくとも1つのローラの下に配置されている、請求項11に記載の風力タービン装置。
【請求項13】
少なくとも1つのローラは、前記ルート装置の前記基台の前記上面の上に少なくとも部分的に配置されている、請求項11に記載の風力タービン装置。
【請求項14】
前記ハウジングの前記溝は、前記ブレードの長手方向軸と垂直な軸回りの前記ブレードの動きを誘導する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項15】
前記ルート装置の上面は、前記ブレードの外面に全般的に同等な曲率半径を有する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項16】
前記先端装置の前記第1及び第2支持体は、風力タービンブレードの表面と係合するために選択的に作動可能である、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項17】
前記先端装置の前記回転可能支持フレームは、前記ブレードの長手方向軸回りに回転可能である、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項18】
前記先端装置は、少なくとも1つのローラを有する基台を有する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【請求項19】
前記先端装置の前記少なくとも1つのローラは、凹形外面を有する、請求項1に記載の風力タービン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月2日出願の米国仮特許出願第62/651,581号、62/651,586号、62/651,588号、及び62/651,601号に対する優先権を主張するものであり、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示された主題は、風力タービンロータブレードを動かすための風力タービンロータブレード取扱いシステム及び装置並びにこのような取扱いシステムの対応する作動方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、ブレード型から取り出された後や、型成形後の作業中(例えば、外側ブレード表面研削又はコーティング作業)等において、風力タービンブレードの一部を支持するように作用するカートをはじめとする、風力タービンブレードの製造工程で使用される様々な方法及びシステムが知られている。
【0004】
従来のブレードカートは、ブレードの本体の周りに取り付けられる密閉型リング構造を有する。しかしながら、ブレードの寸法が大きくなると、これらのカートは、多くの場合、ブレードへの装着が困難となる。カートがブレードに沿って(多くの場合、手動で)動かされる間、ブレードの重量を支持するために、しばしばクレーンが必要となる。加えて、人や機器が大型のリングにより妨げられ、カート位置におけるブレードの前縁及び後縁への容易なアクセスが阻まれる型成形後の作業中においてカートは危険を及ぼす。
【0005】
従来のブレードカートは、その中に風力タービンブレードが導入される密閉型リングを形成する密閉型ブラケットで構成されている。この構成の欠点は、ブレードをカート内へと積載する作業にある。なぜなら、積載工程を実施するには、ブレードの先端からカートがブレードの重量を支持できるブレードの位置へとカートを移動さなくてはならないか、あるいは天井走行クレーン及びケーブルを使用してブレードをカート内へと移動させなくてはならないかのいずれかだからである。このような従来のブレード取扱いシステムの好ましくない複雑さに加えて、これらの従来システムの作業は様々な動きを必要とし、このことは様々なコンポーネントの導入や取り外しの際にブレード損傷の高いリスクがある。
【0006】
国際公開第2013/092597号、国際公開第2012/048719号、米国特許出願公開第2014/0356113号明細書、欧州特許第2584191号明細書、及び特開2010-216317号公報に従来のブレード取扱いシステムの例が開示されており、その全体を参照することにより、開示されている特定のブレード接触要素及び相対的な可動域を含んでそれらのそれぞれが本明細書中に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開示された主題の目的及び利点は、下記の説明において記載されて明らかとなるとともに、開示された主題の実施により知られることとなるであろう。