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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】液化ガス移送システム
(51)【国際特許分類】
   B63B 27/34 20060101AFI20230427BHJP
   B63B 27/24 20060101ALI20230427BHJP
   B67D 9/02 20100101ALI20230427BHJP
【FI】
B63B27/34
B63B27/24 D
B63B27/24 F
B67D9/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021500726
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 FR2019051711
(87)【国際公開番号】W WO2020012114
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】1856451
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】アングルベール パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ジェラン ギヨーム
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-510495(JP,A)
【文献】米国特許第3085593(US,A)
【文献】特表2016-515499(JP,A)
【文献】特表昭62-501643(JP,A)
【文献】特開2016-70377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0105234(US,A1)
【文献】特開平6-123305(JP,A)
【文献】特開昭62-255983(JP,A)
【文献】特開昭59-49935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 27/00
B67D 9/00
B65G 67/60
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の設備と第2の設備との間で液化ガスを移送するための移送システム(1)であって、
前記第1の設備において第1の鉛直軸(A)まわりに回転できるように取り付けるために適した第1の近位部(6)と、前記第1の近位部(6)において第2の軸(B)まわりに回動するように取り付けられる第2の中間部(7)と、前記第2の中間部(7)において第3の軸(C)まわりに回動するように取り付けられる第3の遠位部(8)と、を備えた関節アーム(2)と、
前記第1の設備と前記第2の設備との間で液化ガスを移送するために適した少なくとも1つの移送ライン(3,4,5)と、
を備えており、
前記移送ライン(3,4,5)は、前記第1の設備の液化ガス貯蔵タンクに接続するために適した可撓性の第1の近位部分(15)と、前記関節アーム(2)の前記第2の中間部(7)に固定された剛性の第2の中間部分(16)と、前記関節アーム(2)の前記第3の遠位部(8)に懸架される第3の遠位部分(17)と、を有し、
前記第3の遠位部分(17)は、前記第2の設備のマニホールドに接続するために適した端部を有し、
前記第2の中間部分(16)に流量調整バルブ(22)が備え付けられている
ことを特徴とする移送システム。
【請求項2】
前記第2の中間部分(16)は前記関節アーム(2)の前記第2の中間部(7)に沿って延在し、
前記第2の中間部分(16)は、前記第1の近位部分(15)及び前記第3の遠位部分(17)それぞれに接続された下向きの2つの曲げ端部(23,24)を有する、
請求項1記載の移送システム(1)。
【請求項3】
前記第2の中間部分(16)の2つの前記曲げ端部はそれぞれ、前記第2の軸(B)及び前記第3の軸(C)と整列している、
請求項2記載の移送システム(1)。
【請求項4】
前記第2の中間部分(16)は前記関節アーム(2)の前記第2の中間部(7)に対して側方にずれている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項5】
前記第2の中間部分(16)は、前記関節アーム(2)の前記第2の中間部(7)に沿って分布している複数の支持部材(21)を用いて前記第2の中間部(7)に固定されており、
前記支持部材(21)は、前記第2の中間部(7)に固定されたクロスメンバと、当該クロスメンバに固定された挟持カラーと、を備えており、前記挟持カラーに前記第2の中間部分(16)が通される、
