(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】ロール状積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 41/30 20060101AFI20230427BHJP
B65H 18/16 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B29C41/30
B65H18/16
(21)【出願番号】P 2022090191
(22)【出願日】2022-06-02
【審査請求日】2022-06-02
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】500471629
【氏名又は名称】台虹科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】尤 俊凱
(72)【発明者】
【氏名】邱 良維
(72)【発明者】
【氏名】許 家修
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-118345(JP,A)
【文献】特開2006-171688(JP,A)
【文献】特開2018-132542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 41/30
B65H 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状積層体の製造方法であって、
第1金属面及び前記第1金属面に対向する第2金属面とを有する金属箔と、前記金属箔の前記第2金属面上に位置する少なくとも1つのポリマー層とを含む、複合フィルムを提供することと、
複数の突起を有する第1キャリア面と、前記第1キャリア面に対向する第2キャリア面とを含むキャリアテープを提供することと、
前記第1金属面が前記第2キャリア面と面するように前記複合フィルムを前記キャリアテープ上に配置することと、
少なくとも1つの側部ストリップを前記複数の突起に対応させて前記キャリアテープ上に配置することと、
前記ロール状積層体を構成するため、少なくとも前記キャリアテープと、前記キャリアテープ上に配置された前記複合フィルムと、前記キャリアテープ上に配置された前記側部ストリップとを巻き取ることと
を含む、
ロール状積層体の製造方法。
【請求項2】
前記複数の突起が互いに分離している、
請求項1に記載のロール状積層体の製造方法。
【請求項3】
前記複数の突起が前記キャリアテープの幅方向における対向する両側に分布している、
請求項1に記載のロール状積層体の製造方法。
【請求項4】
前記キャリアテープと、前記キャリアテープ上に配置された前記複合フィルムと、前記キャリアテープ上に配置された前記側部ストリップとを巻き取った後に、ベーク工程を行うことを更に含み、前記ベーク工程において、ベークの気流方向が前記キャリアテープの幅方向に平行である、
請求項1に記載のロール状積層体の製造方法。
【請求項5】
前記ベーク工程において、ベークの最高温度が300℃以上であり、且つベークの時間が1時間以上である、
請求項4に記載のロール状積層体の製造方法。
【請求項6】
前記複合フィルムを前記キャリアテープ上に配置する過程において、前記複合フィルム又は前記キャリアテープに平行な搬送方向において、前記複合フィルム及び前記キャリアテープに張力を加えることを更に含み、
前記複合フィルムが前記キャリアテープ上に配置された後、前記第1金属面が前記第2キャリア面と直接接触している、
請求項4に記載のロール状積層体の製造方法。
【請求項7】
前記キャリアテープに加えられる張力と前記キャリアテープの断面積との関係が第1の比率を有し、前記複合フィルムに加えられる張力と前記金属箔の断面積との関係が第2の比率を有し、且つ前記第1の比率が前記第2の比率よりも小さい、
請求項6に記載のロール状積層体の製造方法。
【請求項8】
前記キャリアテープの材質が第1の線形熱膨張係数を有し、前記金属箔の材質が第2の線形熱膨張係数を有し、且つ前記第1の線形熱膨張係数と前記第2の線形熱膨張係数との比率が0.6~1.2の間であり、
且つ前記第1の比率と前記第2の比率との比率が0.01~0.18の間である、
請求項7に記載のロール状積層体の製造方法。
【請求項9】
前記第1の比率が0.006kg/mm
2~0.056kg/mm
2の間である、
請求項8に記載のロール状積層体の製造方法。
【請求項10】
前記第2の比率が0.309kg/mm
2~0.720kg/mm
2の間である、
