(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】描煙装置
(51)【国際特許分類】
B44C 1/00 20060101AFI20230427BHJP
B44F 1/06 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B44C1/00
B44F1/06
(21)【出願番号】P 2023005350
(22)【出願日】2023-01-17
【審査請求日】2023-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523020095
【氏名又は名称】森 勇貴
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 勇貴
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-247167(JP,A)
【文献】登録実用新案第3237867(JP,U)
【文献】登録実用新案第3159349(JP,U)
【文献】特開2016-154831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/00
B44F 1/06
A47G 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙を循環させて不規則な模様を描かせる描煙装置であって、
燃焼により煙を発生させる煙発生部材を載置し、煙を通過させる通過孔が形成された載置部材と、
前記載置部材の上部に配置され、前記煙発生部材で発生して上昇した前記煙を内部で受け止める第1容器と、
前記載置部材の下部に配置され、前記第1容器で受け止められ前記載置部材の前記通過孔を介して下降した前記煙を内部で循環させることで前記煙に不規則な模様を描かせる、透光性を備えた第2容器と、
を有することを特徴とする描煙装置。
【請求項2】
前記第1容器の下端と前記第2容器の上端との間に、外気を取り入れるための外気取入口を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の描煙装置。
【請求項3】
前記第1容器は下端部に第1開口を有しており、
前記第2容器は上端部に第2開口を有しており、
前記第1開口と前記第2開口の大きさ又は形状を異ならせることで前記外気取入口が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の描煙装置。
【請求項4】
前記第2容器の下端に設けられ、前記第2容器の内部に光を照射する照明装置をさらに有する
ことを特徴とする請求項3に記載の描煙装置。
【請求項5】
前記第1容器及び前記第2容器は、ガラス製の容器である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の描煙装置。
【請求項6】
前記載置部材は、金網であり、燃焼により前記煙を発生させるお香が載置される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の描煙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙を循環させて不規則な模様を描かせることで、煙の流れを視覚的に楽しむことを可能とする描煙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、線香やお香を使用した装飾品が知られている。例えば特許文献1には、線香やお香をガラス製などの透光性容器中で使用することで、外部から視認可能な発光性装飾品とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は、線香やお香の発光を利用して装飾品とするものであるが、線香やお香から発生する煙を視覚的に楽しむことはできなかった。
【0005】
本発明の目的は、簡易な構造で煙を循環させて不規則な模様を描かせることで、煙の流れを視覚的に楽しむことができる描煙装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明の描煙装置は、煙を循環させて不規則な模様を描かせる描煙装置であって、燃焼により煙を発生させる煙発生部材を載置し、煙を通過させる通過孔が形成された載置部材と、前記載置部材の上部に配置され、前記煙発生部材で発生して上昇した前記煙を内部で受け止める第1容器と、前記載置部材の下部に配置され、前記第1容器で受け止められ前記載置部材の前記通過孔を介して下降した前記煙を内部で循環させることで前記煙に不規則な模様を描かせる、透光性を備えた第2容器と、を有する。