開示された主題の追加的な利点は、添付の図面並びに本明細書に記載された説明及び請求項で具体的に示される方法及びシステムにより実現及び達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これら及び他の利点を実現するため、開示された主題の目的に従って、具現化及び広範に説明されているように、開示された主題は、曲率半径を有する上面を有し、風力タービンブレードの一部を受け付けるように構成されている基台と、前記基台の側面に配置され、ベアリングを受け付けるように構成されている溝を有する少なくとも1つのハウジングと、前記基台及びハウジングを少なくとも部分的に通って延びるシャフトと、前記ハウジング内に少なくとも部分的に配置される少なくとも1つのベアリングと、を有するルート装置(root device)を備える風力タービンブレード装置を有する。前記装置はまた、基台と、風力タービンブレードの圧力側を受け付けるように構成されている第1支持体と、風力タービンブレードの吸い込み側を受け付けるように構成されている第2支持体と、風力タービンブレードの一部を受け付けるように構成されている開口部と、を有する回転可能支持フレームとを有する先端装置(tip device)を備える。
【0009】
実施形態によっては、前記先端装置の前記回転可能支持フレームは外側曲率半径を有する。
【0010】
実施形態によっては、前記先端装置の基台は、底面と、湾曲した形状を有する上面とを有する。
【0011】
実施形態によっては、前記ルート装置又は先端装置の少なくとも一方は、前記タービンブレードの2つの自由度を提供する。
【0012】
実施形態によっては、前記ルート装置又は先端装置の少なくとも一方は、前記タービンブレードの2つの自由度を前記タービンブレードのティルト及びヨー軸回りに提供する。
【0013】
実施形態によっては、前記ルート装置及び先端装置は分離したコンポーネントである。
【0014】
実施形態によっては、前記ルート装置又は先端装置の少なくとも一方は、複数のキャスターを有する。
【0015】
実施形態によっては、前記ルート装置又は先端装置の少なくとも一方は、少なくとも1つのバランサを有する。
【0016】
実施形態によっては、前記ルート装置又は先端装置の少なくとも一方は、前記風力タービンブレードを回転させるための推進機構を有する。
【0017】
実施形態によっては、前記ルート装置及び前記先端装置は共通の長手方向軸に整列する。
【0018】
実施形態によっては、前記ルート装置は、前記ブレードの長手方向軸に平行な長手方向軸を有する少なくとも1つのローラを有する。前記ハウジングは前記ローラの下に配置可能である。追加的に又は代替的に、少なくとも1つのローラは、前記ルート装置の前記基台の前記上面の上に少なくとも部分的に配置できる。
【0019】
実施形態によっては、前記ハウジングの前記溝は、前記ブレードの長手方向軸と垂直な軸回りの前記ブレードの動きを誘導する。
【0020】
実施形態によっては、前記ルート装置の上面は、前記ブレードの外面に全般的に同等な曲率半径を有する。
【0021】
実施形態によっては、前記先端装置の前記第1及び第2支持体は、風力タービンブレードの表面と係合するために選択的に作動可能である。
【0022】
実施形態によっては、前記先端装置の前記回転可能支持フレームは、前記ブレードの長手方向軸回りに回転可能である。
【0023】
実施形態によっては、前記先端装置は、凹形外面を有する少なくとも1つのローラを有する基台を有する。
【0024】
実施形態によっては、前記先端装置は、回転中に前記支持フレームの軸方向の撓みを抑制するように構成されている少なくとも1つのボールトランスファユニット(ball transfer unit)を有する。
【0025】
上記の全般的な説明及び下記の詳細な説明のいずれも例示であり、請求される開示された主題のさらなる説明を提供することを意図すると理解されよう。
【0026】
組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、開示された主題の方法及びシステムのさらなる理解を説明し提供するために含まれている。明細書と共に、図面は開示された主題の原理を説明するように機能する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本明細書中に説明されている主題の様々な態様、特性、及び実施形態の詳細な説明が、以下に簡潔に説明されている添付の図面を参照して提供される。図面は例示であり、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではなく、構成要素や特性が明確となるように誇張されている場合もある。図面は、本主題の様々な態様及び特性を説明し、本主題の1以上の実施形態又は例を全体的に又は部分的に説明してもよい。
