(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】射出成形機および射出成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/74 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
B29C45/74
(21)【出願番号】P 2019081338
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598103152
【氏名又は名称】大和合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 玲
(72)【発明者】
【氏名】延近 暢祐
(72)【発明者】
【氏名】中島 真敏
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 謙
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-324483(JP,A)
【文献】特開平06-335954(JP,A)
【文献】特開2016-112863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂材料用の射出成形機であって、
シリンダと、
前記シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収容されたスクリューと、
前記シリンダの先端部を加熱する加熱装置と、
前記シリンダの先端部を冷却する冷却装置と、を有し、
前記シリンダは、先端が開口されており、前記開口を通じて金型の樹脂流路と直接的に連通するように構成され、前記シリンダの先端は、前記スクリューの先端が突出可能な大きさに開口されており、
前記加熱装置が、前記シリンダ内の熱硬化性樹脂材料を可塑化するときに前記シリンダの先端部を加熱する誘導加熱式ヒーターを有し、
前記冷却装置が、前記シリンダの先端部に設けられた非磁性材料製の冷媒流路を有し、前記シリンダ内の可塑化された熱硬化性樹脂材料が前記スクリューによって射出されたあと、前記冷媒流路に冷媒を供給して前記シリンダの先端部を冷却するように構成されていることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記冷媒が液体であり、
前記冷却装置が、前記誘導加熱式ヒーターによって前記シリンダの先端部を加熱するとき、前記冷媒流路から冷媒を排出するように当該冷媒流路に冷媒排出ガスを供給する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記シリンダの先端部より基端寄りの部分を冷却する補助冷却装置をさらに有している、請求項1または請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
シリンダと、前記シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収容されたスクリューと、を有
し、前記シリンダは、先端が開口されており、前記開口を通じて金型の樹脂流路と直接的に連通するように構成され、前記シリンダの先端は、前記スクリューの先端が突出可能な大きさに開口されている熱硬化性樹脂材料用の射出成形機で用いられる射出成形方法であって、
前記シリンダの先端部を誘導加熱式ヒーターによって加熱しつつ前記シリンダ内の熱硬化性樹脂材料を可塑化する工程、
前記シリンダ内で可塑化された前記熱硬化性樹脂材料を前記スクリューによって射出する工程、および、
前記シリンダ内の可塑化された熱硬化性樹脂材料が前記スクリューによって射出されたあと、前記シリンダの先端部に設けられた非磁性材料製の冷媒流路に冷媒を供給して前記シリンダの先端部を冷却する工程、を含むことを特徴とする射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂材料用の射出成形機、および、射出成形機で用いられる射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱硬化性樹脂材料用の射出成形機の一例が特許文献1に開示されている。この射出成形機は、加熱シリンダと、加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収容されたスクリューとを有し、スクリューを加熱シリンダ内で回転駆動することにより、熱硬化性樹脂の混練及び可塑化を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような射出成形機では、熱硬化性樹脂材料の硬化反応を抑制するために、加熱シリンダ内で熱硬化性樹脂材料に必要以上の熱量が加わらないようにすることが重要である。一方で、加熱シリンダ内で熱硬化性樹脂材料に必要な熱量が加わらないと、熱硬化性樹脂材料の粘度が十分に下がらず、成形性が悪化したり、ガラスやカーボンなどからなる長繊維材料を混入した場合に折損が生じたりする。従来の射出成形機では、熱硬化性樹脂材料を加熱する際、熟練者の経験に頼ることが多く、適切に加熱することが困難であった。
