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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】工具用バランサ
(51)【国際特許分類】
   B25H 3/00 20060101AFI20230427BHJP
   B66D 3/18 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B25H3/00 A
B66D3/18 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021505824
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 IT2018000104
(87)【国際公開番号】W WO2020026276
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】517127850
【氏名又は名称】テクナ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】TECNA S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ダミアーノ・ベルガミ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ロッリ
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ・グベッリーニ
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-262544(JP,A)
【文献】特開2004-091093(JP,A)
【文献】特開2002-284490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 3/00
B66D 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具用バランサであって、
工具を支持する自由端(3a)が構成されたケーブル(3)用の、回転する巻き取り及び巻き戻しドラム(2)と、
前記ドラム(2)の回転の主軸(A)の周りに巻かれて、前記ドラム(2)の終点部分と統合的なバネ(5)であって、前記ケーブル(3)の巻き戻しと、前記巻き戻しに応じて生じる前記ドラム(2)の回転との結果として、前記ケーブル(3)の再巻き取りを容易にするように適合した弾性反応を生じさせるバネ(5)と
前記ドラム(2)を減速させ、前記ケーブル(3)の再巻き取りストロークを任意に変調するように、前記ドラム(2)に対して直接的または間接的に作用する抵抗モーメントを生じさせるように適合した要素(9)と、
前記要素(9)と関連して、前記要素(9)によって生じる前記抵抗モーメントの強度の制御及び調節のためのモジュールが設けられた対応する電子ユニットと、
を有し、
前記要素(9)は電気モータ(10)であって、ロータ(11)と前記ドラム(2)とは機械的に接続され、
前記抵抗モーメントは、前記モータ(10)によって生じる機械的モーメントによって構成される、バランサ。
【請求項2】
前記モータ(10)の電力供給源のための回路(12)を有し、
前記回路(12)は、パワーソース(13)と、電気スイッチ装置とを備え、
前記電気スイッチ装置は、前記ソース(13)と前記モータ(10)との間に配置され、前記機械的モーメントの強度を調節する及び/または前記モータ(10)の操作パラメータを調節するように、前記ユニットによって制御される、請求項に記載のバランサ。
【請求項3】
前記ソース(13)は、キャパシタ(14)によって構成され、
前記バランサは、前記キャパシタ(14)が電力を蓄積する充電ステップと、前記ドラム(2)の回転が減速されるブレーキステップとを行い、
前記キャパシタ(14)は、前記ドラム(2)の回転の少なくとも1つの前記充電ステップの間で電力を蓄積して、前記ドラム(2)の少なくとも1つの前記ブレーキステップの間で前記モータ(10)に電流を供給するように構成される、請求項に記載のバランサ。
【請求項4】
使用者が前記要素(9)によって生じる前記抵抗モーメントの強度を選択的に変更できるように、前記制御及び調節モジュールの制御のためのユーザインターフェイスを有する、請求項1からのいずれか一項に記載のバランサ。
【請求項5】
前記インターフェイスは、外部からアクセスできるディスプレイを有する、請求項に記載のバランサ。
【請求項6】
前記電子ユニットは、携帯電話、スマートフォン、タブレット、または類似品のタイプの携帯装置(15)によっても、前記要素(9)の遠隔制御を可能にするように、前記制御及び調節モジュールと関連するNFC通信モジュールを有する、請求項1からのいずれか一項に記載のバランサ。