図1】本明細書中に開示されている実施形態によるルート装置及び先端装置を備える風力タービンブレード取扱い装置の例を示す。
図2図1のルート装置の斜視図である。
図3図1のルート装置の正面図である。
図4図1のルート装置の基台部分の正面斜視拡大図である。
図5図1の先端装置の斜視図である。
図6図1の先端装置の正面斜視拡大図である。
図7図1の先端装置の基台部分の拡大図である。
図8図1の先端装置の基台部分の内面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
開示された主題の目的及び利点は、下記の説明において記載されて明らかとなるとともに、開示された主題の実施により知られることとなるであろう。開示された主題の追加的な利点は、添付の図面並びに本明細書に記載された説明及び請求項で具体的に示される方法及びシステムにより実現及び達成されるであろう。
【0029】
これより、開示された主題の実施形態例を詳細に参照していくが、その例は添付の図面に示されている。開示された主題の方法及び対応する工程は、システムの詳細な説明と併せて説明される。
【0030】
本明細書中に提示されている方法及びシステムは、風力タービンブレードの取扱い、例えば、締め付け、固定、回転、及び輸送のために使用されてもよい。明細書中に開示されているシステム及び装置は、風力タービンブレード製造の様々な仕上げ工程を容易にするために使用できる。実施形態例では、本システムは、本明細書中に含まれる図面で示されるように、「ルート装置」及び「先端装置」と呼ばれる2つの分離した装置から成る。図1に示されるように、システム1000は、一般的にルート装置(100)と、先端装置(200)とを備える。これらサブシステム100及び200は、従来の取扱いシステムよりも優れた効率性、アクセス性、人間工学性によって、追加的な取扱い機能と、より大きな風力タービンブレードを取扱う能力とを提供する。
自己整列ティルト&ヨーシステム―ルート装置(100)
【0031】
ルート装置(100)は、図2乃至4に示されるように、基台(110)と、ルート支持部材(120)とを備える。ルート支持部材(120)は、単一の一体型ユニットであることもできるし、1つに繋ぐこと、又はそうでない場合は、風力タービンブレードを受け付けて支持するように接続することができる複数の個別ユニットから成ることもできる。
【0032】
ルート装置(100)は、風力タービンブレードの根元部を受け付けて、ブレードを(様々な速度で)回転させるように適応する。従って、ルート支持部材(120)は、例えば、弓状等の風力タービンの根元に対する相補的形状で構成されている。ルート支持部材(120)は、根元部の外側半径と同程度の半径を有する湾曲形状から成ることができる。より一般的に言えば、根元支持部材の形状は、根元部の形状に適合する。実施形態によっては、ルート支持部材120は様々な根元形状に合うように調整可能である。
【0033】
風力タービンブレードの動き(例えば、ブレードの長手方向軸回りの回転)を発生させる動力は、例えば、電気モータや空気圧又は油圧式システム等、様々な方法で提供できる。実施形態によっては、動力供給手段(及び場合によっては関連する配線、ケーブル、又は配管)がルート装置内に直接的に収容されている。他の実施形態では、電源及び/又は補助動力システムが、ルート装置(100)ハウジングの外部に配置可能である。
【0034】
ルート装置(100)は、図4に示されるように、基台(110)側のハウジング(112)内にシャフト(114)及びベアリングを備える。実施形態によっては、シャフト(114)はルート支持部材(120)の縁を越えて延び、場合によっては、ルート支持部材(120)の両側まで延びる。ハウジング(112)は、シャフト(114)の動きを誘導するためにそこに形成された溝又はトラック(116)を有する底板を有する。このトラック(116)は、ヨー等のブレードの長手方向軸に垂直な軸回りにブレードの動きを誘導する。トラック(116)はこの動きを許容できる可動域の制御も行う。シャフト(114)は、トラック(116)内に受け付けられるヘッド部とともに形成可能である。シャフトのヘッドは、シャフトと一体的に形成される構造的特徴物であってもよいし、シャフト(114)に取り付けられる、例えば、ネジ付きナット等の別部品であってもよい。実施形態によっては、ヘッドは、トラック(116)内でシャフトの動きに対する抵抗を調整するブレーキ機構として機能できる。