【0005】
また、射出動作後に加熱シリンダの先端部に残った熱硬化性樹脂材料において、余熱により硬化反応が進んでしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、熱硬化性樹脂材料を適切に加熱できる射出成形機および射出成形機で用いられる射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る射出成形機は、熱硬化性樹脂材料用の射出成形機であって、シリンダと、前記シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収容されたスクリューと、前記シリンダの先端部を加熱する加熱装置と、前記シリンダの先端部を冷却する冷却装置と、を有し、前記シリンダは、先端が開口されており、前記開口を通じて金型の樹脂流路と直接的に連通するように構成され、前記シリンダの先端は、前記スクリューの先端が突出可能な大きさに開口されており、前記加熱装置が、前記シリンダ内の熱硬化性樹脂材料を可塑化するときに前記シリンダの先端部を加熱する誘導加熱式ヒーターを有し、前記冷却装置が、前記シリンダの先端部に設けられた非磁性材料製の冷媒流路を有し、前記シリンダ内の可塑化された熱硬化性樹脂材料が前記スクリューによって射出されたあと、前記冷媒流路に冷媒を供給して前記シリンダの先端部を冷却するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、加熱装置が、誘導加熱式ヒーターによってシリンダの先端部を加熱する。そして、冷却装置が、シリンダ内の可塑化された熱硬化性樹脂材料が射出されたあと、非磁性材料製の冷媒流路に冷媒を供給してシリンダの先端部を冷却する。このようにしたことから、誘導加熱式ヒーターは昇温速度が十分に速く、シリンダの先端部を比較的短時間で加熱することができる。また、冷媒流路が非磁性材料製であるので、誘導加熱への影響が小さく、効果的にシリンダの先端部を加熱することができる。また、冷却装置によってシリンダの先端部の余熱を素早く取り去ることができる。これにより、熱硬化性樹脂材料における累積熱量の増加を効果的に抑制することができる。また、自然放熱による冷却に比べて短い時間でシリンダを冷却できるので、成形サイクルの時間を短くすることができる。
【0009】
本発明において、前記冷媒が液体であり、前記冷却装置が、前記誘導加熱式ヒーターによって前記シリンダの先端部を加熱するとき、前記冷媒流路から冷媒を排出するように当該冷媒流路に冷媒排出ガスを供給することが好ましい。このようにすることで、シリンダの先端部を加熱する際に、液体である冷媒を排出して気体である冷媒排出ガスで冷媒流路を満たし、冷媒によってシリンダの熱が吸収されてしまうことを抑制できる。そのため、シリンダの先端部をより効率的に加熱することができる。
【0010】
本発明において、前記シリンダの先端部より基端寄りの部分を冷却する補助冷却装置をさらに有していることが好ましい。このようにすることで、シリンダの先端部側から基端部側への熱の伝導を抑制して、シリンダ内の熱硬化性樹脂材料に加えられる熱量をより少なくすることができ、累積熱量の増加をより効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記シリンダは、先端が開口されており、前記開口を通じて金型の樹脂流路と直接的に連通するように構成されていることが好ましい。このようにすることで、シリンダの先端にノズルを設ける必要がなくなり、ノズル内に残った熱硬化性樹脂材料が硬化してしまうことを回避できる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る射出成形方法は、シリンダと、前記シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収容されたスクリューと、を有し、前記シリンダは、先端が開口されており、前記開口を通じて金型の樹脂流路と直接的に連通するように構成され、前記シリンダの先端は、前記スクリューの先端が突出可能な大きさに開口されている熱硬化性樹脂材料用の射出成形機で用いられる射出成形方法であって、前記シリンダの先端部を誘導加熱式ヒーターによって加熱して前記シリンダ内の熱硬化性樹脂材料を可塑化する工程、前記シリンダ内で可塑化された前記熱硬化性樹脂材料を前記スクリューによって射出する工程、および、前記シリンダ内の可塑化された熱硬化性樹脂材料が前記スクリューによって射出されたあと、前記シリンダの先端部に設けられた非磁性材料製の冷媒流路に冷媒を供給して前記シリンダの先端部を冷却する工程、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、シリンダの先端部を誘導加熱式ヒーターによって加熱してシリンダ内の熱硬化性樹脂材料を可塑化する。シリンダ内で可塑化された熱硬化性樹脂材料をスクリューによって射出する。