請求項1から4までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項6】
前記第1の近位部分(15)は、ノンスティックコーティングにより覆われた支持部(18,19)に設けられている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項7】
前記関節アーム(2)の第1の近位部(6)は、ノンスティックコーティングを備えた円筒状の保護スカート部(20)を備えている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項8】
前記第3の遠位部分(17)は持上装置を用いて前記関節アーム(2)の前記第3の遠位部(8)に懸架されており、
前記持上装置は、前記関節アーム(2)の前記第3の遠位部(8)に固定されたドラム(26)であってモータに関連付けられたドラム(26)と、当該ドラム(26)に巻かれており前記第3の遠位部分(17)に固定されているケーブル(27)と、を備えている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項9】
前記ケーブル(27)は荷重分散器(29)を用いて前記第3の遠位部分(17)に固定されている、
請求項8記載の移送システム(1)。
【請求項10】
前記第3の遠位部分(17)は緊急時解除連結部(25)を備えている、
請求項1から9までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項11】
前記緊急時解除連結部(25)は前記荷重分散器(29)に吊るされている、
請求項9を引用する請求項10に記載の移送システム(1)。
【請求項12】
前記緊急時解除連結部は前記第3の遠位部分(17)と前記第2の中間部分(16)との接続部に配置されている、
請求項10記載の移送システム(1)。
【請求項13】
前記移送ライン(3,4,5)を少なくとも2つ備えており、
2つの前記各移送ライン(3,4,5)の前記第1の近位部分(15)は前記関節アーム(2)の前記第1の近位部(6)の側方の両側にそれぞれ配置されており、
2つの前記各移送ライン(3,4,5)の前記第2の中間部分(16)は前記関節アーム(2)の前記第2の中間部(7)の側方の両側にそれぞれ配置されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項14】
前記第2の中間部分(16)は、断熱材料によりライニングされた中間スペースを有する二重壁ホースを備えている、
請求項1から13までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項15】
前記第1の近位部分(15)及び前記第3の遠位部分(17)はそれぞれ、断熱材料によりライニングされた中間スペースを有する複合ホース又はコルゲート状二重壁ホースを備えている、
請求項1から14までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項16】
保護スリーブ(32)を備えており、
前記保護スリーブ(32)は、前記第1の近位部分(15)に接続された前記第2の中間部分(16)の一端部(23)に固定されており、
前記保護スリーブ(32)は前記第1の近位部分(15)の一端部を収容し、
前記保護スリーブ(32)は、フレア状の内表面を有し、前記第1の近位部分(15)の前記一端部の曲率半径は、最小曲率半径以上に維持される
請求項1から15までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項17】
保護スリーブ(33)を備えており、
前記保護スリーブ(33)は、前記第3の遠位部分(17)に接続された前記第2の中間部分(16)の一端部(24)に固定されており、
前記保護スリーブ(33)は前記第3の遠位部分(17)の一端部を収容し、
前記保護スリーブ(33)は、フレア状の内表面を有し、前記第3の遠位部分(17)の前記一端部の曲率半径は、最小曲率半径以上に維持される
請求項1から16までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項18】
少なくとも2つの前記移送ライン(3,4,5)と、2つの前記移送ライン(3,4,5)の前記各第2の中間部分(16)に設けられた前記流量調整バルブ(22)より上流において前記第2の中間部分(16)を接続するバイパス装置(34)と、を備えている、
請求項1から17までのいずれか1項記載の移送システム(1)。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項記載の移送システムを備えた船舶(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体移送の分野に関し、具体的には、例えばサプライヤ側船舶と顧客側船舶との間等の2つの離隔した設備間における液化ガスの移送に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海上において2隻の船舶間で液化ガスを移送するための幅広い様々なシステムが存在する。
