(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/00 20200101AFI20230428BHJP
D06F 37/42 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
D06F39/00 F
D06F37/42 Z
(21)【出願番号】P 2019084860
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】土屋 法宏
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-209396(JP,A)
【文献】実開昭51-068398(JP,U)
【文献】特開2003-246245(JP,A)
【文献】特開2006-136118(JP,A)
【文献】特開2016-022193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/00
D06F 37/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の内部に揺動可能に支持された水槽と、前記水槽の内部に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽と、前記水槽の下部に配設され、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動させるモータと、前記筐体の背面側に配設され、前記モータを制御する制御装置と、前記モータと前記制御装置とを接続するリード線と、前記筐体に配設され、前記リード線
が固定
される筐体側取付部と、を備え、
前記筐体側取付部は、難燃部材で構成され、前記筐体に載置される第1の面、前記第1の面から上方に延びる第2の面、及び、前記第2の面の上部から延びる第3の面により
開口が前記筐体の背面に対向する略コ字状に
構成され、
前記第1の面には
前記筐体側取付部と別部品である固定部により前記リード線が固定され、前記第2の面は、前記固定部と前記水槽との間に位置する、洗濯機。
【請求項2】
前記筐体は、外枠の下部と固定されている下部枠体を含み、前記下部枠体は、前記下部枠体から上方に延伸し、内部が空洞に形成されているガイド体を含み、
前記筐体側取付部は、前記第1の面が前記ガイド体の上面に載置され、前記ガイド体に対してビス止めされる、請求項1に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、筐体の背面内部にリード線が固定された縦型洗濯機を開示する。特許文献1における縦型洗濯機は、筐体と、筐体内部に弾性支持された水槽と、水槽の内部に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽と、水槽の下部に配設され、洗濯兼脱水槽を回転駆動させるモータと、モータを制御する制御装置と、モータと制御装置とを接続するリード線と、を備える。モータと接続されたリード線は、一本に束ねられて筐体側に引き回されて筐体の背面内部に固定されている。
【0003】
また、従来の洗濯機として、ガラス繊維で構成された難燃性のテープをリード線に巻き付けることにより、リード線が断線した際に火災が発生することを抑制する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の構成では、洗濯運転時に水槽が振動すると筐体側に固定されたリード線に応力が集中し、断線して火災が発生する虞があった。そのため、従来の洗濯機では応力が集中する箇所に難燃性のテープを巻き付けていたが、リード線にテープを巻き付ける構成は、組立てる際の作業性が低い上に難燃性のテープの価格が高いという課題があった。
【0006】
本開示は、リード線の断線による火災発生を抑止するとともに組立が容易な洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における洗濯機は、筐体と、前記筐体の内部に揺動可能に支持された水槽と、前記水槽の内部に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽と、前記水槽の下部に配設され、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動させるモータと、前記筐体の背面側に配設され、前記モータを制御する制御装置と、前記モータと前記制御装置とを接続するリード線と、前記筐体に配設され、前記リード線が固定される筐体側取付部と、を備え、前記筐体側取付部は、難燃部材で構成され、前記筐体に載置される第1の面、前記第1の面から上方に延びる第2の面、及び、前記第2の面の上部から延びる第3の面により開口が前記筐体の背面に対向する略コ字状に構成され、前記第1の面には前記筐体側取付部と別部品である固定部により前
記リード線が固定され、前記第2の面は、前記固定部と前記水槽との間に位置する。
【発明の効果】
【0008】
本開示における洗濯機は、リード線の断線による火災発生を抑止するとともに容易に組立ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】同洗濯機の背面カバーを外した状態の下部背面図
【
図4】同洗濯機の不燃化カバーの周囲を示す分解斜視図
【
図5】同洗濯機の不燃化カバーの周囲を示す縦断面図
【
図6】同洗濯機の不燃化カバーの取付作業を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。なお、添付図面および以下の説明によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における洗濯機の縦断面図である。
【0012】
洗濯機100は、外枠101と、上部枠体102と、下部枠体103とを備えている。上部枠体102は、外枠101の上部に固定されており、略中央に洗濯物投入口105が開口するように形成されている。下部枠体103は、樹脂により形成されており、外枠101の下部と固定されている。
