(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】光源システム
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20230427BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20230427BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230427BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20230427BHJP
F21V 9/35 20180101ALI20230427BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20230427BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20230427BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20230427BHJP
F21V 29/502 20150101ALI20230427BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230427BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 F
G02B5/20
F21V7/28 240
F21V9/35
F21V9/40 200
F21V5/04 400
F21V5/04 100
F21V5/00 510
F21V29/502 100
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2020559492
(86)(22)【出願日】2019-01-05
(86)【国際出願番号】 CN2019070540
(87)【国際公開番号】W WO2019205737
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】201810372907.9
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514090979
【氏名又は名称】深▲せん▼光峰科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】APPOTRONICS CORPORATION LIMITED
【住所又は居所原語表記】20F-22F, High-Tech Zone Union Tower, No.63,Xuefu Road, Yuehai Street, Nanshan District, Shenzhen,Guangdong 518000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 雨参
(72)【発明者】
【氏名】李 乾
(72)【発明者】
【氏名】許 顔正
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206671744(CN,U)
【文献】国際公開第2018/025351(WO,A1)
【文献】特開2015-022255(JP,A)
【文献】特開2018-053227(JP,A)
【文献】米国特許第09946143(US,B1)
【文献】特開2017-201634(JP,A)
【文献】中国実用新案第207216256(CN,U)
【文献】中国実用新案第206819041(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00-21/10
21/12-21/30
21/56-21/64
33/00-33/16
H04N 5/66-5/74
G02B 5/00-5/32
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 1/00-15/04
23/00-37/00
99/00
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源システムであって、
励起光を受けて被励起光を発生する波長変換層と、
前記波長変換層を支持する透明伝熱基板と、
前記波長変換層の一側から前記波長変換層に向けて前記励起光を出射する励起光源と、
前記透明伝熱基板の一側から前記波長変換層に向けて赤色光を出射する赤色光光源と、を備え
、
前記透明伝熱基板と前記波長変換層との間、または、前記透明伝熱基板における前記波長変換層とは反対側の面に設けられた角度選択フィルタ膜をさらに備え、前記角度選択フィルタ膜は、入射角が特定の角度より小さい赤色光は透過し、入射角が特定の角度より大きい赤色光および前記被励起光は反射する光源システム。
【請求項2】
前記赤色
光光源は、赤レーザ光源であり、前記赤レーザ光源が出射する赤レーザ光の前記角度選択フィルタ膜への入射角は、前記特定の角度より小さいことを特徴とする請求項1に記載の光源システム。