請求項8に記載のロール状積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関するものであり、特にロール状積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル銅箔基板は、フレキシブル電子装置の材料の一つである。その製造方法は、ほとんどが先ずロールツーロール方式により銅箔及びその上にコーティングされたポリマー材料を巻き取ってロール状積層体を形成し、後続の工程を行うものである。その後、上述した積層体を適切なサイズに裁断する。
【0003】
しかし、上述したロール状積層体の製造過程において、対応するフィルム層及びシート材をロール状に巻き取って、オーブン内でベークしてポリマー材料を環化させる必要がある。通常、環化ステップには比較的長い時間を要し、ベーク過程において、接着性表面(通常は高分子ポリマー)が粘着する場合が度々ある。また、対応するフィルム層及びシート材がロール状に巻き取られた後、後続の工程を行うとき、内部応力の影響によりフィルム層及びシート材の局部がしわになるか、平坦度が不均等となる可能性がある。これらはいずれも後続の製品品質及び外観に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロール状積層体の製造過程において、内部応力の影響によりフィルム層及びシート材の局部のしわ又は平坦度の不均等が生じることを如何にして低減させるか、或いは製品品質及び外観を如何にして向上させるかが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、比較的好ましい工程品質を具えるロール状積層体の製造方法を提供する。また、構成されるロール状積層体は比較的好ましい品質及び/又は製品外観を具えることができる。
【0006】
本発明のロール状積層体の製造方法は、第1金属面及び第1金属面に対向する第2金属面を有する金属箔と、金属箔の第2金属膜上に位置するポリマー層とを含む、複合フィルムを提供することと、複数の突起を有する第1キャリア面と該第1キャリア面に対向する第2キャリア面とを有するキャリアテープを提供することと、第1金属面が第2キャリア面と面するようキャリアテープ上に複合フィルムを設けることと、側部ストリップを複数の突起に対応させてキャリアテープ上に設けることと、ロール状積層体を構成するため、少なくともキャリアテープと、その上に設けられた複合フィルムと、キャリアテープ上に側部ストリップとを巻き取ることとを含む。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、複数の突起は互いに分離している。
【0008】
本発明の1つの実施例において、複数の突起はキャリアテープの幅方向における対向する両側に分布している。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、ロール状積層体の製造方法は、キャリアテープと、キャリアテープ上に設けられた複合フィルムと、キャリアテープ上に設けられた側部ストリップとを巻き取った後に、ベーク工程を行うことを更に含み、ベーク工程において、気流をキャリアテープと複合フィルムとの間で流動させることができるよう、ベークの気流方向はキャリアテープの幅方向に基本的に平行である。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、ベーク工程において、ベークの最高温度は300℃以上であり、且つベークの時間は1時間以上である。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、ロール状積層体の製造方法は、複合フィルムをキャリアテープに配置する過程において、複合フィルム又はキャリアテープに平行な搬送方向において、複合フィルム及びキャリアテープに張力を加えることを更に含み、複合フィルムがキャリアテープ上に配置された後、第1金属面が第2キャリア面に直接接触している。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、キャリアテープに加えられる張力とキャリアテープの断面積との関係が第1の比率を有し、複合フィルムに加えられる張力と金属箔の断面積との関係が第2の比率を有し、且つ第1の比率が第2の比率よりも小さい。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、キャリアテープの材質が第1の線形熱膨張係数を有し、金属箔の材質が第2の線形熱膨張係数を有し、第1の線形熱膨張係数と第2の線形熱膨張係数との比率が0.6~1.2の間であり、且つ第1の比率と第2の比率との比率が0.01~0.18である。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、第1の比率は0.006kg/mm2~0.056kg/mm2の間である。
【0015】
