(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】土木作業機または資材運搬機のバケット
(51)【国際特許分類】
E02F 3/40 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
E02F3/40 Z
(21)【出願番号】P 2021531953
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2019084031
(87)【国際公開番号】W WO2020115300
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-07-15
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511126992
【氏名又は名称】エスエスアーベー テクノロジー アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・クールソン
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0314236(US,A1)
【文献】特開2014-070430(JP,A)
【文献】特開2017-014751(JP,A)
【文献】実開昭56-159456(JP,U)
【文献】実開昭52-036801(JP,U)
【文献】実開昭52-044601(JP,U)
【文献】米国特許第4324525(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木作業機または資材運搬機のバケット(1)であって、
頂部(2)と
第1の側壁(5)および第2の側壁(6)と
前部切刃(8)から頂部(2)まで延びるバケットフロア(7)を含み、
前部切刃(8)、第1および第2の側壁(5、6)、および頂部(2)が、バケット(1)の正面から見て、バケット開口部(9)を形成しており
バケットフロア(7)は、バケット開口部(9)に向く内側と、バケット開口部(9)から離れて向く外側とを有しており、
バケットフロア(7)は、第1(3)および第2(4)のレール部からなり、レール部(3、4)のそれぞれ1つは、バケットフロア(7)に接続された少なくとも1つの着脱可能な摩耗部品(10)からなり、
バケットフロア(7)は、バケットフロア(7)の外側に谷部(11T)を有し、バケットフロア(7)の内側に峰部(11R)を有する少なくとも1つの倒立キール部(11)をさらに含み、ここで、少なくとも1つの倒立キール部(11)が、バケットフロア(7)の幅(w’)方向に見て、第1レール部(3)と第2レール部(4)との間に設けられていて、少なくとも1つの倒立キール部(11)が、バケットフロア(7)の少なくとも一部に沿って、前部切刃(8)から頂部(2)までの方向に延びていて、そして、バケットフロア(7)は、少なくとも1つの倒立キール部(11)とバケットフロア(7)との間の少なくとも1つの溶接界面の少なくとも一部を保護するための少なくとも1つの保護要素(15)を備えていて、少なくとも1つの保護要素(15)は、前部切刃(8)に近接して少なくとも1つの倒立キール部(11)に隣接する高さ(h’)を有する膨出部(16)を有し、少なくとも1つの倒立キール部(11)の峰部(11R)は保護要素(15)の膨出部(16)に隣接して高さ(h)を有し、ここで、h’≧hであることを特徴とする、
上記のバケット。
【請求項2】
前記レール部(3,4)のそれぞれは、前記バケットフロア(7)の少なくとも一部に沿って、前記前部切刃(8)から前記頂部(2)に至る方向に延びていることを特徴とする、請求項1に記載のバケット(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの着脱可能な摩耗部品(10)が、第1(13)および第2(14)の交換可能なバケットコーナーエッジを形成するように、バケット側壁(5、6)にさらに接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のバケット(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの着脱可能な摩耗部品(10)が、少なくとも1つの機械的締結手段(12)によって、バケットフロア(7)および/またはバケット側壁(5、6)に取り付けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のバケット(1)。