【0003】
国際公開第2016/170304号に、互いに関節連結されて取り付けられた3部分構成の関節アームを備えた液化天然ガス移送システムが開示されている。この関節アームは、サプライヤ側船舶のデッキに鉛直軸まわりに回動するように取り付けられた近位部と、近位部に第1の水平軸を中心として関節連結されて取り付けられた中間部と、中間部に第2の水平軸を中心として関節連結されて取り付けられた遠位部と、を備えている。関節アームは2つのリニアアクチュエータを備えており、一方のリニアアクチュエータは近位部と中間部とに関節連結されて取り付けられており、他方のリニアアクチュエータは中間部と遠位部とに関節連結されて取り付けられている。
【0004】
移送システムはさらに2つの移送ラインを備えており、そのうちの一方の移送ラインはサプライヤ側船舶から顧客側船舶へ液化ガスを移送するために用いられ、他方の移送ラインは、両船舶のタンクの膨張空間の圧力を均衡化するために顧客側船舶からサプライヤ側船舶へ天然ガスを抽出するために使用される。各移送ラインは、アームの近位部に沿って延在する剛性の第1部分と、持上装置を用いて関節アームの遠位部の端部に懸架される可撓性の第2部分と、をそれぞれ有し、第2部分は、顧客側船舶上のマニホールドに接続するために適したものである。可撓性の第2部分にはそれぞれ、緊急時解除連結部が設けられている。各緊急時解除連結部は、サプライヤ側船舶と顧客側船舶との間の液化ガスの移送を中断するために互いに切り離し可能な2つの部分をそれぞれ有する。
【0005】
かかる移送システムは、完全には満足いくものではない。とりわけ上述のような移送システムは、関節アームに保持され緊急時解除連結部の上流に配置される流量調整バルブを備えていないので、可撓性の第2部分が顧客側船舶上のマニホールドから切り離されるとき、可撓性の第2部分を移送ラインの残りの他の部分から分離する。かかる移送システムでは、もし満足する安全レベルを提供するために連結部の上流に流量調整バルブを配置する場合には、流量調整バルブは必然的にサプライヤ側船舶のデッキ上に配置されることとなる。すなわち、可撓性の第2部分の端部までの移送ラインに沿った距離が大きい場所に必ず配置されることとなる。その結果、切り離しの際には、流量調整バルブと可撓性の第2部分の端部との間に延在するバッファゾーンに、かなりの量の液化ガスがトラップされてしまう。各移送作業を行った後にガスが完全に無くなることを保証するためには、上述のバッファゾーンの排出を完全に行って不活性状態にしなければならず、このことにより移送後の切り離し時間がかなりの時間になる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の背景となる一思想は、簡単かつ高信頼性の流体移送システムであって、幅広い様々な構成に合わせることができると共に、移送作業後に排出を行わなければならない移送ラインのバッファ部分の長さを抑えることができる流体移送システムを提供することである。
【0007】
一実施形態では本発明は、第1の設備と第2の設備との間で液化ガスを移送するためのシステムを提供し、当該移送システムは、
-第1の設備において第1の鉛直軸まわりに回転できるように取り付けるために適した第1の近位部と、第1の近位部において第2の軸まわりに回動するように取り付けられる第2の中間部と、第2の中間部において第3の軸まわりに回動するように取り付けられる第3の遠位部と、を備えた関節アームと、
-第1の設備と第2の設備との間で液化ガスを移送するために適した少なくとも1つの移送ラインと、
を備えており、
移送ラインは、第1の設備の液化ガス貯蔵タンクに接続するために適した可撓性の第1の近位部分と、関節アームの第2の中間部に固定された剛性の第2の中間部分と、関節アームの第3の遠位部に懸架される第3の遠位部分と、を有し、第3の遠位部分は、第2の設備のマニホールドに接続するために適した端部を有し、第2の中間部分に流量調整バルブが備え付けられている。
【0008】
上述のような3部分構造により、上述の関節アームを幅広い種々異なる構成に合わせることができる。
【0009】
さらに、移送ラインの第1の近位部分及び第3の遠位部分は可撓性であるから、これらの部分によって、高コストかつ複雑であり密閉不具合を生じ得る回転ジョイントを用いる必要なく、関節アームの3つの部分の相対運動を行うことができる。
【0010】