【0007】
本発明の描煙装置は、載置部材と、第1容器と、第2容器と、を有する。載置部材に載置された煙発生部材が燃焼により煙を発生させると、煙は熱により上昇して第1容器の内部で受け止められる。第1容器の内部で温度が低下した煙は下降して載置部材の通過孔を通過し、第2容器内に流入する。第2容器に流入した煙は第2容器の内部に閉じ込められて循環しながら不規則な模様を描く。第2容器は透光性を有するので、第2容器の内部で循環する煙の流れを視覚的に楽しむことができる。また、第2容器の上に載置部材を設置し、載置部材の上に第1容器を設置した簡易な構造で、煙を循環させて不規則な模様を描かせる描煙構造を実現できる。
【0008】
また、本願発明の描煙装置は、前記第1容器の下端と前記第2容器の上端との間に、外気を取り入れるための外気取入口を有する。これにより、煙発生部材に酸素を供給して燃焼を継続させ、継続的に煙を発生させることができる。
【0009】
また、本願発明の描煙装置では、前記第1容器は下端部に第1開口を有しており、前記第2容器は上端部に第2開口を有しており、前記第1開口と前記第2開口の大きさ又は形状を異ならせることで前記外気取入口が形成されている。これにより、例えば第1容器又は第2容器に外気取入用の開口を新たに形成することなく、簡易な構造で外気取入口を形成できる。
【0010】
また、本願発明の描煙装置は、前記第2容器の下端に設けられ、前記第2容器の内部に光を照射する照明装置をさらに有する。これにより、第2容器の内部で循環する煙を発光させて、煙の流れをより美しく見せることができる。したがって、描煙装置を発光性の装飾品として使用できる。
【0011】
また、本願発明の描煙装置では、前記第1容器及び前記第2容器は、ガラス製の容器である。第1容器は高温の煙を受け止めるので耐熱性を有することが好ましい。本発明では、第1容器を例えば耐熱ガラス製とすることで耐熱性を確保でき、装置の安全性を高めることができる。また、第2容器には温度が低下した煙が流入するので耐熱性は必要ないが、煙の流れを外部から視認できるように透光性を有することが好ましい。本発明では、第2容器をガラス製とすることで高い透光性を確保でき、煙の流れを美しく見せることができる。
【0012】
また、本願発明の描煙装置では、前記載置部材は、金網であり、燃焼により前記煙を発生させるお香が載置される。載置部材は、燃焼する煙発生部材が載置されるため、高い耐熱性を有することが好ましい。その上で、煙を通過させる通過孔が形成されている必要がある。本発明では、載置部材を金網とすることで、高い耐熱性を確保できると共に、煙を自由に通過させることが可能となり、簡易な構造で描煙装置を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構造で煙を循環させて不規則な模様を描かせることで、煙の流れを視覚的に楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る描煙装置の全体構造の一例を表す斜視図である。
【
図2】外気取入口の一例を表す描煙装置を下から見た図である。
【
図3】煙発生部材の燃焼の進み具合が初期である場合の、描煙装置における煙の流れの一例を表す説明図である。
【
図4】煙発生部材の燃焼の進み具合が中程度である場合の、描煙装置における煙の流れの一例を表す説明図である。
【
図5】煙発生部材の燃焼の進み具合が終わりに近い場合の、描煙装置における煙の流れの一例を表す説明図である。
【
図6】下側容器の内部に光を照射する照明装置を設置した場合の、描煙装置の全体構造の一例を表す斜視図である。
【
図7】上側容器の開口が下側容器の開口よりも小さい場合の、描煙装置の全体構造の一例を表す斜視図である。
【
図8】載置部材と上側容器との間にスペーサを設ける場合の、描煙装置の全体構造の一例を表す斜視図である。
【
図9】煙発生部材を載置部材に対して傾斜して載置する場合の、描煙装置の全体構造の一例を表す斜視図である。
【
図10】煙発生部材を載置部材に対して略平行に浮かせて載置する場合の、描煙装置の全体構造の一例を表す斜視図である。
【
図11】煙発生部材を載置部材に対して略垂直に立たせて載置する場合の、描煙装置の全体構造の一例を表す斜視図である。
【
