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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】ガス化溶融システム
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/027 20060101AFI20230428BHJP
   F23G 5/16 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
F23G5/027 B
F23G5/16 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021068747
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022163739
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】517169805
【氏名又は名称】株式会社青南商事
(73)【特許権者】
【識別番号】593010154
【氏名又は名称】株式会社青南エンジニア
(73)【特許権者】
【識別番号】521162458
【氏名又は名称】株式会社青南RER
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】安東 国善
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-058216(JP,A)
【文献】特開2008-224141(JP,A)
【文献】特開2003-004214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を含む被処理物を熱分解して生成ガスを生成するガス化炉と、
前記生成ガスを燃焼させるとともに、前記生成ガスに含まれる灰分を高温で溶融スラグ化するための溶融炉と、
前記生成ガスを前記ガス化炉から前記溶融炉へと導入するための生成ガスダクトとを備え、
前記生成ガスダクトは、前記ガス化炉から上方に延びる部分と、生成ガスの流れ方向を変えるための湾曲部と、前記湾曲部から水平に前記溶融炉まで延びる部分を有しており、
前記生成ガスダクトは、燃焼用空気ラインが接続された複数の燃焼用空気導入口を有しており、前記ガス化炉から出た前記生成ガスと、前記複数の燃焼用空気導入口から供給された燃焼用空気との混合ガスが前記生成ガスダクト内に形成されるように構成されており、
前記複数の燃焼用空気導入口は、前記生成ガスダクトの前記湾曲部に位置し、異なる高さに配置されており、かつ前記燃焼用空気を前記生成ガスダクト内に水平方向に噴出するように配置され、
前記複数の燃焼用空気導入口から前記溶融炉までの距離は、前記燃焼用空気が前記生成ガスと前記生成ガスダクト内で撹拌され、前記溶融炉に入る時点で前記燃焼用空気と前記生成ガスとが均一に混合された混合ガスとなり、前記混合ガスが前記溶融炉の1次燃焼室に入ったときに直ちに着火するよう、3000mm~6000mmの範囲内にあり、
前記溶融炉は、前記1次燃焼室内の前記混合ガスの燃焼を促進させるための旋回用空気が導入される複数の上段旋回用空気導入口と複数の下段旋回用空気導入口を有しており、
鉛直方向に延びる前記溶融炉を上から見たときに、前記溶融炉の1次燃焼室の中心の周りにおいて時計回り方向に0°、90°、180°、270°と位相角度を定義すると、前記生成ガスダクトの位置は、0°~90°内にあり、かつ前記生成ガスダクトは前記溶融炉の円筒状側壁の接線に沿って延びており、
前記複数の上段旋回用空気導入口は、前記前記生成ガスダクトに接続された前記溶融炉の混合ガス導入口の中心と同じ高さにあり、かつ位相角度が90°~180°内にあり、
前記複数の下段旋回用空気導入口は、前記混合ガス導入口の下端と同じ高さ、または前記上段の旋回用空気導入口から600mm~900mmだけ下方に配置しており、かつ複数の上段旋回用空気導入口の位置範囲とは135°位相がずれた225°~315°の位相角度範囲に配置されている、ガス化溶融システム。
【請求項2】
