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特許7270094制御装置、制御システム、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/263 20220101AFI20230427BHJP
   H04L 49/9057 20220101ALI20230427BHJP
   H04L 47/24 20220101ALI20230427BHJP
【FI】
H04L47/263
H04L49/9057
H04L47/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022048655
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】土屋 貴寛
【審査官】浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-147569(JP,A)
【文献】特開2003-169090(JP,A)
【文献】特開2003-244695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 47/263
H04L 47/24
H04L 49/9057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備える制御装置であって、前記プロセッサが、
送信装置による複数のデータの予め設定された優先度に応じた受信装置への送信のために、前記複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で前記送信装置に入力されるように制御することと、
前記送信装置により送信された前記複数のデータについて、前記受信装置においてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を受信することと、
前記通知を受信したことに応じて、前記第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを前記第1時間間隔より長い第2時間間隔で前記送信装置に入力するように設定することと
前記送信装置による前記第1データの送信のためのスループットの上限値として、前記フレームについて予め設定されたフレームサイズの下限値を前記第2時間間隔で除した値に基づく値を設定すること
を実行する、制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記送信装置による前記第1データの送信のためのスループットの上限値に前記第2時間間隔を乗じた値のサイズ以上となる範囲で、前記複数のフレームの少なくとも一部を結合するように制御することを実行する、請求項に記載の制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記結合の処理のために生じるフレームの遅延増大が所定条件を満たす範囲で、前記結合を制御することを実行する、請求項に記載の制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記第2時間間隔への設定の後、前記通知を受信したことに応じて、前記第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを前記第2時間間隔より長い第3時間間隔で前記送信装置に入力するように設定することを実行する、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
フレームの前記遅延増大は、前記送信装置と前記受信装置との間のフレームの通信に要する時間が基準値と比較して増大することを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
プロセッサを備える制御装置であって、前記プロセッサが、
送信装置による複数のデータの予め設定された優先度に応じた受信装置への送信のために、前記複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で前記送信装置に入力されている場合において、前記受信装置で受信した前記複数のデータについて、前記受信装置におけるフレームのロス又は遅延増大の有無を判定することと、
前記判定の結果、フレームのロス又は遅延増大が生じている場合において、前記第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを前記第1時間間隔より長い第2時間間隔で前記送信装置に入力するように設定するために、前記ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を送信することと
前記送信装置による前記第1データの送信のためのスループットの上限値として、前記フレームについて予め設定されたフレームサイズの下限値を前記第2時間間隔で除した値に基づく値を設定すること
を実行する、制御装置。
【請求項7】
前記送信装置及び前記受信装置のうち少なくとも一方が車両に搭載された、請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
プロセッサを備える制御装置で実施される制御方法であって、前記プロセッサが、
送信装置による複数のデータの予め設定された優先度に応じた受信装置への送信のために、前記複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で前記送信装置に入力されるように制御することと、
前記送信装置により送信された前記複数のデータについて、前記受信装置においてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を受信することと、