さらに、移送ラインは関節アームに支持されている流量調整バルブを備えているので、第3の遠位部分の端部と流量調整バルブとの間にトラップされる液化ガスの量が抑えられる。さらに、流量調整バルブと第3の遠位部分の端部との間にトラップされ得る液化ガスの量は全て、関節アームの第2の中間部に固定された移送ラインの第2の中間部分に流量調整バルブを取り付けることによって、さらに抑えられる。
【0011】
最後に、上記構成では流量調整バルブは可撓性の第3の遠位部分によって保持されていないので、これによって第3の遠位部分の操縦の困難さが増大することはなく、第2の設備のマニホールドに移送ラインを接続する作業が、流量調整バルブを関節アームによって支持することにより悪影響を受けることはない。
【0012】
他の複数の有利な実施形態では、上述の移送システムは以下の特徴のうち1つ又は複数を有することができる。
【0013】
一実施形態では、第2の軸は水平方向である。
【0014】
一実施形態では、第3の軸は水平方向である。
【0015】
一実施形態では、第2の中間部分は、第1の近位部分に接続された第1の端部と、第3の遠位部分に接続された第2の端部と、を有し、流量調整バルブは第2の中間部分の第1の端部より当該第2の中間部分の第2の端部寄りに配置されている。かかる構成により、流量調整バルブと第3の遠位部分の端部との間にトラップされるガスの量をさらに減少させることができる。
【0016】
一実施形態では、第2の中間部分は関節アームの第2の中間部に沿って延在する。
【0017】
一実施形態では、第2の中間部分は下向きの曲げ端部を有し、曲げ端部は第1の近位部分に接続されている。一実施形態では、第2の中間部分は下向きの曲げ端部を有し、曲げ端部は第3の遠位部分に接続されている。かかる構成により、第1の近位部分や第3の遠位部分にかかる応力を抑えることができる。
【0018】
一実施形態では、第2の中間部分の端部のうち一端部は、上記の第2の関節軸と整列し、又は実質的に整列している。一実施形態では、第2の中間部分の端部のうち一端部は、上記の第3の関節軸と整列し、又は実質的に整列している。一実施形態では、第2の中間部分の2つの端部はそれぞれ、第2の関節軸及び第3の関節軸と整列している。これにより、移送ラインの第1の近位部分及び第3の遠位部分の長さを抑えることができる。
【0019】
一実施形態では、第2の中間部分は関節アームの第2の中間部に対して側方にずれている。かかる構成により、流量調整バルブの高さが大きい場合に流量調整バルブを組み込むことができる。
【0020】
一実施形態では、第2の中間部分は、関節アームの第2の中間部に沿って分布している複数の支持部材を用いて第2の中間部に固定されている。
【0021】
一実施形態では支持部材は、第2の中間部に固定されたクロスメンバと、当該クロスメンバに固定された挟持カラーと、を備えており、この挟持カラーに第2の中間部分が通される。
【0022】
一実施形態では、支持部材はさらに、径方向に挟持カラーと第2の中間部との間に挟まれた断熱スリーブを備えている。
【0023】
一実施形態では、第1の近位部分は、ノンスティック(付着防止)コーティングにより覆われた支持部に設けられている。かかる構成により、特に第1の近位部分の摩耗を抑えることができる。
【0024】
一実施形態では、支持部のノンスティックコーティングはポリテトラフルオロエチレンである。
【0025】
一実施形態では、関節アームの第1の近位部は、ノンスティックコーティングを備えた円筒状の保護スカート部を備えている。これにより、第1の近位部の摩耗を抑えることができる。
【0026】
一実施形態では、円筒状の保護スカート部のノンスティックコーティングはポリテトラフルオロエチレンである。
【0027】
一実施形態では、第3の遠位部分は持上装置を用いて関節アームの第3の遠位部に懸架されており、持上装置は、当該アームの第3の遠位部に固定されたドラムであってモータに関連付けられたドラムと、当該ドラムに巻かれており第3の遠位部分に固定されているケーブルと、を備えている。
【0028】
一実施形態では、持上装置はプーリを備えており、プーリは第3の遠位部の一端部に配置されて、前記ケーブルを案内する。
【0029】
一実施形態では、ドラム及びこれに関連付けられているモータは、プーリより第3の軸寄りに配置されている。
【0030】
一実施形態では、ケーブルは荷重バランシング分散器を用いて第3の遠位部分に固定されている。
【0031】
一実施形態では、第3の遠位部分は緊急時解除連結部を備えている。
【0032】
一実施形態では、緊急時解除連結部は荷重バランシング分散器に吊るされている。
【0033】
一実施形態では、緊急時解除連結部は第3の遠位部分と第2の中間部分との接続部に配置されている。
【0034】
一実施形態では、移送システムは移送ラインを少なくとも2つ備えており、これら2つの各移送ラインの第1の近位部分は関節アームの第1の近位部の側方の両側にそれぞれ配置されており、2つの各移送ラインの第2の中間部分は関節アームの第2の中間部の側方の両側にそれぞれ配置されている。