【請求項3】
前記波長変換層におけ
る波長変換を行うための主な材料は、YAG:Ce
3+であることを特徴する請求項1に記載の光源システム。
【請求項4】
前記波長変換層の厚みは、1μm~500μmの間で、好ましくは200μmであることを特徴とする請求項1に記載の光源システム。
【請求項5】
前記角度選択フィルタ膜は、前記波長変換層における前記透明伝熱基板に近い方の下面に形成されるか、前記透明伝熱基板における前記波長変換層に近い方の上面に形成され
るか、又は、前記透明伝熱基板の下面に形成されること、を特徴とする請求項
1に記載の光源システム。
【請求項6】
光路調整モジュールをさらに含み、前記光路調整モジュールは、前記励起光の光路において前記励起光源と前記波長変換層との間に位置する第1集光レンズと、前記赤色光の光路において前記透明伝熱基板と前記赤色
光光源との間に位置する第2集光レンズと、を有することを特徴とする請求項1に記載の光源システム。
【請求項7】
光路調整モジュールをさらに含み、前記光路調整モジュールは、前記励起光の光路において前記励起光源と前記波長変換層との間に位置する第1集光レンズと、前記赤色光の光路において前記透明伝熱基板と前記赤色
光光源との間に位置する反射レンズと、を有することを特徴とする請求項1に記載の光源システム。
【請求項8】
前記透明伝熱基板および前記透明伝熱基板上の前記波長変換層を回転させるモータと、
前記モータを支持して固定するモータホルダと、をさらに含み、
前記反射レンズは、前記モータホルダに設けられることを特徴とする請求項
7に記載の光源システム。
【請求項9】
前記励起光源および前記赤色
光光源を制御するためのシステムは、互いに独立した制御システムであることを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来使用されているレーザ光源の技術分野において、励起光を蛍光材料に照射して被励起光を出射する技術は、成熟したレーザ光源技術となり、様々なレーザ光源製品に応用されている。このレーザ光源技術では、励起光源が出射したレーザ光が、表面に蛍光材料を含むターンテーブル上に集光されて、蛍光材料を励起させて発光する。
【0003】
波長変換装置は、このレーザ光源技術における重要な部材の一つであり、主に蛍光カラーホイールである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、波長変換装置に用いられる波長変換材料自体の特性に制約を受けているため、従来、波長変換材料をレーザで励起させて波長変換して長波長光(例えば、波長585~680nmの赤色光)の光源を得る試みがなされてきたが、高出力と高出力密度で波長変換材料を励起する光源技術では適用できるような光源がない。その主な要因は、現在、励起光を長波長光に変換するための波長変換材料(すなわち、赤色蛍光体粉末)の波長変換効率が低いため、光変換過程において、エネルギーの大部分が熱に変換され、発光効率がより低下してしまう。この特性は、特に高出力光源で顕著である。そのため、高出力のレーザ光源では、現在の波長変換材料を励起する技術において赤色光が不足するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に基づき、本発明は、赤色光と、YAG:Ce3+材料を主とする波長変換層を有する波長変換装置と組み合わせたレーザ光源システムであって、励起光源を備え、混合光源を構成するレーザ光源システムを提供する。本発明における上記レーザ光源システムは、従来の蛍光体励起技術に存在する赤色光が不足するという問題を効果的に解決することができる。
【0006】
具体的には、本発明が提供する光源システムは、励起光を受けて被励起光を発生する波長変換層と、前記波長変換層を支持する透明伝熱基板と、前記波長変換層の一側から前記波長変換層に向いて前記励起光を出射する励起光源と、前記透明伝熱基板の一側から前記波長変換層に向いて赤色光を出射する赤色光光源と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明におけるレーザ光源システムは、励起光源に加え、赤色光光源を用いるとともに、YAG:Ce3+材料を主とする波長変換層を含む波長変換装置を用いることにより、従来の赤色光が不足するという問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態におけるレーザ光源システムを示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態におけるレーザ光源システムの波長変換層の発光スペクトルを示す図である。
【
図3】
図3は、従来技術における異なるCe
3+ドーピング濃度のサンプルの透過スペクトルである。
【
図4】
