(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】吸収体及び該吸収体を備えた吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/53 20060101AFI20230427BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/53 100
A61F13/534
(21)【出願番号】P 2022004317
(22)【出願日】2022-01-14
(62)【分割の表示】P 2017136027の分割
【原出願日】2017-07-12
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-70498(JP,A)
【文献】特開2001-96654(JP,A)
【文献】特開2016-116714(JP,A)
【文献】特開2010-5270(JP,A)
【文献】特開2004-285549(JP,A)
【文献】特開2012-55744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、トップシートに対向して配置された液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、高吸収性シートと、該高吸収性シートの全体を包む親水性シートと、を有し、フラッフパルプを含有しない吸収体であり、
前記高吸収性シートは、身体側表面が起毛した基体不織布と、該基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を有し、
前記吸収体の、ハンディ圧縮試験機KES-G5による、圧縮エネルギーWCが
2.4gf・cm/cm
2以上6.6gf・cm/cm
2以下であり、圧縮回復性RCが35%以上65%以下であり、
前記基体不織布がエアスルー不織布であり、前記基体不織布の坪量が、20g/m
2以上200g/m
2以下であり、厚さは0.3mm以上11.0mm以下であり、基体不織布を構成する繊維の太さが、1.6dtex以上14dtex以下であり、
前記高吸収性ポリマーの坪量が200g/m
2以上1200g/m
2以下であり、
前記親水性シートは、坪量が7g/m
2以上45g/m
2以下の親水性不織布又はティシュであり、
前記高吸収性ポリマーが、ホットメルト接着剤により、前記基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持されており、該ホットメルト接着剤の含有量が10g/m
2以下である、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッフパルプを含有せず、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。これらの吸収性物品には、成人用又は幼児用であるかどうかを問わず、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿取りパッド、軽失禁パッドなど、用途に応じて様々な種類が存在する。
【0003】
これら吸収性物品を構成する吸収体について、フラッフパルプと高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、SAPとも称される)を併用することが一般的であったが、着用時の着用感、外観及び肌触り等の向上、尿の逆戻り低減を目的として、基体となる不織布と高吸収性ポリマーからなる、いわゆる高吸収性シート(SAPシートとも称される)を吸収体として用いることもあり、高吸収性シートについて様々な検討がなされている。
【0004】
これまで検討されてきた高吸収性シートとして、例えば、特許文献1には、接着剤が塗布された第一シート及び第二シートと、第一シートと第二シートの間に配置される高吸収性ポリマーと、を備え、少なくとも第二シート上の複数の領域に対応する部位における接着剤の塗布が間欠的であるととともに、高吸収性ポリマーの幅方向の両側にて第一シートと対抗する部位に接着剤が長手方向に連続的に塗布されており、高吸収性ポリマーが長手方向に沿うストライプ状に配置されていることを特徴とする高吸収性シートが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、二つの高吸収性シートが長手方向に沿って折り曲げられ、それぞれの折り目が互いに対向するように二つの高吸収性シートが配された吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-158676号公報
【文献】特開2013-42882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1やその他多くの高吸収性シートは、不織布と高吸収性ポリマーとをホットメルト接着剤を用いて固定するため、肌触りが硬くなることにより着用感が低下し、また、フィット性が得られないため違和感を生ずるという問題があった。また、フラッフパルプと高吸収性ポリマーで構成される従来の吸収体に比べると、高吸収性シートの多くは、不織布に高吸収性ポリマーが接着手段により固定されることにより、高吸収性ポリマーが高密度に存在するため、吸収時間が長くかかり、尿の拡散性に劣るため、吸収性という観点においても十分に満足できるものではなかった。
【0008】
さらに、特許文献2に記載の高吸収性シートでは、上記のような構造を有することにより股間へのフィット性の改善はなされているものの、高吸収性シート特有の肌触りが硬いという点は改善されておらず、着用感について十分に満足できるものではなかった。また、特許文献1に記載の高吸収性シートと同様に吸収性について十分に満足できるものではなかった。
【0009】
