(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物、フィルム、積層体、包装体、および包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20230427BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20230427BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20230427BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230427BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230427BHJP
B32B 27/32 20060101ALN20230427BHJP
B32B 7/06 20190101ALN20230427BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/04
C08L33/10
C08L23/08
C09K3/10 Z
B32B27/32 E
B32B7/06
(21)【出願番号】P 2021186821
(22)【出願日】2021-11-17
(62)【分割の表示】P 2017103529の分割
【原出願日】2017-05-25
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雄太
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/080491(WO,A1)
【文献】特開平05-247239(JP,A)
【文献】特開平09-255804(JP,A)
【文献】特開平03-258843(JP,A)
【文献】特開2011-174088(JP,A)
【文献】特開2013-234261(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118413(WO,A1)
【文献】特開平09-272762(JP,A)
【文献】特開2012-081615(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194704(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0137824(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C09K 3/10 - 3/12
B32B 1/00 - 43/00
B65D 1/32 - 81/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):組成物全量に対して5質量%以上20質量%以下のポリプロピレン重合体と、
成分(B):溶解パラメータ(Solubility Parameter:δ、以下、sp値という)((cal/cm
3)
1/2)が前記成分(A)とは異なる重合体と、
成分(C):組成物全量に対して1質量%以上3質量%未満の造核剤と、
が配合されてな
り、
前記成分(B)の重合体は、エチレン・メタクリル酸共重合体または低密度ポリエチレン共重合体のいずれか1以上であり、
前記成分(A)のポリプロピレン重合体と前記成分(B)の重合体とのsp値の差の絶対値が、0.7以上1.2以下であり、
前記成分(A)および前記成分(B)のメルトフローレート(230℃、2160g荷重下)(JIS K7210)について、海構造を示す前記成分(B)の重合体のメルトフローレートに対し、島構造を示す前記成分(A)のポリプロピレン重合体のメルトフローレートの割合が、0.1以上1.2以下である
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物において、
前記成分(A)のポリプロピレン重合体は、ポリプロピレンランダムコポリマーである
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載の樹脂組成物において、
前記成分(A)のポリプロピレン重合体と前記成分(B)の重合体と融点の差の絶対値が、35以上70以下である
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の樹脂組成物が原料としてなる
ことを特徴とするフィルム。
【請求項5】
基材層と、
前記基材層に積層された請求項
4に記載のフィルムと、
を具備したことを特徴とする積層体。
【請求項6】
請求項
5に記載の積層体が重ね合わされて一部がヒートシールされてなる包装体であって、
前記ヒートシールする温度の上昇に対してヒートシール後のシール強度が飽和する第一関係において、前記温度の範囲で前記積層体がヒートシールされて形成された第一ヒートシール部と、
前記第一関係より高い温度の範囲で、当該ヒートシールする温度に対するヒートシール後のシール強度の割合の最大値が、1.3N/25mm/℃以上となる第二関係において、当該温度の範囲で前記積層体がヒートシールされて形成された第二ヒートシール部と、
を具備したことを特徴とする包装体。
【請求項7】
請求項
6に記載の包装体において、
前記第一ヒートシール部における前記ヒートシール後のシール強度が、少なくとも30℃以上の温度幅となる領域において、2N/25mm幅以上15N/25mm幅以下であり、
前記第二ヒートシール部における前記ヒートシール後のシール強度が、25N/25mm幅以上である
ことを特徴とする包装体。
【請求項8】
請求項
5に記載の積層体を重ね合わせて一部をヒートシールし包装体を製造する製造方法であって、