本発明の1つの実施形態において、第2の比率は0.309kg/mm2~0.720kg/mm2の間である。
【発明の効果】
【0016】
上記に基づき、本発明のロール状積層体の製造方法は、比較的好ましい工程品質を具えることができ、構成されるロール状積層体は比較的好ましい品質及び/又は製品外観を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態によるロール状積層体の製造方法の一部の部分的概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の1つの実施形態によるロール状積層体の製造方法の一部の部分的概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施形態によるロール状積層体の製造方法の一部の部分的概略側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の1つの実施形態によるロール状積層体の製造方法の一部の部分的概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面において、明瞭化するために一部の構成部品、ユニット、及び/又は部材の大きさを拡大又は縮小している場合がある。また、明確に表すために図面において一部の構成部品、ユニット、及び/又は部材を省略している場合がある。また、明細書において表す数値は、述べられた数値及び当業者が受け入れ可能な偏差範囲内の偏差の値を含むことができる。
【0019】
このほか、「上」又は「下」といった相対用語は、本明細書中において図に示すような1つの部材ともう1つの部材との間の関係を記述するために用いられる。相対用語は、図に示した方位以外の異なる方位も含むことを理解すべきである。例えば、1つの添付図面中の装置を回転させた場合、他の部材の「下」側と記述された部材は、他の部材の「上」側を向くこととなる。このため、例示した用語「下」は、「下」と「上」の方向を含み、添付図面の特定の方向に応じて決まる。同様に、1つの添付図面中の装置を回転させた場合、他の部材の「下方」と記述された部材は、他の部材の「上方」を向くこととなる。
【0020】
本明細書において使用される「基本的に」、「約」は、述べられた数値及び当業者が受け入れ可能な偏差範囲内の平均値を含んでよく、「約前記値」のかたちで表すことができ、或いは直接「前記値」で表される。また、論じられる測定量と測定量に関連する誤差の特定の数値(即ち、測定システムの制限)を考慮に入れている。
【0021】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。更に、一般的に使用される辞書で定義されている用語は、関連技術及び本発明の文脈におけるそれらの含意と一致する含意を有すると解釈され、本明細書中でそのように明示的に定義されていない限り、理想化した又は過度に正式な意味として解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0022】
本実施形態のロール状積層体の製造方法において、一部の工程はロールツーロール装置800により行われてよい。
【0023】
図1を例として、供給ローラ812により金属箔112が提供されてよい。金属箔112は、第1金属面112aと、第1金属面112aに対向する第2金属面112bとを有してよい。金属箔112は例えば銅箔であるが、本発明はこれに限定されない。銅の線形熱膨張係数(CLTE)は約16.5~16.7ppm/℃である。
【0024】
続けて
図1を参照し、金属箔112の第2金属面112b上にはポリマー層111が形成されてよい。
【0025】
1つの実施形態において、コーティング装置880によりコーティング方式でポリマー材料118を金属箔112の第2金属面112b上にコーティングしてよい。ポリマー材料118は、ポリイミド(PI、例えば熱可塑性ポリイミド又は熱硬化性ポリイミド)、液晶ポリマー(LCP)、又は他の適切なポリマーを含んでよく、且つ上述したポリマーは対応する溶剤に溶解している。
【0026】
1つの実施形態において、ポリマー材料118が金属箔112の第2金属面112b上にコーティングされた後、適切な方式(例えば、加熱又は他の適切な予備硬化工程)にて対応するポリマー層111を形成してよい。
【0027】
例を挙げると、複合フィルム110の搬送方向に沿って、コーティング装置880と押圧ローラ840との間に加熱区域を有してよい。加熱区域において、対応する加熱装置(例えば、オーブン又はヒートランプ。未図示)により金属箔112の第2金属面112bにコーティングされたポリマー材料118を加熱する予備硬化を行ってよい。
【0028】
また例を挙げると、押圧ローラ840は熱電対に熱結合されてよく、加熱機能を具えてよい。
【0029】