以上のように、特許文献1及び特許文献2に記載の吸収体及び該吸収体を用いた吸収性物品は、吸収性及び着用感の双方を十分に満たしたものではなかった。したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、フラップパルプを含有せず、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、基体となる不織布の態様及び高吸収性ポリマーの担持方法を工夫することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0011】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、トップシートに対向して配置された液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、前記吸収体は、高吸収性シートと、該高吸収性シートの全体を包む親水性シートと、を有し、フラッフパルプを含有しない吸収体であり、前記高吸収性シートは、身体側表面が起毛した基体不織布と、該基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を有し、前記吸収体の、ハンディ圧縮試験機KES-G5による、圧縮エネルギーWCが2.0gf・cm/cm2以上6.6gf・cm/cm2以下であり、圧縮回復性RCが35%以上65%以下であり、前記基体不織布がエアスルー不織布であり、前記基体不織布の坪量が、20g/m2以上200g/m2以下であり、厚さは0.3mm以上11.0mm以下であり、基体不織布を構成する繊維の太さが、1.6dtex以上14dtex以下であり、前記高吸収性ポリマーの坪量が200g/m2以上1200g/m2以下であり、前記親水性シートは、坪量が7g/m2以上45g/m2以下の親水性不織布又はティシュであり、前記高吸収性ポリマーが、ホットメルト接着剤により、前記基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持されており、該ホットメルト接着剤の含有量が10g/m2以下である、吸収性物品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸収体に用いる高吸収性シートには、身体側表面を起毛した基体不織布が用いられている。このため、不織布本来の嵩高さに加えて、適度な厚みとやわらかさが付与されることにより、適度なクッション性が発生し、着用時のフィット感を向上することができる。また、基体不織布の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマーが分散して固着担持されることにより、高吸収性ポリマー周辺の基体不織布に尿が適度に拡散又は保持され、吸収性能も向上することができる。よって、本発明によれば、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の吸収体に用いる基体不織布の斜視図である。
【
図2】本発明の吸収体に用いる高吸収性シートの幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<吸収体>
本発明の実施形態に係る吸収体1は、成人用又は幼児用であるかどうかを問わず、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿取りパッド、軽失禁パッドなど特に限定されることなく用途に応じて様々な吸収性物品に用いることができる。なお、本明細書の説明において、吸収体1の長手方向とは、着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収体1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、Xで示す方向である。さらに、本明細書において、吸収体1の身体側表面とは、着用時に着用者の肌に当接する表面を指し、衣類側表面とは、着用時に着用者の衣類に接触する表面を指す。また、吸収体1の厚さ方向を図中Zで示している。
【0015】
本発明の吸収体1は、
図3に示すように、高吸収性シート10と、高吸収性シート10の全体を包む親水性シート20と、を有する。なお、本発明の吸収体1は、フラッフパルプを含まないため、尿の逆戻りが抑制され、さらさらとした肌触りを維持しやすい吸収体を得ることができる。
【0016】
[高吸収性シート]
本発明の吸収体1に用いる高吸収性シート10は、
図2に示すように、身体側表面が起毛した基体不織布11と、基体不織布11の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマー12と、を有する。基体不織布11の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマー12が分散して固着担持されることにより、高吸収性ポリマー12周辺の基体不織布11に尿が適度に拡散又は保持されることにより吸収性能が向上し、フラッフパルプを有さなくても十分な吸収性能を確保することができる。
【0017】
(基体不織布)
図1に示すように、基体不織布11の身体側表面は起毛した状態である。そのため、不織布本来の嵩高さに加えて、高吸収性シート10に適度な厚みとやわらかさが付与されることにより、適度なクッション性が発生し、着用時のフィット感を向上することができる。また、基体不織布11を上記のように起毛させることにより、基体不織布11の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させることができる。基体不織布11の身体側表面を起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチが挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃により毛羽立たせる方法を用いることが好ましい。
【0018】
基体不織布11としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布を挙げることができる。これらの不織布のうち、嵩高さの得やすいエアスルー不織布を用いることが好ましい。
【0019】
基体不織布11の厚さは、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以上9.0mm以下であることがより好ましく、4.0mm以上9.0mm以下であることが更に好ましい。また、基体不織布11の坪量は、20g/m2以上200g/m2以下であることが好ましく、30g/m2以上160g/m2以下であることがより好ましい。
【0020】
さらに、基体不織布11を構成する繊維の太さは、1.6dtex以上14dtex以下であることが好ましく、1.8dtex以上9.0dtex以下であることがより好ましく、2.0dtex以上6.0dtex以下であることが更に好ましい。このように上記の範囲で基体不織布11を構成する繊維の太さを調整することにより、基体不織布11の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持しやすくすることができる。