【請求項7】
前記電子ユニットは、前記ドラム(2)の回転、及び/または前記ケーブル(3)の巻き戻し及び再巻き取り周期に関するデータを収集するためのモジュールを備える、請求項1からのいずれか一項に記載のバランサ。
【請求項8】
前記電子ユニットは、少なくとも1つのトランシーバモジュールを有し、
前記少なくとも1つのトランシーバモジュールは、前記データ収集モジュールと関連して、少なくとも前記収集モジュールによって取得されたデータの遠隔送信のために、遠隔データバンク及び/または遠隔電子処理制御ユニットとの通信を確立させるように構成される、請求項に記載のバランサ。
【請求項9】
前記制御及び調節モジュールは、予備的カリブレーションモジュールによって特定できる、前記ケーブル(3)の再巻き取りの終点部分においてのみ、前記ブレーキ要素(9)の自動的有効化のための指示が提供され
前記予備的カリブレーションモジュールは、完全な巻き取り及び巻き戻しストロークの実行をもたらすように予め設定されるモジュールである、請求項1からのいずれか一項に記載のバランサ。
【請求項10】
前記要素(9)は、動作トランスミッション部(16)によって前記ドラム(2)に接続され、
前記動作トランスミッション部(16)は、前記ドラム(2)と前記要素(9)との間に配置された速度マルチプライヤアセンブリ(17)を備え
前記速度マルチプライヤアセンブリ(17)は、直列に機能的に配置されるギアトランスミッション要素(20)を有する、請求項1からのいずれか一項に記載のバランサ。
【請求項11】
前記動作トランスミッション部(16)はリングギア(18)を有し、
前記リングギア(18)は、前記ドラム(2)上において同軸上に統合的に、ピニオン(19)とかみ合うように取り付けられ、
前記ピニオン(19)は、前記速度マルチプライヤアセンブリ(17)によって前記要素(9)と関連する、請求項10に記載のバランサ。
【請求項12】
前記トランスミッション部(16)を前記要素(9)及び前記ドラム(2)から離す阻害要素(21)を有し、
前記阻害要素(21)は、前記ケーブル(3)の巻き戻しに対応する第1方向における前記ドラム(2)の回転の間において自動的に有効であり、前記ケーブル(3)の再巻き取りに対応して、前記第1方向に対して反対の第2方向における前記ドラム(2)の回転の間において自動的に無効である、請求項10または11に記載のバランサ。
【請求項13】
前記阻害要素(21)は、1つの前記トランスミッション要素(20)と関連して自由滑車によって構成され、
前記自由滑車は、回転要素の間に配置されると、回転要素の係合を解除する、請求項12に記載のバランサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具用のバランサに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術において(よって、本説明において)知られているように、用語「バランサ(balancer)」は、工具を用いるプロセスを実行するように指示された作業者の仕事を容易にするために、ワークショップ及び製造部署において使用される装置を示す。
【0003】
より詳細に、現在においてよく確立された方法によると、バランサは、天井からぶら下がり、その周りにケーブルが巻かれた回転可能なドラムを有する。ケーブルは、一端において、当該ドラムに固定され、反対側の端において、少なくとも一時的に工具を係合できるフックを有する。
【0004】
バランサはさらに、通常螺旋状のバネであるリターン(return)バネを有し、リターンバネは、その一方の端においてドラムに係合され、通常、事前負荷される。作業者が自分自身に向かってフックを引くと、作業者はケーブルの巻き戻し(unwinding)及び結果としてドラムの回転をもたらす。これは、明らかにバネを変形させ、さらなる弾性制約反応の開始をもたらす。
【0005】
ある用途において、装置、特にバネの反応の役割は、フックからぶら下がる工具の重量をバランスして、望まれた縦方向の高さに維持して、作業者が負担なく操作することを可能にする。他の場合、バランサは、指定された容器内に工具を保持する追加の役割を有し、必要な時に作業者が容器から取ることができる(よって当該工具を支持するフックの巻き戻しをもたらす)。この場合、バネの反応は、使用の終わりにおいて、作業者によって解放されるとすぐに、工具とフックとを容器に戻す役割を果たす。
【0006】
しかしながら、これらの全ての内容において、ある欠点が生じることが多い。
【0007】
バネによって生じる力は、最初の事前負荷と、フックの巻き戻しがもたらす変形によって生じるさらなる弾性反応とに依存する。まれではなく、この力は極めて強く、よってフックの巻き戻し(上昇)はあまりにも早く起きすぎ、後者(おそらく工具も)の質量は、速く加速して、天井からぶら下がり、ドラムを収容するバランサのケーシングを強く打撃する。さらに、慣性によって、ケーブルの端部は、周期的な態様において曲がり、徐々に劣化する。