前記ヒートシールする温度の上昇に対してヒートシール後のシール強度が飽和する第一関係において、前記温度の範囲で前記積層体をヒートシールする工程と、
前記第一関係より高い温度の範囲で、当該ヒートシールする温度に対するヒートシール後のシール強度の割合の最大値が、1.3N/25mm/℃以上となる第二関係において、当該温度の範囲で前記積層体をヒートシールする工程と、を実施する
ことを特徴とする包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、フィルム、積層体、包装体、および包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装用のフィルムとして、ヒートシールにて封止した箇所が、比較的に弱い力でも剥離できるいわゆるイージーピールとなる箇所と、比較的に強い接合強度のいわゆるタイトシールとなる箇所と、異なる特性を示す構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のフィルムは、(1)メルトフローレートが0.5~6g/10分のエチレン・α,β-不飽和カルボン酸共重合体、およびそのアイオノマーからなる群から選択される少なくとも1種と、(2)メルトフローレートが10~30g/10分のエチレン・α,β-不飽和カルボン酸共重合体、およびそのアイオノマーからなる群から選択される少なくとも1種と、(3)プロピレンの単独重合体およびプロピレンと、プロピレンを除く1種以上のα-オレフィンとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種と、を含有する樹脂組成物からなるフィルムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような従来のフィルムでは、求められるシール特性が発現するまでの時間について、さらなる短縮が望まれている。求められるシール特性が発現するまでに時間を要すると、例えば製品の品質管理を直ちにできないという課題がある。
本発明は、例えば被接合物と接合させる温度により、異なる接合状態が接合後から直ちに発現できる樹脂組成物、フィルム、積層体、包装体、および包装体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様の樹脂組成物は、溶解パラメータ(Solubility Parameter:δ、以下、sp値という)((cal/cm3)1/2)が異なる少なくとも2種の重合体と、造核剤と、が配合されてなることを特徴とする。
【0006】
本発明では、sp値が異なる少なくとも2種の重合体は非相溶のため、いずれか1種の重合体の樹脂中に非相溶の他の重合体の樹脂が島のように点在する海島構造となっている。
例えば、2種の重合体のうち一方の成分(A)が海構造、他方の成分(B)が島構造をとる当該樹脂組成物からなるフィルムをヒートシールする際、所定の温度領域(以下、第一温度領域という。)でヒートシールした場合には、非溶融状態である島構造の成分(B)が、溶融状態である海構造の成分(A)の融着を阻害する。このことにより、ヒートシールした箇所はシール強度が比較的に弱いいわゆるイージーピール性を示す。第二温度領域(第一温度領域より高い温度領域で、成分(A)と成分(B)との双方が溶融状態となる温度領域)でヒートシールした場合には、溶融した成分(A)および成分(B)の双方の融着により、ヒートシールした箇所はシール強度が比較的に強いいわゆるタイトシール性を示す。ヒートシール後は、造核剤により直ちに結晶化が進行し、ヒートシールした箇所のシール特性が短時間で発現される。
このように、本発明では、sp値が異なる重合体と造核剤とを配合したことで、例えばフィルムの接合直後から、イージーピール性およびタイトシール性のシール特性を発現できる。さらに、温度と層構成との関係から、第一温度領域と第二温度領域とが明確に差別化でき、当該樹脂組成物を用いた物品におけるイージーピール性と、タイトシール性とを容易に形成できる。
【0007】
ここで、海島構造とは、非相溶の樹脂の混合状態を示す相構造で、一方の樹脂中に島のように非相溶の他方の樹脂が点在する状態である。
また、例えば当該樹脂組成物からなるフィルムの接合としては、ヒートシールに限らず、超音波による溶着なども含まれるものである。
そして、sp値(δ)は、Fedorsによって提案された算出方法に従い算出される。具体的には、「Polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)」中に記載された表中のEv(蒸発エネルギー)と、V(モル体積)とを求め、以下の式(1)に基づいて算出する。
δ=(Ev/V)1/2…(1)
【0008】
そして、本発明では、前記少なくとも2種の重合体のsp値の差の絶対値が、それぞれ0.7以上1.2以下である構成とすることもできる。
この発明では、重合体のsp値の差の絶対値を所定の値に設定することで、求められるシール特性を発現するに当たり、適正な分散状態を形成できる。
ここで、sp値の差の絶対値が0.7より小さくなると、各重合体の相溶性が高くなり、求められるシール特性を発現するための分散状態を形成できなくなるおそれがある。一方、sp値の差の絶対値が1.2より大きくなると、各重合体の分散状態が不安定となって、例えば当該樹脂組成物からなるフィルムの製膜性が不安定となるなど、当該樹脂組成物の成形性が不安定となるおそれがある。よって、sp値の差の絶対値は、0.7以上1.2以下に設定することが好ましい。
【0009】
また、本発明では、前記少なくとも2種の重合体のメルトフローレート(230℃、2160g荷重下)(JIS K7210)について、海構造を示す重合体のメルトフローレートに対し、島構造を示す重合体のメルトフローレートの割合が、それぞれ0.1以上1.2以下である構成とすることもできる。
