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特許7270005情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 99/00 20190101AFI20230427BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230427BHJP
【FI】
G06N99/00 180
G06Q10/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021131723
(22)【出願日】2021-08-12
(65)【公開番号】P2023026082
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591115475
【氏名又は名称】株式会社三菱総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 和広
(72)【発明者】
【氏名】板倉 豊和
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-185573(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187933(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/015134(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/152993(WO,A1)
【文献】特開2007-031541(JP,A)
【文献】特開2000-343380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00 - 99/00
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計情報についての入力を受け付ける受付部と、
初期情報を記憶部から読み出す又は入力部から受け付け、当該初期情報と前記設計情報とから、採用項目及び当該採用項目に対する採用値を有する採用情報を探索する探索部と、
を備え
記憶部から既存事例の採用項目における実績値を読み出し、
複数の採用項目が存在し、対応する採用項目における実績値と採用値との差分の合計値、対応する採用項目における実績値と採用値との差分の絶対値の合計値、又は対応する採用項目における実績値と採用値との差分を演算した結果の合計値を用いて評価を行う評価部を備え、
前記評価部は、評価に用いた合計値のうち所定の閾値以下となる値がある場合には低評価とする情報処理装置。
【請求項2】
前記設計情報は設計値を有し、
前記採用情報に基づいて算出される予測値を予測する推測部を備え、
前記予測値と前記設計値との差分を用いて、前記採用情報の評価を行う評価部を備える請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記評価部は、対応する採用項目における予測値と設計値との差分の合計値、対応する採用項目における予測値と設計値との差分の絶対値の合計値、又は対応する採用項目における予測値と設計値との差分を演算した結果の合計値を用いて評価を行う請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記探索部は、複数の採用項目の間における相関関係を用いて、ある採用項目が選択された場合において別の採用項目を選択する請求項1乃至のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記探索部は、ある採用項目及び当該ある採用項目における採用値から、別の採用項目おける採用値を設定する請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記採用項目は原材料情報を含み、
前記設計情報は味覚情報又は色彩情報を含む請求項1乃至のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
受付部によって、設計情報についての入力を受け付ける工程と、
初期情報を記憶部から読み出す又は入力部から受け付け、当該初期情報と前記設計情報とから、探索部によって、採用項目及び当該採用項目に対する採用値を有する採用情報を探索する工程と、
を備え
記憶部から既存事例の採用項目における実績値を読み出し、