【請求項5】
少なくとも1つのレール部(3,4)が、バケットフロア(7)の幅(w’)方向に見て、その延長線上で実質的に均一な幅(w’’)を示す、請求項1~4のいずれか1項に記載のバケット(1)。
【請求項6】
レール部(3、4)の各1つが、複数の、好ましくは6~10個の、より好ましくは8個の、着脱可能な摩耗部品(10)を備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のバケット(1)。
【請求項7】
隣接する着脱可能な摩耗部品(10)の少なくとも1対の間に空間(17)があり、好ましくは隣接する着脱可能な摩耗部品(10)の各対の間に空間(17)があることを特徴とする、請求項6に記載のバケット(1)。
【請求項8】
少なくとも2つの着脱可能な摩耗部品(10)が均等で交換可能であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のバケット(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの倒立キール部(11)が、1枚のシート材で構成されているか、または、少なくとも2つのシート材が、好ましくは少なくとも2つのシート材の間に少なくとも1つの溶接界面を介して互いに取り付けられていることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載のバケット(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの倒立キール部(11)がバケットフロア(7)に一体として設けられており、少なくとも1つの倒立キール部(11)が、好ましくは少なくとも1つの倒立キール部(11)とバケットフロア(7)との間の少なくとも1つの溶接界面によって、バケットフロア(7)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか1項に記載のバケット(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの保護要素(15)は、前部切刃(8)に近接してバケットフロア(7)の内側に取り付けられていることを特徴とする、請求項10に記載のバケット(1)。
【請求項12】
少なくとも1つの保護要素(15)は、前部切刃(8)に近接してテーパ状の端部を有しており、好ましくは、少なくとも1つの保護要素(15)は、前部切刃(8)に向かう方向に1つの頂点を有する実質的に三角形の形態を有していることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のバケット(1)。
【請求項13】
前記倒立キール部(11)は、1枚の薄鋼板または複数の積層薄鋼板で作られており、これらの1枚の薄鋼板または積層薄鋼板は、2つの対向する面を有しており、面の1つが外側に谷部(11T)を形成し、面の他の1つが内側に峰部(11R)を形成していることを特徴とする、請求項1~
12のいずれか1項に記載のバケット(1)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
掘削機などの土木作業機や資材運搬機は、土、砂、岩、雪などの資材を移動させるために、建設業や鉱山業で広く使用されている。これらの用途の多くで、バケットは資材をすくって運搬し、例えばトラックに積み込んだり、別の場所に移動させたりするのに使用される。
【0002】
このようなバケットは、高度な摩耗にさらされるため、バケットのコーナーエッジを形成するフロアとバケットの側壁との接続部周辺のバケット外面には、摩耗部品(ヒールセグメント、ヒールブロック、キャストヒール、コーナー、コーナーガード、コーナーシュラウド、ウェアストリップまたはウェアプレートとも呼ばれる)を取り付けることが知られている。摩耗部品は、バケットのコーナーエッジでの補強と耐摩耗性を付与し、バケットの作業寿命を延ばす。
【0003】
このようなバケットの製造には耐摩耗鋼が使用されることが多く、バケットを製造する際に行われる溶接や熱のかかる切断作業によって、熱影響部heat-affected zone(HAZ)が形成されることがある。HAZとは、溶接や切断作業によって微細構造や特性が変化した、溶融していない母材の領域のことである。溶接・切断時の熱やその後の再冷却により、溶接界面周辺の鋼材に悪影響を与え、結果的にHAZの部分でバケットが弱くなってしまうことがある。
【0004】
土木作業機や資材運搬機のバケットは大型で重量があるため、バケットの床や側壁などの部品を溶接しながら移動させたり支えたりすることは、製造工程やメンテナンス作業をかなり複雑なものにする。
