(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】銀電気めっき組成物、及び低い摩擦係数を有する銀を電気めっきする方法
(51)【国際特許分類】
C25D 3/46 20060101AFI20230427BHJP
C25D 3/64 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C25D3/46
C25D3/64
(21)【出願番号】P 2022042456
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2022-03-17
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨンミン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル・エー.・ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・リップシュッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー・ワイ.シー.・チェン
(72)【発明者】
【氏名】クリステン・グリフィン
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0032479(US,A1)
【文献】特開2017-222927(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107345307(CN,A)
【文献】特開平08-027589(JP,A)
【文献】特開平09-143786(JP,A)
【文献】特開2015-158012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/46
C25D 3/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオンの供給源と、次式:
HO(CH
2)
2-S-(CH
2)
2OH (I)
によって表される硫化物化合物と、潤滑剤を使わずに1以下の摩擦係数を含む銀堆積物を提供するために銀との共堆積が可能なスルホン化アニオンポリマー、その塩、又はその混合物と
を含む銀電気めっき組成物であって、
前記銀電気めっき組成物のpHが、7未満
であり、
前記銀堆積物を提供するために前記銀との共堆積が可能な前記スルホン化アニオンポリマーが、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、ポリ-アクリル-co-ビニルスルホン酸、ポリ-アクリル-co-ビニルスルホン酸の塩、及びその混合物からなる群から選択される、銀電気めっき組成物。
【請求項2】
前記銀堆積物を提供するために前記銀との共堆積が可能な前記スルホン化アニオンポリマーが
、ポリ-アクリル-co-ビニルスルホン酸、その塩及びその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の銀電気めっき組成物。
【請求項3】
前記銀堆積物を提供するために前記銀との共堆積が可能な前記スルホン化アニオンポリマーが、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩である、請求項1に記載の銀電気めっき組成物。
【請求項4】
さらに酸を含む、請求項1に記載の銀電気めっき組成物。
【請求項5】
前記酸がアルカンスルホン酸である、請求項4に記載の銀電気めっき組成物。
【請求項6】
さらに細粒化剤を含む、請求項1に記載の銀電気めっき組成物。
【請求項7】
前記細粒化剤がチオール化合物である、請求項6に記載の銀電気めっき組成物。
【請求項8】
さらに光沢剤を含む、請求項1に記載の銀電気めっき組成物。
【請求項9】
シアン化物を含まない、請求項1に記載の銀電気めっき組成物。
【請求項10】
グラファイト炭素、他の炭素同素体又はその混合物を含む炭素の微粒子状形態を含まない、請求項1に記載の銀電気めっき組成物。
【請求項11】
基材上に銀金属を電気めっきする方法であって、
a)基材を提供することと、
b)前記基材を請求項1に記載の銀電気めっき組成物と接触させることと、
c)前記銀電気めっき組成物及び基材に電流を印加して、前記基材上に銀堆積物を電気めっきすることと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀電気めっき組成物、及び低い摩擦係数を有する銀を電気めっきする方法に関する。特に、本発明は、好ましくはシアン化物を含まない銀電気めっき組成物、並びに低い摩擦係数及び改善された耐摩耗性を有する銀を電気めっきする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀フィルムは、低い硬度のための不十分な摩耗性能、側方変位に対する不十分な耐性、及び冷間溶接(2つの銀接点が使用条件で結合し、除去を妨げる現象)の有意な程度に非常に影響されやすい。繰り返される嵌合及び非嵌合サイクルが必要であるコネクタに関して、不十分な摩耗性能は有害である。さらにまた、相互接続がより高密度で、より微細なピッチになるため、電子部品を挿入及び嵌合するために必要とされる力は、銀の本来の高い摩擦係数(COF約1.5)と比例する。特にピンがより小さくなり、高密度間隔になると、ピン破損が生じるおそれがある。これらの課題にもかかわらず、銀は、非常に魅力的なコネクタ仕上げとなる可能性を有する。銀は、本来、純粋な金属の中でも最も低い接触抵抗値を有するものであり、金(主導産業代替品)よりも有意に安い。したがって、銀を有効に利用するために、低いCOFを有する、耐摩耗性及び耐冷間圧接性の銀仕上げは高度に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、安定であり、且つ低い摩擦係数及び改善された耐摩耗性を有する銀を堆積させる銀電気めっき組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、銀イオンの供給源と、次式:
HO(CH2)2-S-(CH2)2OH (I)
を有する硫化物化合物と、潤滑剤を使わずに1以下の摩擦係数を含む銀堆積物を提供するために銀との共堆積が可能なスルホン化アニオンポリマー、その塩、又はその混合物と、7未満のpHを含む、銀電気めっき組成物に関する。
【0006】
また本発明は、
a)基材を提供することと;
b)基材を、銀イオンの供給源と、次式:
HO(CH2)2-S-(CH2)2OH (I)
を有する硫化物化合物と、潤滑剤を使わずに1以下の摩擦係数を含む銀堆積物を提供するために銀との共堆積が可能なスルホン化アニオンポリマー、その塩、又はその混合物と、7未満のpHを含む、銀電気めっき組成物と接触させることと;