複数の採用項目が存在し、評価部が、対応する採用項目における実績値と採用値との差分の合計値、対応する採用項目における実績値と採用値との差分の絶対値の合計値、又は対応する採用項目における実績値と採用値との差分を演算した結果の合計値を用いて評価を行い、前記評価部において評価に用いた合計値のうち所定の閾値以下となる値がある場合には低評価とする
情報処理方法。
【請求項8】
情報処理装置にインストールされるプログラムであって、
前記プログラムがインストールされた情報処理装置に、
設計情報についての入力を受け付ける受付機能と、
初期情報を記憶部から読み出す又は入力部から受け付け、当該初期情報と前記設計情報とから、採用項目及び当該採用項目に対する採用値を有する採用情報を探索する探索機能と、
記憶部から既存事例の採用項目における実績値を読み出す読出機能と、
複数の採用項目が存在し、対応する採用項目における実績値と採用値との差分の合計値、対応する採用項目における実績値と採用値との差分の絶対値の合計値、又は対応する採用項目における実績値と採用値との差分を演算した結果の合計値を用いて評価を行う評価機能と、
を実行させ
前記評価機能は、評価に用いた合計値のうち所定の閾値以下となる値がある場合には低評価とすることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採用項目に対する採用情報を探索する探索部を有する情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工知能が着目を浴びており、人工知能を用いたモデルを適用し、ある事象が起こることを予測することが試みられている。例えば特許文献1では、人工知能による機械学習を利用したサービスを提供するサービス提供システムが提供されており、ユーザから送られてくる情報を基にした学習データを入力して機械学習によりモデル化した一般的なモデルを生成するための機械学習手段と、ユーザから送られてくる情報に基づいて一般的なモデルを当該ユーザに適したモデルにパーソナライズ化するためのパーソナライズ化手段と、パーソナライズ化されたモデルを用いて当該ユーザにパーソナライズ化されたサービスを提供するサービス提供手段と、を有するサービス提供システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019―32857号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなモデルは、ある条件を入力した際にある結果を予測するために用いるためのものであり、本願における「順方向モデル」に関するものである。
【0005】
本発明は、目標とする設計情報から逆算して、必要な条件を導き出すということを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による情報処理装置は、
設計情報についての入力を受け付ける受付部と、
初期情報を記憶部から読み出す又は入力部から受け付け、当該初期情報と前記設計情報とから採用情報を探索する探索部と、
を備えてもよい。
【0007】
本発明による情報処理装置において、
前記採用情報は採用項目及び当該採用項目に対する採用値を有し、
記憶部は既存事例の採用項目における実績値を記憶し、
本発明による情報処理装置は、
対応する採用項目における前記採用値及び前記実績値との差分を用いて、採用値の評価を行う評価部を備えてもよい。
【0008】
本発明による情報処理装置において、
複数の採用項目が存在し、
前記評価部は、対応する採用項目における実績値と採用値との差分の合計値、対応する採用項目における実績値と採用値との差分の絶対値の合計値、又は対応する採用項目における実績値と採用値との差分を演算した結果の合計値が最も小さくなる値を用いて評価を行ってもよい。
【0009】
本発明による情報処理装置において、
前記設計情報は設計値を有し、
本発明による情報処理装置は、
前記採用情報に基づいて算出される予測値を予測する推測部を備え、
前記予測値と前記設計値との差分を用いて、前記採用情報の評価を行う評価部を備えてもよい。
【0010】
本発明による情報処理装置において、
複数の採用項目が存在し、
前記評価部は、対応する採用項目における予測値と設計値との差分の合計値、対応する採用項目における予測値と設計値との差分の絶対値の合計値、又は対応する採用項目における予測値と設計値との差分を演算した結果の合計値を用いて評価を行ってもよい。
【0011】
本発明による情報処理装置において、