【0035】
一実施形態では、移送システムは移送ラインを3つ備えており、これら3つの移送ラインのうち2つの移送ラインの第1の近位部分と他の移送ラインの第3の近位部は、関節アームの第1の近位部の両側にそれぞれ配置されており、3つの移送ラインのうち2つの移送ラインの第2の中間部分は関節アームの第2の中間部の一方側に配置されており、他の移送ラインの第2の中間部分は当該関節アームの第2の中間部の他方側に配置されている。
【0036】
一実施形態では、第2の中間部分は、断熱材料によりライニングされた中間スペースを有する二重壁ホースを備えている。
【0037】
一実施形態では、第1の近位部分及び第3の遠位部分はそれぞれ、断熱材料によりライニングされた中間スペースを有する複合ホース又はコルゲート状二重壁ホースを備えている。
【0038】
一実施形態では、移送システムは保護スリーブを備えており、保護スリーブは、第1の近位部分に接続された第2の中間部分の一端部に固定されており、保護スリーブは第1の近位部分の一端部を収容し、保護スリーブは、第1の近位部分の当該一端部が最小の曲率半径となるのを保証するためにフレア状(裾広がり)の内表面を有する。
【0039】
一実施形態では、移送システムは保護スリーブを備えており、保護スリーブは、第3の遠位部分に接続された第2の中間部分の一端部に固定されており、保護スリーブは第3の遠位部分の一端部を収容し、保護スリーブは、第3の遠位部分の当該一端部が最小の曲率半径となるのを保証するためにフレア状の内表面を有する。
【0040】
一実施形態では、移送システムは少なくとも2つの移送ラインと、2つの移送ラインの各中間部分に設けられた流量調整バルブより上流において中間部分を接続するバイパス装置と、を備えている。
【0041】
一実施形態では移送システムは、関節アームを伸長できる作動装置を備えている。
【0042】
一実施形態では作動装置は、第1の軸まわりに第1の近位部を回動させるように構成されたモータを含む。
【0043】
一実施形態では作動装置は、第1の近位部に関節連結により取り付けられた第1の端部と、第2の中間部に関節連結により取り付けられた第2の端部とを有する第1のリニアアクチュエータと、第2の中間部に関節連結により取り付けられた第1の端部と、第3の遠位部に関節連結により取り付けられた第2の端部とを有する第2のリニアアクチュエータと、を備えている。
【0044】
一実施形態では、本発明は上述の移送システムを備えた船舶を提供する。
【0045】
一実施形態では、関節アームは休止位置を有し、関節アームは当該休止位置において、船舶の長手方向に対して平行に延在する。
【0046】
あくまで限定列挙ではない本発明の複数の特定の実施形態の以下の説明を、添付の図面を参照して読めば、本発明をより明確に理解することができ、また本発明の他の目的、構成及び利点がより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】一実施形態の液化ガスを移送するためのシステムが休止位置にある様子を示す側面図である。
図2図1の液化ガス移送システムの背面図である。
図3図1の液化ガス移送システムの平面図である。
図4図1の線 IV-IV に沿った断面図である。
図5】伸長動作位置にある移送システムを示す図である。
図6】伸長動作位置にある移送システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、例えばサプライヤ側船舶と顧客側船舶との間等の2つの離隔した設備間で、例えば液化天然ガス(LNG)等の液化ガスを移送できる移送システム1について説明する。サプライヤ側船舶は例えば、他の船舶にLNGを補給する役目を持つバンカー船等であり、
顧客側船舶はLNG推進方式の船舶である。
【0049】
図1~6を参照すると、移送システム1は、サプライヤ側船舶31のデッキ30に関節連結により取り付けるために適した関節アーム2と、複数の移送ライン3,4,5と、を備えている。
【0050】
図示の実施形態では、移送システム1は移送ライン3,4,5を3つ備えている。第1の移送ライン3及び第2の移送ライン4は、サプライヤ側船舶上の不図示の液化天然ガス貯蔵タンクと、顧客側船舶上の不図示の受取マニホールドとに接続するために適したものであり、また、サプライヤ側船舶31から液化天然ガスを顧客側船舶へ移送するために用いられる。第3の移送ライン5も顧客側船舶の受取マニホールドに接続するために適したものであるが、両船舶のタンクの膨張空間の圧力を均衡化するために顧客側船舶上のタンクからサプライヤ側船舶へ天然ガスを気体状態で抽出するために使用されるものである。一実施形態では、第3の移送ライン5は、サプライヤ側船舶に搭載されたガス再液化設備に接続される。