この発明では、重合体のメルトフローレート(以下、MFRという。)の割合を、所定の値に設定することで、求められるシール特性を発現するに当たり、適正な分散状態を形成できる。
ここで、MFRの割合が1.2よりも大きくなると、海島構造のうち島の部分が小さくなって、求められるシール特性が発現できなくなるおそれがある。一方、MFRの割合が0.1より小さくなると、海島構造のうち島の部分が大きくなり、大きい状態の島の部分が引き伸ばされると、測定方向によって得られるシール特性の差が大きくなってしまうおそれがある。よって、MFRの割合は、0.1以上1.2以下に設定することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明では、前記少なくとも2種の重合体の融点の差の絶対値が、それぞれ35以上70以下である構成とすることもできる。
この発明では、重合体の融点の差の絶対値を、所定の値に設定することで、第一温度領域と、融点との温度関係により、例えばヒートシールが容易にできる。
ここで、融点の差の絶対値が35より小さくなると、第一温度領域が狭くなって、求められるシール特性を安定して発現するための例えばヒートシール温度の制御が煩雑となるおそれがある。一方、融点の差の絶対値が70より高くなると、例えば当該樹脂組成物からなるフィルムをシーラント層とし、このシーラント層を基材層と積層させた積層体をヒートシールした場合、基材層にポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの融点と、第二温度領域とが近くなる。このため、第二温度領域でヒートシールした時、シールバーに付着したり、積層体からなる包装体が収縮によりしわが発生するなどの外観不良が生じるおそれがある。このため、融点の差の絶対値は、35以上70以下とすることが好ましく、より好ましくは40以上70以下に設定される。
【0011】
そして、本発明では、前記少なくとも2種の重合体のうちの1種は、ポリオレフィン重合体であり、前記ポリオレフィン重合体の配合量は、組成物全量に対して5質量%以上20質量%以下であり、前記造核剤の配合量は、組成物全量に対して1質量%以上3質量%以下である構成とすることもできる。
この発明では、重合体のうちポリオレフィン重合体と、造核剤とを所定の配合量に設定することで、例えば当該樹脂組成物から製造したフィルムをヒートシールする際、ヒートシール直後から、求められるシール特性が安定して得られる。
ここで、ポリオレフィン重合体の配合量が組成物全量に対して5質量%より少なくなると、第一温度領域でヒートシールした際、他の重合体同士の融着を阻害するポリオレフィン重合体が少ないため、イージーピール性が発現しなくなるおそれがある。一方、ポリオレフィン重合体の配合量が組成物全量に対して20質量%より多くなると、第二温度領域でヒートシールの際、各重合体の融着が阻害され、タイトシール性が発現しなくなるおそれがある。また、造核剤の配合量が組成物全量に対して1質量%より少なくなると、造核作用が不十分となってヒートシール後の結晶化の速度が遅くなり、特にイージーピール性の発現に時間を要するおそれがある。一方、造核剤の配合量が組成物全量に対して3質量%より多くなると、造核作用は飽和状態となるため、造核剤の配合量の増大に伴ってコストが増大するおそれがある。よって、ポリオレフィン重合体の配合量を組成物全量に対して5質量%以上20質量%以下、造核剤の配合量を組成物全量に対して1質量%以上3質量%以下とすることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様のフィルムは、本発明の樹脂組成物が原料としてなることを特徴とする。
本発明の樹脂組成物を原料として用いることで、例えばヒートシールする箇所として、イージーピール性とタイトシール性との異なるシール特性を、ヒートシール直後から発現できる。さらに、第一温度領域と第二温度領域とが明確に差別化できることから、イージーピール性とタイトシール性との異なるシール特性に、容易に設定できる。
【0013】
本発明の一態様の積層体は、基材層と、前記基材層に積層された本発明のフィルムと、を具備したことを特徴とする。
この発明では、本発明におけるイージーピール性とタイトシール性との異なる特性に容易に設定できるとともに、異なる特性をヒートシール直後から発現できるフィルムを積層している。このことから、求められるシール特性をヒートシール直後から安定して発現できるため、ヒートシール箇所の品質管理が容易となり、包装袋などの各種の包装などに良好に適用でき、汎用性を向上できる。
【0014】
本発明の一態様の包装体は、本発明の積層体が重ね合わされて一部がヒートシールされてなる包装体であって、前記ヒートシールする温度の上昇に対してヒートシール後のシール強度が飽和する第一関係において、前記温度の範囲で前記積層体がヒートシールされて形成された第一ヒートシール部と、前記第一関係より高い温度の範囲で、当該ヒートシールする温度に対するヒートシール後のシール強度の割合の最大値が、1.3N/25mm/℃以上となる第二関係において、当該温度の範囲で前記積層体がヒートシールされて形成された第二ヒートシール部と、を具備したことを特徴とする。
【0015】
本発明では、本発明の積層体を重ね合わせて加熱によりヒートシールする際、第一関係となる温度範囲(第一温度領域)でヒートシールして形成された第一ヒートシール部は、イージーピール性を示す。また、第一関係より高い温度範囲の第二関係の温度範囲(第二温度領域)でヒートシールして形成された第二ヒートシール部は、タイトシール性を示す。これら異なるシール特性を有することで、例えば一つの包装体に異なる食材を収納させ、第一ヒートシール部を剥離させて異なる食材を混合させた後、第二ヒートシール部を剥離して混合した食品を取り出す調理などが容易にできる。