前記探索部は、複数の採用項目の間における相関関係を用いて、ある採用項目が選択された場合において別の採用項目を選択してもよい。
【0012】
本発明による情報処理装置において、
前記探索部は、ある採用項目及び当該ある採用項目における採用値から、別の採用項目おける採用値を設定してもよい。
【0013】
本発明による情報処理装置において、
前記採用項目は原材料情報を含み、
前記設計情報は味覚情報又は色彩情報を含んでもよい。
【0014】
本発明による情報処理方法は、
受付部によって、設計情報についての入力を受け付ける工程と、
採用項目における初期情報を記憶部から読み出す又は入力部から受け付け、当該初期情報と前記設計情報とから、探索部によって、前記採用項目に対する採用情報を探索する工程と、
を備えてもよい。
【0015】
本発明によるプログラムは、
情報処理装置にインストールされるプログラムであって、
前記プログラムがインストールされた情報処理装置に、
設計情報についての入力を受け付ける受付機能と、
初期情報を記憶部から読み出す又は入力部から受け付け、当該初期情報と前記設計情報とから採用情報を探索する探索機能と、
を実行させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、目標とする設計情報から逆算して、必要な条件を導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態による情報処理装置のブロック図である。
図2図2は、本発明の実施の形態において入力される情報と出力される情報との関係の一例を示した図である。
図3図3は、本発明の実施の形態において確率分布を用いる態様の一例を説明するための図である。
図4図4は、本発明の実施の形態における最適化の一例を示した図である。
図5図5は、本発明の実施の形態で用いられるL2の算出態様を説明するためのグラフである。
図6図6は、本発明の実施の形態で用いられる逆方向モデル及び順方向モデルを用いた態様の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態
《構成》
本実施の形態の情報処理装置は、一つの装置から構成されてもよいし複数の装置から構成されてもよい。本実施の形態では、本実施の形態の情報処理装置を用いた情報処理方法、情報処理装置を生成するためにインストールされるプログラム(サーバプログラム)や、当該プログラムを記憶したUSB、DVD等からなる記憶媒体も提供される。本実施の形態の情報処理装置はサーバであってもよく、クラウド環境を利用した態様を採用することもできる。また、本実施の形態では、ユーザ端末にインストールされるプログラム(ユーザプログラム)や、当該プログラムを記憶したUSB、DVD等からなる記憶媒体も提供される。
【0019】
本実施の形態の情報処理装置は、食品や薬品の設計、工業製品や構造物の設計に用いることができ、例えば得たい味や得たい効能から逆算する際に用いてもよいし、得たい機能から逆算する際に用いてもよい。
【0020】
図1に示すように、情報処理装置は、目標とする設計値等の設計情報を入力するための入力端末等の入力部10と、入力部10からの設計情報を含むあらゆる情報の入力を受け付ける受付部80と、採用項目における初期値等の初期情報を記憶部60から読み出す読出部20と、採用項目及び初期値と設計値とから、採用項目に対する採用値等の採用情報(採用条件)を探索する探索部30と、様々な情報を出力する出力部90と、を有してもよい。出力部90から出力された情報は、ディスプレイ等の表示部190で表示されてもよい。本実施の形態による情報処理装置は、設計情報から採用項目に関する情報を出力する「逆方向モデル」を用いる。本実施の形態では、「順方向モデル」を用いてもよく、「順方向モデル」と「逆方向モデル」の両方が用いられてもよい。このような順方向モデルは図1に示す推測部70において適用されてもよい。以下では、主として、設計情報として設計値、初期情報として初期値、採用情報として採用値を用いて説明するが、これに限られることはない。なお、入力部10としてはパソコン、タブレット、スマートフォン等の端末を用いてもよい。本願において、「又は」は「及び」を含む概念であり、「A又はB」という記載は、A単独、B単独と、A及びBの両方のいずれの態様も含んでいる。
【0021】
推測部70で用いられる順方向モデルでは、原材料(原料又は材料)、製法等を数値化し、ランダムフォレスト等のモデルにより得られる成分を推定してもよい。また入力部10から製法や製造上の諸条件を記入したり選択したりすることで、採用項目が探索部30によって自動で選択されてもよいし、製法や製造上の諸条件を採用項目の一つとして入力部10から記入したり選択したりするようにしてもよい。