前記複数の燃焼用空気導入口は、室温の空気を投入する第1燃焼用空気導入口と、前記第1燃焼用空気導入口の上方に配置され、300~400℃の空気を投入する第2燃焼用空気導入口と、前記第2燃焼用空気導入口の上方に配置され、室温の空気を投入する第3燃焼用空気導入口を含む、請求項1に記載のガス化溶融システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ、産業廃棄物等の不燃物を含む固形状被処理物をガス化炉で部分燃焼させて発生した未反応ガスを溶融炉に導いて高温燃焼させ、その高温で灰分を溶融し、溶融スラグとして排出するガス化溶融システムおよびその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ、産業廃棄物等の不燃物を含む固形状被処理物の焼却処理にあたっては、通常は焼却炉にて燃焼に必要な空気を十分に供給して完全に焼却する。発生した燃焼ガスはボイラなどの設備に導かれて熱エネルギーが回収される。さらに、十分に温度が低下した燃焼ガスはその中に含まれる灰分をバグフィルターなどの集塵設備で煤塵として捕集したのち、煙突から大気中に放出される。
【0003】
捕集した煤塵は、重金属の溶出を防止するために薬品処理などを行って専用の処分場で埋立することが必要とされる。しかしながら、次第に埋立処分場の立地が困難になってきており、その延命化をはかるために煤塵量を低減する必要があった。そこで、電気式溶融炉にて煤塵を高温で溶融スラグ化することで無害化し、再利用をはかるシステムが考案された。しかし、焼却プラントとは別に溶融設備を設けなければならないこと、電気で溶融するためエネルギー的、コスト的に無駄があり、対策を迫られていた。
【0004】
そこで、ガス化溶融設備が考案されたものである。この設備は部分燃焼による熱分解によって未反応ガスを発生するガス化炉と、当該未反応ガスを高温燃焼させるための溶融炉を備えたものである。都市ごみ、産業廃棄物等の不燃物を含む固形状被処理物は、前記ガス化炉で部分燃焼され、そこで発生した未反応ガス(生成ガス)は前記溶融炉に導かれて1300~1500℃で高温燃焼させる。さらに、その高温で灰分を溶融し、溶融スラグとして排出する。
【0005】
前記ガス化炉が流動床炉であると、不定形な可燃物でも安定処理できること、また鉄などの金属の分離排出に最適である。前述のように、通常の焼却設備では、飛灰をスラグにするためには別途設置した電気式溶融炉などを使用する必要があるが、ガス化溶融設備では自己が保有する熱量によって運転中に溶融炉内部でスラグに出来るため、電力を使用することもなく別途溶融炉を設置することもないので効率的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】2009-281694号公報
【文献】2010-236733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この種のガス化溶融設備では、溶融炉の1次燃焼室の内壁上部にクリンカやダストの塊が付着形成しやすい。このクリンカやダストの塊が成長し大きくなると、溶融炉内のガス流れが阻害されて燃焼反応が不十分になるためスラグ化率が低下したり、溶融炉に設けられた燃焼用空気導入口が塞がれてしまい、さらに燃焼が不十分になって温度が低下するなどの悪影響が発生する。さらにクリンカやダスト塊が成長すると溶融炉の1次燃焼室の上部が閉塞して運転できなくなるなど、大きな問題を引き起こすこととなる。
【0008】
そこで、本発明は、溶融炉の1次燃焼室において内部側壁へのクリンカやダスト塊の付着形成を防止し、安定したスラグ化を促進し、溶融炉の1次燃焼室上部において均一で安定した高温燃焼を可能にすることができるガス化溶融システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、廃棄物を含む被処理物を熱分解して生成ガスを生成するガス化炉と、前記生成ガスを燃焼させるとともに、前記生成ガスに含まれる灰分を高温で溶融スラグ化するための溶融炉と、前記生成ガスを前記ガス化炉から前記溶融炉へと導入するための生成ガスダクトとを備え、前記生成ガスダクトは、燃焼用空気ラインが接続された燃焼用空気導入口を有しており、前記ガス化炉から出た前記生成ガスと燃焼用空気との混合ガスが前記生成ガスダクト内に形成されるように構成されており、前記生成ガスダクトは前記溶融炉に対して偏心して連結され、前記生成ガスダクトが前記溶融炉の円筒状側壁の接線に沿って延びるように配置され、前記混合ガスの燃焼により発生した燃焼ガスが前記溶融炉の1次燃焼室の内壁に沿って流れることによって旋回流を形成するように構成され、前記溶融炉は、前記1次燃焼室内の前記旋回流および前記混合ガスの燃焼を促進させるための旋回用空気が導入される旋回用空気導入口を有しており、前記生成ガスダクトへの前記燃焼用空気の流量は、前記1次燃焼室への前記旋回用空気の流量を上回るように設定されている、ガス化溶融システムが提供される。