【0008】
明らかに、これらは、いずれも望ましくない出来事であり、バランサのダメージ及び/または(負荷された質量の落下と共に)ケーブルの故障をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主意は、ケーブルの最適な再巻き取り(rewinding)を可能にして、激しい衝撃及びダメージを回避する工具用のバランサを設けることで、上述の課題を解決することにある。
【0010】
この主意において、本発明の目的は、任意に調節できる形態において、再巻き取りストロークを減速させる可能性を提供するバランサを設けることである。
【0011】
本発明の他の目的は、いずれかのタイプのドラム上に効果的に実施できる解決策と共に、ケーブルの最適な再巻き取りを保証するバランサも設けることにある。
【0012】
本発明の他の目的は、再巻き取りストロークの最後の部分においてのみ、ケーブルが減速されるバランサを設けることにある。
【0013】
本発明の他の目的は、その操作に関するデータ及び情報を収集及び伝送する可能性を提供するバランサを設けることにある。
【0014】
本発明の他の目的は、操作において、高い信頼性を保証し、自律的に駆動されるバランサを設けることにある。
【0015】
本発明の他の目的は、知られたタイプのバランサに対して代替的である技術的及び構造的設計を適用するバランサを設けることにある。
【0016】
本発明の他の目的は、通常、商業的に入手可能な要素及び材料から開始して、容易に入手できるバランサを設けることにある。
【0017】
本発明の他の目的は、控えめなコストを有し、用途において安全であるバランサを設けることにある。
【0018】
本明細書にてより明確になるこの目的、並びにこれら及び他の目的は、請求項1に係るバランサにおいて実現する。
【0019】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付された図面における限定的でない例示によって示される、本発明に係るバランサの望ましいが非排除的な実施の形態の説明によって、より明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ある要素を省略して示す、本発明に係るバランサの透視図である。
図2】内部を示すため、カバーの一部を除去した本発明に係るバランサの正面図である。
図3】地面に直交する、軸方向を含む面に沿った本発明に係るバランサの断面図である。
図4】バランサのある要素の概略的部分分解透視図である。
図5図4の要素の、異なる角度からの、概略透視図である。
図6】ブレーキ要素を含むバランサのある要素の概略透視図である。
図7】バランサの外部要素の概略透視図である。
図8】相互作用できる追加の装置と、カバーを部分的に除去したバランサとの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、参照符号1は、通常、工具用のバランサ、即ち、様々な種類の工具を用いて、様々な種類の仕事を実行する必要がある作業者に有益な支援を提供するように使用されてもよい装置を指定する。
【0022】
バランサ1は、したがって、ケーブル3用の回転する巻取り-巻き戻し(winding unwinding)ドラム2を有し、ケーブル3は、第1端において、ドラム2に固定またはいずれかの場合において係合される。
【0023】
ケーブル3は、(様々な種類、形状、重量、及び意図された用途)工具を支持する1つの自由端3a(第1端の反対側)と共に構成される。例えば、自由端3aにバネクリップ4(または他のタイプのフック)を固定することによって、支持が生じてもよく、よって、作業者が、ケーブル3と工具との間に、安定するが、同時に容易に除去可能な係合を設けることができる。
【0024】
バランサ1は、さらに、ドラム2の主回転軸A(簡易性のため、主軸Aを図1及び3のみに示す)の周りに巻かれたバネ5を有する。バネ5は、通常(必ずしもではなく)事前負荷され、通常、螺旋状のタイプである(しかしながら、他の構造的解決策は排除されない)。いずれかの場合において、バネ5は、ドラム2の終点部分と統合され、よって、ケーブル3の巻き戻しと、後続のドラム2の回転との結果として、弾性反応が生じる。当該反応は、ケーブル3の再巻き取りを容易にするように適合(adapted)する。反対側において、バネ5は、通常バランサ1の固定要素に係合される。
【0025】
様々な方法で、及びバランサ1の特定の用途及び使用の機能として、再巻き取りは、いずれかの場合、工具の使用の終わりに、通常発生する。
【0026】