【0021】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー12としては、尿を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。また、高吸収性ポリマー12の坪量は、各種の吸収性物品に要求される吸収性能を確保するために、200g/m2以上1200g/m2以下とすることが好ましい。また、吸収性能、吸収後の肌触り及び着用者の動きやすさをより向上させる観点から、高吸収性ポリマー12の坪量は、300g/m2以上900g/m2以下とすることがより好ましい。
【0022】
また、粉体としての流動性が悪い微粉末を避けることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、高吸収性シート10が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減する観点から、高吸収性ポリマー12の中位粒子径は、50μm以上600μm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0023】
高吸収性ポリマー12は、ホットメルト接着剤により、基体不織布11の起毛した部分の繊維間に固着担持されていることが好ましく、基体不織布11の坪量が比較的低い場合に、高吸収性ポリマー12の固着担持を補強するために、ホットメルト接着剤は特に有効に機能する。なお、高吸収性ポリマー12の吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないように、ホットメルト接着剤の含有量は10g/m2以下であることが好ましい。ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下の、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体やスチレン-イソプレン-スチレン系共重合体など合成ゴム系、又は、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系のホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法など公知の方法が利用できる。
【0024】
(親水性シート)
本発明の吸収体1は、
図3に示すように、高吸収性シート10の全体を包む親水性シート20を有する。高吸収性シート10の全体を親水性シート20で包むことにより、高吸収性ポリマー12が吸収体1の外へ漏れることを防止することができ、着用時の肌触りも向上させることができる。親水性シート20としては、ティシュ、吸収紙、スパンボンド不織布やエアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができることができ、入手性やコストの観点から親水性不織布又はティシュを用いることが好ましく、親水性シート20の坪量は、7g/m
2以上45g/m
2以下とすることが好ましく、8g/m
2以上15/m
2以下とすることがより好ましい。なお、高吸収性シート10の全体を親水性シート20で包む際には、高吸収性シート10と親水性シート20とを、ホットメルト接着剤や熱エンボス加工により固定することが好ましい。
【0025】
(圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RC)
本発明の吸収体1の、ハンディ圧縮試験機KES-G5(カトーテック株式会社製)による、圧縮エネルギーWCが2.0gf・cm/cm2以上8.0gf・cm/cm2以下であり、2.4gf・cm/cm2以上6.6gf・cm/cm2以下であることが好ましい。吸収体1の圧縮エネルギーWCを上記の範囲に調整することにより、良好なクッション性を得ることができる。なお、圧縮エネルギーWCは、数値が高いほど圧縮され易いことを示す。
【0026】
また、本発明の吸収体1の、ハンディ圧縮試験機KES-G5による、圧縮回復性RCが35%以上65%以下であり、40%以上58%以下であることが好ましい。吸収体1の圧縮回復性RCを上記の範囲に調整することにより、適度な弾力性を持ち着用感を向上させることができる。尚、圧縮回復性RC(%)は、圧縮に対する弾性を示すもので、数値が高いほど圧縮に対する反発性を有することを意味する。
【0027】
吸収体1の、ハンディ圧縮試験機KES-G5による、圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCの測定方法は、以下のとおりである。まず、試験台に試料(10cm×10cm)を置き、面積2cm2の円形平面をもつ銅製の加圧子を試料上方から、速度0.01cm/秒、最大圧縮応力20gf/cm2の条件で試料に押し込み圧縮する。測定データをもとに数値処理により圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCを算出した。
【0028】
<吸収性物品>
本発明の別の実施形態は、本発明の吸収体1を備える吸収性物品である。吸収性物品としては、成人用又は幼児用であるかどうかを問わず、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿取りパッド、軽失禁パッドなど用途に応じて様々なタイプが挙げられる。吸収性物品は、身体側に配された液透過性のトップシートと、トップシートに対向して配置された液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体1と、を備える。これにより、吸収体1は、トップシートとバックシートの間に挟まれた構造となり、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体1に吸収される。その他、吸収性物品の用途やタイプに応じて、立体ギャザー、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0029】
(トップシート)