【0035】
トラック(116)内でのシャフト(114)の可動域は、所定の限界又は、例えば、ブレードのティルト又はヨー等の角変位に対応するトラック上の位置を設定できるソフトウェアプログラミングを介してモニタ及び制御できる。さらに、アラームを備えて、人員に限界が近付いていること、既に達したこと、又は超えたことを通知することができる。同様に、(例えば、シャフト114のヘッドによって提供される)動きに対する抵抗は、シャフトがその可動域の限界に近付くにつれて抵抗が大きくなって、装置の運動量を低減するように、シャフト(114)の通過中に調整できる。
【0036】
実施形態によっては、トラック(116)内のシャフト(114)の可動域は、ヨー方向内で±4度の動きに指定されている。このような実施形態では、可動域はブレードの重量及びブレードの回転の関数でもよい。さらに、シャフト(114)は、システムがティルト方向の回転を可能とし、減衰システム(130、131、132)は、例えば、±4度でシャフト(114)の回転を制限する。実施形態によっては、これによりルート装置(120)が基台(110)に対して動くことを許可する。
【0037】
ルート装置はまた、ブレードと係合して、ブレードの長手方向軸に沿ってブレードの回転を容易にするローラ(118)を備えている。実施形態によっては、空又は積載していない構成の場合(すなわち、ルート装置上にブレードが存在しない場合)、ローラ(118)は、ルート支持部材(120)から外側に延びる又は突出するように構成できる。そして、ルート装置上にブレードが置かれると、これらのローラ(118)は、互いから独立して、押し下げられる又は沈められることができ、その結果、ローラ(118)と係合する。このような独立的な動きによって、ルート装置内でブレードを水平にすること/バランスを取ることができる。ローラのこの相対的な動き又は変位は、実施形態によっては線形軌道でもよい(例えば、垂直上下)。他の実施形態では、ローラ(118)はルート支持部材(120)に対して旋回してもよい。実施形態によっては、ローラ118は、許容できる動きがそれらの中心軸回りの回転のみである状態でルート支持部材(120)にしっかりと取り付けられている。ローラは、表面摩擦によってブレードの根元部と係合し、回転を容易にする。従って、ローラ(118)に動力駆動手段が適用されると、各ローラが回転しはじめ、これは次に、ブレードの回転を引き起こす。ローラ(118)は、ブレードとローラとの間の摩擦力を増加させるために、外面をコーティング(例えば、PU)によって覆われている金属構造でもよい。
【0038】
ローラの寸法は、ブレードの寸法と関連するように構成され、例えば、より重量のあるブレードを取扱う際には、より重量の軽いロータブレードを取扱う場合よりも大きな/長いローラが使用される。しかしながら、ローラの長さは、例えば偏心形状を有する及び/又はローラとロータブレードとの間の所望する表面圧力を維持するロータブレードの特定のデザインと関連してもよい。位置決め調整できる可撓性ローラを採用することは、システムが、異なる半径及び/又は形状のブレードに適合するようにできる点で有利である。
【0039】
実施形態によっては、ローラ(118)は、隣接するローラ周囲に巻かれたグリップ材のストラップを有するコンベヤーベルトとして構成可能である。このような実施形態で、ブレードと接触する表面積は、このようにして、個別のローラ構成に比べて大きくなる。また、各コンベヤーベルトは、他のコンベヤーベルトから独立してブレードに密着できる。結果的に、いずれの場合も、直径が異なるコンポーネントであっても高い接触面が実現され、それを介して各コンベヤーベルトが押圧固定方式でコンポーネントに接触する。結果的に、回動装置は、コンポーネントの直径が異なっても、コンポーネントを確実に保持することができる。実施形態によっては、ローラ(118)間の距離は調整可能で、採用されるローラ(118)の総数は、図示されている実施形態例に示されている4つよりも多い又は少ないことも可能である。
【0040】
図3に示されるように、シャフト(114)は、ルート支持部材(120)内へと延びるが、ローラ(118)の底部に達する前で止まっている。また、図3に示されるように、実施形態によっては、動力供給手段は、ブレードの回転を駆動するために、例えば1つのローラ(118)のみを選択するように接続してもよい。図3に示されるように、最左側のローラ(118)は、ローラの回転を誘発するために動力供給されているドライブベルト(119)に接続されている。