図12】本願発明者が制作した描煙装置による煙の流れの一例を表す画像である。
【
図13】本願発明者が制作した描煙装置による煙の流れの一例を表す画像である。
【
図14】本願発明者が制作した描煙装置による煙の流れの一例を表す画像である。
【
図15】本願発明者が制作した描煙装置による煙の流れの一例を表す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば下記の各構成要素を均等なものに置換した実施形態を採用することができ、それらについても本発明の技術的範囲に含まれる。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするため、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略又は簡略化する。
【0016】
<描煙装置の構造例>
図1は、本実施形態の描煙装置の全体構造の一例を表す斜視図である。
図2は、外気取入口の一例を表す描煙装置を下から見た図である。なお、
図2では載置部材の図示を省略している。
【0017】
本実施形態に係る描煙装置1は、煙を循環させて不規則な模様を描かせることで、煙の流れを視覚的に楽しむことを可能とする装置である。
図1に示すように、描煙装置1は、載置部材3と、上側容器5と、下側容器7と、を有する。
【0018】
載置部材3には、燃焼により煙を発生させる煙発生部材9が載置される。本実施形態では、煙発生部材9として例えば線香を使用する。煙発生部材9は、載置部材3上に横向きに載置される。なお、煙発生部材9は燃焼により煙を発生させることが可能であれば、線香以外のものを使用してもよい。例えば、燃焼により煙を発生させる線香以外のお香(渦巻型、円錐型等)、たばこ、線香花火、火をつけた紙縒り等でもよい。
【0019】
載置部材3には、煙を通過させるための多数の通過孔3aが形成されている。本実施形態では、載置部材3として例えば金網を使用する。なお、載置部材3は、耐熱性を有し、煙を通過させるための通過孔が形成されているものであれば、金網以外のものを使用してもよい。例えば複数の貫通穴が形成された陶器製又は金属製の皿等でもよい。
【0020】
上側容器5(第1容器の一例)は、載置部材3の上部に配置されている。上側容器5は、上端部が閉塞され、且つ、下端部に開口5a(第1開口の一例)を有しており、煙発生部材9に被せるように配置されることで、煙発生部材9で発生して上昇した煙を内部で受け止める。煙発生部材9により受け止められた煙は煙発生部材9の内部で滞留し、温度が下がると下降する。本実施形態では、上側容器5として例えば有底の四角筒形状の耐熱ガラス製の容器を使用する。なお、上側容器5は、耐熱性を有し、煙発生部材9で発生した煙を内部で受け止めることが可能であれば、四角筒形状の耐熱ガラス容器以外のものを使用してもよい。例えば、上側容器5の形状は四角筒形状に限らず、球、円筒、円錐、角錐等の形状でもよい。また、上側容器5の材質は耐熱ガラス製に限らず、例えば陶器製又は金属製の容器等でもよい。すなわち、上側容器5は、煙発生部材9で発生して上昇した高温の煙を受け止めて温度を下げるための容器であるため、必ずしも透明でなくともよい。
【0021】
下側容器7(第2容器の一例)は、載置部材3の下部に配置されている。下側容器7は、下端部が閉塞され、且つ、上端部に開口7a(第2開口の一例)を有しており、上側容器5で受け止められ載置部材3の通過孔3aを介して下降した煙を閉じ込めて内部で循環させることで、煙に不規則な模様を描かせる。なお、開口7aの大きさ(直径)は煙発生部材9の長手方向寸法と同等程度であることが好ましい。本実施形態では、下側容器7として例えば有底の円筒形状のガラス製の容器を使用する。下側容器7のガラスは耐熱性を有してもよいし、有していなくともよい。なお、下側容器7は、透光性を備え、外部から内部の煙の流れを視認することが可能であれば、円筒形状のガラス容器以外のものを使用してもよい。例えば、下側容器7の形状は円筒形状に限らず、球、角筒、台形等の形状でもよい。また、下側容器7の材質はガラス製に限らず、例えばアクリル製又は透明プラスチック製の容器等でもよい。すなわち、下側容器7は、上側容器5で温度が下がり下降した煙を内部で循環させて外部に見せるための容器であるため、透明であれば必ずしも耐熱性を有していなくともよい。
【0022】