【0005】
このようなバケットは、異なるサイズのものが提供されるのが一般的であり、それによって、異なる吊り上げ能力や最大吊り下げ荷重を持つ掘削機などの機械とすることができる。吊り上げ能力とは、機械が持ち上げることのできる最大重量のことである。資材を持ち上げる際には、バケット自体の重量を考慮する必要がある。同じ吊上げ能力のショベルであっても、バケットが重いと、どうしても実際の積載重量や作業効率が悪くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、作業効率が向上した土木作業機又は資材運搬機用のバケットを提供することである。また、本発明によるバケットは、高い耐摩耗性と長寿命という利点を有する。
【0007】
本発明によるバケットは、実負荷荷重(actual load weight)と吊り上げ力(lifting capacity)との比率が高いという利点を有する。本明細書で使用される「実負荷荷重」という用語は、吊り上げ能力を有する土木作業機または資材運搬機によって吊り上げまたはすくい上げることができる最大の実負荷重量を意味する。吊上げ能力が一定の場合、実負荷荷重はバケットの種類と被吊上げ物の種類によって決まる。
【0008】
さらに、本発明によるバケットを使用することによって、土木作業機や資材運搬機の作業速度を向上させることができるという利点がある。
【0009】
本発明の別の目的は、より費用対効果の高い方法で製造、修理および/またはメンテナンスを行うことができるバケットを提供することである。
【0010】
本発明によれば、その目的は、請求項1に規定された事項によって達成される。本発明のさらなる実施形態は、従属請求項ならびに添付の説明および図面に示されている。
【0011】
本発明の目的は、上部、第1および第2のバケット側壁、および前部切刃から上部まで延びるバケットフロアを備え、前部切刃、第1および第2の側壁、および上部が、バケットの正面から見てバケット開口部を形成している土木作業機または資材運搬機用のバケットによって達成される。
【0012】
バケットフロアは、バケット開口部に向く内側と、バケット開口部から離れて逆を向く外側とを有している。バケットフロアは、第1のレール部と第2のレール部とを有し、各レール部は、バケットフロアに接続された少なくとも1つの着脱可能な摩耗部品から構成されている。前記バケットフロアは、前記バケットフロアの外側に谷部を有し、前記バケットフロアの内側に峰部を有する少なくとも1つの倒立キール部(inverted keel section)を含む。
【0013】
一見無関係な構造、すなわち、少なくとも1つの倒立キール部とレール部の組み合わせにより、意外にもバケットフロアの耐摩耗性が向上する。これにより、耐摩耗性を損なうことなく、バケットフロアの平均厚さや重量を低減することが可能となり、バケットの実積載重量と吊上げ能力の比率を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明により、バケットの使用中に生じるバケットフロアの凹みを回避することができる。これは、倒立キール部とレール部を設けることで達成され、レール部は、掘削時にバケットフロアにかかる外部からの荷重の大部分を受け止めるようになっている。
【0015】
さらに、明細書に開示された本発明により、バケットフロアの外側に設けられる追加の摩耗部品を省略することができる。これにより、バケットの重量を軽減することができ、また、部品点数の少ない、よりコスト効率の高いバケットを提供することができる。
【0016】
ここでいう「キール部」とは、床の片側に谷部を、反対側に峰部を有し、これらの部分が床の長手方向に延びている部分を意味する。通常、「キール部」とは船やボートの通常のキール部のように、床の内側に谷部を有し、床の外側に隆起部を有するものである。したがって、本明細書で使用する「倒立キール部」という用語は、床の外側に谷部を有し、床の内側に隆起部を有するキール部を意味する。
【0017】
必要に応じて(Optionally)、レール部の各1つは、前部切刃から頂部までの方向にバケットフロアの少なくとも一部に沿って延びる。
【0018】
必要に応じて、少なくとも1つの着脱可能な摩耗部品は、第1および第2の交換可能なバケットコーナエッジ(bucket corner edge)を形成するように、バケット側壁にさらに接続される。
【0019】
必要に応じて、少なくとも1つの着脱可能な摩耗部品は、少なくとも1つの機械的な締め付け手段によってバケットフロアおよび/またはバケット側壁に取り付けられる。