【0041】
ルート装置(100)はまた、図2乃至4に示される実施形態例ではブラケット(131)を介して接続されているボルト(130)及びスプリング(132)部材を含む調整可能なバランサも備える。第1ブラケットは、ルート支持部材(120)の重量に対抗する通常の力を発揮する第2ブラケット上に載るボルト(130)を伸縮して受けることができる。図4に示されるように、ボルト(130)を受け付ける第1ブラケットは、ルート支持部材(120)に取り付けることができ、第2ブラケットは、例えば、基台(110)等の分離した構造的コンポーネントに取り付けることができる。ブラケット(130)間の距離は調整可能である。
【0042】
このバランスシステムは、システムが、上部構造体の重量及び重心によって、その限界まで片側にずれる、例えば上昇/下降するように、ルート支持部材(120)を適所に保持し、2つの軸で例えば±4°の自由度をもって構築されている。このように、ブレードが受け付けられる前に、ルート装置(100)は、両軸(ヨー及びティルト)において約0°の位置で維持されている。ブレードが係合するように下降させられると、ブレードを位置付けつつブレード表面への損傷を避けながら、装置内のローラの縁がブレードに接触する。これら調整可能なバランサは、装置自体の空虚重量(すなわち、そこにブレードが置かれていない状態)に基づいて、装置のバランスを取ることの利益をもたらす。これらの調整可能なバランサの他の利点としては、作業中に装置内において負荷/振動を幾分か吸収する減衰機構を提供し、(異なるブレード及び/又は設定に対して可変であるが)予め設定された制限内で自由度を維持することである。さらに、スプリング(132)は、ブレードがそれらのティルト及びヨー角の限界(±4°)でルート装置内に置かれた際にかけられる負荷を減衰又は吸収するように機能でき、その結果、破損の危険性を減少させる。バランサはまた、ブレードの回転中に受ける振動荷重を防止又は抑制するように、ルート装置を締め付けることができる。示される実施形態例は機械系(例えば、スプリング)であるバランサを示しているが、所望の場合、追加的又は代替的なバランサ(例えば、空気圧又は油圧式)を採用することもできる。
【0043】
実施形態によっては、バランサはルート支持部材(120)の縁又は角に備えられる。バランサ(130乃至132)は、両側面に備えられて、ハウジング(112)から等距離間隔を開けることもできる。
【0044】
ルート装置(100)は、以下にさらに詳細に説明するが、先端装置に合わせて作動する。このように、本開示の態様によると、追加の制御機構を必要とせずに、作業中、ブレードの重量及び回転角度がシステムを制御する。さらに、ハウジング(及びシャフト114及び誘導トラック116)及びバランサは、ルート装置に対し2つの自由度(ティルト及びヨー)を提供する。これらの方向内の可動域は、所望に応じて、ブレードのサイズ及びルート装置のサイズ及び工場内での配置位置によって制限できる。
自己整列ティルト&ヨーシステム―先端装置(200)
【0045】
先端装置(200)は、図5乃至8に示されるように、基台(210)と、先端支持フレーム(220)とを備える。先端支持フレーム(220)は単一の一体型ユニットであることもできるし、1つに繋ぐこと、又はそうでない場合は、風力タービンブレードを受け付けて支持するように接続することができる複数の個別ユニットから成ることもできる。さらに、先端支持フレーム(220)は、ブレードの長さに沿って所望の任意の位置に配置でき、ブレードの最先端に近接して配置される必要はない。
【0046】
先端装置(200)はまた、先端支持フレーム(220)内で前進及び後退するように、選択的及び互いから独立的に作動可能である支持部材222を備えることができる。支持部材(222)は、電気、空気圧、又は油圧式手段を介して作動できる。さらに、支持部材(222)は、接続機構(例えば、留め金、クランプ等)を備えて、図5に示されるように、ブレードコア又はテンプレート300に固定して且つ脱着可能に取り付け可能である。図示の通り、先端コア又はテンプレート300は、その間に係合ピンが延びているフィンを外面に有することが可能である。支持部材(222)は、所望により取り付け可能で、ピン及び/又はフィンを選択する。これらの支持部材は、ブレードが動く、例えば、回転する間、ブレード先端を正確に位置付けて制御することを可能にする。
【0047】