【0022】
探索部30及び推測部70は人工知能機能を有してもよく、機械学習を行うようにしてもよい。
【0023】
本実施の形態の情報処理装置は、設計情報が入力部10から入力されてもよい。設計情報は、採用項目と、当該採用項目における目標とする設計値を含んでもよい。採用項目と、当該採用項目における目標とする設計値が入力されると、採用項目に対する初期情報が記憶部60から読み出されてもよい。また、採用項目に対する初期情報は入力部10から入力され、受付部80で受け付けられてもよい。また、入力された採用項目から、別の採用項目が選択され、当該採用項目に対する初期値が設定されてもよい。なお、設計情報を入力部10で入力することで、読出部20が適切な採用項目を記憶部60から読み出すようにしてもよいし、探索部30が適切な採用項目を探索してもよい。採用項目は複数の項目が設けられてもよい。採用項目も複数の項目が設けられてもよい。採用項目と初期値が決定されると、目標とする設計値を達成するための採用項目における値が探索部30によって探索されることになる。
【0024】
目標とする設計値を一つ決定した場合に、当該設定値を達成するための採用項目における値が複数存在することも考えられることから、採用項目において採用できる値を所定の範囲に限定してもよい。すなわち、許容可能な探索範囲を予め決定しておき、当該探索範囲内で採用項目における数値が決定されるようにしてもよい(図4参照)。
【0025】
採用項目としては原材料や製造工程を選択できるようにしてもよい。採用項目として原材料を用いる場合には原材料A、原材料B、・・・、原材料Nを選択しておき、得られる結果から逆算されて各原材料の分量が探索部30で探索されてもよい。採用項目として製造工程を用いる場合には、例えば加熱、混合、・・・、乾燥等の各工程が採用項目として選択されると、各工程の時間が探索部30で探索されてもよい。加熱の場合には加熱温度等、混合の場合には混合回転数等が探索部30で探索されてもよい。また加熱温度を採用項目として設定する場合には、当該加熱温度での加熱時間が探索部30で探索され、混合回転数を採用項目として設定する場合には、当該混合回転数での混合時間が探索部30で探索されることになってもよい。また、化学反応であれば、反応温度、反応時間、pH値等が採用項目として選択されると、反応温度ごとの反応時間や、反応時のpH値が探索部30で探索されることになってもよい。
【0026】
入力部10から、絶対に利用する条件及び/又は絶対に利用しない条件(制約条件)を入力できるようにしてもよい。この場合には、当該条件を守りながら採用項目における値が探索されることになる。図2に示す態様では、目標とする成分値と、項目毎の探索オプションを入力部10から入力する態様となっている。探索オプションにおいて、「固定」とは、その値を変数ではなく固定値として扱うことを意味し、例えば入力部から入力された値がそのまま採用値になることを意味する。また、「非固定」とは、その値を変数として扱うことを意味し、例えば入力された値を初期値として探索し、探索された値を採用値とすることを意味する。なお、図2に示す態様では、探索値の初期値が入力部10から入力される態様となっている。そして、ある採用項目に関する探索オプションが「固定」の場合には、当該ある採用項目に関して入力された値が、そのまま設計値になる。
【0027】
最適化においては、所定の時間が経過した際に導き出された探索結果が複数出力されるようにしてもよい。また、予め閾値が設定されており、所定の時間が経過した際に当該閾値を超える探索結果が複数出力されるようにしてもよい。このような出力は出力部90によって行われることになる。出力された結果を受けてユーザが探索値等の探索情報を入力部10で選択し、選択された探索情報に基づいて推測部70が順方向モデルを用いて結果の推測を行ってもよい。探索結果が複数存在する場合には、各々に対して推測部70が順方向モデルを用いて結果の推測を行ってもよい。また、最適化においては、逆方向モデルの適用と順方向モデルの適用が複数回繰り返されてループするようにしてもよい。そして、所定の回数だけループした結果が複数出力されるようにしてもよい。この場合には、逆方向モデルを適用して探索された探索結果に対して、順方向モデルが適用されて、評価がなされることになるが、この評価の結果を次の初期値として逆方向モデルが適用されて次の探索結果が導き出されることになる。
【0028】