なお、載置部材3と、上側容器5と、下側容器7とは、互いに固定せずに単に上に置くだけの構成としてもよいし、例えば接着剤やねじ等の固定具を使用して、各部品を互いに固定した構成としてもよい。また、上側容器5と下側容器7を一体的な容器として形成し、中間部に載置部材3を挿入した構成としてもよい。さらには、上側容器5と下側容器7と載置部材3の全部を一体的に形成してもよい。
【0023】
描煙装置1は、上側容器5の下端と下側容器7の上端との間に、外気を取り入れるための外気取入口11を有する。外気取入口11から外気を取り入れることで、煙発生部材9に酸素を供給して燃焼を継続させ、継続的に煙を発生させることができる。外気取入口11は、上側容器5の下端部の開口5aと下側容器7の上端部の開口7aの大きさ又は形状を異ならせることで形成されている。具体的には、
図2に示すように、上側容器5の下端部の開口5aが比較的大きな四角形状の開口であり、下側容器7の上端部の開口7aが比較的小さな円形の開口であるため、開口5aと開口7aの外周との間に外気取入口11としての隙間が形成されている。なお、
図2では外気取入口11となる隙間をグレーで図示している。
【0024】
なお、本実施形態では開口5aと開口7aの大きさと形状の両方を異ならせることで外気取入口11を形成したが、どちらか一方のみ、例えば大きさ(直径と辺の長さ)を同じにして形状のみを異ならせたり、例えば形状を同じにして大きさ(直径又は辺の長さ)のみを異ならせることで、外気取入口11を形成してもよい。
【0025】
<煙の流れの例>
図3~
図5は、描煙装置1における煙の流れの一例を表す説明図である。この例では、煙発生部材9は、燃焼が進むにつれて煙を発生させる燃焼部9aが一方側の端部から他方側の端部に向けて移動する。
図3は煙発生部材9の燃焼の進み具合が初期である場合、
図4は煙発生部材9の燃焼の進み具合が中程度である場合、
図5は煙発生部材9の燃焼の進み具合が終わりに近い場合の煙の流れを表している。
【0026】
図3に示すように、煙発生部材9の燃焼の進み具合が初期である場合、燃焼部9aは煙発生部材9の長手方向寸法における一方側(
図3中左側)に位置する。
図3(a)に示すように、煙発生部材9の燃焼部9aから発生した煙は、燃焼の熱により上側容器5の内部において上昇する。次に、
図3(b)に示すように、上昇した煙は上側容器5の上部で受け止められ、横方向に向きを変えて流れる。
図3(b)に示す例では、例えば左側(煙発生部材9の長手方向において燃焼部9aが位置する側)から右側に向けて流れる。次に、
図3(c)に示すように、上側容器5の内部において煙が横方向に流れて滞留している間に温度が低下すると、煙は上側容器5の右側(煙発生部材9の長手方向において燃焼部9aが位置する側とは反対側)の壁部に沿って下降する。次に、
図3(d)に示すように、煙の一部は外気取入口11から外部に放出され、残りの大部分は載置部材3の通過孔3aを介して下側容器7に流入する。
【0027】
次に、
図3(e)に示すように、下側容器7の内部において、下側容器7の右側の壁部に沿って下降した煙は下側容器7の底部に突き当たり、横方向に向きを変えて流れる。
図3(e)に示す例では、例えば右側から左側に向けて流れる。次に、
図3(f)に示すように、下側容器7の底部に沿って横方向に流れた煙は下側容器7の左側の壁部に突き当たり、上方向に向きを変えて上昇する。次に、
図3(g)に示すように、下側容器7の左側の壁部に沿って上方向に流れた煙は、ある程度の高さまで上昇すると自重により上昇を停止し、横方向に向きを変えて流れる。
図3(g)に示す例では、
図3(f)において下側容器7の左側の壁部に突き当たった反動により例えば左側から右側に向けて流れる。次に、
図3(h)に示すように、横方向に流れた煙は自重により下方向に向きを変えて下降する。
【0028】
以上のようにして、下側容器7の内部において煙を循環させ、不規則な模様を描かせることで、煙の流れを視覚的に楽しむことができる。
【0029】
図4に示すように、煙発生部材9の燃焼の進み具合が中程度である場合、燃焼部9aは煙発生部材9の最初の長手方向寸法における略中央部に位置する。この例では、燃焼部9aは上側容器5の開口5a及び下側容器7の開口7aの略中央部に位置する。
図4(a)に示すように、煙発生部材9の燃焼部9aから発生した煙は、熱により上側容器5の内部において上昇する。次に、
図4(b)に示すように、上昇した煙は上側容器5の上部で受け止められ、横方向に向きを変えて流れる。
図4(b)に示す例では、例えば中央から左右両側に向けて流れる。次に、
図4(c)に示すように、上側容器5の内部において煙が横方向に流れて滞留している間に温度が低下すると、煙は上側容器5の左右両側の壁部に沿ってそれぞれ下降する。次に、