【0010】
一態様では、前記燃焼用空気ラインが接続された前記燃焼用空気導入口は、異なる位置に配置された複数の燃焼用空気導入口である。
一態様では、前記複数の燃焼用空気導入口は、室温の空気を供給するための第1燃焼用空気ラインに接続された第1燃焼用空気導入口と、室温よりも高い温度の空気を供給するための第2燃焼用空気ラインに接続された第2燃焼用空気導入口を含む。
一態様では、前記複数の燃焼用空気導入口は、2次空気を供給するための第3燃焼用空気ラインに接続された第3燃焼用空気導入口をさらに含む。
一態様では、前記燃焼用空気導入口の位置は、前記ガス化炉と前記溶融炉との中間にあり、前記燃焼用空気導入口から前記溶融炉までの距離は、前記燃焼用空気が前記生成ガスと前記生成ガスダクト内で撹拌され、前記溶融炉に入る時点で前記燃焼用空気と前記生成ガスとが均一に混合された混合ガスとなるような距離である。
一態様では、前記燃焼用空気導入口から前記溶融炉までの前記距離は、3000mm~6000mmの範囲内である。
【0011】
一態様では、前記旋回用空気導入口は、上段の旋回用空気導入口と、下段の旋回用空気導入口を含み、前記上段の旋回用空気導入口は、前記生成ガスダクトに接続された前記溶融炉の混合ガス導入口の中心と同じ高さ、または前記混合ガス導入口の上端部から600mm~900mmだけ下方に位置しており、前記下段の旋回用空気導入口は、前記混合ガス導入口の下端と同じ高さ、または前記上段の旋回用空気導入口から600mm~900mmだけ下方に配置している。
一態様では、前記下段の旋回用空気導入口は、前記1次燃焼室内の前記燃焼ガスの旋回方向において前記上段の旋回用空気導入口よりも下流側に位置している。
一態様では、前記旋回用空気導入口の空気噴射方向は、前記1次燃焼室の中心から外れており、前記旋回流を助けるように、前記1次燃焼室の半径方向に対してずれている。
一態様では、前記旋回用空気導入口は、水平方向を向いて、または水平方向に対して斜め下方を向いている。
一態様では、前記ガス化溶融システムは、前記旋回用空気導入口から前記1次燃焼室内に導入される前記旋回用空気に酸素ガスを富化するための酸素ガス供給ラインをさらに備えている。
【0012】
一態様では、廃棄物を含む被処理物をガス化炉内で熱分解して生成ガスを生成し、前記生成ガスを前記ガス化炉から溶融炉へと導入するための生成ガスダクト内に燃焼用空気を燃焼用空気導入口から導入して、前記生成ガスと前記燃焼用空気とが均一に混合された混合ガスを前記生成ガスダクト内に形成し、前記混合ガスを前記溶融炉に導入して、前記溶融炉の1次燃焼室内で前記混合ガスを燃焼させて燃焼ガスの旋回流を形成しながら、前記旋回流および前記混合ガスの燃焼を促進させるための旋回用空気を前記1次燃焼室内に導入し、前記混合ガスに含まれる灰分を高温で溶融スラグ化し、前記生成ガスダクトへの前記燃焼用空気の流量は、前記1次燃焼室への前記旋回用空気の流量を上回る、ガス化溶融システムの運転方法が提供される。
【0013】
一態様では、前記燃焼用空気は、集塵器を通過した空気を含む。
一態様では、前記集塵器を通過した空気は、300℃~400℃の空気を含む。
一態様では、前記燃焼用空気導入口の位置は、前記ガス化炉と前記溶融炉との中間にあり、前記燃焼用空気導入口から前記溶融炉までの距離は、前記燃焼用空気が前記生成ガスと前記生成ガスダクト内で撹拌され、前記溶融炉に入る時点で前記燃焼用空気と前記生成ガスとが均一に混合された混合ガスとなる距離である。
一態様では、前記燃焼用空気導入口から前記溶融炉までの距離は、3000mm~6000mmの範囲内である。
一態様では、前記燃焼用空気導入口は、複数の燃焼用空気導入口である。