【0020】
必要に応じて、レール部の少なくとも1つは、その延長線上で、バケットフロアの幅w’方向に見て、実質的に均一な幅w’’を示す。
【0021】
必要に応じて、レール部の各1つは、複数の、好ましくは6~10個の、より好ましくは8個の、着脱可能な摩耗部品から構成されている。
【0022】
必要に応じて、少なくとも1対の隣接する着脱可能な摩耗部品の間に空間があり、好ましくは各対の隣接する着脱可能な摩耗部品の間に1つの空間がある。
【0023】
必要に応じて、少なくとも2つの着脱可能な摩耗部品は、均一で交換可能である。
【0024】
必要に応じて、少なくとも1つの倒立キール部は、バケットの幅方向に見て、第1レール部と第2レール部の間に設けられている。
【0025】
必要に応じて、少なくとも1つの倒立キール部は、バケットフロアの少なくとも一部に沿って、前部切刃から上部への方向に延びている。
【0026】
必要に応じて、少なくとも1つの倒立キール部は、1つの単一のシート材で構成されているか、または、少なくとも2つのシート材の間の少なくとも1つの溶接界面によって、互いに取り付けられている少なくとも2つのシート材で構成されている。
【0027】
必要に応じて、少なくとも1つの倒立キール部はバケットフロアと一体化して設けられ、少なくとも1つの倒立キール部は、好ましくは少なくとも1つの倒立キール部とバケットフロアとの間の少なくとも1つの溶接界面によって、バケットフロアに取り付けられる。あるいは、倒立キール部とバケットフロアが一枚の材料であってもよい。
【0028】
必要に応じて、バケットフロアは、少なくとも1つの倒立キール部とバケットフロアとの間の少なくとも1つの溶接界面の少なくとも一部を保護するための少なくとも1つの保護要素を備え、この少なくとも1つの保護要素は、前部切刃に近接してバケットフロアの内側に取り付けられている。
【0029】
必要に応じて、少なくとも1つの保護要素は、前部切刃の近傍で少なくとも1つの倒立キール部に隣接して高さh’を有する膨出部を有し、少なくとも1つの倒立キール部の峰部は、保護要素の膨出部に隣接して高さhを有し、かつ、h’≧hである。
【0030】
必要に応じて、少なくとも1つの保護要素は、前部切刃に近接してテーパ状の端部を有し、好ましくは、少なくとも1つの保護要素は、前部切刃に向かう方向に1つの頂点を有する実質的に三角形の形態を有する。
【0031】
必要に応じて、倒立キール部は、1つの単一ピースの薄鋼板、または複数のピースの積層薄鋼板部品など、薄鋼板で作られていてもよい。一枚の薄鋼板または付属の薄鋼板部品は、2つの対向する面を有し、面の一方が外側の谷部を形成し、面の他方が内側の峰部を形成する。
【0032】
さらに、少なくとも1つの倒立キール部の最大幅は、バケットフロアの幅の少なくとも30%、例えば少なくとも40%または50%を超えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るバケット1の正面図である。
【
図2】
図2a及び
図2bは、本発明の別の実施形態に係るバケットである。
【
図3】
図3は、本発明のさらに別の実施形態に係るバケットである。
【
図4】
図4a~dは、本発明の4つの実施形態による倒立キール部11の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の保護要素の実施形態を示している。
【
図6】
図6は、本発明の保護要素の別の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書に記載の実施形態によるバケットは、任意の土木作業機や資材運搬機、例えば、コンパクトショベル、ドラッグラインショベル、水陸両用ショベル、パワーショベル、スチームショベル、吸引ショベル、ウォーキングショベル、バケットホイールショベル、ブルドーザー、ローダー、鉱山機械、トラクター、スキッドステアローダーなどと一緒に使用するのに適している。土木作業機や資材運搬機は、地面に接する機械であってもよいし、露天掘りのピット壁など、他の表面に接するように配置されたバケットを有していてもよい。
【0035】
この機械は、例えば、林業、建築、造園、鉱山、河川の浚渫、除雪などで、溝や穴を掘ったり、基礎を作ったりするのに使われる。
【0036】
バケット1は、頂部2と、第1の5および第2の6バケット側壁と、前部切刃8から頂部2まで延びるバケットフロア7と、を備え、前部切刃8、第1の5および第2の6側壁、および頂部2は、バケット1の正面から見て、バケット開口部9を形成している。