第二関係において、ヒートシールする温度に対するヒートシール後のシール強度の割合の最大値が、1.3N/25mm/℃より小さくなると、第一関係において、ヒートシールする温度に対するヒートシール後のシール強度の割合との差が小さくなり、ヒートシール後の判定が困難となるおそれがあるためである。
ここで、包装体としては、袋に限らず、容器本体と蓋とをヒートシールした容器など、各種形態を対象とすることができる。また、袋の構成についても、側部や底部に折り込みを設けたガゼットタイプなども対象とすることができる。
そして、ヒートシールする温度の上昇に対してヒートシール後のシール強度が飽和するとは、ヒートシールする温度を上昇させても、ヒートシール後のシール強度にあまり変化がない実質的に一定の状態をいう。この状態では、他の温度領域におけるシール強度の変化の割合に対して明確に差別化される程度であれば、多少のシール強度のバラツキは含まれるものである。
【0016】
そして、本発明では、前記第一ヒートシール部における前記ヒートシール後のシール強度が、少なくとも30℃以上の温度幅となる領域において、2N/25mm幅以上15N/25mm幅以下であり、前記第二ヒートシール部における前記ヒートシール後のシール強度が、25N/25mm幅以上である構成とすることもできる。
この発明では、第一ヒートシール部を所定のシール強度とし、第二ヒートシール部を所定のシール強度以上とすることで、包装体における第一ヒートシール部と第二ヒートシール部との機能を適切に発現できる。
ここで、第一ヒートシール部におけるシール強度が2N/25mm幅より弱くなると、内容物を収納する包装袋の輸送中などに外力が作用し、意図せず第一ヒートシール部が剥離するおそれがある。一方、第一ヒートシール部におけるシール強度が15N/25幅より強くなると、第二ヒートシール部のシール強度との差が小さくなり、第一ヒートシール部を選択的に剥離できなくなるおそれがある。
また、第一ヒートシール部における所定のシール強度の発現が、30℃以下の温度幅の領域である場合、例えば包装袋を形成する際のヒートシール条件の変動などにより、第一ヒートシール部が所定のシール強度とならず、意図せず第一ヒートシール部が剥離したり、第二ヒートシール部のシール強度との差が小さくなり、第一ヒートシール部を選択的に剥離できなくなるおそれがある。よって、第一ヒートシール部のシール強度を、少なくとも30℃以上の温度幅となる領域において、2N/25mm幅以上15/25mm幅以下とすることが好ましい。
さらに、第二ヒートシール部におけるシール強度が25N/25mm幅より弱くなると、例えば内容物を収納する包装体を加熱調理や加熱殺菌して内圧が高くなった場合、第二ヒートシール部が剥離するおそれがある。このため、第二ヒートシール部のシール強度を25N/25mm幅以上とすることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様の包装体の製造方法は、本発明の積層体を重ね合わせて一部をヒートシールし包装体を製造する製造方法であって、前記ヒートシールする温度の上昇に対してヒートシール後のシール強度が飽和する第一関係において、前記温度の範囲で前記積層体をヒートシールする工程と、前記第一関係より高い温度の範囲で、当該ヒートシールする温度に対するヒートシール後のシール強度の割合の最大値が、1.3N/25mm/℃以上となる第二関係において、当該温度の範囲で前記積層体をヒートシールする工程と、を実施することを特徴とする。
【0018】
本発明では、本発明の積層体を重ね合わせて加熱によりヒートシールし包装体を製造する際、第一関係となる温度範囲(第一温度領域)でヒートシールし、イージーピール性を示すヒートシールを形成させ、第一関係より高い温度範囲の第二関係の温度範囲(第二温度領域)でヒートシールし、タイトシール性を示すヒートシールを形成させる。このことで、例えば一つの包装体に異なる食材を収納させ、第一ヒートシール部を剥離させて異なる食材を混合させた後、第二ヒートシール部を切除して開封し、混合した食品を取り出す調理などが容易にできる構成を、容易に提供できる。
ここで、積層体を重ね合わせるとは、1枚の積層体を折り返して重ね合わせる場合や、2枚の積層体を重ね合わせる場合も含まれるものである。
また、第一関係の温度範囲でヒートシールする工程と、第二関係の温度範囲でヒートシールする工程とは、いずれの工程を先に実施してもよく、また同時に実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態における包装体を示す平面図。
【
図2】本発明に係る基材フィルムの接合温度と接合強度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、包装体として、二つの収納空間を有する袋状のものを例示するが、例えば容器と蓋とからなる形態など、各種形態を対象とすることができ、また収納空間も二つに限らず、複数設けた構成としてもよい。被包装物としては、食品以外の薬品、医療品、文具、雑貨などの各種物品を対象とすることができる。そして、積層体から包装体を形成する接合としてはヒートシールを例示するが、例えば超音波による溶着などを利用できる。
【0021】
[包装体の構成]
図1に示すように、包装体1は、例えば三方製袋方法により形成され、積層体である基材フィルム11が重ね合わされ、その周囲などがヒートシールされた袋形状である。包装体1は、内部に第一収納空間12および第二収納空間13を区画する第一ヒートシール部14と、基材フィルム11の周囲がヒートシールされた第二ヒートシール部15とが形成されている。