一態様では、前記1次燃焼室内に導入される前記旋回用空気に酸素ガスを富化する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
まず、溶融炉に入る前に生成ガスダクト内部にて、生成ガスと燃焼用空気が十分に攪拌混合し、均一化されることによって、その混合ガスが溶融炉の1次燃焼室に入ると同時に燃焼開始できるため、溶融炉の1次燃焼室上部で安定した高温燃焼が行われる。その結果、溶融炉の内壁にクリンカの形成やダスト付着がなくなり、安定した溶融スラグ流を形成し、その結果スラグが溶融炉内に堆積することなく順調に排出され、スラグ化率の高い安定した運転が継続可能となる。
また溶融炉の1次燃焼室における旋回用空気導入口の適切な配置によって溶融炉内部には燃焼ガスの旋回流が適切に形成され、さらに溶融炉の1次燃焼室へ供給する旋回用空気に酸素ガスを富化することによって、より高温燃焼が可能になる。
【0015】
また生成ガスダクトに投入する燃焼用空気としてガス化溶融プラント場内の高温設備の冷却装置や集塵装置から発生する400℃近い高温集塵空気を使用することは、ガス化溶融プラントのエネルギー効率上昇に寄与するものである。
また低温集塵空気や高温集塵空気にはダストが含まれており、ガス化溶融設備に投入されることにより溶融炉でスラグ化したり、最終的には溶融炉の後段にあるバグフィルターで捕集されるため、各集塵設備においては送風機を保護する程度のサイクロンのような簡単な集塵機で済む効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るガス化溶融設備における燃焼用空気および旋回用空気の供給系統の構成例を示す図である。
図2図1における溶融炉の水平断面であり、溶融炉の混合ガス導入口および上段の旋回用空気導入口の配置の一実施形態を示す図である。
図3図1における溶融炉の水平断面であり、溶融炉の混合ガス導入口および下段の旋回用空気導入口の配置の一実施形態を示す図である。
図4】溶融炉の混合ガス導入口および上段の旋回用空気導入口の配置の他の実施形態を示す図である。
図5】溶融炉の混合ガス導入口および下段の旋回用空気導入口の配置の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。各説明図において、同一または対応する部材については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。図1は、ガス化溶融システム10の一実施形態を示す模式図である。ガス化溶融システム10は、例えば、ガス化溶融発電プラントに適用することができる。
【0018】
図1に示すように、ガス化溶融システム10は、都市ごみ、産業廃棄物等の廃棄物を含む被処理物を部分燃焼により熱分解して生成ガスを生成するガス化炉20と、当該生成ガスを燃焼させるとともに、当該生成ガスに含まれる灰分を高温で溶融スラグ化するための溶融炉40と、前記生成ガスを前記ガス化炉20から溶融炉40へと導入するための生成ガスダクト30を備える。
【0019】
ガス化溶融システム10は、さらに、被処理物をガス化炉20に供給するための供給装置22と、生成ガスダクト30内に燃焼用空気を供給するための燃焼用空気ライン33と、溶融炉40内に旋回流を形成するための旋回用空気ライン45を備えている。図示しないが、溶融炉40から排出された燃焼ガスFから熱を回収するボイラなどの熱回収設備、燃焼ガスF中のダストを捕集除去する集塵設備、燃焼ガスFを引き込む誘引送風機、燃焼ガスFを大気中に放出する煙突などが溶融炉40の後段に設置される。
【0020】
本実施形態では、ガス化炉20は、流動床炉から構成されている。燃焼用1次空気としての流動化空気は、ガス化炉20内の流動床20aの下方に供給され、流動床20aを形成する流動媒体を流動化させる。燃料となる被処理物(例えば産業廃棄物)は、供給装置22によってガス化炉20内に投入される。燃焼用一次空気としての流動化空気の流量は、投入された被処理物を燃焼させるのに必要な空気の流量よりも低く設定されている。例えば、流動化空気の流量は、投入された被処理物を完全燃焼させるのに必要な空気の流量の3割程度である。したがって、被処理物はガス化炉20内で部分燃焼により熱分解し、未反応ガスである生成ガスD1を発生する。被処理物に含まれている不燃物は、流動媒体の一部とともに、ガス化炉20の外に排出される。なお本実施形態ではガス化炉20は流動床炉から構成されているが、生成ガスD1を発生させるものであれば、ガス化炉20は流動床炉に限るものではない。例えば、ガス化炉20はキルン型ガス化炉であってもよい。