c)基材上に銀堆積物を電気めっきするために、銀電気めっき組成物及び基材に電流を適用することと
を含む、基材上で銀を電気めっきする方法にも関する。
【0007】
さらに本発明は、基材の表面に隣接する、金属基準によって少なくとも99%の銀を含み、且つ潤滑剤を使わずに1以下の摩擦係数を有する銀層を含む物品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
文脈上明確に示されない限り、本明細書を通して使用される略語は、以下の意味を有する:℃=摂氏度;g=グラム;mg=ミリグラム;L=リットル;mL=ミリリットル;mm=ミリメートル;cm=センチメートル;μm=ミクロン;DI=脱イオン;A=アンペア;ASD=アンペア/dm2=めっき速度;DC=直流;N=ニュートン;COF=摩擦係数;rpm=1分あたりの回転;s=秒;TDE=2,2’-チオジエタノール;NSFC=ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物;及びMn=数平均分子量。
【0009】
「隣接する」という用語は、2つの金属層が共通の界面を有するように直接接触することを意味する。「N」という略語は、力のSI単位であるニュートンを意味し、1キログラムの質量に1メートル毎秒毎秒の加速度を与える力に等しく、100,000ダインに等しい。「摩擦係数」という用語は、2つの物体間の摩擦力と、この2つの物体間の通常の力との関係を示す値であり;COF=Ffriction/Fverticalによって数学的に表される。ここで、Ffrictionは、摩擦力であり、COFは、摩擦係数であり、Fverticalは、鉛直力又は法線力である。鉛直力又は法線力は、2つの物品間の摩擦力を測定しながら、2つの物品間の相対運動の方向に垂直な2つの物品間に加えられる力である。「金属基準」という用語は、製品の0.1%以下が痕跡金属であり、残りが記載された製品であることを意味する。「潤滑剤」という用語は、COFを低下させるために表面に適用される追加的な化合物を指す(一般に使用される潤滑剤の例はオクタデカンチオールである)。「トライボロジー」という用語は、相対運動において相互作用する表面の科学及び工学を意味し、潤滑、摩擦、及び摩耗の原理の研究及び適用を含む。「耐摩耗性」という用語は、機械的作用による表面からの材料の損失に対する耐性を意味する。「最小摩耗」という用語は、250μmを超える長さに関して、摩耗トラックの幅の10%未満の摩耗トレンチの形成(材料の損失)を指す。「摩耗トレンチ」という用語は、トライボメトリーが直接実行された接触領域を除外して、高耐久性銀堆積物の局所的平均厚さの1/3を超えるプロファイル深さを有する銀層のくぼみである。「局所的平均厚さ」という用語は、摩耗トレンチの端部の1000μm半径範囲内の銀層の厚さを意味する。「冷間溶接」という用語は、溶接される2つの部分の界面における融解又は加熱なしに接合が起き、接合部に溶融液体又は溶融相が存在しない固相溶接プロセスを意味する。「水性」という用語は、水、又は水系を意味する。「組成物」及び「浴」という用語は、本明細書全体を通じて互換的に使用される。「堆積」及び「層」という用語は、本明細書全体を通じて互換的に使用される。「電気めっき」、「めっき」及び「堆積」という用語は、本明細書全体を通じて互換的に使用される。「マット」という用語は、光沢がない又は艶がないことを意味する。「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書全体を通じて単数及び複数の両方を指すことができる。特別の定めのない限り、全てのパーセント(%)値及び範囲は重量パーセントを指す。全ての数値範囲は、包含的であり、且ついかなる順序でも組み合わされ得るが、ただし、そのような数値範囲を合計したものが100%となるように制約されることが論理的である場合を例外とする。
【0010】
本発明は、銀イオンの供給源と、次式:
HO(CH2)2-S-(CH2)2OH (I)
を有する硫化物化合物と、潤滑剤を使わずに1以下の摩擦係数を含む銀堆積物を提供するために銀との共堆積が可能なスルホン化アニオンポリマー、その塩、又はその混合物と、7未満のpHを含む、銀電気めっき組成物に関する。1以下の摩擦係数を含む銀堆積物を提供するために銀との共堆積が可能であるスルホン化アニオンポリマーとしては、限定されないが、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びポリ-アクリル-co-ビニルスルホン酸が含まれる。塩としては、限定されないが、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びポリアクリル-co-ビニルスルホン酸のナトリウム塩が含まれる。
【0011】
好ましくは、本発明の銀電気めっき組成物は、潤滑剤を使わずに1以下の摩擦係数(COF)で、基材上に高耐久性の銀堆積物の電気めっきを可能にするために、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びポリ-アクリル-co-ビニルスルホン酸及びその塩の1つ以上と組み合わせて、HO(CH2)2-S-(CH2)2OH(I)又はチオジエタノールを含む。より好ましくは、本発明の銀電気めっき組成物は、チオジエタノール及びナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びその塩の組合せを含む。好ましくは、銀電気めっき組成物は、シアン化物を含まない。
【0012】
硫化物は、好ましくは10~300g/L、より好ましくは20~275g/L、さらにより好ましくは35~200g/Lの量で、銀電気めっき組成物中に含まれる。
【0013】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びポリ-アクリル-co-ビニルスルホン酸及びその塩は、好ましくは2~100g/L、より好ましくは2~35g/L、さらにより好ましくは2~25g/Lの量で銀電気めっき組成物中に含まれる。
【0014】