図1は、本発明の一実施形態に係るバケット1の正面図である。
【0037】
好ましくは、バケットの床7と各側壁5,6は、90°の角度で接続されている(
図2)。しかし、バケットの床と側壁が接続されている領域には、角度を測ることができる角(vertex)がない。このようにバケットの内側に90°の角がないと、バケットの内側の角に材料や物が詰まるのを防ぐことができるので、バケットの出し入れが容易になる。
【0038】
バケットフロア7は、バケット開口部9に向かって面する内側と、バケット開口部9から離れて面する外側とを有している。好ましくは、バケットフロアは、バケットの前縁8から上の部分まで延びるときに、丸みを帯びた/湾曲した形状を有する(
図2)。
【0039】
バケットフロアの内側が湾曲しており、かつ連続していることで、バケットを出し入れする際にバケットの内面を流れる搬送材料(material)の特性が改善され、バケットの内側の角に搬送資材が挟まることが少なくなり、また、バケット内での搬送材料の「残留」が少なくなる。
【0040】
バケットフロア7の湾曲したおよび/または連続した外側は、バケットフロア7が受ける法線力が減少することにより摩擦が減少する。
【0041】
本明細書で使用される「法線力」という表現は、物体が接触する表面に垂直な接触力を意味する。
【0042】
バケットフロアは、第1のレール部3と第2のレール部4とからなり、レール部3,4のそれぞれは、バケットフロア7に接続された少なくとも1つの着脱可能な摩耗部品10を含んでいる。少なくとも1つの着脱可能な摩耗部品を有するレールセクションは、改善された耐摩耗性を与える。
【0043】
典型的には、少なくとも1つの摩耗部品10は、耐摩耗性および耐磨耗性の鋼、硬化鋼、または浸炭鋼(case-hardened stee)で構成されていてもよい。鋼は、少なくとも500のブリネル硬さ(Brinell hardness)、好ましくは525~575のブリネル硬さ、または25以上のブリネル硬さを有してもよい。バケットの一実施形態によれば、少なくとも1つの摩耗部品はHardox(R)摩耗板からなる。
【0044】
レール部3,4は、バケット1が静止しているときに、バケットフロア7の外側に設けられた支持手段として機能する(
図2,3)。バケット1の使用時には、レール部3,4は、バケットフロア7の外側の他の部分よりも大きな摩耗を受けることが想定されている。レール部の各着脱可能な摩耗部品10は、レール部の耐摩耗性を向上させ、これにより、バケット1の製造、修理および/またはメンテナンスを、より費用対効果の高い方法で行うことができる。
【0045】
さらに、着脱可能な摩耗部品10を備えたレール部3,4により、耐摩耗性を損なうことなく、バケットフロア7の平均厚さや重量を低減することができ、バケット1の実負荷荷重と吊り上げ能力の比率を向上させる上で有益である。
【0046】
必要に応じて、レール部3,4のそれぞれ1つは、バケットフロア7の少なくとも一部に沿って、前部切刃8から頂部2までの方向に延びている(
図2)。
【0047】
必要に応じて、少なくとも1つの着脱可能な摩耗部品10は、第1の13および第2の14の交換可能なバケットのコーナーエッジを形成するように、バケット側壁5,6にさらに接続される(
図2)。
【0048】
図2に示すように、一実施形態では、レール部3,4の各1つは、バケットフロア7の端部と側壁5,6の各1つの端部との間の隙間を閉じるように、または横断するように取り付けられている。バケットフロアは側壁に直接接続されていないため、各レール部がバケットに取り付けられて隙間を塞がないと、バケットを使用することができないようになっている。
【0049】
必要に応じて、少なくとも1つの着脱可能な摩耗部品10は、少なくとも1つの機械的締結手段12によって、バケットフロア7および/またはバケット側壁5,6に取り付けられる。少なくとも1つの機械的締結手段は、ボルトおよび/またはねじおよび/またはスタッドおよび/またはクイックロック機構および/またはクイックリリース機構であってもよい。
【0050】
必要に応じて、レール部3,4のうちの少なくとも1つは、バケットフロア7の幅(w’)方向に見て、前部切刃8から頂部2までの延長線上で、実質的に均一な幅(w’’)を示す(
図4)。典型的には、レール部の幅(w’’)は、60mm~200mmの範囲内である。さらに、少なくとも1つの倒立キール部の最大幅は、バケットフロアの幅の少なくとも30%、例えば少なくとも40%または50%を超えて延びている。
【0051】
