(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-26
(45)【発行日】2023-05-09
(54)【発明の名称】中果皮及び維管束除去具
(51)【国際特許分類】
A47J 17/04 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
A47J17/04
(21)【出願番号】P 2023028249
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2023-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500300640
【氏名又は名称】星野 真一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100199668
【氏名又は名称】林 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】星野 真一郎
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第213075359(CN,U)
【文献】実開昭59-111624(JP,U)
【文献】独国実用新案第20000094(DE,U1)
【文献】実開平02-142244(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0063283(KR,A)
【文献】特開2017-035420(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009011786(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 17/04
A47J 43/28
B25B 9/02
A23N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘類の中果皮及び維管束を除去するためのピンセット型の手持ち工具であって、前記中果皮及び維管束をそぎ落とし又は挟持する所要形状からなる一対の作用部と、一対の前記作用部と接続する把持部と、前記把持部と一体に成形され前記作用部を押し広げる方向へ働く弾性ヒンジ部とからな
り前記作用部は、向かい合う一対の作用部内側に向け湾曲し中果皮及び維管束を挟持可能となる挟持部と、向かい合う一対の作用部外側に向け湾曲し中果皮及び維管束をそぎ落とし可能となるそぎ落とし部とからなることを特徴とする中果皮及び維管束除去具。
【請求項2】
前記作用部が金属製の薄板で形成されていることを特徴とする
請求項1に記載の中果皮及び維管束除去具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類の皮を除去するために使用するピンセット型の手持ち工具に関し、詳しくは、柑橘類の外皮をむいた状態において、果肉を包んでいる薄皮(以下、「じょうのう」と称す)を傷つけることなく、じょうのうの表面に付着している白い海綿のような部分(以下、「中果皮」と称す)と、網の目のような白いすじ部分(以下、「維管束」と称す)とを効率よく除去できる、中果皮及び維管束除去具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、みかんやオレンジ等柑橘類の皮を剥く作業は、指先若しくは爪を用いて外皮を剥いた後に、じょうのうの表面に付着した中果皮や維管束を指先で取り除き、各房を分離して食することが一般的であった。
【0003】
しかし、手指で柑橘類の皮を剥く作業は、果汁や皮で手指が汚れ、爪の間に皮くずが付着するうえに、作業の煩雑さも問題であった。
【0004】
そこで、特許文献1には、棒状の把持部と、把持部の一端部に基端部が取り付けられ、中途部が把持部の軸線に対して直交する方向に屈曲されたL字部と、L字部の先端に下向きに形成された縦刃部とを備えた柑橘類果実用皮剥き器の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された柑橘類果実用皮剥き器は、柑橘類果実の外皮を剥くための手持ち工具であって、じょうのうの表面に付着した中果皮や維管束を取り除く作業には使用できない。
【0007】
さらに、じょうのうの表面に付着した中果皮や維管束を取り除かないまま食すると、苦みなどの雑味が付加され、柑橘類果実の本来の風味を楽しめない問題があった。さらに、じょうのうの表面に付着した中果皮や維管束を指先で取り除く作業は煩雑であり、手指が汚れる問題もあった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その具体的目的は、外皮を剥いた後の柑橘類のじょうのうの表面に付着した、中果皮や維管束を効率よく除去可能となる、中果皮及び維管束除去具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたものである。詳述するならば、柑橘類の中果皮及び維管束を除去するためのピンセット型の手持ち工具であって、前記中果皮及び維管束をそぎ落とすそぎ落とし部と、前記中果皮及び維管束を挟持する挟持部とからなる一対の作用部と、一対の前記作用部と接続する把持部と、前記把持部と一体に成形され前記作用部を押し広げる方向へ働く弾性ヒンジ部とを有する構成が含まれる。
【0010】
本発明の中果皮及び維管束除去具は、ピンセット型の手持ち工具であるため嵩張らず保管が便利となるばかりか、刃物となるような構成も含まないことから携帯しても危険性がなく携行し易い効果がある。
【0011】
本発明には、前記作用部が向かい合う一対の作用部内側に向け湾曲し中果皮及び維管束を挟持可能となる挟持部と、向かい合う一対の作用部外側に向け湾曲し中果皮及び維管束をそぎ落とし可能となるそぎ落とし部とを有する構成が含まれる。
【0012】