前記通知を受信したことに応じて、前記第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを前記第1時間間隔より長い第2時間間隔で前記送信装置に入力するように設定することと、
前記送信装置による前記第1データの送信のためのスループットの上限値として、前記フレームについて予め設定されたフレームサイズの下限値を前記第2時間間隔で除した値に基づく値を設定すること
を含む、制御方法。
【請求項9】
プロセッサを備える制御装置で実行されるプログラムあって、前記プロセッサが、
送信装置による複数のデータの予め設定された優先度に応じた受信装置への送信のために、前記複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で前記送信装置に入力されるように制御することと、
前記送信装置により送信された前記複数のデータについて、前記受信装置においてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を受信することと、
前記通知を受信したことに応じて、前記第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを前記第1時間間隔より長い第2時間間隔で前記送信装置に入力するように設定することと
前記送信装置による前記第1データの送信のためのスループットの上限値として、前記フレームについて予め設定されたフレームサイズの下限値を前記第2時間間隔で除した値に基づく値を設定すること
を実行するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御システム、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信における品質を保証するために、通信トラフィックをいくつかのクラスに分類し、クラス毎に優先順位をつけて通信のスケジューリングを行う場合がある。当該スケジューリングの手法として、例えば、PQ(Priority Queuing)などが知られている。特許文献1には、複数の優先度が設定されたフレームを混在して伝送する場合において、第1のフレームの送信中に、より優先度の高い第2のフレームの送信が必要になると、第1のフレームの送信を中断して分割し、第2のフレームの送信後に第1のフレームの未送信部分を送信し、受信側でフレームを結合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-055284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
優先順位をつけて通信のスケジューリングを行う場合において、高優先度の通信トラフィックが優先されるため、他の通信トラフィックの処理が滞り、トラフィックの遅延増大やフレームロスが生じる場合がある。また、フレームの送信を中断及び分割して送信し、受信側で結合する手法では、フレームの分割が多く発生すると、送信側での結合などに起因して処理の遅延増大が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、より最適な方法で通信品質を保証することに関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る制御装置は、プロセッサを備える制御装置であって、前記プロセッサが、送信装置による複数のデータの予め設定された優先度に応じた受信装置への送信のために、前記複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で前記送信装置に入力されるように制御することと、前記送信装置により送信された前記複数のデータについて、前記受信装置においてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を受信することと、前記通知を受信したことに応じて、前記第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを前記第1時間間隔より長い第2時間間隔で前記送信装置に入力するように設定することとを実行する。
【0007】
本発明の一態様に係る通信システムは、送信装置と、受信装置と、制御装置とを備える通信システムであって、前記制御装置のプロセッサが、前記送信装置による複数のデータの予め設定された優先度に応じた前記受信装置への送信のために、前記複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で前記送信装置に入力されるように制御することと、前記送信装置から送信され前記受信装置で受信した前記複数のデータについて、前記受信装置におけるフレームのロス又は遅延増大の有無を判定することと、前記判定の結果、フレームのロス又は遅延増大が生じている場合において、前記ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を送信することと、前記ロス又は遅延増大が生じていることを示す前記通知を受信することと、前記通知を受信したことに応じて、前記第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを前記第1時間間隔より長い第2時間間隔で前記送信装置に入力するように設定することとを実行する。
【0008】