示された実施形態例では、先端支持フレーム(220)は、ブレード(明確にするため不図示)を受け付ける開口部(221)を有する一般的に環状の構造体で形成可能である。また、先端支持フレーム(220)は、ブレード先端を係合するためのスポーク(223)を有することができる。図5に示される実施形態では、スポーク(223)は、ブレード先端コア又はテンプレート300の対応するフィン/フランジに嵌合して係合するフランジを有するIビーム部材として構成されている。この構成は、動作中のブレードのさらなる安定性及び制御を提供する連結カップリングとして機能する。
【0048】
図5に示されるように、その中に風力タービンブレードを受け付けるスリーブ又はシュラウドとして機能するブレードハウジングテンプレート(300)も設けることができ、これは先端支持フレーム(220)によって嵌合して収容可能である。テンプレート(300)は、互いに固定、例えば、締め付け合わされて、その中にブレードを確実に保持するツーピースコンポーネントとして形成可能である。ピースは、2枚貝のようにヒンジで連結できる又は脱着可能に互いに接続され、様々なモードの動作中のブレードを留めるためにしっかりと係止する別ピースとすることが可能である。テンプレート(300)の内側表面は、ブレード表面を破損から緩衝又は保護する材料のコーティング又は層を有することができる。
【0049】
作業において、ブレードは、ハウジングテンプレート(300)内に位置付けられ、その後、開口部(221)を挿通して先端支持フレーム(220)へと挿入される。ハウジングテンプレート(300)の先端は、先端支持フレーム(220)に嵌合して係合するように構成されている。例えば、テンプレート(300)の外面のフィン(302)は、先端支持フレームスポーク(223)のIビームフランジと重なるように係合する(例えば、摩擦嵌めを介して)ようにサイズ決めされることができ、テンプレートを先端支持フレーム(220)内へとしっかりと係止する。続いて、支持部材(222)は、図5に示されるように、前進して、例えば、フィン(302)間に延びるピンに係止することでテンプレートの外面に脱着可能に係合できる。各支持部材(222)内のピストンは、フレーム(220)に対するテンプレート(300)のいかなる緩み又は動きの自由もなくすように作動させることができる。示されている実施形態例では、等しい数の支持部材(222)及びスポーク(223)(すなわち4つ)が設けられている。
【0050】
先端支持フレーム(220)外側(又は円周)縁は、ルート装置(100)のように、相補的な半径を有する。先端支持フレーム(220)の回転を容易にするため、図6乃至8に示されるように、基台(210)内に一連のローラ(218)を備えることができる。本実施形態例では、4つのローラ(218)が基台(210)内に取り付けられ、先端支持フレーム(220)の凸形表面に対して相補的な凹形表面を有する。実施形態によっては、ローラ(218)は、ルート装置のローラ(118)のように、ブレード先端の動きを発生させる動力供給手段に接続することができる。代替的に、ルート装置は、先端支持フレームが受動的に回転する間、ブレードの回転を駆動できる。回転モーメントは、ブレードを通過し、ローラ(218)を介して先端装置(200)へと伝達されるからである。さらに、作業現場での所望によって先端装置を動かせるように、先端装置(200)は多方向キャスター付でもよい。
【0051】
先端装置(200)はまた、図5乃至8に示される実施形態例ではボルト(230)と、スプリング(232)と、ボールトランスファユニット(231)とを備える調整可能なバランサを備えている。この平衡システムは先端支持フレーム(220)を適所に保持する。上記のルート装置(100)と同様に、先端装置(200)の調整可能なバランサは、システムが、上部構造体の重量及び重心によって、その限界まで片側にずれ、例えば旋回又はシフトするように、2つの軸(例えば、ティルト及びヨー)回りの予め設定された、例えば、±4°の可動域を提供する。ボールトランスファユニットは、回転中、先端支持フレーム(220)の軸方向の撓みを防止又は抑制するために、回転又はスピン可能であり、その結果、望ましくない負荷の原因となり得る先端支持フレームの任意の偏差又は「ぶれ(wobbling)」を最小限にする。さらに、先端支持フレーム(220)とボールトランスファユニット(231)との間に接触がある場合は、スプリング(232)が関連する負荷を吸収できる。重要なことに、バランサは、それに対して妨害又は抵抗がない状態でブレードが回転できるように機能する。
【0052】