第一収納空間12には例えば調味液などが収納され、第二収納空間13には例えば食材などが収納される。
第一ヒートシール部14は、例えば内圧などの比較的に弱い力で剥離可能ないわゆるイージーピール性を示し、当該第一ヒートシール部14の剥離により、第一収納空間12と第二収納空間13とが連通し、調味液と食材とが混合される。第二ヒートシール部15は、例えば内圧などでは剥離しない比較的強いシール強度のいわゆるタイトシール性を示す。
包装体1には、調味液が投入可能で、調味液の投入後に第二ヒートシール部15が形成されて封止される第一投入口16と、食材が投入可能で、食材の投入後に第二ヒートシール部15が形成されて封止される第二投入口17と、を備えている。
【0022】
[基材フィルムの構成]
基材フィルム11は、基材層と、この基材層に積層されたシーラント層(本発明のフィルムに対応)とを備えた積層構造である。なお、基材フィルム11は、二層に限らず、その他の各種中間層やラミネート層などを適宜積層した多層構造としてもよい。
【0023】
(基材層)
基材層は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが用いられる。
ポリオレフィン樹脂としては、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)などのポリプロピレン樹脂や、高密度ポリエチレン(HDPE)、(直鎖状)低密度ポリエチレン((Linear)Low Density Polyethylene:LDPE)などのポリエチレン樹脂や、直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体などが用いられる。
ナイロン樹脂としては、ナイロン6、ナイロン8、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12などを使用することができる。
また、基材層は、着色剤などの各種添加剤が、適宜添加可能である。
【0024】
(シーラント層)
シーラント層は、溶解パラメータ(Solubility Parameter:δ、以下、sp値という)((cal/cm3)1/2)が異なる少なくとも2種の重合体と、造核剤と、が配合されてなる樹脂組成物にて形成されている。本実施形態では、成分(A)と成分(B)との2種を例示する。
ここで、sp値(δ)は、Fedorsによって提案された算出方法に従い算出される。具体的には、「Polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974)」中に記載された表中のEv(蒸発エネルギー)と、V(モル体積)とを求め、以下の式(1)に基づいて算出される。
δ=(Ev/V)1/2…(1)
【0025】
重合体のうちの1種、具体的には融点が最も高い成分である成分(A)は、例えばポリオレフィン樹脂、特にポリプロピレン重合体が好適に用いられる。
ポリプロピレン重合体としては、例えば、ホモポリプロピレン、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマーが挙げられる。後述する重合体のうちの他の1種である成分(B)として、好適に用いられるエチレン・メタクリル酸共重合体や、ポリエチレン共重合体との適度な相溶性と、タイトシール性を示す第二ヒートシール部15を形成するための温度領域の観点から、成分(A)は特にポリプロピレンランダムコポリマーが好適である。なお、ホモポリプロピレン、ポリプロピレンブロックコポリマーは、融点が160℃付近である。このことから、第二ヒートシール部15におけるタイトシール性が発現する温度が高めとなるので、被包装物や用途などにより、高い温度に対応する場合には有効である。
なお、成分(A)をポリプロピレンランダムコポリマーとした場合のsp値は、8.0である。
また、成分(A)の融点およびメルトフローレート(230℃、2160g荷重下)(JIS K7210)は、被包装物や用途など、目的とするシール特性に応じて適宜設定される。
【0026】
成分(A)の配合量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以上20質量%以下、好ましくは8質量%以上20質量%以下、特に好ましくは8質量%以上15質量%以下である。
成分(A)の配合量が樹脂組成物全量に対して5質量%より少なくなると、いわゆる島構造の割合が少なくなって、イージーピール性が発現できなくなるおそれがある。一方、成分(A)の配合量が樹脂組成物全量に対して20質量%より多くなると、第二温度領域でのヒートシールの際に、成分(A),(B)双方の融着が阻害され、タイトシール性が発現しなくなるおそれがあるためである。
このように、融点が最も高い重合体となる成分(A)の配合量により、イージーピール性とタイトシール性の両立を制御できる。
【0027】
成分(B)の重合体は、成分(A)とは異なるsp値を示すものである。
具体的には、成分(A)と成分(B)のsp値の差の絶対値が、それぞれ0.7以上1.2以下であることが好ましい。
ここで、|sp(A)-sp(B)|が0.7より小さくなると、成分(A)と成分(B)との相溶性が高くなり、求められるシール特性を発現するための分散状態を形成できなくなるおそれがある。一方、|sp(A)-sp(B)|が1.2より大きくなると、成分(A)と成分(B)との相溶性が低くなり、求められるシール特性を発現するための分散状態を形成できなくなるとともに、両成分の分散状態の不安定さから、例えば当該樹脂組成物からなる基材フィルム11の製膜性が不安定となるおそれがある。例えば、ポリプロピレンとナイロン12(SP値=9.9)とを重合体に用いた場合、相溶性が著しく悪くなり製膜性が不安定となるおそれがある。したがって、成分(A)と成分(B)のsp値の差の絶対値は、0.7以上1.2以下に設定することが好ましい。例えば、成分(A)としてポリプロピレン(SP値=7.9)、成分(B)としてエチレン・メタクリル酸共重合体(SP値=9.1)や低密度ポリエチレン(SP値=8.6)を用いた場合でも、イージーピール性とタイトシール性とを明確に提供できる。