必要に応じて、レール部3,4の各1つは、複数の、好ましくは6~10個の、より好ましくは8個の、着脱可能な摩耗部品10を備える。複数の摩耗部品は、バケットに取り付けられたときに隣接して隣接していてもよく、それによって、摩耗部品は、バケットに取り付けられたときに、隣接する摩耗部品の間に空間がなく、連続的な配置を形成してもよい。
【0052】
必要に応じて、
図2に示すような一実施形態では、隣接する着脱可能な摩耗部品10の少なくとも1対の間に空間17があり、好ましくは隣接する摩耗部品10の各対の間に1つの空間17がある。この空間は、バケットが使用されているときに摩耗部品の屈曲を可能にし、それによって摩耗部品によって非連続的な配置が形成される。これにより、バケットが使用されているときに、摩耗部品の割れや緩みを低減または排除することができる。最大で1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mmまたはそれ以上の長さの空間が、隣接する摩耗部品の間、または少なくとも2つの隣接する摩耗部品の間に残されてもよい。
【0053】
必要に応じて、バケット1の少なくとも2つの着脱可能な摩耗部品10は、均一で交換可能である。好ましくは、レール部3,4のそれぞれの少なくとも2つの摩耗部品は、均一で交換可能である。より好ましくは、レール部3,4のいずれか1つの少なくとも2つの摩耗部品は、均一かつ交換可能である。これにより、バケットや交換用の摩耗部品を製造する際のコスト削減をさらに促進することができる。
【0054】
バケットフロア7は、バケットフロアの外側に谷部11Tを有し、バケットフロアの内側に峰部11Rを有する少なくとも1つの逆キール部11をさらに備える。
【0055】
必要に応じて、少なくとも1つの倒立キール部11を有するバケットフロア7は、好ましくは薄鋼板を曲げおよび/または成形することによって、1つの同じ薄鋼板から作られる。この構成により、バケットフロアの強度が向上し、コスト効率の高い製造プロセスが可能になる。
【0056】
倒立キール部11の谷部11Tは、より少ない法線方向の力を受けてもよいので、谷部11Tと荷役物との間に発生する摩擦を低減することができる。摩擦の低減は、バケット1を用いた土木作業機または資材運搬機の作業速度や作業効率の向上につながる。
【0057】
バケット1が使用されているとき、最大の摩耗はバケットフロア7が地表に接触したときに発生し、その地表はおそらく堅い物からなる。掘削時には、前部刃先8が堅い物を切り裂きほぐしてバケットに掘削物を充填する。
【0058】
倒立キール部11の谷部11Tは、主にバケットフロア7のレール部3,4がより硬い地表に接触するように、より硬い地表面とバケットフロア7との間に空間を形成する。一方で、この空間には、より硬い地表面に比べて谷部11Tの摩耗が相対的に少なくなるような柔らかい材料が収容される。
【0059】
このような構成の結果、バケットフロア7の摩耗は、主にレール部3,4に与えられることになる。このように、耐摩耗性で着脱可能な摩耗部品を備えたレール部3,4が、バケットフロア7の他の部分よりも耐摩耗性が高くなるようにバケットフロア7を設計することができる一方で、バケットフロアの全体的な耐摩耗性は、少なくとも、全ての部分が堅い地表に接触している先行技術のバケットフロアに比べて損なわれない。これにより、耐摩耗性を損なうことなく、バケットフロア7の平均厚さや重量を低減することができる。
【0060】
必要に応じて、例えば
図1および
図2に示す一実施形態では 、前部切刃8はさらに、バケット1の正面から見たときに、前部切刃8の開口部9が頂部2に面する凹形状のプロファイルを形成するようにしてもよい。これにより、凹形状の前部切刃8が、谷部11Tのさらに下方に位置するエッジと被充填物との間に切断界面を設けることができるので、谷部11Tに対する摩耗をさらに低減することができる。これにより、バケットの使用時に、凹形状の前部切刃が、より硬い地表面とバケットフロア7との間にさらに大きな空間を提供してもよい。
【0061】
倒立キール部11の峰部11Rは、バケット1内の材料の流動特性を材料がレール部3,4に向かう方向に流れるように制御してもよく、それにより、積載重量からの圧力の大部分を耐摩耗性の摩耗部品を備えるレール部3,4に分散させることができる。ここでいう「圧力」とは、物体の表面に垂直にかかる力を、その力が分散される単位面積あたりで表したものである。
【0062】