本発明の一態様に係る制御方法は、プロセッサを備える制御装置で実施される制御方法であって、前記プロセッサが、送信装置による複数のデータの予め設定された優先度に応じた受信装置への送信のために、前記複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で前記送信装置に入力されるように制御することと、前記送信装置により送信された前記複数のデータについて、前記受信装置においてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を受信することと、前記通知を受信したことに応じて、前記第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを前記第1時間間隔より長い第2時間間隔で前記送信装置に入力するように設定することとを含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、プロセッサを備える制御装置で実行されるプログラムあって、前記プロセッサが、送信装置による複数のデータの予め設定された優先度に応じた受信装置への送信のために、前記複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で前記送信装置に入力されるように制御することと、前記送信装置により送信された前記複数のデータについて、前記受信装置においてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を受信することと、前記通知を受信したことに応じて、前記第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを前記第1時間間隔より長い第2時間間隔で前記送信装置に入力するように設定することとを実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より最適な方法で通信品質を保証することに関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る通信システムの概略構成を示す概念図である。
図2】一実施形態に係る通信装置の機能構成の概略を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る通信装置のハードウェア構成の概略を示すブロック図である。
図4】一実施形態に係る通信装置の状態遷移を示す概念図である。
図5】一実施形態に係る通信システムによる処理フローの一例を示すシーケンス図である。
図6】一実施形態に係るフレームを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、一実施形態に係る通信システムについて説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以下に述べる各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0013】
<システム構成>
図1を参照して、一実施形態に係る通信システムの構成例について説明する。通信システム1は、通信装置10a及び通信装置10bを含む複数の通信装置10を備える。通信装置10aと通信装置10bとの間の通信は、例えば、無線により行われる。しかしながら、通信装置10aと通信装置10bの間の通信は、有線で行われてもよいし、無線及び有線の両者で行われてもよい。また、通信装置10aと通信装置10bの間の通信のために、通信トラフィックがいくつかのクラスに分類され、クラス毎に優先順位をつけて通信のスケジューリングが行われる。当該スケジューリングの手法は、例えば、PQ(Priority Queuing)、WFQ(Weighted Fair Queuing)、又はLLQ(Low Latency Queuing)を含む。
【0014】
通信装置10は、外部装置と通信可能な装置である。通信装置10は、例えば、端末装置、サーバ装置、又は基地局として構成されてもよいし、端末装置、サーバ装置、又は基地局などの装置に通信手段として含まれる装置であってもよい。上記端末装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、移動体端末(例えば、自動車の車載装置、スマートフォン、又は携帯電話)であってもよい。
【0015】
<機能構成>
図2を参照して、通信装置10の機能構成を説明する。通信装置10は、主な機能構成として、制御部101、記憶部102、及び処理部103を備える。通信装置10は、これらの構成のうち少なくとも一部を有さなくてもよいし、さらに他の構成を有してもよい。また、通信装置10が有する少なくとも一部の構成は、通信装置10の外部装置に設けられ、当該外部装置と、通信装置10が通信可能に構成されてもよい。例えば、本実施形態において、通信装置10の外部装置である制御装置が制御部101を有し、当該制御装置と、通信装置10とが通信可能に構成されてもよい。
【0016】
通信装置10及び上記外部装置が有する機能は、例えば、当該装置が有するプロセッサが、当該装置が有するメモリ又は記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを読み込み、実行することにより実現される。
【0017】
制御部101は、通信装置10における各種処理の実行を制御する。例えば、制御部101は、データの送信先を識別し、送信先までの通信経路を選択する処理を行う。また、制御部101は、複数のデータのそれぞれに対して優先度を設定し、設定された当該優先度に応じた順序で、それぞれのデータに基づくフレームを処理部103に入力してもよい。優先度の設定は、複数の通信装置10の少なくとも1つが車載装置である場合、例えば、車両制御情報を高優先、車両周辺を撮像した高精細映像情報を中優先、車両の制御に直接関係しない計器情報を低優先、というように三段階に設定してもよい。制御部101は、さらに、通信装置10から送信するデータを処理部103への入力する処理、及び通信装置10が受信し処理部103から出力されるデータに対する処理を行う。
【0018】