図6に示す態様では、設計値である目標性能Yを逆方向モデルに適用することで、採用値である設計候補案が複数提示されている。この設計候補案が評価され(図6では「設計の妥当性」という項目で示されている。)、適切な設計候補案が1以上選択されて、設計変数Xとして、順方向モデルに適用されて、被設計変数Yが提示されることになる。被設計変数Yが評価され(図6では「性能の再現性」という項目で示されている。)、必要に応じて修正される。修正された場合には次回の目標性能Yとされ、再度、逆方向モデルに適用されることになる。以降は、この工程が繰り返される。設計実績データは、設計情報と性能情報とがペアとなって記憶部60で記憶されるようにしてもよい。なお、学習用データをアルゴリズムに投入して、順方向モデル及び/又は逆方向モデルを生成してもよい。
【0029】
本実施の形態によれば、初期値を適宜選択することで異なる探索結果を得ることができる。つまり、初期値を変えることで異なる探索結果を得ることができ、様々な探索結果を得ることができる。このようにして得られた探索結果は設計値を得るための候補リストとして記憶部60が記憶してもよい。
【0030】
ユーザは記憶部60から候補リストを参照として実際の製品等の物を製造し、物の味、効能、機能等の実際の結果を検証するようにしてもよい。
【0031】
記憶部60は既存事例の採用項目及び採用項目における実績値等の実績情報を記憶してもよい。
【0032】
実績値としては過去に製造された製品又は販売された商品(試作品を含む。)についての情報が用いられてもよい。この場合、記憶部60から読み出される初期情報は過去に製造された製品又は販売された商品についてのデータとなってもよい。入力部10から製品又は商品を特定する特定情報(例えば、製品名又は商品名、識別番号、型番等)が入力可能となり、特定情報が入力されることで、特定情報に紐づけられた製品又は商品における採用項目の情報が読出部20によって初期情報として読み出されてもよい。このような態様によれば、設計情報から逆算する際に既存の製品又は商品におけるデータをスタート地点として探索が開始されることから、既存の製品又は商品の改良版として、採用項目に関する情報を得ることができる。
【0033】
実績値は採用項目毎に個別に設定されてもよく、採用項目Aでの実績値をa1~an、採用項目Bの実績値をb1~bn、・・・、採用項目Zでの実績値をz1~znとしてもよい。この場合には、各採用項目での値が実績値であり、採用項目の組み合わせは必ずしも既存の製品又は商品で用いられている実績値ではない。
【0034】
採用値及び実績値との差分を用いて、採用値の評価を行う評価部40が設けられてもよい。なお、本実施の形態において、「採用値及び実績値との差分を用いて採用値の評価を行う」というのは、採用値及び実績値の差分、差分の絶対値又は差分を演算した結果を用いて評価を行うことを含んでいる。一例として、評価部40は、対応する採用項目における予測値と設計値との差分の合計値、対応する採用項目における予測値と設計値との差分の絶対値の合計値、又は対応する採用項目における予測値と設計値との差分を演算した結果の合計値を用いて評価を行ってもよい。評価部40は実績値と採用値が遠すぎる場合(差分が大きすぎる場合)と近すぎる場合(差分が小さすぎる場合)に低い評価としてもよい。この場合には、例えば、採用項目における実績値と採用値との差分の二乗を加算した合計値を用いて評価を行うようにしてもよい。図4に示す態様では、過去に実施したレシピからの値の差分を見る態様を示しており、実績値(過去のレシピ)と採用値が近すぎる場合と、実績値(過去のレシピ)と採用値が遠すぎる場合には評価部40が低い評価を示し、一定の距離(差分)の範囲内にある採用値を探索部30が探索する態様を示している。図4の「(A)既存事例との差異が適切な範囲に収まるように探索」の矢印は一定の距離(差分)の範囲内にある採用値を探索部30が探索する様子を示している。評価部40は、採用項目及び採用値に基づいて算出される予測値と設計値との差分を用いて、採用値の評価を行ってもよい(図4の「(B)目標成分値に近くなるように探索」参照)。
【0035】
このような評価部40での評価結果を用いて最適化が行われてもよい。図2に示す最適化の一例として、前述したように、推測部70による推測と探索部30による探索が複数回繰り返され、推測部70による推測結果と探索部30による探索結果が評価部40で評価されてもよい。このような推測と探索の繰り返しは自動で行われてもよく、前述したとおり、所定の時間が経過した際に導き出された探索結果が複数出力されるようにしてもよい。また、所定の回数のループが完了した際に導き出された探索結果が複数出力されるようにしてもよい。また、予め閾値が設定されており、所定の時間が経過した際に当該閾値を超える探索結果が複数出力されるようにしてもよい。