ドラム2、望ましくは、主軸Aに沿って延びる(及びそれを形成する)シャフト6上に取り付けられており、本明細書において記載された保護範囲を放棄することなく、(添付の図面の解決策のように)円柱形状、または円錐状/錐台形状、または他の形状を有してもよい。明らかになるように、本発明の1つの特徴は、異なる形状のドラム2において同様に実施することができ、最大の汎用性及び用途の幅広い範囲を保証する。
【0027】
さらに、通常ドラム2は、ケーブル3の巻き取り(winding)及び巻き戻しを可能にするように下方に開くケーシング7によって囲われる(図7の発明特定事項)と、認識されよう。固定されたケーシング7は、ドラム2を回転可能に収容し、天井または他の壁からぶら下げられるように、フック、ロープ8または他の支持付属品を有する上方領域が設けられてもよい。
【0028】
これまで、バランサ1は従来のタイプであり、他の便利な機能、例えば、バネ5の事前負荷を調節するシステム等を持たせるために、知られたタイプの追加の要素及び装置が設けられてもよい。
【0029】
本発明によると、バランサ1は、ドラム2のブレーキ用の要素9を有し、ドラム2に直接的にまたは間接的に作用する抵抗モーメントを発生させるように適合して、よって(示されるように、その第1端によってドラム2に係合される)ケーブル3の再巻き取りのストロークと差がつく。抵抗モーメントによって、上昇ストロークを減速及びブレーキさせることができる。
【0030】
対応する電子ユニットは、さらに、要素9と関連し、当該要素9によって発生される抵抗モーメントの強度を制御及び調節するモジュールが設けられている。
【0031】
電子ユニットはいずれかのタイプであってもよく、例えば、バランサ1上に取り付けられた電子コントローラであってもよい。リプログラミングが可能か否かのいずれかのハードウェアプラットホームであってもよく、いずれかの場合において、抵抗モーメントの強度に対して(自動的に及び/または使用者の介入の結果として)作用することができる、(ケーシング7に取り付けられたまたはその内部にない)異なるタイプの電子ユニットを用いることは、いずれかの場合においても、排除されていない。
【0032】
要素9は再巻き取りストロークを減速させることができて、ケーシング7に対する激しい衝撃の危険性及び/またはケーブル3のダメージを回避することができるため、これによって、意図された目的を、既に、この時点で実現することを可能にする。さらに、電子ユニットは、抵抗モーメントの強度を調節する可能性を提供し、よって、異なる速度ランプ(ramp)に応じて、当該再巻き取りストロークを任意に変調し、よって、特定の要求に対して適合し、いずれかの場合において、最適の態様を取得する。
【0033】
特に、望ましい実施の形態において、本発明の出願の非限定的な例示によって、添付の図面に示されるように、要素9は電子モータ10であり、電子モータ10は、ロータ11と共にドラム2に間接的にも接続される。要素9によって発生した抵抗モーメントは、よって、望ましい実施の形態において、電子モータ10によって発生させられる機械的モーメントによって構成され、ブレーキとして機能する(このタイプの用途において、機械的モーメントは、先行技術に使用される用語「ブレーキングトルク」が使用されてもよい)。
【0034】
本明細書に記載された保護範囲を放棄せず、電子モータ10はいずれかのタイプであってもよいと特定され、いずれかの場合において、他の要素9を用いる可能性を含む。
【0035】
便利なことに、バランサ1は、モータ10の電力供給源用の回路12を有し、回路12は、パワーソース13と、ソース13とモータ10との間に配置され、電子ユニットに制御される電気スイッチ装置を有する。スイッチ装置に対して作用することによって、機械的モーメントの強度を調整することが可能になり、及び/または、より一般的に、モータ10の操作パラメータを調節することが可能になる。同じ上昇ストローク内において、任意に選択された時間間隔の間で、いずれかの回数でパワー供給を中断することができる。
【0036】
モータ10に供給される電流の強度に対して異なる形態で作用することによって(例えば、回路12の抵抗を変更する、またはソース13に直接作用することで)、電子ユニットによって回路12の他のパラメータを変更することによって、いずれかの場合において、他の形態によって、モータ10及び抵抗モーメントを制御する可能性が提供される。
【0037】
特に、ソース13は、キャパシタ14によって構成される(しかしながら、他の構造上の選択肢は排除されないと特定されよう)。
【0038】
キャパシタ14は、ドラム2の回転の少なくとも1つの第1充電ステップの間において電力を蓄積するように、及びドラム2の回転の少なくとも1つの第2ブレーキステップの間においてモータ10に電流を供給するように構成される。
【0039】
この特定の実用的な解決策によって、モータ10への電流の供給は、主電力(mains)または他の外部供給方法への接続を要せず、または(バランサ1に電池を配置することによって発生し得るような)使用可能なエネルギの枯渇が危惧されない。