本発明の水性酸性銀電気めっき組成物は、銀イオンの供給源を含む。銀イオンの供給源は、限定されないが、ハロゲン化銀、グルコン酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、硝酸銀、硫酸銀、アルカンスルホン酸銀、アルカノールスルホン酸銀又はその混合物などの銀塩によって提供されることが可能である。ハロゲン化銀が用いられる場合、好ましくは、ハロゲン化物は塩化物である。好ましくは、銀塩は、硫酸銀、アルカンスルホン酸銀、硝酸銀、又はこれらの混合物であり、より好ましくは、銀塩は、硫酸銀、メタンスルホン酸銀、又はこれらの混合物である。銀塩は一般に市販品として入手可能であるか、又は文献に記載される方法によって調製可能である。好ましくは、銀塩は水に容易に溶解可能である。好ましくは、銀塩は、少なくとも10g/Lの濃度の銀イオンを提供するために組成物中に含まれ、より好ましくは、銀塩は10g/L~100g/Lの量で銀イオン濃度を提供する量で組成物中に含まれ、さらに好ましくは、銀塩は20g/L~80g/Lの銀イオン濃度を提供する量で含まれ、なおより好ましくは、銀塩は20g/L~60g/L濃度で銀イオンを提供する量で含まれ、最も好ましくは、銀塩は30g/L~60g/Lの銀イオン濃度を提供する量で組成物中に含まれる。
【0015】
任意選択的に、本発明の銀電気めっき組成物は、酸を含むことができる。そのような酸としては、酢酸、クエン酸、マロン酸、アリールスルホン酸などの有機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びプロパンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、フェニルスルホン酸、トリルスルホン酸、5-スルホサリチル酸などのアリールスルホン酸、並びに硫酸、スルファミン酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸及びホウフッ化水素酸などの無機酸を挙げることができるが、これらに限定されない。上記酸の水溶性塩も、本発明の銀電気めっき組成物中に含まれることが可能である。好ましくは、酸は、酢酸、クエン酸、5-スルホサリチル酸、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、スルファミン酸又はそれらの塩であり、より好ましくは、酸は、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、スルファミン酸又はそれらの塩である。最も好ましくは、酸は、メタンスルホン酸である。そのような塩としては、限定されないが、メタンスルホン酸塩、スルファミン酸塩、クエン酸塩、酸のナトリウム及びカリウム塩、例えば、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウム、クエン酸ナトリウム二塩基性、クエン酸ナトリウム一塩基性、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸二カリウム二塩基性及びクエン酸カリウム一塩基性が含まれる。最も好ましくは、塩は、メタンスルホン酸ナトリウム又はメタンスルホン酸カリウムである。酸の混合物を使用することも可能である。酸は一般的に市販されており、或いは文献で既知の方法によって調製することもできる。こうした酸は、所望の導電性及びpHを提供するような量で含まれ得る。
【0016】
好ましくは、酸又はその塩は、少なくとも5g/L、より好ましくは10g/L~250g/L、さらにより好ましくは30g/L~150g/L、最も好ましくは30g/L~125g/Lの量で含まれる。
【0017】
任意選択的に、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどの無機塩基、並びに様々な種類のアミンなどの有機塩基を使用して、本発明の銀電気めっき組成物のpHを調整することができる。好ましくは、塩基pH調整剤は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムから選択される。pH調整剤は、必要に応じて所望のpH範囲を維持するための量で添加されてよい。
【0018】
銀電気めっき組成物のpHは7未満である。好ましくは、pHは0~6.5であり、より好ましくは、pHは0~6であり、さらにより好ましくは、pHは0~5であり、最も好ましくは、pHは0~3である。
【0019】
任意選択的に、本発明の銀電気めっき組成物は、1つ又はそれ以上の細粒化剤を含む。好ましくは、細粒化剤はチオール化合物である。そのようなチオール化合物としては、限定されないが、チオリンゴ酸、2-メルカプトコハク酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、1-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-1H-テトラゾール-5-チオール及びそれらの塩の1つ以上から選択されるチオール化合物が含まれる。チオール化合物の塩としては、限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム及びセシウム塩などのアルカリ金属塩;アンモニウム塩;及びテトラアルキルアンモニウム塩が含まれる。好ましくは、チオール化合物は、2-メルカプトコハク酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸及びナトリウム、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸の1つ以上から選択される。より好ましくは、チオール化合物は、2-メルカプトコハク酸及び3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウムの1つ以上から選択され、最も好ましくは、チオール化合物は2-メルカプトコハク酸である。
【0020】
好ましくは、細粒化剤は5g/L以上の量で含まれ、より好ましくは、チオール化合物は、10g/L~100g/L、さらに好ましくは15g/L~90g/L、なおより好ましくは20g/L~90g/L、最も好ましくは30g/L~90g/Lの量で含まれる。
【0021】
任意選択的に、本発明の銀電気めっき組成物は、1つ又はそれ以上の光沢剤を含むことができる。そのような光沢剤としては、限定されないが、アミン、例えば、アルキル、アルキレン、アルキロール、アルカノール又はアルキルアリールアミン及びアルキレンポリアミン及びポリアルキレンポリイミン((特許文献1)に開示されるもの)、複素環窒素化合物、例えば、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、並びにスルホネート含有光沢剤、例えば、スルファミン酸、5-スルホサリチル酸、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート及びナフタレントリスルホン酸が含まれる。
【0022】