【0028】
また、海構造を示す成分(B)に対し、島構造を示す成分(A)のメルトフローレート(Melt Flow Rate:MFR)(230℃、2160g荷重下)(JIS K7210)の割合が、0.1以上1.2以下であることが好ましい。すなわち、成分(A)と成分(B)のMFRをそれぞれMFR(A)とMFR(B)とした場合、MFR(A)とMFR(B)との関係が、0.1≦|MFR(A)÷MFR(B)|≦1.2である。
ここで、|MFR(A)÷MFR(B)|が0.1より小さくなると、海島構造のうち島の部分が大きくなり、求められるシール性が発現できなくなるおそれがある。一方、|MFR(A)÷MFR(B)|が1.2より大きくなると、海島構造のうち島の部分が小さくなり、求められるシール特性が発現できなくなるおそれがある。したがって、海構造を示す成分(B)に対する島構造を示す成分(A)のMFRの割合は、0.1以上1.2以下に設定することが好ましい。
【0029】
成分(A)と成分(B)の融点(Melting Point:MP)の差の絶対値が、35以上70以下であることが好ましい。すなわち、成分(A)と成分(B)の融点をそれぞれMP(A)とMP(B)とした場合、MP(A)とMP(B)との関係が、35≦|MP(A)-MP(B)|≦70、好ましくは38≦|MP(A)-MP(B)|≦70、特に好ましくは40≦|MFR(A)-MFR(B)|≦70である。
ここで、|MP(A)-MP(B)|が35より小さくなると、イージーピール性を発現するためのヒートシールする第一温度領域が狭くなり、求められるシール特性を安定して発現できないおそれがある。一方、|MP(A)-MP(B)|が70より大きくなると、当該樹脂組成物から製造したフィルムをシーラント層とし、このシーラント層を基材層と積層させた基材フィルム11をヒートシールした場合、基材層として用いられるポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの融点と、第二温度領域とが近くなり、ヒートシール時のシールバーへの付着や、基材フィルム11からなる包装体1の第二ヒートシール部15の収縮に繋がるおそれがある。よって、成分(A)と成分(B)の融点の差の絶対値は、35以上70以下に設定することが好ましく、より好ましくは38以上70以下、特に好ましくは40以上70以下に設定される。例えば、成分(A)としてポリプロピレン(融点135℃以上160℃以下)を用い、成分(B)としてエチレン・メタクリル酸共重合体(融点99℃)やエチレン・酢酸ビニル共重合体(融点89℃)などを用いた場合でも、イージーピール性とタイトシール性とを明確に提供できる。
【0030】
成分(B)の重合体は、以上の条件が満たされるいずれの樹脂を対象とすることができる。
具体的には、エチレン・メタクリル酸共重合体や、ポリエチレン共重合体などが好適に用いられる。
【0031】
造核剤(成分(C))は、例えば、脂肪酸金属塩、カルボン酸金属塩、リン酸エステル金属塩、ロジン金属塩、タルク、マイカ、ソルビトール誘導体などが挙げられる。特に、成分(B)として、好適に用いられるエチレン・メタクリル酸共重合体や、ポリエチレン共重合体の均一な結晶形成を促進させる観点から、脂肪酸金属塩が好適である。
成分(C)の配合量は、樹脂組成物全量に対して1質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
成分(C)の配合量が樹脂組成物全量に対して1質量%より少なくなると、造核作用が不十分であるためにヒートシール後の結晶化の速度が遅くなり、特にイージーピール性の発現に時間を要するおそれがある。一方、成分(C)の配合量が樹脂組成物全量に対して3質量%より多くなっても、造核作用としては飽和しており、造核剤の添加量の増加に伴ってコストが増大するおそれがあるためである。
このように、造核剤(成分(C))の配合量により、シール特性の経時変化を制御できる。
【0032】
シーラント層を構成する樹脂組成物には、基材フィルム11の製膜時や、包装体1の製造などの二次加工における作業性の向上のために、必要に応じて、例えば滑剤、アンチブロッキング剤などをさらに添加することが可能である。
そして、基材フィルム11は、例えばインフレーション法などの各種方法にて製造できる。
【0033】
(包装体の製造方法)
次に、包装袋の製造方法について説明する。
包装体1の製造方法は、例えば三方製袋する製造装置を用いて製造され、基材フィルム11を送り出して重ね合わせるフィルム送出工程と、重なり合う基材フィルム11をヒートシールして第一ヒートシール部14を形成する第一ヒートシール工程と、重なり合う基材フィルム11をヒートシールして第二ヒートシール部15を形成する第二ヒートシール工程と、などを実施する。
フィルム送出工程では、巻取ロール62に巻き取られた基材フィルム11を引き出し、シーラント層が互いに対向するように重ね合わせて、基材フィルム11を送り出す。
【0034】
第一ヒートシール工程では、所定の温度領域(以下、第一温度領域という。)に設定されたシールバーにより、重なり合う基材フィルム11をヒートシールし、イージーピール性を示す第一ヒートシール部14を形成する。この第一ヒートシール工程における第一温度領域では、シーラント層を構成する成分(A)がいわゆる島構造、成分(B)がいわゆる海構造となる層構成を示す。