図4は、可視光範囲の光において光がこの角度選択フィルタ膜103を透過する透過率曲線である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態におけるレーザ光源システムを示す模式図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態におけるレーザ光源システムの波長変換層の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。なお、図面のすべての寸法は概略的なものであり、必ずしも実際の縮尺で示されているわけではないため、限定的ではないことを強調しておく必要がある。
【0010】
図1は、本発明の第1実施形態におけるレーザ光源システムを示す模式図である。本発明のレーザ光源システムは、
図1に示すように、波長変換装置と、光路調整モジュールと、レーザ光源(図示せず)と、を備える。以下、波長変換装置、光路調整モジュール及びレーザ光源の各部について詳細に説明する。
【0011】
<波長変換装置>
波長変換装置は、
図1に示すように、上方から下方に向かって順に積層された波長変換層102と、角度選択フィルタ膜103と、基板104とからなる。
まず、
図1において、L1は赤色光、L2は波長変換装置が出射する光、L3は励起光(本実施形態では青色励起光)を示す。
【0012】
<波長変換層102>
波長変換層102には、波長変換材料が含まれており、励起光L3を受光する。本実施形態では、励起光として青色レーザを用いているが、励起光は青色レーザに限定されないことは当業者に理解できるであろう。励起光は、波長変換層102に照射して、波長変換材料が励起されて被励起光L2を出射する。
【0013】
波長変換層102は、シリカゲル混合YAG:Ce3+蛍光体粉末が硬化した材料層、YAG:Ce3+蛍光体粉末およびガラスからなる蛍光ガラス層、YAG:Ce3+純相セラミック層、YAG:Ce3+混合アルミナ材料が焼結して形成された複相セラミック層のうち、1つにより形成することができる。上記各層において、YAG:Ce3+材料は、主として波長変換材料として用いられる。
【0014】
図3において、Ce
3+ドーピング濃度が異なり、厚さが4.37mmのサンプルの透過スペクトルを示しており、曲線aは、0.02at%Ce
3+ドーピング濃度であり、曲線bは、0.07at%Ce
3+ドーピング濃度であり、曲線cは、0.1at%Ce
3+ドーピング濃度であり、曲線dは、0.15at%Ce
3+ドーピング濃度である。
【0015】
上記透過スペクトルに鑑み、YAG:Ce3+の蛍光セラミックスは、赤色光波長域に対する透過率が高い(通常80%以上)ので、本発明で用いられる波長変換層102の厚みは、1μm~500μmの間であり、好ましくは200μmであり、これにより赤色光の透過率が80%より大きくなる。
【0016】
また、当該波長変換層102は、青色励起光の励起により、
図2に示すようなスペクトル帯域の光を出射し、当該出射光の主波長が550nm付近になる。
【0017】
<角度選択フィルタ膜103>
角度選択フィルタ膜103は、入射された光線の当該フィルタ膜への入射角の角度の大きさに応じて、当該光線を透過させるか反射させるかを決定する。本発明の角度選択フィルタ膜103は、入射角が特定角度未満の赤色光を透過させ、波長変換材料から出射された被励起光及び入射角が特定角度より大きい赤色光を反射する。即ち、本発明において角度選択フィルタ膜103を設置する位置に、赤色光の入射角が小さい角度から大きくなると、赤色光は透過から徐々に反射に転換するように表現される膜層が存在し、この膜層は常に波長変換材料から出射される被励起光を反射する。このような膜層は本発明の角度選択フィルタ膜である。
【0018】
少しでも光学常識を有する者が知っているように、フィルタシートやフィルタ膜は、百パーセント全透過または反射することが難しく、ほぼ透過からほぼ反射までは直接遷移せず、高透過率から高反射率に転換する角度区間が必要である。従って、本文における特定の角度とは、赤色光が上記フィルタ膜103にある入射角で照射されたときの透過率が反射率に等しい場合の入射角度の角度である。赤色光の入射角が特定の角度より小さい場合には、赤色光はほとんど透過し、この特定角度よりも大きいとき、赤色光はほとんど反射する。この特定角度は、5~60度の間のいずれの角度であってもよく、この閾値(臨界値)となる特定角度があればよい。赤色光源側から放射される赤色光をできるだけ少なく反射するとともに、波長変換層側で散乱した赤色光をできるだけ多く反射するために、特定の角度が5~30度の間であることが好ましい。
【0019】
この角度選択フィルタ膜103は、例えば、真空蒸着法を用いて形成することができ、波長変換層102と後述する基板104との間に形成されることができる。
【0020】
この角度選択フィルタ膜103は、例えば、真空蒸着法によって波長変換層102の下面に形成し、透明、耐熱且つ伝熱性能の良好な接着剤を用いて基板104の上面に接着することができ、この接着剤には、屈折率が低い(例えば、屈折率が1.41)シリカゲルを用いることが好ましい。しかしながら、本発明はこれに限らない。
【0021】