ニッケル塩も、所望の光沢及び均一性の銀堆積物を提供するために十分な量で水性酸性銀電気めっき組成物中に含まれることが可能である。そのようなニッケル光沢剤は、二元合金が堆積されるように、銀中に実質的に組み込まれない。ニッケルイオンの供給源としては、限定されないが、硫酸ニッケル及びその水和型の硫酸ニッケル六水和物及び硫酸ニッケル七水和物、スルファミン酸ニッケル及びその水和型のスルファミン酸ニッケル四水和物、塩化ニッケル及びその水和型の塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル及びその水和型の酢酸ニッケル四水和物、硝酸ニッケル、硝酸ニッケル六水和物並びにそれらの混合物が含まれる。より好ましくは、ニッケルイオンの供給源はスルファミン酸ニッケル及びその水和型のスルファミン酸ニッケル四水和物であり、最も好ましくは、ニッケルイオンの供給源はスルファミン酸ニッケルである。そのようなニッケル塩は市販品として入手可能であるか、又は当該技術分野で周知の方法によって調製可能である。
【0023】
好ましくは、光沢剤が銀電気めっき組成物中に含まれる場合、それらは50mg/L~20g/L、より好ましくは100mg/L~10g/Lの量で提供される。
【0024】
好ましくは、本発明の水性酸性銀電気めっき組成物中、溶媒として含まれる水は、付随的な不純物を制限するために、脱イオン水及び蒸留水の少なくとも1つである。
【0025】
任意選択的に、1つ以上の界面活性剤は、本発明の銀電気めっき組成物中に含まれることが可能である。そのような界面活性剤としては、カチオン性及びアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、並びに両性界面活性剤などのイオン性界面活性剤が挙げられるがこれらに限定されない。界面活性剤は、0.05g/L~30g/Lなどの従来量で含まれてよい。
【0026】
アニオン性界面活性剤の例は、ナトリウムジ(1,3-ジメチルブチル)スルホサクシネート、ナトリウム-2-エチルヘキシルスルフェート、ナトリウムジアミルスルホサクシネート、ナトリウムラウリルスルフェート、ナトリウムラウリルエーテル-スルフェート、ナトリウムジ-アルキルスルホサクシネート及びナトリウムドデシルベンゼンスルホネートである。カチオン性界面活性剤の例は、ペルフッ素化四級アミンなどの四級アンモニウム塩である。
【0027】
他の任意選択的な添加剤としては、限定されないが、レベラー及び殺生剤が含まれることが可能である。そのような任意選択的な添加剤は従来の量で含まれることが可能である。
【0028】
好ましくは、銀電気めっき組成物は、水、銀イオンの1つ以上の供給源、対アニオン、チオジエタノール、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリ-アクリル-co-ビニルスルホン酸、その塩及びその混合物からなる群から選択される化合物、任意選択的に酸、任意選択的に塩基、任意選択的に光沢剤、任意選択的に細粒化剤、任意選択的に界面活性剤、任意選択的にレベラー、任意選択的に殺生物剤、及び7未満のpHからなる。
【0029】
より好ましくは、銀電気めっき組成物は、水、銀イオンの1つ以上の供給源、対アニオン、チオジエタノール、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩、酸、細粒化剤、任意選択的に塩基、任意選択的に増白剤、任意選択的に界面活性剤、任意選択的にレベラー、任意選択的に殺生物剤及び0~6のpHからなる。
【0030】
本発明の銀電気めっき組成物は、種々の基材上に銀層を堆積させるために使用することができる。好ましくは、銀層が堆積される基材は、ニッケル、銅及び銅合金基材である。そのような銅合金基材としては、限定されないが、黄銅及び青銅が含まれる。より好ましくは、銀は、銅又は銅合金に隣接するニッケルに隣接して堆積される。基材がニッケル層を含有する場合、銀ストライク層がニッケルに隣接して最初に堆積する。ストライク層の厚さは、0.01~1μm、好ましくは0.05~0.4μmの範囲である。次いで、本発明のめっき組成物からの銀層をストライク層に隣接してめっきする。めっき中の電気めっき組成物の温度は、室温~70℃、好ましくは30℃~60℃、より好ましくは40℃~60℃の範囲であり得る。銀電気めっき組成物は、好ましくは、電気めっき中に連続攪拌下にある。
【0031】
本発明の銀電気めっき法は、基材を提供することと、本発明の銀電気めっき組成物を提供することと、基材を組成物中に浸漬すること又は基材を組成物で噴霧することなどによって、銀電気めっき組成物を基材と接触させることとを含む。従来の整流器で電流を流し、ここで、基板がカソードとして機能し、対電極又はアノードが存在する。アノードは、高耐久性の銀を電気めっきして、基板の表面に隣接して堆積させるために使用される任意の従来の可溶性又は不溶性アノードであり得る。
【0032】
均一な高耐久性の銀の電気めっきのための電流密度は0.1ASD以上の範囲であることが可能である。好ましくは、電流密度は0.5ASD~25ASD、さらに好ましくは1ASD~20ASDの範囲である。
【0033】
本発明の銀の電気めっき組成物は、光沢があり、均一な高耐久性の銀層への半光沢の堆積を可能にする。堆積物の銀含有量は、堆積物の中の不可避の不純物を除いて、金属基準によって99%以上の銀である。
【0034】
本発明の銀層の厚さは、銀層の機能、及びそれがめっき処理される基材の種類に応じて変化してよい。好ましくは、銀層は、0.1μm以上の範囲である。さらに好ましくは、銀層は、0.1μm~100μm、より好ましくは0.5μm~50μm、なおより好ましくは1μm~10μm、最も好ましくは2μm~6μmの厚さ範囲を有する。厚さは、当業者に既知の従来法によって測定可能である。例えば、銀層の厚さは、Bowman,Schaumburg,ILから入手可能なBowman Series P X線蛍光光度計(XRF)を使用して測定可能である。XRFは、Bowmanからの純銀厚さ標準を使用して較正可能である。
【0035】
高耐久性の銀堆積物は、1以下の摩擦係数(COF)、好ましくは、0.1~1のCOF、より好ましくは、0.15~0.5、さらにより好ましくは、0.2~0.45、最も好ましくは、0.25~0.45のCOFを有する。COFは、当業者に既知の従来のトライボロジー法及び装置によって決定することができる。例えば、トライボロジー試験は、線形往復運動台を装備したAnton Paar TRB3ピンオンディスクトライボメーター(Anton Paar GmbH,Graz,Austriaから入手可能)を用いて、線形モード構成で実施可能である。電気めっきされた銀堆積物上で潤滑剤又は化学的後処置が適用される必要はない。1~5Nの鉛直力がそれぞれのトライボロジー測定に適用され、そして摩擦係数は従来のトライボメーターソフトウェア及び装置を使用して決定される。トライボメーターソフトウェアは、設定速度で荷重支持物体(キャップ)を移動させるために必要な適用された鉛直又は法線力(1~5N)と、測定された摩擦力との比率に基づき、COF(μ)を数学的に決定することができる。数式は、COF=Ffricton/Fverticalで表される。