例えば、送信装置として機能する通信装置10aから、受信装置として機能する通信装置10bにデータが送信されるとする。このとき、送信される複数のデータのそれぞれに対して予め優先順位をつけて通信のスケジューリングが行われる。当該スケジューリングの手法は、例えば上記のとおり、PQ、WFQ、又はLLQを含む。この場合において、通信装置10aによる複数のデータの予め設定された優先度に応じた通信装置10bへの送信のために、通信装置10aの制御部101は、通信装置10aへのデータの入力を制御する。例えば、制御部101は、上記複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で通信装置10aに入力されるように制御する。制御部101は、通信装置10aにより送信された上記複数のデータについて、通信装置10bにおいてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を受信する。制御部101は、上記通知を受信したことに応じて、第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが第1時間間隔より長い第2時間間隔で通信装置10aに入力されるように設定する。
【0019】
本実施形態において、フレームの遅延とは、フレームの通信に要する時間を意味し、例えば、フレームの通信装置10aへの入力から通信装置10bによるフレームの出力までの時間であってもよい。また、フレームの遅延増大とは、フレームの遅延時間が基準値(例えば、トラフィック量が正常であるときのフレームの遅延時間、又はフレームの遅延時間の理想値若しくは理論値)と比較して、増大することを意味する。つまり、フレームの遅延増大とは、通信装置10aと通信装置10bの間のフレームの通信に要する時間(例えば、フレームの通信装置10aへの入力から通信装置10bによるフレームの出力までの時間)の増大を含んでもよい。
【0020】
また、本実施形態において、フレームのロスとは、通信装置10aから送信されたフレームが何らかの理由で通信装置10bに受信されず、喪失することであってもよい。この場合、フレームが喪失したことは、周知技術により通信装置10bが検知することができる。
【0021】
通信装置10aから送信される複数のデータには、例えば、制御データ(例えば、車両の制御データ)、映像データ、計器による測定データ、及びその他のデータのうちの一部が含まれる。例えば、通信遅延増大又はデータロスがどの程度許容されるか否かに応じて、当該複数のデータのそれぞれに対して、異なる複数種類の優先度のうちいずれかが設定される。例えば、通信遅延増大又はデータロスが許容されないデータであるほど、高い優先度が設定され、通信遅延増大又はデータロスが許容されるデータであるほど、低い優先度が設定される。また、上記のロス又は遅延増大が生じていることを示す通知は、例えば、通信装置10bから送信され、通信装置10aが受信してもよい。
【0022】
以上のように本実施形態によれば、通信装置10bにおいてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、送信される複数のフレームのそれぞれを第1時間間隔より長い第2時間間隔で通信装置10aに入力するように設定する。その結果、より最適な方法で通信品質を保証することが可能である。
【0023】
より詳細には、一般に、通信装置10のフレーム入出力処理能力(例えば、処理数、処理時間等に関する能力)に制約がある場合、高優先度に設定されたトラフィックの送信装置(通信装置10a)へのフレーム入力間隔が短い場合、PQなどの優先順位に応じた通信のスケジューリングでは、送信装置は、高優先度に設定されたデータのトラフィックの処理に追われる。その結果、送信装置において、より低い優先度に設定されたデータのトラフィックの処理が滞るため、受信装置(通信装置10b)において、トラフィックの遅延増大及びフレームロスが生じうる。また、これらの事象がスループットの低下にもつながりうる。また、各優先度の重みづけに従ってスケジューリングするWFQ(Weighted Fair Queuing)、又はPQ及びWFQを組み合わせたLLQ(Low Latency Queuing)等の他のトラフィック制御方法も知られている。WFQ又はLLQを採用することで、上記のトラフィック遅延増大及びフレームロスの事象の発生は低下しうるが、高優先度のトラフィックにおける遅延増大及び通信速度などの要求条件を満たさなくなる可能性も生じうる。さらに、特許文献1に記載の方法では、フレームの送信を中断し、分割して送信し、受信側で結合する手法では、フレームの分割が多く発生すると、送信側での結合などに起因して処理の遅延増大が発生する可能性がある。
【0024】
これに対し、上記のとおり本実施形態によれば、通信装置10bにおいてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、送信される複数のフレームのそれぞれを第1時間間隔より長い第2時間間隔で通信装置10aに入力するように設定する。その結果、より最適な方法で通信品質を保証することが可能である。制御部101による処理の詳細は、さらに後述する。
【0025】
また、上記を踏まえると、本実施形態に係る技術によれば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0026】
記憶部102は、各種のデータを記憶し、管理する。記憶部102に記憶されるデータは、例えば、外部から取得されたデータ、通信装置10における処理の実行に必要なデータ、及び通信装置10における処理結果のデータを含む。
【0027】
処理部103は、送信するデータ及び受信したデータに対して、通信プロトコルに応じた通信のための信号処理を行う。通信装置10が送信装置として機能するとき、処理部103による処理は、例えば、通信装置10に入力されたデータリンク層のフレームに対して物理層ヘッダを付加し、通信のために接続される伝送路の信号フォーマットを有する信号にフレームを変換して当該フレームを出力する処理を含む。処理部103から出力されたフレームは例えば、上記伝送路を介して、受信装置として機能する通信装置10に送信される。通信装置10が受信装置として機能するとき、処理部103による処理は、例えば、通信装置10が受信したデータに基づく物理層のフレームをデータリンク層のフレームに変換する処理を含む。
【0028】