【0021】
ガス化炉20から導出された生成ガスD1は、生成ガスダクト30を通って溶融炉40へ供給される。溶融炉40は、生成ガスダクト30に接続された1次燃焼室41と、1次燃焼室41の下流側に位置する2次燃焼室42と、2次燃焼室42の下流側に位置する3次燃焼室43を有している。2次燃焼室42は、下方に傾斜しており、最下部からスラグが排出される。2次燃焼室42の形状は特に限定されず、例えば、直線状または円弧状であってもよい。
【0022】
ガス化炉20から出た生成ガスD1には酸素はほとんど含まれていない。この生成ガスD1を燃焼させるために必要な燃焼用空気の大半は、燃焼用空気ライン33から生成ガスダクト30内に供給される。本実施形態では、後述するように、燃焼用空気は、集塵器および/または送風機から送られた空気を含む。
【0023】
本実施形態では、燃焼用空気ライン33は、3つの燃焼用空気ライン33-1,33-2,33-3を含む。生成ガスダクト30は、これら3つの燃焼用空気ライン33-1,33-2,33-3にそれぞれ接続された3つの燃焼用空気導入口30-1,30-2,30-3を有している。したがって、これら3つの燃焼用空気ライン33-1,33-2,33-3を流れた燃焼用空気は、3つの燃焼用空気導入口30-1,30-2,30-3を通って生成ガスダクト30内に供給される。
【0024】
第1燃焼用空気ライン33-1は、第1集塵器34に接続されており、第1集塵器34を通過した空気が燃焼用空気として第1燃焼用空気ライン33-1を通って生成ガスダクト30内に供給される。第1集塵器34は、ガス化溶融システム10が設置されるプラント場内の空気から煤塵を除去するための室温集塵器である。したがって、第1集塵器34から第1燃焼用空気ライン33-1に送られる燃焼用空気は、室温の空気である。
【0025】
第2燃焼用空気ライン33-2は、第2集塵器35に接続されており、第2集塵器35を通過した空気が燃焼用空気として第2燃焼用空気ライン33-2を通って生成ガスダクト30内に供給される。第2集塵器35は、ガス化溶融プラント場内の高温集塵器である。一実施形態では、第2集塵器35は、図示しないが、ガス化炉20から排出された不燃物を分級するための分級機、およびそこで篩い分けられた流動媒体を循環する系統に接続された高温集塵器である。分級機内には高温の不燃物および流動媒体が投入されるので、第2集塵器35を通過する空気は高温の空気である。一例では、第2集塵器35から第2燃焼用空気ライン33-2に送られる燃焼用空気は、300℃~400℃の空気であり、第1燃焼用空気ライン33-1を流れる室温の燃焼用空気よりも高い温度を有している。
【0026】
第3燃焼用空気ライン33-3は、プラント場内または外に設置された送風機36に接続されている。送風機36から第3燃焼用空気ライン33-3に送られる燃焼用空気は、いわゆる2次空気であり、室温か外気温度、もしくは熱交換器を用いて温度を上げている。第3燃焼用空気ライン33-3には空気調節弁31が設けられており、第1燃焼用空気ライン33-1および第2燃焼用空気ライン33-2を流れる燃焼用空気ライン33の流量が、生成ガスD1を燃焼させるために十分でない場合に空気調節弁31が開かれる。
【0027】
図1に示す実施形態では、3つの燃焼用空気導入口30-1,30-2,30-3は、生成ガスD1の流れ方向に沿って、低温の燃焼用空気のための第1燃焼用空気導入口30-1、高温の燃焼用空気のための第2燃焼用空気導入口30-2、および2次空気のための第3燃焼用空気導入口30-3の順序で配列されている。しかしながら、本発明はこの順序に限らず、順序が入れ替わってもよい。
【0028】