【0036】
高耐久性の銀堆積物は、摩耗の範囲を決定するためにレーザープロフィロメトリーを使用して測定される摩耗トラック深さプロファイルによって決定される最小の摩耗を有する。当業者に既知の従来のレーザープロフィロメトリーを使用することができる。例えば、プロフィロメトリー測定を、Keyence VK-X共焦点レーザー顕微鏡(Laser Scanning Confocal Microscope)(Keyence Corporation of America,Elmwood Park,NJから入手可能)を用いて実施することができる。倍率50~100倍のレーザープロフィロメトリーを用いて摩耗トラックを測定することができる。
【0037】
本発明の高耐久性の銀の炭素含有量は、銀堆積物のドメイン径が直径100nmを超える粒子を除いて、銀堆積物の質量基準で0.1%以上であるが、質量基準で5%以下である。ドメインは、コヒーレント結晶又はグレインを指し、これらは交換可能な用語である。好ましくは、本発明の高耐久性の銀の炭素含有量は、0.5~3.5質量%の炭素、より好ましくは、1~3質量%の炭素である。グラファイト又は他の炭素同素体及びその酸化型などの炭素粒子は、小粒子使用と関連するいずれかの危険を除去して、銀電気めっき組成物で使用されない。耐摩耗性銀堆積物中の炭素含有量は、当該技術分野において既知の従来の方法によって決定されることが可能である。炭素含有量の決定は、白金ウール上、約1200℃での酸素流中でめっきされた銀堆積物の試料を燃焼させることによって達成され得る。得られた二酸化炭素は、当該技術分野で既知の従来プロセスのDIN EN ISO 15350:2010に従って、赤外線分光学によって決定される。
【0038】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するために含まれるが、その範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0039】
銀電気めっき実施例1~20:
特記されない限り、電気めっき基材は、1.25cm×2.5cmの寸法を有する平坦なリン青銅(合金C51100)クーポン、又は2.5cm×3.5cmの寸法を有するC26000黄銅クーポン(70%銅、30%亜鉛)であった。C51100及びC2600の間の基材の選択肢は、トライボロジー結果に有意に影響を与えることなく、以下の実施例では交換可能に使用された。トライボロジー移動摩耗パートナーは、直径0.9cmの平坦な基部を有する、直径0.7cmの半球状リン青銅基材(C51100)であった。電気めっきの前に、4ASDの電流密度で、カソードDCを用いて、50℃において30秒間、RONACLEAN(商標)DLF電解アルカリ性脱脂剤(Electrolytic Alkaline Degreaser)(DuPont de Nemoursから入手可能)中でクーポンを電気清浄した。この構成のアノードとしてステンレス鋼を使用した。電気清浄後、クーポンをDI水ですすぎ、40g/Lの過硫酸ナトリウム及び1%の硫酸溶液中で30秒間活性化し、DI水ですすぎ、次いで、10%硫酸中で20秒間さらに活性化し、再びDI水ですすぎ、次いで、電気めっき浴中に配置した。黄銅基材上でのめっきに関して、過硫酸塩活性化は実行されなかった。特記されない限り、NIKAL(商標)SC電解ニッケル(Electrolytic Nickel)(DuPont de Nemoursから入手可能)ニッケル電気めっき浴を使用して、銀めっき前に少なくとも厚さ2μmのニッケルの層をめっきした。ニッケルの電気めっきは、ニッケルアノードを使用して、4分間、4ASDの電流密度で、DCを用いて四角形ガラスビーカー中で実行された。撹拌は、400rpmの回転速度及び約400mLの溶液体積で、長さ5cmのテフロンコーティングされた撹拌棒によって行われた。電気めっきは、50℃の温度で実行した。ニッケル堆積後、基材をDI水で洗浄した。ニッケル層が堆積したら、その後、銀ストライク層をめっきした。ニッケルが存在しない場合、銀は、銀ストライク層をめっきすることなく、めっきされた。銀ストライク層は、メタンスルホン酸銀からの1g/Lの銀金属、9.3g/Lの2,2’-チオジエタノール及び18g/Lのメタンスルホン酸溶液からなるストライク浴を使用して堆積された。白金めっきされたチタンアノードを用いて、ガラスビーカー中で15秒間、2ASDのDC電流密度を適用した。所望の電流密度で基材をめっきするために必要とされるセル電位を超えて約0.05~01ボルトに電圧設定を制限して分極下で浴中に基材が導入された、ライブ又はホットエントリー技術が使用された。400rpmの回転速度で、長さ5cmのテフロンコーティングされた撹拌棒を用いて、浴を撹拌した。ストライク浴を22~27℃で運転した。0.05~0.4μmのストライク堆積に続いて、上記のライブエントリー技術を使用して、すすぎステップを用いずに銀を電着させた。上記と同一の撹拌及び溶液体積条件を使用して、銀をガラス製四角形ビーカーに堆積させた。銀浴は、銀のアノードを使用して、2~4ASDのDCを用いて運転された。電気めっきは、40~60℃の温度で実行された。めっき時間は、厚さ2~6μmの銀堆積物を達成するように調整された。次いで、クーポンをDI水ですすぎ、めっき後、圧縮空気を使用して乾燥させた。全ての銀電気めっき浴は水ベースであった。そのため、所望の体積にするために、各浴に水が添加された。水酸化カリウム又はメタンスルホン酸を用いて、銀電気めっき浴のpHを調整した。
【0040】
電気めっきされた銀の厚さは、Bowman,Schaumburg,ILから入手可能なBowmanシリーズP X線蛍光光度計(XRF)を使用して測定した。XRFは、Bowmanからの純銀厚さ標準を使用して較正された。
【0041】