本発明の中果皮及び維管束除去具は、じょうのうの表面に付着した中果皮をそぎ落とし可能となるそぎ落とし部と、そぎ落としきれなかった中果皮や維管束を挟持する挟持部とを有することから、手指を汚すことなく効率よく除去作業できる効果がある。
【0013】
また、本発明には、前記作用部が金属製例えばステンレス合金の薄板で形成されている構成が含まれる。
【0014】
本発明の中果皮及び維管束除去具は、ステンレス合金などの金属製の薄板で形成すると、金属の薄板は素材種類・厚さの種類など、強度設定の選択肢が豊富であり、じょうのうを破損しない反面、中果皮及び維管束をそぎ落とせる所要強度を選択し設定し易い効果がある。
【0015】
さらに、本発明には、中果皮及び維管束を除去するためのピンセット型の手持ち工具であって、前記中果皮及び維管束をそぎ落とし又は挟持する所要形状からなる一対の作用部と、一対の前記作用部と接続する把持部と、前記把持部と一体に成形され前記作用部を押し広げる方向へ働く弾性ヒンジ部とを有し、前記作用部が向かい合う一対の作用部内側に向け湾曲し中果皮及び維管束を挟持可能となる挟持部と、向かい合う一対の作用部外側に向け湾曲し中果皮及び維管束をそぎ落とし可能となるそぎ落とし部とからなり、前記把持部と前記弾性ヒンジ部とが例えばプラスチックなどの合成樹脂製の薄板で形成されている構成が含まれる。
【0016】
本発明の中果皮及び維管束除去具は、先端部以外の部分を合成樹脂製の薄板で構成しているために、製造効率が良く製造コストを安価に抑えることができる効果がある。
【0017】
本発明には、中果皮及び維管束を除去するためのピンセット型の手持ち工具であって、前記中果皮及び維管束をそぎ落とし又は挟持する所要形状からなる一対の作用部と、一対の前記作用部と連設する把持部と、前記把持部と一体に成形され前記作用部を押し広げる方向へ働く弾性ヒンジ部とを有し、前記作用部が閉鎖状態において向かい合う一対の作用部同士が互いに当接し中果皮及び維管束を挟持可能となる挟持部と、向かい合う一対の作用部外側に向け湾曲し中果皮及び維管束をそぎ落とし可能となるそぎ落とし部とからなり、手持ち工具全体すなわち前記把持部と前記弾性ヒンジ部と前記作用部とが、例えばステンレス合金など金属製の薄板で一体形成されている構成が含まれる。
【0018】
本発明の中果皮及び維管束除去具は、全体をステンレス合金など金属製の薄板で一体形成されていることから、軽量に設定できると共に、耐久性が向上する効果がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明の中果皮及び維管束除去具は、みかんやオレンジなどの柑橘類の外皮を剥いた状態で、じょうのうの表面に付着した中果皮や維管束を効率よく除去することができると共に、手指を汚すことなく作業できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る中果皮及び維管束除去具の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す中果皮及び維管束除去具の(a)開放状態、(b)閉鎖状態を示す正面図である。
【
図3】本発明に係る中果皮及び維管束除去具の第2実施形態を示す(a)平面視(b)側面視(c)正面視からの三面図である。
【
図4】
図1に示す中果皮及び維管束除去具の使用例を示す説明図である。
【
図5】
図1に示す中果皮及び維管束除去具の他の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。ただし、図面は模式的に図示しており、実際の寸法や比率等とは必ずしも一致しない。また、図面相互間において、お互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることがある。
尚、本実施形態において、中果皮及び維管束除去具を把持して使用する状態を基準に上下方向、先端側、手元側と表現する。
【0022】
(第1実施形態)
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の中果皮及び維管束除去具10は、柑橘類の中果皮101及び維管束103を除去するためのピンセット型の手持ち工具であって、中果皮101及び維管束103をそぎ落とすそぎ落とし部31と、中果皮101及び維管束103を挟持する挟持部32とからなる一対の作用部3,3と、一対の作用部3,3と接続する把持部1と、把持部1と一体に成形され作用部3を押し広げる方向へ働く弾性ヒンジ部2とで形成されている。
【0023】
把持部1は、側面視において、弾性ヒンジ部2から先端側に向かって略水平に伸びる上辺11と、同じく略水平に伸びる下辺12と、下辺12の所要位置から斜め上側に伸びる斜辺13と、上辺11から垂直方向へ降ろした方向に配設された先端辺14とで構成され、側面視において全体が略矩形状で先端に向かってやや幅狭の形状に形成されている。
【0024】
弾性ヒンジ部2は、把持部1の手元側であって、両方の把持部1,1の中間位置に配置され、平面視において略円環形状に形成されている。また、使用者が把持部1,1を押圧すると両方の作用部3,3が閉鎖状態2(b)となり、押圧を解除すると両方の作用部3,3が開放状態2(a)となる弾性を発生する。
【0025】
作用部3,3は両方の把持部1,1の先端部内側に貼設されており、側面視において把持部1の上辺11より上方へ突出した挟持部32と、把持部1の下辺12より下方へ突出したそぎ落とし部31とで形成されている。
【0026】
挟持部32は、上端側に向け作用部3,3の内側に湾曲し、両方の上端部33,33が当接することで、中果皮101及び維管束103を挟持可能となる形状に形成されている。また、そぎ落とし部31は、下端側に向け作用部3,3の外側に湾曲し中果皮101及び維管束103をそぎ落とし可能となる所要形状に形成されている。
【0027】
本実施形態では、把持部1,1と弾性ヒンジ部2とが、例えばプラスチックなどの合成樹脂製の薄板で形成され、作用部3,3が金属製例えばステンレス合金の薄板で形成されている。また、作用部3,3は、把持部1,1の先端部内側に接着剤で貼設されている。