本実施形態において、通信装置10が有する主な機能として、データリンク層及び物理層の処理を説明したが、通信装置10は、変形例として、ネットワーク層などの他のレイヤの処理を実行する機能を有してもよい。
【0029】
<ハードウェア構成>
図3を参照して、通信装置10の主なハードウェア構成の例を説明する。図3に示すように、通信装置10は、主なハードウェア構成として、プロセッサ11、メモリ12、及び通信IF13を備える。通信装置10は、ハードウェア構成として、上記構成の一部を備えなくてもよいし、上記以外構成を備えてもよい。
【0030】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶された各種の命令を含むコンピュータプログラムをメモリ12に展開して実行することにより、通信装置10が有する各構成を制御し、通信装置10が有する各機能を実現する。プロセッサ11は、例えば、NWP(NetWork Processor)、及びCPU(Central Processing Unit)の少なくとも一方であってもよい。メモリ12は、プロセッサ11による処理に必要なデータ及びプロセッサ11による処理結果のデータを格納する。メモリ12は、例えば、RAM(Random Access Memory)である。通信IF13は、外部装置との通信のために、通信網に対する電気的又は光学的インタフェースとして処理を行い、例えば、回路により構成される。
【0031】
<処理>
通信装置10における処理モードの状態遷移及び通信システム1における処理フローについて説明する。
【0032】
図4を参照して、通信装置10における処理モードの状態遷移について説明する。通信装置10における処理モードは、通常モードと非通常モードを含む。通常モードは、例えば、送信装置である通信装置10aから送信されたデータについて、受信装置においてフレームのロス又は遅延増大が生じていないときの通信装置10aの処理モードである。非通常モードは、例えば、送信装置である通信装置10aから送信されたデータについて、受信装置においてフレームのロス又は遅延増大が生じているときの通信装置10aの処理モードである。通常モードと非通常モードの違いとして、例えば、非通常モードにおける通信装置10aへのフレーム入力間隔(最短フレーム入力間隔)は、通常モードにおける通信装置10aへのフレーム入力間隔(最短フレーム入力間隔)よりも長く設定される。
【0033】
送信装置である通信装置10aは、送信したデータについて、受信装置である通信装置10bにおいてフレームのロス又は遅延増大が発生しているか否かを監視する。監視対象は、通信装置10aから通信装置10bに送信された複数のデータの全てであってもよいし、送信された複数のデータのうち、所定の優先度(例えば、高優先度、中優先度、及び低優先度のうちのいずれか)が設定されたデータであってもよい。
【0034】
通信装置10bにおいてフレームのロス又は遅延増大が発生しているか否かを監視するために、通信装置10bにおいてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知が通信装置10aに送信されるようにしてもよい。通信装置10aは、当該通知の受信の有無に基づいて、上記のフレームのロス又は遅延増大の有無を判断してもよい。
【0035】
また、受信装置である通信装置10bは、送信装置である通信装置10aにおけるフレーム入力間隔を監視する。通信装置10aにおけるフレーム入力間隔は、例えば、通信装置10bが受信するフレームに含まれるタイムスタンプ又はフレーム入力間隔の情報に基づいて判断されてもよいし、他の方法で通信装置10bに送信されたフレーム入力間隔に関する情報に基づいて判断されてもよい。監視対象は、通信装置10aから通信装置10bに送信される複数のデータの全てに対応するフレームであってもよいし、送信される複数のデータのうち、所定の優先度(例えば、高優先度、中優先度、及び低優先度のうちの一部)が設定されたデータに対応するフレームであってもよい。
【0036】
処理モードが通常モードから非通常モードに遷移する条件は、例えば、受信装置である通信装置10bにおいて監視対象のフレームのロスが発生している(若しくは当該ロスの発生率が所定値以上である)、又は遅延増大が発生している(若しくは当該遅延増大の時間が所定値以上である)という条件を含んでもよい。
【0037】
処理モードが非通常モードから通常モードに遷移する条件は、例えば、送信装置である通信装置10aにおけるフレーム入力間隔の測定値が後述する最短フレーム入力間隔より長いという条件(条件1)、及び通信装置10bにおいてフレームのロス又は遅延増大が発生せずに一定時間が経過しているという条件(条件2)を含んでもよい。処理モードが非通常モードから通常モードに遷移する条件は、条件1及び条件2のいずれかのみを含んでもよい。
【0038】
図5を参照して、上記の処理モードが非通常モードであるときの通信システム1における処理フローの詳細を説明する。以下に説明する各処理ステップは、例えば、通信装置10が有するプロセッサ11(又は制御部101を有する通信装置10の外部装置)が、コンピュータプログラムを読み込み実行することによって、実現される。上記で既に説明した内容については、ここでは説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0039】
まず、ステップS11において、通信装置10aは、通信装置10aによる複数のデータの予め設定された優先度に応じた通信装置10bへの送信のために、当該複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが、予め設定された第1時間間隔で通信装置10aに入力されるように制御する。すなわち、第1時間間隔で順次、フレームが通信装置10aに入力されるように制御される。なお、予め設定された第1時間間隔は、フレーム入力間隔の最短の間隔(最短フレーム入力間隔)であり、通信装置10は、設定された最短フレーム入力間隔よりも間隔が短くならないようにフレーム入力間隔を制御する。また、初期状態においては、通信装置10aがフレーム入力間隔を制御することは必須ではない。通信装置10aは、例えば、後述する通知を受信した後、フレーム入力間隔を制御してもよい。通信装置10aは、入力された当該フレームに対して通信プロトコルに応じた処理を行い、通信装置10bに送信する。