【0040】
当該第1充電ステップは、ケーブル3の巻き戻しストローク及び/または再巻き取りストロークの一部(ドラム2を減速させたくないもの)と一致してもよい。この場合、ドラム2は、ケーブル3を巻き戻す作業者の動作下で回転し、または、バネ5の弾性反応によって、及び、適当な変換システムによって、機械エネルギはキャパシタ14が蓄積できる電力に変換される。
【0041】
一方で、ドラム2をブレーキしたいとき、キャパシタ14は、モータ10を作動させるように、以前蓄積したエネルギの一部を解放する。
【0042】
さらに、キャパシタ14は、電子ユニット及びバランサ1に取り付けられているいずれかの他の電気/電子要素にパワーを供給する役割を果たしてもよく、後者をエネルギレベルにおいて自律的にして、外部ソースを通じてパワーを供給する必要を回避できる。
【0043】
有利に、バランサ1は、制御及び調節モジュール(及び/または、より一般的に、電子ユニット)を制御するユーザインターフェイスを有し、要素9によって発生される抵抗モーメントの強度を、使用者が選択的に変化できる。
【0044】
例えば、電気スイッチ装置を有効にするまたは無効にすることによって、または、予めプログラムされた及び/または選択的に(再)プログラムできる異なる既定の速度ランプから選択するとの選択肢を使用者に与えることによって、使用者は、上昇ストロークを様々な形態に設定するように、手動で操作できる。
【0045】
いずれかの場合において、乱用またはいずれかの場合において、望ましくない及び可能性として危険な使用を防止するために、電子ユニットに作用する可能性が(1人の担当者または数人の担当者に)限定されてまたは禁止されて、本発明に係るバランサ1を提供することが排除されない。
【0046】
特に、可能な1つの実施の形態において、インターフェイスは、外側からアクセス可能に維持されたディスプレイを有する(例えば、ドラム2を覆って保護するケーシング7に取り付けられている)。
【0047】
便利なことに、電子ユニットは、制御及び調節モジュールと関連するNFC通信モジュールを有する(いずれかの場合において、異なる非接触式データ交換技術を用いることが排除されない)。これは、携帯電話、スマートフォン、タブレット、または類似品等の携帯装置15によって(NFC機能と共に設けられていることは明確)、要素9の遠隔制御を可能にする。
【0048】
携帯装置15(及びこの目的における任意なソフトウェアアプリケーションプリセット(preset))によって、作業者に(または担当者に)、ディスプレイ(設けられてもまたは設けられていなくとも)の同一の機能を使用可能にすることが、例えば可能であり、実用において、携帯装置15を、さらなる(または代替の)ユーザインターフェイスとして、本発明の使用の実用性を向上させる。
【0049】
積極的に、電子ユニットは、ドラム2の回転、及び/またはケーブル3の巻き戻し及び再巻き取りの周期に関するデータを収集するモジュールが設けられている。これらのデータは、ケーブル3の直線上の位置及び/または速度及び/または加速度パラメータ及び/またはドラム2の角度パラメータを検知することが意図されたセンサを配置することによって取得できる。
【0050】
ドラム2の回転(例えば、その角度位置及び/またはその速度)及び/またはケーブル3の巻き戻し及び再巻き取りに関する情報を監視及び保存することによって、バランサ1の摩耗/劣化条件、及び一般的にその信頼性に関する情報を取得することが可能であると認識されよう。実に、その実用的な寿命において、バランサ1がいつ及びどのように操作したかをいつでも知って、後でこれらのデータを故障及びメンテナンス作業と相関関係を見出すことが可能である。これは、まず、特定のバランサ1の故障を起こした可能性がある原因に関する情報及び示唆を取得することを可能にする。さらに、異なるバランサ1から届くデータを互いに相関させることによって、例えば、予防的なメンテナンス及び介入を予定するように、期待される平均寿命に関する重要な示唆を推論することができる。
【0051】
データ収集モジュールから取得した情報を抽出する方法は、いずれかの特定の要求に基づいてもよい。
【0052】
望ましくは、電子ユニットは、少なくとも1つのトランシーバモジュールを有してもよい。トランシーバモジュールは、データ収集モジュールと関連して、少なくとも、収集モジュールによって取得されたデータを遠隔送信する(及び、上記の段落において簡単に説明した分析を実行する)ため、遠隔データバンク及び/または遠隔電子処理制御ユニットとの通信を確立させるように構成される。
【0053】