角度選択フィルタ膜103を形成する別の方法では、この角度選択フィルタ膜103を真空蒸着法により基板104の上面に形成し、透明、耐熱且つ伝熱性能の良好な接着剤を用いて、波長変換層102を角度選択フィルタ膜103の表面に接着することができ、この接着剤の材料として、屈折率が低い(例えば、屈折率が1.41)シリカゲルを用いることが好ましい。
【0022】
角度選択フィルタ膜103を形成するさらに別の方法では、この角度選択フィルタ膜103を真空蒸着法により基板104の下面に形成し、波長変換層102の下面と基板104の上面とを、透明、耐熱且つ伝熱性能の良好な接着剤を用いて接着することができ、この接着剤の材料として、屈折率が低い(例えば、屈折率が1.41)シリカゲルを用いることが好ましい。
【0023】
図4は、可視光範囲における光のこの角度選択フィルタ膜103を透過する透過率曲線を示す。
図4に示すように、波長570nm未満の光は、反射され、620nmより大きい波長の光が透過され、これらの間に位置する光の一部が反射され、一部が透過する。
【0024】
<基板104>
通常、基板104は、光学ガラス、石英ガラスやサファイアからなる無色透明な基板であり、好ましくはサファイアからなる。この基板104は、波長変換層からの熱を伝導して速やかに放熱することができる伝熱基板として用いられる。
【0025】
<光路調整モジュール>
図1に示した第1実施形態では、光路調整モジュールは、青色励起光L3の光路において青色励起光源と波長変換装置との間に位置する集光レンズ101と、赤色光L1の光路において波長変換装置と赤色光源との間に位置する集光レンズ105とから構成される。
【0026】
集光レンズ101は、波長変換装置102の波長変換層102の表面に、平行な青色励起光L3を集光するとともに、
(1)波長変換層102の表面に吸収されずに反射して戻ってきた青色励起光L3、
(2)波長変換層102の表面からの出射光L2、及び
(3)波長変換装置を透過した赤色光L1を集光する。
【0027】
集光レンズ101を形成する材料は、透明プラスチック、ガラスやサファイア等であってもよく、石英ガラスを用いることが好ましい。
【0028】
集光レンズ105は赤色光L1を集光する。具体的には、集光レンズ105は、一つ又は複数の赤色光源から出射された光を小さい角度を持った光束に集光し、その光束が透明基板104の下面から入射し、基板104、角度選択フィルタ膜103及びYAG:Ce3+を主材料とする波長変換層102を透過した後、集光レンズ101に入射して、この赤色光L1を、励起された出射光L2および青色励起光L3と合光する。
【0029】
<光源>
図1において、L1は赤色光、L2は波長変換装置が出射する光、L3は青色励起光をそれぞれ表すため、
図1では図示しないが、光源は、赤色光光源と青色励起光源との2つの光源を含んでもよいことが分かる。
【0030】
図1に示すように、青色励起光L3は、集光レンズ101を介して波長変換層102に照射されることで、波長変換層102に含まれる波長変換材料を励起して、波長変換層102が励起した出射光L2を出射する。励起光が波長変換層102を励起する効率を高めるために、青色光源は、青レーザ光源、例えばレーザやレーザアレイであることが好ましい。
【0031】
赤色光L1は、集光レンズ105を介して波長変換装置の基板104の下面から入射される。この赤色光L1が角度選択フィルタ膜103に入射すると、小さい角度の赤色光L1のみが角度選択フィルタ膜103を透過し、大きい角度の赤色光L1が角度選択フィルタ膜103で反射する。角度選択フィルタ膜103及び波長変換層102を透過した後の赤色光L1は、励起した出射光L2及び青色励起光L3と合光する。
【0032】
本発明の上記構成によれば、青色励起光源に加えて、赤色光光源を採用しているため、波長変換層にはYAG:Ce3+を主材料としているため、波長変換装置における赤色光の高透過率を実現し、従来の赤色光不足の問題を解決することができる。
【0033】
また、上記により、角度選択フィルタ膜103の説明では、赤色光光源側の反射をできるだけ減らすとともに、波長変換層側の赤色光の反射をできるだけ増やすべきこと、すなわち、赤色光光源側の入射角はできるだけ小さく、波長変換層側の赤色光の入射角はできるだけ大きいことが要求されているため、赤色光光源は、赤色レーザ光源、例えば、赤色レーザ、または、赤色レーザアレイであることが好ましい。レーザの光束広がりが小さく、入射角が相対的に小さいため、特定の角度よりも小さい要求を満たしてほとんど透過せず、またほとんど全透過にでき、赤色光の利用率を向上させる。また、特定角度を小さく設計するほど、波長変換層側の赤色光反射量が多くなり、赤色光の利用率をより向上させる。
【0034】
また、本実施形態では、固定型のパッケージ、すなわち、各部品の位置が固定されるため、基板104の周囲と下面にさらに放熱できる構造を設けることができる。
【0035】
また、本実施形態において、青色励起光源および赤色光源は、それぞれ独立した2つの回路モジュールで個別に制御される。シングルDMDシステムでは、回路システムの信号と光路変換システムの信号とが同期することにより、赤色光の出射や赤色光の輝度の向上が図られる。
【0036】