そして、シリンダ内の可塑化された熱硬化性樹脂材料がスクリューによって射出されたあと、シリンダの先端部に設けられた非磁性材料製の冷媒流路に冷媒を供給してシリンダの先端部を冷却する。このようにしたことから、誘導加熱式ヒーターは昇温速度が十分に速く、シリンダの先端部を比較的短時間で加熱することができる。また、冷媒流路が非磁性材料製であるので、誘導加熱への影響を抑制して、効果的にシリンダの先端部を加熱することができる。また、冷却装置によってシリンダの先端部の余熱を素早く取り去ることができる。これにより、熱硬化性樹脂材料における累積熱量の増加を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱硬化性樹脂材料における累積熱量の増加を効果的に抑制して、熱硬化性樹脂材料を適切に加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る射出成形機を有する成形システムの要部断面図である。
【
図3】
図1の射出成形機における動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図1の射出成形機における計量前動作を説明する図である。
【
図5】
図1の射出成形機における計量動作を説明する図である。
【
図6】
図1の射出成形機における射出動作を説明する図である。
【
図7】
図1の射出成形機における製品取り出し動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂材料用の射出成形機を有する成形システムについて、
図1~
図7を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形機を有する成形システムの要部断面図である。
図2は、
図1の射出成形機の機能ブロック図である。
図3は、
図1の射出成形機における動作の一例を示すフローチャートである。
図4~
図7は、それぞれ
図1の射出成形機における計量前動作、計量動作(可塑化動作)、射出動作および製品取り出し動作を説明する図である。本明細書において、「左右」とは、
図1、
図4~
図7の左右方向に対応する。
【0018】
成形システム1は、金型10と、射出成形機20と、を有している。この成形システム1では、金型10のキャビティ18に、射出成形機20により可塑化された熱硬化性樹脂材料(以下、単に「樹脂材料P」という)を射出したのち硬化させて製品Sを成形する。
【0019】
金型10は、右方から左方に順に配置された固定金型13および移動金型14を有している。固定金型13には、左右方向に貫通した樹脂流路16が形成されている。固定金型13と移動金型14との間にキャビティ18が形成されている。固定金型13の右側面には凹部19が形成されており、凹部19の中心部分に樹脂流路16が開口されている。固定金型13は、凹部19に対応して埋め込まれた金型冷却装置15を有している。金型冷却装置15は、例えば、水などの比較的低温の熱交換媒体(冷媒)が流動される管路を有しており、凹部19付近を冷却する。金型10には、キャビティ18に充填された樹脂材料Pを加熱して硬化させるための図示しないヒーターが設けられている。金型10は、型締駆動部33によって型開閉される。
【0020】
射出成形機20は、シリンダ21と、スクリュー22と、加熱装置23と、冷却装置24と、補助冷却装置25と、シリンダ駆動部31と、スクリュー駆動部32と、型締駆動部33と、制御部40と、を有している。
【0021】
シリンダ21は、先端21aが開口された円筒状に形成されており、先端21aを金型10に向けて配置されている。すなわち、シリンダ21の先端21aにはノズルが設けられておらず、ノズルレス構造となっている。本実施形態において、シリンダ21は、先端21aの開口を含む全体の内径が一定である。先端21aは、金型10の凹部19に嵌合可能な形状を有している。シリンダ21は、シリンダ駆動部31により軸方向(左右方向)に移動される。シリンダ21の先端21aは、スクリュー22の先端22aが突出可能な大きさに開口されていればよい。
【0022】
スクリュー22は、シリンダ21内に回転可能かつ前後進可能に収容され、スクリュー駆動部32によりシリンダ21内で回転されるとともに、軸方向に移動される。
【0023】
加熱装置23は、シリンダ21の先端部21bを加熱する。加熱装置23は、シリンダ21の先端部21bを内側に収容するらせん状に巻かれたコイルを備えた誘導加熱式ヒーター(Induction Heating;IH)を有している。誘導加熱式ヒーターは昇温速度が比較的速く、電磁誘導によりシリンダ21の先端部21bを瞬時に加熱することができる。本実施形態において、シリンダ21は誘導加熱可能な材料(強磁性体)で構成されている。一般的に用いられるバンドヒーターは昇温速度が0.28℃/秒程度であるが、誘導加熱式ヒーターを用いることで8.8℃/秒を実現することができ、比較的短時間でシリンダ21を加熱できる。本明細書において「瞬時に加熱する」とは、昇温速度が8℃/秒以上のことをいう。