トランシーバモジュール16は、知られたタイプから選択されてもよく、望ましくは、しかしながら非排除的にインターネット(及び/または携帯装置15)との接続を確立できて、インターネットを通じて遠隔にデータを送信する。遠隔データバンク及び遠隔電子制御ユニットは、例えば、バランサ1の製造者に配置され(またはいずれかの場合において、管理され)てもよく、よって、後者は、異なる状況において設置された複数のバランサ1に関するデータを蓄積して、統計的データを取得して、要素の寿命及び信頼性について予測的な仮説を形成して、よって、予防的なメンテナンスプログラムを最善の形態において分析して、及び/または当該バランサ1の寿命を延ばすために必要な対策を採用することができる。特に、トランシーバモジュール16によって、バランサ1と電子ユニットとを遠隔的にプログラムする可能性を設けることを排除しない。
【0054】
重大な実用的な意味を有する1つの実施の形態において、制御及び調節モジュールには、ケーブル3の再巻き取りストロークの終点部分のみ(即ち、自由端3aがドラム2及び通常天井からぶら下がるケーシング7に近いとき)において、ブレーキ要素9の自動的な作動の指示が提供される。
【0055】
これは、疑う余地のない実用的な意味を有する。なぜなら、工具及び/またはバネクリップ4との衝撃によって生じるダメージからのバランサ1の保護及び防止の機能を妥協することなく、これによって、要素9がドラム2及びケーブル3をストロークの小さい部分のみにおいて減速させ、残りの部分においては、速度は最大であるため、全体的な上昇時間及び(必要な場合において)再巻き取りが終わるまでの待ち時間を減少させることを可能にする。
【0056】
意味(interest)の終点部分、及び、各ストロークにおいて、終点に到達する瞬間は、それぞれ、予備的なカリブレーションモジュールによって特定できる。カリブレーションモジュールは、実は、例えば、データ収集モジュール及び/または制御及び調節モジュールと通信することによって、第1完全巻き取り及び巻き戻しストロークの実行をもたらすように予め設定されてもよい(選択的に、インターフェイスによって、第1パワーオン(power-on)において、この観点の要求を発する)。
【0057】
よって、電子ユニットは、ケーブル3の最大延長、及び、一般的に、要素の最大ストロークに関する情報を記憶して、このデータアイテムを、それぞれの場合において、(例えば、引用されたセンサによって取得された)各瞬間のケーブル3及び自由端3aの位置と組み合わせることができる。作業者または担当者に、特定の要件に適合(adapt)するように、端部の延長を(選択的にある既定のパラメータ内において)改造(modify)する可能性を与えることを排除しない。
【0058】
便利なことに、いずれかの場合において、本発明の用途を制限しない望ましい実施の形態において、要素9(電気モータ10またはその他)は、動作トランスミッション部16によってドラム2に接続される。トランスミッション部16は、ドラム2と要素9との間に配置される速度マルチプライヤアセンブリ17を有する。
【0059】
要素9が電気モータ10であると、トランスミッション部16は、ドラム2とロータ11との間の機械的接続を確立させる。
【0060】
特に、トランスミッション部16はリングギア18を有し、リングギア18は、ドラム2上において同軸上に統合的に取り付けられ、ピニオン19とかみ合い(mesh)(図3)、後者は、アセンブリ17によって要素9と関連して、アセンブリ17は、直列に機能的に配置されるギアトランスミッション要素20(図3及び4)を有する。
【0061】
便利なことに、本発明に関するバランサ1は、トランスミッション部16を阻害する要素21(図3)を有する。トランスミッション部16は、まず、ケーブル3の巻き戻しに対応する第1方向におけるドラム2の回転の間で、自動的に有効に維持される。このように、要素9は、ドラム2に機能的及び機械的に接続されておらず、これは、明確に、作業者に引かれて、自由端3aに共にドラム2から離れて下降するときにケーブル3が減速されることを防止する。
【0062】
反対に、阻害要素21は、第1方向とは反対向きで、ケーブル3の再巻き取りに対応する第2方向におけるドラム2の回転の間、自動的に無効である。これは、明確に、要素9とドラム2との間の接続を元に戻し、前者が既に示されていることに基づいて作動することができ、必要であれば、ドラム2に抵抗モーメントを伝送して、減速させる。
【0063】
阻害要素21の存在を含む本発明に係るバランサ1の望ましい実施の形態において、ケーブル3の巻き戻しにおいて、キャパシタ14及びモータ10はドラム2から断絶され、よって、キャパシタ14の充電は、(巻き戻しストロークの間ではなく)上昇/再巻き取りストロークの部分においてのみ生じ得る。いずれかの場合において、本明細書にて記載される保護範囲内であり、例えば、阻害要素21を有しない他の実施の形態において、下降/巻き戻しストロークの間においてもキャパシタ14を充電することが可能である。
【0064】