このように、無関係な構造、すなわち、少なくとも1つの倒立キール部11とレール部3,4との組み合わせは、意外にも、バケットフロア7の耐摩耗性の向上をもたらす。これにより、耐摩耗性を損なうことなく、バケットフロア7の平均厚さや重量をさらに低減することが可能となり、バケット1の実負荷荷重と吊上げ能力の比を向上させるのである。
【0063】
必要に応じて、少なくとも1つの倒立キール部11は、バケットフロア7の幅w’方向に見て、第1の3レール部と第2の4レール部との間に設けられる(
図1~
図4)。
【0064】
図4は、本発明の4つの実施形態による倒立キール部11の断面図であり、wは倒立キール部11の幅であり、w’はバケットフロア7の幅であり、w’’はレール部3、4の幅であり、hは峰部11Rの高さである。
【0065】
図4aに示す実施形態では、倒立キール部11は、実質的に三角形に形成された断面を有している。本実施形態では、図示のようにレール部3,4を構成することができるが、そのようなレール部を有しないことも可能である。
【0066】
図4bに示す実施形態では、倒立キール部11は、断面図から見て湾曲した形状を有している。湾曲した形状を有する倒立キール部11は、バケットフロア7が受ける法線方向の力を軽減し、バケットフロア7と荷役物との間の摩擦を緩和する。なお、本実施形態では、図示のようにレール部3,4を構成してもよいが、このようなレール部を設けないことも可能である。
【0067】
倒立キール部11の幅wは、倒立キール部の長手方向の少なくとも一部に沿って同じであってもよい(
図3)。あるいは、倒立キール部11の幅wは、倒立キール部の長手方向の少なくとも一部に沿って変化していてもよい。
【0068】
必要に応じて、
図4cに示す実施形態のように、倒立キール部11は、断面図から見てU字型であってもよい。例えば、倒立キール部11のU字型断面は、第1および第2の側壁112、113と、第1および第2の側壁を相互に連結する頂壁114とによって形成されてもよい。U字型断面は、例えば、薄鋼板要素を曲げることによって、および/または、1つ以上の別個の薄鋼板要素を接続することによって形成されてもよい。別個の薄鋼板要素は、頂部114とそれぞれの第1および第2の側壁112,113との間の界面で溶接により接続されてもよい。本実施形態は、図示のようにレール部3,4を含んでいてもよいが、そのようなレール部がないこともあり得る。本明細書で例示されるようにU字型の断面を提供することは、堅牢な倒立キール部11を提供することができ、また、製造を容易にすることができる。
【0069】
必要に応じて、
図4dに示す実施形態に例示されるように、倒立キール部11は、使用中の衝撃から倒立キール要素を保護するための少なくとも1つの保護部材111をさらに含んでいてもよく、保護部材は、谷部11Tからバケットの内側から離れて、すなわち、バケットが地表に置かれたときに下方向に延びている。
【0070】
保護部材111は、図示のように、谷部11Tで倒立キール部11に取り付けられていてもよく、さらに、倒立キール部11の長手方向の少なくとも一部を覆って延びてもよい。例示的な実施形態では、保護部材111は、前部切刃8から頂部2までの長手方向における倒立キール部11の長さの少なくとも50%にわたって延びている。
【0071】
保護部材111は、薄鋼板要素であってもよいし、複数の別個の薄鋼板要素を連結したものであってもよい。保護部材111の使用により、倒立キール部11は、大きな石などの外部要素と直接接触することから保護される。それにより、保護部材111は、使用中に倒立キール部11を損傷するリスクを低減することができる。なお、本実施形態では、図示のようにレール部3,4を構成してもよいが、そのようなレール部を有しないこともある。
【0072】
図1~3に示す実施形態では、倒立キール部11の少なくとも一部が、前部切刃8に向かう方向に先細りする幅wを有し、前部切刃8の近傍に先細りの前端部を形成している。これにより、バケットの使用時に、バケット内への資材の流入特性や、バケット外への材料の流出特性を向上させることができる。
【0073】
峰部11Rの高さhは、倒立キール部(
図3)の長手方向の少なくとも一部に沿って同じであってもよい。あるいは、峰部11Rの高さhは、倒立キール部11の長手方向の少なくとも一部に沿って変化していてもよい。
【0074】
これにより、バケットの使用時に、バケット内への搬送資材の流れ特性またはバケット外への搬送材料の流れ特性を改善することができる。好ましくは、前部切刃8の近傍における峰部11Rの高さhは0mm以上であり、これにより、前部切刃8の摩耗を低減するために、前部切刃8の近傍において、接地面と対応する谷部11Tとの間に空間が形成されてもよい。
【0075】