トップシートは、吸収体1に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収体1を挟んで、バックシートに対向して配置される。トップシートは、肌と当接するシートとなることから、トップシートには、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の加工法によって得られた親水性不織布又はこれらを積合した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等を用いることができる。また、トップシートには、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシートには、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0030】
強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシートの坪量は、15g/m2以上200g/m2以下であることが好ましい。トップシートの形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体1へと誘導するために必要とされる、吸収体1を覆う形状であればよい。
【0031】
(バックシート)
バックシートは、吸収体1が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0032】
強度及び加工性の点から、バックシートの坪量は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシートには、通気性を持たせることが好ましい。バックシートに通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシートに穿孔のためにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0033】
<吸収体の製造方法>
吸収体1の製造方法としては、特に制限はないが、以下の方法が一例として挙げられる。基体不織布11の身体側表面を回転ノコ刃又はニードルパンチを用いて、起毛させる。その後、高吸収性ポリマー12をホットメルト接着剤等により、基体不織布11の起毛した部分の繊維間に固着担持させる。その後、高吸収性シート10の全体を親水性シート20で包む。その際には、高吸収性シート10と親水性シート20とを、ホットメルト接着剤で固定させる。
【0034】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品の製造方法としては、上記のようにして得られた吸収体1をトップシートとバックシートとの間に挟持し、トップシートとバックシートとを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。そして、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折り畳めばよい。また、立体ギャザー、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0035】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0036】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
<吸収体の作製>
まず、基体不織布(坪量150g/m2)のエアスルー不織布を用意し、基体不織布の身体側表面をノコ刃で物理的に起毛させて、高吸収性ポリマー(坪量380g/m2)を分散させ、高吸収性ポリマーを、ホットメルト接着剤により、基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持させ、高吸収性シートを得る。次に、親水性シートとしてスパンボンド不織布(坪量10g/m2)を用意し、高吸収性シートの全体を、ホットメルト接着剤を塗布した親水性シートで包み、固定させる。このようにして実施例1に記載の吸収体を得た。
また、比較例1では、エアスルー不織布(坪量20g/m2)/高吸収性ポリマー(坪量280g/m2)/エアスルー不織布(坪量20g/m2)/高吸収性ポリマー(坪量100g/m2)/スパンレース不織布(坪量20g/m2)を積層したシートを吸収体として用いた。なお、比較例1で用いた不織布については、実施例1で用いた基体不織布のように起毛させなかった。また、比較例2では、高吸収性ポリマー(坪量380g/m2)とフラッフパルプ(坪量400g/m2)を混合したものをティシュ(16g/m2)で覆ったものを吸収体として用いた。また、比較例3では、実施例1で用いた基体不織布(坪量150g/m2)のみを吸収体として用いた。実施例1及び比較例1から比較例3の吸収体の大きさ及び構成を表1に示した。
【0038】
[測定項目]
上記のようにして得られた吸収体を用いて、吸収速度、逆戻り量、圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCを測定し、その結果を表1に示した。圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCは、上記の方法により測定した。
【0039】
(吸収速度)
実施例1及び各比較例の吸収体に、46g/cm2の圧力をかけた状態で、内径30mmの筒より、40mlの0.9質量%の生理食塩水(37℃)を注水し、生理食塩水が吸収体表面へ吸収されるまでの時間(秒)を計測する。数値が小さいほど、吸収性に優れることを意味する。
【0040】
(逆戻り量)
実施例1及び各比較例の吸収体に、生理食塩水200mlを注水し、注水してから10分後に35gf/cm2の荷重でろ紙を吸収体表面に圧着させ、1分間でろ紙に逆戻りした水分量を測定する。逆戻り量が少ないほど、吸収体がドライな状態であることを示す。
【0041】
(官能評価)
車椅子を日常的に使用する紙おむつ着用者8人の各パネラーの協力の下、実施例1及び比較例1及び比較例2の各吸収体を用いたテープ止めタイプの紙おむつを着用した場合の、着用感(やわらかさ、フィット感)と吸収性(紙おむつ外への漏れの有無、さらさら感)について、「良い」又は「悪い」の2択で官能評価を行った。着用者は8時間使用し、日常動作における評価を行い、その結果を表1に示した。
〇:「良い」を選んだ着用者が6人以上8人以下のとき
△:「良い」を選んだ着用者が3人以上5人以下のとき
×:「良い」を選んだ着用者が1人若しくは2人のとき、又は「良い」を選んだ着用者が1人もいないとき
【0042】
【0043】
以上より、本発明によれば、フラッフパルプを含有しなくても、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 吸収体
10 高吸収性シート
11 基体不織布
12 高吸収性ポリマー
20 親水性シート