図5乃至図6に示される実施形態例では、2組のバランサが基台(210)に設けられ、先端支持フレーム(220)に対して約4時及び8時の位置に配置されている。各配置位置には、基台(210)の前面及び基台(210)の後面にバランササブアセンブリ(230乃至232)が備えられる(ローラ218は基台210内に全体的に配置できる)。バランサは、様々な形状の先端支持フレーム(220)を受け付けるように調整可能である。
【0053】
このように、本開示の態様によれば、先端装置(200)は4つの自由度(例えば、ティルト及びヨー軸回りに)を提供する。これらの方向内での可動域は、所望により、ブレードのサイズ及び先端装置のサイズ及び工場内での配置位置によって制限可能である。
【0054】
本開示の他の態様によれば、ルート装置(100)及び先端装置(200)は分離して独立して作動可能なコンポーネントとして配置できる。実施形態によっては、ルート装置及び先端装置は、他のコンポーネントに対し1つのコンポーネントの相対的な位置を伝達する位置表示機構を備えることができる。例えば、レーザ等の光学的機構を備えることができ、ルート装置と先端装置とが(例えば、ブレードの長手方向軸に対して)適切に整列するとユーザに注意喚起する。先端装置が誤って変位してしまった場合、アラームは、望ましくない負荷がブレード又は支持装置上に引き起こされないように先端装置を整列状態へと戻すための修正措置を取るようにユーザに通知できる。好ましくは、本明細書中に開示のシステムは、同時に同じスピードで回転等の動きを行うように連動したルート装置及び先端装置と同期する。
【0055】
さらに、ルート装置及び先端装置は、そこに配置されたブレードにいかなる負荷も伝えることなく各装置が(例えば、作業現場に沿って再配置された)他方に合わせて動くように、それらの間の相対運動を制限するように構成できる。
【0056】
一旦、ブレードがルート装置及び先端装置内に支持されると、ブレード用の、例えば、ハーネス、クレーン等のいかなる外部の支持手段も取り外すことができることが理解されるであろう。実施形態によっては、ブレード(又はコア)を係合する装置の部分は保護カバーを備えて、破損を防止すること及び望ましくない負荷の伝達をさらに吸収又は緩和することができる。上述の風力タービンブレード取扱いシステムの実施形態は、可撓性であってもよく、様々なロータブレードの位置に適応できる。これによりロータブレードへの負荷がより小さくなることとなる。結果として、ロータブレードの損傷の危険性が抑えられる。
【0057】
従って、本開示は、様々な改善及び利益を風力タービンブレードの取扱いに対して提供し、その例は以下の通りである。
1.本開示は、異なるプレベントブレードの型に適応できる。
2.先端装置の直径が小さくなり、構造的安定性がより均等となる。
3.必要な体積がより少ない状態でブレードを回転させることができる。
4.ブレード回転装置の根元又は先端構造のための吊り上げシステムの使用を可能にする。
5.より大きなブレードの回転角及び表面アクセス性が増加する。
6.回転中にブレードが受ける応力が少ない。
7.システムが自己整列するため、事前調整が不要。
【0058】
開示された主題は、特定の好適な実施形態に関して本明細書中に説明されているが、その範囲から逸脱することなく、開示された主題に様々な修正及び改良を行うことができることは当業者には認識されるであろう。さらに、開示された主題の一実施形態の個別の特性は、本明細書中で説明されてもよい、又は他の実施形態でなく一実施形態の図面において示されてもよいが、一実施形態の個別の特性は他の実施形態の1以上の特性又は複数の実施形態からの特性と組み合わされてもよいことは明白なはずである。
【0059】
以下に主張される特定の実施形態に加えて、開示された主題は、以下に主張される従属特性と上記で開示されたものとの他の考えられ得る組み合わせを有する他の実施形態をも対象とする。つまり、従属請求項及び上記の開示で提示される特定の特性は、開示された主題が他の考えられ得る組み合わせを有する他の実施形態もとりわけ対象とすると認識されるように、開示された主題の範囲内で他の方法で互いと組み合わせ可能である。このように、開示された主題の特定の実施形態の上述の説明は、解説及び説明の目的のために提示されている。限定的とする意図又は開示された主題を開示されたこれらの実施形態に限定する意図はない。
【0060】
当業者には、開示された主題の主旨又は範囲から逸脱することなく、開示された主題の方法及びシステムにおいて様々な修正及び変更が行えることが明白であろう。このように、開示された主題は、添付の請求項及びそれらの同意義の範囲内にある修正及び変更を含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8