【0051】
液化天然ガスを移送するために必要な圧力を生じさせるためには、サプライヤ側船舶に搭載される不図示のポンプ及び/又は顧客側船舶に搭載されるポンプを設けるのが有利である。
【0052】
関節アーム2は、互いに関節運動するように取り付けられた第1の近位部6、第2の中間部7及び第3の遠位部8の3つの部分を有する。第1の近位部6はサプライヤ側船舶のデッキに鉛直軸Aまわりに回動するように取り付けられており、第2の中間部7は第1の近位部6に水平軸Bまわりに回動するように取り付けられており、第3の遠位部8は第2の中間部7に水平軸Cまわりに回動するように取り付けられている。
【0053】
図示の実施形態では第1の近位部6は、鉛直軸Aまわりに回動するように取り付けられた円柱状のタレットであり、このタレットは、図1及び図2に示されている休止位置から一方向又は他方向に回動することができる。一実施形態では、休止位置において関節アームは、サプライヤ側船舶の長手方向に対して平行な向きの長手方向平面内に延在する。円柱状のタレットは例えば、図1及び図2に示された休止位置を基準として2つの回動方向それぞれにおいて90°回動することができるものである。よって移送システム1は、サプライヤ側船舶31のどちら側に顧客側船舶が在るかにかかわらず、顧客側船舶に液化ガスを移送することができる。
【0054】
第2の中間部7及び第3の遠位部8はそれぞれビームの形態となっている。第2の中間部7の後端部9は第1の近位部6に関節連結されており、第2の中間部7の前端部10は第3の遠位部8の後端部11に関節連結されている。
【0055】
さらに、関節アーム2を伸長可能とするため、関節アーム2には作動装置が備え付けられている。作動装置は、第1の近位部6を回動させることができる不図示のモータを備えている。作動装置はさらに、図1及び図6に示されている2つのリニアアクチュエータ13,14を備えており、これらのリニアアクチュエータは例えば液圧シリンダ又は空気圧シリンダ等である。第1のリニアアクチュエータ13は、第1の近位部6に関節連結により取り付けられた第1の端部と、第2の中間部7に関節連結により取り付けられた第2の端部とを有し、これにより第1の近位部6を基準とする第2の中間部7の回転を制御することができる。第2のリニアアクチュエータ14は、第2の中間部7に関節連結により取り付けられた第1の端部と、第3の遠位部8に関節連結により取り付けられた第2の端部とを有し、これにより第2の中間部7を基準とする第3の遠位部8の回転を制御することができる。
【0056】
図1に示されているように関節アーム2が休止位置にあるときには、第2の中間部7及び第3の遠位部8は互いに連続するように、実質的に水平方向に延在する。この休止位置では、第1のリニアアクチュエータ13は後退位置にあるのに対し、第2のリニアアクチュエータ14は伸長位置にある。関節アーム2を図1に示されている休止位置から、図5及び図6に示されている伸長位置に動かすため、第1のアクチュエータ13は、第1の回転方向に第2の中間部7を第1の近位部6に対して相対回動させて第2の中間部7の前端部10を上昇させるように伸長可能となっている。また第2のアクチュエータ14は、第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向に第3の遠位部8を第2の中間部7に対して相対回動させるように後退可能となっている。
【0057】
よって、上記のような3部分構成の関節アーム2により、移送システム1は幅広い種々異なる構成に合わせることができる。
【0058】
さらに、上記3つの各移送ライン3,4,5は順に、可撓性の第1の近位部分15と、関節アーム2の第2の中間部7に固定された剛性の第2の中間部分16と、可撓性の第3の遠位部分17と、を有する。
【0059】
可撓性の部分すなわち第1の近位部分15及び第3の遠位部分17は、例えば複合ホース又はコルゲート状の二重壁ホース等の低温用ホースから成り、この低温用ホースは例えばステンレス鋼製であり、低温用ホースの中間スペースは断熱材料によりライニングされている。
【0060】
移送ライン3,4,5の第1の近位部分15は可撓性となっているので、これらの第1の近位部分15により、サプライヤ側船舶31のデッキ30に対する鉛直軸Aまわりの関節アーム2の第1の近位部6の相対回転と、第1の近位部6に対する水平軸Bまわりの第2の中間部7の相対回転とが可能となっている。
【0061】
移送ライン3,4,5の第1の近位部分15は関節アーム2の第1の近位部6の両側に分布している。具体的には図3に示されているように、第1及び第2の移送ライン3,4の第1の近位部分15が関節アーム2の第1の近位部6の一方の側に配置され、第3の移送ライン5の第1の近位部分がその反対側に配置されている。
【0062】