必要に応じて、倒立キール部11は、バケットフロア7の少なくとも一部に沿って、前部切刃8から頂部2までの方向に延びる。
【0076】
必要に応じて、倒立キール部11は、単一のシート材料で構成される。これにより、倒立キール部11の強度が向上し、その結果、バケット1の使用時にクラックが発生するリスクが低減される。
【0077】
必要に応じて、倒立キール部11は、少なくとも2つのシート材から構成されており、これらのシート材は、好ましくは、少なくとも2つのシート材の間の少なくとも1つの溶接界面によって互いに取り付けられる。これは、倒立キール部の特定の形状を形成するのに有益であり、また、バケットの製造、修理および/またはメンテナンスのコストを削減することができる。
【0078】
必要に応じて、倒立キール部11は、バケットフロア7の一体部分として提供され、少なくとも1つの倒立キール部11は、好ましくは、少なくとも1つの倒立キール部11とバケットフロア7との間の少なくとも1つの溶接界面によって、バケットフロア7に取り付けられる。
【0079】
必要に応じて、バケットフロア7は、倒立キール部11とバケットフロア7との間の溶接界面の一部を保護するための保護要素15を備えており、この保護要素15は、前部切刃8に近接してバケットフロア7の内側に取り付けられている。
【0080】
保護要素15は、バケットの使用時にバケット内への材料の流れ方向またはバケット外への材料の流れ方向において、バケットフロア7および倒立キール部11の耐摩耗性を高めるものである。
【0081】
保護要素15は、少なくとも1つの倒立キール部11とバケットフロア7との間の少なくとも1つの溶接界面によって倒立キール部がバケットフロアに取り付けられているときに、倒立キール部11とバケットフロア7との間の溶接界面を保護する役割を果たす(
図2b)。また、保護要素は、溶接界面の周囲の熱影響部(HAZ)を保護してもよい。
【0082】
典型的には、保護要素15は、耐摩耗性の鋼、硬化鋼、または浸炭鋼で構成されていてもよい。鋼は、少なくとも500のブリネル硬さ、好ましくは525~575または25以上のブリネル硬さを有していてもよい。バケットの一実施形態によれば、摩耗部品はHardox(R)摩耗板からなる。
【0083】
必要に応じて、
図2bに示すような一実施形態では、保護要素15は、前部切刃8に近接して倒立キール部11に隣接する高さh’を有する膨出部16を有し、倒立キール部11の峰部11Rは、保護要素15の膨出部16に隣接して高さh(
図4a)を有し、ここでh’≧hであることを特徴とする。
【0084】
必要に応じて、保護要素15は、前部切刃8に近接してテーパ状の端部を有する。テーパ状の端部は、バケットが使用されているときに、バケットの内部または外部への材料の流れ特性を改善することができる。
【0085】
必要に応じて、
図2bに示すような一実施形態では、保護要素15は、前部切刃8に向かう方向に1つの頂点を有する実質的に三角形の形態を有する。
【0086】
実質的に三角形に形成された保護要素は、倒立キール部とバケットフロアとの間の溶接界面、および/または、溶接界面の周囲の熱影響部(HAZ)を保護する。さらに、実質的に三角形に形成されていることで、バケットの使用時に、バケット内への材料の流れ特性や、バケット外への材料の流れ特性を改善することができる。
【0087】
図5に示す一実施形態では、保護要素15は、保護要素15とバケットフロア7との間の溶接界面によってバケットフロア7に取り付けられる。
【0088】
図6に示す一実施形態では、保護要素15は、機械的締結手段22によってバケットフロア7に着脱可能に取り付けられる。機械的締結手段22は、ボルトおよび/またはねじおよび/またはスタッドおよび/またはクイックロック機構および/またはクイックリリース機構であってもよい。これにより、バケット1および交換用保護要素の製造コストを低減することができる。
【0089】
必要に応じて、保護要素15は、倒立キール部11に着脱可能に取り付けられる(
図5および
図6)。したがって、保護要素15は、倒立キール部11とバケットフロア7とを接続する追加の締結手段を提供してもよい。
【0090】
必要に応じて、保護要素15は、前部切刃8の近傍から、倒立キール部11とバケットフロア7との間の少なくとも1つの溶接界面の少なくとも一部を覆うように延びている(
図5および
図6)。
【0091】
必要に応じて、保護要素15は、1つの単一の材料で構成されている。これにより、保護要素15の強度が向上し、その結果、バケット1の使用時にクラックが発生するリスクが低減される。