【0028】
(第2実施形態)
図3に示されるように、本実施形態の中果皮及び維管束除去具10は、全体すなわち把持部1,1と、弾性ヒンジ部2と、作用部3とが、例えば、ステンレス合金など金属製の薄板をプレス加工で一体形成されている。
【0029】
図3(b)に示されるように、本実施形態の中果皮及び維管束除去具10は、側面視において先端側に向かってやや幅狭となる略矩形状に形成されている。また、
図3(a)に示されるように、平面視においては、手元側に弾性ヒンジ部2、中間部分に把持部1、先端の所要位置に作用部3とが配置されている。
【0030】
また、把持部1から作用部3の先端まで強度を確保するためのリブ部4が配置され、リブ部4は、外側へ向け突設する向きに湾曲させた形状に形成されている。さらに、弾性ヒンジ部2は平面視において略円環形状に形成されている折返し部21と、折り返した薄板材を固定する接合部23と、作用部3,3を押し広げる方向へ働く弾性を成す湾曲部22とで形成されている。
【0031】
図3(c)に示されるように作用部3は、一端側にそぎ落とし部31が形成され、もう一端側に挟持部32が形成されている。そぎ落とし部31は、一対の作用部3,3の外側に湾曲し中果皮101及び維管束103をそぎ落とし可能となる所要形状に形成され、挟持部32は、閉鎖状態において略水平に伸び両方の挟持部32,32が互いに当接することで、中果皮101及び維管束103を挟持可能となる形状に形成されている。
【0032】
次に、本発明の中果皮及び維管束除去具10の使用方法を、
図4及び
図5に示して説明する。
図4は、外皮を剥いた状態の柑橘類、例えば、みかん100を片手で保持しながら、もう一方の手で中果皮及び維管束除去具10の把持部1を押圧しながら保持し、そぎ落とし部31をじょうのう102の表面に押し当てながら矢印方向に揺動させて、中果皮101をそぎ落とす。または、中果皮101をじょうのう102の表面から剥離して端部を立ち上げる。
【0033】
図5は、外皮を剥いた状態の柑橘類、例えば、みかん100を片手で保持しながら、もう一方の手で中果皮及び維管束除去具10の把持部1を保持し、挟持部32で維管束103を挟持しつつ矢印方向に引張して取り除く。また、
図4で、じょうのう102の表面から剥離して端部を立ち上げた、中果皮101も挟持部32で挟持しつつ矢印方向に引張し取り除く。
【0034】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で適宜寸法や形状を変更して実施できる。
【0035】
本実施例では、
図1及び
図2に示した形状の把持部1と弾性ヒンジ部2を、厚さ1.5mmのプラスチック板材を使用して形成した。外郭形状は切削加工で形成し、成形時には材料を加熱してプレス加工で成形した。成形後の寸法は、弾性ヒンジ部2の端部から把持部1の先端部までの長さ方向の寸法を75mmとし、上下方向の幅寸法は手元側の最大幅部分を20mmとし、先端部の最小幅部分を10mmで形成した。
【0036】
作用部3は、厚さ0.1mmのステンレス合金の板材を使用して、
図1及び
図2に示した作用部3の形状に切削加工とプレス加工で形成した。長さ方向の寸法は手元側から先端部までの長さを35mmとし、上下方向の幅寸法は最大幅部分を23mmとし、先端部の最小幅部分を17mmで形成した。
【0037】
さらに、一対の作用部3,3は、両方の把持部1,1の先端部近傍所要位置の内側に、一対の挟持部32,32の両上端部33,33が当接するように接着剤で固定した。
【0038】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、上記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、本実施形態及び本実施例では、作用部はステンレス合金の板材を加工して形成したが、それに限定するものではなく、銅合金、炭素鋼鋼材やエンジニアリングプラスチックなどを使用しても良く、把持部1と弾性ヒンジ部2も本実施形態及び本実施例では、ステンレス合金の板材やプラスチックの板材を加工して形成したが、材料を限定するものではなく、他の合成樹脂や他の合金金属材料を使用しても良い。
【0039】
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態及び実施例に対し、形状、材質、数量、使用用途、位置若しくは配置等に対して当業者が様々な変更を加えることができるものである。従って、既に開示した形状等の限定をした記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に示したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状等の限定を一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 把持部
2 弾性ヒンジ部
3 作用部
4 リブ部
10 中果皮及び維管束除去具
11 上辺
12 下辺
13 斜辺
14 先端辺
21 折返し部
22 湾曲部
23 接合部
31 そぎ落とし部
32 挟持部
33 上端部
100 みかん
101 中果皮
102 じょうのう
103 維管束
【要約】
【課題】外皮を剥いた後の柑橘類のじょうのうの表面に付着した、中果皮や維管束を効率よく除去可能となる、中果皮及び維管束除去具を提供する。
【解決手段】柑橘類100の中果皮101及び維管束103を除去するためのピンセット型の手持ち工具であって、中果皮101及び維管束103をそぎ落とすそぎ落とし部31と、中果皮101及び維管束103を挟持する挟持部32とからなる一対の作用部3,3と、一対の作用部3,3と接続する把持部1,1と、把持部1,1と一体に成形され作用部3,3を押し広げる方向へ働く弾性ヒンジ部2とで形成されている。
【選択図】
図1