この第一温度領域では、結晶化状態の成分(A)が、溶融状態の成分(B)による融着を阻害するような状態となり、比較的に弱いシール強度となるイージーピール性を示す。そして、この第一温度領域においては、シール強度はあまり変動しない、いわゆる温度に対してシール強度が飽和したような一定状態となる。このヒートシールする温度の上昇に対してシール強度が飽和する領域を、例えば
図2中に示すような第一関係と定義する。なお、第一関係において、シール強度が飽和したような一定の状態とは、例えば
図2に示すように、以下の第二関係に対して差別化できる程度に実質的に一定であればよく、±3N/25mmの範囲内でシール強度の値が上下するのは許容範囲内である。
このように、シーラント層が海島構造の層構成を示す第一関係の第一温度領域で、基材フィルム11をヒートシールすることで、イージーピール性の第一ヒートシール部14が形成される。
【0035】
ここで、第一ヒートシール部14のシール強度は、少なくとも30℃以上の温度幅となる領域において、一定のイージーピール性を発現することが好ましい。そして、そのシール強度が2N/25mm幅以上15N/25mm幅以下、好ましくは2N/25mm幅以上13N/25mm幅以下、特に好ましくは2N/25mm幅以上10N/25mm幅以下に設定される。すなわち、第一ヒートシール部14のシール強度が、2N/25mm幅以上15N/25mm幅以下となるように、シーラント層の樹脂組成物の配合を設定する。具体的には、成分(A),(B)の配合量をそれぞれ増減させることで、シール強度が調整される。
第一ヒートシール部14のシール強度が2N/25mm幅より弱くなると、収納された内容物が包装袋の輸送中の外力などで意図せずに第一ヒートシール部14が剥離するおそれがある。一方、第一ヒートシール部14におけるシール強度が15N/25mm幅より強くなると、第二ヒートシール部15におけるシール強度との差が小さくなり、第一ヒートシール部14を選択的に剥離できなくなるおそれがあるためである。
【0036】
第二ヒートシール工程では、第一温度領域より高い温度領域(第二温度領域)に設定されたシールバーにより、重なり合う基材フィルム11をヒートシールし、タイトシール性を示す第二ヒートシール部15を形成する。この第二ヒートシール工程における第二温度領域では、シーラント層を構成する成分(A)と成分(B)とが溶融状態となる層構成を示す。
この第二温度領域では、溶融した成分(A)および成分(B)の双方の融着により、比較的に強いヒート強度となるタイトシール性を示す。そして、この第二温度領域においては、ヒートシール温度に対するシール強度の割合の最大値が、1.3N/25mm/℃以上の関係を、第二関係と定義する。具体的には、例えば
図2中に示すように、ヒートシール温度とシール強度とが正比例の関係で、その正比例の傾きの最大値が、1.3N/25mm/℃以上の関係を、第二関係と定義する。
このように、シーラント層が成分(A)および成分(B)の双方が溶融する第二関係の第二温度領域で、基材フィルム11をヒートシールすることで、タイトシール性の第二ヒートシール部15が形成される。
【0037】
ここで、第二ヒートシール部15のシール強度については、25N/25mm幅以上、好ましくは30N/25mm幅以上、特に好ましくは35N/25mm幅以上である。
第二ヒートシール部15のシール強度が25N/25mm幅より小さくなると、例えば内容物を収納する包装体1を加熱調理や加熱殺菌した時に内圧が高くなった場合、第二ヒートシール部15が剥離するおそれがあるためである。
【0038】
第一ヒートシール工程および第二ヒートシール工程後、適宜切断し、第一ヒートシール部14および第二ヒートシール部15が形成された包装体1を切り出す。
そして、得られた包装体1に、図示しない充填装置により、被包装物が第一投入口16および第二投入口17から所定量投入され、第一投入口16および第二投入口17に第二ヒートシール部15を形成して封止し、被包装物を充填する。
【0039】
[実施形態の作用効果]
上記実施形態では、包装体1を構成する基材フィルム11のシーラント層として、sp値が異なる成分(A),(B)の重合体と、造核剤と、を配合した樹脂組成物を用いている。
このため、ヒートシール直後から、求めるイージーピール性とタイトシール性とを発現できる。よって、例えば包装体1におけるヒートシール状況の違いを容易に判定、すなわち第一ヒートシール部14および第二ヒートシール部15のシール特性の評価が短時間で容易にでき、品質管理が容易にできる。
さらに、基材フィルム11をヒートシールする温度と、シーラント層の層構成との関係から、第一温度領域の第一関係と、第二温度領域の第二関係とが明確に差別化でき、ヒートシールにより形成されたイージーピール性の第一ヒートシール部14と、タイトシール性の第二ヒートシール部15とを、ヒートシールする温度を設定するのみで容易に形成できる。
【0040】
そして、上記実施形態では、シーラント層を構成する樹脂組成物として、成分(A),(B)のsp値の差の絶対値を、0.7以上1.2以下としている。
このため、求められるシール特性を、第一ヒートシール部14および第二ヒートシール部15で発現するに当たり、成分(A)と成分(B)との適正な分散状態を形成できる。
【0041】
また、上記実施形態では、シーラント層を構成する樹脂組成物として、海構造を示す成分(B)に対し、島構造を示す成分(A)のMFRの割合を、0.1以上1.2以下としている。
このため、求められるシール特性を、第一ヒートシール部14および第二ヒートシール部15で発現するに当たり、成分(A)と成分(B)との適正な分散状態を形成できる。
【0042】
さらに、上記実施形態では、シーラント層を構成する樹脂組成物として、成分(A),(B)の融点の差の絶対値を、35以上70以下としている。