移送システム1は2つの平坦な支持部18,19を備えており、支持部18は第1及び第2の移送ライン3,4の第1の近位部分15を支持するように配置され、支持部19は第3の移送ライン5の第1の近位部分を支持するように配置されている。有利には、支持部18,19はノンスティックコーティングにより覆われている。このノンスティックコーティングは、関節アーム2が動くときに、特に関節アーム2の第1の近位部6が鉛直回動軸Aまわりに回動するときに、上記の支持部18,19と移送ライン3,4,5の第1の近位部分15との間に生じ得る摩擦を低減できるものである。これによって第1の近位部分15の摩耗を抑えることができ、関節アーム2の第1の近位部6を回動させるために必要な力を制限することができる。ノンスティックコーティングは例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等である。
【0063】
さらに、第1の近位部6のうち少なくとも、鉛直軸Aまわりに第1の近位部6が動く際に第1の近位部分15と接触し得る下部分に、円筒状の保護スカート部20を設けるのが有利である。円筒状の保護スカート部20は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のノンスティックコーティングを備えている。これにより、関節アーム2の第1の近位部6と移送ライン3,4,5の第1の近位部分15との間に生じ得る摩擦を抑えることができる。
【0064】
有利には、図1に示されているように関節アーム2が休止位置にあるときに第1の近位部分15にかかる応力を抑えるため、第1の近位部分15は上記の休止位置において、各対応する移送ライン3,4,5の第2の中間部分16と実質的に同一の鉛直方向平面内に配置される。
【0065】
移送ライン3,4,5の第2の中間部分16は剛性であり、例えばステンレス鋼製の例えば二重壁ホース等の低温用ホースから成り、その中間スペースは断熱材料によりライニングされている。
【0066】
第2の中間部分16は関節アーム2の第2の中間部7に沿って、その長手方向に対して平行に延在する。第2の中間部分16は関節アーム2の第2の中間部7の一方側又は他方側に配置される。このようにして図3に示されているように、第1及び第2の移送ライン3,4の第2の中間部分16は関節アーム2の第2の中間部7の側方の片側に配置され、第3の移送ライン5の第2の中間部分は第2の中間部7の側方のもう片側に配置される。
【0067】
第2の中間部分16は複数の支持部材21を用いて関節アーム2に固定されており、これらの支持部材21は第2の中間部分16に沿って均等に分布している。一実施形態では、支持部材21は、関節アーム2の第2の中間部7に溶接されたクロスメンバと、当該クロスメンバに固定された挟持カラーと、を備えており、挟持カラーに第2の中間部分16が通される。有利には、支持部材21はさらに、径方向に挟持カラーと第2の中間部分16との間に挟まれた断熱スリーブを備えている。
【0068】
第2の中間部分16にはさらに低温用流量調整バルブ22が備え付けられている。流量調整バルブ22は有利には、第2の中間部分16の前端部付近に、すなわち第3の遠位部分17に接続された第2の中間部分16の端部付近に配置されている。これにより、移送ライン3,4,5が顧客側船舶上の受取マニホールドから切り離されるときに当該流量調整バルブ22より下流の液化ガスの量を抑えることができる。流量調整バルブ22はさらに、第2の中間部分16の後端部23よりも当該第2の中間部分16の前端部24寄りに配置されるのが有利である。
【0069】
なお、図4等に示されているように、流量調整バルブ22の高さは大きい。その結果、当該流量調整バルブ22を容易に組み込めるようにするためには、第2の中間部分16は関節アーム2の第2の中間部7に対して側方にずれている。
【0070】
さらに、各第2の中間部分16の第2の端部23,24は例えば90°等に曲げられて下向きとなっている。これにより、第1の近位部分15及び第3の遠位部分17における第2の中間部分16に接続された端部の曲率半径が過度に小さくなるのを回避することができる。これにより、第1の近位部分15及び第3の遠位部分17にかかり得る応力が抑えられる。
【0071】
有利には、各第2の中間部分16の後端部23は、関節アーム2の第1の近位部6に対する第2の中間部7の関節運動軸Bと整列し、又は実質的に整列している。各第2の中間部分16の前端部24も同様に、関節アーム2の第2の中間部7に対する第3の遠位部8の関節運動軸Cと整列し、又は実質的に整列しているのが有利である。これにより、移送ライン3,4,5の第1の近位部分15及び第3の遠位部分17の長さを抑えることができ、その疲労摩耗を抑えることができる。
【0072】