1つの実施形態において、ポリマー層111は単一のフィルム層であってよいが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
1つの実施形態において、ポリマー層111は同一又は異なる種類の複数のフィルム層の積層であってよい。例を挙げると、複数回のコーティング及び/又は対応する予備硬化工程により、複数のフィルム層を積層してなるポリマー層111を形成してよい。
【0031】
1つの実施形態において、幅方向D1にて、ポリマー層111の幅111wは金属箔112の幅に類似又は同一であってよい。例を挙げると、ポリマー層111の幅は、金属箔112の幅の約95%~100%であってよい。
【0032】
続けて
図1を参照し、供給ローラ820によりキャリアテープ120を提供してよい。後続の工程(例えば加熱工程)及び搭載性の考慮に基づき、キャリアテープ120は金属テープであってよい。
【0033】
本実施例において、キャリアテープ120は例えばスチールテープであってよいが、本発明はこれに限定されない。スチールテープの材質は、一般的によく見られる又はよく用いられるスチール材を含んでよい(例えば、201スチール材、204スチール材、304スチール材、316スチール材、又は430スチール材であるが、これらに限定されない)。一般的によく見られる又はよく用いられるスチール材の線形熱膨張係数は約10.5~16.0ppm/℃である。不変鋼(例えば、インバー36合金)と比較し、上述した一般的によく見られる又はよく用いられるスチール材は比較的安価である。
【0034】
本実施例において、キャリアテープ120は、第1キャリア面120aと、第1キャリア面120aに対向する第2キャリア面120bとを有する。キャリアテープ120の第1キャリア面120a上には複数の突起123を有する。例を挙げると、プレス型押しによりキャリアテープ120の第1キャリア面120a上に複数の突起123を形成してよい。1つの実施形態において、複数の突起123は互いに分離している、及び/又は、複数の突起123はキャリアテープ120の幅方向D1における対向する両側に分布している。
【0035】
また、本発明は突起123の外形に制限を加えない。例を挙げると、
図3又は
図4に示すように、突起123の外形は円錐に類似してよい。図示しない1つの実施形態において、突起123の外形は柱状又は錐台に類似してよい。
【0036】
また、明確に表すため、図面では全ての突起123を一つ一つ示していない。
【0037】
続けて
図1を参照し、金属箔112の第1金属面112aがキャリアテープ120の第2キャリア面120bに面するよう、複合フィルム110をキャリアテープ120上に配置する。例を挙げると、供給ローラ812と押圧ローラ840との間の相対位置の調整及び供給ローラ820と押圧ローラ840との間の相対位置の調整により、金属箔112の第1金属面112aをキャリアテープ120の第2キャリア面120bに接触させ且つ貼り付けてよい。
【0038】
1つの実施形態において、キャリアテープ120の厚さ120hは複合フィルム110の厚さ110hよりも厚くてよい。このようにして、キャリアテープ120に比較的好ましい搭載性を持たせることができる。
【0039】
1つの実施形態において、供給ローラ812と押圧ローラ840との間の相対回転速度の調整により、複合フィルム110にその搬送方向において対応する張力を加えてよい。例を挙げると、供給ローラ812の回転速度は押圧ローラ840の回転速度よりも遅くてよい。
【0040】
図示しない1つの実施形態において、複合フィルム110の搬送方向に沿って、供給ローラ812と押圧ローラ840との間には張力調整ホイール(未図示)を有してよい。張力調整ホイールは複合フィルム110の搬送に適してよく、且つ張力調整ホイールと押圧ローラ840との間の相対回転速度の調整及び/又は張力調整ホイールと押圧ローラ840との間の相対位置の調整により、複合フィルム110にその搬送方向において対応する張力を加えてよい。
【0041】
1つの実施形態において、供給ローラ820と押圧ローラ840との間の相対回転速度の調整により、、複合フィルム110にその搬送方向において対応する張力を加えてよい。例を挙げると、供給ローラ820の回転速度は押圧ローラ840の回転速度よりも遅くてよい。
【0042】
図示しない1つの実施形態において、キャリアテープ120の搬送方向に沿って、供給ローラ820と押圧ローラ840との間には張力調整ホイール(未図示)を有してよい。張力調整ホイールはキャリアテープ120の搬送に適してよく、且つ張力調整ホイールと押圧ローラ840との間の相対回転速度の調整及び/又は張力調整ホイールと押圧ローラ840との間の相対位置の調整により、キャリアテープ120にその搬送方向において対応する張力を加えてよい。
【0043】