【0013】
上部枠体102の後方上部には、蓋104が洗濯物投入口105を覆うように開閉自在に配設されている。蓋104の後方には操作表示部106が設けられており、操作表示部106は表示部及び操作部を含む。使用者は、操作部を操作しながら表示部に表示される情報を確認し、洗濯機の運転条件を設定する。
【0014】
外枠101の内部には、有底円筒状に形成された水槽107がサスペンション(図示せず)により弾性支持されている。
【0015】
水槽107の内部は水を溜めることが可能であり、溜まった水は、排水弁(図示せず)が開放されることにより排水管(図示せず)から排出される。
【0016】
水槽107の内部には、洗濯兼脱水槽109が回転自在に保持されている。洗濯兼脱水槽109の側壁には多数の脱水孔112が形成されており、洗濯水を洗濯兼脱水槽109の内外に通過させる。洗濯兼脱水槽109の上方位置にはバランサ111が設けられており、脱水動作時の洗濯兼脱水槽109のガタツキを抑制する。洗濯兼脱水槽109の底部には、パルセータ110が回転自在に設けられている。パルセータ110が回転することにより、洗濯兼脱水槽109の内部の洗濯物を攪拌できる。
【0017】
水槽107の下部中央には、板状に形成された金属部品であるモータ保持部120が配設されている。モータ保持部120には、水槽107の外底部に取り付けられた伝達機構126と、ベルト122を介して伝達機構126を駆動させるモータ121と、が固定されている。ベルト122は、モータ121に設けられたモータ側プーリ123と、伝達機構126側に設けられたメカ側プーリ124との間で架橋されており、モータ121の回転駆動力を伝達機構126に伝達させる。
【0018】
伝達機構126には、回転軸125と、減速ギア(図示せず)と、回転軸125の接続先を切り換えるクラッチ(図示せず)と、ブレーキ(図示せず)と、が設けられている。回転軸125は、パルセータ110及び洗濯兼脱水槽109と、それぞれ接続されている。
伝達機構126は、クラッチを切り替えることで、パルセータ110を単独で回転させ、または、パルセータ110及び洗濯兼脱水槽109を同時に回転させる。
【0019】
外枠101の背面は一部分が開口しており、開口部分には制御基板(図示せず)を内蔵したコントローラボックス113が配設されている。コントローラボックス113の背面
には、外枠101の開口部分を覆うように背面カバー114が配設されている。制御基板は、モータ121や伝達機構126等を制御して一連の洗濯運転を実行させる。
【0020】
図2は、実施の形態1における洗濯機の背面カバーを外した状態の下部背面図、
図3は、
図2におけるA-A断面図である。
【0021】
図2及び
図3に示すように、モータ121から引き出されたリード線127は、下部枠体103の背面に引き回され、コントローラボックス113の下部に形成されたボックス開口部113aからコントローラボックス113の内部に挿入されている。リード線127は、制御基板とモータ121とを電気的に接続し、電力供給や電気信号の伝達を行う。
【0022】
制御基板側のリード線127は不燃化カバー228に係止されており、不燃化カバー228はコントローラボックス113の下方において下部枠体103に配設されている。モータ121側のリード線127は水槽側取付部131に係止されており、水槽側取付部131は水槽107の下部に固定されている。リード線127は、水槽側取付部131と不燃化カバー228との間で、弛みであるリード線弛み部127aを持たせるように係止されている。
【0023】
図4は、実施の形態1における洗濯機の不燃化カバーの周囲を示す分解斜視図、
図5は、同洗濯機の不燃化カバーの周囲を示す縦断面図である。
【0024】
図4及び5に示すように、不燃化カバー228は、難燃性の板金材料により略コ字状に形成され、延焼を抑止する機能を有する。不燃化カバー228は、下部枠体103から上方に延伸させて形成されたガイド体233の上面に載置され、開口部240が外枠101の背面と対向するように取り付けられている。また、不燃化カバー228は、略コ字状の上面である上部天面234が上方に折り曲げられている。本実施の形態では、上部天面234から折り曲げられた部分を傾斜面236としており、傾斜面236は開口部240の高さを拡大させる役割を果たしている。
【0025】
また、リード線127を結束する結束バンド141を固定するための結束バンド固定部142が挿入され固定されるべく、不燃化カバー228の下面には、係止用孔部231が形成され、ガイド体233の上面には、係止用孔部231に対応する位置にガイド体孔237が形成されている。不燃化カバー228の下面の側方端部は、両側で折り曲げられており、後述するガイド体233に載置される際の位置決めを行う。また、不燃化カバー228の下面背面側には、ビス止め用の孔が開口されたビス締結部232が下垂形成されている。
【0026】
ガイド体233は、内部が空洞に形成された略四角形状に形成されており、内部には強度補強用のリブが上下に形成されている。リブの上部には、ビス締結部232と対向する位置にビス止め部235が膨出して形成されており、ビス止め部235の内部にはビス止め用の穴が形成されている。ビス止め部235は、膨出して形成したことにより樹脂の量が多く、延焼の虞が高くなっている。そこで、リード線127の固定位置である係止用孔部231から離間してビス止め部235を配置することで、リード線127が断線した際に火災が発生し、延焼することを抑制している。
【0027】
図6は、実施の形態1における洗濯機の不燃化カバーの取付作業を示す模式図である。
【0028】
図6に示すように、組み立ての際、不燃化カバー228をガイド体233に載置し、ビス締結部232及びビス止め部235に対してビス251によりビス止めする。次に、リード線127を不燃化カバー228の内部に載置し、結束バンド141の結束バンド固定