トライボロジー試験は、線形往復運動台を装備したAnton Paar TRB3ピンオンディスクトライボメーター(Anton Paar GmbH,Graz,Austriaから入手可能)を用いて、線形モード構成で実施された。電気めっきされた銀堆積物上で潤滑剤又は化学的後処置が適用されなかった。トライボロジー測定のための静的パートナーとして、平坦なクーポンを使用した。銀めっきされた移動摩耗パートナーは、0.7cmの球直径を有する半球状キャップ形状を有した。全ての試験は「ライク-オン-ライク」で実行され、これは、平坦なクーポン及びキャップのそれぞれが同等条件下で同一銀金属堆積物によってめっきされたことを意味する。それぞれのトライボロジー測定に関して1~5Nの鉛直力が適用され、そして摩擦係数を記録した。設定速度で荷重支持物体(キャップ)を移動させるために必要な適用された鉛直又は法線力(1~5N)と、測定された摩擦力との比率に基づき、COF(μ)を数学的に決定するために、トライボメーターソフトウェアのAnton Paar Instrum Xバージョン8.1.5が使用された。数式は、COF=Ffricton/Fverticalで表される。移動パートナーは、1cm/秒の最大線形速度で1cmの振幅で静的フラット基材上を線形に往復するようにプログラムされた。線形サイクルは、電気めっきされた部分上での促進接触摩耗をシミュレーションするために、500~10000回の間で繰り返された。
【0042】
トライボロジー測定の後、摩耗の範囲を決定するためにレーザープロフィロメトリーを使用して、得られた摩耗トラック深さプロファイルを測定した。Keyence VK-X共焦点レーザー顕微鏡(Laser Scanning Confocal Microscope)(Keyence Corporation of America,Elmwood Park,NJから入手可能)を用いて、プロフィロメトリー測定を実施した。倍率50~100倍のレーザープロフィロメトリーを用いて摩耗トラックを測定した。
【0043】
当該技術分野で周知のDIN EN ISO 15350:2000標準法を使用して、以下のいくつかの実施例の炭素含有量を決定した。
【0044】
実施例1(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール(TDE):40g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(NSFC):20g/L
1に調整したpH
トライボメトリー:1N、500サイクル。
【0045】
45℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ半光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.45であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0046】
実施例2(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
40g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:180g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:8g/L
メタンスルホン酸:47.3g/L
pH約3
トライボメトリー:2N、10000サイクル。
【0047】
55℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ半光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.45であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0048】
実施例3(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
60g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:272g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:8g/L
メタンスルホン酸:94.5g/L
pH約0
トライボメトリー:4N、500サイクル
炭素の重量%:約1.5。
【0049】
55℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ半光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.45であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0050】
実施例4(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
40g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:136g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:8g/L
メタンスルホン酸:94.5g/L
pH約0
トライボメトリー:4N、500サイクル
炭素の重量%:約1.8。
【0051】
55℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ半光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.35であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0052】
実施例5(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
40g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:272g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:8g/L
メタンスルホン酸:94.5g/L
pH約0
トライボメトリー:4N、500サイクル。
【0053】
55℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ半光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.25であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0054】
実施例6(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:68g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:2.5g/L
pHは2.3に調整
トライボメトリー:2N、1000サイクル
炭素の重量%:約2.5。
【0055】
45℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.4であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0056】
実施例7(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