本実施形態において、幅方向D1において、複合フィルム110の幅(例えば、金属箔112の幅112wにより定まる)はキャリアテープ120の幅120wよりも狭くてよい。例を挙げると、金属箔112の幅112wはキャリアテープ120の幅120wの約85%~95%であってよい。
【0044】
本実施形態において、複合フィルム110をキャリアテープ120上に配置した後、キャリアテープ120の幅方向D1及び/又は厚さ方向(例えば、厚さ120hの方向に対応)において、複合フィルム110はいずれの突起123とも重ならない。
【0045】
本実施形態において、複合フィルム110を配置するのに適したキャリアテープ120上の箇所において、基本的に如何なる孔も有していない。具体的には、複合フィルム110をキャリアテープ120上に配置した後、キャリアテープ120の幅方向D1において、複合フィルム110の両側又は複合フィルム110が配置された箇所に位置するキャリアテープ120は、基本的に如何なる孔も有していない。金属テープを例とすると、広い分布範囲に孔及び/又は多数の孔が形成される場合、ほとんどがスタンピング工程により形成される。しかし、孔を有する金属テープ上に他のフィルム層(例えば、上述したものと同一又は類似の複合フィルム110)を配置する場合、上述したスタンピング工程で形成された欠陥(例えば、バリ、波模様または亀裂模様)がその上に配置されるフィルム層に損傷又は破損をもたらす可能性がある。
【0046】
本実施形態において、キャリアテープ120に加えられる張力とキャリアテープ120の断面積(約、厚さ120h×幅120w)との関係が第1の比率(即ち、キャリアテープ120に加えられる張力÷キャリアテープ120の断面積)を有し、複合フィルム110に加えられる張力と金属箔112の断面積(約、厚さ112h×幅112w)との関係が第2の比率(即ち、複合フィルム110に加えられる張力÷金属箔112の断面積)を有し、且つ第1の比率が第2の比率よりも小さい。1つの実施形態において、キャリアテープ120の材質は第1の線形熱膨張係数を有し、金属箔112の材質は第2の線形熱膨張係数を有し、第1の線形熱膨張係数と第2の線形熱膨張係数との比率(即ち、第1の線形熱膨張係数/第2の線形熱膨張係数)が0.6~1.2の間であり、且つ第1の比率と第2の比率との比率(即ち、第1の比率/第2の比率)が0.01~0.18の間である。このようにして、後続の加熱工程において、形成されるロール状積層体の品質を向上させることができる。
【0047】
1つの実施形態において、第1の比率は0.006kg/mm2~0.056kg/mm2の間であってよく、且つ/或いは、第2の比率は0.309kg/mm2~0.720kg/mm2の間であってよい。
【0048】
続けて
図1を参照し、供給ローラ830により側部ストリップ130が提供される。側部ストリップ130はキャリアテープ120上に配置されてよく、且つキャリアテープ120の厚さ方向において、側部ストリップ30は複数の突起123と重なる。側部ストリップ130の材質は、一般的によく見られる又はよく用いられるスチール材であってよい。側部ストリップ130の厚さ130hは複合フィルム110の厚さ110hよりも厚い。
【0049】
続けて
図1を参照し、キャリアテープ120と、キャリアテープ120上に配置された複合フィルム110と、キャリアテープ120上に配置された側部ストリップ130とが巻き取られ、ロール状積層中間体109を構成する。
【0050】
注意すべきこととして、
図1に図示した実施形態において、先ず複合フィルム110をキャリアテープ120上に配置し、それから側部ストリップ130をキャリアテープ120上に配置しているが、本発明はこれに限定されない。図示しない1つの実施形態において、先ず側部ストリップ130をキャリアテープ120上に配置し、それから複合フィルム110をキャリアテープ120上に配置してよい。
【0051】
注意すべきこととして、
図1に図示した実施形態において、側部ストリップ130がキャリアテープ120上の複数の突起123に先ず接触するが、本発明はこれに限定されない。
図3又は
図4に示すように、ロール状積層中間体109において、側部ストリップ130の内側が一層内側のキャリアテープ120上の複数の突起123に接触していればよく、且つ側部ストリップ130の外側が一層外側のキャリアテープ120の第2キャリア面120bに接触していればよい。
【0052】
図2を参照し、ベーク工程を行うため、ロール状積層中間体109をオーブン980内に置いてよい。ロール状積層中間体109をオーブンに置く前に、対応する裁断、固定、搬送、又は他の仕上工程は、一般的によく用いられるロールツーロール工程に見られ、ここでは繰り返し述べない。上述したベーク工程により、溶剤を揮発させる、及び/又は、ポリマー材料を重合又は硬化させることができる。