特に、いずれかの場合において排除的ではない望ましい実施の形態において、阻害要素21は、1つのトランスミッション要素20と関連する自由滑車(wheel)によって構成される。
【0065】
知られているように、自由滑車は、それが間に配置される回転要素の係合を解除することができる機械的装置である。回転は2つの方向の内1つに生じる場合、(この場合において必要なように)自由滑車は他の方向においてのみ許容する。
【0066】
特に、望ましい実施の形態において、ピニオン19は自由滑車の要素を有する。
【0067】
本発明に係るバランサの操作は、下記のようである。
【0068】
既に知られているように、例えば、フック7によって、バランサ1は天井(または壁)からぶら下げられてもよく、よって、バネクリップ4に係合されたままの工具を実に使用できる作業者の仕事を容易にする。
【0069】
動作の実行の間、バネ5の弾性反応は、工具の重さを補填することができ、作業者の仕事を容易にする。バネ5の弾性反応は、さらに、動作の終わりにおけるケーブル3の再巻き取りをもたらすことができる。
【0070】
いずれかの場合において、示されているように、要素9は、ケーブル3の上昇ストロークの全部または(望ましくは)一部の間、抵抗モーメントを生じさせ、最適の再巻き取りを保証し、その他の方法において、バネ5の弾性反応の程度によって生じ得る高い速度及び加速度によって可能である激しい衝撃及びダメージを回避する。
【0071】
さらに、ブレーキ強度、したがって、再巻き取りにおけるケーブル3の速度ランプは、電子ユニット(及び/または作業者)によって任意に制御及び効果的に調節できる。作業者は、電気モータ10(または他の要素9)及び、後者によって生じる抵抗モーメントに対して様々な方法で介入できる。
【0072】
例えば、実に、電子ユニットは、モータ10とキャパシタ14との間に配置され、キャパシタ14に電流を供給する電気スイッチ装置を制御することができる。既定の時間間隔において、電流の通過を許容及び拒否することによって、望ましいプロファイルによって、モータ10内に電流を流すことができ、対応して、抵抗モーメントの形態を任意に発生させる。
【0073】
電気モータ10及び/またはパワー供給回路12の要素の選択を変更することによって、電流が存在しないと生じる抵抗モーメントを任意に改造することがさらに可能であると認識されよう。この状態において、抵抗モーメントを決めることができると、いずれかの強度のブレーキ動作を生じさせること、または(上昇を完全に防止するように)生じさせないことができる。
【0074】
いずれかの場合において、これまでで説明した解決策は、ドラム2の形状的/構造的な種類のいずれかの特定の要件を備えない。よって、この解決策は、円錐状、錐台形状、円柱状、または他の形状を有するドラム2を有するバランサ1において効果的に、当然実施することができ、本発明に対して最大の汎用性を保証する。
【0075】
制御及び調節モジュールには、ケーブル3の再巻き取りストロークの終点部分においてのみ要素9の自動的有効化のための指示が提供されてもよいと既に観察されている。ケーブル3が、その再巻き取りストロークの終点部分においてのみ減速されることをもたらす。発明の特殊性(即ち、ドラム2及びケーシング7に対する激しい衝撃を回避する可能性)を制限せずに、上昇時間を抑えることが可能になる。
【0076】
データ収集モジュール及びトランシーバモジュールは、それぞれ、バランサ1の操作に関する有益な情報を取得し、遠隔に移送すること(または、電子ユニットと、制御及び調節モジュールとを特に、遠隔にリプログラムすることも)を可能にする。
【0077】
最後に、再度、キャパシタ14を要素9のためのパワーソース13として選択することによって、外部のまたはいずれかの場合においてアドホックな(ad hoc)パワーソースを用いることなく、バランサ1を独立させることが可能であると、記載する。
【0078】
このように想到された本発明は、よって、複数の改造及び変形に影響され、全ては添付に請求項の範囲内である。全ての詳細は、さらに、他の技術的に同等な要素によって交換されてもよい。
【0079】
示された例示的実施の形態において、特定の例示に関連して示される個別の特徴は、他の例示的実施の形態に存在する他の異なる特徴と交換されてもよい。
【0080】
実用において、使用される材料、及び寸法は、要件及び先行技術によるいずれかのものであってもよい。
【0081】
いずれかの請求項に記載される技術的特徴に参照符号が付される場合、その参照符号は、請求項の明確性を向上させるのみの目的のために含まれており、よって、このような参照符号は、このような参照符号によって、例示によって特定される各要素の解釈において、いずれかの限定的な効果を有しない。
図1
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図8