【0024】
冷却装置24は、シリンダ21の先端部21bを冷却する。冷却装置24は、シリンダ21の先端部21bに設けられた非磁性材料製の冷媒流路と、この冷媒流路に冷媒を供給する冷媒供給部と、を有している。本実施形態において、冷媒流路は、シリンダ21の先端部21bの外周面にらせん状に巻き付けられた管路(パイプ)で構成されている。冷媒供給部は、シリンダ21の先端部21bを冷却するときに、例えば水などの液体の冷媒を供給して冷媒流路内を流動させる。また、冷媒供給部は、シリンダ21の先端部21bを加熱するとき、例えば空気などの気体からなる冷媒排出ガスを供給して冷媒流路内の液体の冷媒を排出する。
【0025】
本実施形態において、冷媒流路は、加熱装置23の誘導加熱式ヒーターとシリンダ21との間に配置されている。これ以外にも、冷媒流路と誘導加熱式ヒーターとを互いに平行となる二条のらせん状としてシリンダ21の先端部21bに巻き付けた構成としてもよい。また、冷媒流路は、らせん状の管路以外にも、例えば、シリンダ21の先端部21bが内側に嵌まる中空円筒状に形成されていてもよく、本発明の目的に反しない限り、その形状は任意である。また、冷媒は、空気などの気体であってもよい。
【0026】
また、本実施形態において、冷媒流路は、非磁性材料を切削加工や金属造形などにより成形して得られる。冷媒流路は、非磁性体(磁化しない・磁化しにくい、比透磁率が低い(μs<100))であれば、本発明の目的に反しない限り、SUS304、SUS305(M)、アルミナセラミックス、高ニッケル特殊合金など、任意の材料で構成することができる。
【0027】
補助冷却装置25は、シリンダ21における先端部21bより基端(先端21aの反対側の端)寄りの部分に設けられている。補助冷却装置25は、例えば、水などの比較的低温の熱交換媒体(冷媒)が流動される管路を有している。補助冷却装置25は、シリンダ21を冷却することができ、加熱装置23によって加熱されたシリンダ21の先端部21bの熱が、シリンダ21の基端側に伝達されることを抑制する。補助冷却装置25によってシリンダ21を冷却することで、樹脂材料Pが溶融されず固体の状態(粘土状)で先端側に移送される。
【0028】
また、射出成形機20は、成形システム1全体の動作を司る制御部40を有している。制御部40は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、各種I/Oインタフェースなどを有する組み込み機器用のマイクロコンピュータを有して構成されている。制御部40は、金型冷却装置15、加熱装置23、冷却装置24、補助冷却装置25、シリンダ駆動部31、スクリュー駆動部32および型締駆動部33と、制御信号を送受可能に接続されている。制御部40は、型閉動作、計量前動作、計量動作(可塑化動作)、射出動作、冷却動作、硬化待ち動作、型開動作および製品取り出し動作などの各種動作において、成形システム1の各駆動部等を制御する。
【0029】
次に、上述した本実施形態の射出成形機20の制御部40において実行される成形サイクルに係る動作の一例について、
図3~
図7を参照して説明する。
【0030】
射出成形機20の制御部40は、事前にパージ動作等を行って、シリンダ21の先端部21b内の樹脂材料Pをスクリュー22により混練した状態とする。また、制御部40は補助冷却装置25を制御して、シリンダ21の先端部21bより基端寄りの部分を常時冷却する。
【0031】
製品Sの成形サイクルにおいて、始めに、制御部40は型締駆動部33を制御して、固定金型13および移動金型14を重ねて型締めする(型閉動作、S110)。
【0032】
次に、制御部40はシリンダ駆動部31を制御して、シリンダ21を金型10に近づくように移動(すなわち前進)させ、
図4に示すように、先端21aを凹部19に嵌合させる。この状態において、シリンダ21の内部と金型10の樹脂流路16とが連通される。そして、制御部40はスクリュー駆動部32を制御して、スクリュー22を所定の計量開始位置まで前進させる(計量前動作、S120)。また、制御部40は、金型冷却装置15を制御して、金型10におけるシリンダ21の先端21aが当接される箇所である凹部19を冷却する。
【0033】
次に、シリンダ21の先端部21bを誘導加熱式ヒーターによって加熱しつつシリンダ21内の樹脂材料Pを可塑化して、計量する(計量動作、S130(計量工程(可塑化工程)))。具体的には、制御部40は冷却装置24を制御して、冷媒流路に冷媒排出ガスを供給し、冷媒流路から冷媒を排出する。そして、制御部40は加熱装置23を制御して、シリンダ21の先端部21bを瞬時に加熱する。これにより、樹脂材料Pの粘度を下げて可塑化しやすくする。瞬時に加熱することにより、シリンダ21内の樹脂材料Pの加熱時間を短くして、樹脂材料Pに加えられる熱量を少なくすることができ、累積熱量の増加を効果的に抑制しつつ粘度を下げることができる。本実施形態においては、樹脂材料Pが150℃~160℃となる程度までシリンダ21を加熱する。さらに、制御部40はスクリュー駆動部32を制御して、スクリュー22を回転させながら後退させ、