【0053】
上述したベーク工程において、ベークの最高温度は300℃以上であり、且つベークの時間は1時間以上である。
【0054】
上述したベーク工程において、気流ガイド装置990により、ベークに用いられる熱気の気流方向D2は基本的にキャリアテープ120の幅方向D1に平行とすることができ、且つ熱気が複合フィルム110とキャリアテープ120との間を流動することができる。
【0055】
本実施形態において、キャリアテープ120の突起123及び突起123に対応して配置された側部ストリップ130により、完全に重合又は硬化していないポリマー材料がキャリアテープ120の第1キャリア面120aに付着する可能性を低減することができる。更に、側部ストリップ130の厚さ130hが複合フィルム110の厚さ110hよりも厚いことにより、巻き取られて重ねられたときに、ロール状積層中間体109のキャリアテープ120の間に空隙を有することができ、このため巻き取られたキャリアテープ120の間に熱気の気流を更に容易に流動させることもできる。このようにして、溶剤を更に容易に揮発させる、及び/又は、ポリマー材料の重合又は硬化の品質を向上させることができる。
【0056】
例を挙げると、オーブン980は対応する気体流入孔及び気体流出孔を有してよく、且つ気流ガイド装置990がオーブン980内に設けられてよい。気流ガイド装置990は、通気孔992を有する板状体991及び通気孔992に対応する気流ガイド壁993であってよい。ロール状積層中間体109は通気孔992に対応して置かれてよく、且つ幅方向D1を気流ガイド壁993の延伸方向及び/又は板状体991の表面の法線方向に基本的に平行にする。このようにして、オーブン980内の気流において、通気孔992に対応する一部の気流F1は通気孔992を通過することができ、通気孔992に対応する他の一部の気流F3は板状体991により阻まれる。また、気流ガイド壁993のガイド方向は、通気孔992を通過した気流F2の気流方向D2をキャリアテープ120の幅方向D1と基本的に平行にさせることができる。このようにして、複合フィルム110とキャリアテープ120との間を流動する気流の方向性を略一致させることができ、溶剤の揮発及び/又はポリマー材料の重合又は硬化の効率又は効果を向上させることができる。
【0057】
注意すべきこととして、
図2において、各気流の方向は例示的に図示しているにすぎない。つまり、気流の方向は当業者が対応する装置及び配置状態に基づき理解できるものであり、また
図2の例示的な図示及びそれに対応する内容の基礎から均等に理解又は実施可能である。
【0058】
本実施形態において、ロール状積層中間体109を形成する過程において、既に予めキャリアテープ120及び複合フィルム110のそれぞれに、対応する張力を加えている。このようにして、上述したベーク工程の進行中において、材質膨張による内部応力の影響を低減することができ、比較的好ましい工程品質を具えることができる。
【0059】
ロール状積層中間体109は上述したベーク工程の後、既に概ね対応するロール状積層体を形成可能である。ロール状積層体の外観又は外形はロール状積層中間体109に類似してよく、故に再度図示しない。
【0060】
1つの実施形態において、ロール状積層体中のキャリアテープ120と複合フィルム110(金属箔112と硬化後のポリマー層111とを含む)を互いに分離させてよい。また、上述した複合フィルム110に適切な裁断を行った後、適切なサイズのフレキシブル銅箔基板を形成することができる。
【0061】
[実施例と比較例]
【0062】
以下に実施例と比較例を表し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されない。
【0063】
各実施例及び比較例は上述した方式で対応するロール状積層体を形成したと考えてよい。
【0064】
各実施例及び比較例において、使用した金属箔は銅箔であり、銅箔の幅は約540mmであり、銅箔の厚さは約12~18μmである。
【0065】
各実施例及び比較例において、銅箔上に形成されたポリマー層の幅は約535mmであり、ポリマー層の厚さは約12~50μmである。ポリマー層の材質はポリイミドを含んでよい。
【0066】
各実施例及び比較例において、使用したキャリアテープはスチールテープであり、スチールテープの幅は約600mmであり、スチールテープの厚さは[表1]に示すとおりである。スチールテープ上に形成された突起は、その高さがスチールテープの厚さの約2倍である。
【0067】
各実施例及び比較例において、対応する製造パラメータ及び対応して形成されたロール状積層体の結果は[表1]に示すとおりである。
【0068】
各対応するロール状積層体に対する評価方式において、以下に列記する方式で対応する評価を行うことができる。