燃焼用空気を生成ガスダクト30に入れる理由は、生成ガスD1が溶融炉40内に入る前に空気と生成ガスD1を均一に混合させ、温度および酸素濃度を均一にするためである。生成ガスダクト30に空気を入れても、生成ガスD1はすぐには燃焼せず、導入された燃焼用空気と生成ガスD1が混合されて混合ガスD2を形成する。空気が均一に分散し温度および酸素濃度が均一になった混合ガスD2が溶融炉40に入ると、混合ガスD2は直ちに着火し、しかも均一に燃焼することができる。すなわち、生成ガスダクト30内で燃焼用空気と均一に混合されて初めて、混合ガスD2は1次燃焼室41の上部において安定した高温燃焼が可能となる。したがって、溶融炉40の混合ガス導入口40-1から燃焼用空気導入口30-1,30-2,30-3までの距離Lは、空気と生成ガスD1が均一に混合するのに必要かつ十分な距離である。
【0029】
このような観点から、生成ガスダクト30への燃焼用空気導入口30-1,30-2,30-3の位置は、ガス化炉20と溶融炉40との中間とされる。すなわち、投入した燃焼用空気が生成ガスD1と十分に撹拌混合され、溶融炉40に入る時点で燃焼用空気と生成ガスD1が均一に混合された混合ガスD2となるよう溶融炉40までに適切な距離Lを確保している。その距離Lは3000mm~6000mmの範囲内とし、好ましくは4000mm~5000mmの範囲内になるように設定される。
【0030】
低温の燃焼用空気のための第1燃焼用空気導入口30-1、高温の燃焼用空気のための第2燃焼用空気導入口30-2、および2次空気のための第3燃焼用空気導入口30-3の位置は、生成ガスダクト30の天井面、両側面、底面のいずれでもよく、生成ガスダクト30の形状に基づいて決定すればよい。本実施形態では、生成ガスダクト30は、生成ガスD1の流れ方向を変えるための湾曲部30Aを有している。より具体的には、生成ガスダクト30は、ガス化炉20から上方に円弧を描き溶融炉40には水平に接続するように構成される。3つの燃焼用空気導入口30-1,30-2,30-3は、湾曲部30Aに位置しており、生成ガスダクト30の天井面または両側面に位置している。さらに、これら3つの燃焼用空気導入口30-1,30-2,30-3は、溶融炉40の1次燃焼室41を向いている。したがって、燃焼用空気は、溶融炉40の1次燃焼室41に向かって生成ガスダクト30内に注入される。
【0031】
通常運転では、空気調節弁31は閉止されており、2次空気は使用しない。つまり、通常運転では、第1燃焼用空気導入口30-1から供給される低温の燃焼用空気と、第2燃焼用空気導入口30-2から供給される高温の燃焼用空気を使用する。低温の燃焼用空気と高温の燃焼用空気の流量変動や不足によって燃焼に必要な酸素量が不足する際には、空気調節弁31を開いて、第3燃焼用空気導入口30-3から2次空気を適宜導入できるようにしている。これにより、燃焼に必要な酸素量を一定に供給することで溶融炉40の1次燃焼室41での高温化を維持し、スラグの流れを円滑にし、安定運転を行う。
【0032】
上述の通り、運転中は、少なくとも2つの燃焼用空気導入口30-1,30-2が使用される。これは、異なる位置に配置された複数の燃焼用空気導入口30-1,30-2から燃焼用空気を導入することで、より速やかに、かつ均一に燃焼用空気を生成ガスD1と混合させるためである。
【0033】
図1では、第1燃焼用空気導入口30-1、第2燃焼用空気導入口30-2、第3燃焼用空気導入口30-3はそれぞれ1つずつ設けられているが、これに限るものではなく、実施にあたっては生成ガスダクト30の形状等に応じて適宜複数にしてよい。例えば、図示はしないが、それぞれの燃焼用空気の変動や、燃焼用空気ライン33-1,33-2,33-3のいずれかの廃止などの状況に対応するため、燃焼用空気ライン33-1,33-2,33-3を相互に連結し、空気弁により切り替えることで、燃焼用空気導入口30-1,30-2,30-3を共有化することも可能である。
【0034】
旋回用空気ライン45は、溶融炉40の1次燃焼室41に接続されており、さらに2次空気ライン46は、溶融炉40の3次燃焼室43に設けられた2次空気導入口43-1に接続されている。生成ガスダクト30へ投入される燃焼用空気の流量は、溶融炉40の1次燃焼室41に投入される旋回用空気の流量を上回るように設定される。このようにすることで、混合ガスD2は、1次燃焼室41に入ると直ぐに燃焼を開始し、1次燃焼室41の上部において安定した高温燃焼が可能となる。溶融炉40の3次燃焼室43内に供給される2次空気は、CO濃度の低減や、燃焼ガスFの冷却に必要な量で供給される。
【0035】