【0040】
図6を参照して、通信装置10aへのフレーム入力間隔について説明する。図6には、通信装置10aに入力されるフレームのフォーマットが示されている。フレームは、プリアンブル、MACヘッダ、IPヘッダ、UPD(User Datagram Protocol)ヘッダ、ペイロード、及びCRC(Cyclic Redundancy Code)のフィールドを有する。図6に示す例において、プリアンブル、MACヘッダ、IPヘッダ、UPDヘッダ、ペイロード、及びCRCのバイト数はそれぞれ、例えば、8バイト、14バイト、20バイト、8バイト、18バイト(以上)、及び4バイトである。本実施形態において、MACヘッダ、IPヘッダ、UPDヘッダ、ペイロード、及びCRCの長さが通信装置10aに入力されるフレームのフレーム長である。また、本実施形態において、フレームのMACヘッダが通信装置10aに入力されてから次のフレームのMACヘッダが通信装置10aに入力されるまでの間隔が、フレーム入力間隔である。
【0041】
図5の説明に戻り、ステップS12において、通信装置10bは、通信装置10aから送信されたフレームについて、ロス又は遅延増大の有無を判断し、当該ロス又は遅延増大が生じている場合、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を通信装置10aに送信する。当該通知は、フレームロス率又はフレーム遅延増大が所定以上である場合に、そのことを示すものであってもよい。フレームのロス又は遅延増大の有無の判断は、任意の方法で行われる。フレームロスの有無は、例えば、通信装置10aでフレームに番号を付与し、通信装置10bが受信したフレームに付与されている番号の抜けを確認することにより判断される。フレーム遅延増大は、例えば、通信装置10bが受信したフレームに含まれるタイムスタンプに基づいて判断される。本実施形態の前述及び後述の通知においても、ステップS12と同様の処理が行われてもよい。
【0042】
ステップS13において、通信装置10aは、ステップS12で送信された通知を受信したことに応じて、第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを第1時間間隔より長い第2時間間隔で通信装置10aに入力されるように設定する。すなわち、通信装置10aは、上記通知の受信に応じて、最短フレーム入力間隔として、第1時間間隔より長い第2時間間隔を設定する。例えば、第1時間間隔より1byteの入力時間分、入力間隔が長くなるように第2時間間隔が設定されてもよい。その後、通信装置10aは、設定された第2時間間隔よりも間隔が短くならないように、通信装置10aへのフレーム入力間隔を制御する。
【0043】
すなわち、図5に示す処理において、複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で送信装置である通信装置10aに入力されている場合において、受信装置である通信装置10bは、通信装置10bで受信した複数のデータについて、フレームのロス又は遅延増大の有無を判定する。通信装置10bは、判定の結果、フレームのロス又は遅延増大が生じている場合において、第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを第1時間間隔より長い第2時間間隔で送信装置に入力するように設定するために、ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を送信する。
【0044】
ステップS14において、通信装置10aは、ステップS13における最短フレーム入力間隔の変更に応じて、第1データの送信のためのスループットの上限値を変更する。例えば、通信装置10aは、通信装置10aによる第1データの送信のためのスループットの上限値として、フレームについて予め設定されたフレームサイズの下限値を第2時間間隔で除した値に基づく値を設定する。すなわち、次式に示すように第1データの送信のためのスループットの設定値を設定する。
[スループット設定値[bps]]≦8x[フレームサイズの下限値[byte]]/[最短フレーム入力間隔[s]]
【0045】
このように第1データの送信のためのスループットの上限値を変更することにより、高優先度に設定された第1データの送信のために通信装置10aのリソースが占有されてしまう時間を低減することができる。
【0046】
ステップS15において、通信装置10aは、通信装置10aによる第1データの送信のためのスループットの上限値としてステップS14で設定された値に第2時間間隔(最短フレーム入力間隔)を乗じた値のサイズ以上となる範囲で、複数のフレームの少なくとも一部を結合するように制御する。すなわち、次式に示す条件を満たす範囲で、複数のフレームの少なくとも一部が結合される。
[結合後のフレームサイズ[byte]]≧[最短フレーム入力間隔[s]]x[スループット設定値[bps]]
【0047】
このように、上記で算出したサイズ以上となる範囲で、送信される複数のフレームの少なくとも一部を結合するように制御し、送信されるフレームのサイズを調整することにより、フレーム入力間隔を長くすることに起因して生じ得る送信レートの低下を抑止することが可能である。
【0048】
当該条件に加え、上記結合の処理のために生じるフレームの遅延増大が所定条件を満たす範囲で、上記の複数のフレームの少なくとも一部の結合が制御されてもよい。上記結合の処理のために生じるフレームの遅延増大は、例えば、フレームの結合のために複数フレームの入力を通信装置10aで待つことによる遅延増大、通信装置10aにおけるフレームの結合処理自体による遅延増大、又は後述のステップS16のフレームの分割処理による遅延増大を含む。また、上記におけるフレームの遅延増大が所定条件を満たす範囲とは、例えば、フレームの遅延増大の時間が所定時間内である範囲を含む。