【0036】
推測部70によって得られた予測情報と設定情報との関係から、採用情報が自動で変更されてもよいし、入力部10からの入力で採用情報が変更されてもよい。予測情報として予測値が複数出される場合には、各予測値が設定値に近づくように採用値が自動で又は入力部10からの入力で変更されるようにしてもよい。このような操作(逆方向モデルと順方向モデルを利用した操作)が複数回繰り返されると、設定値に対して閾値以上で動かないようになり、値として収束することになるのが一般的である。このような収束が起こった段階で、採用値が決定されてもよい。図4の「(B)目標成分値に近くなるように探索」における矢印は、推測部70によって得られた予測情報が設定情報に近づくように移動する態様を示している。
【0037】
前述したように、推測と探索の繰り返しが複数回行われる場合には、探索部30による探索結果は毎回同じ個数(例えば50個)だけ出力され、当該探索結果に対する評価(第一評価)が行われてもよい。一例としては、逆方向モデル及び順方向モデルを一度適用した結果による探索値が目標となる設計値に近づくように2回目の初期値を修正し、再度、逆方向モデルを適用して2回目の探索値を複数探索するようにしてもよい。その後は、このような工程が繰り返されて行われ、一定回数のループが完了した時点での候補が出力部で出力されてもよい。なお、各ループが完了した時点での探索結果が評価結果とともに出力されて、表示部190で表示されてもよい。ここでの評価結果には、逆方向モデルを適用した際における評価結果(第一評価結果)と、順方向モデルを適用した際における評価結果(第二評価結果)の両方が含まれてもよい。また、第一評価結果と第二評価結果の各々に所定の係数をかけて足し合わせた結果を評価結果として用いてもよい。
【0038】
複数の採用項目が存在し、各採用項目について複数の実績値が存在してもよい。評価部40は、各採用項目における実績値のうち採用値に最も近い最近接実績値を選択し、各採用項目における採用値と最近接実績値との差分、差分の絶対値又は差分を演算した結果を合算していき、合算した合計値が最も小さくなる値を用いて評価を行ってもよい。演算の一例としては、差分を二乗してもよいし、差分の絶対値をルート(√)内に入れてもよい。この場合には、差分の二乗した結果又は差分の絶対値をルート内に入れた結果が合算されて合計値が算出されることになる。
【0039】
設計情報において複数の採用項目が存在する場合には、評価部40は、同じ採用項目に対する予測値と設計値との差分を用いて評価を行い、予測値と設計値との差分の合計値を用いて評価(第二評価)を行ってもよい。このような予測値は、採用値に基づいて推測部70が順方向モデルを用いることで得られる値である。
【0040】
複数の採用項目の間における相関関係を設定する条件設定部50が設けられてもよい。
【0041】
条件設定部50は、相関関係として、ある採用項目が選択された場合において他の採用項目が選択される確率を設定してもよい。
【0042】
一例として過去に用いられた原材料同士の組み合わせ、原材料と製法の組み合わせ等を確率分布として設定し、その確率分布から乱数を生成することにより、どの原材料・製法を用いるかを指定してもよい。その上で最適化手法を適用することで、レシピとしての妥当性が高く、かつ目的とする成分を満たし、かつバリエーションを持つ多数のレシピ候補を生成することができる。図3に示す態様では、原材料の種類(使用数)を選択することで、相互依存性を考慮して使用される原材料が採用確率を用いて選択され、使用量の初期値が選択されることになる。この際、多変量ベルヌーイ分布や正規分布等が用いられてもよい。
【0043】
採用項目は原材料情報を含んでもよい。設計値は味覚情報や色彩情報を含んでもよい。この場合には、採用項目として複数の原材料を指定した上で、味覚や色彩に関する設計値を入力することで、各原材料の採否、及び採用する原材料の量が探索部30で探索されることになる。物理的な構造であれば、シミュレーションを工夫することで概ねの結果を予測できる。他方、味覚や色彩等は予測が困難な場合があり、設計値として味覚情報や色彩情報等の化学的な情報を含んでいる場合には、本実施の形態による態様は通常の感覚では予測できない結果を容易かつ高い精度で推測できる点で有益である。
【0044】
複数の原材料を混合して生成する態様に採用する場合には、予測しづらい傾向にあるが、本実施の形態によれば、高い精度で予測できる。