図4(d)に示すように、煙の一部は左右両側の外気取入口11から外部に放出され、残りの大部分は載置部材3の通過孔3aを介して下側容器7に流入する。
【0030】
次に、
図4(e)に示すように、下側容器7の内部において、下側容器7の左右両側の壁部に沿って下降した煙は下側容器7の底部に突き当たり、横方向に向きを変えて流れる。
図4(e)に示す例では、例えば左右両側から中央側に向けて流れる。次に、
図4(f)に示すように、下側容器7の底部に沿って中央側に流れた煙は下側容器7の中央部近傍で互いに突き当たり、上方向に向きを変えて上昇する。次に、
図4(g)に示すように、下側容器7の略中央部において上方向に流れた煙は、ある程度の高さまで上昇すると自重により上昇を停止し、横方向に向きを変えて流れる。
図4(g)に示す例では、
図4(f)において左右からの煙が中央部近傍で突き当たった反動により例えば中央側から左右両側に向けて流れる。次に、
図4(h)に示すように、横方向に流れた煙は自重により左右両側において下方向に向きを変えて下降する。
【0031】
以上のようにして、煙発生部材9の燃焼がある程度進むと、下側容器7の内部において上記
図3とは異なる態様で煙が循環し、上記
図3とは異なる不規則な模様を描く。なお、煙の流れは煙発生部材9の燃焼が進むにつれて
図3の態様から
図4の態様に少しずつ且つ連続的に変化する。これにより、煙発生部材9の燃焼が進むにつれて変化する煙の流れを、視覚的に楽しむことができる。
【0032】
図5に示すように、煙発生部材9の燃焼の進み具合が終わりに近い場合、燃焼部9aは煙発生部材9の最初の長手方向寸法における他方側(
図5中右側)に位置する。
図5(a)に示すように、煙発生部材9の燃焼部9aから発生した煙は、熱により上側容器5の内部において上昇する。次に、
図5(b)に示すように、上昇した煙は上側容器5の上部で受け止められ、横方向に向きを変えて流れる。
図5(b)に示す例では、例えば右側(煙発生部材9の長手方向において燃焼部9aが位置する側)から左側に向けて流れる。次に、
図5(c)に示すように、上側容器5の内部において煙が横方向に流れて滞留している間に温度が低下すると、煙は上側容器5の左側(煙発生部材9の長手方向において燃焼部9aが位置する側とは反対側)の壁部に沿って下降する。次に、
図5(d)に示すように、煙の一部は外気取入口11から外部に放出され、残りの大部分は載置部材3の通過孔3aを介して下側容器7に流入する。
【0033】
次に、
図5(e)に示すように、下側容器7の内部において、下側容器7の左側の壁部に沿って下降した煙は下側容器7の底部に突き当たり、横方向に向きを変えて流れる。
図5(e)に示す例では、例えば左側から右側に向けて流れる。次に、
図5(f)に示すように、下側容器7の底部に沿って横方向に流れた煙は下側容器7の右側の壁部に突き当たり、上方向に向きを変えて上昇する。次に、
図5(g)に示すように、下側容器7の右側の壁部に沿って上方向に流れた煙は、ある程度の高さまで上昇すると自重により上昇を停止し、横方向に向きを変えて流れる。
図5(g)に示す例では、
図5(f)において下側容器7の右側の壁部に突き当たった反動により例えば右側から左側に向けて流れる。次に、
図5(h)に示すように、横方向に流れた煙は自重により下方向に向きを変えて下降する。
【0034】
以上のようにして、煙発生部材9の燃焼が終わりに近づくと、下側容器7の内部において上記
図4とはさらに異なる態様で煙が循環し、上記
図4とはさらに異なる不規則な模様を描く。なお、煙の流れは煙発生部材9の燃焼が進むにつれて
図4の態様から
図5の態様に少しずつ且つ連続的に変化する。これにより、煙発生部材9の燃焼が進むにつれて変化する煙の流れを、視覚的に楽しむことができる。
【0035】
<実施形態の効果>
以上説明した本実施形態の描煙装置1は、載置部材3と、上側容器5と、下側容器7と、を有する。載置部材3に載置された煙発生部材9が燃焼により煙を発生させると、煙は熱により上昇して上側容器5の内部で受け止められる。上側容器5の内部で温度が低下した煙は下降して載置部材3の通過孔3aを通過し、下側容器7内に流入する。下側容器7に流入した煙は下側容器7の内部で循環しながら不規則な模様を描く。下側容器7は透光性を有するので、下側容器7の内部で循環する煙の流れを視覚的に楽しむことができる。また、下側容器7の上に載置部材3を設置し、載置部材3の上に上側容器5を設置するだけの簡易な構造で、煙を循環させて不規則な模様を描かせる描煙構造を実現できる。