【0069】
工程品質:ロール状積層体に対し約200mm×250mmの範囲でランダムにサンプル抽出を行い、粘着した面積の比率を大まかに概算した。
【0070】
試験片引張り試験:約200mm×250mmの完成品試験片を取得し、ASTM D3039/D3039M標準(高分子マトリックス複合材の引張り特性の標準試験方法)に基づき、一般的な万能試験機で完成品試験片に対し、引張り強度、伸び率、及びヤング率を直接的に又は間接的に試験して評価した。
【0071】
試験片の外観品質:一般的によく用いられる方法(例えば、赤外線特性ピークスペクトル比較)、ポリマー層(例えば、ポリイミド)のイミド化率に対し定量的測定を行うことができる。一般的に、イミド化率が70%よりも高い場合、ポリマー層フィルム層の外観は肉眼による観察において受け入れられる範囲内の色収差の程度である。
【0072】
【0073】
[表1]に示したように、本発明のロール状積層体の製造方法により、その製造過程において、比較的低い粘着比率を有することができ、また比較的好ましい工程品質を具えることができる。
【0074】
[表1]に示したように、本発明のロール状積層体の製造方法により、構成されたロール状積層体は比較的好ましい品質(例えば、比較的好ましい引張り強度、伸び率、及び/又はヤング率)を有することができる。
【0075】
[表1]に示したように、本発明のロール状積層体の製造方法により、構成されたロール状積層体は比較的好ましい外観(例えば、比較的低い色収差程度)を有することができる。
【0076】
[表1]に示したように、実施例1と比較例1から分かるように、スチールテープと合わせてベークすると、ロール状積層体に空隙を有させ、フィルム材のイミド化率を僅かに向上させることができる。
【0077】
[表1]に示したように、実施例2~実施例6から分かるように、スチールテープと材料の張力を高めて、側部ストリップの厚さを増加させると、ロール状積層体の層間の間隙が増加し、フィルム材の粘着比率を効果的に減少させることができ、フィルム材のイミド化率が徐々に向上する。
【0078】
[表1]に示したように、実施例7~実施例10から分かるように、材料張力が一定の範囲内にあると、その張力は材料がベーク時に熱膨張により粘着する状況を解消するのに十分であり、このためフィルム材のイミド化率が顕著に向上し、粘着比率が大幅に改善される。
【0079】
[表1]に示したように、実施例11から分かるように、材料張力が過度に大きいと、フィルム材にしわが生じ、粘着をまねく。
【0080】
上記をまとめると、本発明のロール状積層体の製造方法により、比較的好ましい工程品質を具えることができ、且つ構成されるロール状積層体は比較的好ましい品質及び/又は外観を有することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のロール状積層体の製造方法は、対応するロール状積層体を構成することができる。ロール状積層体は、対応するステップにより適切なサイズのフレキシブル銅箔基板を形成することができる。フレキシブル銅箔基板はフレキシブル電子装置を製造するための材料の1つである。
【符号の説明】
【0082】
109:ロール状積層中間体
110:複合フィルム
110h、112h、120h、130h:厚さ
111:ポリマー層
111w、112w、120w:幅
112:金属箔
112a:第1金属面
112b:第2金属面
118:ポリマー材料
120:キャリアテープ
120a:第1キャリア面
120b:第2キャリア面
123:突起
130:側部ストリップ
800:ロールツーロール装置
812、820、830、840、890:ローラ
880:コーティング装置
980:オーブン
990:気流ガイド装置
991:板状体
992:通気孔
993:気流ガイド壁
D1:幅方向
D2:気流方向
F1、F2、F3:気流
【要約】 (修正有)
【課題】製造過程におけるロール状積層体のしわの発生を低減する、ロール状積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1金属面112a及び第1金属面に対向する第2金属面112bを有する金属箔112と、第2金属面上に位置するポリマー層111とを含む複合フィルム110を提供することと、複数の突起を有する第1キャリア面120aと、第1キャリア面に対向する第2キャリア面120bとを有するキャリアテープ120を提供することと、第1金属面が第2キャリア面と面するようキャリアテープ上に複合フィルムを設けることと、側部ストリップ130を複数の突起123に対応させてキャリアテープ上に設けることと、ロール状積層体を構成するため、少なくともキャリアテープと、その上に設けられた複合フィルムと、側部ストリップとを巻き取ることとを含む。
【選択図】
図1