40g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:180g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:32g/L
メタンスルホン酸:47.3g/L
pH約0.3
トライボメトリー:4N、500サイクル。
【0057】
55℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ半光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.45であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0058】
実施例8(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:68g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:2.5g/L
スルファミン酸:5g/L
メタンスルホン酸カリウム:30g/L
2に調整したpH
トライボメトリー:2N、1000サイクル。
【0059】
45℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.3であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0060】
実施例9(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:68g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:2.5g/L
5g/Lのニッケルイオンを供給するためのメタンスルホン酸ニッケル
スルファミン酸:1g/L
メタンスルホン酸カリウム:30g/L
pHは2.5に調整
トライボメトリー:2N、1000サイクル。
【0061】
45℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.3であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0062】
実施例10(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:50g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:20g/L
5-スルホサリチル酸:10g/L
1に調整したpH
トライボメトリー:2N、1000サイクル。
【0063】
40℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ半光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.3であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してわずかに上昇した。
【0064】
実施例11(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:68g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:2.5g/L
5g/Lのニッケルイオンを供給するためのメタンスルホン酸ニッケル
5-スルホサリチル酸:1g/L
2に調整したpH
トライボメトリー:5N、10000サイクル。
【0065】
45℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ光沢であるように見えた。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.35であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0066】
実施例12(本発明)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:74g/L
ポリ-アクリル-co-ビニルスルホン酸:10g/L
2.7に調整したpH
トライボメトリー:1N、500サイクル。
【0067】
55℃での電気めっき後、電着されたコーティングは金属様であり、且つ半光沢であるように見えた。ニッケル層はめっきされなかった。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約0.5であった。銀堆積物は摩耗トラック上で基材まで摩耗することなく、バックグラウンドベースラインに対してほとんど平坦であった。
【0068】
実施例13(比較)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:113g/L
ポリ-ビニルスルホン酸:10g/L
メタンスルホン酸:47.3g/L
pH約0.3
トライボメトリー:1N、500サイクル。
【0069】
55℃での電気めっき後、電着されたコーティングは白色マットであるように見えた。ニッケル層はめっきされなかった。銀堆積物の測定された摩擦係数は、約1.6であった。銀堆積物は、摩耗トラックにおいて銀の部分的な摩耗を示し、摩耗領域は、バックグラウンドベースラインに対して2~4μmの深さを示した。
【0070】
実施例14(比較)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:50g/L
ナフタレントリスルホン酸、ナトリウム塩:10g/L
1.5に調整したpH。
【0071】
40℃での電気めっき後、電着されたコーティングは非常に粗く、焦げ茶色で、脆く見えた。この堆積物は、摩耗試験のために適切でなかった。
【0072】
実施例15(比較)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:68g/L
ポリ-スチレンスルホン酸、ナトリウム塩(Mn約70k):8g/L
メタンスルホン酸:47.5g/L
pH約0.3。
【0073】
55℃での電気めっき後、電着されたコーティングは非常に粗く、灰色で、脆く見えた。ニッケル層はめっきされなかった。この堆積物は、摩耗試験のために適切でなかった。
【0074】
実施例16(比較)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:27g/L
5-スルホサリチル酸:15g/L
pHは1に調整された
トライボメトリー:1N、500サイクル。
【0075】