【0036】
また、本実施形態では特に、描煙装置1は、上側容器5の下端と下側容器7の上端との間に、外気を取り入れるための外気取入口11を有する。これにより、煙発生部材9に酸素を供給して燃焼を継続させ、継続的に煙を発生させることができる。
【0037】
また、本実施形態では特に、上側容器5は下端部に開口5aを有しており、下側容器7は上端部に開口7aを有しており、開口5aと開口7aの大きさ又は形状を異ならせることで外気取入口11が形成されている。これにより、例えば上側容器5又は下側容器7に外気取入用の開口を新たに形成することなく、簡易な構造で外気取入口を形成できる。また、煙発生部材9としてお香を使用する場合には、外気取入口11からお香の香りを外部に放出することが可能となり、お香の香りと共に煙を見て楽しむことができる。
【0038】
また、描煙装置1では、上側容器5は高温の煙を受け止めるので耐熱性を有することが好ましい。本実施形態では、上側容器5をガラス製とすることで耐熱性を確保でき、装置の安全性を高めることができる。また、下側容器7には温度が低下した煙が流入するので耐熱性は必要ないが、煙の流れを視認できるように透光性を有することが好ましい。本実施形態では、下側容器7についてもガラス製とすることで高い透光性を確保でき、煙の流れを美しく見せることができる。
【0039】
また、描煙装置1では、載置部材3には燃焼するお香が載置されるため、高い耐熱性を有することが好ましい。その上で、煙を通過させる通過孔が形成されている必要がある。本実施形態では、載置部材3を金網とすることで、高い耐熱性を確保できると共に、煙を自由に通過させることが可能となり、簡易な構造で描煙装置1を実現できる。また、煙発生部材9として燃焼により煙を発生させるお香を使用することで、お香の香りと共に煙を見て楽しむことができる装飾機能付きのお香立てとして使用することができる。この場合、従来のお香立てと異なり、古臭くなく、重くなく、特定の宗教を感じさせず、モダンで新しいお香立てを実現できる。
【0040】
<変形例>
本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について説明する。
【0041】
例えば、
図6に示すように、下側容器7の下端に、下側容器7の内部に光を照射する照明装置13を設置してもよい。照明装置13としては、例えばLEDや電球等を使用することができる。また、照明の色を変化させたり、明るさを変化させたり、照射方向を変化させたり、点灯と点滅を変化させる等の演出を行ってもよい。
図6に示すように、例えば下側容器7の下部にスタンド15を設けることで、照明装置13の設置スペースを確保してもよい。あるいは、下側容器7の底部を凹ませることで照明装置13の設置スペースを確保してもよい。本変形例によれば、下側容器7の内部で循環する煙を発光させて、煙の流れをより美しく見せることができる。したがって、描煙装置1を発光性の装飾品として使用できる。
【0042】
また、上記実施形態では、上側容器5の開口5aが下側容器7の開口7aよりも大きい構成としたが、例えば
図7に示すように、上側容器5の開口5aが下側容器7の開口7aよりも小さい構成としてもよい。この場合、下側容器7の開口7aと上側容器5の開口5aの外周との間に、外気取入口11としての隙間が形成される。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、例えば
図8に示すように、載置部材3と上側容器5との間にスペーサ17を設けてもよい。
図8に示す例では、上側容器5が例えば三角錐状のガラス容器であり、上側容器5の下端部の三角形状の開口5aの3辺のそれぞれを3つのスペーサ17が支持している。本変形例によれば、上記実施形態のように上側容器5の開口5aと下側容器7の開口7aの大きさ又は形状を異ならせるのに加えて又は代えて、スペーサ17により載置部材3と上側容器5との間に上下方向の隙間を形成できるので、外気取入口11を拡大し、外気を取り入れ易くすることができる。また、煙発生部材9としてお香を使用する場合には、お香の香りを外部により多く放出することが可能となり、お香の香りと共に煙を見て楽しむことができる。また、本変形例によれば、上側容器5の開口5aと下側容器7の開口7aの大きさ及び形状を全く同じとすることが可能となるので、描煙装置1の外観をシンプルなデザインとすることができ、外観性を向上できる。