部142の先端を係止用孔部231およびガイド体孔237に挿入してリード線127を不燃化カバー228の内部に固定する。本実施の形態では、上部天面234に傾斜面236を形成して開口部240を広く設けたことにより、不燃化カバー228の内部空間が広く構成されている。従って、開口部240から不燃化カバー228の内部に手を入れやすくなっており、結束バンド141の結束バンド固定部142の先端を係止用孔部231およびガイド体孔237に挿入する際の作業効率が良い。
【0029】
以上のように構成された洗濯機100について、以下、その動作を説明する。
【0030】
使用者は、蓋104を開いて洗濯物投入口105から洗濯兼脱水槽109内に洗濯物を投入し、操作表示部106を操作して電源をONにする。続いて、使用者は、操作表示部106を操作して各種コースを選択し、洗濯運転を開始させる。各種コースは、洗い工程、濯ぎ工程、脱水工程、等の各種工程により構成されている。設定したコースにおける一連の工程が終了すると、洗濯運転が終了する。
【0031】
洗濯運転の際、サスペンションにより揺動自在に支持された水槽107は、洗濯兼脱水槽109やパルセータ110の動作に伴って振動する。水槽側取付部131に挟持されたリード線127は、水槽107の振動ともに大きく揺れ動く一方で、外枠101は略振動しないため、水槽側取付部131と不燃化カバー228との間の距離は大きく変動する。リード線弛み部127aを設けることで、引張りや屈曲による応力を弛みによって緩和できるので、水槽側取付部131と不燃化カバー228との間の距離の変動によりリード線127が断線することを抑制できる。
【0032】
また、水槽側取付部131と不燃化カバー228との間のリード線127には、水槽107の振動の一部が伝達されている。従って、下部枠体103に取り付けられた不燃化カバー228では、リード線127の係止されている箇所に応力が集中し、リード線127が断線して発火する虞がある。本実施の形態では、発火の虞がある係止箇所を、金属により形成された不燃化カバー228で覆い、樹脂で構成されることが多いコントローラボックス113及び水槽107が延焼することを抑止している。
【0033】
(作用等)
以上のように、本実施の形態において、洗濯機100は、外枠101、上部枠体102、及び下部枠体103と、外枠101の内部に揺動可能に支持された水槽107と、水槽107の内部に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽109と、水槽107の下部に配設され、洗濯兼脱水槽109を回転駆動させるモータ121と、外枠101の背面側に配設され、モータ121を制御する制御基板と、モータ121と制御基板とを接続するリード線127と、下部枠体103に配設され、リード線127を固定する不燃化カバー228と、を備える。不燃化カバー228は、難燃部材により略コ字状に形成され、略コ字の内部にリード線127を固定し、外枠101の背面側に開口するように配置されており、略コ字の上面である傾斜面236は、背面に向かって開くように構成されている。
【0034】
これにより、不燃化カバー228は略コ字状の開口部240が大きくなるように構成されているので、不燃化カバー228の内部空間を大きく構成できる。そのため、リード線127の断線による火災発生を抑止するとともに、リード線127の取り付けや取外しが容易である。
【0035】
本実施の形態のように、不燃化カバー228は、リード線127を固定する箇所から離間した位置において、ガイド体233に対してビス止めされるようにしてもよい。
【0036】
これにより、延焼の虞があるビス止め部235を、リード線127の固定位置から遠ざ
けることができるので、安全性が高い。
【0037】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されない。
【0038】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0039】
実施の形態1では、洗濯機の一例として、縦型洗濯機である洗濯機100を説明した。洗濯機は、筐体内に揺動自在に支持された水槽及び制御装置を備えていればよいので縦型洗濯機に限定されない。洗濯機は、二槽式洗濯機であってもよい。
【0040】
実施の形態1では、略コ字状の筐体側取付部の一例として、不燃化カバー228を説明した。略コ字状とは、不燃化カバー228の形状に限定されるものではなく、コの字形状、U字形状、半円形状、それらの端部を折り曲げた形状、であってもよい。
【0041】
実施の形態1では、難燃部材の一例として、金属を説明した。難燃部材は、金属に限定されるものではなく、セラミックや難燃性の樹脂を用いてもよい。
【0042】
実施の形態1では、略コ字の上面の一例として、上部天面234、及び上部天面234から折り曲げられた傾斜面236を説明した。略コ字の上面は、背面に向かって開くように構成されていればよいので、上方に向けて折り曲げられた構造に限定するものではない。例えば、上面全体が背面に向かって上方傾斜してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示は、モータ及び制御装置をリード線で電気的に接続している洗濯機に適用可能である。具体的には、縦型洗濯機、ドラム式洗濯機、二槽式洗濯機などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
100 洗濯機
101 外枠
102 上部枠体
103 下部枠体
104 蓋
105 洗濯物投入口
106 操作表示部
107 水槽
109 洗濯兼脱水槽
110 パルセータ
111 バランサ
112 脱水孔
113 コントローラボックス
113a ボックス開口部
114 背面カバー
120 モータ保持部
121 モータ
122 ベルト
123 モータ側プーリ
124 メカ側プーリ
125 回転軸
126 伝達機構
127 リード線
131 水槽側取付部
141 結束バンド
142 結束バンド固定部
228 不燃化カバー(難燃部材)
231 係止用孔部
232 ビス締結部
233 ガイド体
234 上部天面
235 ビス止め部
236 傾斜面
237 ガイド体孔
240 開口部
251 ビス