また、有利な一実施形態では図1に概略的に示されているように、移送システム1は、各中間部分16の後端部23及び前端部24に固定された保護スリーブ32,33を備えている。第1の近位部分15の前端部は保護スリーブ32に収容され、第3の遠位部分17の後端部は保護スリーブ33に収容される。保護スリーブ32,33は、底部に向かって裾広がりとなりチューリップ状になっている弧状の内表面を有する。この弧状の内表面の曲率半径は、第1の近位部分15及び第3の遠位部分17の最小許容可能な曲率半径より大きい。それゆえ、保護スリーブ32,33によって第1の近位部分15及び第3の遠位部分17を一層保護することができる。
【0073】
さらに、各移送ライン3,4,5の第3の遠位部分17はその自由端に、移送作業中に顧客側船舶上のマニホールドに接続するために適した連結部25を備えている。
【0074】
一実施形態では、連結部25は「ERC」としても知られている緊急時解除連結部である。緊急時解除連結部は上流要素と下流要素とを備えており、上流要素及び下流要素は、動作位置では互いに密閉接続され、緊急時には互いに分離することができる。有利には、上流要素及び下流要素はそれぞれチェックバルブを備えており、このチェックバルブは、上流要素及び下流要素が互いに切り離されたときに上流要素又は下流要素を通る流体の流れを阻止できるものである。一実施形態では、緊急時解除連結部の解除は、遠隔制御可能な液圧回路又は空気圧回路を用いて制御される。一実施形態では上流要素と下流要素とは、緊急時解除連結部にかかる分離力が所定の閾値より大きいときに故障するように構成された固定部材を用いて、互いに固定されている。
【0075】
不図示の一実施形態では移送システム1は、各第3の遠位部分17の自由端に配置された連結部25の他にさらに、当該第3の遠位部分17の後端部すなわち第2の中間部分16に接続された端部に配置された緊急時解除連結部を備えている。
【0076】
さらに、各移送ライン3,4,5の第3の遠位部分17は関節アーム2の第3の遠位部8の前端部12に懸架されている。こうするためには、各連結部25は持上装置に固定されている。各持上装置は、関節アーム2の第3の遠位部8に固定されたドラム26を備えており、ドラム26は、当該ドラム26を回転させることができるモータと協働し、各持上装置はさらに、当該ドラム26に巻かれたケーブル27を備えており、各ケーブル27は連結部25のうち1つに固定されている。図示の実施形態では、各ケーブル27は図3に示されているプーリ28と協働し、プーリ28は、持上装置のドラム26が第3の遠位部8の前端部12から離隔して配されても移送ライン3,4,5の第3の遠位部分17が前端部12に懸架されるように、第3の遠位部8の前端部12に配置される。よって、ドラム26及びこれに関連付けられているモータは、有利には第3の遠位部8の後端部11付近に配置され、これにより、ドラム26及びモータの重量により生じるモーメントを制限することができ、ひいては、第2のリニアアクチュエータ14にかかる力を制限することができる。
【0077】
図示の有利な実施形態では各持上装置のケーブル27は、図1,5,6に示されている荷重バランシング分散器29を用いて、各対応する連結部25に接続されており、荷重バランシング分散器29は、関節アーム2の傾き如何にかかわらず連結部25を実質的に水平に維持できるものである。
【0078】
有利な一実施形態では、移送システム1は、図3において点線により示されているバイパス装置34を備えており、このバイパス装置34は、第1、第2及び第3の移送ライン3,4,5の中間部分16を流量調整バルブ22の上流において接続できるものである。かかるバイパス装置34により、第1及び第2移送ライン3,4の冷却を容易に行うことができる。かかる冷却の目的は、第1及び第2の移送ライン3,4の温度条件及び圧力条件を液化天然ガスの移送に適したものにすることである。この冷却を達成するためには、液化ガスが例えば第1及び第2の移送ライン3,4を介して運ばれ、その後、例えば第3の移送ライン5を介してサプライヤ側船舶30上のタンクに戻る前にバイパス装置34を通過する。
【0079】
複数の特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることは決してなく、本発明の範囲に属する場合には上記手段の技術的な均等態様及びそのあらゆる組み合わせの全てを含むことが自明である。
【0080】
動詞「含む」又は「備える」及びその活用形を使用した場合、これは請求項に記載の要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。
【0081】
特許請求の範囲において括弧書きのいかなる符号も、請求項を限定するものと解釈すべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6