【0045】
食品であれば、採用項目として「食品の成分値」を入力し、「原材料」「製造方法」等の諸条件が出力されてもよい。
【0046】
プラスチック製品成型であれば、採用項目として「色」「強度」「手触り」を入力し、「原料配合」「加熱温度/時間」「成型型サイズ/素材」等の諸条件が出力されてもよい。
【0047】
化粧品配合であれば、採用項目として「なめらかさ」「色」「保湿力」「香り」「消費期限」を入力し、「原料配合」「色素種類」「香料種類」「容器形状」等の諸条件が出力されてもよい。
【0048】
冷凍食品包装であれば、採用項目として「食品種類」「保存温度」「加熱調理時間」「食品大きさ」を入力し、「冷凍温度/時間」「パッケージ材質/形状」「食品形状」等の諸条件が出力されてもよい。
【0049】
住宅設計であれば、採用項目として「部屋数」「駐車場有無」「リビング広さ」「ベランダ向き」「耐震性・耐火性」を入力し、「敷地面積」「階数」「部屋割り」「構造」「壁材質」等の諸条件が出力されてもよい。
【0050】
花栽培であれば、採用項目として「花種類」「出荷時期」「花の色」「花の大きさ」「葉の大きさ」を入力し、「種まき時期」「温度」「湿度」「水やり回数/量」「収穫時期」「保管方法」等の諸条件が出力されてもよい。
【0051】
評価部40における評価としては、一例として、以下のような態様を用いることができる。
【0052】
以下の2つの条件を最適化の「評価関数」として考慮する(図4参照)。
(A)目標成分値に近いこと(=L1)(第二評価)
(B)既存事例との差異が適切な範囲に収まっていること(=L2)(第一評価)
【0053】
最終的な評価関数Lは、(A)と(B)のバランスを取るために、L1とL2を重み付きで足し合わせて計算する。
【0054】
1の評価:複数の採用項目における成分値(本実施例では一例として6成分)について、設定した目標値
と予測値yの差異の二乗和を使用する。なお、成分値と予測値は規格化されてもよく、例えば概ね0~1の範囲になるように調整される。
【数1】
式1において、yiはある成分の予測値であり、
は当該ある成分の目標値である。
【0055】
2の評価:条件(レシピ)について、探索値xと過去の事例(実績値)
の差異の二乗和を用いてレシピ間の距離を計算し、最も近い事例(実績値)との距離dに対する関数として設定する。
【数2】
式2において、k1及びk2は適宜な正の定数であり、この数式を図示すると図5のようになる。dが小さい場合には「k1/d」(第1項)が急激に大きくなり、その結果としてL2が大きくなる。dが大きい場合には「k22」が大きくなる。
【数3】
式3において、xlはある条件l(採用項目)における探索値であり、
は当該ある条件lについての実績値であり、kは実績番号等の実績識別値である。つまり、
は、kという実績識別値における条件lについての実績値である。式3によれば、探索値と実績値との条件(採用項目)における差分が合計され、この合計値が実績値毎に算出され、合計値の最小値がdとして算出されることになる。なお、各採用項目にける探索値と実績値は規格化されてもよく、例えば概ね0~1の範囲になるように調整される。
【0056】
条件(レシピ)の数値が大きくなりすぎることを防ぐために調整項としてL3を設定してもよい。
【数4】
式4において、c1、c2及びc3は適宜な正の定数である。このLが小さくなる場合に評価部40での評価が高くなる。c1、c2及びc3の値や入力部10から入力されてもよいし、読出部20によって記憶部60から既存値が読み出されてもよい。
【0057】
3のような調整項は設けられなくてもよく、この場合には、L=c1×L1+c2×L2という数式が用いられることになる。なお、L3は例えば下記のような数式で示される。
【数5】
【0058】
本実施の形態の読出部20、探索部30、評価部40、条件設定部50等は一つのユニット(制御ユニット)によって実現されてもよいし、異なるユニットによって実現されてもよい。複数の「部」による機能が統合されてもよい。また、読出部20、探索部30、評価部40、条件設定部50等は回路構成によって実現されてもよい。
【0059】
《効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による効果であって、未だ説明していないものを中心に説明する。「構成」で説明していない構成であっても「効果」で用いたいずれの構成も本件発明では採用することができる。
【0060】