本実施形態では、旋回用空気ライン45は、上段旋回用空気ライン45-1および下段旋回用空気ライン45-2を含む。溶融炉40の1次燃焼室41には燃焼ガスFの流れに沿って鉛直方向に複数段の旋回用空気導入口41-1,41-2が設けられている。上段の旋回用空気導入口41-1および下段の旋回用空気導入口41-2は、上段旋回用空気ライン45-1および下段旋回用空気ライン45-2にそれぞれ接続されている。上段旋回用空気ライン45-1および下段旋回用空気ライン45-2は独立した2つのラインであってもよく、または共通のラインから分岐した2つのラインであってもよい。
【0036】
旋回用空気導入口41-1,41-2から導入される旋回用空気は、1次燃焼室41に形成される燃焼ガスFの旋回流を促進するのみならず、混合ガスD2の燃焼に必要な酸素の供給にも寄与する。本実施形態では、2段の旋回用空気導入口41-1,41-2が設けられている。燃焼ガスFの旋回流を促進する観点からは、3段以上の旋回用空気導入口を設けることも考えられるが、段数が増えるに従い、燃焼のバランスが崩れて、1次燃焼室41内の燃焼温度を低下させたり、クリンカ等の塊を形成して燃焼状態を悪化させてしまうおそれがある。この観点から、本実施形態では、2段の旋回用空気導入口41-1,41-2が設けられている。
【0037】
旋回用空気は、一例では、室温の空気であるが、室温よりも高い温度の空気であってもよい。例えば、旋回用空気は、上述した送風機36から送られる2次空気であってもよい。上段の旋回用空気導入口41-1は、混合ガス導入口40-1の中心と同じ高さ、または混合ガス導入口40-1の上端部から下方600mm~900mm、好ましくは700mm~800mmに位置している。下段の旋回用空気導入口41-2は、混合ガス導入口40-1の下端と同じ高さ、または上段の旋回用空気導入口41-1から600mm~900mm、好ましくは700mm~800mm下方に位置している。
【0038】
図2は、溶融炉40の混合ガス導入口40-1および上段の旋回用空気導入口41-1を上から見た水平断面図であり、図3は、溶融炉40の混合ガス導入口40-1および下段の旋回用空気導入口41-2を上から見た水平断面図である。図2図3に示すように、生成ガスダクト30は溶融炉40に対して偏心して連結されている。生成ガスダクト30が溶融炉40の円筒状側壁の接線に沿って延びるように配置されているので、生成ガスダクト30から混合ガス導入口40-1を通じて導入される混合ガスD2は、溶融炉40の1次燃焼室41の内壁に沿って流れ、溶融炉40の1次燃焼室41内に燃焼ガスFの旋回流を形成する。
【0039】
図2に示すように、溶融炉40の1次燃焼室41に配置された複数の旋回用空気導入口41-1は、水平面において1次燃焼室41の円筒状側壁上に並べられている。旋回用空気導入口41-1のそれぞれの空気噴射方向は、1次燃焼室41の中心Oから外れており、燃焼ガスFの旋回流を助けるように、1次燃焼室41の半径方向に対して燃焼ガスFの旋回方向下流側にずれている。さらに、旋回用空気導入口41-1のそれぞれは、水平方向を向いて、または水平方向に対して斜め下方を向いている。
【0040】
溶融炉40を上から見たときに、溶融炉40の1次燃焼室41の中心Oの周りにおいて時計回り方向に0°、90°、180°、270°と位相角度を定義すると、生成ガスダクト30および混合ガス導入口40-1の位置は、0°~90°内にある。混合ガス導入口40-1は、溶融炉40の1次燃焼室41の接線方向に沿った方向を向き、かつ1次燃焼室41の半径方向に対してずれているので、混合ガスD2は1次燃焼室41内で旋回流を形成する。
【0041】
上段の旋回用空気導入口41-1は、燃焼ガスFが溶融炉40の1次燃焼室41内で旋回を開始する位置である60°~210°、より具体的には90°~180°の範囲に配置されている。図2に示す例では、3つの旋回用空気導入口41-1が設けられているが、1次燃焼室41内の燃焼ガスFの旋回流を促進できるのであればその数は特に限定されない。例えば、旋回用空気導入口41-1の数は、1次燃焼室41の直径や旋回用空気導入口41-1の直径によって適宜調整される。
【0042】