【0044】
また、上記実施形態では、煙発生部材9を載置部材3上に横向きに載置したが、これに限られず、例えば
図9に示すように、煙発生部材9を載置部材3に対して傾斜するように載置してもよい。この場合、例えば煙発生部材9を載置部材3の通過孔3aに差し込むことで斜めに立ててもよいし、別途のスタンド部材(図示省略)を用いて斜めに立ててもよい。
【0045】
また、例えば
図10に示すように、スタンド部材19を使用して、煙発生部材9を載置部材3に対して略平行に浮かせて配置してもよい。スタンド部材19は、例えば粘土やスポンジのように煙発生部材9を自由に差し込むことが可能な素材としてもよい。
【0046】
また、例えば
図11に示すように、スタンド部材19を使用して、煙発生部材9を載置部材3に対して略垂直に立たせて載置してもよい。この場合、スタンド部材19は、例えばお香立てのように煙発生部材9を灰に差し込む構成としてもよいし、上記と同様に、例えば粘土やスポンジのような素材としてもよい。
【0047】
上記
図9~
図11に示す構成においても、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
<煙の流れの画像>
本願発明者は、以上説明した描煙装置1を、載置部材3として金網状のトレイ、上側容器5としてガラス製のコップ、下側容器7としてガラス製のビン、煙発生部材9として線香を使用して制作した。また、下側容器7の下には照明装置13としてLEDを設置した。
図12~
図15に、制作した描煙装置1による煙の流れの画像を参考として示す。
【0049】
図12は、載置部材3、上側容器5、下側容器7及び煙発生部材9の画像の一例である。なお、
図12では線香の燃焼の進み具合が例えば中程度となっており、前述の
図4(c)の状態に相当する。
図12に示すように、線香から発生し上昇した煙は上側容器5の上部で受け止められ、上側容器5の内部において左右両側に向けて流れ、温度が低下した煙は上側容器5の左右両側の壁部に沿ってそれぞれ下降している。
【0050】
図13は、下側容器7の画像の一例である。
図13は前述の
図3(d)の状態に相当する。
図13に示すように、上側容器5から下降して載置部材3の通過孔3aを通過した煙は下側容器7内に流入し、下側容器7の右側の壁部に沿って下降している。
【0051】
図14は、下側容器7の画像の一例である。
図14は前述の
図3(f)の状態に相当する。
図14に示すように、下側容器7の内部において、下側容器7の右側の壁部に沿って下降した煙は下側容器7の底部に突き当たって横方向に向きを変え、底部に沿って横方向に流れた煙は下側容器7の左側の壁部に突き当たり、上方向に向きを変えて下側容器7の半ば程度の高さまで上昇している。
【0052】
図15は、下側容器7の画像の一例である。
図15は前述の
図3(h)の状態に相当する。
図15に示すように、下側容器7の内部において、下側容器7の左側の壁部に沿って上方向に流れた煙は、ある程度の高さまで上昇すると自重により上昇を停止し、横方向に向きを変え、下側容器7の中央部近傍において自重により下方向に向きを変えて下降し、循環している。
【0053】
なお、以上の画像で表された描煙装置1の構造及び煙の流れは一例であり、本発明の描煙装置1は他にも多種多様な部品や構造によって実現することが可能であり、煙の流れも多種多様な態様となり得る。
【0054】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0055】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 描煙装置
3 載置部材
3a 通過孔
5 上側容器
5a 開口
7 下側容器
7a 開口
9 煙発生部材
9a 燃焼部
11 外気取入口
13 照明装置
15 スタンド
17 スペーサ
19 スタンド部材
【要約】
【課題】簡易な構造で煙を循環させて不規則な模様を描かせることで、煙の流れを視覚的に楽しむことができる描煙装置を提供する。
【解決手段】描煙装置1は、燃焼により煙を発生させる煙発生部材9を載置し、煙を通過させる通過孔3aが形成された載置部材3と、載置部材3の上部に配置され、煙発生部材9で発生して上昇した煙を内部で受け止める上側容器5と、載置部材3の下部に配置され、上側容器5で受け止められ載置部材3の通過孔3aを介して下降した煙を内部で循環させることで煙に不規則な模様を描かせる、透光性を備えた下側容器7と、を有する。
【選択図】
図1