40℃での電気めっき後、電着されたコーティングはマットな茶色及び白色に見えた。ニッケル層はめっきされなかった。堆積物は数サイクル以内で基材まで摩耗し、このことは不十分な耐摩耗性を実証する。
【0076】
実施例17(比較)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:45g/L
エチレンジアミンテトラキス(プロポキシレート-ブロック-エトキシレート)テトロール(Mn約3600):10g/L
pHは1に調整された。
【0077】
40℃での電気めっき後、電着されたコーティングは非常に粗く、茶色で、脆く見えた。ニッケル層はめっきされなかった。この堆積物は、摩耗試験のために適切でなかった。
【0078】
実施例18(比較)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:27g/L
ポリ-メタクリル酸:5g/L
pHは1に調整された。
【0079】
40℃での電気めっき後、電着されたコーティングは非常に粗く、黒色で、脆く見えた。ニッケル層はめっきされなかった。この堆積物は、摩耗試験のために適切でなかった。
【0080】
実施例19(比較)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
2,2’-チオジエタノール:27g/L
ポリ-ビニルピロリドン:15g/L
pHは1.5に調整された。
【0081】
浴の含有物は完全に可溶性ではなかった。40℃での電気めっき後、電着されたコーティングは灰色であるように見えた。ニッケル層はめっきされなかった。この堆積物は、摩耗試験のために適切でなかった。
【0082】
実施例20(比較)
次の組成の水性銀電気めっき浴を調製し、以下のトライボロジー条件下で試験した:
20g/Lの銀イオンを供給するメタンスルホン酸銀
3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール:101.4g/L
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:10g/L
pHは2.1に調整された
トライボメトリー:1N、500サイクル。
【0083】
50℃での電気めっき後、電着されたコーティングはマットな灰色及び白色に見えた。ニッケル層はめっきされなかった。堆積物は数サイクル以内で基材まで摩耗し、このことは不十分な耐摩耗性を実証する。
【0084】
実施例21(比較)
標準的な銀の耐摩耗性
標準的な銀の摩耗性能は、シアン化銀からの33g/Lの銀イオン、113g/Lのシアン化カリウム、pH=12のアルカリ性銀シアン化物めっき浴のための従来のめっき添加剤を含むアルカリ性銀シアン化物浴から製造される堆積物を使用してベンチマーク試験した。銀電気めっき浴は、TDE又はNSFCを含まなかった。半球状キャップを使用する代わりに、移動摩耗パートナーは、直径5.55mmのC26000黄銅(70%銅、30%亜鉛)から製造された球であった。上記の手順による電解清浄及び硫酸活性化の後、基材上で直接、約5μmの銀で球を電気めっきした。平坦なクーポンもC26000黄銅から製造され、そして約5μmの銀で電気めっきされていた。
【0085】
銀をガラス製四角形ビーカー中で基材上に堆積させた。400rpmの回転速度で、長さ5cmのテフロンコーティングされた撹拌棒を用いて、400mLの浴を撹拌した。銀浴は、白金めっきされたチタンアノードを使用して、カソードDCを用いて上記で示された電流密度によって運転された。電気めっきは、40℃の温度で実行された。めっき時間は、厚さ約5μmの銀堆積物を達成するように調整された。次いで、クーポンをDI水ですすぎ、めっき後、圧縮空気を使用して乾燥させた。
【0086】
上記と同一装置及び同一手順を用いて、トライボロジー試験を行った。再び、めっき後の銀堆積物上で潤滑剤又は化学的後処置が適用されなかった。試験は1Nの荷重、1cmのストローク長、及び0.5cm/秒のスライド速度を用いて実施した。試験を「ライク-オン-ライク」で実行した。これは、同一の電気めっき浴から製造された同一の銀金属堆積物によって、平坦なクーポン及び球形のボールのそれぞれがめっきされたことを意味する。試験の間、トライボメーターを使用して摩擦係数を監視し、そしてその後、レーザープロフィロメトリーを使用して摩耗トラック深さを測定した。約1.6の摩擦係数を実証しながら、銀めっきされた堆積物を基材まで突き破るために必要とされるのは、1N力において100線形サイクルのみであった。
【0087】
実施例22(比較)
標準的な銀の炭素含有量
基材は、1.25cm×2.5cmの寸法を有する平坦なステンレス鋼クーポンであった。電気めっきの前に、4ASDの電流密度で、カソードDCを用いて、50℃において30秒間、RONACLEAN(商標)DLF電解アルカリ性脱脂剤(Electrolytic Alkaline Degreaser)(DuPont de Nemoursから入手可能)中でクーポンを電気清浄した。この構成のアノードとしてステンレス鋼を使用した。電気清浄後、クーポンをDI水ですすぎ、40g/Lの過硫酸ナトリウム及び1%の硫酸溶液中で30秒間活性化し、DI水ですすぎ、次いで、10%硫酸中で20秒間さらに活性化し、再びDI水ですすぎ、次いで、従来のアルカリ性銀シアン化物浴を含有するガラス製の四角形ビーカー中で銀をめっきした。
【0088】
アルカリ性銀シアン化物浴は、シアン化銀からの33g/Lの銀イオン、113g/Lのシアン化カリウム、pH=12のアルカリ性銀シアン化物めっき浴のための従来のめっき添加剤を含有した。銀シアン化物電気めっき浴は、TDE又はNSFCを含まなかった。
【0089】
400rpmの回転速度で、長さ5cmのテフロンコーティングされた撹拌棒を用いて、浴を撹拌した。銀浴は、銀のアノードを使用して、カソードDCを用いて2~4ASDの電流密度によって運転された。電気めっきは、40℃の温度で実行された。めっき時間は、厚さ2~6μmの銀堆積物を達成するように調整された。次いで、クーポンをDI水ですすぎ、めっき後、圧縮空気を使用して乾燥させた。
【0090】
標準的な銀堆積物の炭素含有量は、DIN EN ISO 15350:2000に従って決定された。銀堆積物は、銀層に対して不十分な接着力を有するステンレス鋼クーポン上でめっきされた。銀堆積物をステンレス鋼基材から除去し、重量を測定し、そして白金ウール上、約1200℃で酸素流を使用して、チャンバー中で燃焼させた。銀堆積物中の有機炭素の燃焼から得られた二酸化炭素を赤外線分光学によって決定し、銀堆積物中の炭素質量を決定するために使用した。この値を各銀堆積物の全質量で割って、それぞれの堆積物中の炭素重量百分率を得た。得られた二酸化炭素は、赤外線分光学によって決定された。銀堆積物中の堆積した炭素の平均量は、0.005%未満のみであった。