図3に示すように、溶融炉40の1次燃焼室41に配置された複数の旋回用空気導入口41-2も、水平面において1次燃焼室41の円筒状側壁上に並べられている。旋回用空気導入口41-2のそれぞれの空気噴射方向は、1次燃焼室41の中心Oから外れており、燃焼ガスFの旋回流を助けるように、1次燃焼室41の半径方向に対して燃焼ガスFの旋回方向下流側にずれている。さらに、旋回用空気導入口41-2のそれぞれは、水平方向を向いて、または水平方向に対して斜め下方を向いている。
【0043】
下段の旋回用空気導入口41-2は、1次燃焼室41の周方向において上段の旋回用空気導入口41-1とは異なる位置にある。より具体的には、下段の旋回用空気導入口41-2は、1次燃焼室41内の燃焼ガスFの旋回方向において上段の旋回用空気導入口41-1よりも下流側に位置している。例えば、上段の旋回用空気導入口41-1が60°~210°の範囲内にあるのに対し、下段の旋回用空気導入口41-2は、210°~330°の範囲内にある。本実施形態では、下段の旋回用空気導入口41-2は、上段の旋回用空気導入口41-1の位置範囲とは135°位相がずれた225°~315°の範囲に配置されている。図3に示す例では、3つの旋回用空気導入口41-2が設けられているが、1次燃焼室41内の燃焼ガスFの旋回流を促進できるのであればその数は特に限定されない。例えば、旋回用空気導入口41-2の数は、1次燃焼室41の直径や旋回用空気導入口41-2の直径によって適宜調整される。
【0044】
図2および図3に示す実施形態では、1次燃焼室41の上から見たときの燃焼ガスFの旋回方向は時計回りであり、生成ガスダクト30および混合ガス導入口40-1の位置は、0°~90°内にあるが、一実施形態では、図4および図5に示すように、生成ガスダクト30および混合ガス導入口40-1の位置は、270°~360°内にあってもよい。この場合は、燃焼ガスFの旋回方向は反時計回りとなるが、上段の旋回用空気導入口41-1と下段の旋回用空気導入口41-2の空気噴射方向、配列順序、位相角度の差、およびこれら相互の関係は、図2および図3を参照して説明した実施形態と同じである。
【0045】
図2乃至図5を参照して説明した実施形態によれば、溶融炉40の内部では、1次燃焼室41、2次燃焼室42にて1300℃~1500℃で燃焼が行われ、燃焼ガスF中に含まれるダスト類は溶融してスラグとなって排出される。
【0046】
図1に示すように、酸素ガス供給ライン48は、上段旋回用空気ライン45-1および下段旋回用空気ライン45-2に接続されてもよい。一実施形態では、酸素ガス供給ライン48は、上段旋回用空気ライン45-1または下段旋回用空気ライン45-2のいずれか一方に接続されてもよい。旋回用空気導入口41-1および旋回用空気導入口41-2のうちの少なくとも一方から溶融炉40の1次燃焼室41内に導入される旋回用空気に酸素ガスを富化することにより、1次燃焼室41の内部をより高温化し、スラグ化率の向上やスラグが円滑に流れるようにすることが可能である。
【0047】
燃焼ガスFはその後3次燃焼室43に入り、そこで2次空気導入口43-1から導入される2次空気によって一酸化炭素(CO)の濃度の低減や燃焼ガスFの冷却を行ったのち、溶融炉40から排出される。排出された燃焼ガスFは、いずれも図示はしないが熱回収設備であるボイラなどを通過してガス温度が低下し、さらに集塵設備でダストを除去したのち煙突から大気に放出される。
【0048】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0049】
10 ガス化溶融システム
20 ガス化炉
20a 流動床
30 生成ガスダクト
30A 湾曲部
30-1 第1燃焼用空気導入口
30-2 第2燃焼用空気導入口
30-3 第3燃焼用空気導入口
31 空気調節弁
33-1 第1燃焼用空気ライン
33-2 第2燃焼用空気ライン
33-3 第3燃焼用空気ライン
34 第1集塵器
35 第2集塵器
36 送風機
40 溶融炉
40-1 混合ガス導入口
41 1次燃焼室
41-1 上段旋回用空気導入口
41-2 下段旋回用空気導入口
42 2次燃焼室
43 3次燃焼室
43-1 2次空気導入口
45 旋回用空気ライン
45-1 上段旋回用空気ライン
45-2 下段旋回用空気ライン
46 2次空気ライン
48 酸素ガス供給ライン
D1 生成ガス
D2 混合ガス
F 燃焼ガス
L 生成ガスダクトの燃焼用空気導入口から溶融炉の混合ガス導入口までの距離
図1
図2
図3
図4
図5