このため、第一温度領域と、融点との温度関係により、例えばヒートシールが容易にできる。
【0043】
また、上記実施形態では、シーラント層を構成する樹脂組成物として、成分(A)と造核剤とを所定の配合量としている。
このため、ヒートシールにより形成されたイージーピール性の第一ヒートシール部14と、タイトシール性の第二ヒートシール部15とを、より容易に形成できるとともに、ヒートシール直後からシール特性を、安定して発現できる。
【0044】
そして、上記実施形態では、造核剤として脂肪酸金属塩を用いることで、造核作用により結晶化が促進され、ヒートシール直後から求められるシール特性を発現できる。
特に、成分(A)としてポリプロピレン重合体、成分(B)としてエチレン・メタクリル酸共重合体を用いた場合では、良好な造核作用により求められるシール特性が良好に発現できる。
【0045】
また、上記実施形態では、第一ヒートシール部14のシール強度を、2N/25mm幅以上15N/25mm幅以下とし、第二ヒートシール部15のシール強度を、25N/25mm幅以上に設定している。
このため、第一ヒートシール部14においては、意図いない剥離を防止できるとともに、第一ヒートシール部14を選択的に剥離できる。また、第二ヒートシール部15においては、例えば内圧により第二ヒートシール部15が剥離することを防止できる。
【0046】
[変形例]
なお、本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した材質、層構成などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではなく、それらの材質などの限定の一部若しくは全部の限定を外した名称での記載は、本発明に含まれる。
【0047】
例えば、包装体1を製造する製袋方法としては、三方製袋に限らず、例えば回転ドラム式、ピロー式など、各種の方法を利用できる。また、包装体としては、例えば被包装物を出し入れした後に再封可能に、ジッパーテープなどの咬合部材を備えた構成としてもよい。
また、基材フィルム11についても、インフレーション法により製造する他、カレンダー法など、各種方法を適用できる。さらに、共押出に限らず、例えばシーラント層に対応するフィルムと、基材層に対応するフィルムとを貼り合わせて積層させるなどしてもよい。
【0048】
そして、基材フィルム11として、基材層とシーラント層とを積層した積層構造に限らず、本発明の樹脂組成物にて形成された単層のフィルムとしてもよい。
さらに、樹脂組成物の原料の組成、配合量、成分(A),(B)のsp値、メルトフローレート、融点などについても、上記実施形態に限られるものではなく、適宜設定される。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。各例におけるフィルム構成、原料、試験片の作製、ヒートシールによる接合強度の測定は、以下のような方法で実施した。
【0050】
[実施例1~2、比較例1~2]
以下の原料を用いて、インフレーション成形により、厚み12.5μmのシーラント層、厚み25μmの中間層、厚み12.5μmのラミネート層を有する三層構造のフィルムを作製した。
【0051】
<原料>
(シーラント層)
成分(A):プロピレン-エチレン共重合体(sp値:7.9、MFR(230℃、2160g荷重下):1.3g/10分、密度:0.930g/cm3、融点:142℃)
成分(B):エチレン・メタクリル酸共重合体(sp値:9.1、MFR(190℃、2160g荷重下):3.0g/10分、密度:0.930g/cm3)
成分(C):ポリオレフィン用造核剤(理研ビタミン社製 商品名:CN-002)
【0052】
(中間層)
直鎖低密度ポリエチレン(MFR(190℃、2160g荷重下):2.5g/10分、密度:0.935g/cm3)62質量%、低密度ポリエチレン(MFR(190℃、2160g荷重下):2.0g/10分、密度0.922g/cm3)38質量%
【0053】
(ラミネート層)
直鎖低密度ポリエチレン(MFR(190℃、2160g荷重下):2.5g/10分、密度:0.935g/cm3)100.00質量%
【0054】
<接合強度測定用の試験片の作製>
以下の表1に示す配合に従って、インフレーション成形により三層構造のフィルムを作製した。
得られたフィルムのシーラント層同士を、熱傾斜試験機(株式会社東洋精機製作所製 商品名:HG-100-2)により各温度でヒートシールし、試験片を作製した。
【0055】
【0056】
<シール強度>
株式会社島津製作所製の引張試験機(商品名:AGS-X)を用い、JIS K6854のT形剥離の試験方法に準拠し、各例の試験片のヒートシール直後およびヒートシール後1日静置後について、シール強度を測定した。シール強度は、各例の試験片について、MDで200mm/分の引張速度でT形剥離させることで測定した。
その結果を、以下の表2および
図2に示す。
【0057】
【0058】
<評価結果>
表2および
図2に示す測定結果からも明らかなように、成分(C)の造核剤を含有しない比較例1では、ヒートシール直後のシール強度と、ヒートシールから1日静置した後のシール強度について、第一関係と第二関係とのグラフの形状が大きく異なっていた。このように、比較例1では、第一関係と第二関係との境界の温度が大きく変動してしまうことが認められた。
一方、成分(C)の造核剤を含有した実施例1および実施例2では、第一関係と第二関係とのグラフ形状の差が小さくなり、シール強度の経時変化が小さく、シール特性がヒートシール後から発現できることが認められた。
【符号の説明】
【0059】
1……包装体
11……基材フィルム(フィルム、積層体)
14……第一ヒートシール部
15……第二ヒートシール部