(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】編物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04B 21/14 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
D04B21/14 Z
(21)【出願番号】P 2018172268
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】518329893
【氏名又は名称】大阪トーション工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518330361
【氏名又は名称】株式会社エコー
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】小島 薫一
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-027406(JP,A)
【文献】特開平11-036164(JP,A)
【文献】米国特許第4487040(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
A47G9/00-9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に位置する二枚の基布と、前記二枚の基布を連結するパイルと、を備え、ダブルラッセル編機で編み込まれた編物であって、
前記二枚の基布は、それぞれ縦糸と横糸とで構成され、
前記パイルは、パイル糸で構成され、
前記二枚の基布、及び、前記パイルは、前記縦糸、前記横糸、及び、前記パイル糸の全てに紡績単糸のみが用いられる、編物。
【請求項2】
前記パイルにおいて、前記パイル糸の本数が周囲よりも少ない部分を備え
、前記パイル糸の濃淡によりデザインが施される、請求項1に記載の編物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れか1項に記載の編物に、
加熱処理により繊維を縮める加工を施す、編物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具等として利用可能な編物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平行に位置する二枚の基布と、二枚の基布を連結するパイルと、を備え、ダブルラッセル編機で編み込まれた編物の構成が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1においては、二枚の基布がパイルによって連結された編地を、パイルの中間でカットすることにより編物(カールマイヤー生地)を構成する技術が記載されている。従来、このような編地を編みたてる際には、基布を構成する糸として紡績双糸又はフィラメント糸を採用している。この場合、二枚の基布がパイルで連結された状態(パイルの中間でカットしない状態)のままでは、重量が大きくなるとともに、柔軟性及び通気性が悪くなるため、寝具として利用することが困難であった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、二枚の基布がパイルで連結された状態でも、重量が大きくなることを防止するとともに、柔軟性及び通気性を確保することにより、寝具として利用することが可能となる、編物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
本発明に係る編物は、平行に位置する二枚の基布と、前記二枚の基布を連結するパイルと、を備え、ダブルラッセル編機で編み込まれた編物であって、前記二枚の基布は、それぞれ縦糸と横糸とで構成され、前記パイルは、パイル糸で構成され、前記二枚の基布、及び、前記パイルは、前記縦糸、前記横糸、及び、前記パイル糸の全てに紡績単糸のみが用いられる。
【0008】
本発明に係る編物は上記の如く構成することにより、二枚の基布がパイルで連結された状態でも、重量が大きくなることを防止するとともに、柔軟性及び通気性を確保することにより、寝具として利用することが可能となる。また、二枚の基布及びパイルの全てを紡績単糸のみで構成することができるため、重量が大きくなることをより防止するとともに、柔軟性及び通気性をさらに確保することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る編物は、前記パイルにおいて、前記パイル糸の本数が周囲よりも少ない部分を備え、前記パイル糸の濃淡によりデザインが施される。
【0010】
本発明に係る編物は上記の如く構成することにより、意匠性を向上させることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る編物の製造方法は、上記加熱処理により繊維を縮める加工が施される。
【0012】
本発明に係る編物の製造方法で製造した編物は、上記の如く構成することにより、嵩高性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る編物によれば、二枚の基布がパイルで連結された状態でも、重量が大きくなることを防止するとともに、柔軟性及び通気性を確保することにより、寝具として利用することが可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る編物1について説明する。
図1に示す如く編物1は、平行に位置する二枚の基布2・2と、二枚の基布2・2を連結するパイル3と、を備える。編物1は、ダブルラッセル編機により、ループをタテ方向に連続して編み上げていく経編で編み込まれる。
【0016】
二枚の基布2・2は、それぞれ縦糸と横糸とで構成される。また、パイル3は、パイル糸で構成される。即ち、編物1は五本の糸(それぞれの基布2における縦糸及び横糸、及び、パイル糸)により編みたてられる。詳細には
図1に示す如く、布状の基布2・2の間に多数のパイル3がループ状に編み込まれることにより、基布2・2が互いに連結されて一体的な編物1が構成される。
【0017】
本実施形態に係る編物1においては、二枚の基布2・2は、縦糸と横糸とに紡績単糸が用いられる。紡績単糸は、綿、羊毛、麻、シルク、カシミヤ、アクリル、アンゴラ、ポリエステル、ナイロン等の短繊維のうち、一種類、又は、複数の種類を組み合わせて紡績することにより構成される。
【0018】
ダブルラッセル編機において紡績単糸を使用した場合、糸の強度不足で切れたり、スナールと呼ばれるよじれが生じたりすることにより、上手く編みたてることができない場合が多い。本願出願人は、ダブルラッセル編機において紡績単糸を用いる際に、縦糸と横糸との引張強度(テンション)を変更するギヤの比率を調節した。これにより、縦糸と横糸との引張強度を、糸が切れることなく、かつ、スナールが生じない程度に調整することが可能となり、紡績単糸を用いて編物1を構成することに成功した。
【0019】
上記の如く、本実施形態に係る編物1は、二枚の基布2・2の縦糸と横糸とを構成する糸に紡績単糸を採用している。紡績単糸は、二本の糸を撚り合わせて構成する紡績双糸よりも柔らかいため、基布2の柔軟性を向上させることができる。また、紡績双糸よりも軽量な紡績単糸を用いることにより基布2を軽くすることができるため、編物1を全体的に軽量化することができる。さらに、基布2に紡績単糸を用いることにより、編物1の通気性を確保し、肌触りを良く、かつ蒸れにくくすることが可能となる。
【0020】
上記の如く、編物1においては基布2に紡績単糸を用いることで、二枚の基布2・2がパイル3で連結された状態でも、重量が大きくなることを防止するとともに、柔軟性及び通気性を確保することが可能となる。これにより、編物1を寝具として利用することが可能となるのである。また、編物1は基布2に紡績単糸を採用したことにより高い伸縮性を有するため、使用者の身体に程よくまとわりつくことができる。また、編物1は基布2に紡績単糸を採用することにより速乾性を高めることを可能としている。
【0021】
また、本実施形態に係る編物1においては、パイル糸にも紡績単糸を採用している。これにより、織物1(二枚の基布2・2及びパイル3)の全てを紡績単糸のみで構成することができるため、編物1の柔軟性及び通気性をさらに向上させ、より軽量化することが可能となる。具体的には、同じ条件で紡績双糸を用いて構成した編物の単位重量が1.1kg/m2以上であったのに対し、全て紡績単糸を用いた編物1の単位重量を0.33kg/m2とすることができた。
【0022】
また、本実施形態に係る編物1は、パイル3において、パイル糸の本数を周囲よりも少ない部分を備える構成とすることも可能である。これにより、パイル糸の濃淡により編物1に任意のデザインを施すことができるため、編物1の意匠性を向上させることが可能となる。
【0023】
編物1の製造に際して、上記の如く編みたてた編物1に加熱処理が施すこともできる。これにより、繊維を縮めることで編物1の厚みを大きくすることができるため、編物1の嵩高性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1 編み物
2 基布
3 パイル