また、赤色光源が出射する赤色レーザ光は、スペックル等の問題を生じやすいため、本実施形態では波長変換層102を形成するための材料としてYAG:Ce3+の蛍光体とアルミナを混合して焼結した複相セラミックスを用いることが好ましい。当該複相セラミックスは結晶粒界が複雑であり、その結晶粒界における散乱・屈折現象により、赤色レーザの偏光特性が変化し、赤色光発生のスペックル問題が効果的に低減される。
【0037】
図5は、本発明の第2実施形態におけるレーザ光源システムを示す模式図である。
図5に示すように、本発明の第2実施形態におけるレーザ光源システムは、同様に波長変換装置と、光路調整モジュールと、レーザ光源(図示せず)と、を備える。
【0038】
第2実施形態は、第1実施形態と比較して、以下の相違点を有する。
【0039】
1.光路調整モジュールには、第1実施形態の集光レンズ105に代わりに、光路において波長変換装置と赤色光源との間に位置する全反射レンズ206が備えられる。
【0040】
2.レーザ光源システムは、基板204と、基板204上に設けられた波長変換層102および角度選択フィルタ膜103とを回転させるモータ205と、金属からなるモータホルダ207とを備え、モータホルダ207は、モータを支持して固定する。
【0041】
第2実施形態では、全反射レンズ206は、モータホルダ207に固定され、例えば石英ガラス材で形成されている。
図5に示すように、この全反射レンズ206は全反射面206aを有し、当該全反射面206aは赤色光源からの光を反射して波長変換装置を透過させて、出射光L2および青色励起光L3と合光する。
【0042】
他の変形形態では、全反射レンズを赤色光源から遠ざかる向きに45°傾けて全反射レンズを設けることにより、全反射レンズ206を形成することができる。この全反射レンズ206の具体的な設定形態や位置を示しているが、本実施形態は、制限的なものではなく例示に過ぎない。従って、全反射レンズ206は、赤色光の光路において波長変換装置と赤色光源との間に位置し、赤色光を波長変換装置に導くものであれば、本発明の精神的範囲に属する。
【0043】
また、第2実施形態では、モータ205により波長変換装置を回転させることで、波長変換装置は、この回転によりに放熱することができ、波長変換装置の放熱効果をより向上させることができる。
【0044】
この他に、第2実施形態における集光レンズ201、波長変換層202、角度選択フィルタ膜203、基板204は、第1実施形態における集光レンズ101、波長変換層102、角度選択フィルタ膜103、基板104と構成および特性と同じであるため、関連する説明は省略する。
【0045】
第2実施形態のレーザ光源システムにおいても、第1実施形態と同様に、青色励起光源、赤色光源およびYAG:Ce3+材料を主とする波長変換層が用いられているため、出射光L2に赤色光を追加的に増加させることができ、従来の赤色光不足の問題を解決する。
【0046】
また、第2実施形態では、青色励起光源と赤色光源とが、それぞれ独立した2つの回路モジュールで個別に制御される。シングルDMDの光機システムの投影光源について、回路システムの信号と光路変換システムの信号とが同期することにより、赤色光の輝度を高める効果が得られる。また、3DMD光機システムの投影光源については、信号同期をとる必要がない。
【0047】
また、赤色光はスペックル等の問題を生じやすいため、本実施形態では波長変換層102を形成するための蛍光セラミックスとしてYAG:Ce3+の蛍光体とアルミナを混合した後に焼結して得られた複相セラミックスを用いることが好ましい。当該の複相セラミックスの結晶粒界における散乱及び屈折現象、並びに波長変換装置の回転は、赤色光発生のスペックル問題を効果的に低減することができる。
【0048】
本発明の第1及び第2実施形態では、励起光源を青色光励起光源に限定しているが、他の色の励起光源を採用してもよい。
【0049】
以上の実施形態による説明から分かるように、本発明は、赤色光とYAG:Ce3+材料を主とする波長変換層を有する波長変換装置を用いるとともに、励起光源と結合して混合光源を有するレーザ発光システムを提供する。当該システムは、従来の蛍光体励起技術における赤色光不足の問題を効果的に解決することができる。
【0050】
具体的には、本発明では、YAG:Ce3+材料の波長変換層により赤色光に対する透過率を80%以上とし、赤色光光源を増加させ、赤色光を波長変換装置に透過させることで、赤色光と波長変換装置の出射光と青色励起光とを合光する混合光源を実現しつつ、混合光における赤色光の割合を向上させて、従来技術において不足している赤色光を補完する。
【0051】
また、上記第1および第2実施形態には、いずれも青色光および赤色光を波長変換装置に導くためのレンズや反射レンズなどの光路調整モジュールが記載されているが、本発明では、この光路調整モジュールを含まず、青色光および赤色光を直接波長変換装置に入射してもよい。
【0052】
当業者は、設計要件やその他の要因に応じて、本発明に付随する請求項やその均等物の範囲内で、種々の変更、組み合わせ、一次組み合わせ、及び変更が可能であることを理解すべきである。