【0049】
ステップS16において、通信装置10bは、ステップS15でフレームの結合が行われている場合、元のフレームに戻すように、フレームの分割を行う。
【0050】
なお、ステップS14と、ステップS15及びS16との双方を必ず実施する必要はなく、一方のみを実施しなくてもよい。また、図5において、ステップS15の前にステップS14が実施されているが、ステップS15の後にステップS14が実施されてもよいし、ステップS14とS15とを同時に実施してもよい。
【0051】
ステップS17において、通信装置10bは、通信装置10aから送信されたフレームについて、ロス又は遅延増大の有無を判断し、当該ロス又は遅延増大が生じている場合、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を通信装置10aに送信する。
【0052】
ステップS18において、通信装置10aは、ステップS17で送信された通知を受信したことに応じて、第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを第2時間間隔より長い第3時間間隔で通信装置10aに入力するように設定する。すなわち、通信装置10aは、上記通知の受信に応じて、最短フレーム入力間隔として、第2時間間隔より長い第3時間間隔を設定する。その後、通信装置10aは、設定された第3時間間隔よりも間隔が短くならないように、通信装置10aへのフレーム入力間隔を制御する。その後、設定された第3時間間隔に基づいて、ステップS14からS17までと同様の処理が行われる。
【0053】
すなわち、本実施形態において、通信装置10aから送信されたフレームについて、通信装置10aでフレームのロス又は遅延増大が生じなくなるまで(又はフレームのロスの発生率又は遅延増大時間が許容値になるまで)、ステップS12からS16と同様の処理が行われる。
【0054】
以上のように本実施形態によれば、通信装置10bにおいてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、送信される複数のフレームのそれぞれを第1時間間隔より長い第2時間間隔で通信装置10aに入力するように設定する。その結果、フレームのロス又は遅延増大が発生しない(又は許容値)となるように、フレーム入力間隔を最適化することができる。すなわち、本実施形態によれば、より最適な方法で通信品質を保証することが可能である。
【0055】
図5を参照して説明した処理において、通信装置10aへのフレームの入力は、通信装置10aにより制御されるが、上述のとおり、通信装置10aへのフレームの入力は、通信装置10aとは別の外部装置(制御装置)により制御されてもよい。
【0056】
この場合において、通信システム1は、例えば、通信装置10a(送信装置)と、通信装置10b(受信装置)と、制御装置とを備える。制御装置のプロセッサの制御により、例えば、次の処理ステップが実行されてもよい。
【0057】
すなわち、まず、制御装置は、通信装置10aによる複数のデータの予め設定された優先度に応じた通信装置10bへの送信のために、当該複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で通信装置10aに入力されるように制御する。
【0058】
制御装置又は通信装置10bは、通信装置10aから送信され通信装置10bで受信した複数のデータについて、通信装置10bにおけるフレームのロス又は遅延増大の有無を判定する。当該判定の結果、フレームのロス又は遅延増大が生じている場合において、制御装置又は通信装置10bは、上記ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を通信装置10aに送信する(通信装置10bから通知が送信された場合は、制御装置に当該通知を送信してもよい。)。
【0059】
制御装置又は通信装置10aが当該通知を受信したことに応じて、第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを第1時間間隔より長い第2時間間隔で通信装置10aに入力するように設定する。
【0060】
<変形例>
上記実施形態における通信装置10又は制御装置による機能を実装するためのコンピュータプログラムは、CD-ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
【0061】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素、条件等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 通信システム
10 通信装置

【要約】
【課題】より最適な方法で通信品質を保証することに関する技術を提供すること。
【解決手段】制御装置のプロセッサが、送信装置による複数のデータの予め設定された優先度に応じた受信装置への送信のために、前記複数のデータのうち、高優先度に設定された第1データに基づく複数のフレームのそれぞれが予め設定された第1時間間隔で前記送信装置に入力されるように制御することと、前記送信装置により送信された前記複数のデータについて、前記受信装置においてフレームのロス又は遅延増大が生じているときに、当該ロス又は遅延増大が生じていることを示す通知を受信することと、前記通知を受信したことに応じて、前記第1データに基づく複数のフレームのそれぞれを前記第1時間間隔より長い第2時間間隔で前記送信装置に入力するように設定することとを実行する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6