図5に示すように、樹脂材料Pを可塑化しつつ1回の射出に必要となる量の樹脂材料Pをシリンダ21の先端部21bに供給(計量)する。計量が終わると、制御部40は加熱装置23を制御して、シリンダ21の先端部21bの加熱を停止する。なお、後述する射出動作のあとにシリンダ21の先端部21bの加熱を停止してもよい。
【0034】
次に、シリンダ21内で可塑化された樹脂材料Pをスクリュー22によって射出する。具体的には、制御部40はスクリュー駆動部32を制御して、
図6に示すように、スクリュー22を前進させる。これにより、シリンダ21の先端部21bの樹脂材料Pが樹脂流路16を通じてキャビティ18に押し込まれる(射出動作、S140(射出工程))。
【0035】
次に、樹脂材料Pがスクリュー22によって射出されたあと、制御部40は冷却装置24を制御して、冷媒流路に液体の冷媒を供給して、シリンダ21の先端部21bを冷却する(冷却動作、S150(冷却工程))。
【0036】
冷却動作と並行して、制御部40は金型10のヒーターを制御して、キャビティ18内の樹脂材料Pが硬化するように加熱する(硬化待ち動作、S160)。また、制御部40はシリンダ駆動部31を制御して、
図7に示すように、シリンダ21を金型10から離れるように移動(すなわち後退)させ、先端21aと凹部19との嵌合を解除する。このとき、シリンダ21の先端21aから樹脂材料Pが垂れないように、制御部40はスクリュー駆動部32を制御して、スクリュー22を射出動作が完了した位置より後退させる。さらに、制御部40は型締駆動部33を制御して、固定金型13および移動金型14を左右方向に開き(型開動作、S170)、図示しないエジェクトピンによりキャビティ18から製品Sを取り出す(製品取り出し動作、S180)。
【0037】
以降、上記型閉動作~上記製品取り出し動作を繰り返して製品Sの成形を行う。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の成形システム1の射出成形機20によれば、加熱装置23が、誘導加熱式ヒーターによってシリンダ21の先端部21bを加熱する。そして、冷却装置24が、シリンダ21内の可塑化された樹脂材料Pが射出されたあと、非磁性材料製の冷媒流路に冷媒を供給してシリンダ21の先端部21bを冷却する。このようにしたことから、誘導加熱式ヒーターは昇温速度が十分に速く、シリンダ21の先端部21bを比較的短時間で加熱することができる。また、冷媒流路が非磁性材料製であるので、誘導加熱への影響が小さく、効果的にシリンダ21の先端部21bを加熱することができる。また、冷却装置によってシリンダ21の先端部21bの余熱を素早く取り去ることができる。これにより、樹脂材料Pにおける累積熱量の増加を効果的に抑制することができる。したがって、樹脂材料Pを適切に加熱できる。また、自然放熱による冷却に比べて短い時間でシリンダを冷却できるので、成形サイクルの時間を短くすることができる。
【0039】
また、冷媒が液体であり、冷却装置24が、誘導加熱式ヒーターによってシリンダ21の先端部21bを加熱するとき、冷媒流路から冷媒を排出するように当該冷媒流路に冷媒排出ガスを供給する。このようにすることで、シリンダ21の先端部21bを加熱する際に、液体である冷媒に代えて気体である冷媒排出ガスで冷媒流路を満たして、冷媒によってシリンダ21の熱が吸収されてしまうことを抑制できる。そのため、シリンダ21の先端部21bをより効率的に加熱することができる。
【0040】
また、シリンダ21の先端部21bより基端寄りの部分を冷却する補助冷却装置25をさらに有している。このようにすることで、シリンダ21の先端部21b側から基端側への熱の伝導を抑制して、シリンダ21内の樹脂材料Pに加えられる熱量をより少なくすることができ、累積熱量の増加をより効果的に抑制することができる。
【0041】
また、シリンダ21の先端21aが開口されており、シリンダ21がこの開口を通じて金型10の樹脂流路16と直接的に連通するように構成されていることが好ましい。このようにすることで、シリンダ21の先端21aにノズルを設ける必要がなくなり、ノズル内に残った樹脂材料Pが硬化してしまうことを回避できる。
【0042】
また、金型10が、金型10におけるシリンダ21の先端21aが当接される凹部19を冷却する金型冷却装置15を有している。そのため、シリンダ21の熱が金型10に伝わることを抑制することができ、金型10の樹脂流路16内で樹脂材料Pの硬化反応が進むことを抑制できる。
【0043】
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1…成形システム、10…金型、13…固定金型、14…移動金型、15…金型冷却装置、16…樹脂流路、18…キャビティ、19…凹部、20…射出成形機、21…シリンダ、21a…シリンダの先端、21b…シリンダの先端部、22…スクリュー、23…加熱装置、24…冷却装置、25…補助冷却装置、31…シリンダ駆動部、32…スクリュー駆動部、33…型締駆動部、P…熱硬化性樹脂材料、S…製品