目標とする設計情報を入力し、初期情報を記憶部60から読み出す又は入力部10から受け付け、初期情報と前記設計情報とから採用情報を探索する態様を採用した場合には、目標とする設計情報を実現するための採用情報を、高い信頼性の下、容易に得ることができる。
【0061】
採用値及び実績値との差分を用いて採用値の評価を行う態様を採用した場合には、実績値を基準として評価を行うことができる。評価部40による評価は、実績値からの距離が第一閾値以下である場合又は第二閾値以上の場合には低い値となるようにしてもよい(図4参照)。実績値からの距離(実績値との差)が第一閾値以下である場合に低い値で評価部40が評価する場合には、実績値と近いものを除外することができ、新しい内容の採用情報を得ることが期待できる。他方、実績値からの距離(実績値との差)が第二閾値以上である場合に低い値で評価部40が評価する場合には、実績値から大きく外れているものを除外することができ、実績から離れすぎており、想定外の効果が発生する等の想定外の事態が発生することを事前に防止できる。順方向モデルとして機械学習モデルを採用する場合には、想定している範囲内では予測精度が高くなるが、想定している範囲を外れた場合には予測精度が高くないこともあり得る観点からもこの態様は有益である。特に推測部70で用いられる順方向モデルが過去の事例から学習したモデルからなる場合には有益である。
【0062】
評価部40が、各採用項目における実績値のうち採用値に最も近い最近接実績値を選択し、採用値と最近接実績値との差分の合計値が最も小さくなる値を用いて評価を行う態様を採用した場合には、最近接実績値を用いて実績値から近すぎるか又は遠すぎるかを評価できる点で有益である。
【0063】
最近接実績値は採用項目毎の最近接値であってもよいが、既存の製品又は商品における採用項目セット(複数の採用項目及び採用項目毎の採用値)での最近接値であってもよい。この態様を採用した場合には、既存の製品又は商品での値を基準に距離を測ることができる点で有益である。他方、採用項目毎の最近接値を採用する場合には、採用項目セットではなく、実績の有無をベースとしての距離を基準として評価することができる点で有益である。なお、最近接であるか否かの判断でも、採用項目毎の採用値と実績値との差の二乗の合計や差の絶対値の合計を評価値として用い、当該評価値が最も小さいものを最近接実績値として利用してもよい。
【0064】
評価部40が採用項目及び採用値に基づいて算出される予測値と設計値との差分を用いて採用値の評価を行う態様を採用した場合には、予測値による設計値に対する評価を行うことができる(図4参照)。
【0065】
評価部40が、同じ採用項目に対する予測値と設計値との差分を用いて評価を行い、予測値と設計値との差分の合計値を用いて評価を行う態様を採用した場合には、予測値と設定値の全体的な差分を用いて評価を行うことができる。
【0066】
複数の採用項目の間における相関関係を設定する条件設定部50が設けられる場合には、採用項目間の相関関係を加味して予測できる(図3参照)。この相関関係として、ある採用項目が選択された場合において他の採用項目が選択される確率が設定されている場合には、高い確率の相関関係があるときに、ある採用項目が選択された場合に他の採用項目が自動的に選択することができ、適切な採用項目を選択することができるようになる。また、ある採用項目とその値が設定された場合に他の採用項目とその値が自動的に設定することができる場合には、適切な採用項目が選択されるだけではなくその値も適切に設定することができるようになる。このため、確率に応じた複数の採用項目やその値を適切に得ることができる。なお、複数回のループを繰り返す場合には、2回目以降の採用項目やその値を設定する際にも、探索部30が相関関係を加味して採用項目やその値を選択するようにしてもよい。
【0067】
本実施の形態による態様は様々な分野に用いることができる。典型的には、製品スペックを入力することで、製品スペックを実現する製造条件が出力されることになる。
【0068】
上述した実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の請求項の記載はあくまでも一例であり、明細書、図面等の記載に基づき、請求項の記載を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0069】
10 入力部
20 読出部
30 探索部
40 評価部
50 条件設定部
60 記憶部
70 推測部
80 受付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6